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Nbu2さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 346
性別 男性
自己紹介 「昔は良かった」という懐古主義ではなく
「良い映画は時代を超越する」事を伝えたく、
 昔の映画を中心にレビューを書いてます。

増山江威子さんのご冥福をお祈りいたします。

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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  (秘)色情めす市場 《ネタバレ》 
当初予定されたタイトル「受胎告知」のイメージで見るか、 現行の「(秘)色情めす市場」として鑑賞するかで評価が 分かれるのではないか、という感想を持った一本。  モノクロで映し出される大阪・釜ヶ崎の生活感溢れる 情景は「生きる為に性を売る」感が生々しすぎて エロなんて感じる事無く、劇場を出た20代の私。 その時点で田中監督が「受胎告知」というタイトルに こだわりを持ってた事、合わせてこの時期に お子様を亡くされる悲劇中での撮影であった事も知らず。  約10年ぶりのスクリーン鑑賞、上記のポイントを踏まえて 見直すとヒロインは汚れた俗世の中で生きている聖母 みたいなもの。生活の糧として売っていた身体を 愛の奉仕目的で捧げる事で世界に色が付く =真っ赤な夕日が映し出す天王寺や大阪城、通天閣に 連なるイメージの羅列。枯れた今見直すと凄いエネルギー。  何十年経っても変わらないのはヒロイン芹明香の素晴らしさ。 この年19才とは思えない。面白いのは彼女自身は 「(秘)色情めす市場」タイトルの方が好みだった事、 周囲の反応とは逆に「演技には納得して無かった」 とインタビューで述べてる事。  初見に比べて評価が上がったので、 点数甘いかなと思うけど機会が有れば。 ブコウスキーの本・世界観が好きならハマるかも。
[映画館(邦画)] 7点(2024-02-18 18:25:40)
2.  暗殺の森 《ネタバレ》 
監督の伝えたい事を念頭におきつつ、台詞からではなく 「映像上の隠された比喩や引用から意図を想像する」 そんな映画の楽しみ方を伝えてくれたという点で印象的な1本。  原題「体制順応主義者」とは主人公マルチェロその人を指すだけでなく、 イタリアのファシズム政権を誕生させてしまった数多くのマルチェロ =社会に無関心・無責任な大衆への糾弾を伝えたかったのではないか。 年少期の出来事が影響したとはいえ信念の欠けた、未熟な生き方を 続けてきた男は(落語で言う「でも医者」ならぬ)「でもファシスト」。 反体制を主張する恩師の調査追跡によって感じたのは自身の生き方とは 真逆の、「人権を声高に主張し自由に生きている」人間の姿。  女性二人のタンゴ。平凡な生活を余儀なくされていた婚約者が 恩師の若い妻と踊るそのシーンは、女性としての真の生き方ってのか 心身の解放を教授してもらうというシーン、だと思ってる。  人間らしい生き方に触れたにも関わらず、全く動かない主人公。 恩師を暗殺する段になっても、その対応を同僚になじられる。 大勢の暗殺者によってナイフでめった刺しにされる恩師の様は 「無責任な大衆によって少数の良心は潰される」様を見ている様で 痛々しい。一度は気にかけた恩師の妻が惨殺されてゆく様子を ただ車窓から見ているだけ。無関心が悲劇を増大させる。  でそんな情景を映し出す映像美。巨匠ヴィットリオ・ストラーロ30才。 青・赤・白を多用した色彩は主人公のフランス旅行に結びつくだけで 無く、国旗:トリコロールにも関連付けられてるとは今回知った事実。 青:自由/白:博愛/赤は平等なんだけど、どちらかというと暴力に よる流血と合わせて、「血の色は同じなのに考えが異なる多様性」 を明示した隠喩と思っている。あと光と影の使い方。「カラヴァッジオ (イタリアバロック絵画の巨匠)を参考にした」との事だが、絶対これ エドワード・ヤン、影響受けてんだろ。「牯嶺街少年殺人事件(’91)」  ラスト、主人公夫婦にとってあのフランス旅行の喜びは一過性 でしかなかった事に愕然とさせられる。そしてファシスト政権の 崩壊と同時に目撃した出来事。何もかも失ってしまった主人公 はどう感じたか。「おまえら全員ファシストだ」  自分は無責任な傍観者になってないか? 映画館を後にする自分にも、その声は響いてるのだ。 長文失礼しました。
[映画館(字幕)] 9点(2023-11-06 21:18:03)
3.  遊び 《ネタバレ》 
「2023年:大映4K映画祭」関連企画で初めて劇場鑑賞。  私が増村監督を知ったのはテレビドラマ:山口百恵主演「赤い衝撃(’76〜)」、 堀ちえみ&風間杜夫主演「スチュワーデス物語(’84〜)」(脚本)位から。 少年期の私からすれば「なんちゅう暑苦しく、クドイ作品なんだ」と感じてたけど、 彼の経歴を辿ってみればTV界における彼の業績は「才能の出涸らし」でしか なかった事がわかる今日この頃。そりゃ「盲獣(’69)」みたいな世界観、 より大衆性を求められるテレビでは絶対に出来るわけないもんね。  青春映画「くちづけ(’57)」で監督デビューした彼にとって 最後の大映作品となったこの一本が青春譚になったのは 大映在籍時にやりたい事全てやりつくしただろう彼が、 生涯のテーマ「感情を露わにする、近代的人間像 を日本映画に打ち立てる」への原点回帰として 取り上げたのではないかな、と個人的には感じてる。  アメリカンニューシネマから影響を受けたと思われる 若者二人の逃避行を描くこの作品、突然挿入される わかりづらいフラッシュバック(過去の回想)とか 大門正明の台詞廻し等、鬱陶しい展開の上 「若さ故のあやまち」から来る悲劇感ありあり。 でもなんかその若さがその悲劇を打破してくれる、 という希望も感じさせる雰囲気に包まれてる作品で 自分にとって好印象なのでこの点数。 それを強調しているのがこの年16才(!)の関根恵子 のヌード/濡れ場シーンとボロ舟を押しながら川へ流れゆくラスト。  日本青春映画の佳作としておすすめ。機会があれば。
[映画館(邦画)] 7点(2023-06-21 04:50:37)
4.  あゝ声なき友 《ネタバレ》 
「もっと上手くできたんじゃないのかなぁ」というのが率直な感想。戦没兵の遺書を遺族へ届ける為、日本各地を旅する男を渥美清が演じたロードムービー。役者渥美清が映画化を熱望し、個人プロダクションを立ち上げてまで作品化した意図は明白。復興に沸く社会の光が届かない、戦争の影や闇に未だ苦しみもがいている人達に焦点を当てるなんて題材は戦後四半世紀が経ち、少しずつ記憶が薄れつつあるこの時期だったからこその上映だったんだろうな。がこの作品、評論家からは酷評・興行的にも失敗。渥美清にとってはこの映画の失敗によって、役者スケジュールを「年2回の寅さんと松竹大作へのゲスト出演」にシフトし、観客の求める「寅さん(もしくはそれに近いキャラクター)」に専念する事を決定づけた1本になっちゃったと自分は思ってる。70年代は戦争体験者が社会構成上まだ多かったであろう時期、「戦争がもたらす悲劇」を描くのはリアル過ぎると不快を覚える観客もいたろうし、といって現実から離れた絵空事みたいに描けば作品を世に出す意味は薄れる。個人的には最近の調査で「太平洋戦争下における兵士の死亡原因の6割は飢餓・もしくはそれに伴う戦病死である」旨を知っている分だけ、その背景にはもっと奥深い、闇の深淵が広がってる題材と思うのだけどすべてを映すのには限界があり、その点が自分の感じる「もっと上手くできなかったのか」につながる。(同じ1972年に深作欣二が東宝で「軍旗はためく下に」を先に上映してるのも大きい)NHK等のドキュメンタリーでも「届かなかった兵隊の遺書」テーマは扱う様になってはいるがそれでも90〜2000年代。やはり早すぎた企画だったんだろう。この映画のポイントは「渥美清の役歴上、もっとも陰のある役柄」。世評では「拝啓天皇陛下様(’63)」などが挙げられるが個人的にはこっち。この題材こそ現在リメイクしてあげるべき、なんだろうな。機会が有れば。
[映画館(邦画)] 7点(2023-01-28 22:47:55)(良:1票)
5.  愛のコリーダ 《ネタバレ》 
吉蔵演じる藤竜也にレビュー点数全振り。  70年代の修正版リバイバル→2000年完全ノーカット版 →2009年クライテリオン版無修正ブルーレイ→2021年2Kリマスター、が私の鑑賞履歴。 因みに無修正度は丸見え順に無修正ブルーレイ>2021年リマスター>2000年>修正版。  この映画の困った点はあまりにも性器のクロースアップ・性交描写が露骨過ぎるので どんなに大島監督が芸術作品である、とうたっても、周りからは「わいせつじゃん、これ」 と片づけられてしまう事+性描写に尽力注ぎ過ぎで肝心のストーリーが薄い、という事にある。 阿部定事件を描いた作品としては前年に制作された監督田中登/主演宮下順子の 「実録・阿部定('75)」の方が事件の背景・心情もわかりやすい。  ただ私はこの作品、「性愛の行く末」を描いた映画として当時の世界映画史上 徹底的にやり切ったという点に評価をしてあげたいし、何よりも藤竜也のキャラクター に尽きる一本だと思う。「女からの狂おしい愛情を受け止め、死に至るまで付き合う」 という概念は当時の男尊女卑の風潮から考えたら有り得ないだろう感覚で、 『この出演依頼から「逃げちゃいけない」と思った』という藤竜也の想いがちゃんと 表れている事に(実際、彼はこの映画出演により所属事務所を退社し、 約2年間、映画界から締め出される=休業)感心しつつこの点数。  個人的には大島監督の小難しい主張が炸裂する「日本の夜と霧('60)」、 「絞首刑(’68)」「儀式(’71)」よりは好き。機会があれば、と言いたいけど 兎に角露骨でございますので、その点はどうぞご勘弁。
[映画館(邦画)] 7点(2022-06-22 15:18:34)
6.  湖のランスロ 《ネタバレ》 
過度な演出(プロの俳優を使用しない/ストーリーの盛り上がり)を排除し、 最小限の映像表現で世界中の映画ファンから注目されてきた監督ブレッソン。 私も好きな監督の一人として、この度初の劇場公開となる (特集という形での単回上映・ソフト化は過去に実施済)この機会に鑑賞。  ただ率直に言うと、彼の諸作品(例えば「バルタザールどこへ行く(’66)」「ラルジャン(’83)」) と同等のレベルを期待してしまうとちょっと肩透かし、って感じ。 私は彼の作品のテーマとして(キリスト教の教義における)「罪と罰」という点が 個人的に重要なのではないかな、と思っているのですが、遵守すべき「中世の騎士道精神」 という概念が日本人にはわかりづらいし、何より(「演じる」事を排除した結果とは思うが) 登場人物が甲冑を着ている事で表情が窺えない分、スクリーンの人物に感情移入しづらい。 そういった点で彼の作歴上、ある意味失敗作なのではないかな、と。  但この点数にしているのは映画館で鑑賞した分、甘くなってるのですが ①画面の使い方(特に足元を映し出したクロースアップの多用がインパクト有り) ⓶最大の功労ポイントは、「音」。 ブレッソン中級者向けの一本ですがどうぞこの機会に映画館で。
[映画館(字幕)] 7点(2022-03-24 18:17:24)
7.  不良姐御伝 猪の鹿お蝶 《ネタバレ》 
はっきり言ってこの様な高評価を付ける輩は多分自分ぐらいであろう。話は荒唐無稽であるし、女優も当時は凄いグラマーで美人だったかもしれないが現在の目で見れば劣ることこの上ない。そしていつもの私ならば憤然と反論するが、この作品に関しては『「馬鹿馬鹿しい」と片付けられた』世評の方がまったくもって、正しい。ただ私は邦画界の斜陽化が進む中、観客の要求に応えるべくまさに「ど根性」で撮りあげたこの作品が大好きで仕方がない。冒頭の襲撃・惨殺シーンからオープニングに至る流れはまさに任侠映画で名を馳せた東映の実力の片鱗を見せており素晴らしい。森鴎外「舞姫」の換骨奪胎である異人女スパイと若者の恋物語も笑ってしまうかもしれないがたまらなく良いのだ。そして池玲子。初めて伝説の「全裸殺陣」を見た時はドキドキするどころかその役者根性に対して圧倒されたというのが正直な感想であった。そして復讐を終えた彼女が胸に着いた血を拭き取れないままよろよろと歩き、苦悶の表情のまま雪が花札に変わるラストシーンの中で彼女はポルノという範疇を超えた、まさに名女優と化した。昨今の「脱いだ脱がない」で騒いでいる女優・風潮に本当、池玲子の爪の垢の1ミクロンでも飲ませたい気分である。日本最高のバットガール、池玲子の魅力がダイナマイトのごとく炸裂する!(なんじゃこの文章。でもこんな感じなのよ、実際。)
[映画館(邦画)] 8点(2021-11-07 16:12:58)(良:1票)
8.  博奕打ち いのち札 《ネタバレ》 
任侠映画への「哀歌」。  監督山下耕作+脚本笠原和夫+主演鶴田浩二で制作された「博奕打ち」シリーズの9作目。 大傑作「博奕打ち・総長賭博('68)」から3年経った後の制作に当る。 旅先で出会った男女が1年後の再会を期して別れたものの、逮捕・投獄の為 かなわかった男が5年の刑期を終えて知った事実、それは女が自分の居る組の 組長の後妻となっていた事、そして組が敵対組織の襲撃を受け組長は殺され、 彼女は未亡人(姐さん)となってしまっていた事であった。  任侠映画というのは苦悩する主人公が堪忍(任侠道やら因習やら理不尽な敵のやり方とか) を重ねた上での爆発が主題と思うが、この作品は主人公の苦悩のメインが「結ばれなかった恋」 なのが珍しい。近年出版された笠原和夫の脚本集にも記載されてるのだから、代表作の一本だろう。 ただこの作品が受け入れられない点がまさにそこで「組長の奥さん、実は私の元カノです」という んな馬鹿な、というストーリー展開に観客が耐えられるかどうかにかかってると思う。 鶴田浩二の「いつものやせ我慢」+「叶わない慕情」時の切なさ儚さ、これを堪能してもらいたい。  今回廉価版のDVDが出たのと合わせて笠原和夫の脚本集を読了したが、実はラストの 殴り込みシーン、「血の海での殴り込み」と記載されてなかったのは意外だった。 て事はこれ、監督山下の演出オリジナルだった事になる。 「こんな世界から、この渡世から出てゆくんだ」と呟き、女を抱きかかえながら 血の海の中を切り結んだ挙句、盃杯を叩き壊す主人公。 邦画界の経営没落と合わせて、実録・エログロ路線に走りつつあった ヤクザ映画に対しての監督なりの意思表示であったんだろうな。 (この後役者・脚本家みな時世に上手くシフト出来たのに、山下監督だけは  あくまでも任侠映画にこだわって生涯を閉じた事を踏まえて哀しくなってくる)  あとは黒づくめの天本英世と時代を感じる若い衆、渡瀬恒彦に注目。
[映画館(邦画)] 7点(2021-08-29 10:07:44)
9.  パンダ・コパンダ
「生まれてきてよかったんだ、と子供にエールを送るのが児童文学」 (by 宮崎駿 岩波新書「本へのとびら」より)  これは個人的な感想なのだが、高畑監督はご自身が監督するアニメに関して 理念というのか伝えたいテーマを予め立てた上、そこから逸脱しない様に 気を使いながら作品を手掛けられた方なのではないか、と思う。 例.「ハイジ」=「アニメ的な大自然の風景描写+魂の救済」、「母を訪ねて~」=「国境と貧困」、 「赤毛のアン」=「女性の社会進出」、「ホルス」=「神話の創造」 (その点キャラクターと基本的なプロットを設定した後は多少の逸脱をも 気になさらずに進めていた宮崎監督とは異なる制作アプローチだった気がする)  で、原作/脚本宮崎駿のこの作品に関して高畑監督が心がけたのは 「アニメーションによる児童文学の再現」。 大人には理解できない、子供の突拍子もない創造力や行動を描写している児童文学。 真面目な高畑監督はその再現をこの機会に真摯にとりくんだ、そこが私は好きなのだ。  この映画をスクリーンで見たのは2008年のリバイバル上映時。 今回レビューを書くために改めて見直したが、大人の自分にはこの面白さは もう理解できない。一抹の寂しさを感じると同時に制作50年を迎えるこの映画が ちゃんと今でも手軽に見れる事に感謝。
[映画館(邦画)] 6点(2021-08-11 06:32:59)(良:2票)
10.  四畳半襖の裏張り しのび肌 《ネタバレ》 
長い事映画見てると初見時に比べて評価が著しく変わる作品、というのはあるもので、この映画もその内の一つ。初見は20代前半、ポルノ映画館(汗)。挿入される劇中内映画【田坂具隆「土と兵隊」/内田吐夢「土」】シーンはわずわらしいし、何よりこういう映画を見る際に期待していた性行為のシーンは唐突に黒色の枠が入り、ほとんど見えない(大量の汗)。映画終了時に前に居た酔っ払いのおっさんが、ふざけんなーと言ってたのがやけに印象に残った。で評価が変わったのが神代監督の名作「赫い髪の女('79)」を鑑賞してから。彼の映画は遺作「棒の哀しみ(’95)」に至るまで人間の孤独や寂しさを丁寧に描写していく事、そしてそんな哀しみ寂しさを抱えた男女のドラマを写し出す事がポイントであっただろう事と合わせて、彼の性行為描写は(それこそ今村昌平みたいな生命力=性欲みたいな描写とは異なる)寂しさを埋める=優しさや温もりを求めての行為なのではないのか、という観点を認識した上でこの映画を再見。するとこの作品、ロマンポルノの体を借りた彼なりの反戦映画であるのではないかと感じたのでこの点数。 特に最後芹明香がつぶやく「男と女にはあれしかないよ、バンザーイ」というのは物凄い反戦句だなと思う。国家が奨励している「産めよ増やせよ(=性行為)」政策は戦争下においては戦場に駆り出される兵士人員を生み出す為の生産行為でしかなく、男が戦場に行った後には(主人公正太郎の様な)子供か、女性しか残らないという皮肉こめまくりだから。ロマンポルノなのでそりゃぁHなシーンは多いけど、これは女性にもおすすめ出来る一本として機会があれば。あと裸を見せる事が目的の作品で演技というのは二の次かもしれないけど、やっぱり宮下順子はレベチだなぁと思うこの頃。
[映画館(邦画)] 7点(2021-04-18 07:40:13)
11.  ラスト・シューティスト 《ネタバレ》 
私は(役柄上の擬態かもしれないが)俳優ジョン・ウェインの「過度な正義感」ぶったキャラクターが好きではない。にも関わらす、この映画は映画史史上最高の「役者人生の幕の降ろし方」を実践できた稀有な例なのだと思う。癌によって余命いくばくも無い名ガンマンが訪れるその町は多分、本名マリオン・ロバート・モリソンにとっての余生を過ごす為の理想の生活を具現化したもの。友が居て、愛した女性が居て、未来を託す若者が居る。だが人間モリソンなどはどうでもよいとばかりにガンマン、ブックス(の名声)に忍び寄る暗い影。この映画における敵役は彼の人生における障害弊害のメタファー、隠喩なんだろうな。(すげぇネタばれ):彼がやられる様が1.病で体力がもたない+2.若者を人質に取られる、で3.背後から打たれるという「どんだけジョン・ウェインに配慮してんのよ」的あざとさなんだけど、それを許してしまうだけの制作陣/役者の協力の度合いが私にとって好印象なので、この点数。特にローレン・バコールの美しさに+1点。 ...最近TSUTAYAの「発掘良品コーナー」にラインナップされたので機会があれば。
[地上波(吹替)] 7点(2020-11-01 08:22:00)
12.  恐怖の報酬(1977) 《ネタバレ》 
この度2018年11月にデジタルリマスター化した【オリジナル完全版:121分】がスクリーンで上映されたので早速行ってきましたよ。私は監督フリードキンの、くどさというのか余計なショット・演出の羅列が好みでないので「フレンチ・コネクション」も「エクソシスト」も正直苦手。但この作品についてはそのくどさがまさにジャストフィットで、彼の最高傑作という世評もわからなくはない。特に物語佳境の有名な「ブランブランな吊り橋をニトロ積んだトラックでわたる」あのシーンはもう笑うしかない。オリジナルであるクルーゾーの「恐怖の報酬(53年)」の方が好みなのでそれとの差別化、という事でこのレビュー点数にしたが、意外と楽しめたという意味ではもう+1点でもいいくらい。印象的だったのは3つ。1. 53年版オリジナルにおけるラストの「あちゃぁ~」的流れよりもこのリメイク版のラストの方がより良い、という意見には100%同意。2. 原題が53年オリジナルは「THE WAGES OF FEAR(LE SALAIRE DE LA PEUR)」=文字通り直訳/恐怖の報酬なのだがこのリメイクは「SORCERER(ソーサラー)」=魔術師/呪術師なんですよね。ジャングルの熱/呪術に演者・観客も呑みこまれてゆくのか。3. 音楽。これこそまさに「ダサかっこいい」。53年オリジナルを先に見てからの方がいいかも。
[映画館(字幕)] 7点(2019-01-11 20:27:03)(良:1票)
13.  ベルサイユのばら 《ネタバレ》 
初見はレンタルビデオ(当時は2泊3日で1本700円はした時代)。今にして思えば「漫画の実写化」という意味では先駆け、しかも本国フランスでの撮影で監督ジャック・ドゥミなのだからと期待して見た20代の自分には原作漫画との乖離にガッカリ感が半端なかった。でこの度2017年にリマスター版が劇場公開されたので再鑑賞。...意外と悪くなかったのは「想い出」補正なのか。マリー・アントワネットとオスカルの「滅びの美学」みたいな雰囲気あった池田理代子原作漫画とは違い、フランス人ドゥミとしてはオスカルが一般市民として世情に呑みこまれてゆく=フランス革命→「滅びではなく人間の再出発」と解釈しているのは興味深かった。それでも点数としては4~5点くらいなんだけどね。その内ソフト化されるだろうから、機会があれば。(2017年10月修正)
[ビデオ(字幕)] 2点(2017-10-22 11:59:16)
14.  霧につつまれたハリネズミ 《ネタバレ》 
ああ私もヨージックを導く蛍や犬、魚みたいな大人でいたいなぁと思うのですが一番近いのは食いしん坊のくまさんである事に気づきました。絵本としても出版されていますが、ここはぜひ、アニメ版を。【追記:2017年5月に2Kリマスター版のBD/DVDが再発され遅ればせながら鑑賞。こりゃ本当に素晴らしい。映画館鑑賞→ビデオ→LD→DVDを購入済でくまさん&ハリネズミのぬいぐるみまで持っている私だが今回のバージョンはまさに宝物。DVDとはいわずBDで見て欲しい。】
[ブルーレイ(字幕)] 10点(2017-07-19 21:41:14)
15.  離愁(1973) 《ネタバレ》 
第二次大戦初期ドイツ軍のフランス侵攻が激化する中、疎開の為汽車に乗り込んだフランス人の修理工とユダヤ人であるドイツ女性との一抹の恋。とにかくラストシーンの素晴らしさにつきる。列車での疎開そして別れから3年後、男はレジスタンスとして捕えられた女との共謀を疑われナチスの秘密警察に呼び出される。彼女を「知っている」と認めたら彼もまた死刑になるのは自明の理だ。秘密警察の係員(ポール・ル・ペルソン=隠れた名演)に知らない旨を伝えたはいいが係員は彼女を呼び出し対面させる事で揺さぶりをかけてきた...。でラストは皆様のご想像通りなのだが、知らぬ存ぜぬが出来なかった男の想いそして彼を守る為に必死に抑えていた感情が崩れ号泣する女、ジャン・ルイ・トランティニアンとロミー・シュナイダーの演技とその心情を表す効果音やカメラワークがベタだけどいいんだよなぁ。「旅愁」「旅情」「哀愁」同じようなタイトルの作品多いけど混同しないように。機会があればぜひ...にもかかわらずDVDはもちろん廃盤。おいおい~。(追記:2016年にTSUTAYAの「隠れた名盤発掘コーナー」シリーズで待望の復刻。機会があれば)
[映画館(字幕)] 8点(2017-01-23 08:03:12)
16.  徳川セックス禁止令 色情大名 《ネタバレ》 
将軍家斉に扮した田中小実昌(!?)が側女を見定めているそのファーストシーンから素っ頓狂を画に描いた展開が繰り広げられるのでそこは覚悟していただきたい。(特に太鼓の音と栗鳥の巣の下りは死ぬかと思うぐらい苦笑いが止まらない)本当下種な部類に入る映画だが、私が感動した点は2点。まずは演出・撮影・演技等東映映画製作関係者のプロフェッショナルな取り組みで制作された娯楽作であるという事。それは冒頭における屋外におけるモブシーン撮影や屋敷や城内のセットの造りに見られ感服の至り。また観客の期待をはるかに上回る熱演を見せる各役者陣(サンドラ・ジュリアンもすごいが個人的には名和宏と三原葉子のプロ根性)には胸を打たれるものがある。そしてもう1点は鈴木監督のこの作品に対する想い。ラストシーンで示される「あらゆる生命の根源たる性を支配し管理検閲する事は何人にも許されない~」。日活ロマンポルノ路線に方針転換→警察庁に刑法175条(猥褻物陳列罪)であると摘発を受けたのが1972年(日活ロマンポルノ裁判は73年から)この作品の制作年にあたる/作中の閨房禁止令を『法令第175条』と呼びひたすら連呼している事=一見して馬鹿馬鹿しさてんこ盛りのこの作品に『「表現の自由を侵害する」為政者』をこのバカ殿で示し、糾弾していたのだ。そこにかっこよさを見る。機会があれば、ぜひ?(鈴木監督初心者は「トラック野郎」シリーズから!)
[映画館(邦画)] 7点(2015-10-10 16:41:37)
17.  県警対組織暴力 《ネタバレ》 
週刊文春での小林信彦氏のコラムで、脚本家笠原和夫が自脚本の中で「お気に入り」として挙げていた一本。監督深作+笠原は敗戦後の復興・経済成長において金と権力=強欲が絶対的な価値となってしまった社会への糾弾/恨み節としてこの作品を出したのでしょう。これまた笠原の名作「博奕打ち・総長賭博」で鶴田浩二が兄貴分若山富三郎を刺殺するのはそれぞれの義侠心/任侠道の相違から起こってしまった悲劇で世情はまだ「情」が通用した世界。ところがこの作品で刑事菅原文太が義侠心ある田舎ヤクザ松方弘樹を射殺する行為は単に気のふれた暴れ者への処置、として片付けられた感があり(しかも菅原の好意を松方が裏切ってしまった為、という点がまた切ない)やるせない気持ちにさせる。もうこの社会で義侠心=「情」は通用しないのでしょう。印象的なのは松方や菅原のシーンが全体的に暗く・侘びしいのとは対照的に権力と癒着している新興ヤクザ・成田三樹夫やヤクザ上がりの代議士金子信雄が暗躍しているシーンは妙に明るい雰囲気であること。それはラスト、ヤクザの金で建てられた石油会社に天下りした元エリート警視(戦後の価値観しか理解出来ない)梅宮辰夫が陽光下で行うラジオ体操/地方の警察官に降格され最後は雨の夜の中「消される」菅原文太を撮ったラストショットでいっそう強くなる。いつもの東映実録路線映画のメンツではあるがその中でも遠藤太津朗の「恋人」田中邦衛の存在感と、菅原文太の寂しげな姿態がポイントか。私も「仁義なき~」よりはこっちが好き。
[映画館(邦画)] 7点(2013-01-11 00:42:08)
18.  旅芸人の記録 《ネタバレ》 
この映画をスクリーンで観る事ができて本当に良かった。ラストショットで誰もが感じる徒労感の意味がビデオ鑑賞とスクリーンのそれではまるで違うから。観客席で自分は旅芸人一座と一緒になって激動の時代を生き抜いてきた、新しい世代に「命のバトン」を受け継ぐ事ができた、生きてて良かった!という感覚がわき出てきた。最初と最後のシチュエーションは同じだが、ラストの彼らは疲労困憊(これは映画館の観客もまたしかり)ではあるが明日への希望が見えた素晴らしい名場面ではないか。ギリシャ神話とその歴史に詳しければなお一層良さがわかったのに、と後悔の念を持ちつつこの点数にする。追記/監督アンゲロプロスはこの映画デビュー作から一貫して国家や宗教、人種を越えた人間の存在意義やそういった人々の真の拠り所が何なのか探求し続けた映像作家であったと思う。そんな彼の作品をもうスクリーンで観る事ができないのが残念だ。ご冥福をお祈りします。
[映画館(字幕)] 9点(2012-02-05 15:23:57)
19.  やさぐれ姐御伝 総括リンチ 《ネタバレ》 
「不良姐御伝」と同じく池玲子=猪鹿お蝶を主演にした続編だが、やはり監督が輝男なのでその趣はとことん異なる。だいたいストーリー上女優が裸になる必要性がない時でも 、皆様脱ぎまくる(麻薬を持ち運ぶ手段としてああいった方法を活用する、という時点でもうフリーダムである)。敵対関係があってそれぞれにらみ合っていた辰雄と徹、宏だがさんざこき使っていた女達が(もちろんスッポンポンで)襲いかかってくるのを見て取るや「みな協力しまひょ」と握手をする。私はこんな悪役彼らが大好きだ。よくわからない内に挿入される精神病院(ねじの飛びまくった女性達)+お約束の大泉滉。ラストの乱闘シーンで女性陣がばんばん脱ぎまくる中で悪役の一人が根岸明美に向かって叫ぶ、「お前は脱いだらあかんぞ!」という台詞は多分この映画を観ていた全ての観客の意見であったろう。(10人中9人は受け入れられないだろう)輝男が好きなあなたに送る、日本のピンキー・バイオレンス映画史に残る快作。
[映画館(邦画)] 7点(2011-08-02 00:36:39)
20.  0課の女 赤い手錠 《ネタバレ》 
私にとって杉本美樹はまさに青(性?)春の女優であった。友達は皆、「夕ニャン」を見て「毎度お騒がせします」で中山美穂にときめいていた時に、自分は年を偽りエッチ映画館に入って一所懸命に東映ピンキー・バイオレンスを堪能していたのだった。(今にして思うとすごいおけべ野郎である。)彼女よりも美しい、グラマーな女優はたくさんいた。だか自分が彼女に惹かれたのは全身全霊で(裸つき)役に取り込む真の「ど根性」。それはどんな漢よりもたくましく、かっこよかったのだ。そんな彼女にどこまでも、ついて行きます!だったわけだ。で彼女の最高傑作は間違いなくこの一本。ある意味周りのキャストにも助けられた感はあるが、本来は可愛いキャラクターの彼女が「女番長」シリーズで築き上げた「日本のクール・ビューティ」路線はここに行き着いた。たしかに彼女は大根だったかもしれない。だがここまで上手い大根はない!とめちゃくちゃ矛盾している文章を書いてこのレビューを終わりにしよう。ここまでお付き合い下さいまして、有り難うございました。  
[映画館(字幕)] 8点(2011-07-18 23:28:36)(良:2票)
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