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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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61.  ロスト・イン・トランスレーション
二人の姿をみていると、彼らがなじむことができないのは異国の文化に対してだけじゃないんだな、と思った。「家族から必要とされていない」と感じているボブと、理解のない夫との関係に疲れているシャーロット。子供は電話に出てくれない。妻は「忙しいのよ」とか「あなたの心配をするべき?」とかしか言わない。ボブの寂しさをわかってくれない。夫は妻が苦しんでいるのは知っているはずなのに、彼女の話を聞いているはずなのに、その気持ちが伝わらない。二人の言葉が届かないのは日本人だけじゃない。たまたま出会った二人の間にはたいしたドラマなんて起きないけれど、お互いの孤独への理解が、ほんの少しだけ二人の心を通わせる。タクシーを止めてシャーロットの元へ向かったとき、ボブは二人が結びついた時間がささやかではあるものの、かけがえのない価値のある時間だってことに気づいたんじゃないだろうか。たとえ日本じゃなくても、二人には安心できる場所、迎え入れてくれる人がいないのかもしれない。ラストに抱き合えたことはちっぽけな奇跡で、あんな瞬間があるからみんな寂しさに押しつぶされずにいられるんだと思う。人の心は外国よりもずっと遠いところにあるから。  (日本の描写が不公平なことはみなさんのおっしゃるとおりだと思いますが、自分には許容範囲でした。たまに日本のマンガに出てくるアメリカ人に、「ダジャレみたいな寒いジョークをとばして一人で笑っている」キャラクターがいますから、マシューの扱いも仕方ないかも、なんて。偏見もお互い様なとこがあります。)
7点(2004-12-26 06:20:50)(良:4票)
62.  ざわざわ下北沢
ストーリーはよくわからないし、感情移入を拒否するような作り方をしているので眠くなるのは確か。映画というより下北沢で繰り広げられる日常(ちょっとはドラマチックなシーンもあるが)風景のパッチワーク。普通に撮ればもっときれいに撮れるような映像からわざわざちょっとはずして映し、音を織り交ぜて「ざわざわ」した喧騒を入れるといった手法は面白い。話よりも雰囲気を楽しむ、なんだか不思議な作品。普通の映画を楽しむようには楽しむことができないが、楽しめないこともないと思う。
7点(2004-05-09 23:05:13)
63.  ユンカース・カム・ヒア
よくできてはいるけれど、飛び抜けたところがない。可もなく不可もなく、というのは言い過ぎかもしれないが、いかにも文部省選定といった感じの無難な内容。  もっとも、地味なお話をここまで完成度の高いアニメーションに仕上げたのは確かな実力の証だとは思う。両親の不和に悩む女の子の心情描写には説得力があって、これといった捻りや目を見張る工夫は無いのにも関わらず、それなりに感動させられた。犬も愛らしく、記憶に残る。  しかしいかんせん、物語に拡がり、奥行きがない。とくに脇役が薄っぺらく、お手伝いさんのとってつけたようなおとぼけキャラといい、人物配置の卒のなさが鼻についた。小学校の授業で観せられたいくつかのアニメーションと同じで、まずまず面白いのだけれども、お気に入りの作品にはなりえない。そうなるには、お行儀が良すぎる。  一流のコックが二流の素材を使って料理して、できあがったのがこの作品だと思う。非常に惜しい、佳作。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2009-08-16 23:16:40)
64.  トウキョウソナタ 《ネタバレ》 
現代版『東京物語』を目指したのだろうか。とてもよく練られた脚本だと感じた。かなり突飛な展開もあるが、それも込みですべてが明確に家族の破綻へと収束していく。映像は常に被写体と一定の距離をとり、情緒的なべたつきを許さない。一家団欒のシーンでは小津ばりにカメラを固定しているが、おそらくかなりこだわったのだろう、これほどまずそうな食事の場面も珍しい(あ、でも朝ごはんのところはちょっとおいしそうかも)。  しかし筋書きがしっかりし過ぎているせいで、香川照之や小泉今日子の演じる人物が平板であるようにも思えた。今どき珍しいほど家父長的に振る舞う夫と従順な妻、という家族モデルは90年代の社会学研究から引っ張り出してきたようで、正直ちょっと古いんじゃないかと思う。俳優の力で救われているものの、率直過ぎる台詞もいくつかある(そうした台詞は一歩間違えるとまるで自分の不幸に酔っているようにも聞こえる)。  とはいえさすがは黒沢清だなと思わされたのは、単純に家族の再生を暗示して終わるのではなく、家族の変容を受け入れるという答えを提示して見せたことだ。初めは単純に反発していただけの長男はやがて精神的にも自立していくし、次男がピアノの才能を開花させたことも将来の独立を予想させる。そして無闇に威張りくさっていただけの父親は、次男が弾くソナタに黙って耳を傾ける。  無理に古い家族の形式を守るのではなく、それぞれが精神的に独立した個人であることを認めて、かつ家族であり続けようと努力する。題名が『ソナタ(=独奏曲)』である理由はここだろう。これはソナタが合奏になるのではなく、ソナタがソナタとして完成されるまでの物語なのだ。核家族のその先、という新たな時代と家族の変遷を描くことで、明確に『東京物語』“以降”であろうとする意欲が見て取れる。  ただ単純に楽しめたかどうかというと、この点数になる。人物の平板さもあるが、強盗のエピソードの唐突さに引いてしまったというのが一番の理由かもしれない。なぜもっとリアリティに徹しなかったのか、理解できない。
[DVD(邦画)] 6点(2009-07-14 08:17:37)(良:1票)
65.  大日本人 《ネタバレ》 
同じくお笑い出身の北野武も自身が主演する場合が多いが、あちらがあからさまにナルシスティックなかっこいいキャラクターであるのに対し、松本人志は徹底的に情けないオッサンであるというのが面白い。なんだあの変な長髪は。  エッセイを読んでも感じたけれど、やっぱこの人相当孤独感が強いんだな、寂しいんだろうなと思う。みんなから蔑まれつつも「大日本人なんだよっ」と強がる姿は、天才を自負しつつ(いや、実際そうだと思いますが)大衆からはとやかく言われてしまう自身と重なって見える。シャイで悪ぶってるから、こんな形でしか孤独を表現できない。というより、苦悩すらも笑いにせずにはいられないという、松本人志の業なのだろう。  公開当時の舞台挨拶で、松本は「今の日本、そして自分もがんばれと常々思っていますよ」と発言していた。それを聞いたときはなに言ってんだろと思ったが、映画を観て納得。日本人を風刺しつつ、自分自身も風刺している。  あと、これは考えついた自分でもアホらしいとは思うんだけどせっかくだから言わせてもらうと、『大日本人』と『松本人志』、共通する字を抜き出すと、『本人』ですよね。この映画は監督『本人』の話なんですよ、とそういうメッセージが読め――ああ、書いてて変な汗出てきたからやめます。まあそれはともかく。  終始かみ合うことのないインタビュー、そして飲み屋でいい気分になっている場面の物悲しさといったらなかった。大佐藤は見るからに滑稽で笑いを誘う主人公だが、その一方で、これ以上ないほど壮絶な孤独を抱えている。この映画はドキュメンタリー風のフィクションに見えるが、その実真逆で、フィクションを通して語られたドキュメンタリーなんじゃないだろうか。  ただ、高得点はつけられないというのが正直な感想。別にコントのエッセンスを映画の枠組みに持ち込むのは構わないが、コントの枠組みで映画を撮ってしまったせいで、単に安っぽさともの珍しさが際立つ結果になっている。序盤までは普通に上手かったと思う。いかにも映画的な長回しをさらりと使いこなしていたし、原付バイクのシーンで主人公を取り巻く状況が徐々にわかっていく演出は素晴らしかった。しかし中盤以降急速に半端が目立つようになり、最後はさすがに、やっちゃった感が否めない。  次作は挽回してくれるものと期待しております。
[DVD(邦画)] 6点(2009-06-16 01:21:39)(良:2票)
66.  千年女優 《ネタバレ》 
リアルな画風だが、これが実写映像だったらかなり違和感があるだろう。何しろ虚実入り混じった回想をその場の数人で共有するという、冷静に考えたら相当に破天荒な視点だ。なまじ写実的な絵なだけに、アニメーションが通常とは異なるリアリティの分法を持っているということがよくわかる。  実は構成が『PERFECT BLUE』に引き続き、ミステリとなっている。映像と音楽で多少は誤魔かせているが、致命的に人間を描けていない。心理描写がプロモーションビデオ並みに浅く、87分の尺も長く感じられるほどだ。最後の台詞が必要なのはミステリの文法で脚本を書いているからで、ドラマ部分がちゃんとしていればあそこまで明示する必要はなかったし、仮にそのまま書いたとしても重みが全然違っただろう。  この内容ならいっそのこと一時間以内の短篇に凝縮してくれた方が、端正な秀作に仕上がったんじゃないだろうか。
[DVD(邦画)] 6点(2009-06-15 23:58:35)(良:2票)
67.  MIND GAME マインド・ゲーム(2004) 《ネタバレ》 
刺激的な作品であるのは確か。神様のイメージ、主人公とヒロインと結ばれるシーンもすごい。あんなの観たことない。ほとんどの声優にお笑い芸人を起用する大胆な試みも見事に成功している。湯浅政明さんという方は得難い才能の持ち主なのだと思う。  けれども、力技過ぎる後半の筋書きがいまいち……。心構えが変わっただけでなんでもできるわけもなし、テーマが率直なのは良しとしてもこれだけ語られるとさすがにクドくて、イライラさせられた。こういう熱いノリにはついていけたらいいけど、いったん白々しく感じたらそれでおしまい、おきざりにされてしまう。クライマックスであるイメージの奔流は、いろいろ詰め込まれてはいるけれど個々の発想はさほど切れがなく、冗長に感じた(ああ、でもアメンボやカツラには笑ったなあ)。序盤のテンションを維持できるだけの脚本力があったなら、名作になり得たと思う。  とはいえ、このような作品はとても貴重。アニメーションは半端無く自由度の高い分野のはずなのに、過去の作品のコピー&ペーストでしかない代物が多すぎる。これぐらいむちゃくちゃやってくれる才能がもっとあってもいい。
[DVD(邦画)] 6点(2009-06-09 17:59:01)
68.  ただ、君を愛してる 《ネタバレ》 
キャラクターはデフォルメが効き過ぎているし、演出はベタ、脚本はくどい……でも、駄作と斬り捨てるのも可哀そうな、微妙な出来。  悪い意味でマンガっぽく、もっとリアリティに気を遣うべきだったと思う。難病ネタを出すなとは言わないけれど、せめてもっともらしい説明をしてくれないと。あんな奇抜な設定には、クライマックスでさらっと種明かしされるだけでは乗り切れない。  それにいくら演技力があっても、美男美女が冴えないタイプを演ずるのは無理がある。主演の二人は努力していたけれども、冴えない人ってもっと瑞々しさがないっていうか、自信のなさが立ち振る舞いに滲み出ている(端的にいえば、身にまとうオーラからして冴えてない)もので、それを玉木宏や宮崎あおいが演じるのは至難の業だろうと思う。
[DVD(邦画)] 6点(2009-02-15 14:50:26)
69.  武士道残酷物語 《ネタバレ》 
原作が『シグルイ』の人だというので観てみました。  五部までは面白い。飯倉修造編で残酷が最高潮に達したので、このあとはどう展開するのかと思いきや、社会構造が一変してもなお服従の精神は変わらない明治編。ここがある意味いちばん怖かったし、秀逸な出来栄えだと思う。  しかし戦争編と現代編については、なかったほうがよかった。第二次大戦のエピソードは取ってつけたようなうすっぺらいものだし、会社への忠誠心を武士道の系譜としてみる現代編はさすがに話を広げすぎだろう。すべてを武士道精神で説明するのは日本人論としてあまりにも大雑把で、乱暴すぎる捉え方だ。  明治編で打ち止めにしておけば傑作だったものを、強引に現代まで繋げるからこんな怪作、異色作になってしまった。青年から老人まで演じて違和感のない錦之助は見ものだけど、かなり癖の強い仕上がりで、なかなか人には奨められない。
[DVD(邦画)] 6点(2008-01-01 20:52:10)
70.  墨攻 《ネタバレ》 
リアルな作風を期待していたのに、予想以上に荒唐無稽な部分が多くて興ざめした。  とくにとってつけたようなラブストーリーにはほとほとうんざりさせられた。戦場の描写は迫力満点なのに、人間ドラマとなると急激に薄っぺらくなる。軍隊にひとりだけ女性が混ざっている時点で不自然だし、そもそもファン・ビンビンという女優があの役柄に合っていない。  加えて、大仰過ぎるアクションシーンにも首を傾げてしまう。崖から飛び降りるハリウッドまがいのエピソードや、人がお手玉みたいに吹き飛ぶ水攻はリアリティがない。  古代中国の戦国を描くならもっと渋い描写に徹するべきで、変に一般受けを狙ったがために幾つもの面でバランスを崩した作品になってしまっている。軍師の苦悩と悲恋物語の組み合わせはちぐはぐだし、痛快なアクションと戦場の悲嘆は相容れない。たとえば少女の間諜が民衆に殺される下りは見せ方によっては名場面になっただろうに、強い印象を残さないまま他のエピソードにうずもれてしまっている。  漫画版は未読だが、なるほど長大な尺が許される漫画であれば多様な要素を取り込んでも説得力を持ち得たかもしれない。しかしこの映画に関しては、欲張って詰め込みすぎたあまり、かえっていろいろなものを取り落としてしまった感がある。
[DVD(字幕)] 6点(2007-09-05 09:50:16)(良:1票)
71.  めし 《ネタバレ》 
なんか違う。  たとえば小津安二郎の『晩春』だって前時代的な価値観が背景にあるが、あちらはあくまで「背景」であって、登場人物の心情には嘘がない。ところがこの作品では当時の価値観に沿うように物語が流れ、テーマのために登場人物が歪められているような印象を受ける。『晩春』は自然で普遍的なドラマであるのに対し、こちらは押し付けがましく、説教くさい。  成瀬監督といえば暗いくシビアな視点が持ち味だと思うけど、今回はハッピーエンド、しかも手紙を細かくちぎって列車の窓から捨てるといういかにもな演出つき。取ってつけたような、というのは言い過ぎかもしれないが若干の違和感は否めず、成瀬さんらしからぬ感じがした。映画の九割までは面白かったのに、結末に至って主張が物語に先立ち、バランスが崩れてしまったという印象。
[DVD(邦画)] 6点(2006-10-26 19:03:39)
72.  リンダ リンダ リンダ
山下監督の作品は他にも観たけど、なぜか今回に限って間の長さが気になってしまった。期待していた山下節とちょっと違ってたからかなあ? 個人的に共感できる要素が薄かったせいかもしれない。リアルといえばリアルなのかもしれないけど、もう少し浮き沈みがあってもいいんじゃないかと思う。なにが嫌って、ライブシーンを別にすればあんまり楽しそうに見えないんだよね、この子たち。下手すると、現実よりもつまらなそう。現実の女子高生ってもっとエネルギーいっぱいで、ときどきうるさいくらいにテンションが高い。なのに、この映画ではずーっとローテンション。これではわざとらしさを排し過ぎたことで却って不自然になってしまったような印象を受ける。   小ネタが効いている点は好き。とくに地味に頑張っている放送部の男子生徒のエピソードがさりげなく盛り込まれているのがよかった。目立たないけど、彼にも彼なりの物語があるんでしょうね。
[DVD(字幕)] 6点(2006-04-14 16:13:44)(良:1票)
73.  眠狂四郎 無頼剣
シリーズ他作品は未見ですから明言できませんが、やっぱり悪役がいいと主役も栄えますね。うたい文句通り、主人公の影。剣の流儀だけでなく、自らの正義を信じて誇り高く闘う彼の姿は狂四郎に重なるものがある。敵役ながら卑しい雰囲気がまったくなく、もう一人の主人公と言えるでしょう。とくにあの子供との交流がいい味わいを出していたと思います。最後はあっけないと感じましたが、考えてみればあれ以上続けたら野暮かもしれません。
[DVD(字幕)] 6点(2006-01-08 09:47:53)
74.  ほしのこえ
わずか25分の掌編。新海誠も映画として作った気はさらさらないだろうから、この場で二時間前後の映画群と同じものさしで評価するのは少々酷な気がする。酷というか、ほとんど無茶である。映画を観るより軽い気持ちでさらっと鑑賞すれば、それなりに満足できるのではないか。状況を考慮して、サービスで6点付けときます。  アニメーションを見慣れている人なら大丈夫なのかもしれないが、年端も行かない女の子が巨大ロボットに乗って宇宙のモンスターと戦う、というリアリティのない設定にはやはり抵抗があった。しかし結末は悪くなかったと思うし、言葉の使い方や、とくに背景美術の美しさには息を呑むものもあった。透明感のあるきれいな映像は、一人で製作したからどうという意味ではなく、文句なしに素晴らしいと思う。脚本の力を伸ばすか、あるいは他の優れたクリエイターと手を組んだなら、将来は大傑作が生まれるかもしれない。
[DVD(字幕)] 6点(2006-01-05 13:36:11)
75.  鬼畜大宴会
グロいというよりかは、汚い。登場人物も舞台も、とにかく汚い。70年代の若者の不細工さが妙にリアルで、役者に演技力はないが、とにかく嫌なキャラクターばかりで胸がむかついた。狭い部屋にやり場のないどろどろとした鬱屈が溜まっていく息苦しさはひどく不愉快で、そりゃ学生運動で爆発しなきゃやっていけないだろうなと思わせる。映像にも音楽にも独特のこだわりがあって、なかなかどうして成功しているように思えた。とくに荒んだ空気の表現が非常に上手いのだ。しかし人間が狂気に囚われていく過程としては、さほど真に迫っているとは思えなかった。恐慌へ向かう集団心理のリアルな描写を期待していたのだが、細かな経過はすっ飛ばしていきなり発狂。「へ?」という感じ。これじゃ学生たちにもともと発狂する素質があったとしか説明のしようがない。狂気そのものを描くという意味ではすごいのだが、おかげで少し物足りなかった。もっともこんな題名の映画にドラマを求める方が筋違いなんだろうが……
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-03 05:41:51)(良:1票)
76.  ジョゼと虎と魚たち(2003)
う~ん……ちょっと、共感できないなあ。とくに恒夫、自分とはかなり違う性格の持ち主で、よくつかめない。話の流れを見ても、自分の経験と重なる部分がない。雰囲気は良い。でも映像的にとりたてて洗練されているというわけでもないし、記憶に残らないだろう。海の場面がいちばんきれいだけど、海を鮮やかに映すのって比較的簡単なんじゃないの? 珍しくもないし。また、恋愛映画なのに、二人の恋愛感情はあまり伝わってこない。感覚的な表現が非常に上手く(朝ごはんの味とか、乾いた空気とか)、巧みに観客をひきこむ力があるのは確か。それだけに、あまり実感の伴わない恋愛物語でも、騙されて最後まで観てしまった。本当にお互いを好きだったの? という根本的な疑問すら感じる。寂しさと、ほっとけないという使命感で引き合ってただけじゃないのと思った。ほんと、わっかんないよなあ……そもそも出刃包丁を振り回す女に惚れる気持ちがわかんないだもんなあ。 あ、でも音楽にくるり、イラストにDを選ぶのはほんとにいいセンスだと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2006-01-01 04:48:05)
77.  BLOOD THE LAST VAMPIRE
デジタル技術はすごいが、かっこいいとは感じなかった。技術はあるが、センスがない。見せ方が上手いのはせいぜい冒頭の列車のシーンくらいか。せっかく日本刀という絵になる武器を持っているのに、普通にぶったぎるだけ。戦闘機に飛び移ろうとするモンスターを斬るクライマックスなんか、もっとドラマティックに演出できたはずで、これじゃ尻すぼみだ。セーラー服に日本刀というキャラクターも好評のようだが個人的には「?」。男みたいな顔立ちなので女子高生が日本刀を持つというギャップも薄れている。心理描写も少なく愛着も湧かない。本作ヒロインをモデルにしたGOGO夕張は可愛くてかっこいいのになあ。モンスター造型は安っぽいの一言で、デビューしたての三文漫画家レベルのデザインだ。いちおう退屈はしなかったので6点。短くまとめたのは潔くてよい。
[DVD(字幕)] 6点(2005-12-28 00:22:11)(良:1票)
78.  パッチギ!
好きになれない。  まず、主人公とヒロイン、アンソンと桃子といった物語の中心人物に厚みがなく、ラストシーンを含む肝心な場面で心を動かされなかった(少なくとも恋愛物としては最低レベル)。脇役たちもいちおう特徴的でわかりやすい個性があるものの、人間としての深みがあるとは感じない。マンガの世界にはとりあえず変な口癖と特徴的な外見、性格をつけておけばとりあえずキャラが成立すると思っている作家がたまにいるが、人間を描くということとキャラを立たせるということはまた別だろう。  物語はギャグと派手なケンカシーンのために退屈はしない。しかしあまりに予定調和が過ぎ、説教臭さが鼻につく。「出産」というイベントの凡庸さ、あざとさには呆れた。イデオロギーが消化しきれておらず、論文のようなごつごつした骨格を持つ不自然な脚本となっている。  そもそも、いまさらこのような形で問題提起をされても、教育現場やマスコミでさんざん説教されてきた者にはとくに感じ入る部分はない。むしろこういった感情的に押し付けるような社会批判が多すぎたからこそ却って現在の日本人の反発を招き、嫌韓流ブームが生まれたのだと思う。本当に問題提起したいのなら、こんなやり方は逆効果。日本人・韓国人の両方を相対的に描いた上で衝突を描くような冷静さがあればまだ好きになれたかもしれない。  にしても、この作品えらい評判がいいですよね。自分は何か取り違えたのかな? でもわざわざ観返す気にはなれないんだよな。
[DVD(字幕)] 6点(2005-08-29 23:44:43)(良:1票)
79.  ブラウン・バニー 《ネタバレ》 
痛い。あまりにも痛い。やはりちょっと退屈だったけれど、ラストの真実で打ちのめされた。『バッファロー66'』では孤独で傷ついた青年が理想的な恋人によって癒されていくまでを描いていたが、今回は逆に理想的な恋人をこれ以上にないほど残酷なやり方で失ってしまった青年の傷跡を延々とみせられる。癒しの物語だった前作に対し、これは喪失の物語だ。いや、もしかしたらこれでも癒えていくようすを描いたつもりなのかもしれないが、あまりにも傷が大きすぎて、ある程度回復はしても完全に癒えるとはとても思えないのだ。  幸せな毎日を送っていたのに、ある日突然悪夢のような出来事が起こり、自分が上手く対処できなかったために最悪の結果を招いてしまう。結果的に恋人を見殺しにしてしまったことで、一生自分を責めていくはめになる。ありふれた日常が、いとも簡単に底なしの暗闇の中に落ちていく。これは恐ろしいことで、まぎれもない現実でもあると僕は思う。過酷な映画でした。
6点(2005-03-07 17:34:26)
80.  ルナ・パパ
絵本を開いたような可愛らしい映像ばかり。タジキスタンって不思議な場所だな、と思いながら鑑賞していたが、実はこの映画を撮るために巨大なセットを作ったそうで、いろいろな場所のいろいろな時代の建物を集めて創造された村らしい。 描き方はファンタジックでユーモラスだが、実はとても過酷で現実的な物語。アーヴィングやボリス・ヴィアンの小説を思い出した。ときどきファンタジーを厳しい現実に向き合うための一つの方法論として使用する作品があるが、この映画はそのもっとも成功した例だろう。楽しく可愛らしく描かれる、哀しく醜い物語。監督は人生が過酷で悲惨なものだと知っていて、それでもなお人生を愛したいと思っているんじゃないだろうか。ラストシーンでは奇跡が起きて主人公が閉鎖的な村から脱出することができるが、そこには作り手の願いが込められているようで、なんだかとても切なかった。
6点(2005-02-19 00:02:58)(良:1票)
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