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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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141.  なんちゃって家族 《ネタバレ》 
 こんなタイトルとあらすじである以上、結末は「なんちゃって家族が本物の家族になる」しか有り得ない訳ですが……  その予定調和っぷりも含めて、充分に楽しむ事が出来ましたね。   主人公一家となる四人は全員魅力的だったけど、自分としてはジェニファー・アニストン演じるローズのキャラが、特にお気に入り。  「本業はストリッパー」であり「なんちゃって妻」であり「なんちゃって母親」でもあるという、とても複雑な存在のはずなのに、非常にシンプルで女性的な魅力が伝わってくるんですよね。  ちょっと生活に疲れた感じとか、ストリップで生計を立てているけど売春はやらないという明確な線引きを行っている辺りとか、とても良かったと思います。   喧嘩ばかりしてた一家が歌を通じて仲良くなるっていうのも王道な魅力があるし、その一方で、スレた態度の「なんちゃって娘」が花火にはしゃぐ姿が可愛らしいとか、適度な意外性を与えてくれる場面があるのも、良いバランス。  息子の恋路を応援したり、娘の彼氏候補に質問責めしたりと、主人公とヒロインとが段々「父親」と「母親」らしくなっていく様も、実に微笑ましかったですね。  クライマックスにて、主人公が敵役の銃の前に立ち「家族」を守る為に立ち向かう姿にも、グッと来るものがありました。  ・冒頭で金を奪ったチンピラ連中に罰が当たらないまま終わるので、スッキリしない。 ・キャンピングカー好きとしては、主人公達が乗り込む際に車内がどんな構造なのかも映し出して欲しい。 ・「ビビった時は三つ数えてから実行しろ」っていう父から子への助言が、殆ど役に立たないまま終わるのは拍子抜け。   等々、欠点やら不満点やらも色々見つかるんだけど、まぁ御愛嬌。  ラストシーンにて、互いに愚痴りながら「家族」としての生活を続けてる姿で終わるっていうのも、良いまとめ方でしたね。  (そんなこと言って、本当は家族になれて嬉しいんだろう?)と、観終わった後にも口元が綻ぶような、後味爽やかな映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-08-26 07:29:26)(良:2票)
142.  ジャスト・マリッジ 《ネタバレ》 
「愛し合ってるだけで充分幸せだったのに、なんで俺達、結婚なんてしちまったんだろう?」  という台詞が印象的。   実家の経済格差やら何やらが原因となり、愛し合っていた新婚夫婦が破局を迎えそうになる話……と書くと、何やらシリアスな恋愛映画のようにも思えますが、基本的には「トラブル続きの新婚旅行」を面白可笑しく描く事に終始しており、リラックスして楽しむ事が出来ましたね。   旅行パートが始まる前の「二人の出会い」終わった後の「二人の和解」も非常にシンプルな描き方で、手短に纏めている辺りも好印象。  そこを長々やられるとダレてしまいそうだし、変に凝った内容にしたりせず、ラブコメ映画の王道的な「良くある出会い方」「良くある和解の仕方」にして時間短縮してみせたのは、正解だったんじゃないかなと思います。   それと、元々自分は主演のアシュトン・カッチャーが好きなので、そういう意味でも満足度は高めでしたね。  セクシーな美男子なのに、不思議と親しみやすい雰囲気があって「等身大の、どこにでもいそうな兄ちゃん」に思わせてくれるという彼の魅力が、如何無く発揮されており、自然と感情移入する事が出来ました。  妻が他の男とキスした現場を目撃し「落ち付け、俺に怒る権利は無い……」と自分に言い聞かせていたのに、いざ妻と会ったら「このアバズレ!」と我を忘れて怒鳴っちゃう場面なんかは、特に可笑しくって、お気に入り。  相方となるブリタニー・マーフィも、お嬢様ヒロインなサラを嫌味なく演じており、もし女性が観たら、自分がアシュトン・カッチャーに抱くのと同じような親近感を彼女に対して抱くのではないかな、と思えました。  ・主人公のトムがラジオ局で働いているって設定を活かし切れていない。 ・妻の「酔った勢いで一度だけ浮気した」という秘密に対し、夫の秘密が「飼い犬の死に責任がある」ってのは後者の方が酷くて、バランスが悪い。 ・英語を「アメリカ語」と言っちゃうとか「本場中国のカラテをマスターしてる」発言とかの国際的なギャグは、ちょっと微妙。   等々、不満点も多い映画なのですが……  それが然程気にならなかったのは「散々な新婚旅行だったけど、それでもやっぱり彼(彼女)が好き」という主人公達の気持ちと、映画を観ている自分との気持ちが、上手くシンクロしてくれたのが大きいんでしょうね。   観ている間は、物凄く面白かったという訳じゃないのに、今思い出すと「雪に埋もれた車から抜け出せた場面の爽快感が良かった」とか「飛行機の中で二人が痴話喧嘩を終えると同時に、機内の客が揃って拍手する場面が良かった」とか、そんな「良い思い出」ばかりが鮮明に蘇ってくるんだから、不思議なものです。  「サラを幸せにする為には、分厚い財布なんか必要無いんだ」と我が子を諭すトムの父親に、最初は「負け犬」呼ばわりしていたトムの事を何だかんだで認めてくれるサラの父親の存在なども、良い味出していましたね。  彼らを「夫側の家族の代表」「妻側の家族の代表」として分かり易く描き、二人の仲が家族からも認められ、祝福される事になるハッピーエンドに、最短距離で繋げてみせた辺りも、お見事でした。    そんな「分かり易さ」と「手短さ」を重視した結果なのか、ラストシーンは少しアッサリ気味に感じられ(もうちょっと長く「寄り添う二人の姿」を見たかったな)と思ったりもした訳だけど……  そんな風に思う時点で、自分はこの映画と、この映画の主人公達に魅了されちゃったって事なんでしょうね。   色んな不満もあったりするけれど、なんだかんだで好きな映画です。
[DVD(吹替)] 7点(2019-07-22 21:19:27)
143.  2番目に幸せなこと 《ネタバレ》 
 「ヒロインにはゲイの男友達がいる」というのはラブコメ映画のお約束ですが、本作はそんな「男友達」にスポットを当てて主人公として描いたという、とても珍しい映画。   前半は如何にも軽いノリのラブコメという作風であり、後半のシリアスな親権争いとのギャップが大きくて、その辺りが本作を「評価の分かれる映画」にしてしまった気がしますね。  主人公とヒロインだけでなく、血縁上の父親であるケヴィンまで乱入し、三つ巴の争いになった挙句に明確な結論を出さないまま終わってしまうというのは、とても褒められた事ではないと思います。  「完成度が低い映画」「作りが散漫な映画」という非難の声が上がるのも、至極もっともかと。   それでもなお、自分はこの映画が好きというか……もう本当に「良い映画じゃないか」って、しみじみ思えるくらいに感動しちゃったんですよね。  とにかく主人公が息子のサムを想う姿に胸を打たれて、裁判における「私は保護者なんかじゃない、父親だ」と主張する場面にも(その通りだ! 良く言った!)と拍手喝采したくなったくらい。  「本を読む時に逆さまにしたがる」「ローストビーストの日」などのキーワードを巧みに活用し、父子の絆を丁寧に描いている点も良かったです。    また、本作は今から二十年近く昔の映画なのですが、現在よりも同性愛者に対する風当たりが強かった時代である事が、分かり易く説明されている点なんかも良かったですね。  親権争いの際には「ゲイの父親の立場は弱い」と弁護士にもハッキリ言われちゃうし、葬式の際にも同性愛者は差別を受け、死者の望み通りの式にしてもらえないという場面なんかも、情感たっぷりに描いている。  そういった部分がキチンとしているからこそ、二十年後の今観ても、自然に映画の世界に入っていけたんじゃないかなって思えます。   主人公のロバートは男性的なマッチョマンなのですが、ヒロインの元カレを懲らしめる為、如何にも「オカマ」的な恰好をして彼の職場に押し掛け「彼とは男同士のカップルだった」と思わせ嫌がらせをするなど「同性愛への差別意識が今より強かった時代」だからこその際どいネタなんかもあり、そういう意味でも面白かったですね。  創作物においては、どうしても「差別は良くない」というメッセージだけに終始してしまいがちですが、本作においては「差別意識を逆手に取って復讐する」という場面が描かれている訳であり、凄く新鮮に感じられました。   悩める主人公に対し「子供を持つのは、世界一素敵な事」「だって私は、貴方を産んで本当に良かった」と言って応援してくれる母親の存在も良かったし、それまで不仲だった父親が、ロバートの為に裁判の資金援助を申し出る場面も、凄く感動的でしたね。  本作には「父子の絆に血縁なんて関係無い」という主張が込められている訳だけど、その一方で、実の親子であるロバートと両親の絆も忘れずに描いておくというのは、凄くバランスが良いというか、作中の主張が歪んだものではない、真っ当なものだと感じさせる説得力があったと思います。   自分としては大いにロバート側に感情移入しちゃった訳だけど、ヒロインであるアビーの気持ちも(まぁ、分からないではない……)と思わせてくれた辺りも、嬉しかったですね。  ロバートが「息子の父親」ではあっても「自分の夫」ではない事を悲しむ気持ちが分かり易く描かれており、彼女を一方的に悪役と断じる事も出来ないという形。  弁護士が裁判に勝つ為、何とか有利な材料を集めようと「彼女は性的に淫ら? 情緒不安定?」などと問い掛けた際に、馬鹿正直に「そんな事は無い」と否定しちゃうロバートの姿など、この二人が「良い人間」「良い友達」であった事を示す場面が随所に挟まれているのも、映画に深みを与える効果があったんじゃないかと。   上述の通り、本作は裁判の結果を明かさないまま、親権の行方も不確かなまま、尻切れトンボな結末を迎える事になります。  それでも、ラストシーンにて、嬉しそうにロバートに抱き付くサムの笑顔と「パパは一人でいい」という台詞を考えれば(サムの父親は、間違い無くロバートだ。彼は立派な父親だ)と、そう断言したい気持ちになるんですね。  色々と投げっぱなしのまま終わってしまった、不親切な映画ではあるけれど「サムの本当の父親は誰なのか?」という命題については、きちんと答えを出してみせた、真摯な映画であったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2019-07-16 16:50:19)
144.  プリズン・サバイブ 《ネタバレ》 
 刑務所を舞台にした映画なのですが、囚人である主人公の目的が「脱獄」でも「無罪の証明」でもなく「無事に刑期を務め上げて出所する事」なのが珍しいですね。   子持ちの美女との結婚を控え、仕事も順風満帆だったのに、強盗への過剰防衛が原因で逮捕され、幸せな日々が一変してしまうという喪失感。  何とか刑務所での生活に順応し、あと四ヶ月で仮釈放という段階になって、更に六年の刑期を延長された際の絶望感。  どちらも丁寧に描かれており、主人公に自然と感情移入出来るよう作られていたと思います。   若い頃は細身の二枚目という印象の強かったヴァル・キルマーが、この作品では貫禄たっぷりの「先輩囚人」を演じている点なんかも良かったですね。  ルックスに頼らぬ確かな演技力を見せ付けており、二枚目俳優から性格俳優に転身した事を証明してくれたかのようで、感慨深いものがありました。  看守によって家族の写真を奪われても、家族の記憶だけは決して奪えないと話す件なんかは特に素晴らしく、本作の白眉ではなかろうか、と思えたくらいです。   そんな先輩囚人とは対照的に、最初に親切にしてくれて、所謂「相棒」ポジションになるかと思われた男が最低な奴だったりと、適度な意外性を盛り込んだ展開になっている辺りも良い。  刑務所では「白人と黒人」「看守と囚人」が争うのは当たり前だというルールを徹底的に描いた上で「白人の囚人」である主人公を「黒人の看守」が助ける場面をクライマックスに持ってきたのも、上手い構成だったと思います。   「悪徳看守も、我が子に対しては優しい父親であり、彼には彼なりに囚人を憎む理由がある」  「義理の母が主人公に冷たいのは、自分がシングルマザーとして苦労してきたがゆえに、娘に同じ苦労はさせたくないと考えているから」  などといった具合に、脇役の人物描写が丁寧であった辺りも、映画の質を高めていたんじゃないかと。   ただ、ヒロインである奥さんも働いているし、子供も一人だけなのに、たった一年くらいで家も車も売らなきゃいけないほど経済的に困窮するってのは……流石に、ちょっと不自然な気がしましたね。  この辺り、現代日本とは異なる社会だからこその展開なのかも知れませんが、もう少し説得力のある描き方をして欲しかったです。  あと、主人公と先輩囚人の「友情」の描き方も物足りなくて、ラストに「我が友」と呼んで終わるくらいなら、もうちょっと二人の絆というか「仲良くなっていく過程」を濃密に描いて欲しかったですね。  「主人公だけでなく、刑務所の外にいる妻も苦労している」「主人公と先輩囚人との友情」という、映画の根本に関わる部分の描写で物足りなさを感じてしまったのは、非常に残念。   「隠れた良作」という、映画オタクの心を刺激する一品なのですが、誰もが知る傑作ではなく、隠れた形になっているのも納得出来るような……  そんな一品でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2019-06-07 15:13:55)
145.  ある日モテ期がやってきた 《ネタバレ》 
 大前提となる「ヒロインのモリーは、誰もが完璧と認めるほどの美女である」って設定に対し(えっ? そうなの?)と思ってしまった事が痛かったですね。  彼女は勿論美人ではあるけど、いくらなんでも作中で絶賛され過ぎで違和感があったし(女友達のパティの方が美人じゃん)と思えたりもして、最後まで映画の世界に没頭出来なかった気がします。   「ホッケーに詳しくて、一緒に観戦して盛り上がれる」「笑顔で家事を手伝ってくれる」などの、内面的な魅力に関する描写は良かったですし、あまり容姿ばかり絶賛するような真似はせず「見た目は美人だし、中身はもっと良い女」的な描き方をしてくれていたら、もう少し自然に思えたかも知れませんね。  主人公の人の良さにモリーが惹かれていく描写も説得力あったし「キャラクターの内面の魅力」の方は確かに感じ取る事が出来ただけに、勿体無かったです。   あと、これは意図的にそうしたんでしょうけど、主人公の家族や元恋人の描写が酷くて、全然救いが無いんですよね。  「主人公の兄は意地悪だけど、なんだかんだで弟想いな一面もある」って描写があるだろうなと思ったのに、兄は最後まで意地悪なまま。  作中で散々「嫌な女」扱いされてるマーニーにも、少しはフォロー入るだろうなと思っていたのに「嫌な女」のまま。  最終的に主人公とヒロインは結ばれるんだけど、その辺の脇役の扱いが酷いせいで、どうもハッピーエンドを祝福する気持ちになれなかったです。   クライマックスとなるはずの「元恋人と家族に啖呵を切って、主人公が飛行機を降りようとする場面」でも、その後に「主人公は飛行機会社からの罰金を恐れて、結局は元の席に戻る」っていう恰好悪過ぎるオチが付くもんだから、これにもガッカリしちゃいましたね。  捻った展開にして笑いを取ろうとしたのかも知れませんが、そこは素直にスカッとさせて、観客にカタルシスを与える展開にして欲しかったです。   「周りから見て釣り合わないカップルのラブコメ」という、中々珍しいテーマの作品でしたし、観ていて退屈はしなかったのですが……  どうも「好きな映画」とは言い難い、作り手との壁を感じてしまうような一品でした。
[DVD(吹替)] 5点(2019-05-15 10:04:02)
146.  13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ 《ネタバレ》 
 これは……判断に困る一本ですね。   まず、面白いか否かで言えば面白いです。  音楽の使い方やカメラワークなども洗練されているし「夜中に二人きりでブランコを漕ぐ場面」など、ロマンティックな要素もしっかり備えているしで、ラブコメ映画としてのクオリティは高かったと思います。   でも、脚本に納得がいかないというか……ハッピーエンドなんだけど(本当にハッピーエンドで終わって良いのか?)っていう疑問符が浮かんできちゃったんですよね。  ラストにて、主人公のジェナは「悲惨な三十歳」の世界から「可能性に満ちた十三歳」の世界に戻り、親友のマットと結婚して「幸せな三十歳」になる事に成功する。  けれど「悲惨な三十歳」の世界でも、ジェナとマットには恋人がいた訳で……彼ら二人が完全に放ったらかしなのが、どうも落ち着かない。  彼らが「嫌な奴」だったとか、彼らのせいでジェナ達は不幸になるとか、別にそういう訳でも無かったので(あの二人が可哀想だなぁ……)と思えちゃって、結婚した主人公達を素直に祝福出来なかったんです。   そもそも、本作において自分が一番好きなのは「過去に戻ってやり直したいと訴える主人公に対し、母親が優しく諭す」場面であっただけに、あのラストには本当にガッカリしちゃったんですよね。   「沢山の間違いを犯してきたけど、一つも後悔はしていない」  「間違いを犯さなきゃ、それを正す術も学べなかった」   という母の台詞は本当に良かったですし、主人公も「今の自分」を受け入れて、そこから前に進む話になるんじゃないかと予想していたんですが……  観賞後は(結局、元に戻ってやり直すのかよ!)とツッコむしか無かったです。  ストーリー上、元いた十三歳の世界に戻るのは止むを得ないにしても、そこはせめて三十歳の世界である程度の決着を付けてから戻るべきなんじゃないかと。   他にも「主人公が三十歳になりたがる動機が弱い」「同僚の旦那と不倫していたんだから、その事を謝罪する場面も欲しかった」とか、細かい不満点も多いんですよね。  マットに酷い態度を取るシーンなどが原因で、序盤から主人公に感情移入しきれなかったのも痛かったです。   十三歳のベッキーと友達になってパジャマパーティーを開いたり、十代の男の子にときめいて誘ってみせたりと「見た目は三十歳だが、中身は十三歳」という設定ならではの面白さを感じる場面が、ちゃんとあった事。  見た目が冴えなくて、ラブコメの彼氏役にしては華が無いマットを、ちゃんと魅力的に描いている事など、要点は押さえた作りになっているだけに、勿体無かったですね。   面白いし、楽しい映画ではあるんですが、それ以上に色んなモヤモヤが残ってしまう映画でありました。
[DVD(吹替)] 5点(2019-05-10 08:01:16)(良:2票)
147.  サバイバル・ソルジャー 《ネタバレ》 
 虎に襲われる場面にて(これはもしや、ヴァン・ダムは序盤で退場して出て来なくなるパターンなのでは?)と危惧しちゃいましたが、そんな事は無くて一安心。  鮮やかな蹴りを披露してボスキャラを倒してくれるサービスシーンもありましたし「ヴァン・ダムは主演じゃないけど、彼のファンも満足出来るように作ってあるよ」という制作側の配慮が感じられましたね。   でも、映画自体は色々と粗が目立つというか……正直、観ていて退屈する時間の方が長かったです。  大人版「蠅の王」といった趣のストーリーなのですが「登場人物を子供から大人に置き換えたからこその魅力」のような物が全く感じられず、本当に舞台設定やプロットを拝借しただけって形なのが、如何にも寂しい。  「地獄の黙示録」や「コマンドー」をパロった場面でも、どうもテンションが上がらなくて「独自の魅力を打ち出せないから、他の作品の真似をしてみただけ」とすら思えたくらいです。   敢えて言うなら「会社では冴えない主人公が、無人島で活躍して同僚を見返してみせる」というカタルシスが本作独自の魅力なのかも知れませんが、その辺りも上手くやれてなかった気がするんですよね。  「日頃はダメ人間扱いされている主人公だけど、実は凄い奴だった」とは思えなくて、敵役になる同僚のフィルが無能で酷い奴だから、相対的にマシに見えるだけって感じなんです。  こういう「ダメ人間にとって都合の良い妄想映画」的なストーリーは自分も好きなんだけど、それだけに上手くやって欲しいというか……  (ダメ人間の自分から見ても、これは都合が良過ぎて嘘っぽいよ)と思えてしまったんだから、かなり辛かったです。  これなら「実は凄い奴だった」パターンじゃなくて「不器用ながらも無人島で頑張って成長し、周りに認められるようになる主人公」ってパターンの方が、もっと感情移入出来た気がしますね。   あと、これは我ながら贔屓目が過ぎると思うんですが、道化役を演じるヴァン・ダムが「恰好良い」「頼もしい」ってオーラを隠し切れていなかった事も、映画としてはマイナスポイントかも。  そんなヴァン・ダムを差し置いて、スター性に乏しいルックスの主人公が「恰好良くて、頼もしい存在」として描かれているもんだから、余計に説得力が薄れるし、胡散臭いキャラクターに思えちゃったんですよね。  本作はヴァン・ダムの出演が売りの映画なんでしょうけど、どちらかというと彼がいない方が完成度は高まったんじゃないかな、って気がしました。   ラストにて、フィルの偶像に火を放って救援の狼煙を上げる件は中々良かったし、詐欺師として逮捕される間際「刑務所宛てに手紙を書いて、面会にも来て欲しい」と主人公に頼みつつ敬礼して別れるヴァン・ダムはやっぱり良い味出していたしで、好きな場面も色々あるんですけどね。  「ヴァン・ダム出演映画は、一通りチェックしておきたい」という熱心なヴァン・ダム好きなら、ある程度は満足出来るかも知れませんが……  自分としてはオススメし難い、物足りない映画でした。
[DVD(吹替)] 4点(2019-05-02 23:03:51)
148.  スーパーバッド 童貞ウォーズ 《ネタバレ》 
 これは友情ではなく、愛情を描いた映画ですよね。   同性愛の一歩手前というか、とにかく仲が良過ぎて単なる友情では片付けられない二人の絆を描いたストーリーなんだけど、青春映画としても綺麗に纏まっており、非常に観易く仕上がっている。  特に「卒業祝いのパーティーに必要なお酒を集める為、奔走する主人公達」というプロットは王道な魅力があり、誰が観ても楽しめるんじゃないかな、って思えました。   ただ、自分としては「イケてる男子や美女が集うパーティー」なんかより、冒頭にて回想される「冴えない男友達同士で馬鹿やってる土曜の夜」の方が、よっぽど楽しそうに感じられたのですが……  多分これ、意図的にそう描いていますよね。  ラストシーンにて、念願叶って美女と上手くいきそうなのに、どこか寂し気に親友を見つめている主人公セスの姿も、それを象徴している気がします。  憧れていた「美女とヤッちゃう事」「人気者が集まるパーティーに参加する事」なんかよりも、実際は「美女とヤリたいと親友相手に駄弁る日々」「パーティーには参加出来ず、内輪の友達だけで盛り上がる日々」の方が楽しかったんだと気付き、それでも「世間が認めるような一人前の男」になる為、楽しかった過去に別れを告げて、流れに任せるがまま大人になる。  そういう切なさ、子供時代からの卒業という寂寥感が「エスカレーターを挟んだ別れの場面」から伝わってきました。   序盤は、友達のフォーゲルの悪口ばかり言っているセスに共感出来ず(嫌な奴だなぁ……)とゲンナリさせられたのですが、後に「親友のエヴァンをフォーゲルに取られたくなくて、ヤキモチを妬いていたから」と、その理由が明かされる構成になっているのも上手かったです。  セスの言動の陰には「エヴァンを失ってしまう」「エヴァンに見捨てられてしまう」という恐怖心と焦りがあったんだと分かり、これまで俯瞰で眺めていた主人公に、一気に感情移入出来るようになっているんですよね。  当初は「常識人の主人公エヴァン」「傍迷惑だけど憎めない相棒のセス」という組み合わせなのかと思わせておいて、実はセスの方がメインなのだと明かされる形になっているのも、程好いサプライズ感があって良かったです。   第三の主役と言うべきフォーゲルと警官二人組が友情を育むパートも面白くって、自分としてはこちらの方が好みなくらいでしたね。   元々本作はセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグの少年時代を参考にして作られた「実話ネタ」でもあるそうなのですが、セス・ローゲン当人が「大人になった今でも、馬鹿騒ぎやっている警官」を楽しそうに演じているというのも、非常に興味深い。  本作のラストシーンは「愛し合ってる親友同士が、大人になる為に仕方無く別れてしまう」という悲劇を連想させる物なんですが、そんな切なさを与えてくれる一方で「いやぁ、大人になっても男友達同士で楽しくやれるもんだよ」と、セスがもう一つのメッセージを送ってくれているんですよね。  少年を卒業した瞬間のセスと、大人になった後のセス、その二人を一つの物語の中で同時に描く事に成功しているし「一見するとビターエンドだが、将来的にはハッピーエンドになる」という含みを持たせているしで、本当に絶妙な配役だったと思います。   そんな本作の難点としては、女性との恋愛描写が希薄であり、どうして美女二人がセスとエヴァンに惚れているのか理解出来ない点が挙げられそうなんですが……  まぁ、その辺は「オタク映画」だけでなく「ラブコメ映画」のお約束でもあるので、ツッコむ方が野暮なんでしょうね。  本作の主題は、あくまでも「男友達同士の愛情」なのだし、それに比べれば異性愛なんてアヤフヤなものという描き方をされているのは、むしろ自然な事であるようにさえ思えてきます。   劇中におけるエヴァンの台詞「皆に知って欲しいな、人を愛する気持ちは世界一綺麗だって」も、凄く印象深いですね。  その言葉通り「人を愛する気持ち」を全力で肯定し、観客に見せびらかしてみせたような……  色んな意味で、子供っぽい青春映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-05-02 17:29:23)(良:1票)
149.  ゾンビランド 《ネタバレ》 
 世にゾンビ映画は数多く存在しますが「その中で一番好きなのは何?」と問われたら、本作を挙げるかも知れません。   そのくらい面白いし、楽しいし、魅力的な一品なんですよね。  文明社会が崩壊した理由を長々と語らず「ゾンビウイルスに汚染されたハンバーガー」がキッカケだとナレーションで軽く説明してしまい、後はひたすら主人公達が「ゾンビランド」で生き抜く様を描くという、そのシンプルさが心地良い。  主人公のオタク青年に、相棒となるタフガイ、ヒロイン枠とマスコット枠となる美少女姉妹という、登場人物のバランスも良かったです。   主人公が「ピエロ恐怖症」なんだと告白すれば、その後にピエロゾンビと戦うシーンが挟まれ、恐怖を乗り越えて成長する姿が描かれたりして、とにかく観客の期待を裏切らない作りになっている辺りも、実に素晴らしい。  そうやって、本筋に関しては王道を守りつつ、要所要所で「意外性のある場面」を挟み、飽きさせないようにしている工夫も上手かったですね。  「姉妹達の裏切り」にせよ「相棒のタラハシーが可愛がっていた仔犬の正体」にせよ、直接本筋と絡むエピソードではないので「初遭遇時から姉妹と仲良くなる」でも「タラハシーは仔犬を失ってしまった男」でも、構わないといえば構わないはずなんです。  でも、そこをあえて「裏切られた後に仲良くなる」「仔犬ではなく息子を失ったのだと知って、一同の絆が強まる」という形にする事によって、観客を驚かせる事にも、劇中の人物達に深みを与える事にも成功している。  この辺りの「お約束な魅力」と「意外性の魅力」との使い分けが絶妙で、本当に上手い脚本だなぁと、観ていて感心する事しきりでした。   恐らくは軍隊が乗り捨てていったのであろう戦車がさりげなく背景に映っている(しかも主人公達はそれを驚きもしない)とか、文明崩壊後の世界の描写に、ちゃんと説得力があった点も良いですね。  土産物屋で暴れて、店内を滅茶苦茶にする場面では「ゾンビ」(1978年)から通じる「文明が崩壊した世界で好き勝手やる楽しさ」が感じられたし、皆で暖炉の前に集まってモノポリーする場面なんかも、凄く好き。  「お金はいくらでもあるけど、もうモノポリーで使う事くらいしか出来ない」っていう皮肉さを、さらりと描く辺りなんて、本当に御洒落だと思います。   ビル・マーレイが呆気無く死んじゃうのは寂しいとか、姉妹はシャワーを渇望していたのだから、それを叶えるシーンがあっても良かったのにとか、遊園地でピンチになるまでの流れが無理矢理過ぎるとか、不満点もあるにはあるんですが……  それらもテンポ良く、ギャグを交えながら描かれているので、あまり気になりませんでしたね。   それよりも、小さな売店に籠城して、四方八方から襲い掛かるゾンビを迎え撃つ場面が、痺れるほど恰好良かった事。  クライマックスの舞台が遊園地だからこその、様々なアトラクションを駆使した「対ゾンビ戦」も丁寧に描かれている事など、長所の方が、ずっと印象深い。   終盤にて、主人公は「女の子の髪を撫でる」という夢を叶える事が出来たし、相棒も念願のトゥインキ―を無事ゲット出来たしで、カタルシスを存分に味わえる作りになっているのも、嬉しかったですね。  「僕達は皆、ゾンビランドで一人ぼっちだ」と呟いていた主人公が、家族を手に入れて、再び旅立っていく。  そんなハッピーエンドで終わる辺りも、文句無し。   遊園地で一日過ごした後のような、心地良い充足感に浸れる映画でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2019-04-24 23:26:26)(良:3票)
150.  アドベンチャーランドへようこそ 《ネタバレ》 
 遊園地を舞台にした映画なのですが、肝心の「アドベンチャーランド」の魅力が伝わって来なくて、その点が寂しかったですね。   こういう映画であれば「アドベンチャーランドに行ってみたい」「自分も主人公のようにココで働いてみたい」って思わせてくれる事を期待してしまうものなのに、そんな期待が見事に外れてしまった感じ。  景品を取られないようにする為、園内のゲームには色んな仕掛けが施してあるって説明していく件は面白かったんですが……  舞台が遊園地である必然性が感じられる場面なんて、精々そこくらい。  ただ単に「バイト先で出会った女の子と、紆余曲折を経て結ばれる主人公の話」ってだけなので、せっかくの舞台設定を活かし切れていないように思えて、勿体無かったです。  ・主人公は仕事が見付からず、嫌々ながら遊園地で働く事になる。 ・競馬ゲームの実況が下手で、それを経営者に叱られる場面がある。   という伏線があった以上、主人公が遊園地で働く喜びに目覚めていくとか、実況が上手くなって周りに認められるとか、そういう展開になるのかなと思ったのに、それも無し。  終いには主人公もヒロインもアドベンチャーランドから立ち去って、ニューヨークで恋の決着を付けて終わるというんだから、吃驚したし、同時に落胆もしちゃいましたね。   「主人公達はアドベンチャーランドから卒業して、大人になった」というメッセージなのかも知れませんが、それならエンドロールでアドベンチャーランドのCMを流して終わるのはチグハグだと思うし、どうもスッキリしない。  面白そうな舞台設定を用意したは良いけど、それを活かしきれなかったなぁ……っていう想いが強いです。   他にも「ヒロインのエルは不倫している」という秘密について、観客は序盤の段階で分かるようになっているのに、主人公は終盤になってから知る形なので、感情移入を阻害している事。  八十年代が舞台とはいえ、妻子のあるコンネルではなく、エルばかり非難を浴びる形なのは納得がいかない事。  主人公の勃起ネタを二回もやったのは、流石に狙い過ぎで白けちゃった事とか、色々と不満点が多い映画なんですよね。  主演は「ゾンビランド」のジェシー・アイゼンバーグ、監督は「スーパーバッド 童貞ウォーズ」のグレッグ・モットーラという事で、期待値も高かっただけに、手放しで絶賛出来ない内容なのが、非常に残念。   とはいえ、青春映画としてはキチンとツボを押さえた作りになっているし、決して嫌いな作風じゃないというか……  むしろ「好きな映画」と言えそうなんですよね、これ。   仕事終わりに同僚と酒を飲みながら駄弁るとか、プールで可愛い女の子と戯れるとか、そういう青春時代ならではの魅力的な一時が、しっかり描かれている。  「神様は信じないけど、愛なら信じる」「愛には、どんな事も良い方向に変える力がある」という主人公の台詞を裏切るかのように、宗教の壁によって結ばれないカップルが出てくる辺りも、良かったですね。  こういう挫折感、やるせなさも青春の醍醐味だよな、と思えたりして、しみじみ沁みるものがありました。  初めてのキスシーンや、好きな子と一緒に花火を眺める場面など「ロマンティックな場面では、ちゃんとロマンティックな音楽が流れる」という作りなのも、嬉しかったです。   こうして列挙してみると「気になった点」や「不満点」の方が「良かった点」よりずっと多いはずなのに、それでも終わってみれば(なんだかんだで、この映画好きだな……)と思えちゃうんだから、全くもって不思議ですね。  劇中にて、主人公とヒロインが惹かれ合うキッカケは「互いの好きな音楽」だったんだけど、自分としても「BGMのチョイスや、使い方が良い」ってだけで、この映画を好きになってしまったのかも。   また何年か経った後、今度は懐かしさと共に観賞してみたくなるような、そんな青春映画らしい青春映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2019-04-19 12:54:36)(良:1票)
151.  ミスト 《ネタバレ》 
 ドラマ版「ザ・ミスト」(2017年)を一気見した勢いで、久々に本作も観賞。   後味が悪いというか、趣味が悪いというか、とにかく強烈なバッドエンドの映画なのですが、途中までは「スーパーに籠城するモンスターパニック映画」としても楽しめるようになっている辺りが嬉しいですね。  自分のようにラストが苦手な人間でも「中盤までの籠城戦は楽しめた」と評価出来るし、上手い作りだったと思います。   「主人公を臆病者と罵っていた強面のオジサンが、いざモンスターが現れると怯えるばかりで役に立たない」「如何にも頼りない副店長のモリーが、実は射撃の名手で大活躍する」とか、お約束を押さえた脚本になっている点も良い。  決死隊となって外に飛び出す男に対し、武器として小さなナイフを渡そうとしたら、もっと大きなナイフを既に持っていると返される場面なんかも小気味良くて(流石はフランク・ダラボン監督)と感心させられるものがありましたね。  店の外で男が襲われた事を、命綱の動きだけで表現してみせる件なんて、特に素晴らしい。   そういった面白い場面が要所要所に配されているので退屈しないし、監督としても脚本家としても優秀な人なんだなと、今更のように思ったりしました。   その一方で、そんな「上手さ」が悪い印象に繋がってしまった部分もあったりして……それは終盤の車中での射殺シーン。  ここ、せめて息子が眠っている内に済ませてやれば良いのに、わざわざ起きるシーンを挟んだ後に父親が撃つ流れになっていて、これにはもう(そこまでやるか)と呆れちゃいました。  確かに、そうした方がより衝撃的で後味も悪くなるし、効果的な演出だって事は分かるんです。  でも、流石に悪趣味過ぎる気がして、ノリ切れませんでした。   ノリ切れないといえば、主人公達が拳銃による死を選ぶのも納得いかなくて、説得力に欠けていた気がしちゃうんですよね。  妻の死が主人公にとってショッキングだったのは分かるけど、他の面子まで揃って絶望するっていうのは(なんか急に悲観的になったなぁ……)と違和感を抱いちゃう。  そもそも「絶望して一思いに家族を射殺しようとする父親」という展開自体は「アメリカを震撼させた夜」(1975年)でも描かれており、その際には間一髪で真相を知って皆救われる結末だったりするんです。  恐らく本作のラストも元ネタはそれであり「真相を知る数秒前に射殺していたら、どうなっていたか」を描いたって事なんでしょうね。  その結果、歪みが生じたというか……  原作小説では最後まで主人公は希望を失わずにいる話なのに「アメリカを震撼させた夜のオチを剽窃して、更に衝撃的なラストにしたい」っていう意図ゆえに結末を変えたせいで、こんな不自然な形になったんじゃないでしょうか。  元ネタの「アメリカを震撼させた夜」では「心中を提案したのは絶望した母親。幼い子供達は歩き疲れて泣くばかり。父親はそんな妻や子供達を哀れんで心中を図る」という形だから、ちゃんと説得力がある展開だったのに、本作は「安易に他の作品を剽窃した結果、それまでの話の流れと合ってないし説得力も無い結末になった」としか思えない形であり、凄く恰好悪い。  全体の完成度という点を考えても、この「無理矢理バッドエンドにした」感じは、どうも好きになれないです。   その他にも、序盤に話題になった「歩くタブロイド紙」ことエドナが登場しないまま終わるのは寂しいとか、最初に店を飛び出したオバサンが無事だった理由が明かされず仕舞いでスッキリしないとか、細かい不満点もあったりするんですよね。  自分はバッドエンドが苦手ではありますが「それでもなお、この映画は素晴らしい」と認めざるをえなかった傑作も一杯ある訳だし、どうも本作はそれに該当しなかった気がします。   「ザ・フォッグ」(1980年)との類似性、後の「ウォーキング・デッド」(2010年)にも通じる作風、霧が出現する前は平和な日常だった映画版と日常の時点で化け物が身近にいたドラマ版との対比など、語りたい事は他にも色々あるのですが……  結局、この映画に関しては終わり方が衝撃的過ぎて、それを好きか嫌いかどうかという話に落ち付いちゃう気がしますね。  自分としては「嫌いな終わり方」だったのですが、それなりには楽しめたし、色んな客層を配慮して作られた、出来の良い映画だったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2019-04-12 06:26:15)(良:2票)
152.  パラサイト 《ネタバレ》 
 所謂「ボディ・スナッチャー」系の映画なのですが、舞台を高校とその周辺に絞ってティーン・ホラーとして成立させているのが上手いですね。   なんせ「盗まれた街」の映画化に限っても四回以上は行われている訳であり、どうしても陳腐な内容となりそうなところを、演者と舞台設定によって新鮮に思わせる事に成功してる。  イライジャ・ウッドとジョシュ・ハートネットの共演が拝めるのも楽しいし、冒頭に流れるオフスプリングの曲をはじめとして、今観ても「若々しいセンスの良さ」を随所に感じる事が出来る、時代を越えて愛されるタイプの映画だと思います。   ただ、自分としてはヒロイン格であるデライラに魅力を感じなかったもので……ラストで主人公ケイシーが彼女と結ばれても、全然祝福する気になれなかったのが残念でしたね。  見た目は物凄い美人なのですが、性格が「嫌な女」としか思えなかったというパターン。  寄生される前から「ガリ勉じゃ私に釣り合わない」なんて言い出す傲慢さだし、ラストにて「学園のヒーローになったケイシー」と結ばれたのも「これでようやく私に釣り合う存在になったから付き合ってあげた」と言わんばかりの態度に思えちゃうしで、どうも好きになれなかったです。  もう一人の主人公ジークと、女教師のエリザベスとの関係性は好みだったので、もっとそちらにスポットを当てた構成だったら、印象も違っていたかも。   あとは、体育館の巨大な座席が閉じる仕組みを駆使してラスボスを倒すのは痛快だけど、事前に伏線を張っておいて欲しかった(座席が閉じるシーンを見せておいて欲しかった)という事。  コーチに誘われていたのはケイシーで、メアリーベスと因縁があったのはジークの方なので「ジークがアメフトを始める」「ケイシーがメアリ―ベスを倒す」というオチの付け方は、互い違いじゃないかと思えてしまった事……と、気になるのはそれくらいでしたね。  自分の好みを言わせてもらうなら「コロッと態度を変えて言い寄って来たデライラを袖にして、ケイシーはアメフトを始める」「ジークは自らがトドメを刺したメアリ―ベスに憐れみを感じながらも、エリザベス先生と結ばれる」って着地の方が良かったんじゃないかと思えますが、実際の終わり方も、そこまで嫌いじゃなかったです。   とにかく、細かい不満点が色々あったとしても、それらを吹き飛ばすくらいに「好きな部分」が多いもんだから、観ていると気にならなくなるんですよね。  特にジークがファーロング先生を倒す場面は恰好良くて、少年時代に観た時は、本当に痺れちゃったのを憶えています。  オタク少年だった自分にとって、ジークは理想的なアウトローだったし、いじめられっ子なケイシーも等身大で感情移入出来る存在だったしで、この二人が主人公ってだけでも、もう「好きな映画」になっちゃうんです。   「僕は目にペンでも刺すかな」というファーロング先生の台詞など、細かな伏線が効いている作りなのも良い。  「貴方は優しくしてくれた。嬉しかったわ、とても」というメアリ―ベスの台詞は演技ではなく、本音だったんじゃないかと思える辺りとか、妄想の余地を与えてくれる脚本なのも良かったですね。  主人公グループの中に裏切者がいるんじゃないかと疑心暗鬼になる件は、今になってみれば「遊星からの物体X」が元ネタだって分かるけど……  初見の際には知らなかったもので、凄くドキドキしながら観賞出来たし、元ネタを知った今観ても、ちゃんと面白かったです。   完成度は高くないし、物凄い傑作という訳じゃありませんが、色んな世代の「映画好き」に観てもらいたくなる。  そんな、オススメの一本です。
[DVD(吹替)] 7点(2019-04-10 07:22:33)(良:1票)
153.  O〔オー〕 《ネタバレ》 
 「古典を現代の学園ドラマに置き換えてみました」ってタイプの映画は色々ありますが(「小悪魔はなぜモテる?!」「恋のからさわぎ」など)その中でも最初に観たのが本作であった為、非常に新鮮な気持ちを味わえた思い出がありますね。   そういった「初見補正」のようなものが存在する事、主演が贔屓のジョシュ・ハートネットである事などを含めて考えると、自分の評価は甘々になっているのかも知れませんが……  それでもなお本作に対しては(意外と良く出来ているんじゃないか)っていう想いが強いです。   まず、騙されるオセロ=オーディン側ではなく、騙すイアーゴー=ヒューゴが主人公となっている点が面白い。  ダブル主人公って感じでもなく、完全にヒューゴ目線で物語が進行する為、元ネタの「オセロ」の粗筋を知っていたとしても、目新しい気分で観賞出来るんですよね。  軍人=スポーツ選手という置き換えも自然にハマっているし、合間合間にバスケの試合シーンが挟まれる事も、良いアクセントになっていたと思います。   白と黒、白人と黒人という「オセロ」ならではの対比もキチンと描かれているし、オーディンが抱える悩み、ヒューゴが抱える悩み、どちらも観客に理解出来るよう作ってある。  特に「逮捕歴のある不良少年だったが、スポーツ特待生として、金持ちの白人だらけの名門校に入学出来た黒人」というオーディンの設定は非常に分かり易く、感情移入もしやすいですよね。  だからこそ、彼の側に尺を取る事無く、ヒューゴ目線の映画として成立させる事が出来たんじゃないかな、って思えました。   ヒューゴと父親の間にある「心の溝」も丁寧に描かれており、基本的には「嫌な奴」のはずなヒューゴにも、自然と同情出来る形になっている。  オーディンをMVPとして表彰する際に「この青年を心から愛してる。息子のように」と言ったりする父親には(それ、実の息子の前で言う台詞じゃないでしょうに……)とヒューゴが可哀想になるし「ここでメシ食うの久し振りだね」と、ヒューゴが父子の対話を望んでいるような場面でも、父親はオーディンの事ばかり気にしているというんだから(そりゃあ息子は傷付くし、歪んじゃっても仕方無いよ)と、納得させられるものがありました。   オーディンを騙す件の演出も良くて、実際は「ブランディ」について話しているのに「デジー」について話していると思い込ませる話術には、特に感心。  元々「オセロ」には「もっと妻と直接対話すれば、不貞の疑惑なんて簡単に解けたんじゃない?」っていうツッコミ所が存在している訳ですが、本作はそれをなるべく緩和するという意味でも、かなり頑張っていたと思います。  ニガーという差別用語も巧みに活用されており、自分とは肌の色が異なる彼女を信じられなくなってしまうオーディンの心理にも、ちゃんと説得力があったかと。  「君は俺の全てだ。友達なんてもんじゃない、兄弟だ」と囁きかけるヒューゴの台詞など、オーディンに対する同性愛めいた想いが描かれている点も「悲劇」に相応しい背徳的な趣きがあって、良かったと思います。   そんな具合に、色んな長所が備わっている映画なのですが……  肝心のクライマックスで失速しちゃうというか、あまりにも展開が滅茶苦茶になり過ぎて、観ていて醒めちゃうのが欠点なんですよね。  「終わり良ければ総て良し」の逆を行く形であり、ラストの辺りは、本作が好きな自分でも褒めるのが難しい。  特に、ヒューゴが持っていた拳銃がオーディンの手に渡る流れは凄く雑で、そこはもうちょっと格闘させるとか、ボールの奪い合いはオーディンの方が上手いので拳銃も奪われちゃったとか、そういう感じに仕上げても良いんじゃないかって思えました。  主人公の心が壊れ、狂人になってしまった事を示すかのような最後のモノローグも、ちょっとわざとらしく、自己陶酔が強過ぎて、ノリ切れない感じ。   オーディンが自殺する際の「俺がこうするのは、黒人だからじゃない」という涙ながらの訴えは良かっただけに、凄く勿体無いですね。  いっそ、あれを最後の台詞にして、あとは静かな音楽と共に護送されるヒューゴを描くだけの結末にした方が、余韻も生まれ、綺麗に纏まっていたかも。   優等生ではあるけれど、スポーツの世界では一番になれず、完全犯罪を計画しても失敗してしまった主人公。  そんな「あと一歩で成功しきれない」という主人公に相応しい「あと一歩で傑作に成り切れなかった佳作」という感じの、どこか物悲しい一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2019-04-01 23:09:44)
154.  小悪魔はなぜモテる?! 《ネタバレ》 
 色んな映画や小説のオマージュが散りばめられており、それらの答え合わせというか「元ネタ探し」をするだけでも楽しい映画ですね。   (あぁ、ここはあの作品が元ネタなんだな)とニンマリ出来ますし、そういう意味では「映画好き」よりも「映画マニア」ってタイプの人が喜びそうな内容に思えました。  それでいて「元ネタを知らないと楽しめない」っていう訳でもなく、きちんと万人向けの娯楽映画として仕上げている辺りも、実にお見事。   個人的には「緋文字」や「ジョン・ヒューズの映画」だけでなく「グリース」(1978年)の影響も色濃いというか「してもいない性体験を自慢する主人公」「強がって悪ぶってみせる自分と、本当の自分との葛藤で悩む主人公」って意味で、かなり参考にしているんじゃないかと思えたので、劇中で「グリース」の曲を流すだけでなく、もっとハッキリ言及してくれると、より嬉しかったかも。   黒人の義弟に、色んな経験談を語ってくれる両親など、主人公家族が「良いキャラ」揃いな事。  主演のエマ・ストーンが非常に可愛らしい事。  噂が広がる様をテンポ良く描いてみせる演出や、音楽の使い方が良かった事。  その他にも、数々な長所が備わっている映画なのですが……   ちょっと終盤のまとめ方が雑というか、色々と曖昧なまま終わった感じなのが残念でしたね。  なんていうか「主人公が誤解を受けて迫害されていく」までの流れは上手いし「この後、彼女はどうなってしまうの? どうやって救われるの?」と観客を釘付けにするまでは良かったんだけど、その解決法に説得力が無かった気がします。  ビデオ越しに主人公が真相を一方的に語るだけじゃあ、殆どの人には信じてもらえないと思うし「たとえ信じてもらえなくても、私には最高の彼氏が出来たから平気」って結論を出すなら、わざわざ真相を暴露するような真似しなくても良かったじゃんと思えるしで、どうも中途半端なんですよね。  同情の余地はあるにせよ、嘘を吐く見返りとして男達から代金(ギフト券)を受け取っている訳だから、それを「困ってる人を見捨てられないので、嘘を吐いてあげた」って感じに、まるで善行みたいに描かれるのも、ちょっと違和感。  「じゃあ代金を受け取ったりするなよ」とツッコむしか無かったです。  あと、親友のリーやマリアンヌとは和解出来たのか、グリフィス先生夫妻は今後どうなってしまうのかってのも気になるし……どうもカタルシスに欠けていた気がします。   主演のエマ・ストーンは好きな女優さんなので、最後の最後で疑問符が付いちゃう終わり方になったのが、返す返すも残念。  祖母からの贈り物であるメロディーブック「ポケットに太陽を」をすっかり気に入って、シャワーを浴びながら唄ったり、着メロに設定したりしている様もキュートだったし、彼女が画面の中でアレコレしているのを眺めるだけでも楽しかったので、それなりの満足感は得られたんですが……   観ている間だけでなく、観終わった後も「映画の続き」が気になってしまうという、そんな物足りなさも残る一品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2019-03-28 00:40:39)(良:2票)
155.  空飛ぶペンギン 《ネタバレ》 
 家族の絆が再生する様を描いた映画なんだけど、そのキッカケとなるのが「ペンギン」っていうのが珍しいですね。   主人公は離婚した身であり、今は別居中な子供達の気を引く為にペットのペンギンを飼う流れとなるのですが、そんな「子供達と上手くやる為の道具」に過ぎなかったはずのペンギンに対し、愛着を抱くようになる流れも、ちゃんと描かれている。  高級な家具に囲まれていた部屋を、ペンギン達の為に雪まみれにする流れは微笑ましいものがあったし、公園でペンギンや息子達と一緒にサッカーして盛り上がる場面なんかも良かったです。  邦題の通り「空飛ぶペンギン」という、ビジュアル的に派手な見せ場も用意されているし「餌の魚ではなく、主人公を選ぶペンギン達」という場面によって、息子達だけでなく、ペンギン達も主人公の家族になったんだと示して終わる辺りも、上手かったと思います。  そういった「ファミリー映画」「動物映画」としての魅力を感じさせる場面がしっかり用意されてあった点は、文句無しで素晴らしかったです。   ただ、この映画は色々と気になる点も多かったりして……  一概に傑作とは言えない出来であったのが、非常に残念ですね。  基本的には好きな作風の品なので、それらの点も「愛嬌の内」と捉えたいところなんですが、ちょっと気になる点が多過ぎて、許容量をオーバーしてしまった気がします。   まず、根本的な話になってしまうんですが、ペンギン達を可愛いとは思えなかったりしたんですよね。  アップになると顔も怖いし、鳴き声だって、耳に心地良い響きとは言えない。  おまけに糞をするシーンをギャグとして何度も描いたりするもんだから、これには正直ゲンナリです。  ペンギンが主軸となる映画において、その可愛さを殆ど感じられなかったっていうのは、致命的なマイナスポイントでした。   主人公の部屋から聞こえる鳴き声や足音に迷惑している隣人に、元嫁の現恋人である男性など、主人公にとって都合の悪い存在の影がやたら薄いし、悪人っぽく描かれている点なども、何だか偏っている気がして、観ていて居心地が悪くなりましたね。  白頭鷲はアメリカの象徴であり、主人公の父親のニックネームも白頭鷲であるとか「アメリカは勝負に勝った者を逮捕するような国じゃない」って台詞だとか、やたらアメリカって国を意識した作りなのも、どうもノリ切れない。  こういうファミリー映画兼動物映画にまで、そういう愛国心みたいものを持ち込んで欲しくないなって、つい思っちゃいました。   で、最後に、これは短所ではなく長所に分類される事だと思いますが……  実は本作において一番キュートに感じられたのが、子供達でもペンギン達でもなく、脇役である「パ行が好きな秘書」のピッピだったりもしたんですよね。  単純に女優さんのルックスも愛らしいし、パ行の言葉ばかり好んで用いるというギャグキャラなのに、秘書としては意外と有能っていうアンバランスさも、非常に魅力的だったと思います。  彼女にスポットを当てた続編なり外伝なりが存在するのであれば、是非観てみたいものです。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2019-03-22 21:54:44)(良:1票)
156.  ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春 《ネタバレ》 
 ゾンビを主人公にした映画は何本もありますが、自分にとっての「ゾンビ主人公映画」初体験がコレだった気がします。   正確には「半分ゾンビ」という設定であり、主人公は「人間を食べたい」という欲望は全く抱いていない為「食人鬼の苦悩」的な物は描かれていなかったりするので、その点については拍子抜けでしたね。  他にも「途中で死んだ仲間のクリフはゾンビ化しないの?」「ラストで主人公はヒロインと結ばれたけど、子作りとかは可能なの?」と気になる点が多く、本作における「ゾンビの生態」があまり説明されずに終わってしまうのは、かなり残念。  せっかく劇中にて「ゾンビを研究する集団」まで登場させているのだから、彼らの口を通して、もっと詳しく説明して欲しかったです。   監督であるピアース兄弟の父親は、あの名作「The Evil Dead」(邦題:死霊のはらわた)にスタッフとして参加していたとの事であり、その縁もあってか、劇中のドライブインシアターにて「The Evil Dead」を流したりと、過去のゾンビ映画に対するオマージュ描写が散見される辺りは、同じゾンビ映画好きとして嬉しかったですね。  「主人公はゾンビである」という設定が、劇中でキチンと活かされており「ゾンビを退治しようとする人間達から逃げる主人公」という、通常とは真逆の面白さが味わえる辺りも良かったです。   普通のゾンビ映画であれば、如何にも主役になりそうな黒人青年がゾンビハンターと化して主人公達を追ってくるって点も、面白くて好きですね。  この辺り、主人公のマイクが「冴えない眼鏡のモブ顔」って感じなのに対し、黒人青年は「精悍な二枚目」っていうビジュアル面の対比もあって「普通なら主人公のはずのキャラクターが敵役」「普通なら無数にいるゾンビの中の一人に過ぎないはずのキャラクターが主役」という設定の妙味を、より深く楽しめるようになっていたと思います。   同じ「半分ゾンビ」仲間である相棒のブレンドが、頭の軽いチャラ男と思わせておいて、要所要所で名台詞を吐いてくれるという意外性も、実に心地良い。  ゾンビになった事を悲観する主人公に対し「そりゃあ個性っていうべきだ」と元気付けたり「彼女の気持ちは分からなくたって良い。でも、お前の気持ちは確かなんだろう?」と告白を後押ししてくれたりする様が、凄く良かったんですよね。  彼の他にも、半分ゾンビではない完全にゾンビなチーズに、元軍人のクリフなど、道中で一緒になる仲間達が三人とも魅力的だったりするもんだから、ゾンビ映画としてだけでなく、青春ロードムービーとしても、しっかり楽しむ事が出来ました。   途中までは苦みを含んだ展開が多く(これは主人公とヒロインが結ばれずに終わる可能性もあるかな……)と思わせておいて、意外なハッピーエンドで終わってくれるって辺りも、嬉しかったですね。  上述の通り、細かい点について考え出すと(半分ゾンビの主人公と、人間のヒロインとで、本当に上手くいくんだろうか?)って疑念も湧いてきたりするんですが、そんな野暮な観客に対し「愛さえあれば大丈夫だよ」と言わんばかりに、それまで敵だった人間達にまで二人を祝福させて、有無を言わさず終幕させている。  その強引さと、能天気なほどの人間賛歌&ゾンビ賛歌っぷりに、初見では戸惑う気持ちもあったんですが……  (この映画は、そこが良いんだ)と、今ならそう思えちゃいますね。   明るく、和気藹々としたNG集に至るまで、ゾンビ映画らしからぬ陽性な魅力を味わえた、とても貴重な一本でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-03-21 17:22:21)(良:1票)
157.  ロード・キラー マッド・チェイス<OV> 《ネタバレ》 
 かなり間を置いて作成された「ロード・キラー」(2001年)の続編。   ただ、自分が前作で好きだったのは主に主人公兄弟の方であり、ラスティ・ネイルという殺人鬼キャラには魅力を感じなかったもので……  「あのラスティ・ネイルが帰って来た!」と言わんばかりの内容にされても、今一つノリ切れなかったのが残念でしたね。  「雨が好き」という台詞に「顎を外す」という所業など、前作との繋がりを感じさせるシーンも出てくるんだけど、あんまり物語上の必然性みたいなのは無くて「とりあえずファンサービスでやっておきました」感がありました。    「ソウ」(2004年)や「ホステル」(2005年)の後追いをした形なのか、やたら拷問描写をしつこく描いてるのも困り物。  この辺りは「前作よりもショック描写がパワーアップした」と褒める事も出来そうなんですが「ロード・キラーは血生臭い描写が控えめであり、ライト層の観客でも楽しめるように作ってある点が良い」と感じていた自分にとっては、どうも受け入れ難いのですよね。  観る側の好みの問題でしかないのですが、本作に関してはパワーアップどころか、前作にあった長所を投げ捨てたように感じられました。   また、前作のフラー同様「余計な事をやらかして殺人鬼に狙われるキッカケを作る」枠として、ニックというキャラが登場しているんだけど、どうにも憎めなかった前作のフラーと違って、本当に(なんだコイツは)と思ってしまうくらい憎たらしいキャラであった点なども、観ていて辛かったです。  人が誘拐されている緊急事態なのに「これ買うのに二日も並んで待ったんだ」と携帯電話が壊れるのを嫌がったりする姿とか、本当にゲンナリしちゃったんですよね。  ラスティ・ネイルも「娼婦や窃盗犯に天罰を下す、カリスマ性のある殺人鬼」みたいに描かれているのが気になるし、どちらか片方ならともかく、主人公側にも悪役側にも観ていて嫌悪感を抱くようなキャラがいるってのは、流石にキツかったです。   それでも脚本がしっかりしているとか、演出が上手いとかなら観ていて楽しめたのでしょうが、そちらに関しても褒められず仕舞い。  例えば「死体の指を切り取る為に、遺体安置室に潜入する」パートでも、主人公が見つかりそうになってハラハラさせるだけさせておいて「職員と鉢合わせするかと思ったけど、たまたま上手くタイミングがズレて見つからずにすみました」なんて形で済ませちゃうもんだから、どうにも物足りないんですよね。  こういう場合は「主人公が機転を利かせて、上手く隠れる」とか「仲間が物音を立てて気を引いている隙に、その場を離脱する」とか、そういう要素があっても良いんじゃないかと思えました。   トラックが爆発炎上しながら崖を落下するクライマックスなんかは中々迫力があって良かったし「正当化が許される悪事は無い」という台詞には感心するものがあったりとか、一応長所も見つかるんだけど、短所の方が多かった気がします。  最後にはお約束の「実は殺人鬼は死んでないオチ」になるというのも、ひたすら後味が悪いだけで、爽快感無し。   ちなみに、本作には「ロードキラー デッド・スピード」(2014年)なる続編もあるのですが「今度はワイルド・スピードをオマージュして、カーチェイス要素増し増しにしてみたよ。残虐描写も更にパワーアップさせたよ」って感じの内容であり、これまた好みとは言い難い品だったのだから、困っちゃいますね。  もしかしたら「ロード・キラー」(2001年)が物足りなかった人の方が、スプラッター映画としての続編二つを、素直に楽しめるのかも。   いずれにしても、自分の好みとは言い難い、残念な一品でした。 
[DVD(吹替)] 3点(2019-02-27 21:51:34)
158.  ロード・キラー 《ネタバレ》 
 ポール・ウォーカー主演作品なのですが、彼がスターのオーラを全く漂わせておらず「等身大の若者」を演じ切っている点が素晴らしいですね。  同年には「ワイルド・スピード」でタフガイの刑事を演じているはずなのに「寮住まいの大学生」「精神的には、まだまだ子供」っていう主人公像にも、自然と馴染んでみせている。  彼の他作品を考えれば「こんなストーカー紛いの殺人鬼なんて、ポールに掛かればイチコロじゃん」「酒場でポールに因縁付けるとか……たったの三人じゃあ、どうせアッサリ撃退されて終わりでしょ?」となってもおかしくないのに、殺人鬼に怯える姿や、何とか喧嘩せずに場を切り抜けようとする臆病な若者としての姿に、しっかり説得力があったんだから、これは凄い事じゃないかと。  彼の人気の要因は「何処にでもいそうな、気の良い兄ちゃん」という独特の雰囲気にあったのでしょうが、演技力においても確かなものを持っていたんだなって、再確認させられた思いです。   相方となるスティーヴ・ザーンも良い味を出してあり「傍迷惑な兄貴なんだけど、憎めない」って、主人公だけでなく観客にも思わせているんだから、お見事でしたね。  本作は明らかに「激突!」(1971年)が元ネタの作品なのですが、オリジナルの魅力を感じられたのは、彼らが演じる主人公兄弟の存在あってこそ、って気がします。  中年男の孤独な戦いを描いた「激突!」に対し、本作は若い兄弟の掛け合いが主となっているし、ヒロインであるヴェナとの三角関係を交えた「青春映画」としての味わいもありましたからね。  自分としては、この「車での三人旅」になる中盤の件が凄く好きなもんで(殺人鬼とかもう出て来ないで、このまま青春ラブコメ物として進めて欲しいな)と思えたくらいです。   久し振りに再会した兄が「弟のルイスと、ヴェナの関係をあれこれ詮索する」という形で、主人公ルイスとヒロインのヴェナの関係性を、観客にも分かり易く伝えている点。  そして、精神的な恐怖に訴えかける演出であり、血生臭い描写が殆ど無い点など、ライト層の観客に配慮した作りとなっているのも、嬉しい限りでしたね。  本作を初めて観賞したのは、スプラッター映画などに全く耐性の無かった十代の頃だったんですが、それでもしっかり楽しめたのは、作り手側がちゃんと「そういう層の観客でも楽しめるように」と、色々計算した上で作ってくれたお蔭なんだと思います。   今になって改めて観返すと、元カレが「危ない感じ」という冒頭の台詞が伏線じゃなかった事が肩透かしとか、犯人が逃げ延びて終わるのでカタルシスに欠けるとか、欠点も目についちゃうんだけど……  それよりは、色褪せぬ魅力の方を強く感じ取る事が出来ましたね。   感動するとか、強烈な衝撃を受けるとか、そういう類の作品じゃありませんが「軽い気持ちで楽しめる一本」として、オススメです。
[DVD(吹替)] 7点(2019-02-22 20:21:58)(良:1票)
159.  ナーズの復讐 集結!恐怖のオチコボレ軍団 《ネタバレ》 
 劇中にて「ナーズにも人権がある」という演説が行われるのですが、それが大袈裟でも何でもないくらい、彼らが迫害されている事に吃驚。   観ていて可哀想になりますが、基本的にはコメディタッチの作品なので、陰鬱になり過ぎる事も無く、程好いバランスに仕上げてありましたね。  「いじめ問題」を中心とした、堅苦しい作品となっていてもおかしくなかったのに、娯楽作品であるという線引きを忘れず「ナーズの青春」を感じさせるような、良質な学園ドラマとして完成させている辺りは、本当に見事だと思います。   最初の体育館暮らしの時点で「飛び級してきた男の子」「ゲイの黒人」「不良」「日本人」などの、後にメインとなる面子が、しっかり目立っていた辺りも良いですね。  主人公二人が眼鏡を掛けていて、見分けるのが難しいコンビであったのに比べると、この四人組は視覚的にも分かり易いし、脇役として絶妙なバランスだったんじゃないかと。   如何にも学園のマドンナといった感じのブロンド美女に、地味な眼鏡娘という二種類のヒロインを用意している辺りも、心憎い。  個人的な好みの話をすると、前者のブロンド美女には魅力を感じなかったりしたのですが……  「互いの眼鏡の度の強さが同じという事に、運命を感じる場面」など、後者の魅力はしっかり伝わってきたし、主人公の一人であるルイスと彼女との恋を、素直に応援出来たんですよね。  こういう具合に、観客の好みに合わせて選べるような形で、タイプの違うヒロイン二人を用意してくれたっていうのは、嬉しい限りです。   学生達だけじゃなく、学長とコーチにも「文化系」と「体育会系」という個性を与えている辺りなんかも、上手かったですね。  それまでコーチの言いなり状態だった学長が、主人公達の演説を受けて奮起し、コーチより精神的に上に立って、見返してみせるという形。  これによって「虐待や阻害やイジメを経験した人は、皆さんの中にもいるはず」という主人公の訴えにも説得力が出るし、最後の「逆転」の構図が分かり易くなっているしで、本当に感心させられました。   そして何と言っても……  皆がボロ家を大掃除するという「住処作り」の場面が、実に楽し気で良い!  無事に完成させた後の、共同生活している描写(主人公が二階から降りてくると、男の子達が見よう見まねでエクササイズしていたり、ポーカーしたり、本を読んだりしている)も、凄く好みでしたね。  こういうの、青春って感じがして良いなぁ~って、憧れちゃうものがありました。   間抜けな感じの効果音が、今となっては流石に古臭いとか、復讐の一環とはいえ女子寮を盗撮するのには引いちゃったとか、色々と気になる点もあるにはありますが、まぁ御愛嬌。  冴えない主人公の学園物という意味では「ロイドの人気者」(1925年)などから通じる王道路線のストーリーだし、この映画自体が後世に与えた影響もあってか、今となっては「どこかで見たような展開」が多い点に関しても、短所ではなく長所なんじゃないかって思えましたね。   「こいつらはメインキャラだな、と思ったら本当にメインキャラだったという展開」「最後は皆に認められるという、お約束のハッピーエンド」など、予想通りではあるんだけど、それが心地良い。  「先が読めて退屈な映画」ではなく「こうなって欲しいな、という観客の願いを叶えてくれる映画」って感じがして、観ていて楽しい一品でした。
[ビデオ(字幕)] 7点(2019-02-19 21:56:40)
160.  マイノリティ・リポート 《ネタバレ》 
 さながらオーケストラの指揮者のように、空中に浮かんだ情報の数々を整理する主人公の姿が印象的。   他にも「エレベーター式で上下にビルを移動する車」「次々に新しいニュース映像が表示される為、紙一枚分の薄さで事足りる新聞」など、近未来的なギミックが次々に飛び出すもんだから、それらを眺めているだけでも退屈しないし、面白かったですね。  裏路地のトンネルや、シリアルの箱にまで忙しなく映像が表示されるという「情報過多社会」を描いており、ディストピア的な雰囲気を醸し出す一方で「風船売り」の存在だけは今と変わらぬ等身大のまま描いてるってバランスなのも、実に興味深い。  この辺りは、たとえ世相がどれほど変質しようとも「夢を売る商売」だけは変わらずにいて欲しいという、作り手側の願いが込められているんじゃないかな、って思えました。   独特の粗い画面処理も魅力的だし、それらの「視覚的な面白さ」は満点に近いものがあったのですが……  ストーリーの方はといえば(何で?)と思える部分が多かったりして、残念でしたね。   まず、主人公の息子ショーンを誘拐した犯人が最後まで分からず仕舞いって事には、ひたすら唖然呆然。  こう言ってはなんですが、全体的にかなり無理のある展開を重ねている訳なんだし、ここも適当に「知り合いの誰かが犯人だった」って事にして、決着を付けても良かったんじゃないかって思えました。  あるいは、単なる事故死だったのをラマー局長が誘拐殺人に偽装して、主人公のジョンを「殺人の被害者代表」「犯罪予防局の象徴」として担ぎ上げたとか、何でも良いので、観客に「答え」を提示して欲しかったですね。   ジョンの眼球が便利アイテム過ぎて「とにかくID認証システムさえ突破すれば、セキュリティを無効化して自由に侵入出来る」って形になっているのも、流石に不自然。  「システムに頼り切って警戒を怠っている人間」の迂闊さを描いているのかも知れませんが、作中で二度も同じ手を使っているとなると(いや、ジョンは指名手配されてるし、その後に捕まってるんだから出入り禁止にしておけよ)とツッコんじゃいます。  ラストにて、主人公と妻が復縁するハッピーエンドになるのは歓迎なんだけど、さながら失った息子の代価のように「妻が妊娠した」というオチを付け足しているのも、ちょっと即物的過ぎて、興醒めしちゃいました。   勿論(ここは上手い脚本だな……)と感じる部分もあって「どれだけ息を止めていられるか」「片目でも見える奴がキング」などの台詞が伏線になっている辺りは、素直に感心させられましたね。  「殺人は予知されるもの」という先入観ゆえに、銃を突きつけられても平然としていた男が、警報を耳にした途端に怯えを示す展開なんかも、この設定ならではの妙味があって、面白い。   元部下に追われる展開になるんだけど、その際に「二分待ってから警報を鳴らすよ」「お願い、チーフ。抵抗しないで」などの台詞を挟み、主人公に信望があった事を示している辺りなんかも、妙に好きです。  それによって主人公が「良い奴」なんだって事が伝わってくるし(部下達が同情的だからこそ、追撃を何度も振り切る事が出来たんだ)って思えて説得力があるしで、二重の意味で効果的だったんじゃないかと。    それと、予知通りにリオ・クロウを殺すのかと思われた中で、ギリギリで踏み止まり「君には黙秘権がある」と。怒りと悲しみを押し殺して逮捕しようとする場面が凄く良かっただけに、その後「実はリオは犯人ではない」という陰謀色の強い展開になるのは、失敗だったんじゃないかって思えちゃいましたね。  これなら「ショーンを誘拐して殺した犯人は、リオ・クロウである」「主人公は彼を殺さずに逮捕し、プリコグの殺人予知システムは絶対ではないと証明してみせた」って形で終わる方が、ずっと綺麗に纏まっていた気がします。   ちなみに、本作には直接の続編となるテレビドラマ版「マイノリティ・リポート」(2015年)なる代物が存在しているのですが、そちらでもショーン誘拐事件の真相は明かされず仕舞いで、しかもドラマ自体も物凄く中途半端に終わってしまう為、あまりオススメ出来ないのが残念ですね。   ビジュアル面、ガジェット面の面白さは「傑作」と呼ぶに相応しいのでしょうが……  映画として総合的に判断すると「中々良い映画」くらいの評価に落ち付きそうな、そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2019-02-15 12:35:11)(良:2票)
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