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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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121.  行きずりの街 《ネタバレ》 
物語の性質からして、この映画は必然的に過去の説明や謎解きを挟みながらの展開とならざるを得ない。 フラッシュバックの多用は当然ながら映画を停滞させがちなのだが、それを最小限のショットにとどめ、尚且つ仲村トオルの視線を用いて現在と過去を簡潔に繋いでいくカッティングによって時制の感覚を適度に混乱させながら、現在進行形を維持していく。  現在と過去を繋ぐ空間である小西真奈美のバーの廊下、および彼女のマンションの廊下は手前に黒、奥に明を配置したコントラスト豊かな縦構図と照明によって艶かしい。  さらに過去と現在が交錯しあうクライマックスの廃校の廊下もまた感動的だ。  走る現在の仲村トオルと、過去の小西真奈美の背中が幾度も切り返される。夕陽を背に振り返る現在の彼女にショットはつながり、その黒髪を逆光が美しく包む。現在の中で交じり合う二人の視線。 一連のスローモーションから、スリーショットのストップモーションまで、ドラマ的には訳の判らぬ迫力と情感で押し切られてしまう感じなのだが、それも良し。  木刀の意外性などは、いかにも東映チャンバラ的で実に面白い。 窪塚のコンビネーションパンチの切れ、仲村の剣戟の泥臭さと、クライマックスを担う男優陣の格闘アクションもそれぞれ個性的で良い。 
[映画館(邦画)] 8点(2010-11-29 22:12:20)
122.  君に届け
「窃視」の映画といっても良いくらい、画面の中をすれ違う視線の数々。入学後、お互いを意識しはじめている二人は、お互いに見守られている事を知らぬまま見つめ、また見つめられる。『映画研究塾』の成瀬論が言うところの「見られていることを知らない無防備な身体」のショットの丁寧な積み重ねが、二人が惹かれあっていく裏付けとして強い説得力を獲得していく。  その身体性を保障するため、作者たちは映画の特権としてパソコン・固定電話・携帯電話といった簡易なコミュニケーションツールを主人公から周到に排除する。多部未華子は、手を取り合い、ノートを手書きし、肩を抱き合い、懸命に走って会いにいき、相手の目を見つめながら、直の言葉を相手に届け、思いを伝える。「走る」ショット自体の運動感にやや不満はあっても、支持されるべき映画的な美点だ。  初めて友人達とラーメンを食べた帰り道、自転車を押しながら先を歩く三浦春馬と、その後を遅れながらついていく多部の二人を捉える横移動のショット。その二人の歩調と微妙な距離感が素晴らしい。  「内気」な少女が「家を出」る成瀬的「親離れ」の物語は、エンディング後のラストに、上の移動ショットに対応する意味からしても必須となる成瀬的ショットを以って的確に締めくくられる。
[映画館(邦画)] 8点(2010-10-13 00:42:20)
123.  トイ・ストーリー3
序盤の列車アクション、2度のゴミ回収、飛翔による脱出、夜間の「脱獄」のシークエンス、そして溶鉱炉へ向かうコンベアーラインの活劇。いずれも縦の構図による遠近法に立体効果を活かした極上のサスペンス演出。同時に、水平軸から垂直軸へのアクションを複合させることで共通しており、空間表現としても大変充実している。(第一作でみせた、カーアクションから一転、ロケット上昇という見事な軸転換から全くぶれていない。)  それら空間造形術といい、暗いナイトシーンが支配する「サニーサイド」保育園の構造的隠喩といい、ポール・グリモーから宮崎駿経由の継承が窺える。(冒頭の同時上映『デイ&ナイト』の主題とも通じ合う)  絶妙にデフォルメされた全身表現によって付与される人形たちの喜怒哀楽の感情と生命感。内気な少女の細やかな仕草・表情変化の豊かさ。脱出シーンの切れ味の良いパンショットやダンスシーンの見事なカッティング。溶鉱炉の赤から、夜明けの美しい光への推移。全編見所に溢れている。  そして、文字に拠らずに行為の画面で語ったラストは大したもの。
[映画館(字幕)] 8点(2010-09-25 23:15:07)
124.  借りぐらしのアリエッティ 《ネタバレ》 
さらにシンプルさの美徳を極める宮崎脚本。百戦錬磨のストーリーテラーにとって、一般受けしそうな物語的起伏や善意の公式テーマ的なものをそれらしく放り込んで安い感動を作リ出すことなど容易いはずだろうが、それらは結果として作り手の最も見せたいものを見えなくするだろう。  例えば、テントウムシやアリ達の足の動きが表現する生命感であり、蔦の葉の揺れ具合が表す大気の感覚である。針子仕事や洗濯物干しといった労働の所作の体感。上下軸を活かしたアクションの爽快感。少年からもらった大事な角砂糖を両手で受け取り右足でバランスを取りながら大切にバッグにしまう細やかな動作が伝える少女の感情。  それらの瞠目すべき動画再現力、つまりはアニメーションの本質的な醍醐味が、作劇の賢明なシンプルさによって引き立っている。 音の感覚についても同様だ。  スタジオロゴに風鈴の音が重なり、「あの夏の一週間」を回顧する少年のモノローグで映画はスタートする。風と音の記憶に導かれた少年の回想としての物語であり、それは二人が出会う時、風と音を介していたことに拠っている。  孤独な者同士が始めて見詰め合う官能的な場面の息詰まる感覚の素晴らしさ。頬を赤らめる少女と、穏やかな息づかいの少年。それぞれが纏うシーツとティッシュペーパーの衣擦れの音。「見られてはならない」禁忌ゆえに、少女の内奥に芽生えたかもしれない裏返しの願望。彼女はラスト、自分を見てくれた相手に真っ直ぐに視線を返してあげる。  宮崎脚本が本作でも一貫したモチーフとして描くのは、存在そのものの孤独であり、関係性への憧憬であり、そしてそれへの共鳴と開放である。(少年がベッドで読むバーネットの童話もそれを示唆する。) 
[映画館(邦画)] 8点(2010-09-13 23:11:29)
125.  ベスト・キッド(2010)
北米の意識はもはや日本ではなく中国にあり、という感じでパワーバランスの時代推移を厳然と反映している点、リメイクだけに興味深い。  寄り気味のカメラは、多用されるフォロー移動とともに、観客が見るべき対象をひたすら限定して先導してくれる。ここだけ見なさい、というサービス過剰な介護式。加えて、饒舌なBGMがここぞという場面を盛大に誘導・援護してくれる。だからとにかくわかりやすい。 そして、アクションシーンの編集は少々リズム偏重気味で「ワンショット性」に欠け、剛柔の表現としては不満を残すのだが、序盤中盤で何度も反復された円や弧のモチーフは武術の基本として止めの回転技として活きてくる点は見事。  また、光を意識した印象的な画面も豊富でいい。ガールフレンドと戯れる公園の噴水に反射する光、影絵劇場の幻燈、J・チェンがJ・スミスを諭す中庭の場面での眩しい入射光、そしてヘッドライトの光の中に浮かび上がる二人の教育と伝授のシルエットが感動的だ。(それを影から見守るT・ヘンソンの姿も)  そして、キャラクター達も主演二人を始めとしていずれも魅力がある。いずれの登場人物も何らかの弱さを持ち、それを克服させ成長させるという作劇の丁寧さゆえでもある。 特に、作り手の少年少女に対する目線の温かさは心地よい。  トーナメントの前、贈られた道着に対してJ・スミスが漏らす『ブルース・リー』の一言に初めて顔をほころばせるJ・チェン。その笑顔が泣かせる。 
[映画館(字幕)] 8点(2010-09-04 20:57:59)
126.  ソルト 《ネタバレ》 
一般的に「演技派俳優」は心の内面を表情・身振りの付加によって過剰なまでに主張しがちだが、余計な演技がない場合こそ、人物の心理・感情が生々しく伝わるのが映画の面白さ。 危険なアクションが全編にわたって連続するこの映画で、アンジェリーナ・ジョリーは走る・飛ぶ・格闘する身体運動に集中するとき、演技どころではなくなる。 一方で、心理のガードを高度に教育されたスパイの役柄を演じる彼女は、その表情を大きく変えることもない。  その演技・非演技ない交ぜの相貌が、画面に緊張とエモーションを呼び込む。特に復讐物語となる後半、その抑制的な表情と殺戮アクション自体の過激さと強度が、彼女の怒りと悲しみを強く画面に漲らせる。とりわけ中盤のアジトのシーンで、唐突にある場面に遭遇する彼女の無表情が示唆する内面の葛藤と、それに続く無表情の虐殺シーンのケレン味が感動的だ。  終盤の暗いヘリコプター内、交感する二者を結ぶ夜明けの薄明かりの水平ラインも美しい。  劇の二段構成、金髪と黒髪、高所感覚等〃の要素は『めまい』にも通ずる。
[映画館(字幕)] 8点(2010-08-14 22:59:49)
127.  私の優しくない先輩
序盤から延々と続くモノローグに、役者の漫画的身振りと表情演技とテンションに、過剰な画面加工と効果音に、この先どうなることやらと白け気味になりかけるのだが、中盤の恋の駆引き劇あたりから不穏感と気まずさを湛え始め、徐々に引きこまれる。  雨の中、山の手にある友人宅から坂を下り夜の川原へと、劇は浮遊感から下落のイメージに包まれ、後半の生々しい撮影スタイルと川島海荷のオルターエゴであるモノローグは凄味を増し、画面との齟齬は対位的に増幅されていく。  シンクロか否かよくわからないが、後半の体育館内および火まつりシーンでの二人の生々しい台詞の応酬ともつれ合うアクションが、炎と闇のスペクタル性と共に素晴らしい。  そして出演者全員によるエンディングも、スタイルは全く違うが大林版『時をかける少女』のラストを思わせる至福の時間。  キャストの振り付けの統率とロケーションに合わせた配置。時々刻々の入射光の加減を配慮し、手持ちからクレーンへの自然な繋ぎまでこなしたキャメラワーク。このロングテイクにはスタッフ・キャスト共々、相当な準備が費やされた筈。熱情の賜物といえる。
[映画館(邦画)] 8点(2010-07-25 23:56:54)
128.  アウトレイジ(2010)
横長を活かし居並ぶ組員の顔を次々映し出す水平移動のファーストショットは、真正面からの唐突なバストショットで開始された従来作品のような不可解性がなく、状況説明としても格段に解り易い。並んだ彼らのお辞儀のロングショットのみで組織内の序列も簡潔明瞭に示される。  主眼のヴァイオレンス描写の一方で、何気ない所作やありふれた小道具一つを以って人物の性質を語ってしまう演出力は依然として冴える。旧作において、組長を前に畏まる幹部の中で北野一人が平然と煙草をふかしていることでアウトローぶりを際立たせた人物描写(『ソナチネ』)や、喫茶店のウエイトレスがいつしか煙草を吸うようになっていることで示された経年描写(『キッズ・リターン』)等、さりげない煙草の演出は本作品でも巧妙に変奏される。警察署前での吸殻をめぐるエピソードの反復によって、椎名桔平の人物像とパワーバランスを明瞭に浮かび上がらせてしまうのがそれだ。あるいは、國村準の台詞「コレ(高級洋酒)、飲んじゃおう。」なども彼の人間性を雄弁に語らせており、小道具活用は自家薬籠中のものといった感がある。  黒の車体、革靴の表面を彩る黒光りの艶かしい様や、鈍いブルーの印象的な配置も堂に入っている。  新味としては、殺戮後のサウナ内や路上の惨殺死体の横を車が通過する緩い水平移動の不気味な感覚など、死体と車両のショットにおいて最もシネスコが意識されているように感じられる。あえて静の間を延ばすような、中盤でのフェードアウトの繰り返しも新しい趣向だがあまり効果を感じない。  
[映画館(邦画)] 8点(2010-06-27 20:20:42)
129.  座頭市 THE LAST
緊迫した長回しの中、縦構図で捉えられた長屋のオープンセットの奥側右手から、あるいは賭場の衝立の裏から、不意に出現する市の瞬発性。そのまま持続するショットの中で雪崩れ込む殺陣の速度感が見事。雪山の急峻な崖から、屋敷内の小さな段差まで、殺陣には緩急だけでなく高低差のサスペンスも活かされ、多人数掛けから一騎打ちまで、アクションに関しては全く申し分なし。  序盤の山林から、廃村、水田、浜の小屋など、庄内映画村のセットを活かした個々の美術も多彩で、時代劇映画の地勢的制約や窮屈さを感じさせない。(ただ些細ながら、砂浜と農村のロケーションがちぐはぐで位置関係的に無用な混乱を招く。)  また、再会した香取慎吾と工藤夕貴が海を背に語り合うショットや、香取と倍賞千恵子が夜の雪原を背に語り合うミドルショットの対話の間にはいかにも阪本監督独特の味わいがあり、『王手』の日本海のシーンなどを思わせる何ともいえない情感を湛えている。  概して主演アイドルは顔面に心理を大仰に貼り付けすぎるだけに、こうしたシルエットのシーンや、包帯等で顔を隠したショット、引いたショットでのアクション等のほうが逆に強度を以って迫ってくるのだ。
[映画館(邦画)] 8点(2010-06-19 16:35:29)
130.  ボックス!(2010)
寄り・引き、スローを巧みに織り混ぜたケレン味に溢れるファイトシーンの編集リズムからは、作り手の気合が充分に伝わる。  とりわけ決勝戦2ラウンド目の攻防を延々と捉える、クレーンを使った迫真の長廻しは圧巻だ。  市原隼人と諏訪雅志の優れた運動神経とアクションはもちろん、両者の動きのスピード感と重量感を余さず伝える撮影と、荒い呼吸音と呻きを交えた録音も効果抜群である。  高良・市原のトレーニングのモンタージュや上達過程の描写も、基本的なコンビネーションやディフェンスまで丁寧すぎるほど丁寧に描写を重ねており、説得力がある。 それを体現する二人の頑張りも良い。  また、街の情景を取り入れたロードワーク風景では道行くエキストラや犬とも何らかの形で主人公と絡ませるなど細かな拘りがみられ、『どついたるねん』のようにローカルの匂いをしっかり感じさせ素晴らしい。  なるほど、監督は大阪府出身だった。  ただ部内関係の半端なエピソードや子供時代の回想もくどく、この内容で2時間6分は少々長いが、ラストは爽快だ。
[映画館(邦画)] 8点(2010-06-06 14:17:30)
131.  キングスマン: ゴールデン・サークル 《ネタバレ》 
ストーリーの中に、水中に潜る・高所に登るなど舞台の高度差を組み入れてストーリーを構築するところが前作にも通ずる巧さ。 前作のスカイダイビングに相当するのが、今作でのゴンドラの滑落といった具合だろう。 上昇ー下降の動線を踏まえながら物語を作っているのがわかる。  冒頭の潜水や下水管の移動は、中盤の水攻めを通して前作との繋がりも強調する。  蘇生装置のギミックは、種明かしの説明だけでなく、実際に活用するシーンをつくって反復してみせることで より説得力を付与する。これも的確な処理だ。  追跡装置を女性に仕込むのに躊躇う主人公は後ろ手で装置を隠す。 その後ろ手は、クライマックスの宿敵との格闘で今度はフェアに戦う為の所作として昇華される という具合に、様々な反復のテクニックも充実している。勿論、輪投げやゴンドラなどのサークルのモチーフの変奏も。  それとこのシリーズでは、世界の危機なるものが、身体的な疾患の形で具体的に提示されるのもいい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-02-24 16:01:23)
132.  羊の木 《ネタバレ》 
バンドの練習場を覗いていたり、暗闇の中から現れたり、松田龍平はことごとく唐突に登場する。 飛び蹴りや車での轢殺もフレーム外からの突然の闖入であり、そうした神出鬼没ぶりも 彼のキャラクターの特異ぶりを際立たせる。  突然降り出すにわか雨、病院での雨垂れの陰影はいかにも芦澤明子らしい造形だ。
[映画館(邦画)] 7点(2018-02-18 15:40:28)
133.  スリー・ビルボード 《ネタバレ》 
三枚の広告看板を見下ろす高台にあるブランコ。 一方が腰掛け、一方が立って対話することで、画面に高低差が活かされ、共に並んで腰かけることで 二者の距離が縮まり、心が通い合うのを演出できる。 頑ななフランシス・マクドーマンドが、ウディ・ハレルソンやサム・ロックウェルといっとき心を通わすのも この遊具を介してだ。 敵対し、あるいはギクシャクした関係の者たちは斜めに向かい合って座ったり、背中を向け合って座るという関係にある中、 マクドーマンドとサム・ロックウェルが運転席と助手席に並びあって座るラストは苦味を含みつつも後味がいい。  ハードボイルドのヒロインの家の庭先にある二台のブランコという小道具が、彼女のキャラクターや背景について 様々な想像の余地を与えてもくれるのだ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-02-03 23:24:25)
134.  伊藤くん A to E 《ネタバレ》 
木村文乃がそれぞれ正対して聞き取りしていく四人の女性との切り返しショット。 これが、終盤の彼女の「彼女たちは私なのだ」という科白にも絡むのだろう。 長回しを効果的に使い、美術と人物の配置をよく考えながら、時に突き放し、 時にはキャラクターの心の動揺に不安定にシンクロしつつショットを作っている。 ラスト近くの木村と岡田の対話ではその中に陽光を的確に採り入れる芸当なども見せてくれる。 ヒロインの涙の芝居に対しては、そこであえてカメラを引いてくれれば言うこと無しなのだが。  浴槽の中を潤し満たしていく水道の流水音が、彼女の生命力を表すように響き渡る、といった演出もなかなかいい。
[映画館(邦画)] 7点(2018-01-17 22:17:10)
135.  8年越しの花嫁 奇跡の実話 《ネタバレ》 
二人の出会いの夜、飲み会を終え具合の悪い佐藤健は電車へと向い、土屋太鳳は二次会に付き合うため後景の中へ消える。 が、観る側の期待通り駆け足の音が次第に大きくなり、土屋が再び背後に現れる。  一方で、記憶を取り戻そうと雨の中佐藤のアパートを訪ねる車椅子の土屋のシーンでは、 倒れてもがく彼女のショットに、佐藤の乗るバイクの音が響いてくる。  こうしたオフの音響の活用は、必ず戻ってきてくれる互いの存在感というものを強くアピールせずにはおかない。 佐藤が撮り貯める携帯動画の画面も、語りかける対象が画面上不在であるゆえにエモーションの喚起力を増すのだろう。  八年の経過を点描してゆく木々の芽吹きや開花、落ち葉。 高台や海辺の校庭、橋梁などロケーションも豊かでいい。 北村一輝や中村ゆりらの善良な助演もさりげなく泣かせる。 ありがちなBGM垂れ流しもなく、終始控えめに徹しているのも美点である。
[映画館(邦画)] 7点(2017-12-25 22:58:27)
136.  否定と肯定   《ネタバレ》 
序盤から慌ただしい編集で畳みかける語り口をスピーディととるか、目まぐるしいととるか。 朝靄のかかるアウシュビッツの厳粛なシーンに至って、緩急のバランスが釣り合ってくる。 法廷を中心とする弁論シーンを主体としつつ、ロケーション自体の沈黙の力にも信頼を置いている。 レイチェル・ワイズがトム・ウィルキンソンに詫びるシーンや、生存者である女性と手を重ね合わせるシーンなどの静かな余情もいい。  弁護士らとのチームワークのドラマ、法廷戦術のドラマとのバランス取りも巧く、視線劇もドラマの中にしっかり活かされている。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-12-14 23:43:52)
137.  ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜 《ネタバレ》 
俳優自身が料理を実演するショットと、プロの手さばきと食材の質感を見せるアップショット。 それぞれを適切に組み合わせて違和感の無い調理シーンが出来上がっている。 が、二宮和也の包丁さばきより、綾野剛のチャーハン炒めの方がアクションとして 断然映画映えしてしまっているのが少し悲しい。 体型の問題なのか、姿勢の問題なのか、そもそも二宮は立ち姿が貧相で映画の被写体として まるでサマになっていないようなのだが。  夕陽の満州鉄道を遠望しながら西島ら四人が語り合うショットの、レトロ調の画面の哀切。 燃やされるレシピと、その炎の照り返しを受ける西島の凛とした表情。 その赤く照り返される表情のイメージが、娘から孫へと受け継がれる。  育ての父の遺影を前にカツサンドをほおばる二宮に涙でも流させたら最悪だったが そこでギリギリで踏みとどまったのはさすが。  そしてレシピに添えられたモノクロ写真の数々。癪だが、やはり写真というものには泣かされる。
[映画館(邦画)] 7点(2017-11-05 08:54:27)
138.  猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー) 《ネタバレ》 
地下道の壁面に書かれたApe-ocalypse nowのもじりが仄めかすかの如く、 後半はそれらしきイメージが頻出する。 ヘリ部隊の来襲、独立王国、水平面から浮かび上がる顔のクロースアップ、大佐殺し、、、。 ナイトシーンに青ではなく黒を用いて映し出されるシーザーの苦悩する表情のアップは、 その心の『闇の奥』を映し出すかのようである。 その彼を癒すように、フードの影の中にほのかに照らし出される少女の慈愛の表情が素晴らしい。 梗概上の設定が、サイレント映画的な美しいシーンとして結実した。  ラストで三部作を締めくくるのは美しい黄昏の光なのだろう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-10-16 23:04:22)
139.  エルネスト もう一人のゲバラ 《ネタバレ》 
1959年夏場当時の服装、外務省のオフィスや新聞社の会議室などを再現する仕事が実に丁寧だ。 当時の風俗をこれ見よがしに画面に詰め込むといった風ではなく、 四角い氷の上にやかんを置いて水を冷やしているといった描写が控え目に為されているのがいい。  キューバロケも実際の現場を多く取り入れているのではないか。学生がくつろぐカフェや学内など生活感の滲む ロケーションに、オダギリジョーのナチュラルなスペイン語と慎ましいキャラクターがよく馴染む。  時折その佇まいの背後に風が吹き、木々が揺れる。 地面に横たわり射殺される主人公の眼がカメラを見る。その背後に小さく揺れる焚火の炎。 人物と風土が溶け合うなかに、フレディ前村の人生が浮かび上がってくる。
[映画館(字幕)] 7点(2017-10-14 13:43:39)
140.  アウトレイジ 最終章 《ネタバレ》 
本シリーズの主要キャストでもある車の艶光りが初っ端から画面を彩り、年季の入った男たちの顔貌の凹凸と対照を為す。 真っ暗な車内に滲むように浮かび上がるビートたけしのどこか枯れた風情にはすでに死相が漂うかのようである。 罵りの科白もどことなくトーンダウン気味、動作もミニマルであるのも意識してのものだろうか。  大森南朋・ビートたけしと西田敏行がまみえる屋上駐車場の、海を遠望する俯瞰ショットなど、 一見ありふれていそうだが異質な世界観とスペクタクルを感じさせるロケーションが眼を引く。
[映画館(邦画)] 7点(2017-10-07 21:55:02)
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