映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』の口コミ・レビュー

リップヴァンウィンクルの花嫁

[リップヴァンウィンクルノハナヨメ]
2016年上映時間:180分
平均点:6.98 / 10(Review 41人) (点数分布表示)
公開開始日(2016-03-26)
ドラマ小説の映画化
新規登録(2016-02-09)【8bit】さん
タイトル情報更新(2023-08-21)【イニシャルK】さん
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監督岩井俊二
キャスト黒木華(女優)皆川七海
Cocco(女優)里中真白
地曵豪(男優)鶴岡鉄也
和田聰宏(男優)高嶋優人
野間口徹(男優)
中島ひろ子(女優)
浅見姫香(女優)
大友花恋(女優)
桜井美南(女優)
郭智博(男優)
中村ゆり(女優)
紀里谷和明(男優)
野田洋次郎(男優)
軽部真一(男優)
玄理(女優)
原日出子(女優)鶴岡カヤ子
毬谷友子(女優)皆川晴海
金田明夫(男優)皆川博徳
りりィ(女優)里中珠代
綾野剛(男優)安室
芹澤興人(男優)堤啓介
原作岩井俊二
脚本岩井俊二
撮影神戸千木
製作東映(RVWフィルムパートナーズ)
ポニーキャニオン(RVWフィルムパートナーズ)
木下グループ(RVWフィルムパートナーズ)
プロデューサー杉田成道(エグゼクティブプロデューサー)
配給東映
美術部谷京子
編集岩井俊二
録音岩井俊二(ミキサー)
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💬口コミ一覧

41.ネタバレ どこから書けばよいのか。なんだか楽しかったことは覚えている。おそらくそれは、COCCOさん演じる、里中真白が出てきたあたりからだろう。長い映画の中、彼女の存在に目を奪われ続けた作品だった。

 意思薄弱、と言って過言ではない皆川七海がネットを介して男と出会うところから物語は始まる。ネットで出会いを求める、と言うのが作中唯一の彼女の自発的な欲求の発露による行動だったかもしれない。それ以外は全て知らず、分からず、流されるだけの存在だった。物語を文字通り誘導するのは綾野剛さん演じる安室という一人の男。「なんでも屋」である彼は時に結婚式の出席者を演じ、時に良き相談者・理解者となり、時にこっそりと人を陥れもする。彼は作中の登場人物でありながらもさながら舞台裏の黒子のように、マリオネットの繰り手のように、七海を操り続ける。どういう目的かはわからないが、彼はランバラルの友人として七海に近づき、彼女にとって唯一の信頼できる人になっていった。彼にとっては彼女は金づるだったのか、暇つぶしのおもちゃだったのか、どうなのだろう。第三者から見れば安室の存在が七海にとって良さそうとはとても思えないのだが、七海は安室に全幅の信頼を置き、おかげで救われたと思っている。こういう場合、自分が七海の家族や友人だとしたら安室をどういう風に扱っていくべき何でしょうね。

 徹底して七海がコロコロと転がされるのを眺める映画でした。上述したように、安室と七海の操り劇、といったふう。操られた七海が色々な場面をどのように転がっていくのかをただただ見ていた。そしてそれが1番艶々と輝いていたのが真白と過ごしていた時間だったと思う。真白の奔放な笑顔・声には本当に惹きつけられた。一度は雑踏で見失い、しかし屋敷で再会できたときの喜びは七海と同じくらい共有できた気がします。私も、リップヴァンウィンクルとつながってみたいと思いました。

 安室の置き場所が定まらず映画としてどう評価するべきかが難しいのですが、ただ間違いなく言えるのは、自分の好きなものが全力で輝く姿を見ることは、とても心が喜ぶということ。映画を評価する言葉としては不適切かも知れませんが、それらがスクリーンに映し出されている間はそれだけで幸せでした。coccoとクラゲ、反則です。
 あと真白の幸せの捉え方が響いた。
「この世界は幸せであふれている」
「私の幸せの限界はありんこより早くて」
「人の優しさや真心がそのままだと怖いから、だからお金で買うんだ」

 それで10点はやりすぎかな。個人的評価です。あしからず。
TANTOさん [インターネット(邦画)] 10点(2022-09-29 14:33:35)
40.ネタバレ とっても辛かったある日、空を見上げたらこの映画が紹介されていた。
「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」
この一節がすごく胸に入ってきて、
やっと映画を見れた。
最初はびっくりすることばかり。こんなこと、あり得ない、ひどすぎるって感じで進んでく。

助けてくれているようにみえる安室氏、
どうして七海を別れさせ、振り回したのか、よくわからないけど、悪いひとではないのかな…って最後は思った。
友達が欲しかった真白、彼女がコンビニの店員にすら真心を感じているなんて、聞いている時は涙が止まらなかった。
優しい七海は、きっとずっと友達でいてくれただろう。
愛おしい内容の映画だった。

で、リップヴァンウィンクルって何だろうって気になって調べた。
彼はひどい生活の中から、愛していた森へ迷い込み、目が覚めたら20年経っていた的な話。
真白が自分を彼に例えたのが理解できた。

私も見習いたい。
みんなに真心を込めて接すれば、
みんなが幸せになるんだよ。
新しい生物さん [インターネット(邦画)] 10点(2017-12-25 04:17:11)
👍 1
39.“夢現(ゆめうつつ)”。

映画が終わった劇場の座席でしばしぼんやりとしながら、その言葉が頭に浮かんだ。
“ひとり”では、決して、抱えきれない痛みと、抱えきれない愛おしさ。
どこまでも切なくて、どこまでも残酷な映画だった。

白昼夢のようでもあり、悪夢のようでもあるこの歪な映画世界は、まさに現代社会の“ひずみ”を映しだした“リアルな寓話”だ。
社会の片隅でひっそりと肩を寄せあって眠る彼女たちの生きる様は、とても悲しくて、とても美しい。
二匹のランブルフィッシュのように、やがて彼女たちのまわりに余計なものは何も無くなって、二人だけの唯一無二の世界を構築していく。

束の間の、いや、ほんの一瞬の、幸福。
辛苦に溢れた世界の只中で、苦しみ、悲しみ、それでも、「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」と謳い上げたこの映画の、彼女たちの強さを讃えたい。

この奇跡のような映画を彩ったのは、“彼女たち”の存在感に他ならない。
主人公を演じた黒木華とCoccoが、この映画の中で息づくことで生まれたアンサンブルが、あやうく、愛おしい。

黒木華が岩井俊二作品の中で自然に息づくことはある意味容易に想像できていたが、Coccoがこれ程までに、岩井俊二の映画にフィットし、そしていきいきと支配していくとは思っていなかった。
そして、10代の頃から、この映画監督と、稀代の歌姫を信奉し続けてきた者にとって、それはあまりに感慨深い特別な映画体験だった。


彼女は、「この涙のためなら、わたし何だって捨てられるよ。命だって捨てられるよ」と、歌うように愛を伝える。
彼女は、新しい景色の風に吹かれながら、空っぽの左手の薬指を愛おしそうに眺める。

嗚呼、この世界の、ほんとうの価値が見えてくるようだ。
一ヶ月の期間をあけて二回この映画を観て、その直後に原作小説も読み終えた。けれど、まだこの物語のすべてを整理しきれてはいない。
きっと、一生、付き合っていかなければならない映画なのだと思う。

人は、強く、儚い。
そしてそのどちらも美しい。
今はただそう思う。
鉄腕麗人さん [映画館(字幕)] 10点(2016-04-15 00:11:48)
👍 1
38.ネタバレ 自らの主体性というものを強く持ち合わせておらず、周りの人間によって何処かへと流されるままに生きているような若い女性、七海。社会が提示する「こうすれば君も幸せになれるよ」という空気感に抗うことなく、彼女は出会い系サイトで知り合った男性と恋に落ち、あっさりと結婚してしまう。だが、そんな七海へと忍び寄る怪しげな男、安室。彼の策略により、七海の幸せだと思われていた結婚生活は次第に綻びをみせるようになり、やがて彼女のちょっとした愚かな行動により全てを失ってしまうのだった。残酷な社会へとたった独りで放り出されてしまった七海を救ったのは、再び安室という謎の男だった。彼に言われるまま、七海は大きな屋敷の住み込みのメイドとして働き始める。同僚として一緒に働くことなった自由奔放な女性、真白と次第に仲良くなってゆく七海。だが、真白には誰にも言えない深い秘密を抱えていた――。現実なのか、空想世界なのか、都会の片隅にひっそりと開いた秘密の扉を開けてしまった可憐な女性、七海。彼女が辿ることになる摩訶不思議な運命をリリカルに綴る大人のための残酷なファンタジー。日本が世界に誇る天才映像作家、岩井俊二監督の新たな代表作とも言えるそんな本作、3時間にも及ぶ長丁場ということで今回気合を入れて鑑賞してみました。なのですが、そんな僕の先入観など軽く吹き飛ばすほどの傑作でした。もう全編に渡り、監督の映像センスが炸裂しています。ストーリーの見せ方もそれぞれのキャラクターの描き方も一切無駄がなく、何よりこの唯一無二のカメラワークが最後までとても心地よく、3時間を一切長く感じさせません。本当にセンスの塊ですね、この人。また、聖なる愚者とも呼ぶべき純粋可憐なこの主人公を演じた黒木華がまさに嵌まり役で、とても素晴らしかったです。夫により新居から追い出された彼女が、大きなキャリーバックだけを手に何処でもない場所を彷徨うシーンはあまりにも切なく思わず涙。そして後半、彼女が辿ることになる現実感のない展開も最後にきちんと説明がなされ、観終わった後、僕は更なる感動に包まれていました。素晴らしい!正直、観終わった直後はちょっと長すぎかなとも思ったのですが、思い返せば思い返すほどじわじわと心に効いてきて、この長さはやはり必然だったのだと改めて納得。真白も安室も考えてみれば酷いキャラクターなのですが、結果的に七海にこんな幸せな記憶を与えてくれた。こんな残酷で酷い社会でも、生きていればこんな素晴らしい出来事があるかもしれないと思わせる希望と再生の物語。僕にとって特別な作品がまた一つ増えてしまいました。
かたゆきさん [DVD(字幕)] 9点(2019-08-01 23:14:37)
👍 1
37.ネタバレ ■第1部 虚構に満ちた現実
七海は、電脳空間でしか本音が言えない。自分の殻の中に閉じこもっている主人公に対し、ネット授業の生徒であるカノンは引きこもりで、顔は映らずパソコンの中だけに登場する。主人公の分身のような存在だ。
現実世界の結婚式は、新郎新婦の少年・少女時代を演じる役者が登場するなど、滑稽なほど虚飾にまみれている。七海の父はにこりともしない。七海にとって自分のための結婚式なのに自分のものでないようで、緊張からか表情がこわばっている。
浮気の容疑をかけられた七海は家を追い出され、行く当てもなくさまよい、安室に電話で「ここはどこですか」と問う。スマホがあれば確認できることなど、わかっているはずだ。家を失い、職を失い、頼る人もいない彼女には、自分が何者でどこに属しているのか説明できなかっただろう。
リップ・ヴァン・ウィンクルが村に戻ると、知り合いは誰もいなかった。彼は、口うるさかった妻の安否をきく。妻なら、20歳ほど年上になってはいるが、生きていれば夫の自分を認識できるはずだ。しかし実際には亡くなっていて、誰一人として彼を認識できなかった。人は単独では、自分が何者かを説明できない。人は人に認識されることで、自分が誰なのかを説明できるのだ。
電脳空間でしか人と繋がれない七海は、孤立無援に陥った。やがてバッテリーが切れ、他者との繋がりを完全に断ち切られてしまう。長い道のりを歩いて来たのに、映像では不思議なことに人も車も全く通っていない。本当はいたのに、目に入っていなかったのだろうか。夕暮れ時となり、ようやく通行人の姿が見えるようになり、ショーウィンドウからウェディングドレスが見え、視聴者は皮肉だと感じるが、当の七海は茫然自失で気づかないようだ。
■第2部 虚構世界にある真実
七海は自分の結婚式では顔をこわばらせていたが 自分が代理出席する側になると、結婚式が終わったとたん、家族役を演じた他人どうしで大笑いし、姉役だった真白と意気投合する。ここでは、現実世界に喜びがなく虚構世界に喜びがあることが表現されている。
真白と豪邸で暮らし始めた七海は、初めて相手の意に反し「この仕事辞めます」「二人で暮らせる家を探そう」と言って涙を流す。他人の顔色を窺うのではなく、真に相手を思いやっての提案である。
家を追い出されたときはウェディングドレスに注意を払わなかったが、真白と部屋探しに行ったときは、店の奥に見えるウェディングドレスに気づいている。二人は試着と称し、記念撮影する。日本には同性婚はないから、これはどこまで行ってもまがいものである。結婚も偽物、指輪も偽物、だが七海は、現実の結婚では見せなかった笑顔に溢れている。ここでも、現実世界に喜びがなく虚構世界に喜びがあることが表現されている。
二人はウェディングドレスを着たまま豪邸に帰り、酒を酌み交わし、ピアノを弾き、ダンスを踊り、二人だけの宴に興じる。サクラの出席者など要らない。指輪も証明書も。画面はBGMだけの無声になり、逆光やスローモーションを用いた幻想的なシーンが続く。虚構世界の結婚式が、現実世界で満たされなかった二人の、至福の時を描き出す。この二人が出逢ったのは、結婚式のサクラがきっかけだったというところに皮肉がある。
■第3部 再び現実生活へ
真白の死を知った七海は、声をあげて泣く。夫に追い出されたときも、大声をあげなかったのに。真白の葬式シーンには、本物のAV女優・男優が登場する。ここは演技ではなく本心なのだということで、監督が本物の起用に強くこだわったところだろう。
リップが村に戻ると、全てが変わっていた。物語は最後に、再び一人暮らしに戻った七海の引越しシーンを描く。彼女が新婚生活から追い出された日は雨だったが、今度は晴れ渡ったすがすがしい朝だ。引きこもりのカノンも「東京ってどんなところ?」と、外の世界に興味を示す。
安室は頼まれもしないのに、家具をプレゼントする。一人暮らしなのに、二人で椅子を二つ運ぶ。七海はこの部屋に、誰かを招くつもりだろう。それはいつかこの町で出逢うであろう、愛する人。別れ際には「ありがとうございました!」と大きな声をあげ、大きく手を振る。冒頭では小さくしか手を挙げることができず、授業では声が小さかった彼女がである。
安室が帰ると、七海はまた一人になる。だが彼女はもう、孤独ではない。七海は、薬指に残る虚構の指輪の感触を確かめる。そこには、愛にはもともと形なんかないのだという強いメッセージが込められている。ベランダの外は雲一つなく晴れ渡り、彼女の視界を遮るものはない。最後にカメラはすうっと引いて行き、七海を取り巻く都会の風景を映し出す。彼女はもう、人ごみの中でとまどうことはない。虚構に満ちたこの世界にも、真実の愛はきっとあるはずだ。
高橋幸二さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2019-03-31 20:39:18)
👍 1
36.ネタバレ 映像も演者さんも、一瞬、一瞬に心をこめて、愛をこめて、技をこめて、大事に丁寧につくっておられるんだろうなあ、いう印象です。長い作品なのに、どんどん引き込まれ飽きることなく没頭できます。登場人物たちは、自分の都合で主人公を操作しようとする人たちばかりなのですが、利用する側と利用される側という構図にはならず、愛ややさしさが循環する形になってゆきます。主人公の女性は安易だけれども純粋で、何があっても受け止め続けます。彼女のただひたすらの受容によって、善も悪も認めてそこにあらしめる世界が展開します。現代社会は、実はこんなふうに、強く儚い人々がひしめく美しい世界なのかもしれない…なんて思いたくなりました。
Totoさん [インターネット(邦画)] 9点(2018-04-01 21:40:13)
35.ネタバレ おとぎ話のような、そうでないような。
どんな話なのか、まったく予備知識なく観たのもよかったのかな。
あー映画観たなぁって満足感。
黒木華さん、綾野剛さん、Coccoさん、みんな良かった。
ろにまささん [CS・衛星(邦画)] 9点(2017-04-01 06:16:59)
34.ネタバレ もうね、Coccoの存在感が凄いの。
Cocco登場以前と以後で別の作品になったような気がする。
なので、急に居なくなったときは寂しかった。
もしかして、スペシャルゲスト的な扱いで、これだけしか出番が無いの?とか思ったけど、そうじゃなくて良かった。
これが素なのか、演技なのかはよくわからないけど、とにかく魅力的なの。
もし主演が並の女優だったら完全に食われてバランスを失ってたかも知れないけど、黒木華の透明感のある演技も素晴らしかった。
序盤は流されるだけの主体性の無い女性だったけど、中盤以降はどんどん魅力的になってく。
ちょっとうちの従姉妹に似てるんだよね。
最近、結婚式も挙げたし。
まあ、そんな縁起でもない話はどうでもいいんだけど、これだけ僕を夢中にさせておいて、この展開ですからね。
衝撃的過ぎました。
涙脆い僕が泣くのを忘れて唖然とするくらい。
終盤は泣きそうになるとちょっと笑わせようとしてくるもんだから、結局泣くタイミングを逃してしまったけど、切なくて感動的な素晴らしい作品でしたよ。
あと、クライマックスのCoccoの長台詞は、とても感動的なことを言ってるんだろうけど、黒木華のバストショットがエロ過ぎて、台詞が頭に入って来ないんです。
仕方がないので、そのシーンだけもう一度見直してみたけど、やっぱりエロいんです。
web版にはこのシーンが無かったので、劇場版を見直して良かったと思います。
それから、泣きそうになると笑わせてくる例のシーンも丸ごとカットされてて、代わりに別のシーンが追加されてたけど、やっぱりそっちでも泣きそうになると笑わせてくるので、もうどうしようもありません。
初見のweb版で点数付けてましたけど、見直した劇場版の評価に変更させていただきます。
もとやさん [DVD(邦画)] 9点(2016-08-29 13:03:59)
👍 1
33.ネタバレ  嘘とフェイクに溢れた世界でリアルな生を追い求める、けれどそれを求めている者自身が嘘とフェイクばかりで構成された存在なのかもしれず。

 わりと最初の方、結婚式のシーンあたりから映画にのめり込んで、あっという間の3時間が駆け抜けてゆきました。
 嘘とニセモノばかりで飾られ、組み立てられた結婚式、その切なさ、悲しさ。ジェットコースターのような展開の前半、騙され何もかも失ってしまうヒロインは、中身の無い、カラッポな存在。

 黒木華がとてもいいです。自分というものがまるでなく、ホワホワとクラゲのように漂い、流され、無防備に堕ちてゆくその姿は、本来ならば「もう少ししっかりしろ!」とイライラしてきそうなキャラなのですが、儚げな佇まいで「そういう生き方になってしまうのも仕方のない、弱い女性」を完璧に創造しています。

 その彼女がホンモノの存在へと変化してゆく、本物こそが生の実感を得られるのです、みたいな教訓めいた話ではなくて、映画の後半は本物でなければならない意味なんてない、嘘や偽物の中にも価値のあるもの、かけがえのないものがある事を優しく描いてゆきます。
 ヒロインとは対照的に強烈な存在感のCoccoは何もかも嘘とフェイクで作られた世界のお城に住むお姫様。お金の力を借りたお伽話ごっこの中に存在する、かけがえのないもの。

 見ていて、そうか、コレは自分が好きな「人間になりたい、なれないロボットの物語」なんだ、だからこんなに響いてくるんだ、って。岩井俊二版『オズの魔法使い』は、登場人物がブリキマンばかり。

 世界と他人と自分の実体を見つけられない人々に「この世界は嘘とフェイクばかりだけれど、だからこそ素晴らしい世界なんだよ」と優しく語りかけてくる映画でした。そう、映画ってモノが嘘とフェイクばかりで作られていて、その中に世界があって心が宿るように。
あにやん‍🌈さん [映画館(邦画)] 9点(2016-04-06 15:44:44)
👍 1
32.ネタバレ 偽りに満ちた世界で、
真白だけは自分を信じ貫いた。
家出したきり母に連絡しなかったのは、
末期ガンだと知られ
悲しませたくなかったのではないか。
自分に出来る事はAV出演で金を稼ぎ
母に残す事だけと考えたのだろう。
母は外聞を気にするあまり
生前の真白と向き合ってやれなかった事を
自らも裸になる事で悔いた。
この時、立ち会った安室もまた
母娘の深い愛情を目の当たりにし
心を揺さぶられた。


七海は真白の心中相手に選ばれてしまったが
真実の愛を育んだ結果、
巻き添えにはされなかった。
他人を信じようともせず
見栄だけで生きてきた七海は、
真白に本当の愛を教わったのではないか。
七海は、鉢の中のベタと同じように、
或いはリップヴァンウィンクルのように、
独りぼっちになってしまったが、
屈託なく大きな声で安室と会話し別れたのが
印象的だった。
相変わらず人それぞれの事情や腹の内までは
分からない世界ではあるが、
真白との出会いで、
信じる強さが身に付いたように思った。

(当初、ランバラルと安室は同一人物とも思ったが、
ランバラルは真白で、アムロの超えられない壁
の暗示なのかも知れない)
こまさん [インターネット(邦画)] 8点(2023-02-26 04:11:43)
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31.ネタバレ ストーリーを純粋に楽しめた。
前半の畳み掛けるような不幸の連続。その緊迫感。
絶望の境地でフラフラと歩く黒木華、そこに流れる音楽。
とっても印象的!

しかしCoccoが出てくるクダリは気持ち悪くてダメ。Coccoの見た目がムリ。
花嫁姿で黒木華とCoccoがはしゃぐシーンは、出来る限り黒木華だけを見てました。

岩井監督はCharaとか気持ち悪い女性ミュージシャンを使うのが好きだよなぁ。

本作は映像が美しく、そして音楽の使い方も素晴らしく魅力的。
岩井監督の良さ悪さ、その両面が存分に発揮された力作!
にじばぶさん [インターネット(邦画)] 8点(2020-08-21 23:28:32)
30.ネタバレ ちょっと上映時間が長すぎて途中ダレますが、話の内容が驚くような感じで二転三転するので面白く、脚本がかなりよくできてますね。真面目に作ってる一方、所々ふざけまくって笑わしにくる場面も多々あり、なかなか懐の深い作品だと感じました。タイトルのリップヴァンウィンクルというお話がどういう話かわからないのですが、僕は個人的に不思議の国のアリスっぽい印象を受けましたね。安室は不思議の国に誘う白うさぎで主人公が離婚しどん底に叩き落される出来事自体が不思議の国に繋がる入り口みたいな。主人公の導き手となる安室という人物ですが、物語が進むごとにいい奴なのか、酷い奴なのか、はたまたただ単に仕事を真面目にこなしているだけなのか、結局何が本心なのか最後までわかりませんでした。もしかしたら笑ゥせぇるすまんの喪黒福造のように人間じゃないのかもしれませんね(笑)黒木華とCoccoの二人はハマり役で二人とも魅力的でしたが、Coccoの歌手とは思えないぐらいの演技力には驚かされました。
葬式の時に本物のAV女優を使うのはわかりますが、AV男優まで本物入れてくるのは思わず二度見してしまい笑ってしまいましたwその後の裸になるシーンも含めこれは「絶対笑ってはいけない葬式24時」的なノリで笑わせに来てるとしか思えませんねwずるいw 
映画大好きっ子さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-05-30 21:39:49)
29.ネタバレ 岩井俊二監督の映画をじっくり見たのは初めて。黒木華は予想どおり良い演技だったけと、最初はちょっと胡散臭い綾野剛が、最後にあそこまでやる(やらせる)とは。綾野剛を見直しました。(+1点)
Banjojoさん [映画館(邦画)] 8点(2017-03-19 19:16:15)
28.黒木華ちゃんが実にいい。近所に普通に居そうで、でもどこか不思議なふわふわした子。
新婚早々に追い出されて、呆然と彷徨って・・ 「ここはどこねー」??(笑
全ては悪い奴に騙されているのが原因で、どこまでも利用されて気の毒な展開だが
その目的が判ると、ナントモ言えない脱力感。登場人物それぞれの勧善懲悪感は薄れていく。
話が見えてきて、成る程なあと思いました・・ が、長過ぎる3時間。
いくらなんでも2時間以内に納まったでしょ? 冠婚葬祭のシーンばかりの映画になってる。
引っ張るところと、流すところ、緩急つけて欲しい。それと変に手持ちのカメラ使って
不安な心情を・・も、無駄に多いなあ。そこでカメラゆらゆらって、必要ですか?
でも、それらの不満を払拭する華ちゃんの魅力が素晴らしい。彼女は貴重な女優さんですね。
しかし、この男は本当得体が知れない奴だ。デキル奴のようだが裏の顔もあって不気味。
自分的には、編集の妙があれば9点作品でしたが・・惜しい。
グルコサミンSさん [DVD(邦画)] 8点(2017-03-05 01:36:10)
27.ネタバレ リップヴァンウィンクルといえば、映画「野獣死すべし」の中で松田優作のセリフを思い出す。この映画では、AV女優のハンドルネームのことだった。結婚式の場面から始まるから、この結婚での花嫁かと思いきや、そうじゃなかった。岩井俊二、やるね♪「スワロウテイル」から観ているが、この監督作品はヒリヒリするんだよね。でもこの映画はヒリヒリだけじゃなかった。昇華まで描き切ってた。内容はといえば、最近、業界の無茶苦茶さが報道されて、何かと話題のAV業界の出演女優の心の深い傷。自分に負い目を感じて、幸せを怖がってる女性を、黒木華演じる女性が抱きしめる、そんな内容だった。この黒木華がまた、お人よしの田舎の女の子を好演してて、実に良い。ラストの綾野剛と黒木華の普通に話せている会話が実に良かった。普通の日常の勝利が描かれてた。でもあれだね、AVはまず観る人を減らさなきゃ無くならないね。自分もどんなんだろ?と若いころ何本か観てみたけど、感性の敗北って感じの内容で、罪悪感しか残らなかった。あんなん観てたら、女性に舐められるよ。
トントさん [DVD(邦画)] 8点(2017-01-29 01:12:12)
26.ネタバレ 岩井俊二作品に漂う空気感は健在で気持ちよいが、少し長いのがネック。
必然性のある長さならいいのだけれども…少なくとも物語としては3時間も必要ない。 
まぁ、この人の空気を表現しようとしたら長くなるのは仕方がないか。

当て書きだと思われるキャスト・脚本の一致が良かった。
ぼーっとしていて世間知らずで主体性のない主人公に黒木華。
心が壊れているのか、人の痛みより自らの利益を優先してそれに罪悪感を感じない男に綾野剛。
恵まれない家庭で育ち、自分を大事にすることができない女性にcocco…と、キャストのイメージに近い役柄。

雰囲気を味わう作品であって、物語として大きなテーマはない(ように感じる)が、私が感じたのは
「みんな自分の価値観でしか物事を見ていないんだなー」ということ。
自分に不利になるようなことをした相手だと知らないまま、主人公が綾野剛演じる男に感謝を表現するシーンが
印象的だった。

劇場ならまだしも、DVDで3時間集中するのは難しいので、劇場で見たかったなーと思う。(そもそも公開されていない地域
Sugarbetterさん [DVD(邦画)] 8点(2016-12-29 15:28:37)
25.ドラマ版として全6話からなる【serial edition】というものが存在していて、4枚組の豪華版Blu-rayに付属しているのでこの映画のファンの方には是非お勧めしたい。6話分合わせると4時間という大作で、劇場版にはないシーンが数多く収録されている。例えば、通信家庭教師の教え子も映像で出て来るし、劇場版ではあっさりしていた前半の新婚生活もじっくり描かれていたりする。後半では真白と部屋を探すシーンで3部屋くらい余計に回ったり、もう色々楽しい。また、劇場版にあったのに削られたシーンもあったりするので全てのシーンを合わせた完全版が観たいなぁと思ったり(一体何時間になるんだ?)。それと、劇場版では謎だった、突如白い帽子を被る黒木華のシーンが、ドラマ版のエンディングムービーだったという事がわかったのは収穫だった。
ヴレアさん [映画館(邦画)] 8点(2016-05-24 13:30:57)
24.ネタバレ この映画3時間でしたか。話にぐいぐい引き込まれて全く長さを感じませんでした。 黒木華さん、よかったです。好演とか物語の世界観に合っていたとかそんな次元ではなく、まるで彼女ありきでこの映画が創られたほどに。 私は、題名は "虚像の幸せ" の別名と解釈しました。出会い系、結婚式のサクラ、確かに今は取り繕った虚像の幸せであふれている。ネット社会の利便性と引き換えに、モラルや感謝の心など人が失ったものも多く、もはや幸せ感覚はあきらかに麻痺した。彼女たち二人は現代社会の被害者ではなく、"迷い子" であると思う。幸せも出会いもお手軽すぎて、何が本当の幸せだか、誰が自分に見合うのか、あげくには自分が何なのかわからなくなった。でもそんな現代に、心に傷を負って人の温もりを誰よりも欲していた二人が、お互いが最も必要とする相手に "サクラ" を通じて奇跡的に出会った・・。 題名すなわち "虚像の幸せ" とは、ネット社会に対する鋭い風刺と思いましたが、実は逆説的な意味だと思うのです。つまりこのような現代でも、生きる価値は絶対にある。ニセモノであふれたこの世界のどこかに、あなたに見合う本物 (幸せ) は確かに存在している、だからとにかく生きろ、そう言っている気がします。
タケノコさん [映画館(邦画)] 8点(2016-04-09 19:35:39)
👍 1
23.一口に感想を述べるのは非常に難しい。仕事、お金、幸せ、観る者によって感じるところは正に千差万別だと思う。
久々に岩井監督の色彩を堪能出来たし、ファンならそれだけでも劇場に足を運ぶ価値のある作品なのは確か。
主演二人が素晴らしい。特に黒木華の「女優」の名に相応しい存在感は凄まじく、180分間出ずっぱりでも決して飽きることがなかった。彼女は今に日本を飛び出す大物になるんじゃないかな。
ハリウッド大作を見慣れて来た所為か、エンドロールの短さにも驚かされた。こう言う作品を観ると、まだまだ邦画も捨てたもんじゃないと思わされる。
Kの紅茶さん [映画館(邦画)] 8点(2016-04-02 22:07:38)
22.ネタバレ 岩井俊二の透明な世界観とドロドロした現実社会が見事に調和していて、不思議な感覚に包まれる3時間でした。不思議とは書きましたが、実は岩井監督が描く現実はリアルなようで、実はリアルと少しずれたパラレルワールドの現実なのではないかと私は思っています。その中で、岩井監督が自由に自分の世界観を展開していくことで、我々は自分が抱えている様々な不安や悩みを素直に昇華させることができるのではないでしょうか。
TMさん [DVD(邦画)] 7点(2017-07-08 22:45:00)
👍 1
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【点数情報】

Review人数 41人
平均点数 6.98点
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【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 8.66点 Review3人
2 ストーリー評価 7.75点 Review4人
3 鑑賞後の後味 8.00点 Review4人
4 音楽評価 8.00点 Review4人
5 感泣評価 6.50点 Review4人

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