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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1884
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  SHE SAID/シー・セッド その名を暴け 《ネタバレ》 
ハリウッドを震撼させた、有名映画プロデューサーによる女優へのセクハラ疑惑。その件数は一つや二つではなく、しかも何十年も前から日常的に繰り返されてきたというのだ。映画業界で絶大な権力を持つその男の前では無力な一俳優やスタッフがいくら被害を訴えても黙殺されるだけ。長年泣き寝入りを強いられてきた多くの被害女性たち。だが、2016年、当時のニューヨークタイムズの記者が地道な取材を重ねてゆくと、そんな不都合な事実が少しずつ明らかとなってゆく。これまで自らの思いを必死に抑え込んできた数多くの被害女性たちは、次第に勇気を出して声を上げてゆくのだった――。のちに大きな社会ムーヴメントとなるMeToo運動のきっかけとなった、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラ事件。本作は、そんな映画業界のみならず全世界に大きな衝撃を与えた事件を描いた社会派ドラマだ。まだ事件が明るみになってから数年しか経過していないこともあり、関係者の多くがいまだ映画業界で働いていること、加害者であるワインスタインがのちに有罪判決を受け現在服役中であること、日本をはじめ今も多くの国で過去の性被害が問題になっていること、そんな物凄くナイーブな問題を正面から扱った本作のテーマは意義深いことだと思う。これまで多くの女性たちが泣き寝入りをせざるをえなかった社会の構造的な欠陥を、地道な取材によって告発した主人公たちの勇気ある行動は称賛に値する。ただ、本作を映画という芸術的側面で論評させてもらうと自分はそこまで評価できなかった。これは、いくら社会的関心が高いテーマだとは言え、実際に起こった出来事をただ忠実に再現しそれを時系列順に並べたからといって必ずしも面白い映画とはならない典型的な例ではなかろうか。事実をただ羅列するのではなく、観客の興味をとらえより多くの人々の心に届けるための演出を行うのが監督やスタッフたちの役割だと自分は思う。今回本人役で登場したアシュレイ・ジャッドがクライマックス、自らも実名をあげて告発記事に名を連ねる決心をするシーンも、そこまでの丁寧な描写や伏線も何もないせいで唐突感がぬぐえず、いまいち心に響かない。これはひとえに脚本と演出のせいだろう。数年前にアカデミー賞を受賞した、カトリック教会内部での神父による性的虐待を描いた『スポットライト/世紀のスクープ』との違いはここにある。ここまでセンシティブなテーマに勇気をもって取り組んだ監督の熱意には好感が持てるだけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 5点(2024-01-25 10:50:56)
2.  ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 《ネタバレ》 
もうシリーズの世界観から完全に外れちゃって、もはや『ミッション・インポッシブル(+恐竜)』みたいな感じになってましたけど、これはこれでけっこう面白かった!恐竜に追いかけられながらの街中バイクチェイスシーンは、やぱテンション上がりますなぁ。旧シリーズのメインキャストががっつり大活躍するのも好印象。あと、恐竜だけでなく今回は巨大イナゴの大群に追いかけられるシーンがあったのも自分はけっこう好きでした。イナゴの動きとかめっちゃリアルでなかなかグロかったーー!まぁ3日も経てば完全に忘れてしまいそうな内容でしたけど、エンタメ映画としては充分及第点。うん、そこそこ面白かったです!!
[DVD(字幕)] 7点(2023-08-09 09:16:43)
3.  シラノ 《ネタバレ》 
19世紀に初演されたフランスの名作戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を元に、自らの外見にコンプレックスを持つある一人の剣士の長年にわたる片思いを美麗に描いたミュージカル。監督は、現代的な解釈で古典的名作を幾つも蘇らせてきた名匠、ジョー・ライト。このお話って確か、主人公は鼻が物凄く大きいことにコンプレックスを持っててそのせいで好きな人に告白できず何年も片思いに苦しめられるって設定だったよね。でも、本作でシラノを演じるのはピーター・ディンクレイジ。持って生まれたハンディを乗り越え、実力で今の地位を築いた個性派俳優。とにかく彼の自身の境遇を重ね合わせたかのような、周りの偏見や同情を圧倒的な力で捻じ伏せるかのような熱演が素晴らしかったです。心から愛する女性が自身の後輩に想いを寄せていると知った時に見せる彼の切なそうな表情には思わず感情移入してしまいました。それでも彼女の幸せを願って、後輩との仲を取り持とうとする主人公。自分の恋心を納得させたいがため、彼からの手紙だと偽って自らが書いた恋文を何通も彼女に渡すシーンには胸がぎゅうぎゅう締め付けられますね。監督、モテない男の気持ちをよく分かってらっしゃる。癒えたはずの僕の心の古傷がズキズキ疼いちゃいましたわ(笑)。肝心のミュージカルシーンはいかにもジョー・ライトらしい、煌びやかで華のある場面の連続でもはや抜群の安定感。中世フランスの宮廷を再現した、ゴージャスで美しい映像には思わず乙女のように見惚れてしまいました。殺伐とした戦場シーンも何処か気品を感じられて、この計算された統一感は素晴らしいですね。ヒロインを演じた、ヘイリー・ベネットのいかにも恋に恋する自由奔放な感じもグッド。男を振り回す典型的な小悪魔感が憎たらしいけど、でも悔しいけど魅力的でした。彼女と彼女が想いを寄せるイケメンとシラノがベランダ越しに会話するシーンは、それぞれの情熱と諦念が交錯する素晴らしい名場面。片想いの切なさに苦しんだことがある全ての人にぜひ観てもらいたい、なかなかの秀作でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2023-03-10 10:01:48)
4.  シニアイヤー 《ネタバレ》 
チアリーディング部のキャプテンとして、恋に友情にと青春を謳歌していたリア充女子高生、ステファニー。だが、プロムクイーンを目指して練習に励んでいたまさにその日、彼女はライバル同級生の策略により、瀕死の重傷を負ってしまう。意識不明となって病院へと担ぎ込まれたステファニーはなんとそれから20年も昏睡状態のまま月日が流れてしまうのだった――。20年ぶりに目覚めた彼女は意識こそ17歳のままだが、その外見は年相応のぽっちゃりとしたおばさん体形。スマホやSNSといった当時はなかった先端技術にも戸惑うばかり。でもステファニーは持ち前の明るい性格から、すぐに失った月日を取り戻そうと前を向いて生活し始める。高校へと戻り再びチアリーディングを始めた彼女は、もう一度プロムクイーンを目指して努力を重ねるのだが……。17歳で昏睡状態となってしまった女子高生が20年ぶりに目覚めたことから巻き起こる騒動を終始軽快に描いた青春コメディ。まぁ完全なる出オチ映画ではあるけれど、レベル・ウィルソンのすっとぼけた存在感で前半はけっこう面白かったですね。病院で目覚めた彼女が鏡に映った自分の姿を見て「ちょっとこのおばさん、誰?」と看護師に聞くシーンとか普通に笑っちゃいました。それが自分だと分かった瞬間、失神するなんてレベル・ウィルソン以外がやったら絶対すべってたでしょうね。ツイッターやインスタグラムといった当時なかった技術との世代間ギャップで笑いを取るのもベタながらあり。行き過ぎたポリコレからかなり窮屈となってしまった現代社会を揶揄するネタもけっこういいとこついてる。ただ、結局それだけの映画なので後半のグダグダ具合はちょっと観てられないレベル。特にこの主人公の自己チューっぷりには見ていて腹立って来ましたわ。『ディープ・インパクト』を観ながらライバルをやり込めるために悪態つきまくるシーンは率直に最悪。映画館で思いっ切りでかい声でネタバレ叫ぶなんて一番やっちゃいかんことでしょ!深刻なテーマをあくまで軽く扱うのも良いとは思うけど、さすがにちょっとやりすぎ。最後のエンドロールで撮影風景を楽しそうに流すのも、なんか仲間内のハッピー押し売り感がウザかったです。前半はそこそこ面白かったんですけどね~。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-02-13 08:31:18)
5.  死霊館 悪魔のせいなら、無罪。 《ネタバレ》 
なんかホラー演出がそんなに怖くなうえにお話のテンポも悪く、自分はさっぱり楽しませんでしたーー。もっと法廷劇をメインに描いた方が良かったんちゃう??
[DVD(字幕)] 4点(2022-10-26 07:15:38)
6.  17歳の瞳に映る世界 《ネタバレ》 
ペンシルバニアの田舎町で平凡な毎日を送る17歳の高校生オータムは、何処にでもいるような普通の女の子。保守的な両親の元、スーパーのレジ打ちのバイトをしながらただなんとなく日々を過ごしている。そんなある日、オータムはもう一か月以上も生理が来ていないことに気づく。密かに訪れた町の産婦人科で診察してもらった彼女に告げられたのは、妊娠10週目という事実。予想もしていなかったことに思わず動揺してしまうオータム。とてもじゃないが両親に話すことは出来ない。そもそも産んで育てる勇気もない。だが、彼女が暮らすペンシルバニアでは、未成年の妊娠中絶には両親の同意が必要だった。ここから遠く離れたニューヨークに行けば、お金さえ払えば手術を受けられる――。ネットで調べてそのことを知ったオータムは、唯一の親友でバイト仲間のスカイラーとともに夜行バスへと乗り込むのだった……。中絶手術を受けるためにニューヨークへと向かう17歳の2人の少女の旅路を終始淡々と見つめたガールズ・ロードムービー。そんななんともネガティブなお話なのに、あまり暗さを感じさせないのはこの監督のリリシズムに満ちた詩的センスによるところが大きい。それぞれに孤独を抱えたこの少女たちの旅路は終始不安定で今にも壊れてしまいそうな危うさが漂っているのに、非常に美しく洗練されている。この感性はなかなかのもの。親身になって相談に乗ってくれていると思っていた、地元の産科医のおばちゃんがゴリゴリの中絶反対派だというのもリアル。一日で終わると思っていた手術が、この産科医の誤診のせいで二日かかってしまうというはなんとも皮肉ですね。すぐにお金もなくなり、泊まるあてもなくなって次第に追い詰められてゆく2人。親友がお金を稼ぐために会ったばかりの男とキスをするシーンで、柱の陰で主人公と密かに手を繋ぐところはとても切ない余韻を残してくれます。この二人の友情が永遠に続けばいいと願わずにはいられない名シーンでした。他にも、中絶前にカウンセラーが幾つも質問する中で、最初は服用している薬だとか病歴だとかだったのが最後の方で男の暴力についての質問に変わってゆくシーン。最初は気丈に振る舞っていた主人公が次第に涙をこらえられなくなるところも、男の身勝手な欲望への女性たちの静かな怒りが感じられ色々と考えさせられます。全てが終わったあと、空虚な笑顔で会話する2人、虚しさと充実感が入り混じって何とも切ない。エンドロールで流れる歌がまた染みます。とにかく2人の等身大の魅力にやられました。シスターフッド映画の新たな地平を拓いた、なかなかの秀作と言っていいんじゃないでしょうか。この監督、これから要注目ですね。
[DVD(字幕)] 8点(2022-10-18 04:15:50)
7.  ジェントルメン(2019) 《ネタバレ》 
引退を決意した麻薬王の資産を狙って、それぞれに蠢き始めた暗黒街の〝紳士たち〟を終始軽快に描いたクライム・サスペンス。マシュー・マコノヒーやコリン・ファレル、それに懐かしのヒュー・グラントなど豪華な面々がそんな個性豊かなワルたちをのびのびと演じております。監督は、この手のジャンルを得意とするガイ・リッチー。と言う訳で今回期待して鑑賞してみました。うーん、期待が高すぎたのか、なんかイマイチな出来でしたね、これ。とにかくテンポが悪い!探偵と麻薬組織の幹部がボスの秘密をめぐってひたすら駆け引きを繰り返す会話劇が物語の縦軸となり、そこから過去の話が回想形式で再現されるという本作の構造。これがうまく機能してないんじゃないかな。この先面白くなりそう!ってところでいちいち現在のシーンに戻るので、なんか集中力が途切れちゃうんですよね。演技派でならしたマシュー・マコノヒーだけにタメの演技を多用しているのもテンポの悪さに拍車をかけているような?お話自体はそこそこ面白かっただけに、もう少し見せ方を頑張ってほしかったです。うーん、次作に期待!
[DVD(字幕)] 5点(2022-06-17 02:48:01)
8.  幸せへのまわり道(2019) 《ネタバレ》 
彼の名は、フレッド・ロジャース。アメリカで30年以上にわたり人気を博してきた子供向け長寿番組で、ずっとMCを務めてきた名司会者だ。優しい語り口と明るい歌声、そして何よりあくまで子供の視点に立ったスタンスで幅広い世代から親しまれてきた。そんな彼はある日、とある社会派ジャーナリストから取材を受けることに。ロイド・ボーゲルと名乗る彼は、早速フレッドの仕事場であるテレビのスタジオへとやってくる。だが、彼は明らかに顔面を殴られた痣があり、何とも不機嫌な様子で早く取材を終わらしたがっていた。いたく興味を惹かれたフレッドは、逆に彼に質問を浴びせかける。聞き出してみると、なんと彼は姉の結婚式で久しぶりに会った実の父親と激しい口論となり、殴り合いにまで発展してしまったのだという。取材はそのまま終わったものの、彼のことが気になったフレッドは後日、取材の延長ということで彼と再び会うことに。子供のように純粋な好奇心から話を聞くフレッドに、ロイドは淡々と語り始める。父が過去、幼かった自分と病弱な母を残し、他の女の元へと逃げ出してしまったことを――。実話を元に、アメリカでもっとも有名な人気司会者と家族との確執を抱えた中年ジャーナリストとの交流を暖かな目線で見つめたヒューマン・ドラマ。アメリカでは知らない人はいないとも言われるそんな人気司会者を演じるのはベテラン俳優トム・ハンクスで、なんと20年ぶりにアカデミー賞にノミネートされたということで今回鑑賞してみました。というか、そんなに久しぶりのノミネートなんですね。なんか毎年受賞してるくらいのイメージだったんですけど、それは僕の思い込みでした。確かに長年のキャリアに裏打ちされたであろう彼の演技は抜群の安定感で、このフレッド・ロジャースという人物を知らない僕でも「ああ、確かにこの人は長年多くの人に親しまれたんだろうなぁ、こんなに大らかで見ているだけで癒される人は滅多にいないだろう」と思わせるほどの説得力がありますね。そんな彼が、ある日偶然出会った短気で偏屈な中年男の心を徐々に開いてゆくというのはベタですけど、なかなか面白かったです。特に、この大らかな人物の周りの人が「あれで昔は短気だったのよ」と語らせるとこもさりげなくて巧い。全体的に子供向け番組のような演出を差し挟んでくるのもそこまで違和感なく、逆にこの地味なお話を魅力溢れる物語へと昇華させることに成功している。うん、観終わるころにはほっこりしている自分がいましたわ。まぁお話としてはあまりにもストレートで若干パンチに欠ける気がしなくもないですが、なかなか良かったんじゃないでしょうか。監督は、前作でもそんなうまくいかない人生に疲れた人たちを終始暖かな目線で見つめたマニエル・ヘラー。この人の作風は僕の好みと合うようなので、これからも追いかけていこうと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2021-10-01 07:02:29)
9.  ジュディ 虹の彼方に 《ネタバレ》 
『オズの魔法使』で一世を風靡した人気子役、ジュディ・ガーランドのその後を実話を基に描いた伝記映画。昔懐かしのレニー・ゼルウィガーがそんな落ちぶれたかつての人気女優を演じ、見事アカデミー賞を受賞したということで今回鑑賞してみました。なんですが、肝心の脚本がいまいちな出来でしたね、これ。とにかくこのジュディ・ガーランドという一人の人間への掘り下げ方が圧倒的に浅い!優れた伝記映画には、この人の人生とはいったいなんであったのか、その生涯を通じて何を追い求めたのか、そういったテーマが強固としてあるものだけど、残念ながらこの作品にはそのようなテーマ性が一切感じられませんでした。これではただ事実を羅列したにすぎません。また、ところどころにある回想シーンの挿入の仕方がどれもセンスが悪く、現在のシーンとうまくリンクしきれていないので何ともちぐはぐな印象。もっと子供のころの華々しい時代の真実を掘り下げて描くべきだったのではないか。ただ、レニー・ゼルウィガーの演技はさすがにアカデミー賞を受賞しただけあって、なかなか真に迫っておりました。って、これって演技じゃなくて彼女の素なんじゃないのなんて思ったりもしましたが(笑)。女優ってどんなに汚れ役を演じていようと、これは「演技」なんだという何処かに気品のようなものを感じさせるものだけど、本作での彼女の演技はそのまんまな感じでちょっと観ていて痛々しかったです。という訳でなんだかいろいろと残念な出来の作品でありました。
[DVD(字幕)] 4点(2021-03-07 03:33:48)(良:1票)
10.  ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト 《ネタバレ》 
弟子の裏切りによって全てを失ってしまった偏屈な玩具職人が、孫の魔法の力を借りて再起を果たすという超王道クリスマス・ファンタジー。主人公を演じるのがオスカー俳優のフォレスト・ウィテカーということで今回鑑賞してみました。なんですけど、いやー、もうこれでもかってくらいベッタベタな内容でしたね、これ。最初から最後まで先の読めるストーリーにどっかで何度も見たようなミュージカルシーンの数々、そして一切個性の感じられないステレオ・タイプな登場人物たち……。正直に言って、この手の分野の大御所であるティム・バートンの作品から一切の毒を抜いたような超絶薄っぺらい内容でした。最後に明かされる、このお話を読み聞かせるお婆ちゃんの正体はきっとアレなんだろうなぁと思ってたら、本当にそのまんまのオチで思わず苦笑しちゃいましたわ。とは言え、けっこうお金が掛かっているであろう、仕掛け絵本を模したファンタジー・シーンはさすがのクオリティだったし、ミュージカルシーンもぼちぼち楽しかったので、何も考えずに観る分にはそこそこ楽しめるんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 6点(2021-01-15 23:13:53)
11.  シカゴ7裁判 《ネタバレ》 
1968年、シカゴにおいて史上類を見ない裁判が始まった。被告となったのは、生い立ちも人種も所属団体も異なり、その思想信条も全く違う7人の男たち。罪状は、民主党大会の近くで行われた平和的なデモを組織的に煽り、過激で暴力的な行動に走らせたという、いわゆる共謀煽動罪。最高で懲役10年にもなるこの罪で起訴された彼らは、本当に有罪なのか?そして本当に彼らは事前に共謀したという事実があったのか?彼らの裁判を通して炙りだされるのは、当時のアメリカが抱えていた根深い病巣だった……。本作は、そんな実際にあった裁判をモデルにしたエキサイティングな法廷劇だ。監督は、事実を基にした社会派ドラマを幾つも手掛けてきたアーロン・ソーキン。主演には、エディ・レッドメインをはじめ、ジョセフ・ゴードン・レビットやジョン・キャロル・リンチといった新旧実力派の豪華な面々。この監督の前作『モリーズ・ゲーム』にはあまりいい印象は持てなかったのですが、なかなかどうして、本作は最後まで充分見応えのある良質の法廷劇に仕上がっておりました。とにかく脚本が素晴らしい!物語の芯となるのは、あくまでシカゴ・セブンと呼ばれた彼ら(最初はここにブラック・パンサー党の黒人幹部も含んだ8人でしたが)の公判なのですが、随所に事件当時の映像を差し挟むことでメリハリがつき、最後まで非常に観やすく、かつ考えさせられるというなかなか密度の濃い内容となっております。それまでほとんど面識のなかった立場も年代も違う被告人たちが、優秀な検事や偏見に塗れた判事によって徐々に追い詰められ、次第に疑心暗鬼から仲間割れへと発展してゆく過程も非常に丁寧。後半、次々と明らかになる、新たな証拠や新事実、そして決定打となる新証人の存在などの見せ方も充分にドラマティックで最後まで全く飽きさせません。主要キャストを務めた俳優陣もそれぞれいい仕事してます。特に後半、出番は短いもののかなり重要な役回りでマイケル・キートンが登場したのは嬉しいサプライズでした。果たして真実はどうだったのか――。個人の感情や思想など簡単に握り潰そうという国家権力、そして後先考えずただ己が正義のために暴走してしまう市民団体、その双方に改めて空恐ろしいものを感じます。最後は若干、過剰なまでの大団円へと導こうとするその手法に鼻白むものはありましたが、総じて満足度は高い。なかなか完成度の高い法廷劇の逸品でありました。8点!
[DVD(字幕)] 8点(2020-12-21 08:30:27)(良:1票)
12.  ジェミニマン 《ネタバレ》 
引退を決意したばかりの超一流殺し屋が逆に命を狙われた!世界トップクラスの腕を誇る彼を追い詰めた者とは果たして誰なのか?その正体は、実は最新鋭のクローン技術で作り上げられた若き日の彼そのものだったのだ!長年の経験を最大限に活かしたベテラン殺し屋と粗削りながらも才能豊かな若手殺し屋。お互い超一流の自分との命をかけた闘いの火ぶたがいま、切って落とされる……。という、いかにもB級なぶっ飛び設定のSFエンタメ・アクション。最新鋭のCG技術で再現された若き日の自分と戦う主人公には、これまたいかにもな人選のウィル・スミス。これで監督がポール・W・S・アンダーソンやリュック・ベッソンといった〝いかにも〟な人だったらたぶん観なかったんでしょうけど、本作の監督はなんと何度もアカデミー賞の栄誉に輝く名匠アン・リーということで今回鑑賞してみました。なんですが、正直イマイチな出来でしたね、これ。とにかく最後までテンポが悪すぎ!こういう頭空っぽにして観るべき荒唐無稽系SFアクションは、もっとサクサク進んでくれないと。だって肝心のクローン殺し屋クンの正体が分かるのは、映画の中盤を過ぎたあたりってさすがに遅過ぎですわ~。あとアクション・シーンが全体的にどれも地味だったのも物足りなかったです。やはりアン・リー監督の丁寧で品の良い演出は、こういうB級作品には不向きだったってことでしょうね。けっこう期待していただけに残念でした。
[インターネット(字幕)] 4点(2020-12-13 00:02:25)
13.  ジョジョ・ラビット 《ネタバレ》 
彼の名は、ジョジョ・ベッツラー。アドルフ・ヒトラーを心の底から信奉し、現在敗色濃厚なドイツの最終的な勝利を日々神に願い、そしてユダヤ人を劣等民族だと信じて疑わない、愛国主義の見本のような10歳の少年だ。だが、ドイツ少年団のキャンプに参加した際、彼はウサギを殺せという命令を実行できず、ジョジョ・ラビット(臆病者)と言う不名誉な渾名を付けられる。そればかりか、手榴弾の扱いを誤り、大怪我を負ってしまうのだった。周りの友達が皆、戦地へと駆り出される中、彼は母親とともに自宅療養を余儀なくされる。空想の中の友達である〝アドルフ・ヒトラー〟と空しい日々を過ごすジョジョ。ところがある日、彼は自宅の屋根裏に謎の少女が密かに暮らしていることを知るのだった。「間違いない、彼女はユダヤ人だ」――。すぐにでも秘密警察に知らせようとするジョジョだったが、この件には母親が深く関わってることが分かり、彼は苦しい板挟みに陥ってしまう…。第二次大戦末期、時代の空気によってナチスの信奉者となった少年とユダヤ人少女との密かな交流をコメディタッチで綴ったヒューマン・ドラマ。アカデミー作品賞にノミネートされ、世間の評判もすこぶる良かったので今回鑑賞してみました。いや、噂に違わぬ素晴らしい出来でしたね、これ。ナチスのホロコーストと言う非常に重いテーマを扱いながらも、最後までコメディタッチの軽いノリを貫き通したのは英断だったと思います。なにより笑いのセンスがすこぶる良い。ナチスの秘密警察が人に会うたびに一から「ハイル、ヒトラー」を繰り返すとこなんて思わず笑っちゃいました。飄々とネタを披露するサム・ロックウェルもナイスな仕事ぶり。ブラックな発言を繰り返すあの太った女性なんて、もはや吉本新喜劇のノリですね。悪趣味一歩手前のぎりぎりのラインを突くこのユーモアのセンスはなかなかのものがありました。もちろんそれだけではありません。時代の空気なので仕方ありませんが、このジョジョと言う少年があまりにもナチスを信じ切っていて最初は嫌悪感爆発。でもその後、このユダヤ人の少女に徐々に心を許してゆき、次第に洗脳が解けて、やがて彼女にほのかな恋心を抱くとこなんてホント巧い。彼女のためにジョジョが書く手紙も切なすぎます。スカーレット・ヨハンソン演じる彼の母親のエピソードなんて涙無くしては見れません。惜しいのは、彼の空想上の存在である〝アドルフ〟がいまいち巧く機能していないところぐらい。笑って泣けて最後は深く考えさせられる、素晴らしい作品でありました。
[DVD(字幕)] 9点(2020-08-28 00:00:26)
14.  シー・ユー・イエスタデイ 《ネタバレ》 
白人の警察官に、ただ黒人と言うだけで虫けらのように殺された兄を救うため、自作のタイムマシンを使って何度も過去へと遡る女子高生を描いたSFサスペンス。『バタフライ・エフェクト』や『オーロラの彼方へ』と言った過去改変タイムパラドックスものに、昨今の深刻な人種差別問題をスパイスとして振りかけるというこのアイデアは、新しいと言えば新しい。全体を彩るレゲエ・ミュージックも、このともすれば重くなりがちな物語を明るい青春ものへと中和させることに成功している。主人公の黒人少女が魅力的なのも大変グッド。こういう作品のお約束――こっちを救うとあっちがえらいこっちゃというのも、ベタながらなかなか面白かった。ただ、ラストがあまりにも投げっ放しなのが本作の残念なところ。もう少し「起承転結」をしっかりと考えて、脚本を練って欲しかった。冒頭、マイケル・J・フォックスがちょい役でちょっとだけ出ていたのは嬉しいサプライズ。結論としては、ま、ぼちぼちってとこでした。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-08-25 23:02:23)(良:1票)
15.  ジェラルドのゲーム 《ネタバレ》 
彼女の名は、ジェシー。弁護士である夫のジェラルドとともに何不自由ない生活を謳歌している。子供にこそ恵まれなかったものの、自宅の他に別荘も所有し、二人で暮らしていくには充分過ぎるほどの貯金もある。だが、そんな彼女にも一つだけ悩みの種があった。それは夫ジェラルドとのセックスレス。もう長いこと、夫は自分の身体に指一本触れてこないのだ。そんな現状を打開するため、夫婦は二人切りで別荘へとやって来る。いつもと違う非日常な空間で、夫の趣向に添ったプレイをすればあの頃の情熱を取り戻せるかもしれない――。大きなダブルベッドへとジェシーを寝かせたジェラルドは、おもむろに二つの手錠を取り出す。そして、彼女の両手首をベッドのコーナーポストへと拘束するのだった。「ほら、これでいくら叫ぼうと誰も助けになんか来ないぞ」。服を脱ぎ、バイアグラも呑んだジェラルド。これから夫婦水入らずの楽しいひと時を過ごせるはずだった。だが、その直後にジェラルドは彼女の目の前で急な心臓発作を起こし、そのまま急死してしまうのだった。残されたのは、完全に自由を奪われた哀れなジェシーだけ。不安に苛まれ、パニックへと陥るジェシーを飢えや渇き、そして幻覚が襲い始める…。極限状況へと追い込まれた、ある一人の中年女性の恐怖を描いたシュチュエーション・スリラー。原作は、泣く子も黙るモダン・ホラーの大家スティーヴン・キング。元となった、分厚い文庫本は既読済み。なので、ストーリー展開をほとんど分かったうえで今回鑑賞してみました。内容的には、ベッドに拘束された彼女を死んだはずの夫やもう一人の自分という妄想が襲うというシンプルなもの。徹底的に無駄を削ぎ落し、極限の拘束状態の恐怖へと焦点を絞ったのは良かったと思うのですが、いかんせんこの妄想モードへと入るのが早すぎます!まずは飢餓感や孤独感で彼女を徐々に追い込んでゆき、不安やストレスが極限まで高まったところで急に妄想人物たちが現れた方がより効果的だったはずなのに、どうしてこう拙速な展開にしちゃったんでしょう。ジェシーが幼いころに実の父親から性的虐待を受けていたというトラウマも最後までうまく処理しきれていません。致命的なのは、圧倒的にホラー描写が足りないこと。せっかく妄想と言うなんでもありな設定を採用しているのだから、もっと観客の度肝を抜くような、『シャイニング』ばりのショッキング描写があってしかるべき。結果的に出来上がったものは、ホラーとしては全く怖くないし、人間ドラマとしては非常に薄っぺらいし、スリラーとしては緊迫感の足りない、なんとも中途半端な作品でありました。ちなみに、原作の方もそんなに面白くなかったと記憶しております。
[インターネット(字幕)] 3点(2020-05-13 23:39:28)
16.  7月22日 《ネタバレ》 
2011年、7月22日。それはノルウェーの人々にとって、忘れられない悪夢の一日となった――。ネオナチに感化された一人の極右青年によって、凄惨極まりないテロが実行されたのだ。まず首相官邸の近くで車爆弾を爆発させた犯人は、現地の混乱を尻目にそのまま保養地として有名なウトヤ島に向かった。そこではちょうど労働党青年部によるキャンプが開催されており、多くの若者たちで賑わっていた。島に辿り着いた犯人は持っていた自動小銃を構えると何の躊躇いもなく、たまたまそこに居合わせただけの若者を次々と襲い始める。数十分にも及ぶ凶行の結果、77名もの何の罪もない市民が犠牲となるのだった…。本作は、そんな実際にあったテロ事件を背景にその日、その島でいったい何が起こったのか、犯人は何故そんな残虐な犯行を実行したのか、そして事件はノルウェーの人々にどのような影響を与えたのかを丹念に描いたものである。監督は臨場感あふれるリアルな作風で知られるポール・グリーングラス。かつて911同時多発テロで唯一自爆攻撃を阻止した旅客機の乗客たちを描いたこの監督らしく、冒頭のリアルなテロ描写には目を見張るものがある。全く躊躇することなく、目に付いた若者たちをただ淡々と銃殺し続けるこの犯人の底なしの狂気には戦慄させられるほかない。いったい何があれば、ここまでの憎しみを心に宿すことが出来るのだろう。物語はその後、この犯人の裁判の過程と彼を弁護することになった弁護士の心の葛藤、そして事件によって瀕死の重傷を負い一生消えない後遺症を負わされた青年のドラマを丁寧に描いてゆく。そこで炙りだされるのは、犯人の思想の脆弱性である。大言壮語なだけで中身は空っぽ、自身の不幸な境遇を全て社会のせいにして、テロを実行した自身を英雄視する気持ちの悪いナルシズム。見れば見るほど反吐が出そうになるこの犯人の薄っぺらい実像とは対照的に、次第に明らかとなる弁護士と生存者である青年のその信念の強さには心揺さぶられるものがある。特に最後、犯人の前で自らの想いを力強く述べる被害青年の言葉には思わず涙してしまった。「僕は生き残った。だから、生きる。仲間や家族のため、そして殺された親友たちのために」――。世界に蔓延する憎しみの連鎖はこれからも続いてゆくのだろう。不寛容の精神は、これからも人々の心に壁を築き続けるのだろう。だが、彼のような言葉があればこの世界に絶望することなく生きていける。そう思わせずにはいられない、切実な希望に満ちた秀作であった。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-05-07 01:44:10)
17.  6アンダーグラウンド 《ネタバレ》 
ゴーストたちはお互いの名前すら知らない――。自らの存在を死んだものとして表舞台から消し去り、裏の世界で暗躍する6人のプロフェッショナル集団。その目的は、法で裁けぬ巨悪を人知れず打ち倒すこと。彼らは安全のために、それぞれの詳しい経歴はおろか名前すら知らず、お互いを数字で呼び合っていた。皆のリーダーで億万長者のワン、諜報活動の専門家で元CIA職員のトゥー、銃器のプロフェッショナルで遠く離れた目標でも一撃必殺のヒットマン・スリー、超人的な身体能力でどんなに高いビルでも素手で昇ってゆく通称スカイウォーカー・フォー、医学の専門家でいくら危険な現場でも仲間の命を救うために最善を尽くすドクターのファイブ、そこに道があればその超絶ドライビング・テクニックで何処までも逃げとおすドライバーのシックス。彼らの今回の任務は、東アジアの小国で独裁者として猛威を振るう大統領を失脚させること。だが、作戦の途中でドライバーのシックスが帰らぬ人となった。それでも目的を諦めるわけにはいかない。新たな仲間候補として元軍人に目を付けたワンだったが……。自らの正義のために、世界で暗躍するプロフェッショナルたちの活躍を怒涛のような勢いで描くアクション・エンタメ。監督を務めるのはこの分野の巨匠?マイケル・ベイ。冒頭の激しいカーチェイスから文字通りノンストップで最後まで突っ走る、もういかにも彼らしい脳筋映画のそんな本作。まあ観る前からおおよそ分かってはいましたが、それでもさすがにこれは中身スカスカ過ぎちゃいまっか。ストーリーなんてあってなきが如し、登場人物も潔いくらいステレオタイプ(だって名前すらないんですから!笑)で、ただひたすらアクションに次ぐアクション。だいたいこんなことを言うのは野暮かもしれませんけど、独裁者の弟で民主化リーダーのあの薄っぺらい演説だけで国の体制を変えるようなクーデターが起こるなんてあり得ませんて!!あまりにも大味すぎて、最後の方はもういいから早く終わってくれーー!!と半ば呆れながら観てましたわ。まあこればっかりは好みの問題と言ってしまえばそれまでなんだろうけど、僕はもうちょっと中身のある映画が観たいっす。お金を存分に掛けたであろう冒頭のカーチェイス・シーンだけはさすがの迫力だったので、+1点!
[インターネット(字幕)] 5点(2020-05-02 00:46:24)(良:1票)
18.  ショート・ターム 《ネタバレ》 
ショート・ターム12――。それは、短期滞在型の児童福祉施設だ。そこでは、家庭に問題を抱えた様々な子供たちが暮らしている。育児放棄や児童虐待、家庭内暴力や貧困などそれぞれに深刻な問題を背負った子供たち。彼らの世話や健康管理を担当する施設職員グレイスは、そんな子供たちが日々巻き起こす問題に忙殺されていた。彼らの切実な思いに満足に応えられないというジレンマに悩むグレイス。彼女の唯一の心の支えとなっているのは、同僚で一緒に暮らしている恋人メイソンの存在だった。そんなある日、グレイスに予期せぬ妊娠が発覚する。だがグレイスは、素直に喜ぶことが出来ない。何故なら彼女自身もまた、幼いころ実の父親に虐待を受けていたというトラウマを抱えていたから。そこに同じく父親から虐待を受けていると思しき女の子、ジェイデンがやってきて…。小さな児童福祉施設を舞台に、そこに暮らす様々な子供たちや職員たちの心の葛藤を描いたヒューマン・ドラマ。自傷行為やドラッグ、衝動的な暴力や精神疾患等々、ここで取り上げられる子供たちの実態はかなり深刻で、ともすれば非常に暗い作品になりそうなのだが、そうさせない魅力がこの作品にはある。きっとそれは、登場人物誰一人として希望を失っていないところだろう。親からの虐待やネグレクト、中には実の父親からの性的虐待などと言う心が挫けそうになる深刻な事態に陥りながらも、それでも彼らは明日を見つめることを止めない。それはグレイスをはじめとする施設職員も同じで、ここで暮らす誰もが時に反発しあいながらも絶えず前を向こうと努力している。そんな彼らを、この監督はまるでこの施設に一緒に暮らしている一員かのような目線で見つめている。物語の進行とともに、観客はいつしか彼らの仲間の一人となっているかのような感覚に陥ってくるのだ。この監督の豊かな才能のなせる技なのだろう。主人公を演じたブリー・ラーソンもそんなトラウマに悩む施設職員を等身大に演じていて、とても魅力的だった。彼女と父から虐待を受ける少女ジェイデンとの間に芽生える友情には心揺さぶられるものがある。特にジェイデンが創作した童話「友達のサメのために足を差し出すタコ」という哀しいお話に、彼女がじっと耳を傾けるシーンには思わず涙してしまった。この世は辛く悲惨なことばかりだけど、それでも前を向いて生きていこう。自分のことを理解してくれる仲間のために――。そう思わずにはいられない、とても優れた物語だった。
[DVD(字幕)] 8点(2020-04-23 00:01:10)
19.  ジョーカー 《ネタバレ》 
悪と狂気のカリスマ、ジョーカー。この稀代のアンチ・ヒーロー誕生の物語をダークかつ濃厚に描いた、ある意味昨年一番の話題作。ここまで反社会的な内容でありながら、あれだけ話題になるだけあって、確かにこの全体的な完成度の高さはピカイチでした。脚本、映像、構成とどれをとっても素晴らしい出来なのですが、やはりなんと言ってもジョーカーを演じたホアキン・フェニックスの鬼気迫る役作りには圧倒されました。「こ、こいつ、本当に狂ってる!」としか思えない聞きしに勝る迫力で、その存在感は往年のヒース・レジャーにも匹敵するほど。彼の存在無くしてはこの作品はあり得なかったかも知れないですね。肝心の内容の方も、善悪の彼岸を扱った非常に哲学的かつ深淵な物語でこれまた他に類を見ない唯一無二のもの。果たして、人間の本質とは悪なのか――。ロシアの文豪ドストエフスキーのいくつかの小説にも通ずるこの深甚なるテーマは、単なるエンタメ映画の枠を超えた普遍性さえ有していたと思います。世界から疎外され、多くの人々を妬み、ただ身近な人に愛されたかっただけなのに逆に傷つけられ、そして絶望のあまり社会の道徳や倫理を超越しようともがく一人の男。彼の狂気性や異常さを充分に理解していながら、それでもいつの間にか彼のことを応援してしまっている自分が居ました。最後のテレビ番組のシーンなんか、「やれ!早く、やっちまえ!ジョーカー!」と心の奥底で念じていた自分に思わずハッとしてしまった。世に現れたばかりのヒットラーを誰もが最初支持していたことを思うと、やはり人は狂気に惹き付けられる弱い生き物なのだと改めて自戒とともに思わされました。社会の常識と呼ばれるものを嘲笑うかのように、自らが生み出した“正装”で階段を降りてくるジョーカーの洗練された美しさがいつまでも頭から離れそうにありません。自分の中にも脈々と受け継がれているだろう「悪」と対峙する覚悟があるなら、この狂気の物語、多くの方に是非じっくりと味わってもらいたい。
[DVD(字幕)] 9点(2020-02-01 23:01:06)(良:1票)
20.  シンプル・フェイバー 《ネタバレ》 
それは本当に“ちょっとしたお願い(シンプル・フェイバー)”だった――。数年前に夫を事故で亡くしたものの、遺された保険金で一人息子を育てるシングル・マザー、ステファニー。ある日、華やかなファッション業界でバリバリと働くママ友のエミリーから、彼女はちょっとしたお願いを受ける。自分の息子と同じ保育園に通うエミリーの息子を自宅まで送り届けて欲しいというのだ。夫はベストセラー作家、常に完璧なファッションを着こなし、昼間から強いマティーニを嗜むことを日課にしているという、エミリー。自分とは全く正反対の彼女だったが、何故か意気投合し今や親友と言っても過言ではない関係を築き上げていたステファニーは、もちろん気軽にオーケーするのだった。だが、いつまで経ってもエミリーが帰ってくる気配はなかった。二日、三日と時間が過ぎても一向に連絡はなく、勤務先に連絡しても今は出張中だとしか教えてくれない。業を煮やしたステファニーは、警察に通報するも、彼女独自に捜査を開始する。浮かび上がってきたのは、完璧な彼女に隠された驚きの真実だった。やがて、エミリーに多額の保険金が掛けられていたことが判明し、ステファニーにも疑惑の目が向けられてしまう…。平凡なシングル・マザーと都会で洗練された生活を送るセレブ妻、そんな正反対の女性たちに隠された驚愕の真実をスタイリッシュに描いたミステリー。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、なかなかの掘り出し物でしたね、これ。まあ完全に欲求不満気味のマダム向けの作品ではありましたけれど(笑)、優れた脚本の力とサクサク進むテンポの良さ、華やかな映像とノリのいい音楽とで最後まで飽きさせずに魅せたこの監督のセンスはなかなかのものだと思います。正反対の主人公を演じたそれぞれの女優たちもけっこうな嵌まり具合で大変グッド。特におてんば主婦探偵を演じたアナ・ケンドリックは、彼女の等身大の魅力が炸裂してて大変キュートでした。ときおり挿入される彼女のブログも普通に人気出そうですし、またこのブログのメッセージがのちのち意外な方向で効いてくるのもやられたぁって感じでしたね。肝心のことの真相がかなり強引で力技で押し切られた感はありましたけれど、これもまあ許容範囲内。終始気軽に楽しめる、いわば『ゴーン・ガール』のライト版とも言うべき本作、エンタメ映画として僕は充分楽しめました。うん、7点!
[DVD(字幕)] 7点(2019-10-11 01:01:15)(良:1票)
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