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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 1980年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  プロジェクトA 《ネタバレ》 
 映画史に残る大傑作。   ジャッキーの自伝に曰く「少林寺や彷徨う戦士達を主人公にしなくても、格闘時代劇が作れる事を証明した」点が画期的との事で、言われてみれば本作の主人公って、現代の刑事物にも通じる「正義感溢れる警官」として描かれてるんですよね。  だからこそ、現代の観客にとっても感情移入し易いし、時代を越えた普遍性が有る。  そもそも中国(&香港)においては「官は悪、侠は善」(役人は庶民をいじめる悪役であり、御上に逆らう無頼漢が庶民の味方)という作劇上の伝統があった訳で、警官を主役に据えてる時点で、本作が斬新な映画であった事が窺えます。   その一方で「警察なんて辞めてやるぜ!」と啖呵を切ってバッジを投げ捨てる場面など、ちゃんと「理不尽な役人に逆らうアウトローな主人公」としての魅力も描いてるのが凄い。  当時の人々や「権力者側を善玉として描くのを嫌がる人」でも受け入れ易いよう作ってある訳で、この辺りのバランス感覚が、本当に見事。  「王道を裏切らずに、斬新な事をやってる」という形であり、これって理想的な「時代の先取り」の仕方だと思います。    自転車を駆使してのアクション(自分は「ノック」の件が特にお気に入り)も素晴らしいし、今や語り草になってる「時計台からの落下」シーンも、迫力満点。  後者に関しては、怯えるジャッキーを叱咤激励する形でサモ・ハンが監督しているとの事で、あの場面ではジャッキーが「監督」ではなく、単なる「役者」そして「スタントマン」に立ち返っているという意味でも、趣深い魅力がありますね。  「あの画には全く演技がなく、全て真剣だった」とジャッキーが語る通り、本当に限界を越えて手から力が抜けて(もう、だめだ)と思いながら落下したとの事で、作り物ではない「本物」の迫力が感じられるのも納得。   ただ、そんな名場面にも唯一の瑕が有り「時間が巻き戻ったかのように、違う落ち方を二度見せている」のが不自然なのですが……  これに関しては、劇中で「大口」役を演じたマースが、念の為に一度ジャッキーの代役として落下しているという裏話が影響していそうなんですよね。  つまり、ジャッキーが彼に敬意を表して、彼のスタント場面も無理やり本編に挿入した結果、不自然な形になったのではないかと推測出来るんですか、真相や如何に。   上述の「大口」への敬意の表れが、終盤の展開に影響してるように思える辺りも、ちょっと気になります。  本作のラスボスであるサン親分って、ジャッキーとサモ・ハンとユン・ピョウが三人掛かりで立ち向かうような強敵だったのに、何故か大口がトドメを刺す形になっているんです。  最後の漂流シーンでも、三大スターを押しのけて大口が一番目立っているし……  大口が当初から準主役だった訳でもなく、脇役に過ぎなかった事を考えると、この「急に何かが変わったかのような優遇っぷり」は、如何にも不自然。  これも、時計台落下という危険なスタントをこなした大口に対する、ジャッキー監督からの「ご褒美」だったんじゃないかと、そんな風に妄想しちゃいますね。   でもまぁ、そういった難点があったとしても、本作が傑作である事は、疑う余地が無いです。  冒頭、ジャッキーが自転車を柵に突っ込ませる場面で、もう面白くって「これから凄い映画が始まる」って予感で、ワクワクしますし。  酒場での乱闘シーンなど、音楽の使い方も上手かったです。  沿岸警備隊が復活し「これより、プロジェクトAを決行致します」と告げる場面も恰好良くって、もしかしたらココが一番の名場面じゃないかと思えたくらい。   サモ・ハン演じるフェイとドラゴンが再会する件で、自然な流れで食事してジャンケンする場面など、短い尺で「二人は旧知の仲」と納得させる演出なんかも、流石だなぁと唸っちゃいますね。  この辺りは、実際に少年時代からの付き合いである二人だからこその、阿吽の呼吸を感じました。  京劇出身な二人らしい一幕もあったりするし、色んなジャッキー映画の中でも「サモ・ハンとの絆」が、最も良い具合に作用したのが本作だったように思えます。   他にも「時計台落下はハロルド・ロイドから、逃走シーンはバスター・キートンから影響を受けている」とか、この映画について語り出すと、止まらなくなっちゃいますね。   映画の評価なんて移ろい易いものであり「子供の頃に好きだった映画が、今観るとつまらなくて幻滅しちゃう」とか、逆に「子供の頃は退屈だった映画が、名作だと気付かされる」とか、色んなパターンがある訳ですが……  本作に関しては「子供の頃も、大人になった今でも、大好きな映画」だと、胸を張って言えそうです。
[DVD(吹替)] 9点(2023-10-21 20:46:01)(良:3票)
2.  プロジェクトA2/史上最大の標的 《ネタバレ》 
 世の中には「単品として考えれば悪くないけど、あの○○の続編と考えると物足りない」って映画が沢山あるんですが、本作もその一つと言えそうですね。   何せ本作ってば、冒頭にて前作「プロジェクトA」の名場面を流しており、そっちの方が本編より面白かったりするんです。  これはもう、実に残酷。  冒頭にはサモ・ハンも、ユン・ピョウもいて画面が華やかなのに、いざ本編がスタートしたら彼らは出てこないんだから、落胆するなという方が無理な話です。   そんな「続編ならではの欠点」が、劇中で散見される形になってるのも辛いですね。  例えば「敵のアジトに乗り込み、多勢に無勢で負けちゃったドラゴンを沿岸警備隊が助けに来てくれる場面」なんかも、それ単体で考えれば悪くないんだけど……  前作では敵のアジトで大暴れし、ドラゴンが一人で犯人を捕まえた流れがあっただけに(あれ? 今度は負けちゃったの?)って、拍子抜けしちゃうんです。   前作で良い味を出してた「大口」が続けて登場しているんだけど、サッパリ目立たなくて活躍しないというのも、寂しい限り。  自分は前作の感想にて「終盤で、唐突に大口が準主役級の扱いになるのは不自然」と指摘しているのだから、徹底して脇役な本作の方が、自然といえば自然なんだけど……  やはり、責任を取って欲しいというか、一度は活躍させて観客に愛着を持たせた以上、最後まで愛されるように、大事に扱って欲しかったです。   それと、前作でハロルド・ロイドの「要心無用」(1923年)をパロってみせたように、本作ではバスター・キートンの「蒸気船」(1928年)をパロっている訳だけど、それも成功してるとは言い難いんですよね。  前作では「時計の針にしがみつくだけでなく、そこから落下してみせる」という形で、元ネタを越えるほどの迫力を出していたのに、本作では元ネタと殆ど同じで「看板が倒れてくるけど、丁度枠の部分にジャッキーが収まる形になって助かった」というだけなんです。  しかも元ネタの「蒸気船」では、キートンは立ったまま位置を動いておらず、それゆえに「たまたま窓枠の中に収まって助かった」という可笑しみが生まれているんだけど、本作のジャッキーは看板が倒れてくる際に、咄嗟に位置をズラして大丈夫なよう調整しちゃっている訳で、これは如何にも拙い。  どうせ動くなら、バレないように微かに動く形ではなく、もっとダイナミックに動いて「動かないキートンと、動くジャッキー」という形で、元ネタとは違った面白さを打ち出すべきだったと思います。  あるいは、劇中で「神様、感謝」と言っている「神様」とは、喜劇の神様であるバスター・キートンの事を指しており「ドラゴンは『蒸気船』を観ていたお陰で、咄嗟に位置調整してキートンのように助かる事が出来た」って展開なのかとも思えるんですが……  劇中の時代設定は「蒸気船」が公開される前のはずなので、この解釈は無理があるんですね。残念。   何だか不満点ばかり長々と述べちゃいましたが、良かった点も挙げておくなら……  ・前作より「刑事物」としての純度は高まっており、署長に就任した主人公が腐敗した警察署を改革していく流れは、中々痛快。 ・「レバーペースト」の機械に囚われた主人公が脱出する件は、記憶に残るだけのインパクトが有る。 ・サン親分の仇を取ろうとしてた海賊達が、主人公に助けられ和解するオチは、人情譚としての魅力があって良い。 ・刑事物と歴史物とキートンが大好きなジャッキーが、それらの要素を盛りに盛った「オタク映画」と考えれば、何だか微笑ましい。   と、そのくらいになるでしょうか。  あと、これは良かった部分なのか、それとも悪かった部分なのかと判断に迷う要素もあって、それが「悪役であるチンの存在」と「時代劇らしく辛亥革命を絡めている事」ですね。  前者に関しては、ドラゴンと手錠で繋がれ一緒に逃げる場面などから(あれ? もしかして二人が和解するオチ?)と思われたのに、結局は単なる悪役のまま終わったのがスッキリしないし、後者に関しても、映画の中で活かしきれていなかった気がします。  この辺り「手錠での逃走シーンがあるからこそ、悪役にも愛嬌が生まれた」「主人公が安易に革命に加担せず、警察官として人々を守る道を選ぶ場面は良かった」って具合に、褒める事も出来そうなので、判断が難しい。   本作は試写会で流れたバージョンと、今観る事が出来る完成版とでは中盤の展開が異なっており、試写会バージョンでは「チンの悪辣さ」「革命軍の出番」が増す形になっているようなので……  そちらを観る事が叶ったなら、また印象も変わってくるかも知れません。
[DVD(吹替)] 6点(2023-10-11 10:58:30)(良:1票)
3.  ケインとアベル/権力と復讐にかけた男の情熱<TVM> 《ネタバレ》 
 てっきりダブル主人公制かと思ったのですが、完全にアベルが主人公ですね。  ケインは副主人公、もしくは主人公のライバルといったポジションに思えました。   で、自分としては当然、出番の多いアベル側に肩入れしつつ、楽しく鑑賞出来たのですが……  物語の一番のオチと言うべき「苦境のアベルを匿名で救った人の正体は、宿敵ケインであった」って事が、観ていてバレバレだったのが残念です。  これに関しては、古典的名作ゆえの弱点というか、原作が書かれた1970年代なら意外性のあるオチだったものが、現代では「王道」「ありきたりな展開」になってしまったがゆえの悲劇なんでしょうね。  観客の自分としても(これ、絶対ケインが助けてるオチじゃん)と思えたし、それと同時に(救い主はケインって展開が一番面白い、そうじゃなかったらガッカリする)と思えたりもしたんだから、何とも判断が難しい。  もうちょっと見せ方を工夫して「観客にはケインが救い主である事を示しておき、アベルがそれに気付くまでの流れを俯瞰的描写で楽しませる」という作りであったなら、印象も違ってたかも知れません。   そんな本作は、300分越えという長尺の品であり、色んな要素が内包された大河ドラマのような作りなのですが、自分としては「収容所から脱走するアベル」の件が、一番お気に入りでしたね。  列車の中で、たまたま相席となった貴婦人がアベルを庇ってくれたお陰で難を逃れる辺りとか、特に好き。  これに関しては、上述のオチと同様「この後どうなるか分かってる」「もし予想通りの展開にならなかったら、逆にガッカリする」という例の最たるものであり「古典的名作の良さ」を存分に味わえた場面として、印象深いです。   後は、終盤にアベルの娘とケインの息子が惹かれ合うという「ロミオとジュリエット」的な展開になるのも、また面白い。  こういうストーリーの場合、普通は惹かれ合う男女が主人公となるので「偏屈な親どものせいで結ばれない二人が可哀想」としか思えないのに、この話では、その偏屈な親の方が主人公になってる訳ですからね。 (実際に、原作の続編である「ロスノフスキ家の娘」では、娘視点の物語として描かれていたりする)  「憎いアイツの息子に娘を奪われるだなんて、冗談じゃない」っていう親側の気持ちに寄り添った作りなのは新鮮であり、三十年以上経った今観ても、目新しい魅力を感じました。   アベルだけが生き残り、ケインは死んでしまう後味の悪さとか、手放しには褒められないし、あまり再見しようという気にはなれないんですが……  間違いなく「観て良かった」と言える、骨太な一本だと思います。
[地上波(吹替)] 6点(2023-08-02 20:43:51)
4.  彼女が水着にきがえたら 《ネタバレ》 
 馬場監督がアマチュア時代に撮った「イパネマの娘」という映画が原型の一品。   それと「冒険者たち」(1967年)の影響もあると監督当人が語っており(言われてみれば……)と納得しちゃいますね。  他の監督作に比べるとスケジュールがキツかったらしく、公開の直前まで撮影していたくらいなので、仕上がりに満足出来ず「一番後悔のある作品」と語っているのも印象深い。   それらの情報を踏まえ、鑑賞前の自分としては(つまり、一番の失敗作って事か)(配給収入では前作よりヒットしてるけど、まぁ売り上げなんて当てにならないしな)と思ってたんですが……  意外や意外、中々に面白かったです。   とはいえ、この映画が失敗作というか「求められてるものとは違った映画」っていうのは、なんか分かる気がするんですよね。  監督の前作である「私をスキーに連れてって」(1987年)に対し、自分は「オシャレでバブルの匂いを感じさせるけど、純粋に物語として考えたら面白くない」って評価を下しましたが、本作は全くの逆。  映画としての面白さはアップした代わりに、オシャレさもバブルの匂いも薄れてるというんだから、そりゃあ大半の観客はガッカリしちゃうと思います。  もし自分が前作を高評価してたとしたら「ごくごく平凡な娯楽映画になっており、あの独特の味が失われてしまった」「スキーの魅力を伝えてた前作と違い、本作はスキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」なんて事を言い出してたかも知れません。   ……でもまぁ、そんな妄想をしてみたところで、やっぱり現実の自分としては「面白かった」「良い映画だった」と思ってしまったんだから、これはもう仕方無いですね。  主演の織田裕二も魅力的だったし、ちゃんと全編に亘って「海での宝探し」って目的があるから、話の軸がしっかりしてる辺りも良い。  最終的な目的が何なのか曖昧であり、途中で退屈しちゃった前作に比べると、明らかに話作りの成長が見受けられます。   上の方で書いた「スキューバーダイビングの魅力が伝わってこない」っていうのも、実は当たり前の話であり、これって明らかに「宝探し」がメインの映画なんですよね。  海に潜るのは宝を見つける為の手段に過ぎず、海に潜る事が主題ではないんだから、そこの捉え方次第で、映画の評価が変わってくるように思えます。   あと、主人公達は自由人ではあっても善人ではないってタイプなので、そこも評価が分かれそうですね。  この映画が好きな自分でさえ「強姦してでも、あの女からポイント聞き出せ」って谷啓おじさんが言い出した時は引いちゃったし、ヒロインが怒った「ゲーム」に関しても、ちょっと趣味が悪い。  自分は織田裕二が演じてるって時点で主人公に肩入れして観てたから(まぁ、こいつは模範的な善人って訳じゃないんだろう……)って早めに意識を切り替えられたけど、そうでない場合は、結構キツいかも知れません。   何か、さっきから「良かった所を語る」というよりも「微妙な部分を庇ってみせる」って感じの論調になってますけど、本当、良い所も色々ある映画なんですよ、これ。   「五十億の宝を手に入れたら、五十億の船を買って百億の宝を探す」っていう主人公達のスタンスも、浪漫があって良いなって思うし「アウトロー気質な男に振り回される、真面目で普通な女の子」って形で、原田知世演じるヒロインの魅力が際立ってるのも良い。   「もう一つの宝」の正体がヒロインだったってオチも、ベタで嬉しくなっちゃうし……  水中でのキスシーンも、間抜けな感じで全然ロマンティックじゃないのに、その間抜けさが良いなって思えちゃうんです。  宝石なんかより価値のある「宝」を手に入れた主人公カップルは、宝石を持ち逃げされても呑気に笑ってるって終わり方なのも、もう文句無し。   皆はブスって笑いものにしてるけど、自分には可愛らしい美人にしか思えないっていう、不思議な女の子のような……  そんな、愛すべき映画です。
[DVD(邦画)] 7点(2022-10-10 19:27:06)
5.  私をスキーに連れてって 《ネタバレ》 
 馬場監督の映画の中では、一番バブルの匂いがする代わりに、一番完成度が低い映画って感じですね。   「あの頃の雰囲気を楽しみたい」という目的で鑑賞するならば、同監督作の中では最も適してるでしょうし、バブル期とか関係無く、純粋に物語を楽しみたいというのであれば、かなり退屈な映画になっちゃうと思います。  そもそも商業映画デビュー作なので、作りが粗いのも仕方無い話ではあるんですが……  馬場監督の映画の中で、始まって二十分ほどで(退屈だなぁ)って感じたのは本作だけですし、かなりキツい出来栄えです。   まず、根本的にストーリーが古臭いというか、ベタで王道な魅力も無いもんだから(わざわざ映画にするほどの話じゃないだろ)って思えちゃうんですよね。  主人公とヒロインの恋路にしたって、中盤でアッサリ誤解がとけて問題無く結ばれるし、新製品のお披露目イベントにしても「苦労した主人公達は結局間に合わず、別行動の仲間達が成功させた」ってオチになるもんだから、拍子抜け。  紆余曲折を経て恋が成就したとか、頑張って仕事を成功させたとか、そういうカタルシスを得られ難い作りになっており、観た後にスッキリした気持ちになれないんです。  最後に「バーンっ!」って銃を撃つ仕草で終わるのも(それ、最後まで引っ張るようなネタかな?)って微妙に思えたし、テンションが低いままで、映画の終わりを見届ける形になっちゃいました。   そんな訳で、どうしても高く評価出来ない一作なんですけど……  監督のファンとしては、それだけじゃあ寂しいので、以下は良かった点を。   まずは何と言っても、オシャレな作りなのが良かったです。  ヒロインの真っ白いスキーウェア姿は素直に可愛いなって思えましたし「冬の間恋人にするなら最高ね」なんて台詞回しも良い。  素敵な内装の山小屋で、バニーガールに給仕されたシャンペンを味わう場面なんかも、憧れちゃうものがありましたね。   真理子さんが面白おかしく話してた「矢野を好きだった女の子」の正体が、実は真理子さん自身だったと判明する件にも感心しちゃったし、話の盛り上がりという意味では、あそこがピークだったかも。  スキーを楽しむ場面も中々爽快感があったし、車やトランシーバーなどのアイテムの使い方も上手かったと思います。   そして何といっても、ユーミンの曲が魅力的。  映画作りにおいて、映像よりも音を重視しているという馬場監督らしく、全編に素敵なナンバーが散りばめられており、ミュージックビデオ的な楽しみ方も出来ちゃうんですよね。  この映画のMVPって、画面には登場していない荒井由実(松任谷由実)なのではって思えたくらいです。   後は……「メッセンジャー」(1999年)でも加山雄三を起用してる馬場監督だけど、この頃から「若大将シリーズ」へのリスペクトを感じさせるのが微笑ましいとか、そのくらいになるでしょうか。   「時代と寝た映画」って言葉がありますけど、恐らく本作も、それに当てはまるんでしょうね。  ただ、時を越えて愛されるユーミンの曲に比べると、本作に関しては「昔の恋人」って感じであり、思い出の中でこそ輝く存在じゃないかな……と、そんな風に思えました。
[DVD(邦画)] 5点(2022-10-10 17:42:45)
6.  バトルクリーク・ブロー 《ネタバレ》 
 ジャッキーが自伝にて「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画を、金払って観ようという人はいない」と語っている通り、商業的には失敗した映画。  その原因は「燃えよドラゴン」(1973年)を手掛けたロバート・クローズ監督が、ジャッキーに「ブルース・リーのような魅力」を求めてしまったからに他ならない……なんてイメージがあったのですが、久し振りに再見し、それは間違いだったと気付かされましたね。   それというのも、本作は意外にもコメディ色が強くて「ジャッキーらしい魅力」を、ちゃんと描こうとしてた痕跡があるんです。  (これはブルース・リーっぽいな)と感じた場面なんて「敵の屋敷に侵入する場面」「友人を殺された仇討ちしようと、怒りの声を放つ場面」くらいでしたし。  少なくとも「ジャッキーにブルース・リーの真似事やらせたから失敗したんだ」って認識は間違ってたみたいで、大いに反省させられました。   ただ、映画として面白かったかどうかっていうと……やっぱり「微妙」「退屈」って印象の方が強いです。  ジャッキー当人はキレのある動きを見せているんだけど、肝心の相手側が「戦ってる」というより「事前の打ち合わせ通りに動いてる」って感じが見え見えで、迫力が伝わってこないんですよね。  ローラーレースの場面でもスローモーションを多用していてテンポが悪いし、演出も良くなかったと思います。   そして致命的なのが、脚本の拙さ。  何せ本作と来たら「ジャッキーが人質を取られてギャングの言いなりとなり、要求通りにストリートファイトの大会で優勝しました」ってだけの話なんです。  一応、途中で仇敵の一人は倒して溜飲を下げてるんだけど、肝心のギャングの親玉は無傷どころか、ジャッキーが言いなりになってくれたお陰で万々歳。  そんな親玉に「約束通り人質を解放する」って言われ、ジャッキーは笑顔になって終わるんだけど……  (それでハッピーエンドにして良いのか?)ってツッコむしか無かったです。  主人公の父親が料理店を経営してるとか、現実のジャッキーの生い立ちにリンクさせるような設定は悪くなかっただけに、どうにも着地の仕方に納得出来ない。  どんなにベタでも良いから「人質を取った卑劣なギャングに復讐するカタルシス」は描いて欲しかったですね。   「口笛を交えたBGMは良い感じ」とか「特訓の描写は頑張ってる」とか、一応褒めるべき点はあるし、何より自分は「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画」でも結構楽しめちゃう口なので、駄作と断ずる事は出来ないんですが……  失敗作扱いされても、特に反論しようって気にはなれないです。   それと、後世の人間としては「紆余曲折を経て、ジャッキーはハリウッドで大成功を収めた」のを知ってるからこそ、余裕を持って鑑賞出来たけど……  もし自分が「公開当時のジャッキーファン」だったとしたら、相当キツかったと思いますね。  (違うんだ、ジャッキーは本当は凄い奴なんだ)(ハリウッドで通用しなかったのは偶々なんだ)って想いで一杯になってた気がします。  成功してくれて良かったです、本当に。
[DVD(吹替)] 5点(2022-09-29 20:20:01)(良:2票)
7.  アップ・ザ・クリーク/激流スーパーアドベンチャー 《ネタバレ》 
 「ウハウハで行くか」「ザブーンだな」  という意味不明な会話シーンを目当てに、定期的に観返したくなる一本。   劇中の主人公達同様、この映画も「出来が良い」「優秀な作品」ってタイプではなく、むしろ「落ちこぼれの劣等生」って表現が似合いそうなくらいなんですけど……それでも何だか、憎めない魅力があるんですよね。  川下りを題材にしているという、それだけでも自分の好みだし、緩い感じのギャグが各所に散りばめられているから、リラックスして楽しむ事が出来る。   勿論、肝心の川下りシーンに迫力が無いとか「自殺した学長も一人いる」って台詞は流石に笑えないとか、欠点は幾らでもあるんですが、そんな「迫力の無さ」「出鱈目で悪趣味な設定」さえも、本作では何となく「愛嬌」に思えてくるんです。   「テンションが低い観客を盛り上げる為、ブロンド女性が胸をはだけてみせる」という、お色気ギャグなシーンも、妙に好き。  主人公達の愛犬チャックも、仕草や鳴き声が可愛くて、面白くて、良かったですね。  本作のMVPには、この犬を推したいくらいです。   そして何より、クライマックスの「爆発」→「洪水」の流れには、大いに興奮。  このシーン単体で見ると、そこまで凄いって訳じゃないかも知れないけど、それまでのボートレース描写がノンビリしていただけに、ギャップによって盛り上がる形になっているんですよね。  土壇場で逆転負けしたライバルチームが「史上最悪のボートレース!」と叫んだりするのも、下らないと思いつつ、何故だか笑っちゃう。   今回久し振りの観賞だったのですが、やっぱり結構面白かったし、また暫く経ったら、観返したくなるんでしょうね。  中々離れられない、味わい深い映画です。
[地上波(吹替)] 6点(2022-08-03 15:53:49)
8.  ナーズの復讐 集結!恐怖のオチコボレ軍団 《ネタバレ》 
 劇中にて「ナーズにも人権がある」という演説が行われるのですが、それが大袈裟でも何でもないくらい、彼らが迫害されている事に吃驚。   観ていて可哀想になりますが、基本的にはコメディタッチの作品なので、陰鬱になり過ぎる事も無く、程好いバランスに仕上げてありましたね。  「いじめ問題」を中心とした、堅苦しい作品となっていてもおかしくなかったのに、娯楽作品であるという線引きを忘れず「ナーズの青春」を感じさせるような、良質な学園ドラマとして完成させている辺りは、本当に見事だと思います。   最初の体育館暮らしの時点で「飛び級してきた男の子」「ゲイの黒人」「不良」「日本人」などの、後にメインとなる面子が、しっかり目立っていた辺りも良いですね。  主人公二人が眼鏡を掛けていて、見分けるのが難しいコンビであったのに比べると、この四人組は視覚的にも分かり易いし、脇役として絶妙なバランスだったんじゃないかと。   如何にも学園のマドンナといった感じのブロンド美女に、地味な眼鏡娘という二種類のヒロインを用意している辺りも、心憎い。  個人的な好みの話をすると、前者のブロンド美女には魅力を感じなかったりしたのですが……  「互いの眼鏡の度の強さが同じという事に、運命を感じる場面」など、後者の魅力はしっかり伝わってきたし、主人公の一人であるルイスと彼女との恋を、素直に応援出来たんですよね。  こういう具合に、観客の好みに合わせて選べるような形で、タイプの違うヒロイン二人を用意してくれたっていうのは、嬉しい限りです。   学生達だけじゃなく、学長とコーチにも「文化系」と「体育会系」という個性を与えている辺りなんかも、上手かったですね。  それまでコーチの言いなり状態だった学長が、主人公達の演説を受けて奮起し、コーチより精神的に上に立って、見返してみせるという形。  これによって「虐待や阻害やイジメを経験した人は、皆さんの中にもいるはず」という主人公の訴えにも説得力が出るし、最後の「逆転」の構図が分かり易くなっているしで、本当に感心させられました。   そして何と言っても……  皆がボロ家を大掃除するという「住処作り」の場面が、実に楽し気で良い!  無事に完成させた後の、共同生活している描写(主人公が二階から降りてくると、男の子達が見よう見まねでエクササイズしていたり、ポーカーしたり、本を読んだりしている)も、凄く好みでしたね。  こういうの、青春って感じがして良いなぁ~って、憧れちゃうものがありました。   間抜けな感じの効果音が、今となっては流石に古臭いとか、復讐の一環とはいえ女子寮を盗撮するのには引いちゃったとか、色々と気になる点もあるにはありますが、まぁ御愛嬌。  冴えない主人公の学園物という意味では「ロイドの人気者」(1925年)などから通じる王道路線のストーリーだし、この映画自体が後世に与えた影響もあってか、今となっては「どこかで見たような展開」が多い点に関しても、短所ではなく長所なんじゃないかって思えましたね。   「こいつらはメインキャラだな、と思ったら本当にメインキャラだったという展開」「最後は皆に認められるという、お約束のハッピーエンド」など、予想通りではあるんだけど、それが心地良い。  「先が読めて退屈な映画」ではなく「こうなって欲しいな、という観客の願いを叶えてくれる映画」って感じがして、観ていて楽しい一品でした。
[ビデオ(字幕)] 7点(2022-06-05 16:43:22)
9.  ビバリーヒルズ・コップ 《ネタバレ》 
 刑事物における金字塔と言える映画ですね。  こういったジャンルの場合、どうしても主人公二組による「バディ形式」が多くなってしまうものなのですが、本作の主人公は一人。  それだけに、主演のエディ・マーフィの魅力を堪能出来る作りになっていると思います。   と言っても、主演の魅力に頼りっ放しの映画という訳では無く、脇役にも「血が通ってる」と感じさせてくれるのが、本作の特長ですよね。  例えば、冒頭でトラックを暴走させて警察から逃げようとする悪人なんかも、カーチェイスを繰り広げている内に楽しくなって笑顔になる場面があったりして、妙に憎めない。  バナナをタダでくれたホテルの従業員にも愛嬌があるし、画廊で働いてるセルジュにも「3」で再登場するに相応しいような存在感がありましたからね。  勿論「ビバリーヒルズの警官」にあたるタガートとローズウッド達も良い味を出しており、彼らが主人公のアクセルと仲良くなっていく様は、とても微笑ましかったです。   ラストにて、皆で口裏を合わせてアクセルを庇ってみせる場面とか、悪い事をしているんだけど、それによって「仲間としての連帯感」が生まれた事を自然に描いており、観ているこっちまで、その仲間の輪に入れたような気持ちにしてくれるのも、凄く良い。  観客との「秘密の共有」を丁寧に描いているという一点においても、本作は優れた映画だと思います。   そんな本作の難点としては……主人公の行動が「模範的な刑事」とは程遠く、観ている側としても「これは、倫理的にアレコレ言うような映画じゃない」と頭を切り替える必要があるとか、精々そのくらいかな?  あとは、主人公の動機となる「親友のマイキーを殺された仇討ち」に関しても、良く良く考えてみると「金(正確には無記名債券)を盗んだマイキーが悪いのでは?」って思えてきちゃうのは、引っ掛かる部分ですね。  もうちょっとマイキーを「不当に殺された被害者」として描き、自業自得な感じを抑えてくれていたら、もっと素直に主人公を応援出来たかも。   ちなみに、本作は元々シルヴェスター・スタローンが主演する予定だったとの事で、コメディ色を薄めた映画にしたいというスタローン側と制作側とで意見が分かれ、その結果「スタローンなりのビバリーヒルズ・コップ」として「コブラ」(1986年)が生まれたというのも、中々興味深い逸話ですね。  本作は後のエディ・マーフィ主演映画に比べると「親友を殺された仇討ちをするという、ハードボイルドな粗筋」「銃撃戦が意外とシリアスで恰好良い」という珍しい長所を備えているんですが、それって元々はスタローン主演作だったからでは? って思えちゃうんです。  あるいは「48時間」(1982年)の影響かとも考えられますが、そちらでも「仇討ちをする刑事」はニック・ノルティの役でしたからね。  やはり主演の交代劇により「本来エディ・マーフィには相応しくないような映画を、エディ・マーフィが自分色に染め上げている」という、独特の魅力が生まれる形になったんだと思います。   本作は映画史に残る傑作ですが、演者や監督の力だけでなく、そんな「素敵な偶然」も作用した結果、そうなったんじゃないかと思えば、浪漫を感じちゃいますね。  エディ・マーフィの代表作でありながら、エディ・マーフィらしからぬ魅力も味わえるという、何だか御得な一品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2022-05-28 17:51:41)(良:2票)
10.  ビバリーヒルズ・コップ2 《ネタバレ》 
 前作に比べると、よりエディ・マーフィらしい映画になってる気がしますね。  特に「ニトロを届けに来た」と受付の女性を騙し、目当ての情報を引き出す場面なんかは、それが顕著。  爆発シーンも派手になってるし、バズーカで車を撃ったりもするしで、笑いとアクション要素に関しては「1よりパワーアップした続編」だと、胸を張って言えると思います。   ただ、自分が1に感じた「意外とシリアスで、ハードボイルドな魅力」は薄れてしまったように思えて……そこが、ちょっと残念ですね。  前作のホテル以上に「宿泊先の確保の仕方」が傍迷惑であり、豪邸の持ち主である金持ち夫婦が可哀想に思えちゃうのも、スッキリしない感じ。  元々、主人公のアクセルって「模範的な刑事とは言えない、悪党に近い人物」ではあるんだけど、本作に関しては「やり過ぎ」だったんじゃないかと。   とはいえ、欠点らしい欠点なんてそのくらいだし、基本的には「楽しい映画」でしたね。  ブリジット・ニールセン演じるカーラは「理想的な悪役美女」って感じで、男心を擽る魅力がありましたし。  アクセルの同僚であるジェフリーが、上司のトッド警部に成り切って電話に出る場面なんかも、コント的な魅力があって好き。   そして何と言っても、1で絆を育んだ「ビバリーヒルズの警官」達との友情描写が、本当に良かったです。  1のラストで友達になった二人と、2では仲良しトリオとして一緒に行動してるってだけでも、嬉しくなっちゃうんですよね。  これはシリーズ物ならでは、続編映画ならではの魅力であり、映画一本だけでは決して生み出せない味わいがあると思います。  ローズウッドの部屋で会話する三人とか、アクセルの嘘に呆れて他二人が同時にサングラス掛ける場面とかも、凄く好き。   ある意味では、続編映画というよりも、同窓会映画って感じですね。  「1で生まれた友情を、再び確認する映画」「懐かしいアイツらと再会して、また楽しく盛り上がる映画」って考えても、本作は充分に成功してると思います。  (こいつら、仲良いなぁ……)って、主人公達を微笑ましく見守るような気持ちで、エンドロールまでの時間を楽しむ事が出来ました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-05-20 07:53:25)(良:1票)
11.  コブラ 《ネタバレ》 
 「ビバリーヒルズ・コップ」(元々はスタローン主演作の予定であり、没になった脚本が本作に流用された)  「ダーティハリー」(本作の元ネタの一つであり、出演者も何人か共通している)  「フェア・ゲーム」(本作と同じく「逃げるアヒル」を原作としている)  といった具合に、様々な映画と縁がある一作。   でも、映画本編を観た限りでは、あんまりそんな感じがしないというか……  良くも悪くも個性が光る映画になってましたね。  例えば「主人公のコブラはダーティハリーを意識したキャラなんだよ」と言われても「えっ、そうなの?」と驚いちゃうくらい、ちゃんと独立したキャラになってると思いますし。  当時はイケてたかも知れないフラッシュバック演出などが、今観ると古臭くてダサく思えちゃう辺りも、何かそれはそれで「独特の味わい」になってる。   あと、自分としてはコブラに対し(銃を仕舞う仕草とか、気取り過ぎだろう)と、最初は共感を抱けなかったはずなのに、観終わった頃には、すっかり彼を好きになってたんですよね。  硬派でハードボイルドな主人公かと思いきや「やたら健康に拘る」「マッチ棒を咥えてるのも、気障というよりは禁煙の為にやってるだけ」「本名はマリオンで、女みたいな名前だと気にしている」といった具合に、次々と新情報が判明し、意外と愛嬌がある奴なんだって分かる形になってる。  それでいて序盤に描かれた「気取り過ぎな恰好良さ」も失われていないし、この辺りのバランスは本当に良かったですね。  犯人に対し「お前には黙秘権がある」と言った後「だから、そのまま黙って死ね」とばかりにトドメを刺しちゃう場面なんかは、素直に恰好良いなって思えますし。  冷蔵庫からピザを取り出し、鋏で切って食べるシーンなんかも、真似したくなるような魅力がありました。   敵が狂信的なカルト団体であり、陰鬱な作風なのかと思わせておいて、主人公もヒロインも相棒も全員生き残るという、能天気なハッピーエンドだったっていう落差も、何かこの映画を象徴してる気がしますね。  派手なカーチェイス有り、ニトロで加速する車というギミック有り、美女とのロマンスも有りで、贅沢な作りになってるのも良い。   意地悪な目線で観れば「あれこれ色んな要素を詰め込み過ぎて、破綻してる映画」「スタローンの魅力に頼り切りで、作劇による面白さなんて皆無の映画」って酷評する事も出来そうだし、自分としても、決して「出来の良い映画」とは思えないんですが……   それでもやっぱり、こういう映画が好き。  そして何より、スタローンが好きなんだなって事を再確認した一本でした。
[DVD(吹替)] 6点(2022-05-05 22:08:02)(良:2票)
12.  卒業白書 《ネタバレ》 
 映画の冒頭にて、観客であるこちらが恥ずかしくなるようなピンク色の夢を見ている主人公。  もっと生真面目なタイプの青春映画かとばかり思っていたので、完全に意表を突かれましたね。  けれど、そんな風に戸惑っていたのも束の間。  すぐに感性のチャンネルを切り替える事が出来た為、充分に楽しむ事が出来ました。   作風としては、後の「アメリカン・パイ」や「ホーム・アローン」にも通じるものがあるんじゃないかな、と思います。  特に後者に関しては、それが顕著で(高校生版のホーム・アローンだな……)と、心の中で呟いてしまったくらい。   様々な媒体でパロられている、シャツに下着姿という格好で踊るトム・クルーズの姿。  元ネタの映画では、こういった意味合いのシーンだったのか、と感心させられたりもしましたね。  両親が旅行に出掛け、自分一人となった家の中で、ガンガンに音楽を流しながら踊り狂う主人公。  凄く気持ちが分かるというか、自分も思わず真似したくなるようなシーンでした。   他にも、童貞を捨てようと意を決してコール・ガールを自宅に呼んだら、現れたのがガタイの良いオカマのお姉さんだったという件。  そして、父親の愛車を湖の中に沈ませてしまう件など、視覚的にも印象深い場面が、沢山ありましたね。  滅茶苦茶になっていた家の中を、両親が帰ってくる寸前にギリギリで元に戻せた(実は戻せていない)辺りなんかも、凄く良かったと思います。   そういった「両親の不在中に好き勝手やる話」としては、とても好みだった本作。  けれど、ヒロインとの恋愛模様に関しては今一つピンと来なくて、残念でした。  謎の多い女性で、それが独特の色気にも繋がっていたのですが、どうも好奇心よりも警戒心の方を刺激されてしまったみたい。  結果オーライで大学面接まで成功に終わるというのも、ちょっと「上手く行き過ぎ」感がありました。  個人的好みとしては、両親の帰宅と同時に完結でも良かったかも。   上述のように、細かい不満を感じた瞬間もあるのですが、総じて楽しめる時間の方が長かったように思えます。  結局、主人公は儲けたお金を全て失ってしまったけれど、精神的な成長と、素敵な彼女を得られたのだ……というハッピーエンドなのも、決して嫌いじゃないですね。   やがて歳月を経て振り返った際には、そういった諸々もひっくるめて「好きな映画」と言えるようになっていそうな、そんな一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2022-03-24 00:12:21)(良:1票)
13.  地獄のデビル・トラック 《ネタバレ》 
 監督と脚本をスティーブン・キングが担当したという、それだけで映画史に残ってしまいそうな一本。   こういう場合、いっそ「破滅的に酷い出来栄え」であれば、カルト映画として人気になってたかも知れませんが……  本作は「一応そこそこ楽しめる」ってタイプの品なので、評価に困っちゃいますね。   勿論、粗は多いです。  例えば冒頭にて、機械が勝手に動き出す場面も、映像だけ見れば不気味なのにBGMがロックなAC/DCなので、何かチグハグなんですよね。  キング当人がAC/DCのファンであるがゆえの選曲なのでしょうが、ミスマッチとしか思えなかったです。  男がトラックに轢かれる場面でも「止まってる車に男の方からぶつかってる」としか思えない撮り方してるし、演出の拙さが目立ちます。   脚本に関しても「新婚夫婦の車だけは暴走しておらず、人間が自由に動かせる」って事が伏線だろうと思ってたのに、全然そんな事は無くて、理由が説明されないまま終わっちゃうんだから、もう吃驚です。  主人公達が籠城するガソリンスタンドの地下には、武器がたんまり秘蔵されており、戦力的に主人公側の方が有利っていうのも、ちょっと歪なバランス。  わりと序盤の段階から「バズーカあるから勝てるじゃん」って思えちゃうし、途中で出てきたマシンガン搭載の車に対しても、わざわざ主人公が近付いて手榴弾で爆破なんかしなくても「バズーカ使えばいいじゃん」ってなってしまう。  そんな感想が間違ってなかった証のように、最後は普通にバズーカ撃って、敵の親玉トラックを倒して終わりだし……  観客に違和感を抱かせない為には「切り札であるバズーカを中々使えない理由」を、ちゃんと描いておくべきだったと思います。  本業は小説家のキングだから、演出は拙くとも脚本には光るものがあるだろうと期待していたのに、それさえも裏切られた気分。   そんなこんなで、欠点を論ったらキリが無いんだけど、ちゃんと良い所もあるというか……  「長所」っていうよりは「愛嬌」を備えてるタイプの映画だったので、不思議と憎めないんですよね。   まず、予算は問題無く確保出来たようで、トラックが破壊される場面はキチンと描いているっていうのが嬉しい。  「玩具の車を口に突っ込み死んでる犬」とか、同じキング作品の「クリスティーン」や「クジョー」を知ってるとニヤリと出来ちゃう場面があるのも、程好いファンサービスって感じがしましたね。  他にも「芝刈り機は襲ってくる」し「下水パイプの中を移動する」しで、さながらキング作品のオールスター状態。  それらの「元ネタ当てクイズ」をするだけでも楽しめちゃうし、ちゃんと「スティーブン・キングが脚本を書き、監督を務めた事」に、意義のある作品だったと思います。   キング作品ではお約束の「可愛らしい子供」も登場しているし、キング当人も冒頭にカメオ出演しているしで、嫌々撮った訳ではなく、きっと楽しんで撮ったんだろうなって思えるような、微笑ましさがあるんですよね。  最後の気象衛星オチも、非常に馬鹿々々しくて「何じゃそりゃ!」と、呆れながら、笑いながらツッコむ事が出来ました。   面白かった……とは言い難いんだけど、それなりの満足感は得られたし、また何時か気が向いたら、観返したくなっちゃいそうですね。  話のタネになるという意味でも、観ておいて損は無い映画だと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2022-02-02 11:50:11)(良:1票)
14.  48時間 《ネタバレ》 
 此度再見してみて、エディ・マーフィ演じるレジーの登場が結構遅かった事に驚きました。  全編出ずっぱりのような印象があったのですが、それだけ彼のキャラクター性が際立っていたという事なのでしょうね。  彼のデビュー作であると同時に、出世作となったのも納得。   相棒であり、本作のメイン主人公となるニック・ノルティ演じるジャックも、これまた良い味を出しているんですよね。  陽気な黒人に対する無骨な白人という組み合わせであり、如何にもな強面なのですが、恋人である女性には押しが弱く、情けない姿を見せたりするのが憎めない。  バディムービーのお約束として、本作にも「いがみ合っていた二人が仲良くなった事を示す場面」が存在する訳ですが、その際のカタルシスも大きかったです。  「あの」気難しくて頑固な警官のジャックがレジーを庇ってくれた、という形だからこそ心に響いてくる訳であり、その辺りは上手い。   一方(そこまで心を開くほどの交流があったかな?)と思わせる面もあったりして、そこは残念。  当時は未だ「白人と黒人によるバディムービー」というジャンルが確立されていなかったがゆえの未成熟さというか、ぎこちなさのような物があるんですよね。  敵方にもインディアンというマイノリティを配し、主人公コンビと対にしているのですが、その事を劇中で活かせていない感じなのも、ちょっと勿体無い。   最後に大金をせしめるエンドに関しては、ジャックも模範的な警官ではなく、清濁併せ呑むタイプとして描かれていただけに「まぁ、良いか」と納得出来る範囲内。  レジーが終始「ずっと刑務所にいたんだから、女を抱きたい」と訴えるも、お預けを食らい続け、最後の最後で本懐を遂げられた形なのも、後味の良さに繋がっていたと思います。   期待通りの楽しさを提供してくれた、良い映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2021-12-03 20:14:13)(良:1票)
15.  釣りバカ日誌 《ネタバレ》 
 映画「釣りバカ日誌」が一作限りで終わらずシリーズ化した理由としては「ここで終わられたんじゃあ、どうにもスッキリしないから」という点も大きいんじゃないでしょうか。  勿論、映画単体としても面白いのは確かなんですが、本作では「スーさんが社長だと知った後のハマちゃんの葛藤」「二人の和解」の比重が薄めで、ちょっと勿体無く感じられるんです。  他の同僚は見送りに来てくれたのに、四国に帰る新幹線の中で電話して終わり(しかもスーさんと話すのはハマちゃんではなく、妻であるみち子さんのみ)というのは、如何にも寂しい。  作り手側も続編を意識して、あえてこういう終わり方にしたのか、それとも単なる尺不足だったのか、気になるところです。   「合体!」「熱烈合体!!」の表現は、最初(何それ?)と呆れていたはずなのに、二回も三回も繰り返されると笑っちゃいましたし、下ネタなのに何処かほのぼのするものもあって、良かったと思います。  「釣りは道具じゃないからね」と言ってたくせに、いざスーさんが先に釣り上げたら「道具が良いからね」と言い訳するハマちゃんという、伏線を活かした笑いについても、上手いなぁと感心。   スーさんの見送りを兼ねて一緒に夜の町を歩きながら、みち子さんがハマちゃんとの馴れ初めについて話す場面なんかも、優しい雰囲気があって好きですね。  「僕は貴女を幸せにする自信はありません」「しかし僕が幸せになる自信は絶対ある」というプロポーズの言葉って、凄く素敵だと思います。  この後、ハマちゃんもみち子さんもスーさんも「幸せ」な人生を送る事が続編の数々にて描かれている訳であり、そう考えると、とても温かい気持ちに浸れました。
[DVD(邦画)] 6点(2020-05-16 07:25:21)
16.  ジョーズ'87/復讐篇 《ネタバレ》 
 初代「JAWS/ジョーズ」では夫であるマーティン・ブロディにスポットが当たり、二作目では次男であるショーンに、三作目では長男であるマイクに、そして四作目では妻であるエレンにスポットが当たっている。  即ち、このシリーズは巨大鮫とブロディ一家との戦いの歴史を描いた一大抒情詩なのである……と言いたいところなのですが、ちょっと無理がある気がしますね(主に次男)  いずれにしても、過去作においてさほど存在感を発揮していなかったエレンなので、四作目にて主人公に抜擢されても「消去法で、仕方なく」という理由にしか思えないのが、寂しいところです。   前作で水中遊園地を舞台にし、娯楽色を強めていたのと比べると、海を舞台にしたシリアスな作りとし、原点回帰を目指したのが窺える本作品。  でも、それにしてはジョン・ウィリアムズの音楽を使用していなかったりして、何だか片手落ちな印象が強いですね。  エレンの恋愛要素にスポットを当てたのは原作小説からの引用とも考えられるのですが、それならそれで、原作通りのリアルなサメの描き方も再現して欲しかったなぁ……なんて、つい思っちゃいます。   サメの造形も、シリーズ中で一番酷いんじゃなかろうかと思える出来栄えだし、おまけに模型をプカプカと水に浮かべているだけなシーンまである始末。  終盤にエレンが襲われる件でも、口の開け方が同じままガーっと斜めに突き出しているだけって感じの描き方であり、これにはガッカリしちゃいました。  何というか「チャチな作りを誤魔化そう」とか「なるべく本物っぽく見えるようにしよう」とか、そういう意思が伝わってこないんですよね。  たとえ特撮技術のレベルが低くとも、作り手の熱意が感じられたら「愛嬌」として笑って楽しむ事も出来るんですが、本作に関しては「手抜き」「やる気が無い」という印象だけが残りました。   それと、本作はシリーズ中で最も恋愛色が濃い作品なのですが、それが未亡人エレンの老いらくの恋というのも(何だかなぁ……)とゲンナリしちゃいましたね。  中年や老人をテーマとした恋愛映画も悪くないとは思うんですが、本作に限っては「初代の主人公であるブロディ署長が、心臓麻痺で死んだ事にされている」「未亡人のエレンがポッと出の中年男にアプローチをかけられ、嬉しそうにしている」って図式の為、どうしても二人の恋を応援する気持ちになれなかったです。   また、本作には二通りのエンディングが存在しており、DVDに収録されていた使い回し爆発エンドに比べると、劇場公開版(自分が観たのは、そちらを地上波で放送したバージョン)は多少は現実的な倒し方になっているのですが、いずれにしてもカタルシスを得られるとは言い難い内容。  劇場公開版に点数を付けるとしても、DVD版と同じ点数になってしまいそうです。   長所としては、舞台となるバハマの海が綺麗であった事。  そして、サメは歴代でも一番大きいと思われるサイズの為、迫力を感じるシーンも幾つかはあったと、その辺りが挙げられそうですね。   何にも増して、シリーズ最終作がハッピーエンドを迎えてくれた事に関しては、素直に喜びたいところです。
[DVD(字幕)] 3点(2020-05-12 15:01:50)(良:1票)
17.  ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎 《ネタバレ》 
 バイオリンを弾くのが下手だったり、ワトソンの「名前当て」も完璧には成功出来なかったりと、まだ未熟で人間臭さの強いホームズ像が如何にも「ヤング」という感じがして、好印象。   その一方で、ヒロインを巡る恋のライバルな男子生徒を嫌味に描いているけど、ホームズ自身も「嫌味な優等生」に思えてしまうキャラなので、これにはチグハグな印象も受けましたね。  既に恋人がいたり「授業中は気が散るから話しかけないでくれ」と言ったりと、取っ付き難いタイプの主人公なので、もう少し相棒のワトソンの比重も大きくして「親しみが持てる凡人」としてのワトソンの魅力も描いていたら、それと対になるホームズの魅力も、更に際立っていた気がします。  あくまで個人的な見解ですが、偉大なるポーの「オーギュスト・デュパン物」をそのまま剽窃したとしか思えない「シャーロック・ホームズ物」が何故魅力的なのかといえば、それはワトソンの存在が大きいからであると考える自分としては、ちょっと本作はホームズにばかり偏り過ぎに思えちゃいました。   また、本作は「スリーパーズ」や「レインマン」で有名なバリー・レヴィンソンが監督を務めているのですが、それ以上に脚本のクリス・コロンバスの個性が色濃く表れている感じでしたね。  後に「ハリー・ポッター」シリーズの脚本を担当する人だけあってか、それと共通した「少年少女達の学園物語」として仕上げられている。  特に、空飛ぶ自転車に乗って歓声を挙げるシーンなんかは、如何にも「青春物」「子供達が主役の話」って感じの魅力が伝わってきました。   退校処分になったホームズを見送るヒロインが窓に息を吹き掛け、指で「I LOVE YOU」と書く場面なんかも、凄く良かったですね。  しかも、相手が読めるようにと普段とは反対に書く為、ちょっと考えて間を置いたりするのが、また可愛いんです。  そんな印象的なやり取りが、ラストシーンにて「ここには思い出が多過ぎる」と、ヒロインが指文字を描いた窓を見つめるホームズの姿に重なる脚本となっており、切ない余韻を与えてくれました。  「レストレード『警部補』が登場し、最後に昇進する」 「恩師であり敵となる相手が『モリアーティ』を名乗る」  など、元ネタを知っていればニヤリと出来る描写が多いのも特徴ですね。  自分としては、ヒロインのエリザベスが後のアイリーンなのでは? と思っていただけに、その予想が外れたというか「最後に死ぬからアイリーンじゃなかったのか!」と唸らされた形。  パイプを買ったワトソンに対し「そんなの馬鹿に見えるだけさ」と皮肉るも、別れ際にパイプをプレゼントされたら、喜んで受け取るホームズの姿も良かったです。   その他、印象深いのは、吹き矢を操る相手と格闘になった際に「相手が吹くよりも先に射出口から吹いて、毒矢を逆に呑み込ませる」方法で勝つ場面。  そして、ワトソンの好物である「クリームパイ」がチョココロネみたいな形をしており、かなり美味しそうであった場面なんかが挙げられそう。   観賞中は、退屈になってしまう事も多く 「幻覚シーンが何度もあって、流石にしつこくて飽きる」 「ヒロインが死んで犯人も逃げ延びてとバッドエンドに近いので、後味が悪い」  などの不満点も数多くあるのですが、こうして感想を書いてみれば「良かった部分」ばかりが思い浮かんでくるんだから、何とも不思議ですね。  観客にとって「良い思い出」として記憶に残り易いタイプの、非常にお得な映画だったと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2019-12-25 06:23:17)(良:1票)
18.  十階のモスキート 《ネタバレ》 
 タイトルは「本来いるべきではないはずの場所に迷い込んでしまった存在」という意味でしょうか。   お気に入りの品である「刑務所の中」を監督した人のデビュー作と知った上で観賞したのですが、崔洋一監督の力量を再確認すると同時に、主演の内田裕也の存在感にも圧倒される事となりましたね。  どうやら脚本も兼任されているようで、この作品に掛ける意気込みが伝わってきました。   モデルとなった事件の犯人は、本作の公開後に更なる連続殺人を巻き起こしているそうですが、この映画の主人公からも「更なる悲劇」が起きるのを予感させる結末となっている辺り、空恐ろしいものがあります。  離婚、養育費、娘の非行、昇進試験、酒、賭博。  様々な要因が重なり、どんどん借金苦に陥っていく様は、観ていて気分が落ち込んじゃいましたね。  「せめて、ギャンブルは止めようよ」「お酒も控えようよ」と痛烈に思わされるのだから、もしかしたら非常に道徳的な映画なのかも知れません。   作中で描かれるパソコンの存在は「主人公にとっての唯一の健全な娯楽」「現実逃避」「最後の理性の砦」「他者を物扱いする歪んだ性格の象徴」などと、様々に解釈する事が出来て、面白かったです。  その一方で、不思議でならないのが、異様な濡れ場の多さ。  観ている最中は「これが原因で破滅が加速していくのだろう」と思っていたのですが、全然そんな事は無かったのですよね。  万引きした女性を半ば脅迫するように犯したり、同僚の婦警を襲ったりしているのに、それで訴えられるでもなく、破滅の直接の原因になったりする訳でもないので、宙ぶらりんな印象を受けてしまいました。  あるいは、元妻にも襲い掛かったのに、他の女性とは違って明確に拒否された事が、犯行に至る最後の引鉄となってしまったのでしょうか。  どうもハッキリとした答えを見出せないし、単なる観客へのサービスに過ぎないのかな、とも思えてきますね。   基本的には重苦しい作風の品なのですが、随所にユーモアも配されたバランスとなっているのは、嬉しい限り。  横山やすしを競艇場の場面で登場させたり、ビートたけしの予想屋を客と喧嘩させたりする辺りなんかは、緊張が緩んでホッとさせられるものがありました。  他にも、主人公の部屋がお酒の空き瓶で埋まっていた場面なんかも、ゾッとすると同時に、不思議とクスッとさせられるものがあったりして、狂気と笑いが紙一重である事を感じさせてくれますね。   カメラのレンズの端に、小さな虫が止まっているように見える場面が幾つか存在しているのですが、それが意図的な演出なのかどうかも気になりました。
[DVD(邦画)] 6点(2019-11-24 15:32:10)(良:1票)
19.  何かが道をやってくる
 物語の前半部にて語られる  「何時か僕が年上になってやる」 「彼女は町一番の美人だった」 「貴方が必要なものは、特製のヘアカラーです」  等の何気ない台詞の数々が、後半にて伏線となっているのが、実に見事。   レイ・ブラッドベリの著作といえば「霧笛」を目当てに購入した「ウは宇宙船のウ」くらしか読んでいなかったりするのですが……  本作のストーリーラインも、非常に秀逸だったと思いますね。  主人公の子供が遊園地で不気味な体験をして、自宅まで追い詰められる事になるという点では「ヘンダーランドの大冒険」の元ネタなのかも?  「後の展開の為に必要な部分だったとはいえ、前半を観ている間は、やや退屈」 「大人になった主人公の回想形式である為、最後は無事に生き延びると分かってしまう」  等の欠点もあるかも知れませんが、それらを補って余りある魅力を感じられました。  特に後者に関しては、さながら途中から主人公が交代したかのように「主人公の父親」の方にスポットが当てられており (もしかして、主人公の身代わりとなって親父さんが死んでしまうのでは?)  とドキドキさせられるという、巧みな仕掛けが施されている形。   逆回転する木馬に乗る事によって、大人が子供に若返るという、とても幻想的でグロテスクな場面も良いですね。  程度の差こそあれど、大人なら誰しもが抱いていそうな「子供に戻りたい」という願望。  そんな願望を刺激して、心の隙間に潜り込んでいく悪魔の姿が、実に恐ろしく描かれている映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2019-08-09 14:32:58)(良:1票)
20.  ディーバ 《ネタバレ》 
 1981年という制作年度を考慮すれば、非常に御洒落でスタイリッシュな映画なのだと思います。   主人公が暮らしている部屋なんて、如何にもな「秘密基地」テイストが感じられて、憧れるものがありましたね。  コーラの缶にガソリン臭いチューブを差し、それをストロー代わりにして飲んでみる少女のシーンなんかも、妙にお気に入り。   青と赤が巧みに配された画面。  そして、聴くだけで鳥肌が浮かぶような歌声と、視覚的、聴覚的にもセンスの良さを感じさせる本作。   ただ、ちょっと主人公が情けなさ過ぎるというか、変質的なストーカーにしか思えなかったりして、今一つ感情移入出来ないものがありました。  映画序盤における彼の行動はといえば、恋い焦がれる歌姫のコンサートを無断録音したり、衣装を盗んだり、その衣装を売春婦に着てもらってから一夜を共にしたりと、どう考えても単なる変態さんなのです。  にも拘わらず、演じている役者さんが爽やかで繊細な二枚目過ぎるせいで、やたらと嘘くさい。  主演俳優のルックスが優れているに越した事はありませんが、それにしても、本作のような主人公の場合、もう少し粘着質な感じがあった方が、キャラクターにリアリティが生まれたのではないか、と思います。   また、主人公とヒロインの二人が結ばれるまでの過程も、あまり説得力が感じられなかったりして、残念。  海賊版の存在を「泥棒、強姦です」「軽蔑します」と言い放つような歌姫のヒロインと、実は彼女の声を無断録音してしまっている主人公が結ばれるという「意外な結末」ゆえに、観ていて(えっ? 何でくっ付くの?)と思わされてしまった気がしますね。  劇中にて、主人公が目覚ましい活躍をして自信を手に入れるとか、死線を越えて生まれ変わるといった事もなく、映画序盤から特に性格なども変わっていないのだから、序盤の彼の罪の「帳消し」感が生まれてこないのです。  その結果、ヒロイン側の一方的な優しさによって「主人公の過ちを許してくれる」「求愛を受け入れてくれる」という形になっており、ちょっとばかし男性にとって都合の良過ぎる女性像に思えました。  これならば、最初から主人公をもっと誠実で善良な男として描くなり、ヒロインを海賊版には拘らない人物として描くなりしておいた方が、二人が結ばれる結末に対しても、違和感が生まれずに済んだかと。  「本来結ばれるはずのない二人が結ばれるストーリー」という難しい題材にして盛り上げた以上は、ハッピーエンドにする為の難易度も上昇してしまうのだな、と思わされました。   それでも、ラストシーンにて、生まれて初めて客観的に「自分の歌声」を聴く事になるヒロインの姿には、胸を打たれるものがありましたね。  彼女が彼の罪を許し、愛を受け入れた理由は「自分の歌声の素晴らしさを教えてくれたから」なのか、それとも別の理由か……などと考えるだけでも、色々と楽しい映画でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2019-02-08 02:33:46)
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