101. ファニーゲーム U.S.A.
《ネタバレ》 奇をてらった映画というだけで、ほとんど評価に値しない。なぜなら、延々と繰り返されるこの暴力描写にいっさい思想が感じられないからだ。世の中には、もっとこのような救いのない暴力は確実に存在するし、もっと酷い現実だってある。それを確認したいならドキュメンタリーを観ればいいだけの話。少なくとも、人間の主観で作られる映画という表現方法を採るのであれば、そこには監督がどうしても観客に伝えたい思想がなければならないはず。この監督は、そんな基本的なこともわきまえずに、ただ「どう、こんな暴力的な映像撮ってみましたけど」と、『時計仕掛けのオレンジ』のように思想的な素晴らしい映画の、劣悪なイミテーションを見せられてもこちらとしては失笑するしかない。 [DVD(字幕)] 2点(2012-12-18 22:34:50) |
102. メランコリア
《ネタバレ》 相変わらずの鬱病監督、ラース・フォン・トリアーの比較的メジャー(ハリウッド俳優を多数起用)な最新作。それでも、内容は相変わらずの悶絶鬱映画で、人類なんかみんな滅びてしまえばいいのに、という鬱特有の寂寥感溢れる結論でありました。でも、やっぱりこの監督は悔しいけど才能があるんだよね。前半のぐだぐだな結婚式では、鬱な花嫁が健常な人々から侮蔑の念で見られていたのに、後半、人類が滅びると分かったとたん健常者が次々と絶望に追いやられて狂っていく。そして反対に鬱な主人公は健やか心で現実を受け入れる。初めから希望なんかなければ、絶望なんかしない。とても暗鬱な美しさに満ちた作品でした。死にたくなるけど(笑)。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-18 19:42:38)(良:1票) |
103. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 個人的に苦手な監督の作品なのだけど、これは素直に面白いと思った。謎が解き明かされてからの展開はちょっとグズグズになってしまった感は否めないが、それでも歴史が誕生してから延々と繰り返されてきたあろう、男たちが最後は暴力で女を屈服してきた(そしてそこには必ずといっていいほど性欲が絡んでいる)世界に、必死で抗おうとするリスベットの姿が力強かった。相変わらず映像のセンスもいいし音楽もカッコいい。何より二時間半もあるし、登場人物も多いのに、それでも最後まで飽きさせずに見せる監督の手腕は見事。でも、過去の作品『ベンジャミン・バトン』や『ゾディアック』はやっぱり好きになれないんだよね。 [DVD(字幕)] 8点(2012-12-02 21:36:07) |
104. 三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
《ネタバレ》 めちゃくちゃお金をかけて、ひたすら薄っぺらい映画を撮らせたら右に出る者の居ない監督の作品ということで、今回もどれだけ酷いのだろうと思いっきり敷居を下げて観たせいか、それなりに面白かった。相変わらず適当な脚本とちっともハラハラしないアクションシーンの連続に、自分の嫁(ジョボビッチ)をかなり贔屓目に撮っていて、途中何度か睡魔が襲いかかってきたのだけど、飛行船同士の闘いあたりからはそこそこ楽しめる。突っ込みどころ満載の映画だけど、一つだけに限って言わせてもらえば「最初からうえの気球撃ってたら良かったんじゃないのー!?」 [DVD(字幕)] 5点(2012-10-12 21:24:20) |
105. ニコラス・ケイジの ウェザーマン
《ネタバレ》 けっこうな閉塞状況にいると(個人的は)思える主人公なのに、その独特なユーモア感覚で最後まで明るく観れるというこの監督らしい作品だった。どうしようもない状況に陥った駄目男が、この状況を打ち破るためにアーチェリーの矢を構えるところはもっと悲惨な描写になっても良いはずなのに、そうはならず、最後まで軽妙な作風を維持するところが観ていて楽しい。最近、借金まみれで駄作にばかり出ているニコラス・ケイジに、スポンジボブがいつだって見守っていてくれているよって(余計なお世話だろうけど)言ってあげたい。 [DVD(字幕)] 6点(2012-08-27 19:41:05) |
106. アメリ
《ネタバレ》 大人に成り切れない、どこかに少女のように純粋な心とそして子供特有のある種の残酷な毒を残したまま成長してしまったアメリ。自分が大好きなものは心の底から応援するけれど、許せないものは徹底的に排除しようとする。そんな彼女の唯一の心の支えは、豊かな想像力が織り成す空想の世界――。まぁ簡単に言うとよくいるイタい女性なんだけど、その人物造形が奇跡のように魅力的!!フランスのお洒落な街並みで繰り広げられる、自分の大好きな人を今よりほんの少しだけ幸せにしてあげようというアメリの数々の〝悪戯〟も、その動機があまりにも純粋な心から発せられているから、素直に応援したくなってくる。かなり独り善がりだけど、ね(笑)。そんな彼女を客観視するような、早口で捲くし立てるナレーションもグット。そして現実と極力関わらないように生きてきた彼女自身の不器用な恋の行方……。ふわふわとした荒唐無稽なお話が、ジュネ監督のセンス溢れる演出と映像美によって、奇跡のような美しい世界へと昇華されてしまっている。素晴らしいとしか言いようがない。日々の生活に疲れたとき、人間関係に悩んだときなどに、子供の頃のおもちゃ箱をそっと覗き込むように、何度も観返したい映画の一つ。 [DVD(字幕)] 10点(2012-08-12 17:26:38) |
107. イングロリアス・バスターズ
《ネタバレ》 自分が年取ったせいなのか、個人的にはあまり魅力を感じなかった。タランティーノといえば、過去の傑作を思い出してしまいやはりそれと比べてしまうきらいはあるものの、それでも自分には幾分か退屈な映画と思えてしまう。過剰な暴力描写も、なんだか無理して観客にサービスしているように感じる。 [DVD(字幕)] 5点(2012-06-21 19:42:35) |
108. クラッシュ(2004)
《ネタバレ》 様々な人種の坩堝の国、アメリカ。人種差別や性差別、過酷な格差社会、そんな色んな問題を抱えた地で必死に生きる人々が、その悪意や憎しみ、そしてほんの少しの善意をぶつけ合いながら様々なドラマを描き出していく。丁寧な演出で、良質の群像ドラマに仕上がっているが、これがアカデミー賞というと少々疑問に感じる部分もある。それでも、ドン・チードルの抑えた苦悩の表情がこの映画のテーマを雄弁に物語っている。 [DVD(字幕)] 6点(2012-06-21 11:50:57) |
109. K-19
《ネタバレ》 「Uボート」で確立された潜水艦映画の、新たな地平を切開いた作品。それまで潜水艦の敵は外部にある敵国のミサイルであったり、全てを押し潰す水圧であったのだけど、ここでは内部の敵・原子力との戦いがメインとなっている。特に、後半での漏れ出した放射能の海のなかを、仲間を救うために命を賭して進む人々の姿には純粋に感動を覚える。 [DVD(字幕)] 7点(2012-06-14 16:45:47) |
110. シャーロック・ホームズ(2009)
《ネタバレ》 デビュー数年でずっと低迷していた監督が、久々に任された大作映画。旬な俳優も主演ということで、すべることが許されない状況だったからか、非常に無難なつくりになっております。押さえるべきセオリーもちゃんと心得ており、素直に楽しめるのですが、特に心に残るものもなかったです。 [DVD(字幕)] 6点(2012-06-03 22:13:04) |
111. アレキサンダー
《ネタバレ》 オリヴァー・ストーンが初めて撮った歴史活劇。でも、そこはやはりストーン監督、とにかく暑苦しい演出でしかもがっつりと長い。でも、別に僕は嫌いじゃなかった。アレキサンダー大王の栄光と挫折が、これでもかというくどい演出で壮麗に描かれていく。自分としては、なかなか見応えがあったと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2012-05-27 23:09:39) |
112. パーフェクト ストーム
《ネタバレ》 中盤まで、個性的で粘液質な登場人物たち(田舎の漁村の居酒屋の描かれ方がリアルすぎて白眉!)がプライドを賭けて物凄い嵐のなかへと船を出すところまでは凄く良かったのだけど、やっぱりラストが肩透かし。せめてあの不細工な人くらいは生き残ってくれたほうが物語のカタルシスはあったと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2012-05-20 20:35:06) |
113. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 この映画がどうしてこんなにも人の心を掻き乱し、賛否両論分かれるのか。何度も何度も繰り返し観て(よく自殺しなかったな笑)なんとか自分なりに結論を得ました。この映画は踏み越えてしまっているんです。つまり、主人公セルマは頭のおかしい気の狂ってしまった人間なんです。だから、間違った選択を繰り返し、誰の助けも借りず、最後は息子のためにと幸せに死んでいく。この主人公に「やっぱりお前は馬鹿だ、不幸だ」と誰が言える権利があるでしょうか。そう、この映画のテーマはそこです。人間の幸せは主観的なものであるなら、自分を幸せだと強固に信じる人間を誰も非難できない。つまり、もしかしたら全ての人間の幸せに意味などないのでは、ということです。とても恐ろしい踏み越えてしまったテーマです。この映画が、敢えてその恐ろしい問いに挑戦する武器として、想像力の美しさを選んだことに敬服せざるを得ません。ただ、勝利できたかどうかは観る人の判断ですが。そして、この映画を徹底的に非難するレビューにこそ、僕は感動を覚えます。そこには、全ての人間の幸せには意味があると信じようとする力強さを感じるからです。それこそが人間の想像力の持つ美しさだと思います。敢えて踏み越えてまで、この映画を撮った監督に改めて敬意を表したい。 [DVD(字幕)] 10点(2012-05-14 02:27:21)(良:2票) |
114. ウォンテッド(2008)
《ネタバレ》 映画って楽しければそれで良いじゃないか!という監督の熱意は確かに分かるし、そんな映画も昔からけっこう好きだ。でもこの映画の馬鹿さ加減はどうも自分とは合わない。監督の前作、前々作も観て、その全編に及ぶテンションの高さも雰囲気作りもアクションも確かに独自の世界観を持っているのは分かるが、やっぱり自分とは合わないと再確認することが出来た。 [DVD(字幕)] 4点(2012-05-01 11:51:36) |
115. アンノウン(2011)
《ネタバレ》 途中まではすごく良かったのだけれど、さすがに最後のオチは無理があるだろう。それまでのテンポのいいアクションシーンが一気に興醒め。敵の凶悪な計画をなんとか阻止したぜって元々あんたが計画したもんだろう!最後は自首するわけでもなく、若いおねーちゃんと電車でバイバイて……。本当に途中までは良かっただけに残念な映画。 [DVD(字幕)] 5点(2012-05-01 11:35:25) |
116. アンチクライスト
《ネタバレ》 ラース・フォン・トリアーらしい、非情に悪趣味な作品。さすがのカンヌでもブーイングの嵐だったと聞いたけど、それも納得。あのなまいきシャルロットに激しいマスターベーションをさせて、その挙句にあれ……。この監督はいったい何処に向かっているのだろうかと、他人事ながら心配になってしまう。もう、この路線を突っ走っていつかとんでもなく悪趣味な傑作を創り出してくれることを、期待したい(消極的にだけど)。 [DVD(字幕)] 6点(2012-04-24 13:41:14) |