81. インフェルノ(1980)
《ネタバレ》 アルジェントの魔女三部作のひとつ。「三母神」をめぐる怪異譚だが、本作はニューヨークの魔女篇(ちなみに、ドイツの魔女は『サスペリア』、ローマの魔女は最新作『サスペリア・テルザ』で描かれている)。甘い匂いに誘われて地下室へと入り込んでいく序盤のシークエンスや、ホットドッグ屋の謎の行動など見所も多いが、全体的な印象としては劣化版『サスペリア』という感じ。「私は死神!」と言って骸骨の被り物で現れる魔女に拍子抜け(笑)キース・エマーソンの楽曲とマリオ・バーバの特殊美術が素晴らしい。 [DVD(字幕)] 5点(2012-08-16 06:44:06) |
82. ダークナイト ライジング
《ネタバレ》 完結篇として申し分ない出来だろう。3時間弱の長尺なので、途中で少し眠気が差したが、クライマックスのあまりのハイテンションぶりに目を見張った。核爆弾というのが今の日本人にとっては他人事ではなく、実際に福島の原発で作業にあたっていたり、放射能汚染から逃れて疎開してきた住民たちのことを思うと、本作での外界から隔絶されたゴッサムシティと、そこで勇敢に戦う人々を見るにつれ胸が熱くなる。前作に比べ悪役に華がないのが難点だが、アン・ハサウェイのセクシーなキャットウーマンと、「三作連続出場おめでとう!」のキリアン・マーフィ(スケアクロウ)に思わず頬が緩んでしまう。 [映画館(字幕)] 8点(2012-08-04 23:27:23) |
83. エクスペンダブルズ
《ネタバレ》 ビバ!80年代!なオールドスクールのアクション映画。スタローンの鶴の一声で集ったアクションスターの面々に熱くならない奴はいないだろう。ブルース兄とシュワちゃんは完全に友情出演、ミッキー・ロークも何しに出てきたんだかよく分からない(が、多分スライと個人的に仲良しなんだろうね)。現在のB級アクション界を邁進するジェイソン・ステイサム、世界最速のカンフーアクター、ジェット・リー、そして『ロッキー4』のドラゴことドルフ・ラングレン!わーお!それぞれにきちんと見せ場を用意しており、自虐ネタで笑いを取ったりと、意外と細かな気配りができるスタローン。銃のリロードも意外なほど速く、「頑張って練習しました!」感が何とも微笑ましい(マッチョな男が小さいハンドガンを撃つ様は何気に格好良い)。『ランボー/最後の戦場』から悲壮感をごっそり抜いて、バカ・アクションに徹した潔い作りに胸が熱くなる。続編にも期待! [映画館(字幕)] 7点(2012-08-04 07:41:12) |
84. ダークナイト(2008)
《ネタバレ》 ジャック・ニコルソンのジョーカーも好きだが、故ヒース・レジャーは映画の悪役史に新たなページを刻んだと言えよう。ジョーカー自身は小悪党に過ぎないのだが、精神のタガが完全に外れ切っているという一点においてのみ他を圧倒的に凌駕しており、〈もうひとりのバットマン〉として狂人街道を邁進する。自身も狂人スレスレでありながら、頑なに一線を超えるのを拒否するバットマンとの精神的なバトルが見所。囚人と一般人、正義の人と愛する人、善と悪、正常と異常、愛と死、ここでは常に相反する二者(コインの裏表)があり、そのどちらかを選ばなければならないという究極の選択に迫られる。単なるアメコミ映画と侮るなかれ。これぞ映画だ。 [映画館(字幕)] 9点(2012-08-04 07:20:00)(良:1票) |
85. インモータルズ/神々の戦い
《ネタバレ》 内容的に『タイタンの戦い』と被りまくっている上、ストーリー性のなさはどっこいどっこい、要は「怪獣映画」か「戦争映画」かの違いかね。しかし、本作ではターセム監督特有の美意識が炸裂しており、戦闘シーンも非常に美しい。神々が人間界に降りて来る時の格好良さったらない。しかし、役者さんはミッキー・ローク以外ほとんど知らない人たちなので、主人公の影も薄く、神様たちも「誰それ?」って感じ(神様としての威厳が感じられないんだよね。すぐ死ぬし)。さすがにリーアム・ニーソンとかレイフ・ファインズ級の役者は起用できなかったか。アテナとか有名な神々がいとも呆気なく死んじゃうのにはビックリした。 [DVD(字幕)] 6点(2012-07-26 22:39:43)(良:1票) |
86. ザ・ドライバー
《ネタバレ》 この頃のウォルター・ヒルはマジで格好良いな~!カーペンターの『要塞警察』にも通じるクールな傑作。一度も笑わないライアン・オニールと、謎の女イザベル・アジャーニ、そしてそれを追う刑事ブルース・ダーン。カーチェイスシーンも、CGなんかない時代なので、生の迫力を味わえる。ヒップホップなど余計なBGMもなく、車のエンジン音とタイヤの軋み音、そして遠くから聞こえるパトカーのサイレン音のみと言う、実にシンプルな構成。やたらと派手な爆破シーンとかありえね~アクションとかもない。ないない尽くしで贅肉を極端に削ぎ落としたストイックな作りが最高。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-23 21:56:14)(良:1票) |
87. オーバー・ザ・トップ
《ネタバレ》 『リアル・スティール』を観ていたら、あまりにも内容が似ていたので久し振りに観たくなった。スタローンと言えば『ロッキー』や『ランボー』よりも、何故か本作に思い入れがある。アームレスリング大会なんて地味な内容ながら、結構熱くなれるし、父と子の絆の物語がストレートながらも泣けてしまう。最近の映画みたいにやたらと銃をぶっ放したり、殴り合いになったりしないのも良い(コンボイで屋敷に突っ込んだりはするが…)。対戦相手も人間だかゴリラだか分からないような筋肉バカばかりだが、別に汚い手を使うわけでもなく、意外とスポーツマンシップに則っているようだ。ところで久し振りに本作を観ていて思ったのが、ドラマ「北の国から」との共通点だ。都会で育ったもやしっ子を引き取り、北海道の大自然の中で生活する父と子の物語。よく見れば、スタローンの垂れ目と半開きの口なんて、どことなく田中邦衛に似てたりして…(笑)日本人は、『チャンプ』とか『クレイマー、クレイマー』とかにも弱いから、本作が好きって人は意外と多いんじゃないかと思う。あ、もちろん子供の頃、腕相撲をする時には帽子を後ろに回したり、指を組み替えたりしましたよ。 [DVD(字幕)] 7点(2012-07-23 21:39:25) |
88. リアル・スティール
《ネタバレ》 おおまかなストーリーラインは『オーバー・ザ・トップ』&『ロッキー』のロボット・バージョンといったところで、予告編で観た通りの内容。しかし、このベタに徹した作りが、大人も子供も楽しめるエンターテインメント作としては大正解。CG技術の飛躍的な進歩により、「ロボット・ボクシング」なるSF的設定を何の違和感もなく映像に溶け込ませている。ヒュー・ジャックマン扮する父親は、お金で親権を売るような最低野郎だが、子供も負けてはなく、かなりのマセガキで父親と対等に渡り合う。最初は全く反りの合わなかった二人が、「ATOM」という名のスクラップ同然のロボットと出会い、ロボット・ボクシングの試合を通じて絆を深めていく(製作者はかなりの日本のロボットアニメのファンなのだろう)。ひとつ気になったのは、亡くなった母親のことがほとんどスルーされている点。「いいママだった」などと台詞では言っているが、もうちょっとストーリーに絡めても良かったのではないか?また、今後の父子の暮らしがどうなったかが気になる。 [DVD(吹替)] 7点(2012-07-23 21:22:34) |
89. デビルスピーク
《ネタバレ》 クリント・ハワード!クリント・ハワード!!スタンリー・クーパースミスってメチャ格好良い名前だぜ!男版『キャリー』なんて言われてるけど、実際にはそんなに面白くも何ともない。ただ、クライマックスの大虐殺だけは何度も巻き戻して観てしまうほどの迫力に満ちている。首チョンパ、脳天カチ割り、心臓抉り出し、黒豚による人肉喰いと、これまでの鬱憤を晴らすかのような鬼畜大宴会。80年代を代表する、カルト・スプラッターの傑作。祝・DVD化(しかも日本語吹き替え付きです)! [DVD(吹替)] 8点(2012-07-15 09:05:19)(笑:1票) |
90. 発情アニマル
興味本位で観てしまったが、たぶんもう二度と観ないだろう。こういう作品に中途半端な点数をつけるのは逆に失礼だと思うので、3点を献上する(しかし、『発情アニマル』って邦題はスゴイな!)。 [DVD(字幕)] 3点(2012-07-15 08:20:26) |
91. ゾンビ処刑人
《ネタバレ》 タイトルからして、『ゾンビコップ』×『処刑人』みたいな作品かと想像していたが、これ、ゾンビというより吸血鬼じゃない?人肉じゃなく血液を欲しがっているし、字幕ではゾンビとなってたけど、英語で「ヴァンパイア」って言ってたような…。 [DVD(字幕)] 5点(2012-07-15 08:15:38) |
92. 50/50 フィフティ・フィフティ(2011)
《ネタバレ》 27歳の若さで癌を宣告された青年と周囲の人々の狂騒を描いたヒューマン・コメディ。難病ものって、最後に主人公が死んで感動を押し付けるってパターンが多いけれど、本作はそんな難病映画へのアンチテーゼとして、病気を明るく笑い飛ばす。コメディと言っても下品になりすぎることなく、真摯に癌患者を描いているのだが、必要以上に深刻になったり、「生きてるって素晴らしい!」などと当たり前のメッセージを発したりはしない。現代的なリアリティをもって、癌との〈お付き合い〉を等身大に描いているのだ。人が死ねば泣けると思っているバカな日本映画にも見習って欲しいものだ。キャストは全員素晴らしいが、新米セラピスト役のアナ・ケンドリックが、『マイレージ・マイライフ』に続き好演している。 [DVD(吹替)] 7点(2012-07-15 06:59:30)(良:2票) |
93. ヤング≒アダルト
《ネタバレ》 シャーリーズ・セロンってほんとにキレイな女優さんなのだが、本作では性格の歪みがその顔に滲み出ている。彼女の演技力の賜物か、メイキャップのなせる業か、とにかく「この人は相当病んでるな…」と一目で分かる彼女の顔。しかし彼女は暴走を止めない。妻子ある元カレをゲットしようと毎日エステに通い、ブティックを巡る。しかし、冒頭で繰り返し聴いていた彼との思い出の曲が、いつの間にか彼とその妻のラブソングになってしまっている切なさ。彼女は孤独のあまり、バカな片思いに走ってしまったのか。彼女を見ていると、『キング・オブ・コメディ』のロバート・デ・ニーロを思い出す。思い込みが激しすぎて周りが全く見えていない。しかし、この映画の凄いところは、最終的に彼女を〈悪者〉として裁くことを断固として拒否している点だ。自分を殺してまで周りに合わせる必要なんてない。そこには常に孤独が付きまとうが、もっとハードボイルドにタフであれ!という力強いメッセージを感じる。 [DVD(吹替)] 7点(2012-07-15 06:33:45) |
94. シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム
《ネタバレ》 モリアーティ教授との戦いということで、原作の「最後の事件」にあたる内容だとすぐに思い至らなかったのは不覚の極みで、ラストのライヘンバッハの滝でのシーンは涙が出た(最初の方でマイクロフトがライヘンバッハのことを話していたが、二度観るまで全然気付かなかった)。迷彩服や酸素吸入器などが伏線になっているのも嬉しい。モリアーティ教授はいまいち迫力不足だが、相変わらずホームズとワトソンのコンビは(BLっぽい感じも含めて)最高。スローモーションを多用したアクションシーンは確かにスタイリッシュで格好良いが、何度もやられると流石に飽きる。モラン大佐も生きているようだし、次回は「空き家の怪事件」か?アイリーン・アドラーは復活するのか? [映画館(字幕)] 7点(2012-07-12 22:31:04) |
95. 2000人の狂人
《ネタバレ》 どこからどう見てもチープでいかがわしいだけのこの映画が大好きだ。大岩転がしの岩は発砲スチロールを茶色く塗っただけだし、斧でぶった斬られた女性の腕は明らかにただのマネキンだし、エキストラはみんな素人丸出し。しかし、この朴訥とした雰囲気が逆に妙な怖さを醸し出しており(脳天気なバンジョーの響きも最高!)、ただのC級映画では終わらせない何かがある。被害者よりも加害者の数が圧倒的に多いという不条理。老いも若きも嬉々として殺人に参加する異常さが実によく出ていてる(2000人って言ってるけど、実際には40~50人くらいしか画面に映っていない)。ハーシェル・ゴードン・ルイスの作品は『血の祝祭日』と『血の魔術師』も観たが、本作が最高傑作だろう。 [DVD(字幕)] 9点(2012-07-01 07:23:17) |
96. アメイジング・スパイダーマン
《ネタバレ》 サム・ライミ監督の旧3部作からあまり間を置かずに新シリーズが製作されたことに違和感を感じずにはいられないが、期待していた以上の出来である。まずスパイダーマンのCGアクションはサム・ライミ版よりもかなりスムーズになっており、<アトラクション映画>としての側面が増している(3Dで観たら車酔いしそう)。ストーリーやキャラクター設定はより現代的に変更されており、特に主人公のピーターが親譲りの才能と今風の感性を併せ持った若者像として、ライミ版のピーター(80年代っぽいキャラ)とは随分印象が変わっている。ベン叔父さんは本作でも早々に退場してしまうが、ヒロインの父親までも死んでしまうのは少し乱暴な気がする。シリーズ化するつもりなら、今後もいろいろな形で絡めるキャラクターだっただけに、残念。 [映画館(字幕)] 7点(2012-06-30 19:16:11)(良:2票) |
97. ブラックホーク・ダウン
《ネタバレ》 よく「アメリカ万歳映画だ」という批判を聞くけれど、これを観てどうしたらそのような感想を抱くのだろう?そもそもこのソマリアでの軍事作戦自体が失敗だったわけで、自国からも多数の犠牲者を出し、1000人もの現地人を殺戮する羽目になってしまったのに、「アメリカ最高!」って思うアホがどこにいる?オリバー・ストーンの諸作のように声高に反戦を謳っているものではないが、これまで誰も観たことがないほどリアルな〈戦場体験〉をさせてくれる本作は、これまでのどの戦争映画よりも〈誠実に〉戦争の真実を描いていると思う。その最たるものは、「負傷者の救助に行け!」と命令され、ろくなナビもなく迷路のような街路をぐるぐる回りながら敵の集中砲火を浴びてしまう車輌部隊。会議室でふんぞりかえって、現場を無視したバカげた命令を出す上司って、どこの会社にもいるよね。それでも、「仲間のため」と言って、ヘリパイロットの救助に向かう二人の兵士は涙もの。ラストのフート(エリック・バナ)の言い分は詭弁かも知れないけれど、「そうでも思わなきゃやってられないよ」という現実でもあると思う。この映画が作られてから10年経つが、これを超える戦争映画は観たことがない。 [映画館(字幕)] 10点(2012-06-23 19:37:43)(良:1票) |
98. マルホランド・ドライブ
《ネタバレ》 細かい辻褄合わせをしようと思ったら、〈完全解読サイト〉にでも頼るしかないだろうが、おおまかなストーリーは理解できた。シレンシア劇場で発見したブルーボックスに吸い込まれるまでが、ダイアン(ナオミ・ワッツ)が死後(あるいは死ぬ直前に)見た「夢」。カウボーイに「起きる時間だ」と言われて目覚めてからが、「現実」。ただ、この映画はそもそもTVシリーズとして企画されていたものが頓挫し、急遽劇場公開することになったものなので、後半の「現実」部分は途中から付け足したもののようだ。しかしそんな不完全な状態からこんな物凄い作品を作ってしまうリンチの才能には感嘆させられる。また、本作で一気にブレイクしたナオミ・ワッツという女優を発見した功績も大きい(前半のベティと後半のダイアンを演じているのが同じ人だと気付かなかった人もいるくらい)。『ロスト・ハイウェイ』は何度観てもすっきりしないが、本作はラストの切なさにいつも泣きそうになる。 [映画館(字幕)] 9点(2012-06-23 19:06:08) |
99. ランボー/最後の戦場
《ネタバレ》 実際の戦闘では、女性や子供だって無差別に殺されるだろうし、銃弾を浴びれば、手足が吹っ飛び、さっきまで逃げ回っていた人たちが一瞬でただの肉片と化すだろう。『プライベート・ライアン』以降、戦争映画は残虐な描写をエスカレートさせてきたが、これはその到達点と言えるだろう。ハリウッドの不文律として、これまで幼い子供が殺されるシーンをダイレクトに映すことはなかったが、この映画では、臆することなく、戦争の残酷な側面を描いている。ミャンマー軍の圧倒的な暴力に対して、更なる暴力で対抗するランボーの「これが現実だ!」という心の叫びが痛いほど伝わってくる。敵を倒しても爽快感の欠片もない、身震いするほど凄まじい戦争映画の傑作。これだけ濃密な内容ながら、90分というタイトな上映時間。スタローンはまだまだイケる。 [映画館(字幕)] 9点(2012-06-22 21:50:02) |
100. イレイザーヘッド
《ネタバレ》 よく難解だとか言われるけど、これってほとんどリンチ監督の実体験だよね。フィラデルフィアの陰鬱な光景とか、予期せぬ恋人の妊娠と結婚とか、若くして父親になることの不安と苦悩があのようなビジュアルを作り出したのだろう。実際リンチにはあのように見えていたのかもしれない。恋人の実家に行って相手の両親と会う時なんて、大体あんな感じだと思う(かなりカリカチュアされてはいるが)。また、男は自分で子供を産むことが出来ないから、赤ちゃんに対して潜在的な恐怖がある。リンチがここまで自分に正直に映画を作ったことに(製作に4年もかけている!)、何だかホッとさせられた。しかし、こんなカルト映画が一般の人たちの目に触れ、ここまで支持?されているのって、物凄く幸福なことだと思う。同じカルト映画の『エル・トポ』なんかと比べても、レビュー数が半端ないもの。 [DVD(字幕)] 9点(2012-06-22 21:40:04)(良:1票) |