Menu
 > レビュワー
 > すかあふえいす さんの口コミ一覧
すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567
投稿日付順1234567
変更日付順1234567
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  殺し屋ネルソン 《ネタバレ》 
俺が見たのは海外で販売されたVHS。画質は悪かったが、この映画の面白さを損なうものじゃなかった。  コイツは間違いなくドン・シーゲル初期の最高傑作だ。  圧倒的破壊の全力疾走で見せる見せる見せる、これぞギャング映画と言わんばかりの面白さ。   「ダーティハリー」や「ラスト・シューティスト」といった初っ端からブチかます作品群と比べると、この映画は最初ブッ放さない。  徐々に速度が加速していくタイプの撃ちまくり殺しまくり映画だ。   実在したレスター・ギリス(ベビー・フェイス・ネルソン)の伝記としては実際のネルソンとかなり違うが、アクション映画としてシーゲルのやりたい事が詰め込まれた素晴らしい出来となっている。 ミッキー・ルーニー演じるギリスの凄味!   ビルの群れ、人の群れ、刑務所、ナレーションによるギリスことネルソンの紹介。刑務所を出ていく影、その直後に「Baby Face Nelson(殺し屋ネルソン)」の題名が出る。  迎えの車に乗り、目的地に着き、アジトの階段を上っていく。二人の会話が終わってからやっと人物クレジットが出る。   葉巻の煙を払うように「もう殺しはやらん」とサイレンサー付きの拳銃を返し一度は断るが、運命はギリスを再び殺し合いの中に引きずり込む。   刑務所から解放された喜びからか、浴びるように風呂ではしゃぐ。  久しぶりにあった女と熱いキスを何度も交わす。伝記の白熱球をひねって消し、情事に入ろうとする。その後にちゃんと電球を戻す律義さ。殺し屋としての血がうずく新聞記事。 ヒロインはバーバラ・スタンウィックやクローデット・コルベールに近いタイプのキャロリン・ジョーンズ。   点滅するネオン、バスルームに押し入られ、身に覚えのない拳銃という“罠”、ツバには腹パンで返答される!   さあギリスの“ネルソン”としての復讐劇が加速するのはここからだ。  列車、女が転ぶのはかがんだ標的をネルソンがブチのめすため、銃を奪い、車で運んだ遺体を猛スピードで地面に叩き落とす!   階段に隠れ、ターゲットが上ってきた瞬間に瞬く間に3人を射殺し車で即逃げる。本も死体が音をたてて転がっていくようにバラバラ落ちる演出。   酒を取りに隙を見せ、背中を向けた男の首に銃をつきつける。ガラスを撃ち抜くが一歩遅く、彼等は夜街を駆け抜ける。   脚から胸にかけてのラインを見るエロ医者、何回女とブチュブチュやんだよギリスは(憤慨)。   大火傷を負い包帯で顔を覆った男が渡す新聞、闇夜のブランコで作戦会議。  オフィス襲撃時の緊張。  時計、アイスクリーム屋に化け、警備を潜り抜け、車内では息を潜めてトンプソンを構える。  煙、「STOP」のバーを脚でこじ開け、緊張の糸が弾けた瞬間にトンプソンは火を吹き、金を積んだ車を奪って乗り換え逃げ切る。   仕事仲間の墓穴つくりを、酒を飲みながら見るだけの医者。そりゃスコップも投げたくなりますよ。   日光浴中の彼女に布をかける不器用な愛情、脚に触るエロ医者への嫉妬、愛情の暴走も加速していく。  他の男とちょっと喋っただけでも怒鳴り散らす。防弾とはいえいきなりバカスカ撃つんだから怖い。「裏切ったらマジでブッ殺すぞ」という警告としての発砲。   酒屋の登場で油断した後に現れる“本物”、裏口からの脱出、森の中での銃撃戦、巻き込まれる一般住民。  郵便局員から銀行強盗への早変わり。銃をクリックして脅す。おっちゃん涙目。    女にうつつを抜かす者たちの破滅、新聞の写真に刻まれるマーク。  ネルソンの転落も加速していく。思わぬ情報の流出、指紋手術の失敗、触れない腕で怒りの殴殺と船でドンブラコ。  ラスト20分のフルスピード。  銀行襲撃までのシークエンス、裏をかいて仲間まで“裏切り”閉じ込め、客のいる室内に催涙弾をブチまける。  銃声に異常な反応を示すほど精神的にも追いつめられる。動物狩りを楽しむ子供たちを撃ちそうになる瞬間。  クライマックスのチェイス、警官のバリケードもブチ破り、バックミラー、“死に場所”への直行・・・近づくサイレン、もたれかかり「俺を殺してくれっ!!」の絶叫!凄いラストシーンだ。
[ビデオ(字幕)] 10点(2016-11-24 22:47:06)
2.  雨に唄えば 《ネタバレ》 
ミュージカルって甘ったるいメロドラマや悠長な歌で退屈してしまう映画が多いが、この作品はとにかく踊って踊って踊る面白さ! ジーン・ケリーやドナルド・オコナーの物凄いダンス、デビー・レイノルズのパワフルな歌声。何気に暗黒街の情婦役でシド・チャリシーも出てんだね。「バンド・ワゴン」のチャリシーは凄えぜ。 ジーン・ケリーが剣戟映画のような動きをする場面は、自身も出演したジョージ・シドニーの「三銃士」へのオマージュがあるそうだ。  スケート靴で街を走り抜けるシーンが良い例だ。雨が振るなら土砂降りの中でも歌い続ける!そういう腹の底からエネルギーが沸き立つ作品だぜ。「雨に唄えば」の旋律が心地良い。  物語はサイレントからトーキーに移り変わろうとする時代。 「ジャズ・シンガー」のエピソードや、サイレント作品を無理やりトーキーにしようとする話はハワード・ヒューズの「地獄の天使」辺りのエピソードだろうか。  ジーン・ヘイゲン演じるリナは、サイレントという「温床」で悪声でも問題なかった時代の終焉を物語る。 「ハリウッド・レビュー」の“悪声オンパレード”で一体何人の俳優が地の底に堕ちていった事か。  舞台出身で声は問題なかったキートン等も、サイレント時代のイメージと合わないというだけで姿を消していってしまう。  サイレント時代の終わりは、同時に舞台でセリフやダンスを磨き上げた叩き上げのトーキー(喋る)役者たちの時代の到来。 ボードヴィル等で活躍したジェームズ・キャグニーやポール・ムニといった語りで魅せる役者たちのな。  そういうストーリーがあるが、終盤の華麗なダンスの数々はセリフが無くとも圧巻なサイレントの「魅せる」演出。それが面白い。美しい映像だ。  ジョージ・ラフトもどきが何人も出るのがまた楽しい。  キャシーが表舞台に出るラストは感動的だけど、リナはちょっと可哀想だなあ・・・なんて。  それにしても、ジーン・ヘイゲンは本当に名演。 ジーン・ヘイゲンの事を甲高いオバサンくらいに思っている人は、ジョン・ヒューストンの「アスファルト・ジャングル」を見てみると良い。低いトーンの女性らしい声なのだから。これが本来の彼女の声。 本当は上手いのに、ワザと下手なフリをするというのは簡単に出来る芸当じゃない。正しく彼女は女優です。
[DVD(字幕)] 10点(2015-01-21 19:55:39)(良:2票)
3.  近松物語 《ネタバレ》 
太鼓の連打で始まる冒頭、店先の混沌から始まる物語。それぞれの仕事に打ち込む男女、劇中人物にとって変わらない日常の風景。それが金をめぐり周辺人物を巻き込みんで人々の運命を狂わせていく。 京都御所の絵巻を任されるほどの大経師である以春。御所との違法な取引、若妻をはべらせ女中にまで手を出す。女の胸元ではなく袖の方から手を入れるエロ親父。 その以春に半ば強引な形で妻にされた女性おさん。 以春に次ぐ発言権を持つ彼女だが好きでもない男に芽生える筈も無い愛情、自分を嫁に出した家族への複雑な気持ちで満たされぬ日々。 うら若き彼女は以春の下で働く絵師である茂兵衛の若さに惹かれる。その茂兵衛は既にお玉という女性と婚約を誓う仲。 お玉と親しい間柄でもある彼女は二人を見守ろうと思いつつもどかしさに悶える。 中盤の逃走劇、逃げ出した後を物語る扉、闇夜の水面に浮かぶ船の中で激しく抱き合う二人。一度は覚悟した“死”を引き止める“言葉”。 「愛しています」・・・普通ならどうとない言葉、だが自分を立場でなく一人の人間として尽くす心を理解した女にとって何物にも代え難い生きた言葉となる。死ぬのは嫌だ生きていたいと揺れる船の上で激しく抱き合う二人。 「今更何をおっしゃいます」っておまえが「好き」だなんて言うからだろうがまったく。二人は絆を深めるように幾度となく抱き合う。髪を乱し、愛故に逃げる男を愛故に声をあげ追いかける女。心臓の鼓動の如く轟く太鼓。 だが愛していた筈の男からその言葉を聞けなかった女はただただ辛い。残され生きながらえるよりいっそ一緒に心中しようと言われた方がどんなに気が楽だったろう。 逃げた男の父親・女の母親も相当辛い。そんな二人を怒りながらも助けてしまう親心。だが逃げる男女二人も本気だ。 「もう“奉公人”やない!あたしの“旦那”さんや」 終盤の怒涛の追い込み、愛する女のために戻ってくる男、どうせ捕まるならテメエも道連れだ以春。冒頭の栄え具合と終盤の落ちぶれ振りの対比。 ラストで手を繋ぎ、幸せそうな顔で“あの場所”に向かう二人。どんな形であれ一緒に結ばれた事に満足した顔。本当は悲しいはずなんだが、この場面からは充足感が伝わって来る。上から罪人を見るように映されるロングショットは街の人々の視点、下から哀しき恋人たちを映すロングショットは店の仲間たちの視線。
[DVD(邦画)] 10点(2015-01-16 22:06:57)(良:1票)
4.  やぶにらみの暴君 《ネタバレ》 
城の遠望、赤い垂れ幕でシルクハットを被った鳥が挨拶をする場面から物語は始まり、赤い垂れ幕があがると、やぶにらみの暴君こと城の王が“狩猟”をする場面に切り替わる。 自動で動くイスにふてぶてしく腰掛け、横には子犬を従え、周りには彼を守る黒ずくめの衛兵が居並ぶ。 王が猟銃で撃ち殺そうとする小鳥をさっと助け出し、王を象った彫刻の上で高らかに王を罵る鳥。 王も天空を我が物顔で飛び回る鳥を忌々しく睨み付け、引き金を引く。衛兵も短筒をブッ放しまくる。 機械仕掛けのリフトで移動し、1999階もある高い城塔に君臨する王。気に喰わない事があれば手元の“お仕置き”ボタンで奈落の底へと突き落とす。 とにかくこの映画、衛兵が落ちれば王も盲目の演奏家も羊飼いも落ちて落ちて落ちまくる。 権力で何でも意のままになると思い込む王だが、流石に二次元の中に居る女の子には手を出せないようだ。その横に並ぶ少年にも、彼は睨み付けるだけで手を出さない。ところが、その絵の方から次元の壁を抜け出し、三次元の世界へと来てしまう。 経験豊富そうな馬に乗った賢者、そして王自ら描いた王の肖像画まで動き出し、書き手そっくり、創造主である本物の王から王位を“剥奪”してしまう。 特殊な飛行機から“落下傘”を開いて降りてくる衛兵たち。 その傘は、王から下される処刑を回避するためにも使われる。 王が後を去った部屋で、その罠を回避すべく高速でステップを踏む衛兵の姿がシュール。衛兵の「お慈悲を・・・」の言葉を聴いてか聴かずか、静かに後を去っていく王の姿もまた何とも。 アヒル姿の水上バイク、白い鳥が作り出す“彫刻”、突然現れ歌いだす船の船頭、ムササビだかコウモリのように飛び回る衛兵、地下都市で太陽を望む人々、鍾乳洞に眠る巨大ロボ。巨大ロボの暴れ振りが凄い。羊飼いを“脅す”シークエンスは冷やりとする。 煙突掃除がヤケクソになって王の顔に落書きをする場面は爆笑。 地下都市に眠る獅子や黒豹、虎、白クマたちは胃も心も飢えていた。 音楽に“魅せられ”、二足歩行で踊り、決起して大行進する獣たち! 獣もロボットも「悪い奴らじゃない。扱い方次第さ」のセリフがグッとくる。 良いも悪くもリモコン次第、操縦桿を奪い取り王を“吹き飛ばす”、城を守るためのロボットが城砦で暴れまくる皮肉。 物語はうなだれるロボット、首だけになった王の像、そして記念撮影で幕を閉じる。
[インターネット(字幕)] 10点(2014-11-29 21:28:15)
5.  裏窓(1954) 《ネタバレ》 
個人的にヒッチコックで一番好き&最高傑作。 人によっては「サイコ」や「北北西に進路を取れ」といったアクションに比べると退屈する人もいるかも知れないが、俺はジェームズ・スチュワートが覗く窓で様々な“事件”が起こってくれるので一切退屈しなかった。 地味に様々な窓のドラマが進んでいくのが面白い。冒頭の写真と壊れたカメラだけでスチュワートが何者なのか“語る”演出も素晴らしい。 観客にとってはいきなりジミーと口づけを交わすグレース・ケリーの存在も事件です。 「君は誰だ」という一言はジミーにとっては冗談のつもり、観客にとっては一瞬ドキリとさせるセリフ。 あれだけ開放的という事はそれだけあの界隈で事件がなく平和だったという事だろう。ベランダで夫婦仲良く寝ている人間までいますし。 そこで後半に“事件”が人知れず、いや唯一目撃してしまう恐怖。 ヒッチコック映画で人や動物が死ぬのは最早お約束です。 劇中で窓を覗くスチュワートは、退屈を紛らわすように音に耳を傾け、窓を覗きまくる。住民もそれを“許容”するように窓を開け続ける。 コレが「北北西に進路を取れ」だとあのヘリがスチュワートに襲い掛かります(嘘) 後半の窓におけるやり取り。最愛の人が独りで犯人の下に潜り込むスリル、犯人が戻ってくるまでの緊張、それに怪我で何もしてやれないもどかしさ、穏やかな演奏に掻き消される悲痛な叫び。 それを見て逃げようと思えば逃げられたスチュワートもあえて逃げず、犯人との“一騎打ち”を選ぶ!記者として、男としての意地。犯人も警察が来たにも関わらず臆せずに目と目が合ったジミーの元に向う。 音、光、影が織り成す緊張、窓際での攻防、住民の動きをあえて早回しにする事でより緊張を高める。 片脚と引き換えに掛け替えの無いものをより深めたラストも良い。
[DVD(字幕)] 10点(2014-01-22 00:24:04)(良:1票)
6.  七人の侍 《ネタバレ》 
個人的には後年の「椿三十郎」や「天国と地獄」の方が完成度は高いと思うが、やはり一番好きな黒澤映画はコレになるだろうか。俺にとって白黒映画の悪いイメージを払拭してくれた思い入れのある作品の一つ。  ジョン・フォードやボリス・バルネットが馬ごと追ってスピードを追求すれば、黒澤明の場合は馬を待ち構えて迎え撃つ視点。冒頭で野武士が走り去るのを見守る視点は恐怖から、最終決戦で馬を追いかけるのは「ぶった斬ってやる」と標的に一撃浴びせるために。  黒澤が受け継ぎリスペクトを捧げるアクションの素晴らしさも見所だ。 百姓と侍たちが絆を結ぶ展開・馬や群衆スペクタクルの迫力は伊藤大輔「斬人斬馬剣」や鳴滝組の「戦国群盗伝」、仲間集めと馬の疾走はフォード「駅馬車」、ユーモアと殺陣の切れ味は山中貞雄「丹下左膳」等々。  冒頭20分の導入部、麦が実る「麦秋」までのタイムリミット、鶯の鳴き声は春の証明。実るのが速い街の麦は時間の経過を伝えその得たいの知れない恐怖が強まっていく。 そこに光を差し込む官兵衛といった侍たちの登場。戦力が揃っていく頼もしさと楽しさ、人足や菊千代が百姓と侍たちを結び付けていくドラマ、戦闘準備のワクワク感。それが詰まった2時間だけでも面白いが、それを爆発させていく後半1時間30分の死闘・死闘・死闘!  登場人物もみんな味のある面々。 野武士を恨む利吉、娘が大事な万蔵、弱腰の与平、間に入って仲裁する茂助、侍に惹かれる志乃、どっしりと構える長老儀作。  侍たちも冷静な指揮官の官兵衛、地味ながらハニカミと戦闘時の怒気が頼もしい五郎兵衛、縁の下の力持ち七郎次、若く未熟な勝四郎、ノッポのムードメーカー平八、凄腕の剣客である久蔵、侍・百姓・野武士に片足突っ込んだトラブルメーカー菊千代。  それぞれに役割があって必死に生きようと戦う。特に菊千代は大きな楔。二つの立場を繋ぐ無くてはならない存在。 彼が居なければ官兵衛が百姓の心情を深く理解する事も無かっただろうし、また官兵衛がいなければ菊千代が村に来たかどうかも解らなかった。持ちつ持たれつの関係。  菊千代と官兵衛の一喝による「鎖」、野武士という打倒すべき目的は「道」となって団結を高めていく。さらには平八の死。百姓を代表する利吉の責任感、家族同然となった仲間の死。誰も裏切り者が出なかった理由がここにあるんだろうな。  劇中の野武士は作物を食い荒らす「災厄」でしかない。「災害」に感情移入すればコチラが殺される。殺るか殺られるか。野武士もまた仲間の死を還り見ず何度も突っ込む。理由は解らない。解らないからこそ怖い。色々な解釈が持てる存在だね。  とにもかくにもこれほど心打たれた作品、点数など安いもの。俺にとってマイフェイバリットな映画の一つだ。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-14 13:26:20)(良:4票)
7.  流血の谷 《ネタバレ》 
「レッドマンの考え(インディアンの考え)」、「モヒカン族の最後(ラスト・オブ・モヒカン)」、「折れた矢」、「ミズーリ横断」、そして本作はインディアンと蔑まれ一緒くたにされたショショニ(ショショネ)、シャイアン、モヒカン、スー連合、アパッチといった諸部族…北アメリカ大陸に先に“国”を育み暮らしていた人々の側に立って撮られた傑作の一つだ。  やはりアンソニー・マンの西部劇は新しさに満ちていた。  「ダンス・ウィズ・ウルブズ」がアカデミー賞を取れるならば、アンソニー・マンや「ビッグ・トレイル」のラオール・ウォルシュ、ウィリアム・A・ウェルマンは一体何度賞を取れただろうか。   この映画は「ウィンチェスター銃'73」のように初っ端から撃ち合うような映画ではないが、代わりに人種差別という題材を体現する視線、視線、視線が重い空気を作っている。   馬に乗ってひたすら駆けていく男。彼の目的は帰ること、再会を分かち合える嬉しさに溢れていたことだろう。  肌の色に関係なく軍人となり、戦争を生き残った。もう「インディアン」呼ばわりされない、ショショニ族という自分のアイデンティティーを認めてもらえる…きっとそんな気持ちで酒場に入っていったはずだ。   戦前から知り合いだった男たちとの再会、胸の勲章を“認められた”証として見せびらかしこそしないが、誇らしく身につけている。 だが、画面の端…酒場の奥にいた男にその想いは届かなかった。彼の存在が終始この映画に暗い影を落とし、息苦しさを持続させる。   机の上に叩き出し栓を打ち上げる酒瓶、奥行きで強調される窓や壁の穴から差し込む光、巻きあがる土埃、映り込む影。   迎えに来た父親との再会、周りに集まり騒然と、白い目でそれを見つめる街の人々。犬にも警戒されているのか吠えたてられる。   元々住んでいたのどかな生まれ故郷。自然豊かな大地を牛が行き交う谷、自分の存在理由。  父が残す言葉の真意と医者の反応、黙って見送るしかないもの。   知人の変貌、貼り紙、偏見に満ちた男の銃撃、それに拳で応える殴り合い、不気味に見届ける黒い影、影、影が囲む閉鎖空間(ジョン・オルトンが撮った強烈なコントラスト)、砂と血にまみれる取っ組み合い、浴びせかける“おごり”。   悪徳弁護士、女性弁護士との邂逅、ライフルで武装する警戒・それが緩む少年を暖かく迎え入れる光景。助けないのは助けてくれる者がいなくとも自力で立ち上がる強さを与えるため、這い上がるならそれを称えるように抱きかかえ抱きしめてやればいい。それがショショニ族の強さなのかも知れない。   板挟みに遭う開拓者、ショショニ族の避けられない殺し合い、文明の衝突。故郷を奪われ居留地に押し込められ、流れ着いた人々、受け入れられるものとられないもの、自分の故郷…国を守るために武装し戦うしかない。かつて同胞として共に戦った者たちと…。   街や谷に溢れかえる牛、羊の大群、それを幌馬車ごと吹き飛ばすダイナマイトが炸裂しまくる殺し合い、撃ち合い、殴り合い、横たわる死、死、死。  椅子を逆さにし家財道具も何もかもバリケードにし土を掘り返し続ける戦闘準備、それを見守る指揮官を横移動で捉えるキャメラ、レバーを開き確認し受け渡されるライフル。   法を知る弁護士さえいくら話し合うことは出来ても戦いを止められない無力さ、騎兵隊も助けてくれない。拍車をかけるだけだ。  大人が斃れれば次は子供も“大人”にされ戦闘に駆り出されていく。   踏ん張っていたものが力尽き、斃れることを告げる敬礼!  この作品の要素は文明の衝突「ララミーから来た男」「シャロン砦(シャロンの屠殺者)」、法をめぐるやり取り「胸に輝く星」、不安定な人間関係「裸の拍車」等にも受け継がれる。
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-16 19:31:20)
8.  モンパルナスの灯 《ネタバレ》 
マックス・オフュルスが計画していた企画を、ベッケルが受け継いだ傑作。  人々が談笑し酒を嗜むカフェ、机の向こうを見つめ何かが終わるのをひたすら待ちわび、隣で見守り、窓の向こうで振り返り、何かを紙に書き続ける男たちの姿。 不満げな反応に酒代まで払うと言われ、それに紙を破いて返答する意地っ張り。この映画のモディリアーニは芸術家ではなく、酒と芸術に“酔った”ろくでなしとして描かれていく。  ベッケルの興味はモディ(モディリアーニ)の絵ではなく、彼そのものが破滅していく様にあるのだろう。「この物語は史実にもとづくが、事実ではない」と一応断りを入れて好きに描いてやろうという具合。  女と近づき寝るために彼女たちを描いているような気さえしてくる。熟れた御婦人も、うら若い乙女も、階段を力強く登り灯の管理も手ぬかりない大家まで心を奪われそうだ。  酒と雨を浴びるように楽しみ、貰ったばかりのマフラーもびしょ濡れにし、酒のツケはたまり放題、鍵が無いからといって体当たりでドアをこじ開け、酔った勢いで平手打ちを浴びせるなんてことも日常茶飯事らしい。  だが絵は売れなくても不思議と彼の世話をし“巨匠”と親しげにしてくれる親切な知人には恵まれる。 色男というだけじゃない。自分の好きなように絵を描き、それが曲げられるくらいなら殴り合いさえ辞さない覚悟、すべてに絶望した虚ろな眼差しを自身の絵にも描きまくり、己を貫くためなら死んでも構わないという危なげな姿をみんな放っておけず駆け寄ってしまう。だがその優しさも過ぎれば単なる甘やかし、モディを破滅に向かわせる原因の一つにもなっていく。  でも暴力を振るわれても隣に座り、甘い声で謝られてしまったら…モディに関わる女性たちは何もかも寛容に、気づけばほつれたボタンを付け、マフラーを首に巻き、一夜を過ごし肉体まで許してしまうのだ。繰り返される口づけのような抱擁。  閉ざされた扉を叩く虚しい響き、画塾に通い詰める人々のタッチとそれぞれのモデル、出遭った瞬間に惹かれ合い絵によって結びつく恋、扉を閉ざす待ち伏せ、鍵を閉める沈黙、ダンスホールで踊る人々を反射する鏡、外人部隊の国だからか黒人もアジア人も自然に溶け込む街。  葛飾北斎のように絵を広告として活用することを選んだ者も入れば、モディのように金で思うがままにされることを許せなかった画家たちもいただろう。 尊敬するゴッホを侮辱されたと思い“苦悩を忘れるためだ”と情熱を持って擁護する。表に裸婦の絵を置いて歓迎しているとは思えない態度だった者が、愛する者のために売り払い“かなぐり捨てる”ことが出来なかったくだらねえプライドが、あの瞬間だけ光り輝いて見えた。街の片隅でヴァイオリンを弾く孤高の奏者に向けたあの一瞬の輝きを。  女はそんな男を最後まで慕い続けた。札束も身も投げようと狂っていた男を正気に戻す女の眼差し。ベッドで睡眠を貪る傍らで内職までして尽くす。  その視線を誰も向けてくれなくなり、絵を突き返され金を“恵まれる”ことが繰り返された瞬間…高すぎたプライドは崩れ去り、絶望に向い歩み始めてしまうのだ。 薄れゆく中で見たもの…。    そんな彼等を嘲笑うように、黒い帽子姿で現れる死神のような画商。 くたばるのを待つように見守り続け、胸像を投げ破壊された窓ガラスの向こうでさえ挑発を続ける不敵な笑み。とぼけた表情で挨拶をし、馬車を走らせ、札束のように掲げまくる絵、絵、絵、顔、顔、顔!
[DVD(字幕)] 9点(2016-12-01 09:26:29)
9.  幌馬車(1950) 《ネタバレ》 
赤狩り(レッド・パージ)の嵐が吹き荒れた時代に反撥を示したジョン・フォードによる、自由を求めてひたすら大陸を旅する開拓劇。  初っ端から銃撃に始まり銃撃に終わる映画だが、とにかく地味で、のんびりゆったり、とにかく平和。音楽も旅人たちを称える歌が流れるくらいだ。 ジェームズ・クルーズの「幌馬車」やラオール・ウォルシュの「ビッグ・トレイル」のように吹雪を乗り越えたり、異文明との衝突もない。だが面白い。  強盗団が店に押し入っている最中からいきなり始まり、広大な河を渡っていく幌馬車…いや馬、馬、馬の群れ。馬の売買を生業にする牧童(カウボーイ)コンビとモルモン教徒たちの出会い。予告される彼等と強盗団たちの遭遇・何時出遭ってしまうのか分からない緊張。 保安官には口笛で暴走するような馬を売りつけたりする牧童たちだが、頼まれ引き受けた依頼は最後までやり遂げるプロフェッショナルだった。コラル(馬を囲う柵)の中でいななく馬たちを背にし、ナイフで木を削り話をまともに聞いていたのかも分からなかった二人がだ。  角笛のユニークな響きと共に出発し延々と連なる幌馬車隊を眺めているだけでも面白いが、ユーモア溢れるやり取りが程よく挿入され退屈しない。  芸人一座(三人)との出会い、何も言わずフラつく御婦人を支えに行くハリー・ケリーJr.の紳士振り、拾った酒瓶をはたき落しブッ倒れる気丈な女性、ほとんど喋らない赤毛の女性(是非ともカラーで見たかった)、尻を付き合い取っ組み合う喧嘩、水を勢いよくぶちまけ馬と観客をビックリさせる色っぽい場面、水場があると分かり銃声の音で猛烈に雪崩れ込む幌馬車の轟音、鞍を外して馬ごとつかる水浴び、罵声を浴びせても謝罪する馬にも何にでも優しい気遣い。  不穏な空気が流れるのは、モチロン例の強盗団が不意に現れる瞬間からだ。ライフルを構えたまま何時“しでかすか”分からない連中相手でも暖かく歓迎するワード・ボンド。彼は「作り話さ」とモルモン教…いや宗教そのものを小馬鹿にしたようなことも言うが、最後まで幌馬車隊のまとめ役を果たす男だった。  犠牲者を出さないために絶対無理をしない・出来ない、だから雪山も登らない、ナバホ族(自由を奪われた者同士の共鳴)と遭遇しても自ら武器を捨てて言葉を話せる人間を探し出して交渉。仲間たちもそれに応えるために“発見”したものを知らせるべく凄まじい速度で馬を飛ばして(しがみ付いたりして)引き返し、一緒に踊り、“しでかした”やつを車輪に縛り付け鞭を喰らわせ、隠し持った拳銃を受け渡し、インチキ役者とその嫁は勇気を振り絞り危険な岩肌を超える役を買って出たり、撃たれたら一瞬の銃撃戦ですべてを終わらせる。“蛇”がいなくなったら不要なものは投げ捨てててしまえばいい。 また同じような危険に遭遇するかも知れない。だが、男は旅をする仲間たちを信じているからこそ凶器を捨てることが出来るのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2016-11-07 13:42:23)(良:2票)
10.  雪の女王(1957) 《ネタバレ》 
氷も溶かす勢いのファンタジックな冒険活劇。  本の中からよじ登り出てくる老人、二本の傘を携え、老人の回想形式?で物語は始まる。  傘のパラシュート、アンデルセンの像にご挨拶、模様の入った白い傘を開くと港街に画面は移る。  紳士が傘を持つのは雨を避けて幼い男女の邪魔をしないため、窓に橋をかけて植物で彩る、赤い薔薇と白い薔薇、主人公のゲルダとヒロインのカイル。  雨、雪、冬、荒れ狂う海から出現する白き城、そこに君臨する雪の女王。氷のようにお堅そうな面をしてやがる。 噂をすれば何とやらで鏡から感じる視線。奔る亀裂と舞い上がる結晶は嵐となって幼い瞳に襲いかかる。  凍り付く窓・奪われるもの…まったくなんて迷惑な女だ。 天然のスキー場に荒々しく登場する女王、ダイナミック人さらい、すべてを凍てつかす女もいれば、子を命がけでかばう母親もいる。  黒い傘は夜空になって消える。 赤い靴を追う内に思わぬ旅立ちと出会い、薔薇園の老婦人と小さな衛兵、愛する者を求めて裸足で果てしない荒野へと飛び出していく。  海辺の鳥と喋る親切なカラスたち、庭園を照らす花火、甲冑の騎士も飾り、足跡、物々しい足音を立てて見回る警備(何故気づかない)、さっきから衛兵が仕事しねえ・させてもらえない。蝋燭の面白い付け方、幼い王子と姫。  馬車と山賊と血気盛んな娘、山賊は歌い馬車はつっ走る! とうとう鳩やトナカイまで喋りはじめる、ツンデレ、太もも、トナカイの疾走、涙を流しながら捉えていたロープを切る様・寂しさが切ない。本当に欲しかったもの、氷を割りながら、魚、手紙、蘇る精気と氷上のダンス!  そして迎える春の訪れ。
[DVD(字幕)] 9点(2016-08-26 06:10:50)
11.  女狙撃兵マリュートカ 《ネタバレ》 
チュフライの傑作の一つ。 「誓いの休暇」も冒頭から“狙撃”でキッカケを掴む映画だったが、本作は狙撃に始まり狙撃に終わる。 波がうねる海原、海から砂漠に場面は移る。まるで猛吹雪の雪山のように白い砂漠を歩き続ける。砂の斜面、敵影を見つけてを迎撃態勢、走り去ろうとする敵兵を次々と狙撃していく。 兵士としての厳しい表情、彼女の呼びかけとともに指揮官が起き上がり、寝ていたい兵士たちが駆けだす!神に祈りを捧げ、遠くを進む黒い影を追跡する。指揮官はモーゼル拳銃をサーベルのように振り回して部隊を引っ張る。 駱駝は移動手段であり盾となる、長距離での撃ち合い、銃は降伏の旗や墓標・助けを呼ぶための合図。戦利品となる駱駝や情報。  たき火、夢の中に見る故郷の思い出、仲間の死、指揮官の思いやり、捕虜を連れながらの厳しい行軍、熱風が吹きすさぶ中で倒れていく兵士たち、銃を打ち捨て嘆く者も出てくる。 そんな彼らを祝福するように拡がる海原!兵士たちの表情に安堵が。 「アラビアのロレンス」が砂の海原を突き進んだ末に本物の海に辿り着いたように(映画としてはコチラが先か)。 砂漠の民に出迎えられての宴会。捕虜も一緒に宴会を楽しみ、束縛の縄を見て「ああそうだったね」という顔をするのが面白い。戦争の厳しさを忘れられる安らぎ。  会話を重ねる内に捕虜と良い雰囲気になっていく彼女、手紙、裁縫。手紙を高らかに読んでその声で目が覚めそうになる仲間、それをみて声を小さくするやり取りが微笑ましい。  浜辺で見つける船、嵐、砂漠にはなかった雨風の嵐の恐怖、無人島に二人っきりで泣き叫び弱音を見せる彼女、無人の小屋、一枚一枚服を恥ずかしそうに脱ぐ様子。味方ならともかく、相手は敵だ。 女の表情、濡れてとかれた髪、彼女の背中と投げ出された脚がエロい。荒々しくうねる海原、看病を通してどんどんデレていくマリュートカが可愛い。 彼女たちが世話になった集落にも拡がる戦火、炎のゆらめきが海の煌めきに、男の語りを彼女は黙って聞き入る。浜辺でキャッキャッウフフ。  そして訪れる最後の“狙撃”。
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-30 15:44:39)
12.  二十四時間の情事 《ネタバレ》 
「ヒロシマ・モナムール(広島、我が愛)」。  「君は何も見ていない」という言葉は、アラン・レネ自身の自問自答がこの映画に刻まれているのではないだろうか。 「夜と霧」がそうであったように、人が殺された“跡”とそれを記録したフィルムを通して見たにすぎない。直接あの惨状を見てはいないのだ、と。 レネが冒頭で原爆の惨状を伝えるフィルムとして関川秀雄の「ひろしま」を選らんだのも、あの日を経験した・あの日に家族や友人を失った者が大勢参加したフィルムだったからだろうか。岡田英次も「ひろしま」に出ていたのだから。  原爆資料館、被爆者を治療する映像、それを再現した映画が重なり、2人の男女が情事にふけながら広島の話をするのである。いや、話すのは広島にとって外部の人間であるエマニュエル・リヴァ。岡田英次はそれを黙って聞くように彼女の体を抱き続ける。人の死が刻まれた映像と共に二人は新しい生命が生まれる勢いで性交を続けるのである。 「夜と霧」が「死」だけの描かれたドキュメンタリーとして終わったならば、この映画は「死」の次にある「生」を交えながら描こうとしたのだろうか。 さすがにあれだけズッコンバッコンされると平手打ちどころじゃないけど。岡田英次もちょっと殴りたくなったわ。  2人の男女は心の中に戦争の傷跡、見えない傷が刻まれている。家族を失った男、最愛の恋人を失った女。2人は共通の痛みで接近するし、また完全な理解者にはなれないだろうという心の距離も置いている。自分の故郷にいる岡田英次は尚更だ。それは英次にとってもリヴァの過去を知らないという問題が出てくる。  リヴァもまた自分の愛した軍人と、軍人として生きていた英次の境遇を重ねているだけ。同情?興味本位?疑問が浮かぶ関係の二人は心の底から愛し合っていない。冒頭で二人の肌を覆う灰?のような粉が消えていくのは表面上の事に過ぎない。  広島のデモ行進で呼び起される彼女の記憶・「手」に刻まれた忘れることのできない記憶。冒頭シーンからして手、手、手が映される。 広島が変わりゆく街並みの中で「あの日の惨劇を絶対に忘れるものか」といたるところで叫ぶように(デモのプラカード、写真や絵まで混ざる遺影の生々しさ、被爆した人間のようなメイクを施して祭りを見物する人々、メイクで背中の火傷を再現する描写など)、女も英次に恋人の面影を狂ったように求め始める。  リヴァが悩んだ次は英次が悩む。英次はリヴァの記憶を直接見ることは出来ないのだから。リヴァが思い浮かべる故郷ヌヴェールの姿も英次は恐らく知らない。この瞬間に2人の男女の間に決定的な心の壁が生まれる。 英次がストーカーまがいの行為までして彼女を追うのも、それが悔しくてしょうがなかったのだろうか。自分も彼女も何も知る事が出来ないという点じゃ一緒だ、と。  その見えない壁は、ラストでそれぞれの故郷の名で異性を呼び合う瞬間まで存在していたのではないだろうか。何て事を思ってしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-19 13:06:26)
13.  ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 
今作のグレース・ケリーは「裏窓」の彼女とは正反対と言っていい。 奔放そうで脚をバキバキに折った男の面倒をみたり、愛が故に独りで乗り込むなんて事もやっちゃう「裏窓」。  対して「ダイヤルMを廻せ!」は清純そうで夫が嫉妬に狂う“原因”を作ってしまう女性を演じている。 赤いドレスで接吻なんてシーンだけでも官能的なのに、薄いナイトウェアで良いケツした若妻にうろつかれた日にゃあ襲いたくもなるわ(おいコラ)。  そりゃあ何度もキスして「愛しているわ」とやっている嫁が本当は・・・なんて事されてたら誰だって怒る。それが嫉妬によって憎悪に変わる恐ろしさ。 かつてユダがキリストを裏切る際に“接吻”をしたように、この男も女に対してその接吻で応えるのである。  女が去った後、“依頼人”は“殺し屋”に異常な依頼をする。最初数分の退屈な会話が、その異常さが露呈した瞬間に張り詰める空気。  カメラが上から部屋の様子を映し、殺し屋が徐々に依頼人の計画にのっていく様子を強める。  劇中で幾度も閉じられては開けられる扉、手袋や同窓会の写真、そして鍵。鍵への執着振りは「汚名」を思い出す。  依頼人が指紋を気にする様子に殺し屋は次第に応じるようになり、椅子に投げ込まれた“前払い”を無言で受け取り依頼は成立する。  依頼人も殺し屋のために準備を整える。 鍵を確認し、カーテンを閉め、手袋、バッグから鍵を奪う、階段にかけられる手・・・。  殺し屋も依頼人を信じて闇夜に姿を現す。 もしもグレース・ケリーが不倫だけでなくあんな事やこんな事までヤッちゃった文句なしのビッチだったならば、俺はこの二人の男たちを応援していただろう。 とにかく浮気なんて許さねえという人は問答無用で応援していた人もいただろうね。  時計が緊張を高める演出。「真昼の決闘」は戦闘まで、この映画では一瞬の決着のために!  練られた計画によって繋がる二人の男。それを“切り裂く”思わぬ得物が標的をトドメる。殺っちまった瞬間の嫌悪感・それを人の前でどうにか耐えようとする気丈さ。あるいわ図太さか。  完璧な筈の計画が音を立てて崩れていく後半の二段構え。旦那も説明できない表情になっていきます。  それでも殺し屋に手紙を“渡して”まで、法によって殺害しようとする諦めの悪さ。妻への目配せも複雑、グレース・ケリーの背景も真っ赤な血のように染まる。  「君がいなければこんな事にはならなかった」 じゃあその男を殺れやっ!ホモかテメエは。どっちにしろ嘘の上塗りも限界。一枚上手の警部にもはめられて自宅で袋小路。  警部の部下「こんにちわ」  これには依頼人も苦笑いするしかなかった。
[DVD(字幕)] 9点(2015-05-09 02:34:21)(良:1票)
14.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
「キングコング」に並ぶ怪獣映画の最高峰。それをデジタル・リマスターの美しさと音響で味わえる感動。 真っ黒い体躯、珊瑚礁のような背びれ、放射能を吐く怪獣「ゴジラ」。  日本に古くから伝わる伝承と、当時問題となっていた水爆実験を「怪獣」として具現化したのだ。  もしまた原爆が落ちれば、国会議事堂も、子供を抱きかかえた母親も何もかも全て吹き飛ぶ。 ゴジラの破壊は、正にそんな意味合いも持ち合わせている。  ストーリー全体はゆっくりゆっくり進む。 まるでゴジラが徐々に近づくように。  戦闘機の模型などはお粗末な物だが、実際に人が入り動くゴジラは本当に生きているかのような迫力を感じる。  水爆実験で揺り起こされたゴジラを食い止めようと苦悩する人間たち。 この人間ドラマも重要になって来る。 ゴジラに踏み潰されるだけが人ではない。 その圧倒的な恐怖にどう立ち向かい、どう打ち勝つか。  生物学者としてゴジラを調べたいという山根博士、 人類の驚異としてゴジラと戦おうとする尾形、 ゴジラを滅ぼせる兵器を作り出してしまった事に苦悩する芹沢。 原爆の惨状から生き残った事をほのめかす人々、 そして毎回ゴジラの熱線で散々な目に遭う事を義務付けられているような自衛隊! 懲りろ!!  人類が勝つか、ゴジラが勝つか、あるいわ一緒に戦うか・・・以後何十年に渡るゴジラとの戦いの歴史が始まる。  ゴジラもまた孤独・・・。
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-21 19:25:23)(良:1票)
15.  戦争・はだかの兵隊 《ネタバレ》 
まずは、記事の作成に御協力して下さった鱗歌さんに感謝、感謝ですっ!  マリオ・モニチェリによる傑作戦争コメディ。 ニーノ・ロータの穏やかで何処か哀しさもある音楽が印象的。 舞台は第一次大戦。徴兵検査から訓練、一時の平和から一気に戦争へと突っ込んでいく内容。 徴兵をちょろまかそうとするが騙されて結局軍人となってしまう前科者のジョバンニ、 ジョバンニを騙して金をくすねたが紆余曲折を経て相棒となる衛生兵のオレステのデコボココンビ。 物語はどんどんシリアスになっていくが、ところどころに転がるギャグでクスクス笑ってしまう。 くすねた煙草をくすねた相手に勧めたり、列車の上での追いかけっこ、手榴弾のインク、ドアでのやり取り、特にジョバンニとコンスタンチーナの“再会”シーンは爆笑。 そもそもイタリア人がノリノリでナンパしているだけでも笑ってしまう。ドサクサにまぎれて人妻の胸を揉むなよ・・・w ニワトリの件も和んだ。  だが、戦争となるとシリアスだ。 爆弾に火を付ける作業は怖かったし、鉄条網を伏せて不意を付いたり、食事中の敵兵を撃たなきゃならない辛さ、ボロボロの兵士たちを見て歓迎パレードが葬式の通夜のように静まり返る場面、遠くで閃光が飛び交い味方が焼かれているというようなシーンは凄かった。D.W.グリフィスの「國民の創生」を思い出した。  戦いは冬から春へと移っていく。 街での“別れ”のシーンは切ない。 雨の中での砲撃は火薬が湿気らないだろうか? ラストは哀しい結末だが、軍人として、そして仲間のために秘密を守って散っていく姿はカッコ良くて胸に迫った。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2015-01-02 21:41:03)
16.  遠い国 《ネタバレ》 
ガンファイトよりもドラマが一番の見所と言える作品。  ゴールドラッシュに沸く山間という舞台は後の「ペイルライダー」を連想させる。  ワイオミングからアラスカへと牛を運ぶ男二人。 西部で育てた牛を寒冷地で力強く育てようというフロンティア魂を強く感じる。 一人でもやってやるぞと孤独な危ういステュアート、それを支えるお喋りだが老獪なブレナン爺さん。 船員を銃で打ち下ろして逃亡、上陸後に牛に乗って脱出するステュアートが面白い。  街に付いた二人は街を治めるギャノン一味と関わり合ってしまう。 酒場の女主人と主人公を慕う女性二人の対照的なキャラも魅力的。 雪に覆われた雄大な自然、 追っ手との銃撃戦、 雪崩で別れる運命(雪崩にして随分デカイ塊があったような・・・)、 珍しく重傷を負うステュアート(奇襲とはいえ主人公補正のステュアートはともかく、ブレナン爺さんに傷を負わせるとは相当の手練。「荒野の決闘」のワード・ボンド並みの実力者か。)  そしてラストの馬と鈴を利用した奇襲と決着。 ブレナン爺さんのため、街の人々のため、自分のために引き金を引く覚悟を決めたステュアートが力強い。 見事な決着だが、あのタイミングであの人が死ぬのはいささか腑に落ちない。  ブレナンは一足先に旅立つか、残していった“鈴”は最後までステュアートを助けてくれた。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-21 22:13:37)
17.  OK牧場の決斗 《ネタバレ》 
スタージェスの西部劇は「日本人の勲章」がベストだが、この作品も俺にとっては充分傑作。  ジョン・フォードが「荒野の決闘」を産んで数十年。 ジョン・スタージェスは史実に基づいて「OK牧場の闘い」を描ききった。 フォードの「荒野の決闘」は人間ドラマが醍醐味であり、全体のテンポやガンファイトは今見るとそれほどピンと来るものではない。 何処までも「静」。 史実と大きく違う描写も多く、ドラマとして強調するための脚色が目立った(アープが髭でドクが髭無しってどういう事なの)。 途中「静」から「動」に移ろうとする場面もあったが、やはりフォードらしい西部開拓民への詩情を唄った物語を貫いた。  本作は「動」にこだわった粋な作りが魅力。 冒頭から「OK牧場の闘い」を唄ったネタバレすぎるリズミカルなオープニングが流れるが、ワイアット・アープを知っている者ならば既知の「常識」であり、ネタバレには成らないだろう(その人限定だけど)。 人間ドラマも途中から掘り下げが進み見応えがある(アープ兄弟の影の薄さは「荒野の決闘」の方がまだ掘り下げがあった)。 ワイアット・アープ演じるバート・ランカスターの職人気質、ドク・ホリデイ演じるカーク・ダグラスの男気がよく描かれており、二人の演技も素晴らしい。 恋人と静かに余生を過ごしたい・・・だが仲間や兄弟の危機を見捨てられない。 保安官としての義務、兄弟としての愛情・・・その葛藤。 ドクも酒に酔っても心までは酔わない。世話になった男の為なら命も賭けられる。  そして何といってもガンファイト。 ジョン・スタージェスは人間ドラマで盛り上げガンファイトで爆発させるのが巧い。 「荒野の七人」「墓石と決闘」「大脱走」は言うまでも無い。 ナイフ、銃撃、決闘! 動いて動きまくる撃ち合い! 全てが終わり、静かに別れを交わす二人の姿が印象的。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 19:04:35)
18.  無法松の一生(1958) 《ネタバレ》 
前作「阪東妻三郎」の無法松から15年。 バンツマ以上のエネルギーと荒々しさを持ち合わせた三船敏郎が松五郎を演じきった。 いつも一本調子などなり声で叫ぶ(そこが良いのだが)三船が、今回は方言も見事にまったく違う三船を見せてくれた。 悪党から正義感、屈強な無頼漢から優男まで動きで魅せてきた三船敏郎の真骨頂とも言える作品の一つ。 表向きは博打に興じる暴れ者、本当は女子供に優しい繊細な男。その二面性が見事。 そして極めつけの祇園太鼓! 太鼓も上手な三船の腕が唸る唸る! あばれ太鼓のように太鼓を打ち鳴らす様は迫力満点。 園井恵子と違った切り口で良子を演じきった高峰秀子、涼子の夫の小太郎に扮する芥川比呂志、撃剣師範役の宮口精二の演技も良い。 前作が不本意なカットで泣かされた稲垣浩にとって、今作は前作以上のパワーと映像(+カラーとシネマスコープ)で完成させられただろう。 これほど血が騒ぐ日本映画は滅多に無い。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 19:00:37)
19.  突撃(1957) 《ネタバレ》 
第一次大戦の戦場を描いたキューブリックの傑作。 前半は戦場での死闘、後半は組織の腐敗や戦争そのものの不条理を描いていく。  冒頭は二人の将校の会話からはじまる。 そこから塹壕で戦う兵士を視察しに出掛ける。  「やあ、ドイツ兵を殺す覚悟はできているか兵士諸君?」 「椅子に座った奴などに戦いを理解できんよ。 “机上”で戦う奴にもだ」  言っている事はご立派、だが実際は現場の事情を知らずに味方を発砲しようとするようなクソ司令官だ。  突撃前の偵察任務。ピストル一つで敵が潜むかも知れない陣地に近づく緊張感みなぎる場面。照明弾の不気味さ、上官はビビッてトンズラ、味方に殺されるこの不条理よ!  さっきまで本音で口論していた二人、上官がきたら建前を通さなきゃならない。  突撃作戦時の戦慄。敵のアリ塚をブン奪るために今日も名も無き兵士が死んでいく。 カーク・ダグラス率いる部隊が突っ込んでいく姿は胸が躍る場面でもあるが、同時に事態は急変する。  それにしたってロジェのクソ野郎めっ! こういう奴ほど長生きしやがる。  裁くべき人間を間違えた軍法会議、くじびきで選ばれた“殺される”人間・・・余りに不当だ。 だいたい、どうして敵の陣地を奪ってもいないのに自分の兵士をむざむざ殺さねばならんのだ。  連帯責任の前に、本当の原因を何故追究しようとしないのだろうか。そんな世の中総ての理不尽さを見せ付けられているようだ。 組織が個人を殺す事の残酷さ。爆弾一つで何百人も殺すのと、違うとは言わせない。  死にゆく男たちは最後まで抵抗し、ハラを決めて散っていく。 やり場のない怒り・・・司令官の座を降ろされるくらいで済むと思うなよ。 だが、責任を擦り付け合う奴だけが軍隊じゃない。ルソー大尉みたいな“漢”たちも生き残り、また死んでいくのだ。  酒場で歌う女の歌が、彼らのせめてもの慰めなのだろう。  そして生き残った男たちはまた戦場へと進んでいく・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 17:47:32)
20.  山椒大夫 《ネタバレ》 
「雨月物語」よりも遥かに進化した溝口最高傑作の一つ。 本作は平安末期。 平安時代にキッチリした活字が合わないのは別として、生活を追われたある貴族一家の波乱に満ちた人生を描く。 主人公たちは今まで貴族という安全に浸かった生活を送ってきた。当然世の中に投げ出されれば、一人では生きていけないほど世間知らずでもある。そんな人々が狼や野盗、“偽り”の情けに騙されても文句が言えない過酷な世の中に放り出される。 主人公の兄妹。人買いの大主の山椒大夫(どんな美人の“太夫”かと思ったらオッサンの方の“大夫”かよ、チッ)にこき使われ、今までした事もない野良仕事に明け暮れ倒れそうになる日々。 そこに声をかけた男。 「辛かろうに負けるんじゃないぞ」 声をかけるくらいなら二人が成人するまで見守ってくれても良かろうに。ひやかしもいいところだ。為にならない情けは世の中いくらでもある。いや、俺がひねくれているだけなんだろうな。世の中、声すらかけてくれない奴が多すぎるもの。 妹はそんな男の言葉を支えに懸命に生きるが、兄は山椒大夫のやり方に染まり、山椒大夫がやった行いを同じ様に平気で行えるほど心が荒んでしまった。 国が乱れ、人買いや姥捨てが平気で跋扈する荒んだ世の中は、人の心も荒らす。 年月が経った兄の顔を見てみろよ。その面を、菩薩のような妹が少しずつ浄化していく。 妹は本当に健気で強い女だ。最後まで母親や父親の事を諦めなかったし、グレた兄の事も見捨てなかった。 それがあんな・・・溝口貴様あああっ(それと「山椒大夫」の原作者)! 兄は妹のためにも、何より家族のために一人で生き抜こうと抗う。荒んだ世の中が同時に彼の心も強くした。 そして父親は息子から離れても違う形で息子を助けてくれた。 兄は学を身に付け、官職になっていく。そして山椒大夫への逆襲。政治の攻防。 悪人は一掃されるが、主人公の運命には絶えず残酷な答えが待つ。 解放されて自由に歓喜する人々、ただ一人満たされない兄。それでも一縷の光が見える限り生き続けた。 終盤のあの池の畔に立ち尽くす、悲しみに満ちた場面。 それに全てが流されてしまった浜辺の村。あの黙々と海藻を整理する男が、それを物語っているのだ。 息子はまだいいさ。これからがある。だがもう一人は、“あの人”は最後の最後で救われたのだろうか
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-17 07:28:01)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS