映画『第十七捕虜収容所』の口コミ・レビュー

第十七捕虜収容所

[ダイジュウナナホリョシュウヨウジョ]
(㐧十七捕虜収容所)
Stalag 17
1953年上映時間:120分
平均点:7.51 / 10(Review 73人) (点数分布表示)
公開開始日(1954-02-23)
ドラマコメディ戦争ものモノクロ映画戯曲(舞台劇)の映画化
新規登録(不明)【シネマレビュー管理人】さん
タイトル情報更新(2023-12-26)【TOSHI】さん
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監督ビリー・ワイルダー
助監督チャールズ・C・コールマン(ノンクレジット)
キャストウィリアム・ホールデン(男優)J・J・セフトン軍曹
ドン・テイラー〔監督・男優〕(男優)ジェームズ・ダンバー中尉
オットー・プレミンジャー(男優)フォン・シェルバッハ大佐
ロバート・ストラウス〔男優〕(男優)スタニスラス・“アニマル”・クザワ軍曹
ハーヴェイ・レンベック(男優)ハリー・シャピロ軍曹
ピーター・グレイヴス〔英男優〕(男優)フランク・プライス軍曹
ネヴィル・ブランド(男優)デューク
シグ・ルーマン(男優)ヨハン・セバスチャン・シュルツ軍曹
桐本琢也J・J・セフトン軍曹(日本語吹き替え版【PDDVD】)
大黒和広フランク・プライス軍曹(日本語吹き替え版【PDDVD】)
秋元羊介ヨハン・セバスチャン・シュルツ軍曹(日本語吹き替え版【PDDVD】)
横島亘(日本語吹き替え版【PDDVD】)
近藤洋介J・J・セフトン軍曹(日本語吹き替え版【1971年フジテレビ】)
田中信夫ジェームズ・ダンバー中尉(日本語吹き替え版【1971年フジテレビ】)
久松保夫フォン・シェルバッハ大佐(日本語吹き替え版【1971年フジテレビ】)
相模太郎スタニスラス・“アニマル”・クザワ軍曹(日本語吹き替え版【1971年フジテレビ】)
近石真介ハリー・シャピロ軍曹(日本語吹き替え版【1971年フジテレビ】)
羽佐間道夫フランク・プライス軍曹(日本語吹き替え版【1971年フジテレビ】)
玄田哲章J・J・セフトン軍曹(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
津田英三ジェームズ・ダンバー中尉(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
加藤正之フォン・シェルバッハ大佐(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
島香裕スタニスラス・“アニマル”・クザワ軍曹(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
千葉繁ハリー・シャピロ軍曹(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
小島敏彦フランク・プライス軍曹(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
石塚運昇デューク(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
増岡弘ヨハン・セバスチャン・シュルツ軍曹(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
堀川亮“ブロンディ”・ピーターソン軍曹(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
西川幾雄マルコ(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
小室正幸バグラディアン軍曹(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
田口昂(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
田原アルノ(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
脚本ビリー・ワイルダー
エドウィン・ブラム
音楽フランツ・ワックスマン(ノンクレジット)
作曲民謡「ジョニーが凱旋するとき」(アメリカ民謡)
撮影アーネスト・ラズロ
製作ビリー・ワイルダー
パラマウント・ピクチャーズ
制作東北新社(日本語吹き替え版【1987年フジテレビ】)
配給パラマウント・ピクチャーズ
特撮ゴードン・ジェニングス(特殊撮影効果)
美術ハル・ペレイラ(美術監督)
レイ・モイヤー〔美術〕
サム・カマー
ヘアメイクウォーリー・ウェストモア
編集ジョージ・トマシニ
ドーン・ヘリソン(編集スーパーバイザー)
あらすじ
第二次大戦末期。スイス国境近くの第十七捕虜収容所には、アメリカ人ばかりが収容されていた。脱獄計画があっさりと失敗したことで、中にスパイがいるのではないかという疑いが持ち上がる。軍曹のセフトン(ウィリアム・ホールデン)は、タバコを貨幣代わりに手広い「事業」を行うしたたか者で、嫌疑を一身に受け、袋叩きにあってしまう。彼は真犯人を見つけようと罠をしかけるのだが……。巨匠ビリー・ワイルダーの代表作の一本。
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💬口コミ一覧

73.ビリーワイルダー最高。

『情婦』が有名ですが私はこの映画が一番好きです。
コミカルで軽快。洒脱。

ストーリーは練られていて演技は秀逸。
映画に必要なそれでいて最低限のものだけでここまで作り上げるとは、

イメージでは日本刀のような。
機能美を感じさせる人生の一本の一つ。

白黒に毛嫌いせずにみんなに見てもらいたい作品です。
病気の犬さん [DVD(字幕)] 10点(2015-11-05 15:30:38)
72.冒頭で、戦争映画は数あれど捕虜を描いた作品が無いのが不満だ、などとブチ上げておきながら、捕虜収容所の非人間性をリアルに描いて告発してやろうなんて気はサラサラなく、厚かましくも堂々たるオモシロ娯楽作品に仕上げております。能天気な捕虜たちのドタバタあり、仲間にまぎれた密通者の存在が招くサスペンスあり。登場人物の目を通したいわゆる主観ショットが、セフトンの目を通せば、密通のカラクリが暴かれる過程としてのサスペンスを生むし、アニマルの目を通せば何ともアホらしい女装ネタで笑いを生む、というとにかく楽しい作品なのですが、ただ楽しいばかりではなくて、そんな中にも「ヒーローは、孤独である」というテーマがあって、作品を忘れがたいものにしております。ヒーローは孤独であり他者から理解されぬ不遇の存在であり、しかしそれは自らが招いたものでもある。そして彼はついに、自らその殻を破り羽ばたいていく。陽気さ、緊張感、動きのある見事なストーリー展開、ウン、確かに捕虜映画でこれほどのオモシロ作品が作れるんだから、冒頭の「不満」も一理ある訳です。
鱗歌さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2013-05-06 14:39:02)
👍 1
71.これこそマイ・ベスト・ムービーだ。初めて観たとき、ドイツ軍の捕虜収容所長に対して捕虜みんなが一歩ずつ前進して抵抗を示す場面に感動した。その後何回も観て、主人公セフトンの、ドライだが憎めない生き方は自分の人生にも投影している。「ジョニーが凱旋するとき」は、多くの映画で使われているが、この映画が一番効果的に使われており、いまでも時々口ずさむ私の愛唱曲である。ラストシーンで、収容所に残った捕虜がセフトンの脱走した理由を問われ、NHK-BSの日本語訳では「工具を盗みたかったんだろ」と訳されていたが、初めて観たゴールデン洋画劇場版「また商売がしたかったんだろ」の方がピッタリくる。余談だが、ドイツのスパイ役P・グレーヴスのテレビ番組「スパイ大作戦」のエピソードで、この映画と同じような情報交換のシーンがあったことを思い出す。彼もこの映画に愛着をもっていたのでは?
風小僧さん [地上波(吹替)] 10点(2012-12-22 19:57:33)
👍 2
70.とにかくアニマルの表情が良い!テーマソングとして何回も出てくるWhen Johnny Comes Marching Homeも良い!また、ワイルダーはナチスから逃れて亡命したのに、ただ辛辣に描くでなく(容赦ないところもありますが)娯楽作に徹して撮られているというのが、彼の映画に対する姿勢が表れていて好きです。
長谷川アーリオ・オーリオさん [DVD(字幕)] 10点(2012-03-24 14:45:26)
69.痛快、痛快!!ワイルダー作品の中でも間違いなく一番でしょう。
ゆきむらさん 10点(2005-03-09 19:01:48)
68.所詮、軍人なんてナチも米兵もこんな単純なんだ、と思わせてくれる映画。W・ホールデンがスパイの伝令について気づく場面の撮り方はとても巧いですね。
上海魔人さん 10点(2003-06-22 11:34:24)
67.大好きなビリー・ワイルダー監督作品の中でも、一番好きな作品です。捕虜収容所という、辛く苦しいはずの閉鎖社会の中、個性をぶっつけ合って、強く、自由に、おおらかに生きる捕虜の面々、中でも知恵を武器に巧みに、逞しく立ちまわるセフトン(ウィリアム・ホールデン)は、最も魅力的な映画キャラクターの一人です。脚本は才気とユーモアに溢れ、演出、小道具等々も秀逸、細部にまで監督のこだわりが感じられます。これ以上楽しい映画、他にありますか???
チャターBOXさん 10点(2003-06-13 16:32:56)
66.とにかく良い映画なので観て欲しい。
まつさん 10点(2001-11-20 18:46:33)
65.ネタバレ 後年の「大脱走」「勝利への脱出」と共に収容所を描いた戦争映画の傑作。
コメディタッチの軽快なやりとり、謎が謎を呼ぶサスペンス感覚の戦慄。この緊張の糸がビリー・ワイルダーの醍醐味。
オープニングのナレーションが「捕虜収容所を描いた戦争映画が無いから作りました」と来たもんだ。メタすぎる。
いきなり脱走から始まるファーストシーン、だが既に「密告者」が暗躍していた。
一体「密告者」は誰なのか。
一番怪しい男、まったく怪しくない男、様々な疑念が広がる・・・それをワイルダーのコメディ演出が忘れさせてしまう。
アニマルの暴れ振りが可愛くてしょうがない。
と思ったら「密告者」の暗号でドキリとさせられる。油断できないぜ。
収容所内の楽しいやり取り、その隣の鉄条網から先の世界は死が待っている・・・「殺される戦場」よりも「何もしなければ殺されない収容所」の方が気楽かも知れない。
死にたくなったらいつでも鉄条網を潜ればいい。サーチライトが道標だ。

ウィリアム・ホールデンの孤独な戦い振りがカッコイイ。
“商売人”は嫌われて上等。殴られて上等、だが「嘘」だけは付かない・・・てめえ(密告者)の尻尾を掴むまで徹底的に嫌われてやらあ・・・!
「尻尾を掴んだ」後も報復はせずに「気にするな」の一言。こういう男になりたいぜ。
オマケに最後の最後まで“商売人”だったね。
「人の助けになる物」は売っても「魂」は売らない。
せしめた煙草も一口の卵のために変える男だ。
任務でも仕事でもない、仲間のために命を張るのが奴の商売(ビジネス)・・・!
すかあふえいすさん [DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 23:00:23)
64.ネタバレ 巧い!冒頭、見直してみると脱走の成否を賭けにするセフトンをプライスが実に微妙な顔をして見上げているのですね。「何言ってくれてんの」って感じで。最期に感情を見せるジョーイが印象的。ビリーワイルダー監督に外れなし。
なたねさん [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-01-24 16:34:40)
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63.サスペンス、スリル、可笑しさ、爽快感……映画の娯楽性を彩る要素は多々あるけれど、ビリー・ワイルダーの映画には、そのすべてが詰まっている。
捕虜収容所での“スパイ探し”を描いたこの変わった趣向の戦争映画には、想像以上に娯楽性を高める様々な要素がバランスよく入り交じっていて、それぞれの要素が見事に主張し合っている。

第二次世界大戦中の捕虜収容所を描いた映画と言えば、有名過ぎるのはやはり「大脱走」だろう。ドイツ軍管理下の捕虜収容所からの脱走を図る捕虜たちの群像劇を描いたプロットは、今作との類似を大いに感じる。
大名作として誉れ高いのは「大脱走」の方だと思うが、制作年数は今作の方が圧倒的に早いので、ヒントを得た部分は大いにあるのだろうと思う。
そして、個人的には圧倒的に今作の方が面白かった。

ナチスドイツ管理下の捕虜収容所というイメージ的には陰惨極まる舞台設定において、決して不自然ではない映画的娯楽を展開させる巧さに、ビリー・ワイルダーという映画人の偉大さを改めて感じずにはいられない。

そして、スリルやコメディの娯楽性の裏には、しっかりと悲愴な環境下で生き抜く人間たちのドラマと戦争による混沌も見えてくる。
そうすると、収容所内の人間たちの少々仰々しい感情表現も、生き抜くための一つの“手段”に思えてきた。

映画は終始薄汚れた捕虜収容所内で展開され、派手さは皆無だと言っていい。しかし、噛めば噛むほど様々な味覚が存在を主張し、そのどれもが深まっていく。
週末の深夜、巧い映画とはこういうものだということを改めて知った。
鉄腕麗人さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-04-22 23:44:07)
👍 1
62.ネタバレ 流石、ビリー・ワイルダー監督!脱走映画にありがちな暗さなんてどこ行く風か?とばかりに笑いで描き切る。これこそこの監督の持ち味、本領発揮である。捕虜収容所の中で起こるスパイ疑惑、ドイツヒトラーに対する皮肉、おちょくりシーンとも言うべきみんながみんな、口髭でヒトラーの真似をするシーンの可笑しさ、馬鹿馬鹿しさ、完全にヒトラーをおちょくってるとしか思えない。そんな皮肉たっぷりな笑いを描く一方で勿論、サスペンスドラマとしての面白さも見られるこの映画が私は大好きです。世間的にはワイルダー監督と言えば「アパートの鍵貸します」が人気では一番かもしれないけど、私からしたらこの映画の方が上である。ここまで徹底的にヒトラーに対するおちょくり、収容所の中での大騒ぎ的な面白さを見せてくれたら言うことなしです。これもまた私にとってはビリー・ワイルダー監督の傑作の一つとして外せないそんな映画です。
青観さん [DVD(字幕)] 9点(2005-06-30 21:57:42)
61.♪ぴぴぴぴっぴ、ぴ~ぴっぴ、ぴ~っぴぴ~。ラストの口笛が、この第十七捕虜収容所の面々の団結を物語っています。脱走ものですけど、かなりほのぼのとしています。みたら、監督がビリー・ワイルダーじゃないですか。これも白黒映画初心者の方にはおすすめですね。とくにアニマルが最高です。何が何でも、女子風呂をのぞこうとするアイデアが素晴らしい。戦争をあえて笑い飛ばせる映画を作るなんて、素晴らしいです。果たして、所内の秘密を横流ししているスパイは、一体誰なのか?これもこの映画の見所です。こういう映画こそ、是非リメイクしてほしくないですね。
どんぶり侍・剣道5級さん [DVD(字幕)] 9点(2005-05-25 16:18:46)
60.ネタバレ 捕虜収容所に、中盤、新たに中尉が収容されてきて、主人公が同じ士官候補だったことがわかる会話のシーンがある。中尉は家柄がよく、金の力で士官に昇進したが、主人公は裕福でなかったので士官になれず、軍曹止まりだったのがそこでわかる。この人物設定により、本筋の逆転劇に加えて、毛並みのよさにものをいわせたエリートに対して、自分の才覚だけが頼りの雑草野郎の人生上の逆転劇が同時進行するのが、この脚本のうまいところであり、観終わった後痛快な気分になる所以だと思う。「どこかで会ってもお互いに知らないふりをしような」という科白が何度観てもかっこいいのだが、大人になった今その科白をかみしめると「俺はは中尉から金をせしめて金持ちになるが、それは俺が自分の力で稼いだ金なのであって、戦争が終わって金の無心のために俺に近づいてきても無駄だ」という収容所仲間への先制パンチにもなっていてまことに如才がない。捕虜という不自由な境遇のなか、利己主義に陥ることなく個人主義を貫き通した孤高の主人公の精神的な強さはたいへん魅力的で、昔も今も、私の憧れの人物像のひとつである。
南浦和で笑う三波さん 9点(2005-03-08 22:56:09)
59.ネタバレ ワイルダー、ハリウッド監督9作目。今回は愛国心を扱った作品。といっても、もともとドイツ出身のワイルダーさんですから星条旗を猛々しく翻すようなことはいたしやせん。それがこの映画を見てもべとつかないところです。そしてクリスマスに差し入れされたピンポン球が中尉救出の白煙に化けるとは、まさにホワイトクリスマス。これも立派なクリスマス映画ですねー。ラスト、捕虜が眠るベッドの背後に掲げられたMERRY XMASの飾りつけ、これがなんとも泣けました。それからホールデンさん、オスカー獲得、Congratulation!
彦馬さん 9点(2004-05-30 20:08:18)
58.物語が捕虜連中のコミカルな姿を描く前半、犯人捜しと脱走に至るまでのサスペンスな後半という展開は素晴らしい。収容所所長役のオットー・プレミンジャーが効いていました。
Mr.MONKさん 9点(2003-12-15 15:05:00)
57.ほんと、ワイルダーの描く人間劇は面白い。話、展開は実に単純なんだが、登場人物の役割分担がはっきりしていて、なおかつ個性的なため、暗い狭い収容部屋のカットがほとんどでありながら、男達の絡み合う人間模様だけでも十分楽しめる。特にアニマルのキャラクターが良い、いつも馬鹿騒ぎしているんだけど、戦争の後遺症の残るジョーイに手紙を読んであげる優しい面も持ち合わせる。陽気な人間の優しさは身に染みる、ジョーイの笑顔がそれを物語っている。ワイルダーの素晴らしい点は「映画は娯楽」と割り切っているところ、捕虜収容所といえば暗い、残酷なイメージしか沸かないが、彼の作品には笑いが溢れ、希望に満ちている、役者も生き生きしており、舞台とは裏腹に幸福感に浸れる映画だ。
ゆたKINGさん 9点(2003-05-07 17:29:29)
56.ホールデンが、ボコボコにされながらも、最後は決めてます。コミカルなところもあり、「大脱走」とは一味違う収容所ものになっています。
Otolaryngologistさん 9点(2003-04-29 16:09:48)
55.ネタバレ  「大脱走」(1963年)の元ネタの一つ……というより、多くの脱獄映画に影響を与えた、金字塔的作品ですね。
 主人公のセフトンは、後の映画における「調達屋」達の原型となっているし、本作が後世に与えた影響は大きいと思います。

 とはいえ「映画好きなら、勉強の為にも観ておくべき一本」なんて堅苦しい存在ではなく「今観ても楽しめる、愉快な白黒映画」って呼べる代物なのが、何とも嬉しい。
 原作が舞台劇という事もあり、基本的に捕虜収容所の建物内で物語が進行するのですが、閉塞感だけでなく、不思議な解放感もあるんですよね。
 象徴的なのが劇中曲の「ジョニーが凱旋するとき」であり、その勇壮な響きが、鬱屈とした空気を吹き飛ばしていたように思えます。

 貧しいスープの食事を取る皆の前で、セフトンが目玉焼きを作る場面が美味しそうとか、極限状況ならではの「普通の事が贅沢になる可笑しさ」を描いてる点も良いですね。
 こういう時、普通の映画なら羨ましがる側が主人公なんだけど、本作に関しては「贅沢をして、仲間に見せ付ける側」が主人公というのも、非常に斬新。
 ビリー・ワイルダー監督としては、その辺のバランスを考慮し「贅沢する側」のセフトンだけじゃなく「羨ましがる側」のハリーとアニマルにも尺を割いて、副主人公的な扱いにしたんじゃないかと思えますが……
 自分としては、もっとセフトン中心に作って欲しかったなと感じちゃうくらいに、彼が魅力的でしたね。

 皆を救う英雄としての側面、皆に嫌われる悪党としての側面、その二つをバランス良く備え持っており、七十年近くを経た今観ても新鮮に思える主人公像を描いてるんだから、本当に凄い。
 「入所直後に毛布や靴を盗まれた」(=だから仲間を信用していない)というエピソードを、さらっと語らせて、セフトンの人物像に深みを与えてる辺りも良いですね。
 回想シーンなどで尺を取らずとも、短く話すだけで充分に説得力があったし、この辺りは流石ウィリアム・ホールデンだなと、改めて感服しました。

 仲間を密告したと疑われ、散々に殴られ傷付いた顔で「本物の密告者を見つけ出す」と宣告する場面も、震えるくらいに恰好良い。
 そんな主人公セフトンが、終盤に自己犠牲な行動に出る訳だけど、それにも「ダンバー中尉の親から礼金をせしめる」という目的があるので納得出来るし、この辺りの描き方が、凄く良いんですよね。
 (あの悪党セフトンが、英雄的な行動をするなんて……)という意外性の魅力と、確かな説得力、両方を描く事に成功しているんだから、お見事です。
 脱走の直前「もし、どこかで会っても知らん顔しような」と、仲間達に冷たい言葉を残していくんだけど、その後に笑顔で敬礼して去っていく姿も印象的であり、セフトンの二面性の魅力が色濃く表れた、忘れ難い名場面だったと思います。

 そういった訳で「主人公の魅力」に関しては、今観ても斬新だと思えるのですが……
 「密告者が誰なのか」の種明かしの方は、非常に分かり易く、少々拍子抜けしちゃうのは、残念でしたね。
 本当に振りや伏線が丁寧なので「このジャンルが未熟な当時でも、観客が理解出来た展開」って意味では賞賛されるべきなんだろうけど、個人的には、もうちょっと難易度を高くして欲しかったです。
 何せ、セフトンより先に「密告者が誰なのか」を観客に明かす構成になっていますからね。
 これは、如何にも寂しい。
 やはり、セフトンと観客を一体化させて、同時に犯人を突き止める形にした方が「ああ、そうか」と喜ぶセフトンの姿にも、よりカタルシスを得られたんじゃないかと思います。

 ……ただ、そんな犯人の正体を踏まえた上で二度目の鑑賞をすると「皆の頼れる兄貴分」って感じに振る舞ってる犯人の姿が白々しくて面白いとか、やっぱり長所の方が圧倒的に多い映画なんですよね。
 作中一番のツッコミ所だろう「犯人を外に出して、警備兵に撃たせる場面」に関しても(助けを求められちゃうし、口と手を縛ったままで放り出した方が良かったのでは?)と思わずにはいられないんだけど(まぁ、皆して裏切り者への怒りで頭に血が上ってたから、冷静に考えられなかったんだろう)と、好意的に解釈したくなるんです。

 他にも、撃たれた後の演技が微妙で、死体のはずなのに生きてるとしか思えない場面とか、不自然で嘘臭い箇所があっても、劇中の捕虜よろしく「俺は信じるよ」って気持ちにさせてくれるんだから、本当にズルいというか、憎めない映画ですね。
 きっと今後も、いつまでも嫌いになれないまま、好きな映画のままであり続ける気がします。
ゆきさん [DVD(字幕)] 8点(2022-12-14 00:49:52)
54.描かれる捕虜収容所生活は、捕虜達は愛国心に溢れるでもなし、独軍は管理者としての厳格さはあるものの陰惨さはなし。更に密造酒、鼠レース(爆笑)、覗きの行列(「早くしろ!俺の順番には婆さんになってしまう・・・」爆笑)、チョビ髭達の「ジーク・ハイル!」(爆笑)、大量の煙草、等々実に能天気なもの。オスカーを逃したのが残念なアニマル役のロバート・ストラウスに大笑いさせられる。スパイが判明する件から結末までは一転して手に汗握る緊張感に包まれる。孤高を貫く男(渋すぎる)セフトンの言うとおりあれしか方法はないにせよスパイの最期に息を呑む。ユーモアと非情さの塩梅が絶妙なワイルダー監督の名人芸をいつも通りに堪能させてもらった快作。
The Grey Heronさん [DVD(字幕)] 8点(2017-11-05 09:51:09)
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【点数情報】

Review人数 73人
平均点数 7.51点
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
434.11%
556.85%
6810.96%
71926.03%
82027.40%
91013.70%
10810.96%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 9.00点 Review3人
2 ストーリー評価 8.20点 Review5人
3 鑑賞後の後味 8.00点 Review5人
4 音楽評価 8.75点 Review4人
5 感泣評価 9.00点 Review1人

【アカデミー賞 情報】

1953年 26回
主演男優賞ウィリアム・ホールデン受賞 
助演男優賞ロバート・ストラウス〔男優〕候補(ノミネート) 
監督賞ビリー・ワイルダー候補(ノミネート) 

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