144.《ネタバレ》 これまで、この映画を
「プリンセスの逃避行物語」
「王女と記者の身分違いロマンス」あるいは
「アン王女の成長ストーリー」
だと思っていた。でも、昨日あらためて見て、気づいた。
この映画はそんな軽いものではなく、全世界の人々が抱いている人生観そのものに訴えかけるものなのだ。。
アン王女は、それまでの窮屈な生活に耐え切れず、夢を叶えるべくローマ市外へ飛び出した。
ジェラード食べ歩き、カフェで飲食し、タバコを吸い、美容院でお好みのヘアスタイルにして
無免許運転でベスパをすっ飛ばし、船上パーティーでダンス…。
彼女がやってみたかったことは、ことごとく叶えることができて、彼女はそれで満足したはずだった。
彼女がやりたかったことが、それだけなのであれば、心おきなく王女生活に戻れるはずだった。
だが、思いがけずジョーを愛してしまう。
それは、彼女がこっそり街へ抜け出してしたかった夢のリストにはなかったこと。
そう、彼女がやってみたかったことは、食べ歩きや船上パーティ...のような娯楽だと思っていたのに、
実は自分が恋した相手とずっと幸せに暮らすことだったのだと、ジョーと川辺でキスをして彼の部屋に戻ってから気づくのですね。
私は今までそこまで深く考えずに見ていて、ジョーとの恋はジェラードや船上パーティーと同じカテゴリーの”彼女が体験した非日常”の1つとしてカウントしていたのだが、それはとんでもないミスだった。
ジェラードや船上パーティーなどの自由行動は、これからの未来、王女として戻って彼女の人生の中になくてもそれはそれであきらめはつけられるレベル。
でもジョーとの恋は、あきらめつかない・・・。
”自由気ままに楽しいことをする”じゃなく”たった一人の愛する人と共に過ごす”ことこそが、彼女にとって本物の夢だった。
そしてようやくつかみかけたその本物の夢は、彼女が手離さなきゃいけないもの。これ以上に苦しいことがあるだろうか?
彼の部屋に戻っての会話。アン王女「何か食事作りましょうか?」ジョー「台所ないんだ。食材もない。いつも外食さ」 アン王女「それでいいの?」・・・その後にジョーが言うセリフに、全てが集約されていて、心がしめつけられた。
「Well, life isn't always what one likes・・・is it? 」
(人生っていうのはいつも、望みどおりにならないもの・・・そうだろう?)
その言葉を受けてアン王女も「そうね・・・」と答える。
「人生が望みどおりにならないだろう?」
というセリフは、独り身のジョーの心情だけでなく、アン王女のその時の「愛するひとと結婚してご飯を作ってあげたいのにできない」という心情でもあり、
そして、この映画を見ている人達が常に、日々心に抱いている心情でもあるだろう。
何十回も見てきたこの映画。実はこのセリフがナンバーワンの名ゼリフではないだろうか?
あなたもきっとこの映画を見たら、人生思い通りにいかない自分の姿をアン&ジョーに重ねて、共感することマチガイナシ。