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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2598
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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【製作国 : 韓国 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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21.  アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~
良い。 “よしながふみ”による原作漫画は、隠れた傑作である。それを“真っ当”に映画化してみせた良い作品だと思う。  原作の持つ表面的な軽妙さと核心的な深刻さが混ざり合った独特の世界観を、映像化することで、ある部分においては見易く、ある部分においては思慮深く表現することに成功している。 とても「微妙」なテーマ性を内に秘めた作品なので、実はとても取り扱いが難しい素材だったと思うが、映画としてのエンターテイメント性も保ちつつ、作品としてまとめあげており、見事だ。  かつて同原作から、安直というかまったく「別物」のチープなテレビドラマしか生み出せなかった日本と比べると、改めて韓国の映画製作における本質的な巧みさを感じずにはいられない。  韓国俳優たちのバラエティーに富んだ演技もとても良く、決して漫画のキャラクター像に縛り付けられることなく、映画作品としての新たなキャラクターを表現していたと思う。 その辺りも、「漫画の映画化」となると、ことごとく原作のキャラクターを内面・外見ともになぞるだけの多くの日本映画とは、明らかな「差」を感じた。  非常に大好きな原作漫画の映画化だっただけに、自分の中でのハードルは高かったはずだけれど、それをひょいっと越えてみせた韓国映画の相変わらずの力強さに脱帽。
[映画館(字幕)] 8点(2009-11-05 00:52:56)
22.  クワイエット・ファミリー
数年前にこの映画をリメイクした「カタクリ家の幸福」を観て、監督の三池崇史が好きそうなアイデアだな~などと感じながら楽しんだが、オリジナルの今作を観て尚更に三池が惚れ込んだ理由を納得した。もうほんとに全編通して“怖可笑しい”。韓国映画はこういう雰囲気を作り出すのがとても旨い。韓国の俳優が基本的に持つ表現力や台詞の言い回し自体に、ドスの効いた可笑しさが含まれているように感じる。気だるそうにテレビを観る姿や無言で食事をする姿にさえ、可笑しさがにじみ出る。もはやこれは、この国の国民性自体が持つ、独特のユーモアセンスであると思う。
8点(2004-11-15 01:51:54)
23.  JSA
韓国映画界の熱情で、この国でしか描くことができない濃厚な題材を撮られては面白くないわけもなく、重厚な人間ドラマが染み渡る。切なく哀しすぎるラストシーンに韓国という国自体が抱える大いなる切望が伺えるようで、非常に感慨深かった。「シュリ」に引き続き出演しているソン・ガンホが深く無骨な存在感を見せる。
8点(2003-12-24 01:13:15)
24.  非常宣言
航空機パニック×感染パニック×韓国映画、その触れ込みから想像し得る映画の構図は、予告編の段階で極めてエキサイティングで鑑賞意欲を掻き立てられた。 ソン・ガンホ、イ・ビョンホンというもはや国際的映画俳優である2大スターのキャスティングも、古くからオースター映画の代表格だった航空機パニック映画の系譜であり、期待感を煽った。 結果的に、想像通りにエキサイティングな映画であったことは間違いない。  ただし、注意しておくと、本作は決して褒められた仕上がりの映画ではない。 ストーリー展開は、娯楽映画であることを踏まえても、リアリティに乏しく想像以上に破茶滅茶だった。主人公らをはじめ、登場人物たちの言動や心理描写も、割と大雑把でありお粗末。 限りなく“トンデモ映画”に近い映画世界のテンションには、ときに閉口してしてしまうことは避けられないだろう。  が、しかし、それでも成立させてしまうのが、やはり韓国映画の“地力”の強さだ。 強引だろうがなんだろうが、積み重ねられた二重三重の絶望的パニックが、すべての人間が実は孕んでいる悪意と脆さ、そして尊厳をあぶり出している。  タイトルでもある「非常宣言」を発した上で、領空侵犯を犯す韓国の民間機に対する自衛隊機の対応の様など、日本人鑑賞者として色々な感情が渦巻くシーンもあり、文字通り二転三転する不安定なストーリーテリングには、浮遊感と居心地の悪さを存分に感じる。 ただ、その“乗り心地”の悪さこそ、このパニック映画のテーマに相応しいと思った。  往年のハリウッドの航空機パニックとは異なり、ハッピーエンドではありつつも、明確な“傷み”をしっかりと映し出す姿勢も、韓国映画らしく味わい深い。
[映画館(字幕)] 7点(2023-01-30 23:10:50)(良:1票)
25.  ソウル・ステーション パンデミック
公開中のゾンビ映画「新感染半島 ファイナル・ステージ」に続き、一応シリーズ作の一つであるこのアニメ映画を鑑賞。 シリーズ一作目の「新感染 ファイナル・エクスプレス」の前日譚となる作品で、人をゾンビ化させる最凶ウィルス蔓延の“はじまり”を描いている。  各実写作品の監督も務めるヨン・サンホ監督は、元々アニメーション監督だったようで、アニメ作品はお手のもののようだ。 一作目の「新感染 ファイナル・エクスプレス」が成功した要因の一つとして、アクションの見せ方のフレッシュさが印象的だったが、それもアニメ制作で培った構図づくりが活かされているのだろうと思う。  韓国製アニメを観る機会はあまりない。随分前に「マリといた夏」というアニメ映画を観たが、それ以来の韓国製アニメの鑑賞だったと思う。 アニメーションとしての精巧さにおいては、日本のアニメ文化と比較するとチープだと言わざるを得ないけれど、韓国映画独特の雰囲気はアニメ映画にも映しこまれていると感じた。 恐怖映画であることもあり、キャラクターの何気ない一挙手一投足に不穏さや不気味さがにじみ出ており、クオリティーのチープさを補う秀逸な空気感を携えていたと思う。  感染者(=怪物)と、人間(=怪物)に板挟みにされる絶望。 文字通り、「進むも地獄 退くも地獄」のその様は、絶望にまみれたこの世界そのものを表しているようだった。  そのシーンも含めて、やはりこの監督は、ストーリーを効果的に映し出すための舞台立てや構図づくりが巧い。 前日譚でもあり決して大きなストーリーテリングを見せるわけではないのだが、各シーンの舞台づくりが尽く巧いので、恐怖やスリリングをきちんと表現すると同時にシーンに相応しいドラマ性を生んでいたと思う。  ある夜に突如発生したパンデミックが、瞬く間に広がり、その絶望の極みと共にこの映画は終幕する。そのラストカットが美しい朝焼けであることもまた印象的だ。  今まさに世界はパンデミックによる恐怖と絶望の只中でもがき苦しんでいる。  明けない夜はないと言うけれど、果たしてこの夜はいつ明けるのだろうか。 そして、朝日が照らす世界はどうなっているのだろうか。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-01-15 23:40:16)
26.  The Witch/魔女
ある瞬間、愛らしい田舎娘の無垢な顔つきが、まさしく「魔女」そのものの狂気に包まれ、爆発する。 そのダークヒロインを務めた若き韓国人女優の“表現”は圧巻で、それ一つ取ってもこの映画の娯楽性は揺るがないと思える。 いつの時代も、どの国であっても、優れた「女優」が魅せる広義の“アクション”は、忘れがたきエンターテイメント性を観客に提供してくれるものだ。    序盤は、アクションなのか、サスペンスなのか、コメディなのか、ホラーなのか、掴み切れない映画世界のテンションに困惑した。 物語のベースとなる設定は明らかに不穏で闇に塗れたものであるはずなのに、序盤の展開で描かれるのは、田舎の夢見る女子高生たちが織りなすサクセスストーリーのようで、青春コメディかと見紛う。  ただ、事前情報と冒頭のシークエンスで、この映画が必然的にバイオレンスに転じることは承知していたので、観客としてはそのタイミングが今か今かと妙な緊張感を強いられる。 この絶妙な居心地の悪さ(褒め)は、まさしく韓国映画ならではのものであろう。  例えば同じプロットで、ハリウッドや日本でこの映画がリメイクされたとしても、この独特な空気感を表現することはできないだろう。 今年度アカデミー賞を勝ち取った韓国映画「パラサイト」にしても、あの国の風土、文化、空気の中で生み出されたからこその「傑作」であり、国境を超えて数多の映画賞を総なめしたことは非常に意義深い。    そんな相も変わらず芳醇な映画的土壌でまたもや強烈な映画が誕生したことは間違いない。 冒頭でも記した通り、絶対的なダークヒロインの誕生を表現しきった主演女優キム・ダミが、鮮烈な印象を放っている。 韓国映画界は、また一つ重要な“宝石”を手に入れたものだと思う。  一方でアクション性の高い娯楽映画だとはいえ、“粗”は散見する。 “ネタバレ”の肝となる要素も強引過ぎるし、整合性があるとは言い難い。 序盤からクライマックスまでの展開における独特な空気感を認めつつも、アクション映画としてのテンポは悪く、きっぱり長い。  とはいえ、今作は続編の制作を念頭に置いた“シリーズ第一作”なので、この作品単発のテンポの悪さは、今後の続編のクオリティいかんで上方修正されることだろう。  とにもかくにも、新たなダークヒロインの更に加速したブチギレアクションを早く観たい。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-10-06 23:18:24)
27.  悪女 AKUJO
冒頭から繰り広げられる“一人称視点”での大殺戮シーンを皮切りに、想像以上にぶっ飛んだ映画だった。良い意味でも悪い意味でも。 「ニキータ」+「キル・ビル」+「女囚さそり」+etc…古今東西のあらゆる“ヒロインバイオレンス”の要素を詰め込み、混ぜ込んだ上で、独特の空気感でぶっ込んでくる。 見せつけられるエンターテイメント性は強引ではあるけれど、極めて高い。  相も変わらず韓国映画の土壌は、よく肥えて、充実しているなあと思う。 ただし、数多の韓国映画の傑作の数々と比較すると、「稚拙」な部分は多々ある。特にストーリーテリングにおいてはトータル的に稚拙だったと言わざるをえない。 中盤に挟み込まれる恋愛シーン、回想シーンは、ヒロインの「業苦」を増幅させるために確かに必要な要素だったとは思うけれど、もう少し手際よく見せるべきだった。 それに特別捜査官の男の心情はもっと包み隠した演出にすべきではなかったか。序盤から彼の想いはダラダラと垂れ流されているため、感情移入はする反面、終盤の彼の行動にエモーションを感じることができなかった。 で、可哀想な“娘ちゃん”の出自は結局なんだったのか?中途半端な尻切れ感は、後味の悪さに悪い方向に拍車をかけている。  だがしかし、だ。冒頭から最後の最後までアクションシーンはまさに「怒涛」。それは否定できない。 想像よりもずっと「漫画的」な映画で、上質な傑作とは言い難いが、「殺人の告白」に続きこの監督の良い意味でも悪い意味でも雑多な味わいは、一つの特徴だと思う。  ストーリーの粗とチープささえ嘲笑うかのように、「絶望」なんて言葉を遥かに通り越した終着点で高笑いを見せる“悪女”のおぞましい姿に絶句。
[映画館(字幕)] 7点(2018-03-01 23:15:55)
28.  10人の泥棒たち 《ネタバレ》 
一人のカリスマによって集められた10人の“泥棒”たちが、マカオのカジノを襲撃するという、まさに韓国版「オーシャンズ11」。 基本的なプロットは似通っているが、韓国映画らしくエグいところは結構エグく、必ずしも安直なハッピーエンドは迎えない。  「オーシャンズ11」との最も大きな違いは、“アンディ・ガルシア”的なターゲットは存在するものの、そのターゲットがそのまま「敵」というわけではなく、「敵は内にいる」ということだろう。なので、よくあるタイプのケイパームービーとは、娯楽性の気質が異なり、少々面食らう。  そのあたりが、韓国映画の「流石」と言える部分で、同じようなプロットで日本で製作したとしても、ただただハリウッド映画の表面をなぞっただけの迫力の無い映画に仕上がることだろう。 たとえ内容が似通っていても、そこに独自の価値観や行動原理、つまりは“お国がら”を加味することこそが、映画が世界中で作られることの意味だと思う。 そういうことが出来る出来ないの部分で、韓国映画との差は大きい。  この映画は、詰まるところ泥棒集団の愛憎が絡んだ“内輪もめ”を描くので、前述の通りよくあるタイプのカタルシスは得られない。 主人公タイプのキャラクターが意外な側面を見せ始めるので、時に困惑してしまう。 ヒーロー的なキャラクターは一人もおらず、全員が利己的な欲望と愛を追い求めて失墜へと突き進んでいく。 クライマックスは想定を超えるバイオレンス性を伴ったアクションシーンが展開され、また良い意味で驚かされる。  と、このまま突き進むと日本語タイトルに反して“重い”映画になってしまいそうだが、そこは時に軽妙に描かれるキャラクター造形でバランスを取っている。 特にチョン・ジヒョン演じる女盗賊は、“キャッツ・アイ”ばりのアクション性と美貌でとても魅力的だった。  その語学力で日本人夫妻に化けるのは無理があるだろうとか、中国人チームの若いニーちゃん最終的にどうなった?とか、諸々と突っ込みどころもある。 それに138分という尺は少々長過ぎるようにも思う。色々な要素が盛りに盛られていることは良いが、そうであればもう少しテンポ良く展開してほしかったと思う。  ともあれ「泥棒映画」としてクオリティーは高い。 結局、全員が悪党なわけだが、そりゃ当然。  「俺は泥棒だ 何が悪い」  主人公の台詞が明瞭に表している。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-09-06 14:44:18)(笑:1票)
29.  サニー 永遠の仲間たち
夏に同窓会をやるというので、実家から中学校の卒業アルバムを引っ張り出してきた。 15年以上経過していて、確実に記憶は薄れている。でも、記憶は決して無くなりはせず、ふとしたきっかけで甦り、思い出した瞬間からまた新しい記憶になるのだと思う。  かつて“サニー”と名付けた女子高生グループの面々が、ふとしたきっかけで25年ぶりの邂逅を果たし、それぞれの記憶が甦る。 懐かしいヒットチューンと瑞々しいコメディで彩りつつ、時に辛辣な現実を描きつけたこの青春映画の方向性は圧倒的に正しい。  諸々の描写に対して「そんなわきゃない」と言いたくなる部分は確かにある。 しかし、そんなことどうでもいいと思わせてくれる。そう思わせる要因は、何を置いても登場人物たちの素晴らしい存在感だと思う。 特に、高校生時代の“サニー”の面々を演じた若い韓国女優たちの、台詞回し、動き、風貌、佇まい、眼差し、あらゆる要素を含んだ“女優力”が素晴らしかった。 彼女たちが、笑い、泣き、傷つき、そして生きていく、その一つ一つをいつまでも見ていたくなった時点で、この映画の価値は揺るがないものとなったと思う。  映画の作り方も非常に巧みだった。高畑勲の「おもひでぽろぽろ」を彷彿とさせる主人公の主観による「現在」と「過去」の“行き交い”が、無駄の無い映像構成で叙情感豊かに映し出されていた。 映像的な展開のスムーズさが、心地よいテンポを生み、彼女たちの記憶をすんなりと追想できた。  人物描写も映像構成も本当に素晴らしい。 ただし、だからこそストーリーの顛末にあと一つの「工夫」が欲しかったことも否めない。 途中の展開の強引さは許容出来る。しかし、ラストの結び方には少々安直さを感じてしまった。 何か最後にハッとさせるストーリー的な巧さが備わっていれば、この映画の価値は更に高まったろうと思う。  それでも、この作品が多くの人に愛されるべき青春映画であることは間違いないし、本当に大好きなシーンで溢れている。 たぶん僕は、これから幾度も“サニー”の彼女たちに会いたくなるだろう。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-03-12 15:46:37)
30.  白夜行-白い闇の中を歩く-
韓国映画特有の“痛み”の表現の重さは、この物語に非常に合っていると思った。 身体的な痛みも、精神的な痛みも、この映画は濃厚に、説得力をもって描けている。 その部分は、とても良かった。  4年前に原作小説を読んだ。ふたりの男女が、長い長い年月に渡り、一筋のか細い光を必死に辿りながら果てしない闇の中を突き進む壮大な「悲劇」だった。 単なるミステリーの枠には収まり切らない“真相”とそれに伴う濃ゆい人間ドラマが見事だった。  今作では、原作の物語構成にかなり大幅なアレンジが加えられており、諸々のエピソードに相違はあった。 しかしそれは、原作ファンであっても、映画作品として、とても有意義だと思えるアレンジだった。 望まない性行為と、望まない殺人、この映画はいきなり主人公二人の“苦しみ”を如実に表す描写が折り重なって始まる。 主人公たちの人生が苦悩に満ち溢れたものだということを、ダイレクトに伝えてくる印象的なオープニングだった。 そういった映画的な表現の巧さは、さすが韓国映画だと思えた。  2年前に日本の映画版(堀北真希主演)を観た。映画化作品として良く頑張っていたとは思うが、あと一歩物語の本質的な部分での物足りなさを感じた。 今作は、前述の通り韓国映画ならばではの説得力で、日本版より優れている部分は多い。 しかし、残念ながら、日本版と同じような部分で物足りなさを禁じ得なかった。  それは即ち、物語の中心に存在するふたりの男女の「覚悟」の描写に対しての物足りなさだと思う。 あまりに悲痛な「過去」を共有し結びついたふたりが決めた「覚悟」。その深淵こそが、東野圭吾が紡ぎ出したこの物語の核心だと思う。 それは一般人には理解し難いほどに研ぎすまされた「愛」の形であり、映画化にあたってもそこに妥協や曖昧さがあってはならなかった。 “あの日”、「目的」を達成するまで「会わない」と決めた二人が、直接対面したり会話をする場面は極力描くべきではなかったと思う。せめて目も合わさずすれ違う程度、距離を置いて存在を感じる程度に留めるべきだった。  原作小説を読んでいなければ、手放しで満足できる作品だった。実際良い映画だとは思う。 そういう映画的なレベルの高さを備えた作品だからこそ、あと一歩の核心への踏み込みが足りなかったことは、非常に残念。 
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-23 08:58:29)
31.  TOKYO!
「TOKYO」という都市は、世界から見ても(世界から見ると特に)奇異な場所なんだと思う。 僕自身、あの街に数年間住んでみて、そういうことは常々感じた。 もちろん、日本の首都だし、何でもあるし、決して住みにくいところではない。 ただ、曲がりなりにも世界を代表する「国際都市」というにしては、あまりに完成されていないというか、一つの“スタイル”に定まることがない。  このオムニバス作品で、3人の世界の映画監督が描き出したものは、まさにそういった変化し続けるTOKYOという“モノ”の姿だったと思う。  オムニバス映画というものが、割と好きな方だ。なので、こういう企画を聞く度に、期待は膨らむ。ただ、それに相反して、結果的に一つの「映画」として面白い作品は少ない。  しかし、この「映画」はとてもよく出来ていたと思う。 TOKYOという奇異な都市を、世界が誇る3人の奇異な映画監督に撮らせるという企画自体が、そもそも奇異で面白い。 それぞれが物凄く個性的な世界観を描き出すので、フツーなら各作品を繋ぎ止めることは難しく、オムニバス映画としてまとめることは不可能に近いことだったと思う。  それを繋ぎ止めた要因こそが、TOKYOという都市であった。  ミシェル・ゴンドリーの哲学性に溢れたファンタジーも、レオス・カラックスの文字通り爆発的な変態映画も、ポン・ジュノの情感と根本的な力強さに満ちた精神世界も、すべてを「許容」する。 それこそが、TOKYO。
[DVD(邦画)] 7点(2010-01-10 15:49:27)
32.  大統領の理髪師
有史以来、いくつもの時代、いくつもの国において、“圧政”というものが繰り広げられ、その元で無数の庶民たちが健気に一生懸命生きてきたと思う。この映画は、隣の国におけるその一片を、一人の平凡な男の目線に立ち喜劇と悲劇を織り交ぜて描く。 もはや「相変わらず」と言うべきか、主演のソン・ガンホが素晴らしい。学はないが純朴で子煩悩な普通の理髪師を、実に巧みに愛嬌たっぷりに演じている。 きっと、この映画で描かれている韓国近代史は、韓国国民にとって物凄く辛い時代だったに違いない。他国の者では想像もつかないくらいに、この映画から受け取る感情は深いものだと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-19 02:26:09)
33.  #生きている
ホラー映画は苦手だが、アクション性の高い“ゾンビ映画”であれば何とか見られる怖がり映画ファンにとっては、程よく恐ろしく、程よくエキサイティングな映画だった。  韓国映画とゾンビ映画の相性の良さは、昨年鑑賞した「新感染 ファイナル・エクスプレス」でも確認済みだったので、一定のクオリティは期待でき、実際そつなく仕上がっているし、終始ドキドキ、ハラハラしながら鑑賞することはできた。  主人公の設定が、団地に住みオンラインゲームに熱中する男子高校生ということは、韓国の現代の社会性をストーリーの中に反映する上で、効果的だったと思う。 舞台設定を主人公が済む団地の室内及び敷地内に限定して最後まで描き切ったことも、過剰なスペクタクル演出に頼らずに、突如として日常生活が一変したパニックを描き出すことができた要因だろう。  また、今年(2020年)に公開された映画に相応しく、“コロナ禍”による今現在進行中の「混乱」や「制限」を風刺する描写もあり、この映画がこの年に製作され、劇場公開中止の憂き目にあいつつも、Netflix配信で何とか世界配信に至ったことには意義があったと思う。  ただ、その一方で、タイムリーな題材、フレッシュな設定に対して、もう一歩、二歩、踏み込みが足りなかったとも思う。 アプローチこそ新しかったが、描き出されたストーリー展開や、その帰着は、あまりにもオーソドックスなものであり、ホラー映画としても、ゾンビ映画としても、サバイバル映画としても、捻りが足りないなと思ってしまった。 安易などんでん返しというようなことではなく、何かハッとさせられるラストの顛末が見たかったなと思う。  まあそれは、韓国映画の“土壌”が豊かであることをよく知っているからこその贅沢な注文なのだろうけれど。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-12-19 22:11:48)
34.  監視者たち
韓国映画の共通した“巧さ”は、オープニング(アバンタイトル)に表れることが多い。 警察の“監視犯”の面々を主人公にした今作も、冒頭のシーンが実に巧かったと思う。 映し出される人物たちが一体何者かの説明もないまま、“或る尾行”と“或る犯罪”が平行して描かれ、観客はそのスリリングな展開に引き込まれる。 そして、その冒頭シーンが収束すると、それぞれのキャラクターの位置関係が明確になっている。思わず「巧い」と呟いてしまう。  今作は香港映画「天使の眼、野獣の街」(未見)という映画のリメイクなのだが、犯罪者の“行動監視”を専門とする部署の警察官たちの活劇というのはやはり新しく、興味をそそられた。 「情報化」が極まる現代社会において、犯罪捜査における彼らの役割の重要性が高まっていることは明らかで、彼らの活躍が事件解決に直結するという様にも説得力があったと思う。 一方で、やはり“地味”な部署であることは間違いないので、映像化においては、演出、撮影、演技の各要素に手練が必要だったろう。 しかし、そこについては流石は韓国映画である。冒頭シーンでも顕著なように、魅力的なキャラクターを配置しつつ、監視する者と監視される者との関係性だけで、サスペンスフルな映像世界を構築できていた。  追う者と追われる者。緊張と緊迫を繰り広げながら、両者の形勢が二転三転していく中盤までの展開は、非常に面白かったと言える。  ただし、だ。残念ながら、クライマックスからエンディングまでの顛末がいささかお粗末だった。  中盤までは、周到な計画で犯行を繰り返す犯罪者たちを、地道な捜査活動で徐々に徐々に追い詰めていく監視班の面々のチーム力が、サスペンスと豊かな娯楽性を備えながら描き出されていたのだが、クライマックスになりその優れた緊張感が破綻してしまう。 ラスト、犯罪チームのボスを追い詰めるくだりは、結局のところ主人公の超人的才能と強引な追跡劇で着地してしまい、それまでの影に潜んでプロ意識に徹した努力の日々は何だったんだと思えてしまう。 最期まで「地味」を貫き通して、監視班としてのルールを厳守した解決に結んで欲しかったと思う。  とはいえ、娯楽映画として観る価値は充分にある作品であることは否定しないし、オリジナルの香港映画も是非観てみたいと思えた。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2016-07-24 22:18:10)(良:1票)
35.  殺人の告白
この韓国映画のタイトルとイントロダクションからどうしても想像してしまうのは、名匠ポン・ジュノの「殺人の追憶」。 かの傑作並みのクオリティーをそのまま期待することは無謀だろうが、連続殺人事件の真犯人と追っていくというプロットも類似しており、同様のテイストを期待していた。  雨音から始まるオープニング、期待は更にググッと高まった。 時間軸を超えて現在から過去、そして過去から現在へとオーバーラップさせる演出は、なかなか凝っており、韓国映画の素地の確かさを感じさせる。  ただ、冒頭から繰広げられるアクションシーンがやや演出過剰で、リアルでないことが先ず気になった。 その危惧は映画が展開されるにつれ更に際立ってくる。 挟み込まれるアクションシーンがことごとく無駄に派手なばかりで、その演出があまりに陳腐だった。 特に、カーアクションは明らかに蛇足。「ジャッキー・チェン映画じゃないんだから」と突っ込みたくなるリアリティーラインが破綻した描写の羅列は、明らかに作品のあるべきテイストと乖離していて、途中で観るのをやめたくなるほどだった。  「あー思ったのと全然違う映画だった……」とただ落胆することが出来ればある意味簡単だったのだけれど、そこから盛り返してくるから、逆に始末が悪い。  連続殺人鬼によって人生を狂わされた主人公の刑事、時効成立後「自分が真犯人だ」と告白する美青年、そして連続殺人の遺族たち、複数の思惑が入り乱れサスペンスフルなストーリーが展開していく。 その主軸となるストーリーテリング自体は、キャラクター描写も含めて非常に巧みで、真相に辿り着くクライマックスでは思わず息を呑んだ。  結果的には「面白い映画だ」と言えなくはない。 けれども、やはり陳腐で無駄なアクションシーンの連続が我慢ならない。  ラストで更に挟み込まれるアクションシーンもただただ蛇足。 どうせあのような結末にするならば、真相が判明したテレビ局の場面で終わらせるべきだったと思う。 過剰なアクションシーンの連続は作り手のサービス精神だったのかもしれないけれど、無用なサービスはただ「迷惑」なだけである。  もっとオーソドックスに韓国映画らしい良い意味での重苦しさを貫き通してくれたなら、それこそ「殺人の追憶」並みの傑作になり得たかもしれない。非常に勿体ない。その思いに尽きる。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2014-09-21 23:42:57)(良:2票)
36.  グエムル/漢江の怪物
明らかな「モンスター映画」でありながら、その主眼はほとんどモンスター自体には当たらず、ひたすらな家族愛を中軸とするシニカルなヒューマンドラマに仕上がっている。 米国の“モンスターパニック映画”や日本の“巨大怪獣映画”を想定してこの「モンスター映画」を観ると、少なからず面食らってしまうことは間違いないだろう。  かといって、登場するモンスター自体にもしっかりとインパクトはある。 水質汚染の突然変異的に誕生した~というのはかなりありきたりではあるが、その登場や動きの“描き方”は、これまでのモンスター映画の“パターン”に反旗をひるがえす様な、常軌の逸しかたを見せる。 笑ってしまうほどに“ぶさいく”なビジュアルにも賞賛を送りたい。  展開されるストーリーには、“陽”と“陰”が入り混じり、ただ“エンターテイメント”とはくくり切れない「感情」がほとばしる。 もちろん、そこには好みや固定観念が立ちふさがるので、一概に「面白い」とは言えない部分もあるにはある。  だが、一言に「モンスター映画」と言っても、国とその国民性の相違によって、これほどまでに独特で新しい「モンスター映画」が生まれるものか、と思う。 そして、そういう部分にこそ、映画が様々な国で作られ、それが様々な国で観られることの、意味と価値があると思うのだ。
[映画館(字幕)] 6点(2006-09-23 15:00:17)(良:1票)
37.  KT
ラストシーンで個人的には面白さが半減したのだけれど、映画全体の男臭い骨太さは見応えがあり、佐藤浩市、キム・ガプスの主演俳優陣の存在感はほれぼれするほどの濃密さがあった。事件当時の空気感がリアリティに溢れ見事だったと思う。
[映画館(字幕)] 6点(2004-01-13 15:47:35)
38.  新感染半島 ファイナル・ステージ
娯楽映画として、“楽しい”映画ではあったと思う。ただし、「新感染 ファイナル・エクスプレス」の続編として期待したならば、楽しみきれない。  前作は、韓国という国の社会性や人々の人間性を踏まえつつ、このジャンルの映画に相応しい「風刺」を併せ持ったゾンビ映画の傑作に仕上がっていた。列車を舞台にすることによる“パニック”の上乗せ加減も見事だったと思う。 しかし、この続編は、その後の世界を描きつつも、映画的なテイストはリセットされ、まったく別物の映画として作られていた。 前作が持っていた“韓国製ゾンビ映画”としてのフレッシュさを期待していた者としては、正直「思ってたんと違う」感は否めない。  文字通りの「地獄」に取り残された人間たちの狂気と、そこから生まれる恐怖やさらなる絶望を娯楽映画として描き出そうとした試み自体は興味深かったけれど、その世界観の作り込みがありきたりで希薄だったことが、「別物」の映画としても楽しみきれなかった要因だろう。  また、登場するキャラクターの一人ひとりは個性的で魅力的な要素を持っていたと思うけれど、それらをストーリー的にあまり活かしきれておらず、中途半端な人物描写に終始してしまっているとも感じた。  人がゾンビ化するウィルスの蔓延を止めることができず、4年間放置され、韓国国内のみマッドマックス的に崩壊しているという設定は豪胆で潔い。 北緯38度線(南北境界線)により、北朝鮮から先の大陸には感染が広がっていないという設定も無茶苦茶ではあるが、娯楽映画としては許容範囲だろうし、原題「Peninsula(半島)」が表す意図も際立っていると思う。  もう少しその「半島」というテーマが孕むこの国の特異性や、ある意味での孤立感みたいなものを、ストーリーに盛り込むことができていれば、このシリーズの続編としても、ゾンビ映画としても相応しい批評性が生まれたのではないか、と思う。
[映画館(字幕)] 5点(2021-01-10 23:22:10)
39.  ザ・タワー 超高層ビル大火災 《ネタバレ》 
災害パニック映画好きとしては、是か非かは別にしてとりあえず“語りがい”のある映画であったことは間違いない。  映画史上において数多の災害パニック映画が存在し、その中でも特に名作の誉れ高い「タワーリング・インフェルノ」の“モロパクリ”映画であることに否定の余地はないけれど、同時にまず最初に評価しなければならないこともその部分だと思う。 パクリだろうが、類似品であろうが、れっきとした災害パニック映画として堂々と仕上げている事実に、アジア諸国の中では抜きん出た韓国映画界のエネルギーを感じる。   とういわけで、今作がちゃんとした災害パニック映画だからこそ、災害パニック映画ファンとして、大いに「苦言」を呈したい。  何と言っても気に入らなかったのは、“死亡フラグ”の処理の曖昧さだ。 描き出されるストーリーは、いい意味で捻りのない王道的なものなのだから、そのせっかくの“ベタ”さを徹底して欲しかった。  この手の災害パニック映画ではお決まりである序盤の群像の人物紹介シーンにおいて、善玉と悪玉のキャラクターたちが揃えられてくる。 観客としては、この序盤のシーンの時点で、「ああコイツは初っ端に死ぬな」とか「コイツは惨めな死に方をするな」とか、「この人は英雄死するんだろうな」とか、極めて不謹慎な予測をすることも、パニック映画を観る際の醍醐味である。  今作においても、割と分かりやすい人物描写で、きちんとその“死亡フラグ”は立てられていたと思う。 にも関わらず、最終的のその処理のされ方があまりにずさんだった。  特に悪役における“処理”が、とても気に食わなかった。 ネタバレになってしまうが、この映画では明確な悪役が幾人かいるのだが、その内の筆頭とも言える“二人(二組)”が、のうのうと生き残るという顛末は、パニック映画の王道的観点からしてみればあり得ない。 更にネタバレ覚悟で言及するならば、コメディリリーフとして一貫していい味を出していた“司祭さま”が死んで、高慢な“議員夫婦”(特に悪妻!)が逃げおおせるなんて、どんな神経で描いているのかとすら思ってしまった。  韓国俳優ならではの内面的な“濃さ”が効いて、善玉も悪玉も各キャラクターそのものには総じて味わい深いものがあっただけに、文字通りに“生かされ方”と“死なされ方”に対して大いに腑に落ちない点が残ってしまったことは至極残念。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-02-12 22:27:06)
40.  タイフーン TYPHOON
主演男優2人の“熱さ”だとか“気迫”は確かにあって、彼らの演じるキャラクター達はエネルギッシュではある。しかしそれが、そのままキャラクターの魅力に直結しているかというとそうでもない。今ひとつそれぞれの人物描写に深みがないままに、物語は展開し、クライマックスを迎えてしまっている。 チャン・ドンゴンには、悲哀を携えた悪漢が、そして対するイ・ジョンジェは、実直で愛国心を込めた軍人という役柄が実に良く合っている。だからこそそれぞれの人物描写にもう少し繊細さが欲しかったと思う。 韓国のアクション映画らしく、盛り上げるべきアクション描写には迫力と重さがあり、充分に見応えはある。 ただ、あと少しのところで、この映画は“チャン・ドンゴンのスター映画”に止まっている。
[映画館(字幕)] 5点(2006-04-24 03:06:27)
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