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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1248
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  こねこ 《ネタバレ》 
ネコだらけの映画である。主人公ネコの子猫らしい動きに和まされ、うちの♂♀もこんなだったかと思い出す。子猫の時期などほんの一瞬なわけだが、しかしそれなりに年を経てもなおその存在自体に愛嬌を感じさせるのがネコというものである。ラストの哀愁漂う場面で、下のネコが上のネコにネコパンチをくらわせていたのは笑った。 劇中時期は12月で、積雪はそれほどないようだが寒さは相当のものだろうと思われる。飼いネコでも昔は家を自由に出入りさせていたのは日本だけではなかったようで、行方不明のネコを呼んで歩くとか張り紙を貼るとかいう行動様式は、日本でいえば「うちのタマ知りませんか」という言葉を思い出す。 劇中ネコが街の人々に厚遇されていたのはネコ映画なので当然としても、やはりネコを愛する人々はどこにでもいるという気にはさせられる。満ち足りた一家でも孤独な男の家でも、それぞれにネコが人の心を和ませるからこそ、ネズミ退治の役目を超えてネコが世界で必要とされているわけである。人がネコ(や犬その他)に対して優しい気持ちを持てるようにするためにも、まずは人間社会の平和が保たれていなければと思わされる。 ネコ以外で特徴的なこととして、クラシカルな背景音楽が流れていると思ったら劇中音楽だったという場面が多かった。夫は音楽家で妻は設計士だったらしい。  ほか人間社会のことに関して、ペルシャ猫につけた「10万」という値段は、たまたま持っていた紙幣2枚で済んだのをみるとそれほど高額でもなかったと思われる。この頃は急激なインフレが起きていたとのことで、1998年には1/1000のデノミが行われている。 また夜に街灯が消えるという父親の発言が否定されていたのは意味不明だったが、これも時代の変化を表現したエピソードだったのか。昔はどうだったか知らないが、現代の大都会では深夜も明かりが絶えることがなく、日頃から早く寝ろと言われている子どもらもちゃんとそれを知っていたというのは、どちらかというと社会の自由化や解放感の表現かも知れない。今の世の中何が起こるかわからないという台詞(字幕)もあったが、世界が変わっていくのは当然として、できればいい方へ変わってもらいたいわけだがそうとも限らない。
[DVD(字幕)] 6点(2022-08-06 09:41:02)
2.  ラブ ゴーゴー 《ネタバレ》 
台北に住む若者の群像劇のようなもののようで、前に見た「熱帯魚」(1995)よりは都会的でポップな印象がある。解説によれば「3つのストーリーが結晶する感動のラスト」だそうだが、何が「感動のラスト」なのかはわからない。とりあえず「3つのストーリー」とは以下の3つと思われる。  1.パン屋 いわゆるイマジナリーフレンドが、単なる夢想ではなく実体があったという感じの設定らしい。この男自体は全く好きになれないが、相手への思いが単なるスケベ根性ではなく、純粋なものだとわかったところは感動的だった。これで恋愛成就につながるのか不明(疑問)だが、今回の件で創造性を刺激されて仕事に一層励む気にはなったらしい。 2.かわいいゾウ(自称) この人は不運というしかない。勝手に夢想を膨らませていたのはお互い様らしいが、あんな男と縁がなかったのはせめてもの幸いだ。最後はポケベルから携帯電話に移行していたが、近年の邦画で「スマホ拾っただけなのに」(2019)というのもあったように、変に拾うとろくなことがないのは今回もうわかっただろうと思われる。なお「ゾウさんゾウさん」というのは台湾の歌なのか。 3.若い営業マン ゾウさんに「乳離れしてない」と言われたタイプの男。地図を見て、つまり飛行機や高架鉄道の視点から街を見て、そこに住む人々を想像するというのは浮世離れした夢想家ということらしい。終盤の屋上の場面が長かったのは、地べたよりも空に近いこの男の意識(別世界)の表現ではないか。これまで世間とは接触不良だったようだが、今回一人の人間の存在を実感したことが、これから現世とのつながりを作っていく過程の一段階になったと思われる。 なお屋上での散髪の様子を多方向から映していたのは少し手が込んでいた。この男と一緒の時間を過ごしたことで、美容室の店主にとっても少し新しい視野が広がったかも知れない。  そのほか音楽クリエイターが台北を去ったのを含め、最後は全部同じ日の出来事だったらしい。同じ日といっても出来事自体は別々であり、題名から予想される恋愛物語にも見えないが、それよりは「熱帯魚」のような、夢想から現実へ移行していくエピソードの集合体と思えばいいか。また美容室の店主にしても、男連中の人間像に触れたことが少し救いに感じられたかも知れない。 なおこの店主が片脚を少し引きずるようにしていたことの意味はわからなかった(訳あり?)。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-04-09 09:26:17)
3.  熱帯魚 《ネタバレ》 
デジタルリストア版というのをBDで見たので映像的には美しい。大人も子どもも一緒になって「ウンチ」で大喜びするなど、本当にしょうもない場面が美的に映されている。ポスタービジュアルで印象的なビル街の熱帯魚はちゃんと動く映像として出て来ていた。 場所に関しては、実在の地名が出るので嘉義県東石郷(漁港がある)だとわかる。人家がときどき浸水するなど本当にあることなのかわからないが、ストーリー上の意味はあったようである。劇中一家の嫁がバンブーダンスのようなもので遊んでいた(微笑ましい)のは現地の風物ということかも知れない。 日本との関係では卒業式の「仰げば尊し」とか、「刺し身」「ワサビ」という言葉が出ていた。また海に潜る場面で流れた曲はどこかで聞いたことがあると思って一生懸命調べたところ、何と昭和歌謡「恋をするなら」(橋幸夫、1964)だった。自分としてもリアルタイムでは全く知らない曲だが、劇中のは台湾のカバーバージョンと思われる。  主人公は高校受験前の中学生男子で、基本的にはコメディなので可笑しい場面が結構ある。誘拐犯一家はあまり物事を詰めて考えたりしない人々のようで、日本人でさえ思ったのは、台湾全土に「中正路」というのが一体どれだけあると思っているのかということである(映像に出たのは嘉義県朴子市)。脅迫電話でメンバー総出演だったのは笑った。 ストーリーとしては最後にどうなるのか予想がつかなかったが、物語的には若い娘が最後にくれた手紙に集約されていたらしい。題名の意味に関しては、例えば“絶対に実現しないと決まったわけではない夢”とでも思えばいいか。夢想(「白日夢」)だけで満足するのでなく、現実に目指すべき夢を持て、というのが青春映画としてのメッセージと思われる。ほかあまり明瞭ではないが、心から願うだけでなく「縁」も大事だと言いたかったかも知れない。 ちなみに主人公の受験に変に肩入れする男がいたのは、妹への贖罪の意味があったらしい。  登場人物としては、片思いの女子が人魚になってにっこりした場面は和んだ。また一家の若い娘(ちょっとお姉さん)がそれほど美少女でもないのは親しみが持てる。ほか一家を仕切っていた中年女性は、「維基百科,自由的百科全書」によれば“標準的な台湾の隣家のおばさん的性格”らしい(やかましい)。「巨蛇娘娘」という漢字言葉が心に残った。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-10-10 08:58:01)
4.  ビフォア・ザ・レイン 《ネタバレ》 
今でいう北マケドニア共和国の映画である。見えていた湖がオフリド湖とすればアルバニア国境に近い場所ということになる。 劇中で「500年の恨みを晴らす時だ」という台詞があったが、15世紀末に何があったのか部外者にはよくわからない。この辺はかつてイリュリア人(アルバニア人の祖先?)などが住んでいたところ、6~7世紀に北からスラブ人が押し寄せて、さらに東からブルガール人が攻めて来てブルガリアの一部になり、その後14世紀のうちにオスマン帝国に征服されてから19世紀まで大きな動きはなかった感じではないかと思うが(そんな簡単ではない?)、この地方で見れば何か500年前に大事件でもあったものか。 20世紀末に関していえば、マケドニアでは1991年のユーゴスラビアからの離脱はわりと平穏に行われたが、人口の約1/4を占めるアルバニア人の処遇には苦慮したらしい。映画の撮影は1993年とのことで、映像で見えた国連部隊が1992年12月から派遣されていた国連保護軍だとすると、当時の現地情勢と同時進行の映画だったことになる。実際はこの時期にマケドニアで大規模な騒乱はなかったようだが、その後は90年代末のコソボ紛争の影響もあって、2001年にはマケドニアでも紛争が起きたとのことで、現在ではマケドニア人とアルバニア人の連立政権という形で各民族に配慮した国家運営がなされているとのことである。  ところで劇中で印象的だったのは現地の村で、銃器や小物以外に近代を思わせるものがほとんど見えない。村中が知り合い、親戚だらけなのは非常に息苦しく、またカメの火刑とかネコへの執拗な銃撃を見ると、言っては悪いが地域社会の文明度が疑われる。いきなり復讐団ができたのは、紛争のせいというよりこの周辺(どちらかというとアルバニア側?)にあったという“血讐”の風習のせいではないのか。カメラマンの男がロンドンにいると野蛮人のようだが、地元ではジェントルに見えたというのも意図した対比と思われる。 物語としては循環構造だそうで、パート単位で並び順をずらしてあるほか、明らかな矛盾が生じている箇所がある。面倒くさいので厳密に考える気にはならないが、とりあえず人も社会も永遠に同じことを繰り返すのではなく、少しずついい方に向かうものだと一応期待したい。 ちなみにレストランで騒いだ男は、アイルランド人でないとすれば何人だったのか。どうも何かと不快な場面の多い映画だった。
[DVD(字幕)] 5点(2020-08-29 08:25:04)
5.  学校の怪談3 《ネタバレ》 
シリーズ共通だろうが大人が見て怖いところは全くなく、ひたすら微笑ましい子ども向け娯楽映画になっている。あらかじめ死んでいる人物を除き、劇中の教員や子どもらが次々死んでいくなどという悲惨な展開にはなりそうもなく、安心して子どもが喜ぶお化け屋敷的怖がらせに付き合ってやろうという気分になる。なお撮影場所の学校は岐阜県下呂町(当時)にあったらしい。 ちなみに自分の幼少時には「合わせ鏡」が特に不吉なものという感覚はなかったが、この頃はもう怪異の元凶というのが常識だったのか。鏡の世界では文字が左右反転していたが、右書きと左書きが混在していたのは意図不明だった。  お話としては小学校高学年向けの恋物語がちゃんとできていて、最後はそれなりにキュンとさせられる。ヒロインの美少女が「泣いちゃうよ」と言ったところは切なくて笑った。なぜか女子だけ美少女揃いで男はどうでもいい感じという対比ができており、長身でキュートな女子のお相手が肥満気味の男子だったのは釣り合いが取れないが、これは容姿にかかわらず万人に同様の可能性が与えられていることの表現か。それにしてもこんな奴の全裸(尻)など見たくはないわけだが、重要テーマの「運命は自分で変えろ」という言葉は特にこの人物のためにあったらしい。 他の登場人物としては、担任教員は微乳を売りにしていたようだがそれはまあいいとして、特に主人公の義妹が見せるとぼけた感じの表情が非常に可愛らしいので和まされた。また現在も女優として活動している秋定里穂さんが中学生くらいの年齢で出ているが、特に美少女の扱いはされていない(「ゾンビバス」の女子高生役)。なお肥満児の母親役で渡辺真知子さんが一瞬出ており、この頃はもうこういうキャラクターだったのかも知れないが、昔は歌っている姿だけ見て“かっこいいお姉さん”と思っていた。
[インターネット(邦画)] 6点(2020-05-03 20:29:13)
6.  櫻の園(1990) 《ネタバレ》 
[2020/4/11視聴] 6年前に一度見たが、その時は何を書けばいいかわからなかったので放置していた。今回見てもよくわからないが、とりあえず“変わるもの”と“変わらないもの”が表現されているかとは思った。 変わるものとは当然ながら劇中の高校生であり、この連中のこれから長い人生の中の、いわば一瞬の動態を捉えた映画に見える。また変わらないものの代表が桜であって、この桜にからめて中高年への反感を語る者もいたが、そのことで逆に自分らが変わっていく存在だということを意識させられていたようである。 劇中の学校では桜の開花と創立記念日(4/14)、及び演劇の上演がセットで“変わらないもの”として受け継がれてきていたが、ただし演劇も毎年の演出には違いが出るだろうし、さらにいえば桜の木にも寿命があるのでいずれは世代交代が必要になる。当然ながら全てのものが少しずつ変わるので、この映画で描かれたのも1990年(原作は80年代)の暫定状態ということになるが、ちなみにこの映画の高校生も現時点(2020年)では40代になっているはずなので、登場人物の「坂口」のような、もう自分を変えられない年寄りになり切ってしまわないよう気をつけた方がいい。 そのようなことをとりあえず今回は思った。  人物の描写では、古い映画なので時代がかって見える面がある。外見は普通に真面目な生徒が、冒頭いきなり見せるキスシーンなどは昭和の殻を破ろうとする思いがあったのだろうし、また女性の生理現象に関わる話題を出すのもこの時代なりの尖った表現のようで(原作由来だろうが)、そういう点も当時は評価されたかも知れないが、しかし今になれば逆に、昔の風潮としてはこうだったかも知れないというように見える。 またキャストに関して、現在の感覚と決定的に違うと思わされるのは、女子高の映画ながらいかにもな美少女がほとんど出ていないことである。最初から男役向きに見える演者もいたようで、最後の舞台も想定しながらのキャスティングだったかも知れない。主演女優は美少女とは程遠い容貌に見えたが、終盤のツーショットでは見違えるような魅力的な表情を見せていた。  ほか個人的な雑談として、今回たまたまこの時期にこの映画を見て、やはりどうも桜は人と無関係に勝手に咲くものだという思いが強くなった。以前から福島県富岡町の「夜ノ森」(よのもり)という場所に桜の名所があり、2011年の原発事故で住民がいなくなってからも春には咲いていたのを報道で見ていたが、今年はうちの桜の名所でも、もう満開なのに露店もなく人出もないのが不思議な感じで(ぼんぼりだけ出ている)、仮に人類が滅亡してもこの桜は咲き続けるのではという寂しい想像をしてしまった。しかし現実問題として桜まつりがないと地元も困るので、来年はちゃんと花見ができるようであってもらいたい。
[DVD(邦画)] 7点(2020-04-18 08:58:01)
7.  アウトブレイク 《ネタバレ》 
他の感染症映画を先に見て、この映画も見ずには済まない気分になって見た。むかし最初に見た時点では、とにかく出血熱が恐ろしいことは知っていたが、この映画では恐ろしいところはほどほどにして、きっちり娯楽映画に仕上げていたので呆れた記憶がある。 それでもこの映画で初めて覚えたのがUSAMRIIDとかCDC、Biosafety levelというものの存在だった。今回見ると、序盤でレベル1から順番に奥へ進んでいき、4まで行ったところでカメラが止められたように見えるのが少し面白い。また、拡大が始まったばかりでいきなりアメリカの西端から東端まで飛んだのは怖いことで、どれだけ田舎に住んでいても、飛行機が毎日飛んでいるからには油断できないと思わせるものがある。 ほか初見時に非常に印象的だったのが、映画館での感染拡大を映像化していたことである。見た人のほとんどがこれを憶えているのではと思うが、その割に2020年の現時点で、映画館はそれほど危ない場所とは思われていないらしい。これに関しては、集団感染の3条件である①換気の悪い密閉空間、②多くの人が密集、③近距離での会話や発声ということから考えると、劇中では大口開けて笑う人物がいたのが③に該当するのでまずかったが、みんな黙って静かに映画を見る日本は事情が違うということかも知れない(客席での飲食はどうか不明)。ちなみにうちの地元の映画館は、客がいないので②の条件も満たしていない。  そのほか娯楽映画らしく笑わせるところが結構多く、個人的には中盤の「7月に寝た」という台詞が、修羅場でもジョークの言える冷静さの表現のようで好きだ。しかし終盤に入ると大活劇の展開に合わせてコメディ色まで出していたようで、操縦士が便所に行っていてshitなどというしょうもないギャグを入れていたのはやりすぎだ(笑った)。あまり観客を笑わせると映画館が危なくなる。 なお社会的なメッセージ性ということでは、ウイルスは危なすぎて生物兵器には使えないとのアピールにはなっていたかも知れないが、今でも開発しているところはあるに違いない。また登場人物に関して、小さい子のいる若いお母さんが2人とも清楚系かつカワイイ系の美女で、個人的に心惹かれるところがあって余計に心配させられた。こういう人なりご家庭なりを犠牲にしてはならないというメッセージは個人的に強く感じた。 ちなみに撮影地はカリフォルニア州のFerndaleという町らしい。現在の様子はストリートビューで見られる。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-03-23 20:30:57)
8.  ユリョン 《ネタバレ》 
潜水艦大活躍の映画である。まずは序盤のよくわからない情勢判断により敵は日本と決めておき、最初に通りがかりの日本潜水艦1隻をいきなり撃沈、反撃に出た2隻も無慈悲に撃沈し、特に3隻目を恥辱まみれで残酷に葬ったのが最大の見所だったと思われる。ただ、ロシア製の潜水艦が音を立てて通っても日本側が気付かないという想定は世間を甘く見ているところがある。  ストーリーとしては、基本的に交わらない二人の立場を並行的に語っていたように見える。一人はミサイル発射を阻止しようとした男(431)で、普通に人命を尊重し争いを避けようとする立場である。この男が「準備ができていない」と言ったのは、いつか日本を滅ぼす日が来るというよりも、自国が力をつければ本当の主権を得て堂々と国益を主張できる、あるいは滅ぼすまでもなく圧伏させられるというような意味だったと想像され(いわゆる「克日」か)、それを含めていわば国民の理性を体現する存在だったと取れる。 もう一人はミサイルを発射しようとした男(202)で、まずは自国の存在を周囲に認めさせるため最も過激な方法でアピールしようとする立場である。北のやることに似ているが脅しで済まないのはさらに過激で、最初は「沖縄県民」だけが殺されるのかと思ったら、結局は主要都市(熊本?・広島?・大阪・名古屋・横浜・東京・新潟・仙台・札幌)を核攻撃して、1億皆殺しとはいかないまでも千万単位で殺す予定だったらしい。この202は「教祖様」「幼稚なロマンチスト」と431に評されており、また自軍の兵を生体解剖するなど残虐性も見せていたので、この映画としても表向き肯定していたわけではないようでもあるが、しかし終盤の熱弁など聞くと431とほとんど同格の扱いになっている。字幕によれば国民の「ハン」(恨)を代弁する存在だったらしい。 こういう題材だとどうしても両論併記的になるようで、物語上は431を優先していわば啓蒙的な映画にしたのかも知れないが、その割にエンドクレジットで431より202が上なのが現地の本音かと思ったりする。ちなみにいうと、終盤で出た202の「強くなること…生きるしかない」という台詞には日本人も学んだ方がいい。いいこともちゃんと言っている。  なおDVDの最初の表示を見ると、こんな映画の公開になんと駐日大使館が協力していたようで、こういうのも外交の一環ということらしい。点数はアンチ202でなく431の立場に寄せた形で付けておく。
[DVD(字幕)] 5点(2019-10-27 19:28:26)
9.  テツワン探偵ロボタック&カブタック 不思議の国の大冒険<OV> 《ネタバレ》 
東映特撮番組「テツワン探偵ロボタック」(1998~1999)の特別編である。当時は当然見ていなかった。 見た目は1970年代の「がんばれ!!ロボコン」のようでいかにも小学生向けの番組だが、宇宙刑事に始まるメタルヒーローシリーズに属するという考え方もあるらしい。確かに、いつもは呑気なロボコン風ロボットでも、危機が迫ると少し格好いい戦闘形態に変化して(CGで)アクションをこなして火薬も爆発するのは東映特撮ヒーロー物のパターンになっている。また現在もあるように、前作の「ビーロボカブタック」(1997~1998)との共演形式になっており(いわゆる「クロスオーバー」)、本編とは全く違う異世界設定にしてあるらしい。  物語としては、悪徳国家の悪徳大統領が隣国の王女(美少女)を「キャワイイ~」という理由で拉致して嫁にしようとした(これは許せない)のを、正義の主人公が阻止する話になっている。主人公にとっては切ない恋物語だが、同時に正直者が馬鹿をみる類のありがたい教訓を残す話である。全般的に見る者を笑わせるように作ってあり、「おれの妻になるのだ」との横暴な発言に対し、健気な王女が決然と「身体を奪うことはできても…」と真顔で答えたのは(申し訳ないが)爆笑してしまった。当時から大人の目を意識しながら作っていたということか、あるいは小学生向け番組を見て笑っている大人はおれだけか。 またこの特別編ではレギュラーが普段と全く違う役柄で出ていたようで、本編を知っている人ならそれ自体が面白かったかも知れない。岡っ引きの親分をやっていたのは後の黒川芽以(当時から黒川芽以)で、「番屋でゆっくり話を聞こうか」という台詞はいわゆるタイホしちゃうぞという意味と思われる。ただこの当時は普通の小学生女子のように見えて、顔もほっそりして黒川芽以らしくない。 ゲスト出演者では、ほとんど同時期の「がんばっていきまっしょい」(1998)で“ヒメ”役だった清水真実という人が出ている。このビデオでは本物のお姫様役で、「がんばって…」のようなあか抜けない地方の女子高生ではなく正規の美少女になっている。そのほか国王役で出ていたのは、1980年代に「夢見るぞ」で一世を風靡した赤星昇一郎という人物だった(知っている人は知っている)。
[DVD(邦画)] 6点(2018-12-16 17:29:21)
10.  学校の怪談 《ネタバレ》 
なるほどお化け屋敷のような映画に見える。花子さんはいいとして、屋外にいるはずの口裂け女や洋画風モンスターなど、「学校の怪談」というのにふさわしいかどうか怪しいものまで詰め込んで、着ぐるみから視覚効果からストップモーションアニメから何だかんだを次々出して子どもらがギャーギャー騒いでさぞかし楽しそうだと思わせる映画になっている。昔からいた用務員が子どもの習性にさんざん悪態をついていたが、これはいつの時代も子どもというのは変わらないことの表現だったかも知れない。それにしても、大事な紙を引っ張り合って破いた2人のうち片方が教員だったというのは呆れた(おまえはガキか)。  登場人物としては、親しみやすい風貌のボーイッシュな女子(男子かと思った)と、今年が最後の夏休みになったらしい美少女の両ヒロイン体制だったようである。一つ年上のお姉さんと少年との間で、ちゃんと小学生向けらしい恋物語(片思い)ができていたのは微笑ましい。 大人の方の物語も一応あったようで、かつて教室に閉じ込めた女子が脱出した方法は不明瞭だったが、要は教員が思い切って真似したことで心の傷も解消できたということか。また人物設定がよくわからなかったが、教員の幼馴染だったヤンキー女は18歳くらい?で出産して現在は11歳の子を持つシングルマザー?だが、今回の事件のおかげで教員との距離が急接近したと思えばいいのか?…よくわからないが、とにかく最後がハッピーエンドだったのは子ども向け映画らしく清々しい。 今回のことは大事件に見えても、子どもらにとっては1学期が終わって最初の出来事に過ぎなかったことになる。夏休みの本番はこれからだ、という期待感を持たせて終わる、大変楽しい(騒がしい)映画だった。
[インターネット(邦画)] 6点(2018-11-09 19:41:41)
11.  ウルトラセブン 太陽の背信<OV> 《ネタバレ》 
1967~1968年に放映された特撮TV番組「ウルトラセブン」の続編のようなものとして、1994~2002年にTVやOVで断続的に16本が制作されたいわゆる「平成ウルトラセブン」の5作目で、1998年の「ウルトラセブン誕生30周年記念3部作」の最終回である。著名な過去作を都合よく使って次々続編を出す類の企画は嫌悪するしかないが、前2作を見てしまってレギュラーの面々にも多少愛着がわいて来たので見ないわけにもいかなかった。  この回も普通に事件が発生して解決した後は、3部作の最終回としてラストを一応締める形になっている。 まず前半ではドタバタ部分がかなりの減点要因である。また中盤で明かされる宇宙生命の意図も極めて荒唐無稽だが、そこでまともに頼みごとをされてしまった人類側が悩んでしまうのは面白い。最終的に上層部が下した決定では結局、人類の自決権の問題として捉えられていたようで、地球人類が自らの意志で(自己責任で)という点は前回含めて一貫していたらしい。 また今回はレギュラー隊員それぞれの個性の表現が見所になっているが、特にハヤカワ・サトミ隊員(演・鵜川薫)の見せ場が多く、良心的で真っすぐな姿勢が非常に好印象で、これでこの人がますます好きになった。この人だけでなく、登場人物の誰もが抱えていたはずの罪悪感が最後にうまく解消されたのは都合よすぎの展開だが、題名に「背信」とあるにもかかわらず、サトミ隊員の良心が踏みにじられることがなかったのは幸いだった。 ほか科学的なところでは、180光年先に見える恒星は180年前の姿だ、といったような知識を主にサトミ隊員が何気なく披露していた。外見は女の子風でも、さすが隊員は意識が高いということの表現になっている。  なお今回はダンとフルハシがまともに再会する場面がクライマックスだったが、ここでフルハシに孫ができたという話は何気に感動的だった。これに続くダンの台詞は、ウルトラセブンと人間の寿命の違いに関する見事な説明になっている。ラストでは、すでにウルトラセブンの姿になっているのにフルハシがダンと呼びかけていたのも旧作のポイントをちゃんと押さえており、基本的には続編など認められない立場だが、こういう場面が感動的と思うのは世代のせいもあるので仕方ない。
[DVD(邦画)] 5点(2018-01-14 14:30:06)
12.  ウルトラセブン 失われた記憶<OV> 《ネタバレ》 
1967~1968年に放映された特撮TV番組「ウルトラセブン」の続編のようなものとして、1994~2002年にTVやOVで断続的に16本が制作されたいわゆる「平成ウルトラセブン」の3つ目である。 しかしそもそもの話として、せっかくTVシリーズが切ない余韻を残して終わった(完全に終了した)のに続編を作るなどは製作側の都合でしかない。またこの回に関しては作りがかなり粗い感じで、前半から非常識な場面が連続し、後半はブツ切れで必然性不明の場面を無理につないだ印象もある。ほか旧作の著名BGMを気安い感じで使っているのがかなり苛立たしい。 加えてストーリーもすっきり整理がついていないようで非常にわかりづらくなっている。メッセージ性の面では、文化財や緑を壊す開発行為には反対だ、というような時代がかった素朴な問題意識が堂々と提示されていたようだが、本当のテーマはそのことよりも、題名にも出ている「記憶」の方であるらしい。この「記憶」は宇宙人の侵略ツールとしても使われていたが、話のスケールを大きくするためか“記憶の遺伝”などという荒唐無稽なアイデアを突拍子もなく持ち出してきたのはかなり呆れる。またそれとは別に、主人公に関わるドラマも「記憶」を軸に展開していたが、これも素直に納得できるものになっていない。 結局この「記憶」をテーマにしたのは製作側の思惑として、これ以降の続編製作を正当化するのが真の動機だったと見える。確かに旧作で名を成した制作会社にとっては、その記憶が「私たちの存在を証明する」ことにはなるだろうが、しかし「積み重ねられた記憶」を前提にしなければ「新たなる記憶」が作れないというのも困るわけで、いつまでも昔のヒット作をこねくり回すのも大概にしてもらいたいというのは「ウルトラセブン」に限ったことではない。  ちなみに自分としては、この回はとにかく主人公の境遇が羨ましすぎることだけが心に残るドラマだった。色っぽいアラフォー女子には頼りにされ、可愛らしいその娘にも慕われて、これならもう昔の記憶など捨ててしまってこの家のお父さん役で何が悪いのかとしか思われない。特に埋文調査の現場に届け物をしたところや、ラストの堤防上で3人揃った場面は心に残る。そのほか当時はハヤカワ・サトミ隊員(演・鵜川薫)という人が、性格はきついが顔は可愛いというタイプで好きだった。基本的には続編など認められないが、見るべきものが全くないわけでもない。
[DVD(邦画)] 4点(2018-01-14 14:27:44)
13.  ウルトラセブン 地球より永遠に<OV> 《ネタバレ》 
1967~1968年に放映された特撮TV番組「ウルトラセブン」の続編のようなものとして、1994~2002年にTVやOVで断続的に16本が制作されたいわゆる「平成ウルトラセブン」の4作目で、1998年の「ウルトラセブン誕生30周年記念3部作」の2作目である。すでに完成された作品の続編など作られても基本的に見る必要など感じないわけだが、同じ題名で製作されているからには参考として見ておかなければという義務感が当時はあった。  この回は、3部作の1作目だった「失われた記憶」の延長上で、同じ登場人物が出るものとして製作されており、事件が起こって警備隊とウルトラセブンが解決して終わる普通の回という印象になっている。 今回の物語は、一言でいえば“地球人類の運命は地球人類が自ら決する”という決意を示したもので、ヒーロー任せが当たり前の怪獣特撮にしては極めてまともで正直感心した。また中核的なアイデアである「マントルプリューム絶滅説」なるものも、完全に無根拠で荒唐無稽というわけではないようである。宇宙人の説く「火の世紀」に関しては、当時はともかく近年はニュージーランドの地震(2011年)に続いて「平成23年東北地方太平洋沖地震」が発生し、また2016年には熊本地震が起きるなど、今となっては洒落にならない印象がある。現時点であらためて見れば、来るべき災害への備えを万全にせよという警告の物語になっているとはいえる。 ほか当時の世相として、不況のせいで好条件だが怪しげな求人に若者が集まるとか、「エコブームで、地球にやさしく」という風潮への皮肉が語られていたりするのは面白い。ほとんどの場面が陰気な感じで推移するが、最後は開放的で明るい雰囲気になって次回へつなぐ形になっている。当然ながら全般的に安手の作りで残念なところも多いが、志は買いたい作品ではある。  なお今回の女性キャラクターとしては、捨てられた工業都市に住む捨てられた女が登場し(演・菅原晶子)、もう人生終わったかのような顔をしていたが若々しい色気も感じさせている。また前回からのレギュラーの中ではハヤカワ・サトミ隊員(演・鵜川薫)の魅力が前面に出て来て、このあたりからこの人のファンになってしまった記憶がある。基本的には続編など認められない立場だが、この人を見るために次回も見なければ、という気になったのは間違いない。
[DVD(邦画)] 5点(2018-01-14 14:25:30)
14.  富江 アナザフェイス<TVM> 《ネタバレ》 
伊藤潤二原作のホラーマンガシリーズ「富江」の実写化である。シリーズ初の映画「富江 tomie」(富江役:菅野美穂)と同年に放映されたTVドラマで、同じ女優が違う富江を演じる3話オムニバスになっている。  【第一話】「クラスメートの富江が、死んでしまいました」のナレーションは原作最初のエピソードとほぼ同じ。女子高生を主人公とする学園ドラマの体裁で、殺しても生き返るという基本的な特性を見せている。富江役の女優は当時17歳くらいだろうから年齢的に最も違和感がなく、上ずったような甘ったれた声には笑ってしまう。「どうしてそんなひどいことを言うの…(泣)」が好きだ。 【第二話】カメラマンを主人公にして“富江は写真映りが悪い”という特徴を扱っている。劇中2人の富江が出ており、思い出のお姉さんの方はまだしも夜の女が踊るあたりは少し無理があったようだが、まあ笑って許す感じになっている。 【第三話】全体構成上の「転」「結」に当たる部分で、前2話でも顔見せしていた富江バスターのような男が表に出て来たが、富江退治には失敗していた(当然だ)。警察の記録で、制服姿で磔になっているとか浴衣で川に半分浸かっているとか多様な死体を見せていたのはいちいち着替えて撮ったのだろうから手間がかかっている。  ストーリーはほとんどオリジナルだがそれほど違和感もなく、オムニバス形式なのが原作マンガらしい雰囲気を出している。富江役の永井流奈という人は美少女ともいえるがカワイイ方へ寄った感じで、グロい場面は皆無だが(エロい場面もあまりないが)妖しいかわいさのある富江が見られる意義はある。安手の作りではあるが、現在までの実写化の中では最も普通に富江っぽい話になっていて好きだ。
[DVD(邦画)] 5点(2017-11-14 19:27:56)
15.  富江 tomie 《ネタバレ》 
伊藤潤二原作のホラーマンガシリーズ「富江」の映画化第1作である。現在までの間に映画が8つ、TV番組が1つで計9つの映像作品ができているが、この映画が初の実写化である。 原作通りでは全くないが原作の要素は一応取り入れており、皆で殺してバラして捨てたが学級崩壊というのは原作最初のエピソード、写真をばら撒いた主人公の氏名は「写真」からだろうし、一見わけのわからない結末も「地下室」で、富江が他人の身体を乗っ取った話が背景になっていると思われる。そのようにして作った話の上に、この監督の作家性ということなのか、変に女の子っぽい感じで色づけした形になっている。インタビューでは主演女優が「女の友情」の話だろうと言っており、また監督本人も富江は友達に会いに来たと説明していたのを聞くとさすがに話が違うのではないかと言いたくなるが、まあそれがこの映画の特徴ということらしい。  またこの映画では、前半はわざと富江の顔を見せずに期待感を盛り上げる形にしたらしい。それ自体は別に悪くないが個人的に問題だと思うのは、いざ富江が顔見せすると、どう見ても絶世の美女に思えないので正直落胆を禁じえないことである。当方としては初めから菅野美穂とわかっているので過度の期待はしていなかったわけだが、それにしても何というかいわばボサボサ感のある外観には納得いかない。ただ原作者本人も主に目の印象からこの女優を推していたとのことで、それを聞けばまあ確かにそうかも知れないと思うところもなくはない。 また終盤も何が起こっていたのか全くわからず困ってしまうが、それでもラストの一瞬の映像に唖然とさせられ、空になった頭の中にエンディングテーマがすらりと入って来る流れには妙に納得させられた。キャスティングを含め、最終的にはこういう作りでよかったのだと思わされたのは騙されたような気もするが、しかし単純な怖がらせだけの安手のホラーに比べれば、まだしも一応の映画を見せられた気はしなくもない。
[DVD(邦画)] 5点(2017-11-14 19:27:53)
16.  くノ一忍法帖 柳生外伝 《ネタバレ》 
基本的には監督兼主役に焦点を当てたアクション映画ということのようで、ほかにジャンルとしては「エロティック」というのもあるがそれほどのエッチ感はない。妖怪じみたキャラが奇想天外な術を操る荒唐無稽時代劇だが、意外にも実在の歴史的事件(会津騒動、1639~1643年)を背景にしている(原作がそうだからだが)。もとは106分の映画とのことだが現在見られるのは上下巻に分かれたDVDで、いわゆる未公開映像も加えて単純加算で155分にもなっている。 登場人物では、題名の女忍者7人が大きな見どころになりそうなものだが実際は見事に誰にも愛着がわかない。オッパイ攻撃とか股開き攻撃とか恥ずかしい技を修得した者は生き延びるが、そこまで踏み切れないと途中で死んでいくというのが理不尽である。 オッパイを見せないグループでは「お笛」(演・菅原晶子)が目立っていて色気もあり、出自や最期の様子からも悲哀感を出していたといえなくはない。また敵方の「おゆら」(演・栗林知美)も目を引くところがあったが、以上2人は主人公に次々と惚れては死んでいく役で、結局みんな使い捨てかという印象だった。ほか「お品」役の鵜川薫という人も別のところで見たことがあるので注目していたが、特に何だということもなく退場してしまったのは残念だ。若手女子ばかり見るのでなく、主人公の男ぶりにほれ込んだということにでもなればそれなりに楽しめる可能性もなくはない。  なお参考として原作を読むと結構まともな時代小説であり、奇抜な妖術のようなものはそれほど多くなく、そもそも忍者は出ない。しかし映画化に当たってはかなり原作に忠実な筋立てにしようとしていたことがわかり、特に上下2巻のDVD版は、上下2巻の原作長編を可能な限り再現することが主眼だったとも考えられる。違いとしては、原作では会津芦名氏の存在感が大きく「賤ヶ岳の七本槍」の加藤家がかすんで見えるほか、特に仇討ちの女子衆7人(8人)の扱いにかなり差があったように思われる。主人公が敵の城に単身乗り込んだ際、ものすごく格好よく啖呵を切る場面は原作にも映画にもあるが、これはどちらかというと原作の方が全体との関係で活きていた気がする。
[DVD(邦画)] 4点(2017-10-23 22:42:40)
17.  狙われたアイドル 実録ストーカー<OV> 《ネタバレ》 
「平成8年10月、東京都港区で起きた事件」とされているが、事実との対応関係はわからない。少なくともDVDのPR文はこのビデオの内容を正確に表現してはいない。 全体としてまとまった話には見えるが、突出したものがないので何を表現しようとしたのか正直よくわからない。少なくとも、童顔であどけない感じに見える被害者が、気色悪い加害者からあからさまな性的迫害を受けるのを見て喜ぶタイプのものではない。また加害者が犯行に至るまでの過程をそれなりに描写していることから、そこに共感する視聴者もいるかも知れないが、この人物の立場で見ることで何らかの感慨が得られるかというとそのようにも見えない。 出演者に関していえば、主演の人物(被害者役・菅原晶子)はこれ以前から一定の知名度があったらしいので、この人物に焦点を当てたアイドル映画のようなものだったのかとも思われる。煽情的なタイトルを付けた安手のアイドル映画という企画だったにも関わらず、内容としては生真面目な、いわば社会派映画のようにしたことで、何を見ればいいのかわからない印象のものになったということか。 ただ、現実世界でストーカー規制法(2000年)の契機になった埼玉県桶川市の殺人事件(1999年)よりも前であり、時代を反映あるいは先取りしているといえなくはない。また主人公が世間への露出度の高い危険な立場であることから、著名人の安全確保に関する問題提起になっているとも取れる。製作から17年も経った2014/5/2になってDVDが発売されているが、同じ月の25日には実際に著名アイドルグループの握手会で傷害事件が発生しており(ストーカーではなかったようだが)、偶然にしても洒落にならない話といえる。 以上、結果的に真面目な作品になっているように見えたのでひたすら真面目に書いた。ネット上ではこのビデオに関する評価感想等を書いたものが他に発見できなかったので、この文章が参考になれば幸いである(誰も見ないだろうが)。
[DVD(邦画)] 2点(2017-10-23 22:42:37)
18.  なぞの転校生 《ネタバレ》 
何かと面倒臭い映画だった。不確定性とか多元宇宙なら実体のある概念なのでいいとして、世間に変な能力者がいて3人以上集まると世界が破滅する、というような作り話を長々と説明して一回聞いただけでわかれというのは無理がある。原作でも、実は時空間は5次元だった、などという話は当時の中学生にはわかりづらかったろうが、科学への関心を高めてもらうために絞った形で疑問点を設定しておいたとも考えられる。しかしこの映画では作り手の自己表現が目的でしかないようで、こういうのにはもう付き合っていられない。  物語の面では、基本的には悪くない雰囲気なので黙って見ていたが、クライマックスでの主人公(香川翠)の感情の動きが長々とした意味不明な説明に依拠しているためにリアルタイムで受け取れず、何でこの人物は泣いているのか、ということが最後になってかろうじてわかる始末だった。 それより幼馴染の男(岩田広一)の方は、より単純な感情なのでわかりやすいはずだが役者に問題があり、言語不明瞭で台詞が上滑りしてヒキガエルを潰したようなこの男に共感する気には全くならない。当初はこんな状態でも、20年近く経てば立派な役者になっているのだから偉いものである。 ほかに見どころとしては転校生役が長身で超個性的な風貌でモデル的に見栄えのする人で、宇宙人的クールビューティで通すのかと思っていたら普通に喜怒哀楽もあって人間味も出ているのだった。「ガキ!」のあとでこの人はどこへ行ったのか。
[DVD(邦画)] 4点(2017-08-11 23:45:09)
19.  おもひでぽろぽろ 《ネタバレ》 
最初に見たのは90年代のTV放送だが、そのときは半分程度で挫折した。主に昔の微妙な記憶をほじくられるような感覚が不快だったからだが、いま見れば小学生編もけっこう楽しく、戦前生まれの父母のふるまいもそれらしく見える。なお分数の割り算に関しては、2/3のリンゴから始めるから難しいのであって、3/4のリンゴを1/4で割ることを考えればとっつきやすいと思われる。 大人編に関しては、普通の田舎の風景や事物が丁寧に描かれているのが好印象で、紅花の収穫と加工についての説明は興味深い。婆様の顔や言葉などはけっこうリアルでいいのだが、ただ柳葉敏郎は、劇中の場所とは方言の系統が違う秋田県の出身だからか現地言葉が全く様になっていない。関東でいえば神奈川県人が茨城方言を話すようなもの?で、東北などどうせどこでも全部同じだろうと思われては困る。  物語としては、個人的にはわりと素直に“都会の女性が田舎に定着するきっかけの話”として受け取れる。現地の人々にもそれを望む気持ちは当然あったろうし、駅まで迎えに行かされたのが若い男だったのもそういう素朴な思惑があってのことかも知れないが、しかし本当に実現するとも思わないのが普通の感覚でもある。この点については本家の3人にも温度差があったようだが、その中で婆様の裏表のない直言が結果的に主人公の素直な反応に結びついたということらしい。その後にぶり返した「あべくん」の記憶には偏見に起因する心理的な壁という問題が含まれていたようで、これは主人公が現地に定着する際の葛藤を先取りした形とも取れる。最後に山寺駅で折り返したのは、とりあえず婆様に今の気持ちを見せたかったからで、あとはゆっくり冬の来訪で、ということだったろう(仙台から東北新幹線を使えばその日のうちに帰れる)。ラストでは、主人公を祝福しながらも寂しげな子どもの表情が印象的だった。  当時であれば東京出身の女性が農山村に嫁入りなど正気の沙汰ではなかった気もするが、ちなみに劇中年代から30年以上経った現在の話として、うちの地元にも大学や研究機関があるせいか、関係ない場所(大都市圏など)から来て定着する若手の人々が目につくようになっている。こんなところの何がいいのかと正直思うが、田舎だ都会だということと関係ない人々が出てきているようではあるらしい。地域社会との間合いの取り方もそれぞれであり、必ずしも閉鎖空間に囚われるかのように考える必要はない。 この映画の主人公は現在もう還暦を過ぎていることになるが、仮にこの場所に定着していたとすればIターンのよき先例になって、地域社会に少しずつ変化をもたらしていたかも知れないと考えたい。
[DVD(邦画)] 8点(2017-01-23 23:42:06)
20.  学校 《ネタバレ》 
かなり昔の映画のように見えるが、劇中の事物(金のうんこなど)や登場人物の発言によると、劇中年代としても製作時期と同じ頃だったようである。 自分としての感想を正直に書くと、映画のかなりの部分は生徒の個人的事情を描写しているだけで、かつそれ自体に心を打つものは特にない。また後半では泣きを誘うためか、田舎~不運~貧乏~愚か~善人といった定型パターンを持ち出してきたようで鼻白むものがある。終盤に至ってまとめにかかるが、個別事情の一般化とか話題の飛躍で物語の流れを無理に導くのが気に障り、結果として出た教育論らしきものも素直に受け取れない。創作物でしか実現できない理想状態を描写しようとしたとすれば文句をいう筋合いではないが、そのまま乗れない人間も当然いるということである。 ラストでは、これだけ雪が降ると東京の人なら転倒して怪我をするのではないか、ということの方が心配だった(タイル張りなどの上を歩く場合は要注意)。  個別の場面としては、クライマックスで出た“しあわせって何?”の論議が聞きどころだった。ここではまず焼肉屋店主の発言に非常に説得力があり、これは民族性などと無関係に人生の真理を語っていた気がする。その後、萩原聖人がかなり高純度にまとめた台詞を言ったので、これで結論が出たも同然と思ったわけだが、なぜか言った本人がこれでわかったとは認めない。その上で中江有里が、この発言をどう処理すれば教員が満足するか知っている優等生のような発言で教育の意義ということに繋いだので、そこで話が逸らされたように感じたのは不満だった。ただこの場面での裕木奈江の語りは、この映画のような学校の根源的な効用の一つを語っていた気はしなくもない。 ちなみに個人的な思い出話として、この映画と同じ頃に勤め先で大規模なコンピュータシステムの導入があり、それまで手書き伝票しか扱ったことのない庶務担当の人々(主に年長の女性)への講習を担当したことがあるが、そのうちの何人かがその後に定年を迎えた際に、在職中に電子機器を使えるようになって感謝している、というようなことをわざわざ言われて恐縮したことがある。この映画でそれを思い出し、学ぶことの意味を少し意識したのは間違いない。
[DVD(邦画)] 5点(2016-11-15 20:52:45)
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