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21.  バクマン。 《ネタバレ》 漫画を題材として映画ならではの特性を活かすとするならば、要となるのは必然的に絵を描く行為の具体性、身体性という事になるだろう。 例えば、絵が姿を現していくキャンバスをそのまま捉えていくクルーゾーの『ピカソ』。 例えば文字を書く手と鉛筆の動きをアクションとして、表情として捉える柳町光男の『十九歳の地図』。 本作では、まず野蛮なまでに荒々しいペンの音が描き手の生々しい息吹を伝えてくる。 それだけで充分に格闘の具体的描写となっているのだから、ライバルとの格闘イメージシーンなどは逆に意味として概括してしまっているようで アクションが際立たないという転倒が起こっている。 入稿締切までのタイムリミットにも時間の具体的な提示が欲しい。 何しろ、逆光ショットの多用によってとにかく画面が暗いという印象がまず来るのだが、 学校の階段上、通路、病院のベッド際、暗い室内から見るテレビ画面内の上段と、 ヒロインの小松菜奈が特権的に光芒を放つという映画的な論拠もあるだろう。 『ゲゲゲの女房』に続いて、宮藤官九郎の漫画家像がいい。[映画館(邦画)] 6点(2015-10-10 03:43:49)《改行有》

22.  バケモノの子 《ネタバレ》 師匠と弟子二人並んでの、一風変わった型稽古の情景モンタージュが前半の山だ。 少年がひたすら模倣することによって次第に上達していく様が、 ロングショット主体でレイアウトされた動きの変化の中から表れてくる。 そこには二者の動きが次第にシンクロしていくアクション映画、舞踊映画の快感があり、 アニメーションによる誇張(スピード・タイミング)の醍醐味がある。 キャラクターにはあえて影をつけない平板な絵柄を採用し、その分 部屋の内外を駆け回っての喧嘩や、卵かけご飯の食事など アニメーションならではの動きの楽しさを充実させ、 一方で人物の表情のアップでは瞳の潤いを細やかに揺らす繊細な演出を施し、息吹を与える。 モブシーンの動画を含め、特に前半はよく頑張っている。 今回のクレジットでは細田単独の脚本だが、台詞が削り切れていないのは児童向けを意識したためか。 ラストでの回想シーンも少し親切すぎる。 トレードマーク的な青空と白い入道雲は決めのカットにはしっかりと登場していてそれなりに印象的だが。[映画館(邦画)] 7点(2015-07-18 16:18:26)《改行有》

23.  博士と彼女のセオリー 《ネタバレ》 BBC版『ホーキング』が学究的な側面に焦点を当てているのに対し、 こちらはその『ホーキング』がラストで字幕として簡潔にふれた 恋愛部分が主となっており、ジェーン側の視点が強調される。 スティーブン博士の学究のモティーフでもある逆回転も レコード盤、車輪、コーヒー、手を繋いでのダンスと様々な媒体で登場させながら ラストに集約していくわけだが 作り手は実に実に善良で、存命中の各登場人物に対するアプローチは当然ながら ひたすら八方美人である。 この気配り具合ならばモデルも当然その無難な内容に満足するだろうが、それは必ずしも 映画の良さを保障はしない。[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2015-05-18 23:58:44)《改行有》

24.  花とアリス殺人事件 階段を駆け下りる構図までそっくりな「ハッピー・バースデー・トゥーユー」の 合唱が出てきた時点で、次は公園のブランコでも登場させるのだろうと簡単に 予想がついてしまう。 そういう露骨なのは、あまり延々と引っ張らないで欲しい。 ハレーション効果を採り入れた一枚絵の背景美術も、新海誠ら以降の作品としては 物足らない。人物に焦点を当てたアニメーションならばこのあり方が本来的なのかも 知れないが、本作の作風ならば背後の情景にももっと何らかの動きが欲しい。 光の揺れとか、草木の揺れとか、雑踏とか。 実写トレースによって日常的な人物の動きは確かに生々しさを獲得しているものの、 反面で例えば、リレー競争での三人抜きなどにあるべきアクション性も希薄に なってしまった感がある。 欲張りついでに云えば、ラストの走りももっと息せき切らせなければ。 [映画館(邦画)] 6点(2015-03-17 14:02:22)《改行有》

25.  バンクーバーの朝日 《ネタバレ》 始めの製材所のシーンから、木材を運び、それを積み重ねる俳優らの労働を 長目のショットで丹念に描写している。 その中で次第にクロースアップされていくのは、彼らが見つめる手だ。 彼らの過酷な境遇は何よりも、じっと己の手を見るショットによって語られる。 それはライバルチームの投手らについても平等である。 モブシーンでも 冒頭の移民たちの顔、試合のギャラリー一人一人の顔をパンフォーカスで 可能な限り映し出そうとするあたり、作り手のFAIRNESSの発露といえる。 高畑充希のスピーチ前半を収めた引きのショットが引き立てる彼女の健気。 夜の日本人街に静かに響く波音のノスタルジア。 それらを邪魔しない、控えめで節度ある音楽用法が好ましい。 艶のあるナイトシーンの多さが、球技シーンの晴れ舞台を引き立てる。 それだけに競技シーンの運動感の欠如はやはり勿体無い。 敏捷性と連携プレーを活かした戦術なのだから相応のカメラワークで 盛り上げて欲しい。 妻夫木聡の初めての出塁・得点シーンにスローでは落胆である。 [映画館(邦画)] 7点(2014-12-28 20:21:58)《改行有》

26.  花と龍(1973) 船着場のシーンなどでは海面すれすれからのショットも数多く、相当撮影には 苦労したのではないだろうか。低位置撮影の徹底ぶりには頭が下がる。 映画の中盤、荷役船から陸へと着物の裾を翻しながら軽やかに飛ぶ女の 足元がその水面すれすれからのローアングル&スローモーションで鮮やかに捉えられる。 二役:倍賞美津子の鮮烈な再登場シーンだ。 そして彼女と香山美子がそれぞれ仁義を切る見事なシーンへと続いてゆく。 年月の隔たりが、面影そのままの倍賞と石坂浩二の二役を配することによって よりエモーショナルに印象付けられるのだ。 または渡哲也のメイクの変貌以上に、妻として母親として香山が次第に身に纏っていくタフネス・逞しさとして表現されるのも感動的である。 時に泣き、動揺しつつも、正念場では男たちを諌め、馬を駆り、 ラストでは悠然と煙管を燻らす。 それら彼女の凛々しく健気な表情と佇まいが要所要所で輝いている。 [DVD(邦画)] 8点(2014-11-09 22:21:16)《改行有》

27.  ハンナ・アーレント 《ネタバレ》 ハンナ・アーレント(バルバラ・スコヴァ)は、モニターの中の アドルフ・アイヒマンをひたすら凝視する。 ソファに身体を横たえながら煙草をふかしつつ、思索にふける。 学生への講義の際も、煙草は手放せない。 そうした身振りと対話のうちに、人物が象を成していく。 夜の書斎の美術や照明も、思考と執筆について映画表現する 難題に対して、よく補助している。 ラストが独演会での長広舌で、さらに賞賛の拍手というのでは少々 安直だが、中盤とラストで彼女の講義に聞き入る学生たちの 真剣な表情と眼差しがいい。 前半でアイヒマンの裁判を傍聴する彼女の批評的な眼差しからの継承の シーンとなっている。 冒頭とラストの夜景も印象的だ。 [DVD(字幕)] 6点(2014-09-16 15:42:30)《改行有》

28.  ばしゃ馬さんとビッグマウス 書き仕事が中心となるシナリオライターのドラマを如何にアクティブに描出するか。 映画としては困難な題材だろうが、『風立ちぬ』の図面書きのようによく工夫している。 最後の挑戦となる執筆を前に、髪を束ねる麻生久美子の凛とした横顔。 安田章大と麻生のリズミカルなカットバックと、キーボードを打つ手のアクションが、 手持ちカメラの躍動と共に画面を弾ませる。 一方で、要所要所では丹念な長廻しによって俳優の心情の静かな昂ぶりを収めきる。 友人の結婚式の帰り、安田に携帯電話をかけるシーン。 岡田義徳の部屋で泣きだすシーン。それぞれに、麻生のナチュラルな芝居が活きている。 脚本あっての映画だが、俳優の活かし方が良いのだろう。 主演らの芝居の背後にさりげなく映っている助演たちもまた彼らの世界を生きている、 という細やかさがいい。 双子の姉妹とか、本筋とは無関係ながらそのキャラクターたちから 映画が豊かに肉付けされていく感覚がある。 出番としては少ない山田真歩も、彼女なりのドラマを持った役柄となっており、 それが作劇にも活かされている。 [映画館(邦画)] 7点(2013-11-10 21:55:35)《改行有》

29.  パシフィック・リム 人間の動きをトレースするロボット。 その同調のモーションをどう視覚的な快楽として演出するか。 実写作品の手本なら『リアル・スティール』があるし、 操縦者二者がシンクロするカタルシスを如何に映画的に描写するかの手本なら 庵野秀明がコンテを担当したアニメ作品『エヴァンゲリオン』第9話がある。 いずれも、画面分割なりデフォルメなり高速度撮影なりの工夫を動員して 運動の同調が具体的な動画として描写として落とし込まれているからこそ、 あるいは見せたいアクション・見せたいショットからの逆算で 物語が設定されているからこそ、映画となっている。 この作品でのシンクロの設定は単に設定にすぎず、 動画(モーションピクチャー)として昇華されない。 二者が持続的な同一フレームの中で同じ動作をする。 それだけのことすらまるで出来ていないから一体感も連帯感も描写にならない。 単に見づらいだけのアクションシーンだ。 だから、中盤での伏線を残したままの凱旋シーン時点で、 まだ続くのかとうんざりする。人型ロボットである必然性皆無の海底シーン以降は ひたすら苦痛でしかない。 これでハリーハウゼンへの献辞とか、おこがましい。[映画館(字幕なし「原語」)] 3点(2013-10-17 22:31:30)《改行有》

30.  箱入り息子の恋 夏帆の横顔から、ピアノを弾く彼女の指の動きへ、 彼女自身の演奏をしっかりと捉える緩やかなカメラの動き。 二人の主観に可能な限り近づけんとするかのように、 お互いの肩越しの接写で切返される、二人の出会いのショット。 小高い丘の上でぎこちないキスを交わす夏帆と星野源の清々しさを 演出する、彼らを撫でるそよ風。 雨に濡れること。並んで牛丼を食べること。互いの生身の身体に触れること。 そうした接触・感触を意識した部分部分の積み重ねが丁寧でいい。 それだけに、二階へよじ登る星野と彼の手を握って引き上げる夏帆の 協働のシーンが手抜きにみえてしまい残念だ。 2人が渾身の力でベランダを乗り越える、 最も肝心な触れ合いの部分が省略されてしまっている。 誰がどういう動作をして、どうなったという流れはとりあえず解る。 が、心を動かす映画のアクションにはなっていない。 ベランダからの落下のくだりも同様である。そこが惜しい。 [映画館(邦画)] 7点(2013-06-25 23:10:30)《改行有》

31.  バレット(2012) 運転席と助手席での対話が多く、その深度のない構図の反復も単調。 ならば、流れる背景だとか車内に入射する街燈の光などで画面に変化をつけて欲しい。 クライマックスの発電所廃屋も、三者それぞれの位置関係の提示が不出来。 音の反響で繋ぐなり、縦構図を利用するなり、現場機具をもっと活用するなり、 もう少し空間を活かして欲しい。 湯気に煙るプールでの乱闘も、『イースタン・プロミス』の後ではいささか物足りない。 が、数々のアクションをこなしてきたシルヴェスター・スタローンの 武骨で年季の入った面構えと、彼の発する低音の響きは非常に渋く印象深い。 『スペシャリスト』以上に、彼の声の魅力がよく引き出されている。 [映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2013-06-09 23:44:06)《改行有》

32.  ハンガー・ゲーム 表情のアップを主体とする手持ちカメラは、 ヒロインの主観に寄り添うという趣旨なのだろう。 舞台上のインタビューのシーン、弓を引くシーンの接写では それなりに効果を見せるのだが、全般的に1ショットが極端に短く、 寄りすぎ且つ不安定で、とにかく見苦しい。 折角のジェニファー・ローレンスの魅力を削いでしまっている。 撮影監督トム・スターンであるにもかかわらず、 マスターショットの不足で場の状況の説明すら覚束ない始末である。 人工の猛獣の襲撃や、格闘場面などでは、カメラの振り回しすぎで 肝心の俳優のアクションも判然としない。 本来なら、森の中を人物が疾走するショットなどは アクション映画の格好の素材のはずなのだが。 語りも冗漫すぎる。この程度の内容で、143分は無い。 [映画館(字幕)] 3点(2012-10-19 06:19:06)《改行有》

33.  ハンナ シアーシャ・ローナンと、彼女が道中で知り合う少女がテントの中で横になりながら語り合うシーンは、二人が向き合っているはずでありながらカメラに対して二人が同一方向に身体を傾けているという、一般的にはあり得ない切り返しで撮られている。 同じく、走るキャンピングカー内でオリヴィア・ウィリアムズと対話する際もそれぞれ左右の窓際席の切り返しとなるが、 何故かどちらの窓外にも太陽光が輝いているという具合だ。 共に光の加減が見事な画面であり、自己との対話といったニュアンスを仄めかしたのか、ともあれ、整合性を無視した繋ぎをあえて選択している事は間違いない。 前半のICA施設のダクト、中盤のコンテナ置き場、後半の遊園地内といった舞台設定や、随所に現れる円形や回転のモチーフも含めて、映画に夢幻的な迷路感覚を呼び込むよう施された演出の一環だろうか。 縦横無尽の移動を絡めたバスターミナルから地下通路までの超ロングテイクや、太陽光の人物への当て方・屋内人工照明の印象的な用法といったジョー・ライト印の技巧も、その意味では効果を挙げている。 シア―シャ・ローナンの俊敏な疾走と、徒手格闘。そして、ケイト・ブランシェットの凄みは流石だ。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-26 23:57:54)《改行有》

34.  HAZAN 琥珀色の光の中に浮かび上がる、窓辺に置かれた白い陶器。それを一心に見つめる少年の表情。そして、その全身像のシルエット。 映画の中で、波山が陶芸家に転身する動機らしきものを直接的に表すのはこの短い三つのショットのみである。 映画は説明に多弁を弄することなく、窯やランプの炎とオーヴァー・ラップする榎木孝明の顔や、長女(大平奈津美)がホタルの光や薪や星を一心に見つめる姿を通して波山の真情・感受性をあくまで寡黙に、間接的に、映画的に語りきる。 二人のロクロ師(柳ユーレイ、康すおん)が波山に心酔し協力することになる経緯も、一切の説明を省き、行動そのもので示されるのも簡潔にして雄弁だ。 そのアプローチにこそ、彼の陶芸の作風と矜持に対する作り手の映画的リスペクトが表れている。 明治期のランプや、窓からの外光など、単一の合理的光源を活かした金沢正夫の照明・芹沢明子の撮影もその任の多くを担う。 住職から返された陶器と、榎木を窓辺におさめたラストショット。 木々の揺れと慎ましい自然光の美しさに、妻と子供たちの楽しげな童謡と笑い声がオフで入ってくる。 端正・素朴でありながら、豊かな情感に満ちた素晴らしいラストだ。 [DVD(邦画)] 9点(2012-05-17 18:48:51)《改行有》

35.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 日本版『バトルシップ(ヤマト)』のビジュアルエフェクト担当は、この映画を見習うとよろしい。 メカニックのスケール感・ケレン味の演出とはCG予算の多寡ではなく、キャメラポジションであり、アングルであり、艦体を引き立てる対照物(波、飛沫、敵艦、アンカー)の活用であり、テンポ(ツメとタメ)であると判るだろう。 階級・国籍を超えて砲弾を抱え上げ、運ぶ男達の協働の姿。若手に装填を指南するベテラン。艦首で大きく砕ける波濤を艦橋に登ったテイラー・キッチュが望む俯瞰ショット。 そういう具体的アクションの積み重ねが、深いパースペクティブを活かした構図やハードロックの劇伴と共にミズーリ出撃やT字戦法の圧倒的エモーションを形づくっている。 山崎版『ヤマト』に必要だったのは、そうした人間が操る艦としての描写の豊かさだ。 『機動警察パトレイバー2』や『ガメラ3』など日本製戦争映画(共に伊藤和典脚本)の「ディスプレイ上の戦争」の形式を必然性のある形でボードゲームに見事にアレンジしているこうしたアメリカ映画こそ、したたかである。(球体の殺戮兵器は『機動戦士ガンダムF91』のそれを思わせる。) なによりも、巷のありきたりな粗探しを愚かしく思わせてしまう潔さがいい。 荒唐無稽だからこそ、いかにも大作絡みの政治的ゴマスリに乗せられる心配もない。 (云うまでもないが、作り手の「ご都合」で企画され、書かれ、演じられ、撮られ、編集され、一定時間内に再現された虚構であるあらゆる物語映画は「ご都合主義」である。ご都合主義こそ映画だ。ゆえに『バトルシップ』はより映画的である。) [映画館(字幕)] 8点(2012-04-19 23:42:13)《改行有》

36.  犯人は21番に住む 雨に濡れた暗い路地。バーを出た男を尾行していく犯人の主観ショットの緊迫感から一気に映画に引き込まれる。 50年代に一気に名声を高めるクルーゾー監督の優れたサスペンス演出は、戦中の処女作(コンティナンタル製)から随所で光る。特に冒頭の刺殺シーンを始め、幾度か登場する殺人場面はいずれも見事。(『悪魔のような女』的な浴槽殺人も登場) 大写しとなるシルエットの用法や「3」の記号の活用などは、ラングからの影響もあるのだろうか。 一方で、ピエール・フレネーとお転婆ぶりが可愛いシュジー・ドゥレールの掛け合いや、手品師とのスリ合戦など、楽しい見所も充実している。 「ミモザ館」住人達のキャラクターもそれぞれ個性的だ。 ナイフ、マッチ、ステッキといった小道具の扱いも各所でアクセントとなっており、特にラストショットでピエール・フレネーがマッチを擦る粋な仕草は鮮やかに映画を締めくくっている。[ビデオ(字幕)] 9点(2011-08-06 19:34:52)《改行有》

37.  花の慕情 《ネタバレ》 会社側の要請とはいえ、ドライで硬質なサスペンスの鈴木英夫には、いかにも不得手そうな文芸メロドラマだ。 やはり持ち味は活かし難く、ドラマはメリハリを欠いて映画を長く感じるが、画面の落ち着いた色彩と陰影は十分堪能できる。 『その場所に女ありて』(62)で颯爽とスーツを着こなす司葉子は、鈴木作品5本目の本作では華道の二代目家元役で落ち着いた和服の美を披露している。共に一種のキャリアウーマンの役柄ともいえる。 飯村正撮影によるイーストマンカラーの淡い色彩が、生け花、着物の柄と良い感じにマッチしており、眼に沁みる。夕暮れの淡い光の具合も素晴らしい。 ラストの宝田明との再会シーンでは伊豆の山奥の雄大なロケーションがまた清清しく、山道の勾配とカーブが良いアクセントになって作品を締めている。 [映画館(邦画)] 6点(2011-06-20 22:29:16)《改行有》

38.  母は死なず 《ネタバレ》 菅井一郎がひたすら歩く。職探し、家探し、営業まわりと、歩行のショットが続く。 勤勉と誠実と朴訥の父親像は同年の松竹作品『父ありき』の笠智衆とも通じ合いながら、嫉妬や頑迷さや不器用も垣間見せる子煩悩な姿は、より人間味を感じさせる。 小津『父ありき』の親子が、離れ離れでありながらもふとした瞬間、動作をシンクロさせてしまう(川釣り)のに対し、菅井一郎・小高まさるの親子は同居しながらも次第に齟齬を深めていってしまう。(暴投ばかりのキャッチボール)。 その噛み合わない父子の絆を亡き母が取り持つ。 入江たか子自身は映画の中で早々に退場してしまうが、その思いは遺言の筆跡とナレーション、木漏れ日の美しい墓地の画面を介して最終的に父子を結びつける。 自ら命を絶った妻(入江)の遺言の文面にかぶさりながら菅井一郎が悄然と歩くスクリーンプロセスの感覚がとてもいい。 『まごころ』の加藤照子が登場する1シーンはご愛嬌。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-05-13 22:43:27)《改行有》

39.  ハナ子さん 巻頭に登場するのは、真上から俯瞰したバレエ団のダンスの輪。 そのマキノ的な円のモチーフは自転車や荷車の輪転、防災演習の連携プレーの輪、ボールとフープを使った舞踊団のレビューへと変奏され、轟夕起子のデングリ返し、 そして回転の舞へと連なっていく。 あるいは、吊り輪運動、時計の振り子、箒掃き、手押しの放水機、ラジオ体操からススキの穂まで、「揺れる」運動も随所で画面にリズムをつける。 アクションは視覚と歌謡に留まらない。演者の交わす対話の響きが非常にリズミカルでいい。 とぼけていながら歯切れが良い。台詞が優れたアクションとして機能している。 轟夕起子の笑顔と面、その回転と疾走が短く繋がれていくラストの情感。 母親の悲哀を直截に見せた木下監督の『陸軍』以上に、その精一杯の笑顔は胸に迫る。 [ビデオ(邦画)] 8点(2011-05-05 21:32:23)《改行有》

40.  半分の月がのぼる空 《ネタバレ》 映画は時制の仕掛けを用いた、流行ともいえる「辻褄合わせ」的サプライズを用意する。しかし、伏線の控えめさと、その転機をさりげない振り返りとカットバックで処理するシンプルな手際によって賢しさを感じさせることなく、笑顔の忽那汐里の写真とともに静かに感動を盛り上げる。 この仕掛けの要請もあって、劇中では年代を特定するような装飾は極力排され、美術も落ち着いてすっきりしている。 その分、シーツやパーティション、カーテンの白布の白さが格段に引き立ち、手持ちの微細な揺れの中で光とシルエットと風が強く印象づけられる。 ベッドに並んで横臥する池松壮亮と忽那汐里が被るシーツが、月光を受け光を帯びる。その柔らかな光の感触が素晴らしい。 ランプシェードの光に照らされる大泉洋の横顔。ラストで月光のスポットライトに照らし出される窓辺の二人。その労わりの光が優しい。 宮沢賢治の一節も、会話劇の中に効果的に引用されていて胸を打つ。 [DVD(邦画)] 9点(2011-02-27 22:09:18)《改行有》

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