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Nbu2さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 346
性別 男性
自己紹介 「昔は良かった」という懐古主義ではなく
「良い映画は時代を超越する」事を伝えたく、
 昔の映画を中心にレビューを書いてます。

増山江威子さんのご冥福をお祈りいたします。

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【製作年 : 1980年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  アラビアのロレンス 完全版 《ネタバレ》 
私を映画ファンに仕立たのは間違いなく「燃えよドラゴン」と「雨に唄えば」、そしてこれ。この作品は間違いなく全ての芸術作品もひっくるめて後世に残すべき文化遺産である!と声を大にして訴えたい。「清潔な」砂漠を愛した一軍人が歴史と民族の諍いに巻き込まれ英雄となり、その手を血に染め敗残者として記録から姿を消す。歴史の記録/記憶の作られ方や人間(民族)の倫理観や行動について考えさせられただけでない、自分にとってこの映画は「個の確立(砂漠を越えた後のあの『Who are You?』は深い)のあり方」そして強い意志を持って未来を乗り越える事の素晴らしさ(逆に今になってみるとそういった希望はなかなか叶わない難しさも感じる)を教えてくれた。なおかつこの映画は絶対にCGでは再現不可能な、人間の息づかいがスクリーンからあふれている!役者も音楽もなにもかも素晴らしいがやっぱりここは名匠デビット・リーン(=この人の作品に流れる「異文化コミュニケーション」の取りあげ方は現代の社会でも十分議題に挙げられるべきテーマでまったく古くさくない)のテクニックに堪能しよう。何回見ても飽きないし毎回新たな発見があるこの映画、ぜひ機会があればスクリーンで堪能ください。テレビ画面ではこの映画、多分7点くらいでしかない!
[映画館(字幕)] 10点(2012-06-16 09:50:36)(良:1票)
2.  ファニーとアレクサンデル 《ネタバレ》 
「サラバンド」を後年撮っているとは言え、この作品でベルイマン自身の「大河ドラマ」はここに完結した、と言ってもいいでしょう。教会関係者の子供として生まれた彼は幼い頃からキリスト教の厳格な定義に向き合った生活を余儀なくされた事で「絶対的な神」の存在に対して疑問を常に抱き続け、その存在意義を模索し続けた映画人生でありました。ある意味亡霊の見える少年アレクサンデルは下の方が述べておられるようにベルイマン自身の投影に他なりません。ラストシーンでアレクサンデルは自分を苦しめてきた養父の亡霊に生涯付きまとわれる事を感じます。これは彼自身が妥協という意味ではなく、キリスト教徒として生まれた人生に対する悟りのようなものを体感したからではないかと私は思ったわけです、ハイ。5時間版DVDがでたこともあるし、ぜひ皆様にも堪能していただきたい。小難しい話ではなく下手なサスペンス映画よりも断然面白い。特にオープニングの映像表現と養父との生活が始まる三部からの流れは圧巻!文句なし。
[ビデオ(字幕)] 10点(2007-09-14 11:39:40)(良:1票)
3.  天空の城ラピュタ
スクリーンで鑑賞した妹(今にして思うとなんと羨ましい!)に「どうだった?」と聞いたらすんげぇ切ない顔をされた。そうか、そんな映画なんだな。書きたいことは多々あるが、この点数で勘弁してください。
[DVD(邦画)] 10点(2007-01-07 22:32:29)(良:1票)
4.  誰かがあなたを愛してる
極私的チョウ・ユンファの最高傑作はまさしくこれ。異国の地で暮らしている寂しさを漂わせつつ、精一杯の明るさで振舞う彼の演技は素晴らしい。また若くしてこの世を去ったダニー・チャン、この後映画界を引退したチェリー・チャンにとってもこの映画は「最高の瞬間をフィルムに残せた」奇跡の一本。
[映画館(字幕)] 10点(2006-06-03 00:26:42)(良:3票)
5.  ラルジャン
映画史上最高の遺作の一本、であると言い切っちゃおう。
[映画館(字幕)] 10点(2006-04-17 19:13:40)
6.  ストレンジャー・ザン・パラダイス 《ネタバレ》 
「予定調和を壊す空気・間」を堪能する映画。  1986年4月、今は無き有楽町スバル座での単館ロードショー。 中学3年生の自分が始めて一人でチケットを買い、劇場鑑賞したのがこの作品。 といってもちろんジャームッシュも主演ジョン・ルーリーも、(字幕の)戸田奈津子女史 だって知るわけない、単に親離れして、大人じみた背伸びをしたかっただけの事。  当時の世評としては「映画ファンには大好評、一般的には?」というのが通説。 そりゃあそう、80年代はまだ「脱力系ギャグ」という笑いは認知されてないから。 観客が想像するストーリーをことごとく外していく、ずっこけロードムービー。 ズレというか不調和を楽しむ映画として、私は彼の映画が好きだ。 気付いたら最新作「デッド・ドント・ダイ」までちゃんとスクリーンで追いかけている。  ヴィム・ヴェンダースやニコラス・レイ、そして小津安二郎を知ったのもこの映画だし、 音楽(スクリーミン・J・ホーキンスとかジョン・ルーリー、後にトム・ウェイツ)なんかも 彼から知った気がする。 彼の文化的教養に、自分影響されまくり。  そして齢50代になりつつある私、この度リバイバル上映(ヒューマントラストシネマ有楽町) にて鑑賞。「この映画が人生最初の映画館(おひとりさま)体験で本当に良かった」、 心底思ったよ。   この映画はぜひ、スクリーンで見て欲しい。 特に若い映画ファンに。
[映画館(字幕)] 9点(2021-07-11 19:36:53)(良:1票)
7.  東京裁判 《ネタバレ》 
戦争の本質=徹底的に「無寛容で理不尽」なものである事を私に教えてくれた傑作。約4時間半もの長尺に関わらずまったく間延びがしないのは東京裁判に至るまでの近代日本の歩みを丁寧に説明してくれる為、という事でこの長さでないと多分成り立たない。監督小林はスクリーンでとにかく不条理な情景を観客に見せつける。各国家が戦時下で行っている行為は本質的に変わらないのに「勝者」「敗者」の違いだけで戦争犯罪を裁く不思議さ。熟慮をかけて行われるべき裁判が「時代の変化」「平和への渇望」を世界諸国にアピールする為戦争犯罪人に十分な時間を与えぬまま急ぎ足で始まり、結局「政治ショー」的扱いになってしまっている現実。東京裁判の影では各アジア諸国においてBC級戦犯が十分な対応もなされないまま、被害を受けた現地民の怒りをもろに受け処罰刑が執行されていた事。そしてなにより「裁判をもって恒久平和の礎とする」とした声明論述はラスト、トルーマン大統領の再選と朝鮮戦争~ベトナム戦争~中東戦争等の諸外国介入をテロップで示し全くもって「絵に描いた餅」であった事を説明している。国家が戦争を引き起こした責任をその当時の政治指導者に持たせる事は個人的には間違っていないと思う。しかしこの映画を見てそれ以上に自分が感じたのは結局戦争というものは人間が考える理想やあるべき姿を完全に無視する一陣の暴風雨であり、絶対に起こしてはならないものであるという単純な結論であった。この映画にはラスト「完」とか「終」といったテロップ表示が無いまま終わる。それはつまり歴史はこれからもずっと続くものであり、この作品は今を生きる私達へのメッセージである事を表しているようである。考えたらまだ満州事変から100年経っていないのだ。
[ビデオ(邦画)] 9点(2017-04-14 12:41:21)
8.  ながらえば<TVM> 《ネタバレ》 
こんなに素晴らしいラブストーリーだとは思わなかった。突発的に旅立った主人公の当初の目的は単に病床の妻を案じての心配から来る「見舞い」で、自身の本心には向き合っていなかった。(切符の紛失+電車乗り遅れでお金がないまま一晩を知らない場所で過ごす羽目になる=信念の欠如を暗示しているのが上手い)それがたまたま泊まった宿屋で宿の老婦人に不幸があった事・亡くなった妻との想い出を語る宿の老主人(宇野重吉=名演!)等の後押しもあって「愛してるという想いを伝えたい」という真の目的へと変わるその経緯が自然で、胸打たれてしまう。そしてラスト、病床の妻に向かって背中を向け、泣きながらつぶやく「おまえとおりたい」。一般的に「御前様=好々爺的」イメージしか無かった俳優笠智衆の気骨溢れた男っぷり(寝ている老妻にキスしようとしてる!)に改めて名優だ、と実感させられました。65分という短い時間にこれだけの内容を詰め込んだ、この当時の山田太一の作家性、まったくもって素晴らしい。機会があればぜひ。
[地上波(邦画)] 9点(2015-01-02 19:29:07)(良:1票)
9.  カイロの紫のバラ 《ネタバレ》 
W・アレンの映画によくある『グッド・オールドファッションド(かっこつけてカタカナにしました)』感覚に古くささを感じてしまう自分だけど、これは狡いくらいに映画ファンの心を鷲づかみにしちゃう一本だと思う。現実とスクリーンに映る夢は違うものと認識させられたヒロインと自分達観客。だけど最後に映る「トップ・ハット(Heaven~♪I'm in Heaven~♪)」で希望を与えられる、というラスト、はっきり言って卑怯だろう。でもいいんだ。そういった雰囲気作りのうまさ(役者ファローの全盛期!)にうならされる一本。 
[映画館(字幕)] 9点(2011-03-27 21:11:47)(良:1票)
10.  不射之射 《ネタバレ》 
川本映画の魅力はもちろん人形造形と動作(ストップモーションの映像にしては物凄くなめらかで細かい!)だけではなく、ライティングやカット割りの工夫で無表情の人形に命を吹き込んでしまう映像作家としての彼の技量。そこに自分は安心感を持っているのである。弓の道を究めんとした男が最後にたどり着いた境地、それは作家川本の「愚直にまで自分の進んできた人形アニメ映画に取り組み全うする」事に結びつくのでは無いか。これはもうアニメ映画を越えた「芸術」。年に一度は見てため息ついてます。
[DVD(邦画)] 9点(2010-08-22 22:29:04)
11.  エル・スール 《ネタバレ》 
夜が明ける。愛犬の鳴き声が聞こえる。静かな始まりだがスクリーンには何とも言いようのない緊張感が走る。母親の叫び声が聞こえる。枕元にあった父の形見。少女が父の過去を探ることで得た真実と悲劇。そして希望に溢れた「南」への旅立ち。エリセの映画は観客に対して想像力を想起させる点で本当に良くできていると思う。例えば父親の過去の愛人だった映画女優(「ミツバチのささやき」のフランケンシュタイン、といいこの人映画好きなんだなぁと感じる)や壁に書かれたいたずら書き、自転車に乗った少女が少々大人びて戻ってくるカットはまさに映画。スクリーンで見た時は本当に感激した。ラストもエリセが望まなかった、中途半端な終わり方かもしれないが、この映画を観た観客はもうわかっている。彼女はこの先どんな困難にあっても乗り越えてゆける、少女から立派な大人への段階を経たのだ、と。俳優。やはり80年代最高の男優はデニーロやホフマンではなかった。アントヌッテイその人である。限りなくこれは10点に近い9点。今日、私は南へゆくのです…。
[映画館(字幕)] 9点(2010-01-11 23:41:53)(良:1票)
12.  緑の光線 《ネタバレ》 
夏のバカンスなのに何をやっても楽しくないオールドミスが見つけた一瞬の奇跡。ラストシーンに「緑の光線」を映し出すまで我慢できるかがこの映画に対する評価の分かれ目ではないでしょうか。話の本筋なら「光線は見えないけどいいわあなたが一緒なら」で終わる処を本当に見せてしまったハッピーエンドっぷり。話をうまく着地させたロメールの腕の見せ方に堪能できる一本。
[映画館(字幕)] 9点(2007-08-31 21:09:42)
13.  センチメンタル・アドベンチャー 《ネタバレ》 
話としては暗いし印象は薄いかもしれないが、個人的にはイーストウッドの作暦上ベストの一本と思います。①「カントリー・ジャズと西部劇はアメリカ特有の優れた文化」である」と公言している彼にとって思い入れの深い題材である事、②彼の映画に良くある「死生観」が顕著に感じられるから③旅の連れ合いは息子(役柄では叔父と甥だが)肺病持ちのカントリー歌手が殿堂グランド・オール・オーブリーで唄う事を夢見て旅するロードムービー。年を重ねるごとに感動が増すばかりです。イーストウッド自身の歌はともかく、魂こもってますよ。大好きな映画です。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-07-26 22:26:44)
14.  ポリス・ストーリー/香港国際警察
私が彼に求めるのは「体技」のみ。ストーリーだとか演出などはどうでも良い。(確かに新・ポリスストーリーのような「苦悩する刑事」もいいが)ただここ最近の彼の体技には悲壮感がありすぎて、「すっげえ~」よりも「もういいから、やめて~」という気が立ってしまう。そんなわけで私にとっての彼の最高傑作はまさしくこれ。やっている事は命がけの荒業なのだがユーモアとあの笑顔がそれをあまり感じさせない、こりゃ神業だ。【2017年追記:「映画秘宝」誌の谷垣健治氏インタビューで『(彼らは役者だけでなくアクション監督業も兼任している点からこの発言になったと思われるが)ドニー・イェンは自分をフレームの中で一番かっこよく見せる事の出来る役者、ジャッキー・チェンはフレームの中で一番かっこ悪く見せる事の出来る役者』と説明しており、なるほどと感じた次第。それを踏まえてこの映画を再見し感服。一点追加】
[映画館(字幕)] 9点(2006-07-09 15:59:51)
15.  木を植えた男
地球上の生命の中で人間だけが本能以上のエゴをむき出しにし、自分の首を絞めるような愚かな行為を行っている。とは逆に理性と情熱、信念を持ち行動する事で他の生物には成しえない素晴しい創造を生み出せる事ができるのもまた人間。フレデリック・バックの描き出す世界は実現不可能な理想郷かもしれませんが、冒頭の灰色の世界が色彩溢れる画面に変わってゆくたびに心にはぬくもりが残ります。色鉛筆によって描き出された、印象派絵画のアニメーション化。光の暖かさと柔らかさに感動。(映画館のスクリーンでぜひ見たかった)
[DVD(吹替)] 9点(2006-05-21 20:51:31)
16.  悲情城市 《ネタバレ》 
初見時(ロードショー公開:私は浪人生)「何でこれがキネ旬1位なのか...さっっぱりわからん」だったこの映画、評価が変わったのは20代になって中国/台湾の人と仕事で付き合う様になってから。・同じ台湾人なのに台湾語を好んで喋る人もいれば、全く喋らない(喋れない):標準語(北京)語のみ喋る人がいる。・中華思想を礎とする台湾人:国土である台湾も中国の一部なのに頑なに「取り込まれたくない」台湾人の感覚が中国(本土)人はわからない。・他のアジア圏の日本人に対する初見時の反応と比べて台湾の親日ぶりは、ある意味異質。この作品はそういった疑問:戦後史なんて禄に勉強しなかった自分にとって「映画によって世界を知った」1本。台湾現代史をグダグダ書いても仕方ないのでここは皆様調べてもらいたいのだけど、ポイントとしては「敵であった中国人同士が統治をしなければならなかった悲劇」であり、「日本の植民地統治が台湾本省人(戦争前から台湾に暮らしていた人達)にとって外省人(中国国民党の台湾移動に伴い、中国各地から移住してきた人達)から迫害される原因の一因になってしまった」事。ホウ監督自身は「日本を糾弾するつもりは全くなく、80年代までタブーであった題材を撮れる様になったので作品にしてみた」とコメントを出してるけど、戦後40年経って、現代台湾の混乱を招いた原因の一因に日本の植民地支配が有った事を始めて白日の下にさらした作品だから、そりゃぁインパクトはあるよなと今は思ってる。 映画としては歴史上の事件そのものが描かれている事は全くなく、ただある一族:四兄弟の生活に影響を及ぼしてゆく情景を映し出しているだけ。ただ各シーンを注視してみると実は深い、深ーい内幕が描かれていて胸にくる。(個人的には2・28事件において、弾圧の選別基準となったのは「台湾語/日本語をしゃべるかどうか」だったのがショック)あと香港人のトニー・レオン、この当時は広東語オンリーで標準(北京)語が喋れなかったので口が利けないという設定にしたらしいのだけど「目は口ほどに物を言う」彼、妻となる女性と筆談でやり取りを交わしそのシークエンスのみ字幕表記になるところ、卓越した演技力で私にとって好きな男優になりますた。(だからこそラストの家族での写真後降りかかる悲劇が切ない) MCUユニバースでマンダリンやってるよ、て当時の俺に言ってあげたいよ、ほんとう。2・28事件と台湾近代史の勉強が必要と思うので少々ハードルは高いけど、機会があればって...だからなんでDVD廃盤+現時点でサブスクも無しなのさ、んとうに。長文失礼しました。
[映画館(字幕)] 8点(2023-05-10 21:17:27)
17.  八月の鯨
「希望が叶う」事は現実には難しいかもしれない。 しかし「希望を持ち続ける」事はもっと難しいし、 保ち続ける事こそが最良の人生を送る一要素なのだろう。  この映画の素晴らしさが実感出来る様になってしまった 自分はもう爺様の一歩手前なんだろうな。 ただそれを恥かしいとは思わない自分の感性は まだまだ誇ってもいいのかな、と思う。  若人の時に見て「つまらん」と思った方、 年月を置いてもう一回見てみ。こころに刺さるから。
[映画館(字幕)] 8点(2022-01-12 15:31:45)
18.  柳川堀割物語 《ネタバレ》 
水路で有名な福岡県柳川市。過去に水路の汚染問題、そしてそれに伴う埋め立ての都市計画に対して「水路を浄化して生活に役立てる」事を提案し、実際に再生を果たした市役所の一係長の話をロケハンで訪れた際に聞いた高畑監督はこの話を元にドキュメンタリー映画を製作する事を思いつき、1年間の予定で現地に入り撮影を開始。ところが実際は撮影が2年に及んだ挙句資金が枯渇し(「ナウシカ」の売り上げは全てこの映画に消えたとか)、製作者宮崎駿は家を抵当にかける羽目になったのは有名な話。何しろ上映時間2時間40分は長い。映画館で鑑賞した私、マラソンみたいなものでしたよ本当。但水路の歴史や人々の営み、汚染問題や住民運動、そして再生を描き出すのにはどうしてもこの内容で無かったら駄目だったんだろう。ポイントは3つ。1 水路を走る船やそこからの光景、また人々の生活の捉え方はまさにアニメ的なダイナミズムに溢れているのが面白い。アニメによる説明よりも実写の方がアニメ的というのか。 2 高畑監督はテーマを設定し、それを基幹にストーリーを展開する事にこだわりを持っていたと思うが、この作品以降はそれに加えて「アニメーションと社会との関わり(現実的なリアリティ)」といったポイントをも考慮する様になった、という意味で作歴のターニングポイントになったと私は思う。そして3 盟友宮崎駿の「ナウシカ(’84)」「ラピュタ('86)」に対する高畑監督なりの回答:自然と人間生活の共生、そしてその在り方がこの映画に含まれているのではないかと感じたのでこの点数。 「火垂るの墓」「平成狸合戦ぽんぽこ」「おもひでぽろぽろ」だけじゃない、ってかまずは世界名作劇場の高畑作品を見てからなのだろうけど、機会があれば。
[映画館(邦画)] 8点(2021-04-17 19:09:51)
19.  ミュージックボックス 《ネタバレ》 
世の中にはまだDVD化されていない名作が多いのだが、このコスタ=ガブラス監督の一本もまたしかり。戦争犯罪を犯したとされる父親の為に弁護士の娘が無実を証明すべく立ち上がり、周囲の協力を経て裁判で勝利しそうなところまでもってゆく。が、証拠を集めれば集めるほど彼女には疑念がわいてくる...作品における前半~中盤に至る法廷サスペンス劇も内容の重さに気が重くなりそうなのだが、本当の衝撃は後半、彼女が戦争犯罪の現場となるハンガリーへの旅で見つけた事実と証拠品=ミュージックボックス(オルゴール)の出現によってやってくる。そして最後に彼女がとった決断。被害者がいる以上「犯罪」には結局、時効という概念は無いのだという観点もわかりつつ、「改心」という余地を全面否定してもよいものなのか、戦争犯罪の責任は国家/個人どこまで及ぶものなのか(この父親役アーミン・ミューラー=スタールの演技が上手すぎる)...まぁこのピーチクパーチク述べている私の感想の意味は、本作を見てからどうぞ皆様、ご判断下さい。「Z」「戒厳令」「告白」といった初期監督作に比べればわかりやすい+初見時の衝撃=高校生の自分に与えたインパクトを考えて+1点追加。TSUTAYAでも紀伊国屋書店でもジュネス企画でもどこでもいいから、ちゃんとソフト化してください。お願いだから。【2021年追記:とレビューを書いてはや3年。この度TSUTAYAの「良品発掘コーナー」にて待望のDVD化。この調子で「Z」「戒厳令」「告白」のDVDレンタル化も、宜しくおねがいしま~す】
[映画館(字幕)] 8点(2018-04-12 00:39:46)
20.  じゃりン子チエ 《ネタバレ》 
先に述べておく。極・私的高畑勲監督の劇場映画最高傑作は「火垂るの墓」でもなく「平成狸合戦ぽんぽこ」でもなく、(「パンダコパンダ」には傾きそうになるが)この作品である。...思い起こせば映画好きの友達と激論を交わした。友曰く、漫画+TVアニメと雰囲気が違う/ヒラメちゃんが出てこない/いきなり「ゴジラの息子」映像の挿入はそぐわない/吉本芸能の大御所を使った声優陣がうっとおしいなど。...いやいやその観点が可笑しいのだ、わからずやめ。この劇場版での高畑監督の意図は「(原作とは異なる)1960年代後半の大阪を舞台としたじゃりン子チエ」物語・ファンタジーの創出であり、はるき悦巳原作の完璧な再現であったTV版とは違うのだよ。吉本芸人に求められてるのは関西社会の雰囲気であり演技ではない。そしてチエちゃん一家の生きる活力=明るさにフォーカスをおいた原作よりも、人生の浮沈盛衰=現実感ある市井の生活に視点をおけば悲哀感が出てくるのは当然。そこがいいんじゃないか。(家族旅行が原作では金閣寺→遊園地に変更されたのも印象的。映画表現においては「遊園地=不安の隠喩(メタファー)」でもある) こんな議論も最後は「世界名作劇場の高畑作品最高」→「『ハイジ』は別格として『母をたずねて~』と『アン』、どっちが好きか」になってゆくのでした...。高畑監督ご冥福をお祈りします、そして有難うございました。
[ビデオ(邦画)] 8点(2018-04-06 10:31:13)(良:3票)
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