41. 一番美しく
ストーリーは当たり障り無く、キレイ事で埋め尽くされているが、戦争高揚映画ということで敢えていちいち突っ込んではいけない。敗戦後に監督は「わが青春に悔いなし」という痛烈な反戦映画を撮っているので比較して見るのも面白いかもしれない。 寮母先生の美しさが印象に残りました。 [DVD(字幕)] 4点(2010-01-29 21:51:30) |
42. ゆきゆきて、神軍
《ネタバレ》 奥崎氏にとっての立派な人間とは、神の法に従って、人間が造った法律を恐れず、 刑罰を恐れず実行する人間であると氏は強く主張する。 この主張は絶対的に自分の正義を信じて疑わないまま突き進む、まさに彼そのものであり、真相究明は彼にしか出来ないと嫌でも思わされてしまう。 しかし大きな問題はその「神の法」を、奥崎氏自身が全て定めていること。 さらに彼を突き動かすパワーは異常とも言えるもので、相手への配慮など微塵も無く、 信じる正義のためなら暴力行使も厭わないという一般的には本当に危険な人物である。 戦争を題材にしたドキュメンタリーだが、あくまで奥崎謙三という濃すぎる人間を追いかけた映画で、単純でありがちな反戦プロパガンダフィルムでは全く無い。 奥崎氏の過激さはある意味魅力的で、次に何が起こるか分からない緊迫感を生み出しており、脚色せず第三者的視点から撮影しただけでも、立派にドラマが映し出されている。 これぞ正真正銘のドキュメンタリー。 そしてラストの流れで一気にこの作品が「映画」として昇華される。 ただ奥崎氏を追うだけでなく、見応えのある映画作品として仕上げているところに、この映画の凄さがある。ドキュメンタリー映画としては個人的に満点。 ただ残念だったのは、あれだけ正義をモットーとしていた奥崎氏が、結局実際関係ない元隊長の息子に発砲し重症を負わせるという結末。 これじゃ結局はブチ切れたら「神の法」も正義も関係なくなる単なるテロリストと呼ばれても仕方ない・・ 映画の出来云々ではなく、この奥崎氏のあまりに残念な結末に-1点。 [DVD(邦画)] 9点(2010-01-29 10:22:30) |
43. 監督・ばんざい!
あくまで映画ファン、さらに言うなら北野映画ファンにしかおそらく楽しめないであろう本作。 最近のいわゆる売れ、評価されている映画の傾向と、監督・北野武につきまとうイメージにウンザリし、北野監督はこの映画で一度自分の映画をサラ地にしようとした。 「みんな~やってるか!」でも同じような試みがされているかと思うが、それに比べて本作は何だかぶっ壊しが中途半端。 ナレーションも入り、「監督壊し」がより分かり易くは描かれているのだけれど、単純にギャグやぶっ飛び方にキレが感じられない。 前半は映画好きが観たら笑える箇所がいくつもあるけれど、後半どうせならもっとぶっ壊れてほしかった。 ラストシーンで映像的にはちゃんとサラ地にしているが、観ている側はなんだかモヤモヤが残る。 「みんな~」の時は、完全に悪い意味で客を裏切る事に成功した監督だからこそ、もっとアウトローな作品にどうせなら仕上げてほしかった。 まぁ監督自身がこの映画で自分にある種のケリをつけて完全に再スタート出来る状態になっているのであれば、ファンとして今後の作品に期待したいです。 [DVD(邦画)] 2点(2010-01-27 01:37:53)(良:1票) |
44. 悪い奴ほどよく眠る
《ネタバレ》 見事に予想を裏切る展開に脱帽。 森雅之の家庭での良きパパっぷりを後から振り返ると、何ともおぞましい人間だろうと唸らされた。しかしラストシーンではそんな彼でさえ実は頭を下げる身分で、上には限りなく、悪が存在している事を示唆する。 腐敗した権力に対する描き方は「生きる」に通じるものを感じたが、黒澤映画の素晴らしいところは、どの映画でもその主題以外の要素を絶妙に絡めて、作品に厚みを出すことに成功していること。 どの登場人物の人間描写にも手抜かりが無いから、じっくり感情移入出来る。 「天国と地獄」もそうだが、当時こんなに重厚なサスペンスを邦画として観る事が出来た日本人は誇らしかっただろうなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2010-01-25 08:20:59)(良:1票) |
45. デトロイト・メタル・シティ
《ネタバレ》 前半は最高!観る側が音楽ファンであればあるほど、細かいところまで拘っており、イチイチ面白い。 松ケンの歌は根岸のときもクラウザーのときも、とても良くハマっており、演技も含め役者としての非凡さを感じずにはいられませんでした。 ただ後半ダレるのが残念。もう少しコンパクトに仕上げてくれればより良い映画になったのではないでしょうか。もう一度通して見る気にはなれません。あとラストが何とも中途半端でスカッとせず。。 [地上波(邦画)] 5点(2010-01-24 01:09:13) |
46. わが青春に悔なし
前半の美徳をうっとおしいくらいに押し付けてくる演出には少しついていけなかったが、後半で盛り返した。原節子の演技といい、農村の絵全体といい、とにかく後半は凄まじい力をもって観る側を引きつける。原節子の演技以外は、良くも悪くも凄く普通にまとまっている映画だと思った。 [DVD(字幕)] 6点(2010-01-22 00:13:20) |
47. 虎の尾を踏む男達
この映画が作られた当時の知識が無いと(当時の名優達や時代背景など)、本当の面白さは分からない映画だと思います。自分は単純に黒澤映画が好きで辿っていく過程の一作品として何の知識も無く観たので、面白かったというより、良い勉強になった というのが正直なところです。 [DVD(字幕)] 5点(2010-01-19 16:29:35) |
48. 血と骨
たけしの凄みを感じさせる演技。 他キャストも申し分ない演技で、ひとりの恐ろしい男とそれに振り回され続ける人々を充分に表現出来ている。時折目を背けたくなるほど、痛々しいシーンもあり、部分部分で観ればかなり強烈な印象を持った映画ではある。 しかし、観終わってみて頭に残るのは、理不尽なまでのあらゆるもの(金、女など)への暴力描写、それに連鎖する不幸ばかりで、原作未読のためか、一体この映画で監督はいちばん何を言いたかったのかが理解出来なかった。 単に「怪物のような男が存在した」ということか? 在日朝鮮人という重みのあるバックボーンと、 主人公がいかにしてこんな怪物のような人間に至ったか それらをもっと深く丁寧に描いてくれても良かったのではないだろうか。 逃れられない悲しみは連鎖していくが、登場人物に感情移入出来ず、もう一度鑑賞する気にもなれない原因はそこにあるように思う。 役者陣がかなり体を張った演技をし、映像、音楽ともに素晴らしい出来であるために、凄く惜しいというか勿体ないというか。 [DVD(邦画)] 5点(2010-01-02 16:47:05) |
49. ホノカアボーイ
映像も音楽もゆったりとしていて綺麗。 キャストの演技も問題ないのですが、「いかにも」な台詞が所々散りばめられているのが気になりました。 悪い意味でなく、女性向け映画だと思います。 [DVD(邦画)] 5点(2009-12-24 05:45:56) |
50. みんな~やってるか!
究極にナンセンスで下らないいろんな意味でうんこ映画。 ただそこに迷いも感じない。 この映画で事故った後たけしも事故る。 究極のキタノブルーです。 [DVD(邦画)] 0点(2009-12-18 23:33:54) |
51. 菊次郎の夏
「たくさん遊んで すこーし泣いて」 このキャッチフレーズ、良いですね。 愛情表現の下手な不器用な男をたけしは見事に演じている。 子供を抱きしめる時のぎこちなさが、逆に胸を打つ。 久石譲の音楽もいつもながら音量が大きすぎて少し過剰に感じる部分はあるものの、曲がとにかく素晴らしく、映画の雰囲気を決定づけるものになっている。 照れ隠しのようなたけしの笑い顔、とってもやさしい「バカヤロー」の響き。 [DVD(邦画)] 8点(2009-12-17 09:30:49) |
52. あの夏、いちばん静かな海。
「その男~」「3-4x10月」、本作ときて「ソナチネ」へ。 全く作風の違う前3作が絶妙に集約され、ソナチネへと昇華されているように思える。 その前3作の中でも言葉に出来ない北野武独特の切なさがいちばん表れているのが本作。 主役2人が聾唖だが、きっと誰よりも波の音が聞こえただろうし、誰よりも純粋に人からの愛情を感じていただろう。 真木蔵人は表情だけの演技だが、不器用な青春の瑞々しさを見事に演じ切っている。 時折優しさや、笑いを交えつつも、静かに淡々と物語りは進んでいく。 ラストに堰を切ったように溢れ出す感情に、誰もが胸を打たれるはず。 ひとつ難点を言えば、久石譲の音楽自体は良いのだが、音量が大きすぎて映像よりも前に出て来てしまっている点か。なんだか過剰に盛り上げようと演出しているように思えてしまう。 北野武にしか創れない青春物語。 良いです。 [DVD(邦画)] 7点(2009-12-16 04:31:10) |
53. TAKESHIS’
デヴィッド・リンチを彷彿とさせるような(特にマルホランド・ドライブか)、悪夢的映画。・・と書くと見応えある作品に仕上がっているように見えるが、実際のところはマルホランド・ドライブのような重厚さは感じられず、ただただ監督が好き勝手に夢をぶちまけているような作品に思えた。 刺激的なシーンがいくつもあるのだが、やはり北野ブルーの中にパッと光るような刺激があるからこそ驚くのであって、この映画のようにただ連発されるとだんだん慣れてきてしまって、逆に感覚が鈍ってくる。 整理するとおそらく・・・ 「大物スターであるビートたけし」が夢を見る →夢の中での自分の分身像である「売れない役者北野」。 さらにこの売れない役者北野がコンビニバイトのうたた寝中に夢を見る →それは血まみれの男から奪った拳銃で滅茶苦茶やった挙句、最期には自分自身である大物スタービートたけしをも刺し殺す夢 このような、「夢の中のもうひとりの自分が見た夢」という設定で複雑に映像化しているのだと僕は解釈した。 監督が自分自身をぶっ壊したいっていう願望の現われなのかな・・。 残念な事は、難解な映画だが頑張って自分なりに理解出来たからといって、別に特別な感情も湧いて来ない事。 ドラッグムービー的な中毒性も、単純に映画としての魅力もあまり感じ取れなかった。 なんだか残念。 ちなみに「TAKESHIS’」は「たけし、死す」だそう。 [DVD(邦画)] 3点(2009-12-11 15:38:26) |
54. 3-4X10月
まずやはり目を引くのがタイトル。 僕は「3マイナス4掛ける10月」だと思っていた。 鑑賞後もタイトルの意味だけがさっぱり分からず調べてみたところ、そんなに深い意味は無いのね(笑) 単なる野球のスコアで少しストーリーに引っ掛けてあるぐらい。 北野監督2作目となる本作は、前作のソリッドさからは大きく離れ、後の北野作品の土台となる出来となっている。 死、枯れた笑い、皮肉、沖縄・・・ など「ソナチネ」にかなり通じるものがあるが、個人的には本作の方が好み。 しかしなんなのだろう この初期北野映画の妙な中毒性は。 作品自体の映画としての完成度は一般的に見れば低い部類だろう。 しかしそれ故の「満たされない」独特の雰囲気が、上手く言葉に出来ない感情を僕らに抱かせ、 もう一度観たくなってしまう。 支離滅裂な展開で初めは戸惑いを覚えずにはいられないが、オチで収束される。 この手のオチは個人的にはあまり好きでないやり方なのだが、本作に関してはこの落としかたがベストに思える。 興行収入に恵まれなかったのはむしろ当然と思ってしまう掴み所の無い本作だが、 この感覚を他の映画で味わえるかというと・・。 好き嫌いハッキリ分かれると思う。 好きな人はきっと僕と同じように中毒になってしまっているはず。 前作のファンのことなんか全く考えていないようなぶっ飛び方。 でも色調はやっぱり北野映画。う~ん凄い。 [DVD(邦画)] 7点(2009-12-08 17:34:47)(良:1票) |
55. ブラインドネス
《ネタバレ》 「パウロの改心」が下地にあるとのことだが、たとえその予備知識があったとしても、描き方がどうも単純すぎてとてもじゃないが良作とは言えない。 自分は予備知識の無い状態で観たので「何か宗教的意味が込められているのだろうなぁ」という漠然とした思いを引きずりつつも、蓋を開ければ期待していたよりずっと普通のパニックムービーだった。 宗教色を取り除いてしまえば、このレベルの映画はいくらでもあるのではないだろうか。 ただ、この監督の作品の映像、音楽は毎回のことながら素晴らしい。 特にスーパーの地下(暗闇場面)の演出は目を見張るものがあった。 シティ・オブ・ゴッド、ナイロビの蜂の監督と、設定やCMがかなり期待をそそるものだっただけに、悪い意味で期待を裏切られた気分。 [DVD(字幕)] 2点(2009-12-04 17:22:01) |
56. 座頭市物語
《ネタバレ》 闇夜の斬り合いの場面、市が提灯の灯を重心を下げて 「ふっ」 と消してからの、緊迫感。 個人的にはあの場面がシビれました。 斬り合いが少ないことでかえって作品全体の緊迫感が高まっている。 ストーリーも無駄が無く、ベストな長さ。 これにシビれないヤツは男じゃない。 [DVD(邦画)] 9点(2009-12-03 09:39:27) |
57. アキレスと亀
《ネタバレ》 自分自身も音楽を作っていたりするので、この作品の言いたい事は本当に良く分かったし、他人事に思えない部分があった。 才能が有っても無くても、芸術に魅了されてしまうと、現実との狂いは避けられない。 たけしの絵も絶妙にその時々の心情が描かれており、確実にその辺を意識した上で描き分けているのが凄い。 狂いに狂って、最後は凄く力のある芸術に近づいた絵を描くのに、その時はもう主人公は絵を売ることすらどうでもよくなっているくらい狂ってしまっている。 その頃にはもはや空き缶ぐらい、彼には何も残っていない。 そこで彼に差し伸べられた手は、本当に彼が狂って目指していた芸術の答えではなく、本当に単純すぎるほどの「愛」。 考えさせられます。 [DVD(邦画)] 8点(2009-12-02 21:30:47)(良:1票) |
58. 歩いても 歩いても
日本人を深く深く描いた映画。 言葉の全てに深い含みを感じ取れ、でもそれは日本人の最も無意識で自然なかたち。 練りに練られた脚本と素晴らしい俳優陣の演技により、圧倒的にリアルな日本人の姿が描き出されている。 上手く言葉で表現出来ない感情を、表情、雰囲気、仕草で本当に巧みに表現しているから、観賞後はずっしりと心に残る。 「いつもちょっとだけ間に合わない」という台詞。 そうそう!それが日本人だよなぁ って唸らされた。 ノスタルジックなゴンチチの音楽は優しいが、この作品は決して優しくは無いと思う。 観賞後覚えたのは上質な純文学を読んだような感覚。日本人の複雑な胸中を是枝監督は完璧なかたちで具現化してくれた。 文句無し10点です。 [DVD(邦画)] 10点(2009-11-21 11:31:44) |
59. Dolls ドールズ(2002)
《ネタバレ》 菅野美穂の演技、全体に漂う北野節ともいえる無常感は非常に良かった。 しかし内容に深みを感じられず、感情移入出来なかった。 アイドルの追っかけの話並みの濃密さが、他の2つの話には感じられない。 そして3つの話を微妙にリンクさせる演出は果たして必要だったのだろうか? 映像は確かに美しく、台詞も少なく、じっくり感傷に浸りたいところなのだが、 ストーリーの深みの無さで、単なる美しい映像の長回しで、退屈に感じてしまう箇所が多かったのも残念。こういうテイストの映画は個人的に好みなのだが・・。 [DVD(邦画)] 3点(2009-11-16 07:23:53) |
60. 自虐の詩
《ネタバレ》 原作未読。素直に楽しめ、感動出来た。 減点ポイント・・・ ・東北出身の僕にとって、訛りが不自然すぎて気になった ・イサオが何故マトリックスwからあんなにひどい男になってしまったのか、その過程の説明が無かったこと ・エンドロール後のシーン、映像で終わらせれば美しかったものを、取って付けたような語りで締めるのはどうか この3点以外はテンポも良く、何より中谷美紀の演技が素晴らしい。 後半の回想シーンあたりからグッと感情移入させられる。 感涙ポイントは・・・やはり熊本さんでしょう。 [DVD(邦画)] 8点(2009-11-15 10:46:06) |