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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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141.  エル ELLE 《ネタバレ》 
イザベル・ユペール繋がりで、シャブロルの『甘い罠』のサスペンスの味わいを思い出したり、 同名タイトル繋がりで、ブニュエルの脚に対するフェティシズムを連想したり。 特に夏休み明けだけに、非心理的表情と奇矯的言動のアンチ・ハリウッドぶりは心地よくすらある。 その真意を容易には読ませないユペールの表情に終始引き込まれる。  門、窓、ドア、鏡が頻繁に活用されるが、特に窓外を背景にしたリビングのショットは風や鳥、猫や侵入者が次々と 現れ静かなサスペンスで張りつめさせる。  この窓のあり方も実にシャブロル的だ。
[映画館(字幕)] 7点(2017-09-05 23:19:38)
142.  ワンダーウーマン 《ネタバレ》 
色彩鮮やかなの島の描写が少し長いかなと思いつつ、曇天と煤煙のロンドンパート、さらにモノトーン気味の前線へと舞台が移るにつれて、 その対比がより際立つ仕組みであることに気付く。 複葉機と共に海中に沈んでいくクリス・パインを救う出会いのシーンと、 ラストで夜空に上昇していく彼を追うことが出来ない別れのシーンも対となるだろう。 格子に囲まれた牢獄に見立てたクライマックスの航空管制塔など、美術もよく使いこなしている。  当初、クリス・パインが実験室からノートをあっさりと盗むシーンでのサスペンス演出の無さに拍子抜けしたのだが、 後々これらの屈託のなさが本作の美点であると実感されてくる。  清々しいほど場当たり的に、後先考えず、その場その時の信念に忠実な行動原理のキャラクター達。  塹壕から出て、駆け引き抜きで堂々と歩を進めるガル・ガドットの雄姿はそれゆえに美しい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-08-31 23:52:13)
143.  ハクソー・リッジ 《ネタバレ》 
冒頭の戦場シーンから一六年前に遡り、そこから十五年後に話が戻る。 デズモンド・ドス氏の信念を裏付ける描写として、父親が参戦した第一次世界大戦のトラウマであるとか幼少期の体験も 語られる必要があるということで、そうした話法がとられたのだろう。 後々、説明的に挟まれるフラッシュバックと共に少々まどろこしくはあるが、前大戦の記憶をダブらせるという意味での時制往還かも知れない。  パンフレットによればドロシー夫人との出会いは実際は教会だったらしいが、病院での出会いへと脚色されたことで、 テリーサ・パーマーの白衣の美しさが際立ったのは勿論、注射針を刺す行為が後々までのモチーフともなる。 同書で相田冬二氏の書くレンガとベルトのモチーフに留まらず、岩山デートやジャクソン基地での登攀訓練、もやい結びのエピソードなども クライマックスで多重の意味をもたらすだろう。  二人の出会いのシーンでさりげなく仄めかされる野鳥のエピソードも、ラストで崖から宙を渡る主人公へと引き継がれ帰決する、と。  アンドリュー・ガーフィールドの発する「one more, one more」の響きが強く印象に残る。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-06-25 22:33:25)
144.  メッセージ 《ネタバレ》 
暗い天井から窓の矩形へ。冒頭とラストで釣り合わさるショットだが、この矩形は異星人と接触する舞台の疑似スクリーンとも酷似する。 勿論、各国との交流の場となるモニター群とも。 その窓外の湖畔や窓際のベッドの情景は、娘との思い出の場所としても通じ合っている。  その明るい矩形の中で、円形を象るコミュニケーションが為される。 本来ならそれらのモチーフが、大きな物語と小さな物語をパラレルに関連づけるべきだろう。  であれば、もう少しその視覚的な押韻効果とでもいうべきものを突き詰めて欲しいところでもある。  前作ではその浅いフォーカスが後景を効果的に引き立たせたが、本作ではヒロインの心理を中心化しすぎたようである。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-06-11 21:19:44)
145.  LOGAN ローガン 《ネタバレ》 
西部劇的意匠の数々に加えて、横長画面をフルに使って収められる横臥する人・体中の傷跡・しゃがれ気味の声音。というわけで、普通にイーストウッドをダブらせてしまうわけである。建屋に侵入してくる男たちを映す監視カメラを横目で見やりながらテーブルで黙々と食を進める少女の姿も、 もろにイーストウッドの風格だ。  ロード・ムービー的には前半もう少し景観を捉えるロングショットが欲しいところだが、後半の山岳地帯でよく挽回したと思う。 地面が撮れていないのは相変わらずなのだが。  馬の暴走や、髭カットなどの細部はいい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-06-04 22:55:04)
146.  マンチェスター・バイ・ザ・シー 《ネタバレ》 
終盤で語り合うケイシー・アフレックとミシェル・ウィリアムズのツーショット。和解のムードだが、 二人の背景にあるのは、両者を縦に隔てる壁と空のラインであり、安易なハッピー/バッドエンド作劇を良しとはしない。  ボールをやり取りしながら坂道を歩く義理の父子の、引きのショット。あるいは釣り糸を垂れる二つの寡黙な背中のほどよい距離感が絶妙だ。 胸に沁みるラストになっている。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-05-15 23:59:35)
147.  カフェ・ソサエティ 《ネタバレ》 
撮影がヴィットリオ・ストラーロ。 停電した部屋の中で、蝋燭の灯りに照らされるクリステン・スチュアートとジェシー・アイゼンバーグのツーショットなど真骨頂である。  伯父を選ぶ彼女の表情と台詞から一転、マンハッタンブリッジの夕景へとディゾルブされる場面転換の鮮やかさ。 それが橋のショットであるのは、単なるランドマークの提示以上の意味があるだろう。  同じく、それぞれの場所でふともの思いにふける元恋人たちを緩やかに溶け合わせるラストのオーヴァーラップの情感も素晴らしい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-05-08 12:23:53)
148.  LION/ライオン 〜25年目のただいま〜 《ネタバレ》 
見知らぬ駅のホームに降り、混雑する大人たちの隙間に紛れ、その間を縫って進む主人公の少年。 少年の身長に合わせたカメラと喧噪が、異世界に戸惑う彼の心細く不安な心情を表している。  カルカッタ駅から路上生活者が屯する街路へ、そして橋、河へ。 ロケーションを活かした街の猥雑な雰囲気は、主人公の暮らしていた村の素朴な風情ともよく対比され、 冒頭とラストの自然光にあふれた故郷のノスタルジックな情景を引き立てる。  故郷を再訪した主人公を、地元の男性が黙って案内する。通りの向うから現れる女性たち。  再会した実母と妹の奥ゆかしい表情が涙を誘う。そして抱き合う彼らを周囲の人々が笑顔で祝福するシーンもただただ美しい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-04-12 20:49:47)
149.  ムーンライト 《ネタバレ》 
巻頭で波音が響いてきたかと思う間もなく、カーステレオからの音楽がそれに被さる。それはいいとして、 ラスト近くの二人のツーショットでも波音が静かに二人を包んで響いているところに、劇伴を重ねてしまう。 ダイナーでジュークボックスの曲を台詞の代弁として使っているのも直截すぎてかなり野暮ったい。  そこは作品のスタイルからして、二人が共有するメロディの慎ましい追憶であるべきではなかろうか。  随所にブルーを配置した色彩の設計は終始一貫していて統一感がある。 再会した二人の夜、湯を沸かすためのガスコンロが点火され、青い炎がふっと燃え上がる。そのような細部にも色彩が活かされている。  廃屋の窓を開けてくれたマハーシャラ・アリ。レゲエ男への復讐の意を決して自らドアを開け放ちつつ突き進む主人公。 そして彼を受け入れるガラス張りのダイナー、そのドアの呼び鈴のアクセントと、ドアのモチーフも充実である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-04-07 01:20:05)
150.  ドント・ブリーズ 《ネタバレ》 
夜の一軒家を主な舞台とすることで、屋内の構造も全面的に披露される訳ではない。 いずれのショットも黒い闇の領域が大きくとられ、それが複数にカラーリングされた限定的な照明効果と共に追うものと追われる者の関係を 立体的に浮かび上がらせる。 闇の中にスポット的に当てられるライティングは次第に傷を負い消耗していく若者らの表情の痛々しさをより強調し、 しかるべき伏線となる小道具に対し要所要所で効率的に視線を誘導する。  天窓に入った亀裂が小さく音をたてていく、硬質な物質感と音のサスペンス。 引きのショットで二つのシルエットが組んづ解れつ格闘する様も、人間を素手で連打する打擲音の地味な生々しさと共に真に迫る。  二転三転と考えられた後半のサスペンス釣瓶打ちもいい。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-04-04 14:34:16)
151.  PとJK 《ネタバレ》 
上り坂気味の歩道を駆け上がってくるヒロインをカメラが追っていくと、小高い斜面を背景にした路面電車の乗降口があり、ドンピシャのタイミングで 電車がやってくる。 ラストで『Marry You』が流れるなかミニパトが走り去っていくクレーンショットも同様で、 路面電車の発車に合わせたタイミングから逆算して俳優らがディレクティングされているのは間違いない。 特にそのラストは学園廊下から校門前までの長回しミュージカルシーンを通じての逆算と車止めだから相当入念な準備とリハーサルがされたはずであり、 現在の映画はこうした部分に対してもっと評価を得るべきだろう。  バットやナイフを振り回す危険なアクションシーンも含めてだが、極力引きのショットで撮られていることで、街の景観、特に坂道などもよく活きている。 下校する土屋太鳳と高杉真宙が握手する下校道の、並木がざわざわとなるロングショットの風情。 学園祭の体育館にカメラが入ると一気にクレーンアップしてブラスバンド部の見事な演奏と立体的なパフォーマンスの壮観を映し出す外連。 (学園祭の風景は『ストロボエッジ』ともかぶる。) 函館の夜空に舞い上がるスカイランタンの灯りの美しさ。  そして窓ガラスの用法が実に的確だ。それが原作由来なのかどうかは知らないが、その用法は正しく映画的である。 特に二人が微妙にすれ違うシーンに効果的に現れる。窓外からのショットで、画面中央は縦の窓枠で分割されている。 その右手に土屋。左手側に亀梨和也がフレームインしてくる。土屋側には割れた窓ガラスを土屋が補修した跡。 二人が仲直りするとともにカメラが緩やかに右手に移動して二人を一つの窓枠内に収めていくという趣向だ。 あるいは、校庭外に止められた亀梨の白い車の前席部。わがかまりを抱えて気まずい二人はドアウィンドウの仕切りの前後に分断されている、という具合。 そして土屋一家のダイニングの広い見晴らし窓は、彼らの度量の広さと開放的な人柄を象徴するだろう。 ラストの礼拝堂は俯瞰ショットの時点でその黄金色のステンドグラスが後により印象的に使われるだろうことが簡単に予想できるが、 果たしてその美しいグラデーションは大団円のツーショットの背景として見事に決まる。 それはもうダグラス・サークばりと云ってもよい。  二人の家族、友人らまでを過不足なく含めてドラマを作っているところも、この手の作品の中では好感が持てる所以だ。
[映画館(邦画)] 7点(2017-03-26 21:09:40)
152.  チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜 《ネタバレ》 
中条あやみが広瀬すずの家を訪問するシーン。広瀬が背後の台所にいる父親のほうに気をとられていた間、中条の視線の対象として壁に施された広瀬自作のスケール、次いで仏壇に掛けられた母親の写真を映し出す。中条は広瀬の陰の努力を理解し、家庭の事情とともにチアダンスに対する思い入れの根拠を知る。 その帰り道、それを補足説明する会話を入れてしまうといった愚を犯さないところが嬉しい。  そこから二人の仲間集めが始まるのだが、ここも簡潔な台詞と笑顔、そしてダンスのシンクロによってエモーションを盛り上げる。 あれもこれものエピソードを端折る意味合いが大きいのだろうが、 背景や心情など、説明の無駄をあまり感じさせない効率的な語りは好感度が高い。(音声主体で示唆される、広瀬が怪我するエピソードや、 メンバーに復帰した彼女が周りの動きに同調出来るようになる動きと仲間たちの応答。)  本番前に円陣を組んでの、中条と広瀬の間で交わされる会話のやり取り。そのシチュエーションの反復描写がもたらすのはユーモアだけでなく、 チームの結束と成長の有効な提示だ。フクイをアピールしすぎの気もするが、「ほやほや」などの方言の愛らしさは映画をより一層魅力的にしている。  終盤ではそつなく天海祐希の視点とドラマをインサートし、天海の台詞を広瀬に反復させることで教育と継承のドラマとしてもまとまっている。 ひとつのフレーズを他者が反復することで豊かな関係性を生起させている。
[映画館(邦画)] 7点(2017-03-11 21:40:41)
153.  モアナと伝説の海 《ネタバレ》 
青い海を滑る帆引き船の疾走感と速度感が素晴らしい。その帆や舵を重心移動や身体の転回によって操る操縦感覚がいい。 水平運動が主となるが、山への登頂や深海への潜水など、空間の縦横無尽の使いこなしもアニメーションならではの醍醐味だ。  透明感のある水のダイナミックなアニメーションと、入れ墨の図柄を動かす素朴風アニメーションの味わいとのバランスも良好。 いわゆる南洋のイメージ溢れる色彩のバリエーションも実に豊かだ。  宮崎オマージュと思しき細部もふんだんに見受けられるが、とするとラストの仕掛けは『ガリバーの宇宙旅行』あたりを参照しているかもしれない。
[映画館(吹替)] 7点(2017-03-10 22:06:34)
154.  ハルチカ 《ネタバレ》 
序盤はあまり乗れないのだが、メンバー間の不協和音が現れてくる中盤のロングテイクあたりからぐんぐんと良くなる。  主演二人が背中合わせに座る、夜の埠頭のショット。コンクール以降の、台詞省略の効いた画面による語り。 屋外から響いてくるホルンの音色に導かれて廊下へ飛び出した橋本環奈の全身に吹き付ける風。  『箱入り息子の恋』でもピアノを弾く夏帆の運指をきちんと撮っていたように、ここでも橋本を始めとする俳優ら本人の演奏を巧拙に係わらず 誠実に撮っているのがいい。フルートを懸命に吹く彼女の顔と手の表情などとても素晴らしい。  中盤で主演二人が屋上から中庭を覗くシーン。ふとここで思ってしまうのは、フェンスのない(現実的には)危険な屋上だなということだが そこがラストの大団円の舞台装置となるに至ってそのフェンス(壁)の不在が映画的には必然であったことがわかる。  ラストの幸福感あふれる祝祭的な空間と運動。さわやかな笑顔を見せる橋本と佐藤の切り返しショットが気持ち良い。
[映画館(邦画)] 7点(2017-03-05 09:23:12)
155.  トリプルX 再起動 《ネタバレ》 
馬鹿馬鹿しくて最高。あの映画この映画のパッチワークではあるが、アクションの釣る瓶打ちによる力技でハイテンションを維持する。 だけではなく、華のある女優陣の活躍に負うところも非常に大きい。マッチョな男優陣とのバランスが絶妙だ。  それも見た目だけではなく彼女らそれぞれのキャラクターに合わせたアクションの見せ場も用意されているので、さらに魅力が増す。  温度感知によって、ヴィン・ディーゼルの指の間を通して黒幕を狙撃する女性スナイパーのクールな身のこなしがいい。  ドニー・イェンの立ち回りも勿論、素晴らしい。切れの良いカッティングが彼の美技を引き立てている。 トニー・ジャーが割を食ったが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-02-26 19:46:22)
156.  愚行録 《ネタバレ》 
寒々とした曇天や冷ややかなな壁が硬質な白バックをつくる。 余計な装飾を排したそれらの白いシンプルな背景が思惑を秘めた俳優らの表情を見事に浮かび上がらせている。 終盤での妻夫木聡と満島ひかりの述懐もまたそれぞれの白バックを介してクロスカットされ、二人の横顔のショットは台詞に優位を譲らない。   序盤に登場する、殺人事件の起こった住宅街の坂道の寂れた風情も見事なロケーション。 小出恵介、市川由衣らの三角関係を示唆する役者配置の妙。屋外の階段を昇り降りし、エレベーターの扉をこじ開け、といった手持ちカメラによる 動線と空間性はキャラクターの感情を提示するなど、カメラワークもよく考えられている。 一方で、現在シーンの固定されたカメラは俳優らの語りと芝居をじっくりと持続的に見せてくれる。  松本若菜が平手打ちされるシーンでの、屋外から屋内へのカメラの切り替えの呼吸の素晴らしさ。 それら、外と内を仕切るガラス窓のモチーフがじわじわと反復されていき、ついには 妻夫木聡がその仕切りを越えるショットへと至る。  煙草の吸殻にしても、炎の音使いなど細やかにアクセントをつけて視聴覚的な伏線張りを反復するなど巧みだ。
[映画館(邦画)] 7点(2017-02-19 20:00:50)
157.  ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち 《ネタバレ》 
其処此処にちらつくハリーハウゼンは勿論、屋敷上階の窓から急傾斜の屋根へと子供たちが脱出するシーンなどはふと宮崎駿の高所感覚を思い出させるし、 宙に浮かぶ少女エラ・パーネルが海中の沈没船へと沈んでゆく美しいシーンは押井守などを彷彿させる。 水中で彼女のはく息が水玉となって主人公エイサ・バターフィールドの顔を包むなどのロマンティックなイメージ創造は素敵だ。  沈没船を浮上させるシーンの高揚感や、遊園地に流れるポップなBGMがそのまま映画の劇伴BGMにスライドして活劇を盛り上げていくあたり クライマックスへ向けてのテンポアップもいい調子だ。  それだけに、『1941』とまではいかなくとも観覧車などの遊具はもっと活用して欲しいところだし、クライマックスの舞台がタワーであるなら 高所の特性を活かしてアクションを構成して欲しい。 ヒロインの特性が空中浮揚にあるのだから、ここで二人の協闘をもっと見せてくれれば、二人の別離と再会はもっと感動的だったろう。 敢えてそうはさせないところがバートン流なのだろうが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-02-07 23:54:43)
158.  スノーデン 《ネタバレ》 
インタビューから過去に遡り、ラストが講演会で、スピーチがあって、感動の拍手があって、というメッセージ発信型の定番の構成である。 この演説というのが大抵映画をつまらなくするところなのだが、ロボットの動きと、語り部の交代という仕掛けが奏功して スノーデン氏本人の寡黙な横顔がラストを静かな緊張で締めくくっている。  主義主張が前面に出そうな題材ながら、フィクションを大胆に織り交ぜたサスペンス演出が絶妙に中和している。 会議室の大画面に映し出される上司の威圧感。床に落ちたSDカードを巡る、同僚との視線劇と手話の 感動的なやりとり。そのカードをゲート外に持ち出すシーンの緊迫感と、外の世界の光。 そしてホテルから脱出する際の、メリッサ・レオとの別離のやりとり。特に映画後半はドラマティックなシーンの数々で盛り上がる。  監視の映画として、眼やカメラファインダーをモチーフとしたショットも充実している。
[映画館(字幕)] 7点(2017-01-31 23:37:22)
159.  不屈の男 アンブロークン 《ネタバレ》 
イタリア移民としての被差別、走ることとの出会い、そしてオリンピック走者としての活躍が回想処理によってまずは語られる。 ナショナリスティックな曇りを取り払い、映画的な主題に立ち返れば、走ることに対する抑圧と解放のドラマということになるか。  丹念に描写された前半の海上漂流は、踏むべき地面の無いゴムボート上では立つことも歩くことも出来ない、そういう意味での責苦でもある。 収容所では足・顔を殴打され、幾度も地面に伏すこととり、直江津では重い木材を担がされ、ひたすら直立させられることとなる。 単純化するなら、走ることで自己実現してきた者が走るという行為を奪われ、それを取り戻すまでのドラマ、となろう。  それだけに、エピローグでにこやかに走るザンぺリ-ニ氏の姿は感動的である。  ロジャー・ディーキンスの撮影は、実話の映画化といこともあって合理的な光源を基にした自然主義的なルックだ。 爆撃機のキャノピーの中を一瞬横切る太陽の入射光などの細部が画面にリアリズムを与えている。 直江津の石炭採掘場の見事な美術を舞台に展開されるのは、収容所長との視線の闘いでもある。 ここに至って、写実的な照明はより強度を帯び、二人は順光と逆光で対照化される。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-29 04:52:30)
160.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
ドラマの流れは篠田正浩版(1971)同様、ほぼ原作に忠実だが、冒頭のポルトガルの場面やエピローグの「切支丹屋敷役人日記」の章が映像化されたことで 長尺となっている。特にスコセッシ流の解釈が施されたラストの十字架のショットは映画独自の表現となって印象深い。  1600年代を再現するランドスケープも厳選されており71年版に引けを取らないし、波音をはじめとする環境音の演出も充実している。 浅野忠信、塚本晋也らも安定の好演だが、イッセ―尾形はエキセントリックすぎて嫌味な印象だ。 岡田英次のほうが、穏やかな凄みがあった。  原作のクライマックスシーンは現国の教科書にも採用される有名な箇所だが、 その文章のもつドラマティックな迫力は、「白い朝の光が流れこんだ。」「朝方のうすあかりの中に」「黎明のほのかな光」「鶏が遠くで鳴いた。」などの 極めて映画的描写の充実にもよる。 篠田版は宮川一夫を撮影に起用してそれらの光を忠実に導入し、壁の「LAUDATE EUM」の文字を、踏み絵の図柄を、ロドリゴのシルエットを崇高に浮かび上がらせた。 遠藤周作が強く意識して描写しただろうその肝心な「夜明け」の光をなぜかスコセッシは映像化しない。 その代わりに、篠田版が賢明にも省略した「あの人」の声を聴かせてしまうという、この辺の感覚は違和感を抱かざるを得ない。 あるいは、スコセッシがあえてそのように処理して安易な審美性を拒んだというのは、現在の世界は未だ夜明けには至らないという諦念ゆえだろうか。  溝口的な、濃霧の中に浮かぶ小舟のショット。その視界不良で不穏な様も、全編を覆う曇天とともに何やら現実世界を連想させて、ぞくっとさせる。  異教と民族を巡る分断と排他主義が拡がる現在、時宜を得た公開ではある。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2017-01-22 11:29:49)
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