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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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121.  灰とダイヤモンド 《ネタバレ》 
第二次世界大戦での連合国戦勝日である1945年5月8日の出来事。NYやロンドンでは大群衆が繰り出してのお祭り騒ぎだったのに、このポーランドでの異様なまでの冷静さと静けさはいったい何なんだろう。まだ正式に共産主義政権が成立したわけではないが、人々が自分たちの国の運命になんの希望も持てなくなっているのが痛々しい。 刹那的に生きてきたマチェクが、恋に落ちて未来を考えようとした途端に悲惨な死を迎えることになるのはなんという皮肉なことか。廃墟の教会でマチェクとクリスチナが教会で話すシーン、カメラの前景にアンチ・クライストの象徴でもある逆さまになった十字架のキリスト像を映すことで、もうポーランドには神はいないんだというA・ワイダの叫びが聞こえる様な気がします。 厳しい検閲制度があった当時ですから、いろいろと意味深なメタファーが散りばめられているけど、そこには詩的なセンスを感じさせられるシーンが多々あります。夜が明けて朝日が室内に差し込んできますが、そのあまりに白っぽい光線は屋外の風景をまったく見えなくしています。ラスト・ダンスを終えてその光の中に入ってゆくカップルたちの虚ろな表情、これぞ戦後のポーランドがたどった歴史のカリカチュアです。 Z・チブルスキー、若死にしちゃったけれど素晴らしい俳優でまさにポーランドのJ・ディーンです。それにしても、J・ディーンをはじめJ・P・ベルモンドや石原裕次郎などこの当時各国にチブルスキーと同じ様なタイプのスターがいたというのは面白いですね。ベルモンド以外はみんな早死にしちゃいましたけど。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-05-04 22:23:37)
122.  貞操の嵐 《ネタバレ》 
上場企業の跡取り息子が数年フランスで遊んで社長になるため帰国しました。彼には航空エンジニアの弟(高島忠夫)がいまして、兄の外遊中に婚約していました。空港に出迎えに来ていたその婚約者(高倉みゆき)を一目見て兄はその娘に欲情してしまいます。腹に一物ある叔父に相談すると、「順序からいえば長男の君が優先されなきゃおかしい、私が手助けしましょう」とまるで封建時代の様なセリフです。彼女は薬を飲まされて兄に手篭めにされ、それを知った父親は心臓発作を起こして憤死、母親は発狂してしまいます。自殺しようとする彼女に兄がうそぶくセリフがまた凄い、「君が弟と結婚したらいずれ弟は穢れた君のことで苦しむことになる、自分だけ幸福になればよいのか、僕と結婚するのが人として正しい道だ」 原作は大衆小説作家である牧逸馬(林不忘というペンネームもあり、『丹下左膳』の原作者)が書いた昭和初期の新聞連載小説だそうです。時代を昭和30年代として脚色しているので原作がどれだけ改変されているのか不明ですが、それにしても新東宝テイストが濃厚で理不尽なストーリー展開です。まあこういういい加減なところが(もしそういう人がいるならば)新東宝ファンにはたまらない魅力なんです。いい加減と言えば、劇中高島忠夫は違う女性と婚約(この映画のカップルはなぜか婚約するのが好きです)するんですけど、これじゃ高倉みゆきとラストで結ばれるはずなのにどうするんだろうと気になっていました。でもちゃんとハッピー・エンドで終わりますが、まさかあんな手を使うんなんて… もし映画館で観てたら、わたし間違いなく“カネ返せ”と暴れます(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2013-04-13 22:46:39)
123.  日本誕生 《ネタバレ》 
“東宝製作1000本記念映画”と言われていますが、当時の映画界の状況からすると記録的な大当たりとなった新東宝の『明治天皇と日露大戦争』を意識して製作されたんだろうと想像できます。“不偏不党”がモットーの東宝だけに、外野からケチをつけられにくい古事記と神話の世界を題材に選んだというところでしょうか。でもそこは天下の大東宝、巨匠稲垣浩を監督に据え他社のスターも呼び込んだ一大オールスター・キャストになっています。そのおかげで三船敏郎と鶴田浩二の滅多に見られないチャンバラ対決や、天照大神に扮した原節子の小津映画では決して見せない凛々しい姿などを観られてなんか得した気分になれます。 『日本誕生』というので天地創造から神武天皇あたりまでの映像化かと思っていましたが、実際には日本武尊を主人公に据えて神話シークエンスは劇中劇で見せるという脚本構成です。三船敏郎が日本武尊と須佐之男命の二役を演じて大活躍ですが、服が違うだけでどっちも同じ演技というのはまあご愛敬でしょう。古事記の記述とは違い日本武尊は大伴一族の軍勢に騙し討ちにされて壮烈な最期を遂げるのですが、それが火山噴火の天変地異が起きて大伴の軍勢を滅ぼす壮絶なラストに繋がるのです。このスペクタクルは円谷特撮の独壇場で、特に地割れのシーンは地面をスライドさせる仕掛けを造って実際に俳優たちが呑みこまれるという凄い映像で、ほんと驚かされました。 二部構成で正直後半はだれ気味なんですけど、やっぱ前半第一部の方に見どころが多かったと思います。とくに“岩戸隠れ”で乙羽信子(天宇受女命)が奇天烈な踊りを見せるシーンには強烈なインパクトがあります。八百万の神々も、エノケンや金語楼といった当時の第一線のコメディアンや横綱朝潮まで揃えていて実に豪華。こうやって見ると、日本の神話もギリシャ神話に劣らず豊潤なんですね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-03-23 21:50:44)
124.  毒婦高橋お伝
高橋お伝と言えば、最後に斬首で処刑された女囚として歴史に名を残している人物で、その犯罪を脚色した芝居が明治時代に大ヒットしたという、いかにも新東宝にはピッタリの題材です。でもそこは巨匠中川信夫が自身のミューズである若杉嘉津子を起用しているだけあって、詩情あふれる映像で丁寧に撮っています。明治の街並みを再現したセットが新東宝映画とは思えない様な出来栄えなのも見逃せないところでしょう。脚本は所詮講談の焼き直しの様なもので、実在のお伝の毒婦と呼ばれる様になった悪行はかなり薄められているのは不満なところ。でも若杉嘉津子のため息が出る様な奇跡の美貌には、ただただ見惚れるばかりでした。そういや、怪談ものでは話の半分は醜く崩れた顔になっちゃうので、若杉嘉津子と言う女優を堪能するのには本作がベストなのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-03-02 21:57:52)
125.  女吸血鬼 《ネタバレ》 
吸血鬼+狼男+天草四郎伝説のごった煮を作ったらこんなのが出来ちゃいました!ってな感じでしょうか。ちなみに本作は、『女(の血しか吸わない)吸血鬼』が正しい題名でした。話の掴みはけっこうホラーらしい雰囲気なんです。失踪した妻が20年ぶりに帰ってきたら、タイムスリップしてきたみたいにそのまんまの容姿だったなんて話だけ聞けば面白そうでしょ。でもほとんどギャグとしか見えない娘たちの反応で、後はもう訳が判らない新東宝ワールドの御開帳というわけです。 天地茂の吸血鬼もちょっとイイ感じだなと思っていたら、突然狼男みたいに月の光を浴びて変身(顔だけ)しちゃうのでただ唖然でした。最後に監督が中川信夫だと知ってまたびっくり、彼もよっぽど体調悪かったのでしょうね(単にやる気がなかっただけかも)。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2013-01-19 22:51:14)(良:1票)
126.  明治天皇と日露大戦争 《ネタバレ》 
左翼全盛の50年代に、こんな映画が観客動員記録を塗り替える大ヒットしたというのが面白い。インテリは決して観に来ないだろけど庶民には受けるだろうと見抜いて、新東宝始まって以来の製作費を投入した大蔵貢の炯眼は大したものです。さすが活動弁士から成り上がってきただけのことはある。アラカンの明治天皇は、きっと実物もこうだったろうなという説得力が抜群です。場面ごとに挿入される明治天皇御製もなかなか効果的でした。まあ映画自体は相変わらず新東宝テイストの紙芝居調で、史実もかなり脚色された部分が目立ちます。乃木将軍の息子保典が白襷隊の一員として戦死するなんて、ちょっとやり過ぎの感があります。でもこの203高地攻防戦はけっこう力が入った撮り方をしていて、後年の『日本海大海戦』なんかよりよっぽど迫力があります。野砲を撃つと反動で砲が後退するのをちゃんと再現しているなんて、芸が細かい。 邦画では、戦争が絡む歴史ものだと末端の兵士や庶民の目線で描かれることが多いのですが、こういう“上から目線”で撮られた映画というのは、不思議と新鮮な感じがしました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-01-09 09:14:08)
127.  怪談累が渕(1957) 《ネタバレ》 
脚本やプロットがちょっと狂っているケースが多い新東宝のプログラム・ピクチャーですが、怪談噺は古典が原作なので秀逸な作品が多いのです。この映画は圓朝の『真景累ヶ淵』の前半部を脚色した中川信夫の初怪談映画です。深見新左衛門に斬り殺されたあん摩宗悦の娘お累が、知らずに新左衛門の息子新吉と恋仲になります。お累は三味線のばちが当たって出来た傷が化膿して顔半分がふた目と見られない醜い姿になってしまいます。これは仇の息子と出来ちゃった娘に宗悦の怨霊が呪いをかけたと解釈してよいかと思います(なるほど、罰が当たったというわけですね、落語らしい駄洒落です)。このお累の顔のメイクがなかなか凄くて、楳図かずおの怪奇漫画に出てくるような感じです。お累はばあやから新吉の素性を知らされたうえに傷が悪化して悶死してしまうのですが、新吉は最後まで自分の親が何をしたかも知らずに物語が終わってしまうのがミソなんです。この新吉という男が絵に書いたような色男で、奉公先のお久というお嬢様からもモーションをかけられてお累を見捨ててしまいます。この噺は大村陣十郎という悪徳浪人はいますが、お累・新吉・お久の三人は特に悪いことをしたわけではないのに、三角関係のもつれからみんな死んじゃうところが哀れを誘います。お累がお久への嫉妬に苦しむさまや優柔不断な新吉のだらしなさ、怪談噺の枠を超えてドロドロした愛欲劇として観ても面白いです。新東宝ピカイチの怪談女優である若杉嘉津子の妖しいまでの美しさをご堪能ください。
[DVD(邦画)] 7点(2012-12-06 20:57:11)
128.  美女と液体人間 《ネタバレ》 
最近、新東宝のプログラム・ピクチャーに嵌まっていたので久しぶりにこの映画を観ましたが、同時期の新東宝の映画と比べるともう超大作という感じでした(笑)。東宝特撮映画にしては珍しくタイトルに“美女”なんて単語を使っているところなぞ、それでも多少は新東宝の路線を意識していたのかな(新東宝なら間違いなく『裸女と液体人間』でしょうな) 人間が水爆実験の死の灰を浴びて液体生物に成り果てるなんて現代では大クレームが殺到すること間違いなしですが、その後ハマープロなど海外でも使われたことでも判るように、けっこうセンス・オブ・ワンダーに満ちたプロットだと思います。だけど、液体人間が何でギャングたちの周辺に出没する必然性が意味不明。ここら辺をよく整理した脚本だったらもっと良い作品になったことでしょう。 “美女”こと白川由美、彼女こそ東宝特撮映画のクイーンなのかもしれないと見直しました、それぐらい彼女は光り輝いていましたね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2012-10-14 23:22:11)(良:1票)
129.  ならず者部隊 《ネタバレ》 
50年代はハリウッド製戦争映画の不作の年代で、本作もその中の一本。南部の大農園主であるR・ワグナーが徴兵されて(たぶん)フィリピン戦線に派兵され、農園の小作人たちと同じ部隊で苦労しながら人間性に目覚めてゆく、というのが大まかなストーリーです。アメリカは州兵単位で師団を編成するので、同郷の地主と小作人が同じ部隊で肩を並べて戦うというのはまああり得る話でしょう。軍隊はどこの国でも階級が同じならみな平等というのは大原則ですが、アメリカ南部のように貴族的な風習が残っているとちょっと面白いことになる場合もあるわけです。映画としては良くあるパターンなんですけど、それを戦争映画にしたところがユニークと言えなくもない。 この映画の唯一の見どころは、実はワグナーの上官であるB・クロフォードのキャラ設定なんです。異常に臆病で自分に対して敬礼をさせない(自分が指揮官であることがばれると狙われるから)。常に二人の美青年兵士に警護させていて、彼らとホモセクシュアル関係にあることが暗示されている。この二人だけは上半身裸で、実に変な雰囲気なんです。そんなクロフォードも解任されてしまいますが、そのとたんにきちんと階級章をつけた軍服とヘルメットを着用してジープに乗りこみ、あっという間に狙撃兵に撃たれて死んでしまいます。まるで覚悟の自殺みたいな最期で、名優らしい存在感がありました。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2012-09-29 23:32:16)
130.  絶海の裸女 《ネタバレ》 
フィリピンから日本へ向かう船が戦時中に設置された機雷に触雷して轟沈、ボクサー二人に流行歌手とマネージャーおよびその付き人二名、この男女6人が無人島に漂着する。まあ新東宝版の『LOST』みたいなもんです。歌手はボクサーと恋仲だったけどマネージャーに手篭めにされもう一人のボクサーにも犯され、そうなるともう怖いものなしという心境で無人島の女王みたいになってゆく。邪魔になった元恋人ボクサーはマネージャーに右手を岩で潰され、定期船に発見されるも彼だけは島に置き去りにされてしまいます。そしてここからが新東宝お得意の電気紙芝居の始まりで、洞窟に隠された旧日本軍の財宝を発見するのです。と聞けば、そうあの『女真珠王の復讐』の男性版にして同じプロットの使いまわしだったというわけです。この悪役マネージャーは新東宝一の怪優である沼田曜一が演じているのですが、中川信夫の『地獄』で観る者を震え上がらせた怪演には遠く及ばない凡庸な演技でした。歌手は久保菜穂子なんですが、“裸女”のはずが水着姿すら見せません、完全な題名詐欺状態です。でも彼女、前田美波里に似た顔つきがけっこう良くて気に入りました。この人女任侠もの映画で初めてヒロインを演じた、藤純子への道を拓いた偉大な(?)功績の持ち主なんだそうです。 後半は財宝をせしめて大富豪となったボクサーが日本に舞い戻って自分を置き去りにしてきた三人に復讐するわけですが、ほんとに安っぽい紙芝居みたいなもんですから、何も語ることはありません。 それにしても新東宝、現代ならば誇大広告で消費者庁あたりから手入れを喰らうんじゃないでしょうか(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2012-09-25 20:55:13)
131.  海女の戦慄 《ネタバレ》 
伝説のグラマー女優、前田通子です。顔はわりと地味ですが、とても昭和30年代の女性とは思えないナイスバディは評判通りでした。「海女の慕情」なんて題名の主題歌まで披露してくれるのですが、これがけっこう上手いんですよ。そういや、海女の衣装が彼女だけビキニというのがなんか変ですけど… そしてまたまた出ました三ツ矢歌子、露出シーンは彼女の方が明らかに多いぐらいです。 内容はまあとくに語るようなものはありませんが、酒場がまるで西部劇に良くあるサルーンみたいだったりして日活の無国籍アクション風に撮ろうとした努力の跡は認めてあげましょう。だけど船員に変装した海保の捜査官が現れると、もうここら辺で観るのを止めようかという気分になりました。彼だけが白塗りの時代劇風のメイクで、アクション(らしきもの)もチャンバラ映画のヘタな立ち回りみたいなんですもの。 まあ元は二本立て・三本立て興行のためのプログラム・ピクチャーですから、怒っちゃ大人げがないのでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2012-09-23 22:19:15)
132.  潜水艦ろ号 未だ浮上せず 《ネタバレ》 
あの大蔵貢が社長になる前は、『戦艦大和』を観れば判るように、新東宝の戦争映画には独特の暗さと厭世感に満ちていました。潜水艦の戦いを描いたこの映画も、ヒーローとして活躍するような登場人物は一人もおらず、艦長以下乗組員はみな家庭や恋人に後ろ髪をひかれる様な思いを残して出撃して、淡々と散ってゆくのです。 随所に潜水艦内の実写映像を使用しているのがモノクロ本編に良くマッチしています。ただ艦内のセットは低予算の悲しさであまりに大雑把過ぎて実感を損ねています。旧海軍の潜水艦はUボートに比べて大型だったにしても、潜水艦内の閉塞感がまるで表現されてないのは残念なところです。もっと致命的なのは戦闘シーンにおけるミニチュア・ワークにまるでスケール感がないところで、安物の潜水艦プラモデルをマブチ水中モーターで走らせている様な映像は、もう自主映画レベルです。同じ年に東宝では『ゴジラ』が製作されていることを考えると、もうちょっと何とかならなかったんでしょうか。
[DVD(邦画)] 4点(2012-09-22 22:29:40)
133.  人喰海女 《ネタバレ》 
邦画にはかつて“海女映画”というジャンルがありました。といっても、このジャンルの作品を製作したのは新東宝という映画会社だけで、その生みの親こそ社長で“和製ロジャー・コーマン”“エクスプロイテーション映画の天皇”として歴史に名を残す大蔵貢です。もっとも、キャリアから言うとコーマンを“ハリウッドの大蔵貢”と呼んだ方が正しいのかも。ピンク映画すら存在しなかった時代に、いかに女体を売り物にするかと彼が知恵を絞って生まれたジャンルなのです(S・ローレンの『島の女』をパクっただけなのかもしれませんが)。 というわけで本作のご紹介となるわけですが、はっきり言って他愛のないストーリーなぞどうでも良い。三原葉子の演じるファム・ファタールが宇津井健を翻弄し、丹波哲郎には弱みを握られて操られるも、最後には良心に目覚めて死んでゆく。宇津井健は大半の登場シーンが海パン姿というのが良く考えると笑えてくるし、海女たちがみんなグラマラスな若い娘ばかりというのもあまりにも強引です。ちゃんと海中撮影をしているのですが、泳ぐ海女を捉えるショットがあまりに露骨なアングルなので爆笑でした。狂言まわし的な役柄ながら、殿山泰司がコロンボみたいな刑事でちょっと光っていました。あと監督の実弟である平田昭彦がほんの1シーンですが友情(?)出演しています。そして特筆すべきは三ツ矢歌子で、わたしらの世代にはホームドラマのお母ちゃんというイメージが強いけど、若いころは露出演技に体を張ってたんですね(まあ新東宝所属じゃしょうがなかったかも)。 それにしても『人喰海女』とはあまりに題名が大げさ、こういうところがいかにも大蔵貢らしいエクスプロイテーションです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2012-09-19 20:24:21)
134.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
“怪しいセールス・マン”はやっぱり悪い奴だった、というオチがどーも昔から気に喰わないのです。実は新婚カップルの方がずっと深刻で、あの部屋で恐ろしいことが起こっていたという展開にした方がずっと面白いのにと観るたびに感じるんです。ヒッチコック先生もでかいセットを作ってもらえたので、ちょっとカメラの技巧に凝り過ぎちゃったのかな。 この時のグレース・ケリーは、その美しさと優雅さは間違いなく頂点に達していたと断言しちゃいます。やっぱグレース・ケリーとジェームズ・スチュアートのカップリングは最高です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-06-30 00:10:08)(良:2票)
135.  暁の追跡 《ネタバレ》 
先ほど亡くなられた新藤兼人が脚本を書き市川昆が監督した警察もの映画です。新人警察官の池辺良(そういやこの方も先日鬼籍に入られましたね)が、新橋駅前の交番勤務をしながら、警察という組織になじめない自分に折り合いをつけつつ犯罪と対決すると言うストーリーです。ドキュメンタリー的な語り口を交えた撮り方は明らかにジュールス・ダッシンの『裸の街』の影響が感じられます。実際の新橋駅前交番にカメラを据えて撮ったところなどは当時としては斬新だったと思います。この交番、てっきり低予算ででっち上げたヘタなセットだと思いました、それぐらい汚くてボロボロなんです。思えば当時はまだ昭和25年、日本はまだ進駐軍に占領されていてマッカーサーが東京にいた時代なんですよね、復興途上だった日本の貧しさが垣間見えます。新藤兼人の脚本は丁寧に書き込まれていて、池辺良は勤務の合間に転職活動に必死だし同僚警官たちもキャラが良く描かれています。その中で光っているのは拳銃を暴発させてしまってクビになる伊藤雄之助で、ほんと若いころから味がある演技ができた人です。 随所に市川昆らしい才気あふれるカットが観られるなかなかの佳作です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-06-28 21:19:07)
136.  ハーヴェイ 《ネタバレ》 
観る前は、てっきりハート・ウォーミングなコメディだと思っていましたが、かなりシュールなところもあり、一歩間違うとサイキック・ホラーじゃないですかこの映画は。ふつうに考えるとハーヴェイが見えるジェームズ・スチュアートは立派なキ○ガイ、むかしで言うところの精神分裂病なんでしょうけど、実はお姉さんにも見えていたと言うのがミソ。終いには精神病院の院長までもハーヴェイが見えるようになるところは、ちょっと不気味です。またハーヴェイが妖精の様なものだという説明はありますが、とくに可愛らしいことをするわけでもなく、ジェームズ・スチュアートにくっついているだけというのも変です。 本質的には大層ヘンな話しなのに、ファンタジーみたいな演出にしたのは監督のヘンリー・コスターも確信犯なのだろうか。 この作品が持つダークな本質を21世紀に甦らせたのが『ドニー・ダーコ』なんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-06-02 23:15:59)
137.  地球最後の日 《ネタバレ》 
今回再見して強く感じたのは、恐ろしく宗教色が強いなあ、ということ。良く見ると、製作総指揮がセシル・B・デミルじゃありませんか、そりゃ聖書じみたお話しになるのは当然ですね。地球から運び出す文献をマイクロフィルムに写すのはいいんだけど、まず新約聖書から始めると言うのは笑ってしまいました。誰が観たって“ノアの箱舟”をSFに仕立てただけとしか言いようがなく、肝心の地球崩壊のスペクタクルよりも脱出ロケットに誰を乗せるかを“選ぶ”ことの方がメインになってしまうのはちょっとねえ… だいたい、あんなでかいロケットに40人しか人間が乗れないなんておかしいじゃないか、動物なんか積むんだったらその分人を乗せろよ。そして何よりこの映画の凄いところは、脱出プロジェクトには政府も国連も関わってなく、たった三人の大富豪が資金を出しているだけということ、つまり完全な民間プロジェクトなんですよ。そりゃ、誰を乗せるかなんて俺たちの自由だ、と言えるわけです。でもその40人が、若いのはしょうがないとしても、白人だけで有色人種はひとりもいないというのはあんまりです。 そう考えると、同じ滅亡ものでも『妖星ゴラス』の“地球の方を移動させて全人類を救う”という大乗的な思想は偉大だなと思います。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2012-02-16 23:33:11)
138.  お熱いのがお好き
こんな有名な作品に対して、今さらいったい何を言えばよいんでしょう。 それでも一言、「完璧な人間はいないけど、これぞまさしく完璧なコメディ映画だ!」
[CS・衛星(字幕)] 10点(2012-01-23 22:58:38)
139.  ベリッシマ 《ネタバレ》 
まあ~とにかく、アンナ・マニャーニのマシンガン(というよりも、もうそれはガトリング砲のレベル)をぶっ放している様なトークの凄まじさ、この女は喋ることで呼吸を続けてるんじゃないかと思わせるほどです。マナーは悪いは、娘のことになると人を押しのけるわ平気で割り込むは、我が国が誇るナニワのおばちゃんたちが束になっても到底かないません。ヴィスコンティも、本作では彼女に関しては何も演出してなかったんじゃないでしょうか。イタリアン・リアリズモで人情喜劇を撮ると言うヴィスコンティにしては珍しいジャンルですが、彼が脂の乗った時期ですから画造り・ドラマ展開ともに超絶的な技巧を見せてくれます。始めのうちは幼児虐待で警察に通報したくなるほどの狂乱ぶりを見せるアンナ・マニャーニですが、ラストで見せる母親としての高貴な決意は立派な名演でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-01-22 23:32:55)
140.  翼に賭ける命 《ネタバレ》 
まずこの時期のダグラス・サーク作品にしてはモノクロなのがなぜか不思議。題材からモノクロがふさわしいというわけではもちろんなく、単純にバジェットの問題なのだろうか。サーク映画の美しいカラー映像をこよなく愛する者としてはとても残念です。フォークナーという作家は『意識の流れ』を重視したジョイスみたいなタイプだと思っていましたが、こんなメロドラマの題材になる様な小説を書いていたとは知りませんでした。二人の男とひとりの女が生活を共にしていて、女が生んだ子供の父親がどちらなのか本当は良く判らないって、けっこう凄いシチュエーションじゃないでしょうか。おまけにどっちの男が結婚するかをサイコロを振って決めるんですから、いやはや何と言って良いのやら。こんなお話しをメロドラマにしちゃうんですから、そこはサークの真骨頂と言えるでしょう。撮影所の方針でメロドラマを撮りまくりましたが、舞台演出家からキャリアを始めたサークは文学にも造詣が深い教養人で、本当はメロドラマを撮るのは不本意だったそうです。本作もプロデューサーが介入しなければもっと違った文芸ドラマになってたかもしれません。まあ私とすれば、ゴージャスなドロシー・マローンを堪能できたのでそこそこ満足できましたが。スカートの中を丸見えにしてパラシュート降下を見せてくれるシーンには、思わず眼が釘付けでした(まさにプロデューサーの思うつぼにはまったわけです)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-06-04 01:38:18)
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