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プロフィール
コメント数 2392
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  明日に向って撃て!
ニューマン&レッドフォードは映画史に残る鉄壁のコンビですが、意外なことに本作と『スティング』だけなんですね。やはりその中でもこの映画が最高で、彼らとキャサリン・ロスの三人こそベスト・オブ・三角関係と呼んであげたい(対抗馬は『冒険者たち』でしょうかね)。 この映画はよくニュー・シネマ西部劇と言われますが、ニュータイプのウェスタンかもしれないけど私は決してニューシネマじゃあないと思っています。まあ主人公が最後に死ぬということぐらいがニューシネマらしさで、ときにはコミカルそしてノスタルジックな撮り方はニューシネマという範疇を超えていますし、ジョージ・ロイ・ヒルの映画監督としてのセンスの良さを存分に愉しめます。バート・バカラックのサウンド・トラックも彼の最高傑作で、最初に観たときの感動は今でも忘れられません。 映像も音楽も今観直しても全然色あせていない、珠玉の傑作です。
[映画館(字幕)] 10点(2014-08-02 22:52:27)
2.  2001年宇宙の旅
本作は私たちの世代には観たくても観られない“幻の映画”だった時期が長かったのです。封切時に観た友人がいて、彼の持っていたテアトル東京の名が入ったプログラムが宝物みたいでとても羨ましかったものです。ぴあの『もあテン』がきっかけになって再上映を求める運動が起きたことは今や伝説ですが、ついにリバイバルされたときはもちろんテアトル東京に駆けつけました。 最初の20分はセリフがまったくなくて(そりゃ猿人しか出てこないんだから当然ですよね)、この映画まさか全篇セリフがないんじゃないかとちょっと心配になりました。そして上映終了、場内が明るくなると満員の観客の8割が首をひねって「訳わからん」という表情だったのを鮮明に憶えています。でも不思議なんですけど、初見の時からこの作品を難解だと思ったことは一度もないんです。何と言うか、キューブリックのイマジネーションが、自分が何となく宇宙や地球外知的生命体そして神について感じていたことにひとつの解答を与えてくれたような気がしたからでしょう。 映画史には、その作品が登場したことによって映画の概念を変えてしまったオーパーツのような特別な映画がありますが、『2001年宇宙の旅』はその筆頭でしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2013-02-11 22:15:16)(良:2票)
3.  天国と地獄 《ネタバレ》 
黒澤明の現代もの映画は今一つ好みではないのですが、本作だけは例外・別格です。序盤の舞台劇を思わせる対話劇からして緊張感でもうピリピリですし、身代金受け渡しシークエンスから一挙に躍動し始める作劇も見事です。あの特急列車を実際に走らせて一発勝負で撮った(実際には撮り直したそうですが)シーン、これほど緊迫した映像は映画史の中でも類を見ない壮絶さです。そして煙突から牡丹色の煙が上がるシーンになると、満席の映画館でいっせいに拍手が沸き起こったのは、そんなこと初めての経験だったのでほんとびっくりしました。これこそ、初めて黒澤映画に色彩がついた瞬間なんですよね。 思えばその当時(70年代)、黒澤や小津の映画を褒めることはダサいというのがジャーナリズムの風潮だった時代に、黒澤映画の価値が判っていたのは市井の映画ファンたちだったのだなと、しみじみ感じます。
[映画館(邦画)] 10点(2012-06-15 00:41:04)
4.  恐怖の足跡 《ネタバレ》 
ご存知「あなたはすでに死んでいる」ネタの元祖となった映画。こんなカルト映画に10点をつけるのもどうかと思われるかもしれませんが、私にはどうしても外せない一本です。幼稚園児ぐらいのころ、街かどでこの映画のポスターを見て強烈なトラウマになった経験があるからです。昔の映画の看板やポスターは子供が見たらマジでビビる様なのが多かったですよね(同時期に公開されてた『フランケンシュタインと地底怪獣』の巨大な看板もとても怖かった記憶があります)。しかし無名俳優と低予算で製作されて、これほどその後の映画に影響を与えた映画も珍しいのでは。顔を白塗りしただけの亡霊たちなのですが、これが実に不気味で、ロメロのゾンビにインスパイアを与えたことは今や有名な話しです。全篇で使われるパイプ・オルガンをフューチャーした音楽もまた不気味で、その音楽に乗って死霊たちが舞踏会を繰り広げるラスト10分はホラー映画の歴史に残る強烈なシーンです。
[インターネット(字幕)] 10点(2011-09-02 23:31:48)
5.  8 1/2
本作は70年代ぐらいまでは「映画史上オールタイムベスト1」に選ばれていたぐらいでしたのに、最近はだんだん評価が下がってきちゃいましたね。製作された時代はお隣のフランスではヌーベル・バーグの嵐が吹きまくっていたころですが、不思議とイタリア映画界には影響が少なかった様に思います。そんな中でフェリーニのゴダールやトリュフォーの挑戦に対する答えが本作なのです。 映画作家の夢や妄想をそのまま映画にしちゃったのは当時としては前代未聞の快挙で、この手法は後年さまざまな映画監督が自分の『8 1/2』を撮っていることでも本作のずば抜けた偉大さが判ります。フェリーニはユング心理学の信奉者だったそうですが、自分の実際に見た夢をこれだけ壮麗な映像に再現できるとは、いやはやさすがマエストロですね。 「難解だ」と言う感想が多いですが、D・リンチのようなときとして観客を無視する様な「訳のわからなさ」と比べれば、フェリーニには人間味が濃厚ですから、これほど判りやすい監督はいないのではと思いますけど。 「歳をとってから観て良かった」というのが自分のいちばんの感想ですね。あの有名なラストシーンには、不覚にも涙がこぼれてしまいました。
[DVD(字幕)] 10点(2010-08-24 20:54:21)(良:1票)
6.  ジョアンナ 《ネタバレ》 
監督のマイケル・サーンは、「ナバロンの要塞」などに出演した俳優(最近ではイースタン・プロミスに出演しているそうです)兼シンガーソングライター兼映画評論家ですが、長編第一作のこの作品は彼の才気が爆発しています。60年代スゥインギングロンドンの雰囲気がたまらなくカッコ良いのです。この映画は、駅の場面で始まり駅の場面で終わるのですが、オープニングのカッコ良さは鳥肌ものです。ラストはジョアンナが列車に乗って故郷に帰るのですが、なんと彼女は撮影中のスタッフにまでお別れのキスをして回り、列車が去ったあとカーテンコールよろしく全出演者がホームでダンスをするというしゃれた演出です。ジョアンナ役のジュヌビェーブ・ウェイトは下手な演技ですが不思議な雰囲気を持っています。アートスクールの学生という役柄、ジョアンナのカラフルなファッションは現代でも通じるセンスでした。制作40年記念してDVD化して欲しいものです。 【追伸】祝! 熱狂的なファンの夢がかなって『マイラ』と共についにDVD発売! 本作は大森一樹や大林宣彦など日本映画人にもファンが多く、また『スラムドッグ・ミリオネア』のエンディングなんか、パディントン駅でのカーテン・コールへのダニー・ボイルからのオマージュですよ。DVD発売を機会にもっと大勢にぜひ観て欲しい傑作です。『ジョアンナ』観ずしてスゥィンギング・ロンドンを語るなかれ!
[地上波(字幕)] 10点(2008-12-24 23:04:39)
7.  まぼろしの市街戦
昔はTVで吹き替えで見れたのに、「言葉狩り」が厳しくなるにつれて放映されなくなり、すっかり「まぼろしの大傑作」になってしまいました。一部には熱狂的な支持者がいる(かく言う私もそのひとり)カルトムービーの名作です。3年前にDVDが発売されていることを知り狂喜しました。この映画について書きだしたらきりがないのですが、一人でも多くの人に見てもらいたいですね。私のオールタイム・フェバリットワン・ムービーです。
[DVD(字幕)] 10点(2008-12-19 23:45:30)
8.  清作の妻(1965) 《ネタバレ》 
模範兵として兵役を終えて帰郷した清作(田村高廣)が持ち帰った鐘の音は、因習が渦巻きドロドロした人間関係の村人たちには怠惰な生活に浸っていた自らを顧みる機会を与えたようにも感じられる。しかしただ一人その鐘の音にも無反応だった隣家の妾崩れのお兼(若尾文子)の境遇に、清作は惹かれて愛情を抱くようになってゆく… やはりこの映画は、数多い増村保造&若尾文子コンビの中でも、最高傑作として評価されるべきなんじゃないかな。それぐらい本作の若尾の演技には打ちのめされてしまいます、彼女自身が「自分が出た中でいちばん好きな映画」と言うのも納得です。彼女が演じるお兼は、お妾ながらも精一杯愛情を注ぐ隠居の爺さん(殿山泰司)にも冷たく、それこそ村人たちの陰口通りのすれっからしの女でしかない。不幸な家庭環境だったのは間違いないけど、観ている方としては全然感情移入できない。それが清作に出会ってからはどんどん変わってゆき凄まじい情念が迸る女になってゆく、これは若尾文子でなきゃ出来ない凄い演技です。彼女が清作を愛するあまりにとった極端な行動は、あの阿部定を彷彿させるところがあります。また二人を取り巻く家族や村人たちの俗悪というか民度が低いこと、これは20世紀初頭の日本人の平均的な姿なのかもしれません。盲人となった清作が鐘を打ち捨てるところは、「実は自分もつまらない俗物だった」と覚った内心の顕われになっていて、劇中でも重要なシーンです。 徴兵されて戦死する庶民の悲哀もテーマの一つになっていて、恋愛映画だけど反戦映画でもあるわけです。本作は同一原作で戦前に製作された映画のリメイクになるそうです。戦前にこれほど赤裸々な反戦的なテーマの映画が撮られていたとは到底思えないので、これこそ新藤兼人脚本の真骨頂があるのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2023-10-30 22:28:25)
9.  切腹 《ネタバレ》 
井伊家上屋敷に突然現れた浪人・津雲半四郎、「当家の玄関先で切腹させてください」と申し出る。食い詰めた浪人者が大名屋敷に押しかけて腹を斬らせろとごねて金品を恵んでもらうというゆすり・たかりまがいの手口が多発していた昨今、「どうせ腹をさばく覚悟もないたかりだろ」とタカをくくった家老・斎藤勘解由は津雲を追い返すべく面談する。それは日本時代劇史上まれにみる陰惨かつグロテスクなストーリーの幕開けであった。 いやぁもう、凄い映画としか言いようがありません。数ある橋本忍の脚本の中でもトップクラス、ひょっとしたらベスト・ワンなのかもしれません。津雲半四郎=仲代達也と斎藤勘解由=三國連太郎の緊迫したやり取りから始まる序盤から、謎の浪人・津雲は何の意図があってやって来たのかが判らないまるでミステリー現代劇のような展開、もうぐいぐいと引き込まれてしまいます。幕藩体制が固まってきた寛永年間、各藩は多くの従業員を抱える法人組織みたいな存在になっています。井伊家は言ってみれば名門大企業、芸州福島家はちょっと大きめの中小企業みたいな位置付けでしょう。幕府の引き締め政策が猛威をふるって地方企業がバタバタ潰れても、財閥企業である井伊家はびくともしないわけです。そして大企業らしい官僚制のうえ建前でガチガチに固まった組織、これは現代のメガ企業のオマージュじゃないかと思うほど60年代とは思えない鋭い視点です。斎藤勘解由や沢潟彦九郎=丹波哲郎が振り回す“武士の面目”はたしかに武家社会のど正論なんですが、裏を返せば体面を保つための手段に過ぎなかったという事が劇中で見事に喝破されます。騒動が終息して記される覚書にも、まるで「西部戦線異状なし」という感じで隠蔽される幕の閉じ方、もう無常観が半端ないです。 まるで舞台劇のような展開でしたが、ラストニ十分の斬り合いがまたリアルです。さすがに眠狂四郎でも勝てるかどうかというぐらいの井伊家の手勢の人数、満身創痍になりながら息が上がってくる仲代達也の立ち回りが壮絶です。そして沢潟彦九郎=丹波哲郎との決闘、なんとこのシーンは両者とも真剣を使っていたんだと。私は剣道には知識はないですけど仲代達也の構えは戦国時代の実戦的なものなんだそうです。それにしてもこの映画での丹波哲郎は、立ち振る舞いからして迫力があってほんと強そうです、この人は剣豪役をやらせたらピカイチですね。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2022-05-30 22:08:51)(良:2票)
10.  しとやかな獣 《ネタバレ》 
ほぼ団地の一室だけに限定された空間で繰り広げられる密室劇。登場する四人の家族のキャラの異様さは数ある日本映画の中でもほぼ頂点に近いんじゃないでしょうか。「うちの娘は不思議と妊娠しないんですよ」という伊藤雄之助のセリフがありますが彼は私が今まで観た映画でもっとも異様な父親です。要はこの夫婦は息子が横領してきた金と娘が愛人からせびってきたカネで優雅な暮らしを維持する寄生虫みたいな存在ですけど、妙に丁寧な言葉遣いで捲し立てられる二人のそれを正当化するロジックは、聞いているとふと納得してしまいそうになるから恐ろしい。基本的に横移動に徹する撮影には、歌舞伎の音を挟んだ進行もあって歌舞伎か能の舞台を見せられている印象すらあります。またこの映画の特徴は、劇伴としての音楽の使用を最低限にして、開け張られた窓から聞こえる音がその代わりを果たしているように感じるところです。ジェット機の轟音、蒸気機関車の音、夕立の雷、そして最後は救急車(パトカー?)のサイレン、などが印象的な使われ方をされています。そして時おり挿入されるドイツ表現主義を思わせるような誇張された階段を使った人物の心象表現がまた深みをつけてくれていますね。ここまで来ると、もうコメディというよりも心理ホラーと分類した方が正解かもしれません。全編でほとんど感情を交えることなく押し通す若尾文子の悪女も秀逸で、彼女が演じた中で最高のヴァンプなのかとすら思えます。 やはり本作は新藤兼人の脚本の最高傑作じゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2021-03-09 22:41:09)(良:1票)
11.  華麗なる週末 《ネタバレ》 
タイトル・ロールで気づくのですが、すでにドル箱スターだったスティーヴ・マックイーンが主演なのに、この映画はインデペンデント映画なんです。なんでまたこんなマイナーな予算の映画に出演したかと言うと、クラシックカーを思う存分運転できることに魅入られたからで、いかにも熱狂的なカー・マニアだったマックイーンらしいエピソードです。劇中で使われる“ウィントン・フライヤー”という車は実在せず、1905年当時の自動車を模したレプリカが使われました。でもマックイーンはこの車にえらく惚れこみ、撮影終了後に買い取って彼の有名なモーター・コレクションに加えたそうです。 本作はマックイーンのファンであるならば絶対に観ておかなければいけません。おそらくこれがマックイーンの唯一のコメディ演技が観れる作品だと思いますが、彼のバラエティーに富んだ表情が観れてもう感涙ものです。原作がウィリアム・フォークナーですから南部情緒がたっぷり、でも柔らか目ですけど南部黒人の地位に対する批判も感じられます。マックイーンの幼馴染で悪友が黒人なんですが、彼は悪さしても町のセレブたちにも堂々と態度を崩しません。その理由が彼は町の有力者の曽祖父が奴隷に産ませた子の子孫で一族の一員だという理屈なんですが、米国人以外にはちょっと笑えない話ですね。ちなみにこの役を演じたルパート・クロスはオスカー助演男優賞にノミネートされましたが、この賞にノミネートされた初の黒人俳優なんだそうです。 監督は名匠マーク・ライデルで、やはり彼の監督作には外れがないですね。このサイトでも全監督作が6点以上の評価ですから大したものです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-07-24 22:49:18)(良:1票)
12.  豚と軍艦 《ネタバレ》 
唐獅子みたいなご面相で決して美人とは言い難い吉村実子、でも不思議とこの人には引き付けられる魅力があるんです。まして本作が17歳のデビュー作、とても高校生の新人とは思えない溌溂とした演技が素晴らしい。数年前に『徹子の部屋』に出演しているのを見ましたが、すっかり魅力的なおばあちゃんになっていて感慨深かったです。 今村昌平の最高傑作と言えば、やはり本作になるんでしょうね。この映画が若き日のマーティン・スコセッシに衝撃を与えたという逸話は有名ですが、確かにピカレスクものとしては『グッドフェローズ』に通じるところがあるかもしれません。今村昌平らしく“敵はアメリカ”“悪はヤクザ”という徹底的に冷徹な視点、ヤクザ業界とズブズブな東映じゃないのでヤクザ組織のクズっぷりをこれでもかと突き付けてくれますが、ここもマフィアに厳しいスコセッシと通じるところがあるのでは。でも長門裕之と吉村実子のカップルはまさに「どぶの中の青春」という感じですけど、まだ少年の面影が残る長門裕之の弾けっぷりが見ていて愉しいです。印象良かったのは兄貴分の丹波哲郎で、肩の力が抜けた軽やかなコメディ演技ができたとは意外でした。丹波が横須賀線の電車に飛び込もうとするシーンで線路際に建っている大きな日産生命の看板、強烈なブラックユーモアでした。でもよく見るとタイトルロールに「協賛 日産生命」と出てました(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-10-12 23:08:36)
13.  裸のジャングル 《ネタバレ》 
独特のテイストを持った戦争映画『ビーチレッド戦記』を撮ったコーネル・ワイルドが監督の忘れられた逸品、近年はメル・ギブソンの『アポカリプト』のパクリ元として一部では有名になっています。彼は元オリンピックのフェンシング代表選手からハリウッド入りしたB級映画専門のアクション俳優(経歴からするとジェイソン・ステイサムみたいですね)でしたが、それよりも俳優出身監督としてメル・ギブソンやイーストウッドの先がけ的な存在です。本作のプロットやエピソードは『アポカリプト』がそっくり真似しているそうなのでそっちを参考にして下さい、というわけにはいきませんよね(笑)。 コーネル・ワイルド扮するガイドが仕切る像狩りツアーの一行は、メンバーが侮辱したせいで原住民に捕まってしまいます。白人もポーターの黒人もなぶり殺しにされますが、ワイルドだけは素っ裸で草原に放たれ8人の原住民たちの人間狩りゲームの獲物にされてしまいます。厳密にはジャングルじゃなくてサバンナなんですけど、ワイルドはけっこう逃げ足が速くまず反撃で1人殺してとりあえずサンダル、次に殺した奴からパンツと武器を装備して態勢を整えます。 実はワイルドたちが捕まる開幕10分以降、この映画では英語のセリフは皆無になります。あとは現地人たちが喋るスワヒリ語(?)だけになり観客にコミュニケーション疎外感を味あわせるのが監督の狙いでもあるんですが、何とDVD版には現地人の会話に字幕が付くんですよね。彼らのセリフが判らなくても観てればだいたい判りますし、雰囲気を味わうためにも字幕オフをお奨めします。人間たちの追っかけっこのシーンと交互に野生動物たちの狩りの実写フィルムが挿入されるんですが、これがけっこうエグイんです。アナコンダがオオトカゲを絞め殺すところや大ガエルが小ガエルを共食いするなど、でも観てると人間狩りしている連中も同じ野獣なんだなと納得させられました。途中、アラブ系の奴隷商人軍団が原住民の村を襲って奴隷狩りするところに遭遇し、逃げ遅れた少女をワイルドが助けるエピソードもあります。この少女とのふれあいと別れは良く考えられた脚本で、ジーンとくるものがありました。 ラストはなんか清々しいんですけど、観れば判りますけどそっくり『プレデター2』がパクってます。こうやって考えると、この映画は後世の作品に影響を与えたり丸ごとパクられたりしていて、まさに隠れた傑作と呼ぶに相応しいと思います。
[DVD(字幕)] 9点(2015-09-10 21:41:05)(良:1票)
14.  終身犯 《ネタバレ》 
今まで自分が観た中で最良の刑務所映画、『ショーシャンクの空に』なんてこの映画の足元にも及びません。また、主人公が脱獄しようとしない唯一の囚人映画でもあります。だからこの映画では一生を刑務所暮らしする人間とはどういう存在なのか、また更生とはいったい何なのかということを鋭く問題提起しています。 囚人が苦労してその道の達人にまでなったというのは日本人好みのいわゆるイイ話になっちゃいそうですが、そんな単純な撮り方をしてないところが監督フランケンハイマーの凄いところです。バート・ランカスターの演じるストラウドからしても、映画の前半では狂信的なまでに反抗精神が強いあまり共感を呼ばないキャラです。そんなランカスターが「お前には人に感謝する気持ちがない」と看守に指摘されてハッと気づき、「今まですまなかった」と謝り生まれ変わった様になるシーンには心を打たれました。ほんと人間には感謝の気持ちを他者に持つことが大事なんですね。彼は『真昼の暴動』でも囚人暴動のリーダー格でしたが、本作では非常に抑えた演技が光ってました。 このランカスターを取り巻く刑務所の人間たちがいい味出してます。初めは嫌っていたが生涯の友となる看守のネヴィル・ブランドや、粗暴ながらもカナリヤ飼育によって人間味が増してゆく囚人テリー・サヴァラスがいい演技を見せてくれます。主人公ストラウドにしても常に突き放した様な客観的な演出で通しており、決してハッピーエンドではない終わり方にも納得させられます。 「更生とは尊厳を取り戻すことだ」というランカスターのセリフは、キリスト教的な意味合いもあるんでしょうけど考えさせられます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-29 22:12:23)
15.  猿の惑星 《ネタバレ》 
間違いなく史上もっともネタばれしている映画です。「人類滅亡後の猿が支配する地球に帰りついた宇宙飛行士」なんて映画紹介を書くジャーナリストまでいるぐらいで、おそらく20歳以上でこの結末を知らない人はいないでしょう。でも公開間もない頃に何も知らずにこの映画を観てしまった時の衝撃ときたら、自分の中では未だに三大トラウマ映画のひとつに君臨しています。 昨今の邦画と違っていろいろなプロット上の謎を放置したまま物語は終わってしまいます。宇宙船は何を目的としていたのか、人間はなぜ言葉どころか声さえ出すことが出来ないのか、などけっこうあるんです。でもこういうあまり細かいところを追求しないストーリー・テリングも観る者の想像力をかき立てる効果がありますね。脚本上どうしてもクリアできなかったおバカな部分は多々あります。だいたい猿が使っているのが英語だという時点で、テイラーはここは地球じゃないかと気づかねばなりません。そりゃ広大な宇宙では生命体が存在する地球に酷似した天体があるでしょうけど、使われている言語まで一緒だなんてさすがにあり得ないです。洞窟の中で人形や眼鏡まで発見しているのに「これは地球の文明に良く似ている」なんて講釈たれるところなぞ、もうコントみたいな感じですよね。まあそこら辺はいきなり人間と猿が逆転している世界にほうり込まれたら、普通の人なら混乱して冷静な思考が出来なくなるだろうからということで、大目に見ておきましょう。 原作者ピエール・ブールの日本軍による捕虜体験(どうもこれはウソみたいです)をカリカチュアしたストーリーだと解釈する向きがありますが、猿の文明における進化論が出てくるところなど観ても、私には製作当時のアメリカ社会に対する風刺が色濃い脚本じゃないかと思います。あまりによく出来たプロットなので、色んな時代や社会の暗喩として捉えることができるのは、まさにこの映画の偉大なところでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-05-02 15:11:48)
16.  網走番外地(1965) 《ネタバレ》 
良く考えてみると脱獄してからの展開は『手錠のままの脱獄』のパクリみたいなもんですが、そんなことを微塵も感じさせない痛快な作品です。広大な国土のアメリカと違って日本では脱獄は自殺行為だと思ってましたが、こういう風に北海道の最果てなら成功して逃げ切れそうな説得力があります。 いつも通りのストイックで家族思いの高倉健なんですが、この映画の健さんは饒舌とまではいかないにしても良く喋るんです。入浴のシークエンスではハダカで阿波踊りまで見せてくれるんですから、びっくりです。でも随所で流される健さんのナマ歌『網走番外地』には、なんか荘厳な響きすら感じて震えちゃいました。 監督の石井輝男を始めとしてアラカンや丹波哲朗といった新東宝の残党メンバーたちの底力がこの作品を傑作にまで高めたのかもしれませんね。アラカンの鬼寅はさすがの迫力でしたし、丹波が最後までイイ人だったというパターンも珍しい。この映画は本来二本立て興行のBプロとして撮られた小品なんですけど、これでも新東宝の予算じゃ決して撮れない企画なんだから石井輝男も思い残すことなかったでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-02-10 20:16:10)(良:1票)
17.  華岡青洲の妻 《ネタバレ》 
傍目には良好な関係を築いていたように見えた於継と加恵が、映画が始まって30分近くなってようやく青洲が登場した途端に息が詰まるようなバトルを始めるところがまた強烈。雷蔵・若尾文子・高峰秀子の壮絶な演技合戦は、もうこれは必見としか言いようがありません。高峰秀子がこんなに怖い女を演じてたなんて今まで知りませんでした、ほんと迂闊でした。華岡青洲という人は努力の天才でエゴイスト、そしてマッドサイエンティストだったんだなと言うことが良く判ります。 新藤兼人の脚本に冷徹な増村保造の演出なんだから、そりゃあ凡庸な映画になるわけがありません。麻酔が効き始めて悶え苦しむさまや二度の出産シーンなど、こういう題材でもきちんと若尾文子のエロティシズムを見せてくれるところは増村保造ならではです。そしてマンダラゲの畑の中に若尾がすうっと姿を消してゆくラストカットがまた素晴らしいんです。 昭和の女優の底力を堪能させてくれる一本です。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2014-10-24 22:29:22)
18.  真夜中のカーボーイ 《ネタバレ》 
アメリカン・ニューシネマを語るにあたって、この映画を外すわけにはいかないでしょう。主人公が最後に死ぬのがニューシネマの半ばお約束みたいなもんですが、この映画のダスティン・ホフマン=ラッツォぐらい惨めでやるせない死にざまは空前絶後なんじゃないですか。 「俺、ションベン漏らしちゃったよぉ(泣)」、もうこのシーンはジョン・ボイトになり変ってラッツォを抱きしめてやりたいくらいです。でもこの結末には確かに深い虚しさが漂っているけど、私にはそこはかとない希望の光を感じられるのです。ジョン・ボイトも自分のアイデンティティだったカウボーイ衣装をゴミ箱にほうり込み、陽光あふれるフロリダで地道に働き新しい人生を始める事が暗示されている様に思います。他のニューシネマ作品とは違ってアナーキーさは薄くて、弱者への優しい視点が感じ取れるのも好きです。二ルソンの名曲“Everybody's Talkin”の使い方も良いですしね。
[映画館(字幕)] 9点(2014-06-11 21:04:51)
19.  その場所に女ありて 《ネタバレ》 
最近『悪の階段』を観るまでは恥ずかしながら鈴木英夫監督のことを全然知らなかったのですが、昭和30年代にこんなにハードボイルドでしかも女性が主人公のサラリーマン映画を撮っていたなんて、本作を観てさらにぶっ飛びました。昼は会議室や応接室、夜は酒席でビジネスが進む、営業系サラリーマンの仕事ぶりが実にリアルに描かれています。 そして司葉子のカッコいいことと言ったら、さすが昭和を代表する美人女優のひとりです。現在はすっかりふっくらしたおばあちゃん(失礼)ですが、この映画で見せるショートヘアのいかにも出来そうな営業ウーマン姿にはもうほれぼれとしてしまいます。それまでお嬢さん女優だった彼女にこういうシャープなキャラを演じさせるとは、『悪の階段』で団玲子に悪女を演らせた鈴木英夫ならではの手腕にもう脱帽です。 ライバル社の広告デザインをこっそり手掛けて報酬をもらう主任デザイナー(完全な背任です)、社内で金貸しをやって月三分の利子を取る女子社員(超高金利!)、こういったまだ生きてゆくのに精いっぱいだった時代のホワイトカラーの生態には考えさせられるものがあります。最近『ALWAYS 三丁目の夕日』なんかで昭和30年代が過剰に美化される風潮がありますが、高度経済成長前期までの日本はまだまだ喰うのに精いっぱいだったのです。司葉子が査問に懸けられてクビになりそうになるシーンでも、「私が生活し生きてゆくにはこの会社が必要なんです」と毅然とした態度で訴えます。現代で重要視される「やりがい」とか「自分らしさ」なんて御託を並べる余裕は誰にもなかったんです。 社長シリーズや無責任男シリーズを量産していた陰で、こんなリアルでカッコいいサラリーマン映画が東宝で撮られていたとはほんと驚きでした。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-02 23:44:44)
20.  悪の階段 《ネタバレ》 
大金を強奪した5人の男女が仲間割れというありふれたプロットなのに、不思議なほど引き込まれる魅力を持った作品です。キャスティングだけでこの映画の評価の8割は決まったとも言えます。山崎勉は『天国と地獄』の竹内銀次郎からさらに人間的感情を削ぎ落してもっと冷酷にした様なはまりキャラです。西村晃がこういう役をするのは別に珍しくはないけど、きっちり期待以上の演技を見せてくれます。一味の中に加藤大介を入れるというのがまた絶妙で、彼としては珍しい犯罪者役ですがやっぱこの人は上手いわ。そしてあの東宝きってのお嬢様女優である団令子が崩れた悪女だというのが驚きです。こういう役は、彼女のフィルモグラフィ中でも唯一ではないでしょうか。 不動産屋の中にほぼ画面が限定される後半は、二階と地下に昇り降りする階段を意識した画面造りには拘りを感じさせます。でもあの水筒のシークエンスはちょっと不自然で、だいいちあんな水筒、お店で売ってないでしょう(苦笑)。それまで山崎勉があまりに怜悧だったから、このシーンにももっと裏があるんじゃないかと勘ぐってしまって拍子抜けしちゃいました。でもこの映画の持つ独特の雰囲気はフレンチ・ノワールを東宝映画調に昇華させることに成功しており、まさに隠れた傑作と呼んで過言は無いでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-10-20 20:05:30)
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