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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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61.  東京上空いらっしゃいませ 《ネタバレ》 
それまで剛腕をたよりに数々の異色作・問題作を撮ってきた相米信二も、90年代に入って円熟味が出てきた感じがあります(もっとも彼の人生はその後10年余りでしたが)。そして本作は彼が手掛けた最後のアイドル映画で、相米アイドル・ムーヴィーの完成形でもあります。 ストーリーは大島弓子の『四月怪談』をモチーフにしたようなファンタジーですけど、やはりこの映画の魅力は初演技だった牧瀬里穂の存在に集約されるでしょう。正直いって最初は彼女のキンキン声のど下手なセリフ回しは引いてしまいますが、そのあまりに豊かな表情と瞳に引き込まれてしまって、「これもありかな」となってしまいます。そんな素人同然の新人女優が相米監督に長回し撮影で撮られたのだから、かなりハードな経験だったことでしょう。ハンバーガー屋では、殺到する注文を受けて一人で飲み物を準備しおまけに肉を焼いてハンバーガーを完成させるまでをワンカットで演技させられるんですから、こりゃ大変ですよ。名曲『帰れない二人』を、四人のシンガーにそれぞれのスタイルで歌わせるセンスはさすがです。吹き替えですけど、中井貴一のトロンボーンに合わせて牧瀬里穂が歌い踊るシーンは、懐かしの90年代の雰囲気にあふれていました。そして自分が大好きなのはラスト・シーンで、あのマウスピースを買いに来た女子高生はきっとユウの霊なんだろうなと思います。でも現世の中井貴一にはそれがユウには見えないんです。何かしらを彼は感じ取っているのは確かなんでしょうけど… 余談ですけど、鶴瓶は本作から相米映画の常連になりましたが、実はその後の出演作ではギャラは一銭ももらっていない友情出演だったそうです。
[ビデオ(邦画)] 8点(2017-11-26 23:27:28)
62.  赤西蠣太 《ネタバレ》 
これほど見事に省略技法と繰り返し話法を駆使する映画は初めてです。ラストの小波の家を訪れた赤西蠣太の「今日はあまりゆっくりできなくて…」の三回繰り返し、そしてウェディング・マーチで閉めるセンスにはもう脱帽。確かに夭逝せずに戦後まで映画界におれば、伊丹万作は日本を代表する巨匠に間違いなくなっていたでしょう。あの片岡千恵蔵が不細工男に扮してラブコメするのが観られるなんて、予想もしませんでした。また原田甲斐との二役も見事な貫録で、これが同一人物とは信じられないですよね。この映画の魅力を語るにはモダンなカメラワークを外すことはできません。冒頭の唐傘がクルクルと回るところやクライマックスの寛文事件の立ち回りなど、真上からとらえたショットはバスビー・バークレーのミュージカル映画を彷彿させるセンスです。 古い映画ですけど、観て絶対に損はないですよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-19 23:44:42)
63.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
やっぱり日本映画界はできる子だったんですよ、でもこれだけグロかったら地上波放送は絶対に無理ですね。と思ってよくクレジットを眺めたら、この映画にはTV局が製作委員会に加わってないんですよ。日本映画界をここまでダメにしちゃったのは、製作委員会に大手TV局が名を連ねていることなんだなと、確信した次第です。 主人公とJKが山に迷い込むまでのこの世の終わり感は半端なくて、ここだけでもハリウッドのゾンビ映画と真っ向勝負ができるでしょう。「テレ東が通常放送をやめたら日本は終わり」というネットギャグを盛り込んでいるところなんか苦笑ですが、これも製作にTV局が絡んでないから可能な脚本だったのかも。半面、モールにたどり着いてからのモタモタ感は残念です。確かに立て籠もり軍団の構成には違和感があります。男女とも平均年齢が若すぎるし、とくに男は徳井優を除くとヤカラみたいなのがほとんど。その中でニートみたいな吉沢悠がリーダーとして采配を振るえたというのは、なんか説得力がないんですよね。大泉洋のヘタレぶりは観ていてイライラさせられるほど上手いです、銃刀法違反を極端に気にする訳の分からない小心さも笑えました。まあなんでこんな漫画アシスタントがクレー射撃用ライフルを持っているのかは謎ですけど(笑)。 これは原作ありきなんでしょうけど、有村架純の身に何が起こっていたのかは、すごく気になるところです。続編製作を希望です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-15 20:04:14)
64.  独立機関銃隊未だ射撃中 《ネタバレ》 
この映画の陰の主役と言えるのは、三橋達也たち五人の兵士が撃ちまくる九二式重機関銃です。使われているのはもちろん撮影用のレプリカでしょうが、金属を多用して製作されているので、質感がとてもリアルに感じます。機関銃発射までの手順も丁寧に描写しており、脇に控える兵士が保弾盤を使って弾薬補給するところなんて実感たっぷりです。“狙撃機関銃”の異名をとるだけのことはあって、スコープを使って射撃するシーンもあります。昭和三〇年代の映画ですから、実際にこの機関銃を撃った経験があるスタッフもいたんじゃないでしょうか。そういや軍隊経験のある親父も、「九二式重機は撃ちやすくて命中率が高い、陸軍で最良の兵器だった」と回想していました。 ほぼトーチカの中だけで物語が進行する密室劇の様な趣きもあって、日本版『Uボート』みたいなところもあります。敵の砲撃を雨あられと浴びるトーチカの中に籠る恐怖は、爆雷攻撃を受けるUボート乗員の絶望に通じるものがあるんじゃないでしょうか。三橋達也がまた自然でリアルな演技で、この軍曹についてゆけば生き残れるんじゃないか、と頼もしく感じてしまうぐらいです。でもそんな有能な下士官に率いられていても、所詮は多勢に無勢でソ連軍に叩かれて全滅してしまうわけです。その各人の死にざまもけっこうエグくて、佐藤允は火炎放射器に顔を焼かれてモンスターの様な顔貌になってしまうし、志願兵は爆破されたトーチカの中で文字通り肉片になってしまいます。明らかにラストは『西部戦線異状なし』の模倣ですけど、それなりに雰囲気はよく出ていました。 この時期に製作された日本の戦争映画には反戦を主張するイデオロギーの道具の様な代物が多かった印象がありますけど、本作は戦争というか戦闘を真正面から描いていて、なおかつ反戦メッセージとのバランスも良くとれています。ただ少し残念だったのは、九二式重機関銃にかけるような拘りを攻めてくるソ連軍の描写にも見せて欲しかったところです。戦車なんかはまるで国籍・年代不明な代物で、まるでおもちゃ屋で買ってきたブリキ戦車をそのまま撮影に使っているような感じです。どうせプロップやミニチュアを造るんなら、センスさえあればいくらでもソ連戦車に似せることができるんですけどね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-07-31 22:40:33)
65.  お葬式 《ネタバレ》 
自分が喪主を務めた経験から閃いて一週間で書いた脚本なんだそうですが、その着想と切り口はさすがというしかなく、この一作によって伊丹十三自身も映画作家としての道を切り拓けたわけです。伊丹映画というと作りこまれたキャラの登場人物が特徴ですけど本作は逆に主人公夫婦が俳優というほかは出演者がみな平凡な一般人という設定です。山崎努もお得意の脂ぎったアクの強いキャラではなく、私生活の雑事からは逃げるタイプの優柔不断な男であるってのが新鮮です。この映画の凄いところは、“お葬式”という自身が葬られることも含めてどんな人間でも一度は体験する儀式を、その平凡な進行の中に潜む“可笑しさ”をまるで神の眼で見ているかのように客観的に描いているところなんです。こういう知的なアプローチのコメディはそれまでの日本映画にはほとんど皆無だったことを考えると、伊丹の才能は驚嘆すべきものがあります。さすがに長い俳優生活を経て映画を知り尽くしていただけあって、随所に見られる映画技巧はこれが初監督作とは信じられないですね。その後はどんどんその技巧に溺れるような作風になってしまったのは残念ですけど。 そして見るたびに感じるんですけど、メンヘラ愛人の高瀬春奈のキャラは果たしてこの映画に必要だったのかな、ということです。確かにあの爆尻と腋毛を見せつけるシーンはもう強烈で、現在ならあのシーンのおかげでR15指定ぐらいにされるのは必定でしょう。でもそこでカットバックを使って宮本信子がブランコで揺れるところを見せるのがまた強烈な印象で、あの横移動する木柱は夫の不倫に気づいている彼女の葛藤を表しているんですけど、それと同時に山崎努が高瀬春奈に行っている行為の暗喩にもなっているんです。伊丹の作品にはたいがい1箇所はエロシーンが入るのが恒例ですけど、どの映画でもハッとさせてくれます。彼自身もそういうのが好きなんでしょうけど、それにしてもこの山崎努と高瀬春奈のシーンは、伊丹の全フィルモグラフィ中でも最高峰のエロなんじゃないでしょうか。
[映画館(邦画)] 8点(2017-05-23 23:26:43)
66.  赤い天使 《ネタバレ》 
なんでも増村・若尾コンビは全部で20本ああるそうですが、たぶん本作がその最高傑作というか極北に位置することは間違いないでしょう(全部観てるわけでもないのに偉そうですが)。だってほんと凄いんだもの、現役の映画作家ではその描写のエグさ・凄まじさはとうてい真似できないと思います。そりゃエグいスプラッターは日本でも撮られていますが、両腕を切断された兵士の性処理をナースがしてあげる描写なんて、当たり障りのない題材にしか手を出さないを製作委員会方式が幅を利かせている現状では絶対にありえません。まるで魚を捌くように手足を切り落としてゆく野戦病院、そして「俺は人命を救っているんじゃなくて〇〇〇を量産しているようなもんだ」と自嘲する軍医、ここら辺は『ジョニーは戦場に行った』に通じる不条理があって究極の反戦映画とも言えそうです。若尾文子もいい思いをさせてもらった男はみんな黄泉の国へ引っ張って行っちゃう、これじゃまるで“死の天使”ではございませんか。芦田伸介と二人で兵隊コスプレで始まるどう見たっての変態プレイはちょっと異様ですけど必見です。 増村作品の若尾文子はブレるところはあっても一途な女性というパターンが多いけど、それは本作の西さくらが完成形でしょう。ここは好みが分かれるところかもしれませんが、自分は川島雄三作品の若尾文子も捨てがたい魅力があると思ってます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-11-14 23:29:10)
67.  男の顔は履歴書 《ネタバレ》 
もと本職の安藤昇がやくざ以外の役柄で出演している映画は初めて見るような気がします、もっとも医者役といっても安藤昇そのまんまんで実にどすの効いたお医者さんですけどね(笑)。いちおう松竹配給の映画だったみたいですけど、まるで東映の実録やくざ映画を先取りしたようなお話です。というか、特筆すべきなのは超豪華な出演陣で、アラカンや香山美子まで出てくるというきらびやかさ、香山は特別出演となっていますけどなんでこの映画に出る気になったのか不思議。これも監督である加藤泰の人徳だったんでしょうか。 ストーリーは安藤の体験をもとにしたような終戦直後の三国人と闇市マーケットの抗争なんですが、もうまるっきり任侠映画と思っていれば間違いなしです。でも脚本の切り口がなかなか鋭くて、時系列をシャッフルさせた語り口はその手の映画としてはかなり斬新だと思います。また脇を固めている助演陣がツボにはまっているのも嬉しいところです。朝鮮人チンピラの菅原文太がかなりの存在感があったし、なんといっても参ったのは三国人のボス役の内田良平で、あのなぜか眉毛がない顔はスッゲッー怖かったです。 ラストは瀕死の重傷を負った因縁の中谷一郎の命を助けるべく成功率の低い手術を始めるところで終わるんですが、このストップモーションがかっこいいんです。これはなかなかの掘り出し物だったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-09-27 23:30:04)
68.  地平線がぎらぎらっ 《ネタバレ》 
同年についに倒産してしまった新東宝が、まるでいたちの最後っ屁みたいに放ったピカレスクムーヴィーの傑作です。それまでカスみたいな映画ばっかり撮ってた土井通芳が、まるで別人みたいにキレのいい映画を撮ったなんて信じられないことです。人間、やれば何でも出来るもんですね。 殺人や詐欺そして婦女暴行などで服役している5人がある刑務所に収監されている。彼らの雑居房に生意気を絵に描いた様な若者が加わる。この男は牢名主にも仁義を通さず挑発して好き勝手、5人は共謀してこの若造を自殺に見せかけて殺そうとするも、直前にこいつがダイヤ強奪の共犯で捕まり、どこにダイヤを隠匿したか喋らないまま懲役4年の刑に服していることが判る。この若造役がジェリー藤尾で、この演技が彼の生涯のベストアクトだと評価する人もいるぐらいです。無鉄砲でぎらぎらした男ですけど、なんか心の奥に隠し事を持った様な陰も有って魅力的なキャラです。主題歌もジェリー藤尾が歌っていまして、♪ぎらぎら、ぎらぎらっ、あの地平線が光ってる、そこにはオイラの夢がある、というパワフルな曲調で印象的です。 ダイヤを山分けする計画でみんなで脱獄してからの展開もけっこう面白いんです。お約束の仲間割れで一人また一人と脱獄犯は消えてゆくのですが、肝心のジェリー藤尾はどこか超然としています。ここで当然のごとく“ダイヤは本当にあるのか?”というサスペンスになるわけで、ここら辺の脚本も上手いなと思いました。 そして脱獄犯の女房の実家に立ち寄るシークエンスは特筆すべきで、いろいろ新東宝の映画は観ましたがこんな秀逸な映像は初めて体験しました。ジェリー藤尾が飛び入りで祭りの太鼓をたたきだし、それと同時に脱獄犯がすでに違う男と出来ている女房を追いかけ回す。この辺りはまるで同時代の増村保造みたいな撮り方で、新東宝映画でこんなモンタージュが観れるとは驚きました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-04-09 01:04:54)
69.  黒の試走車(テストカー) 《ネタバレ》 
モダニスト増村保造の面目躍如といった感じのキレキレのサスペンスです。映像も当時としてはかなりモダンで、増村らしい才気が感じられます。たとえば前半にあるバーのシークエンス、近景というかカメラのまん前でホステスが客を接待しているところを半身で捉えている、そして遠景では奥の席でヤマト自動車の馬渡が密談をしています、これが両者にきっちりピントが合っていて実にシャープです。タイガー自動車の企画課は倉庫みたいなところの二階にあって、そのロケーションを活かして上から下から観せるショットも多用されていて、こういうところもいかにも増村らしい。ストーリーも梶山季之の原作がしっかりしているから、タイガーVSヤマトのスパイ合戦のあの手この手を飽きさずに見せてくれます。まあ確かに、この映画の主役は田宮二郎ではなく高松英郎なんだと納得するしかないわけで、いくら高度成長期のモーレツ社員だと言ってもここまでくれば立派な犯罪者ですよ。当時はこういう生き方が肯定されていたわけなので、脱落してゆく田宮二郎の姿やラストの虚無的なセリフは世相に対する強烈なアンチテーゼだったろうと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-03-23 23:21:48)
70.  百円の恋 《ネタバレ》 
予備知識なくこの映画を観たら、最初はこのヒロインらしき女がボクサーになるなんておそらく想像だにできなかったでしょう。この映画ではとても感情移入できないどうしようもない登場人物ばかり出てきて、見続けるのがイヤになりそうなぐらい。そしてあの100円ショップの店、とても商売が成り立つとは到底思えないけど、店内に引っ切り無しに流れているお店のテーマソングだけは妙に頭に残ります。前半は安藤サクラのぶよぶよの肉体に合わせた様なグダグダな人間模様を、音楽も使わないでダラダラと見せられている様な感じが強烈。ところが男に逃げられボクシングに打ち込みだしてどんどん身体がスリムになってくると、それに合わせるように撮り方も引き締まって来て効果的に音楽も使われてきます。これはなかなかの手腕を持っている監督だと思います。もちろん安藤サクラあってのこの映画なわけですけど、それにしてもデ・ニーロばりの肉体改造と機敏なボクサーぶりは凄いの一言しかありません。会場に向かって通路を進むときの彼女のあの表情、こんな演技が出来るのは邦画界では彼女しかいません。「安藤サクラの顔つきは、ほんとに人を殺しかねない表情だ」という本作の映画評を見た記憶がありますが、まさにその通りです。 唯一残念だったのは、新井浩文は良いとしても両親や妹まで試合を観に来させたところで、これで一気にこの映画が持っているクールさが減じられてしまった気がします。そこは1点マイナスとさせていただきます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-26 23:41:37)
71.  ジャッジ! 《ネタバレ》 
あのキツネうどんのCMの破壊力、もう半端じゃないです(笑)コンコン、コシコシ♪っていうあのメロディが、まだ強烈に頭の中で共鳴してます。冒頭からの脱力系の展開は、なんか私にとってどストライクの剛速球でした。クライアント訪問するときまで膝小僧出した半ズボン姿のトヨエツが大傑作で、「無茶と書いてチャンスと読む」は私も使わせて頂きたい名セリフです。そう言えばかつて代理店のサラリーマンだった筒井康隆の小説に出てくる「士農工商・代理店」というフレーズを思い出してしまいました。それにしてもトヨタ・エースコック・丸井と実在企業の名を出してのパロディとは日本映画らしからぬ大胆さ、エースコックの宣伝室長なんて完全にコケにしている様な気がしますけど、怒られなかったんでしょうかね。でも鈴木京香が創ったトヨタのCMに関してはディスってる様な気がして、これがグランプリを獲るのは一種の皮肉なんでしょうかね。 監督も脚本家もCM業界の人たちなので、業界の内情はきっとリアルなんでしょう。パロっているけど広告祭の審査の内情も、実際あんなもんなんでしょうね。後半からラストに至るベタな展開はクサいんですが、コメディとしてはなかなか愉しめると思いますよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-02-23 00:20:46)
72.  赤線地帯 《ネタバレ》 
巨匠・溝口健二が赤線をテーマにするなんてまるで新東宝のエログロ路線の踏襲かよと思ったりしましたが、良く考えると本家はこっちで新東宝の“地帯(ライン)”シリーズは題名からして溝口をパクってるんですね。まあそのころには溝口健二はこの世の人ではなかったので、文句は言われなかったでしょうけど。 でもこの映画は新東宝なんて引き合いに出すのは大失礼なほど完成度は高いです。5人の女優のアンサンブルはそれは見事なもので、さすが「女を撮らせたら溝口」と言われただけあります。その娼婦たちをウエットになり過ぎない冷徹な視点で撮っています。娼婦と赤線経営者夫妻そして客も、みんな欠点だらけのしょうもない人物ばかりで、中でも若尾文子はとても畳の上で往生出来そうもない様な嫌な娼婦を好演していました。唯一、小暮実千代が演じる通いの娼婦だけは良い人というか感情移入出来るキャラでしたね、普段は眼鏡をかけていてまるで女教師みたいだけど凄い色気を感じました。 でもそんな小暮実千代を出し抜いて最後に美味しいところを持って行ってしまったのが、あのしず子という娘です。店屋物の丼を「わたしこんな美味しいもん生まれて初めて食べた」なんて言ってた下働きの娘が親の借金のために吉原デビューする、おしろいを塗りたくられてプロ娼婦に変貌してゆくカットは胸が痛みます。そしてラストでおどおどしながら客に声をかける姿には、思わず心を鷲掴みにされてホロリとしてしまいました。本作が溝口健二の遺作になったことを考えると、黛敏郎のまるでホラー映画の様な音楽も相まって、このラスト・カットには不気味さすら感じられました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-01-06 22:03:02)
73.  凶悪 《ネタバレ》 
あの「上申書殺人事件」を、原作ノン・フィクションがあるとはいえここまで真正面から映像化した努力には敬意を表したいところです。ちょっと不謹慎ですけど、映画化されていない興味深い事件が日本にはいっぱいあるんです。無難な題材や原作しかチョイスしない委員会方式の映画製作が幅を利かしている腐った日本映画界では無理もないですけど、そこはえげつないハリウッドを少しは見習ってほしいものです。もう団塊世代しか覚えていない連合赤軍事件なんかを映画化する前に、オウム真理教事件を映像化するべきじゃないでしょうか。 本作はと言うと、誰もが身震いする様な凶悪をエンタテイメントにまで高めた傑作だと思います。よく『冷たい熱帯魚』と比較されていますが、趣味の悪いデフォルメが無い分本作の方が優れてるんじゃないでしょうか。リリー・フランキーの不気味な演技には身震いさせられましたね。どの登場人物にも感情移入させない演出も秀逸です。でも主人公・山田孝之の家庭生活までストーリーに組み込んだのはちょっとどうかなと思います。母親の世話を妻に押し付ける彼の内面の闇としたいみたいですが、はっきり言ってせっかくの緊張感を削ぐだけだし、だいいちあんなことで悪人扱いされたらたまらんぞ、と感じる人が多いんでは。でもラストの面会シーンは真逆の演出ですけど『天国と地獄』のラストを彷彿させてくれました、これは監督のオマージュかもしれませんね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-11-13 23:17:16)(良:2票)
74.  空の大怪獣ラドン 《ネタバレ》 
東宝特撮で初のカラー作品。前半は他の特撮作品とは一味違うミステリー仕立て。炭鉱で連続殺人が起こり緊迫感が高まるが、実は犯人は甦った古代の巨大トンボの幼虫メガネウラだったというサプライズな展開。これだけで一本の特撮映画が出来そうなくらい秀逸なプロットで、炭鉱の事務所や坑道内のセットも造りこまれていて雰囲気が良く出ている。■ジェット戦闘機の本格的な空中戦映画を撮るのが夢だった円谷英二だけあって、ラドンとF86セイバー戦闘機の死闘はまさに元祖・大怪獣空中戦と呼ぶに相応しい。超音速で飛翔するラドンを巨大な飛行機雲の空撮だけで表現する映像、そしてそこに被さる伊福部昭のテーマがまた素晴らしい。それまでのゴジラやアンギラスの様な神話的な存在から離れて、ラドンには「巨大な鳥」としての動物らしさを見せる工夫が施されている。地中から出現したラドンが飛び立つ前に羽つくろいの様な仕草を見せるところなぞは、特筆すべき芸の細かさであろう。ただいくらサイズが巨大とはいえ、生物が超音速で飛翔するというのは物理的に不可能であろう。これはひとえにセイバー戦闘機と空中戦させるための無理筋の設定だったと解釈したい。■福岡で生まれ幼少期をこの街で過ごした自分にはラドンの福岡破壊は驚愕映像の連続で、初見の小学生のころは中州も天神も撮影時の風景からほとんど変化してなかったからである。実はラドンに破壊される天神の街並みに親戚の店があって、精密に再現されたその家が焼けおちてゆくのは良く知っているだけに恐ろしかった(さすがに看板は架空だった)。撮影時にはその界隈を東宝スタッフが挨拶して回ったと聞いたが、『ゴジラ』で燃やされた松坂屋に激怒されたという苦い経験から東宝も学習したのかもしれない。■操演のワイヤーが切れてラドンが溶岩に落ちたのでラストを変更したという話は今や伝説だが、二匹目のラドンも同じショットの中で落ちるのが腑に落ちない。でも製鉄所内で溶けたコークスを使った一発勝負の撮影なので、その場で円谷英二がつがいのラドンの死を決断したのかもしれない(二匹目は明らかに操演されている形跡がある)。だとしたら、さすが特撮の神様、と唸るしかないけど、これが東宝特撮映画のお家芸の「投げやりなエンディング」の始まりかと思うと複雑な気分である。あと平均的な東宝特撮ものと比べると本作は10分ぐらい尺が短い。これは何らかの事情でカットされたシーンの存在が推測される(二匹目のラドンの登場なんかはいかにも唐突)。でも上映時間が短い分、特撮映像の濃密さが増すという効果があったことは否定できない。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-09-05 20:26:48)(良:1票)
75.  女子ーズ 《ネタバレ》 
なんも期待せずに観始めましたけど、実は思わぬ掘り出し物でした。もう最初の30分のチャールズ司令官や怪人たちとのグダグダなガールズ・トークはもう爆笑です。考えてみれば、この映画は日本版『デス・プルーフ』みたいなもんなんですよね。ガールズ・トークと女子アクション(もっとも日本の方は迫力負けですけど)は共通じゃないですか、ちょっとムリありますけど(笑)。それにしてもこの監督の“戦隊もの愛”には頭が下がります。地球制服を企む怪人たちが、埼玉かどっかの砂利採掘場をいつも通って都心を目指していたとは不覚にも今まで気が付きませんでした(笑)。もう一つ伝わってくるのが、監督の強烈な韓流憎悪じゃないでしょうか。レッドの恋愛シークエンスはモロに韓流のパロディで、メチャクチャ韓流ドラマをコケにしてるような気がするんですけど。女子―ズに居酒屋で群がってくるチャラい男たち、もう雰囲気が韓流男優そのものって感じでした。 それにしても桐谷美玲や藤井美菜が「ウ●コ~ウ●コ~」なんて連呼する映像を眼にするとは、世の中何が起こるか判らないもんです。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-06-19 20:49:02)(良:2票)
76.  清須会議 《ネタバレ》 
昔から「お市の方はなんで柴田勝家の嫁になったんだろう?」と疑問だったんですが、この映画を観てそれはすっきり解決いたしました、あくまで三谷幸喜の視点なのは判っていますが実に説得力がありました。 清州会議をテーマにしてコメディを撮るとはそのアイデアには思わず脱帽、と言うよりも日本史には映画化したら面白い題材がまだまだ沢山ありそうですね。戦国武将がべらんめえ口調で喋るところは眼を剥く方もおられましょうが、価値観は現代人とは多少違っていても“人間はきほん損得で動くもの”という本質を描くには申し分なかったかと思います。その点で大泉洋の秀吉は好演で、正直こんなに上手い役者だったのかと驚きました。もっと怖かったのはお市の方をはじめとする女性陣で、中でも剛力彩芽の松姫の最後の笑い顔は凄かったです。お寧役の中谷美紀が見せる踊りも、なんか卑猥な動きですごい振り付けでした。 この映画の最大の欠点は評定の決着がついてからラストまでがだらだらと冗長なことで、忍者が秀吉を暗殺しようとするシークエンスなんか必要ないでしょ。最近の邦画には良くみられる傾向なのですが、せっかくテンポ良い脚本なので残念です。 明智光秀が仕留められるカットなど拘った映像も随所に観られ、思いがけなく良く出来た映画でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-02-19 20:12:40)(良:1票)
77.  黒部の太陽 《ネタバレ》 
長い間封印されていて短縮版しか観れなかった伝説の映画だけに、こうやって完全版が鑑賞できるようになったことは素直に喜ばしいと思います。■観始めてまず感じたのは、現代の日本人の感覚からはかけ離れた(忘れられた?)価値観に満ち溢れているな、ということです。まず第一にあんな雄大な大自然を発破で吹き飛ばしトンネルを掘るなんてことには、いまのエコ重視の日本人には到底受け入れがたいことになるでしょうね。でも戦後間もなく貧しかったころには、電気のこない生活と言うのは個人にも企業にとっても死活問題だったことを無視してはいけないと思います。それは発展途上国では現代でも切実な問題で、“節電”に苦労するなんて昭和30年代に生きていた人々には想像もつかない贅沢だったんでしょうね。まさに「衣食足りて礼節を知る」と言うことです。■三時間超の映画ですが、こういうプロジェクトもの映画が陥りがちな説明映像で物語を進行させる愚は極力抑え、映像にストーリーを語らせる工夫を凝らしているところは大作映画らしくなく良かったです。ときには会話音や効果音をシャットアウトして三船敏郎や石原裕次郎の無言の芝居に映像を集中させるところなんかも良かったと思います。裕次郎の親父を演じた辰巳柳太郎がまた感情移入許させない様な激しいキャラで、この親子の葛藤はなかなかの迫力でした。■関電をはじめ参画した企業が全部実名で登場しているところも現在の日本映画界からは考えられない骨太さです。中でも滝澤修の関電社長は迫力がありました、熊谷組専務に手をついて頭を下げるシーンなんか、もう一筋縄ではいかない怪物財界人という感じでしたね。反面、史実では170人以上の殉職者を出したということには事実上映画では触れていないというのはどうかと思います、描かれた死者は三人(描写はないけど寺尾聡もその後死んでいるんじゃないでしょうか)だけですから。考えてみれば病死する三船敏郎の娘は、工事の成功のために山の神に差し出された人身御供だったと解釈することもできます。■全篇“土方”“労務者”といった放送禁止用語だらけのセリフなので地上波では放映は不可能でしょうね(笑)。でも、大手メジャーの手を借りずにこれだけの大作を撮りあげた石原裕次郎と三船敏郎の映画人としての功績は、伝説としてこれからも語り継がれてゆくことでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2014-12-24 21:45:03)
78.  ブラック・レイン 《ネタバレ》 
追悼、高倉健。この映画は日本人出演者の中では健さんよりも松田優作の方が今まで圧倒的に注目されてきてましたが、改めて観てみると随所にそれまでの高倉健のイメージを変える様な人物造形が見られます。上司に忠実な窓際族だったり、なんせあの健さんがヘンなサングラスをかけてレイ・チャールズのモノマネさせられるんですから、リドリー・スコットも怖いもの知らずです。対照的にマイケル・ダグラスはいつも通りで、『氷の微笑』の荒っぽい刑事と同一キャラを再登場させたのかと思いましたよ。 お話自体は前年に製作された『レッド・ブル』の設定を真逆にした様な感じがします。『レッド・ブル』と違って主人公の方が敵の母国に乗り込むわけですから、それだけ敵国たる日本の描写をどれだけ丁寧に撮れるかが映画の出来を左右するわけです。でもそこはリドリー・スコットはご覧のとおり自分のやりたい通りに大阪を撮っちゃってますが、センスが良いから様になってます。毎日自分が通勤で通っていた阪急梅田駅のコンコースが、あんな幻想的な映像になるなんて思いもよりませんでした。難波・十三・京橋・神戸とロケしていますが地元の人間が見ると確かに空間的にはおかしなところも有りますが、これはリドリー・スコット世界なんだから良いんです。でもクライマックスの田舎家の対決だけは風景からしてアメリカで撮影したことがミエミエだったのは残念でした。 ラスト、松田優作を殺さずに逮捕して府警本部に連行するところも普通のハリウッド・ポリスアクションとは一味違っていて良かったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-11-22 20:55:12)(良:1票)
79.  ぼんち 《ネタバレ》 
雷蔵初の現代劇映画での主役だったんですが、撮影開始前には市川崑やスタッフおよび雷蔵本人までもがミス・キャストだと感じていたという信じられない逸話があるそうです。なるほど、髷を結ってない雷蔵がスクリーンに登場するのは初めてだったので無理もありませんが、 “喜久ぼん”を軽妙に演じきって雷蔵はまさに新境地を開拓したわけです。翌年には『好色一代男』の世之助で最高の演技を披露するのですから、やはりこの人は天才です。 市川崑は増村保造とは逆の作風で、日本的な様式美を尊重しながらも内容では現代的なモダニズムを追求する監督です。彼の視点からこの題材を料理すると、男と女はまるで違う種類の動物みたいに冷徹な眼で観察しています。焼け残った土蔵に喜久ぼんを取り巻いていた女たちが集まってくるシーンはなかなか強烈なインパクトがあります。そこで吐露される祖母の真情、つまり彼女らにとって商売は男の世界、本当に大事だったのは商売でも暖簾でもなくて女系家族として男たちを支配する生活が続くことだったんですね。 若尾文子と雷蔵はやはりゴールデン・カップルです。本作では二人の絡み芝居が多くて堪能させて頂きました。あの有名な女たちの入浴シーンも見事な演出で、京マチ子に越路吹雪まで一緒に入っているんですから最高です。気弱な女を演じる山田五十鈴というのもまた珍しい光景で、やはり女優のアンサンブルを撮らせたら市川崑はピカイチですね。テンポが速い編集術も物語のスピィーディな展開に良くマッチしていると思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2014-11-01 20:12:51)
80.  怪談(1964) 《ネタバレ》 
小林正樹の映画と言うとモノクロというイメージが強いんですが、これが彼の初めてのカラー作品なんですね。黒澤明もそうでしたが、長くモノクロで撮ってきた映画作家はカラー作品に移行すると色の使い方には拘るもんですよね。とにかくこの映画は色彩設計と美術にはもう凝りまくってます。シンプルなんだけどとても斬新、邦画の映画美術の頂点に位置すると言っても決して過言ではないでしょう。『雪女』の眼玉が浮かんでいる様な空と鮮やかな夕陽、『耳なし芳一の話』の日本画の大家に実際に描かせた壇ノ浦合戦の絵、当時の邦画としては空前の製作費を美術費に惜しげもなくつぎ込んだというのは本当でしょう。 “怪談”と言っても決して今で言うホラーではなく、純日本的な「物のあわれ」や「諸行無常」を追求したエピソードが選択されているところも小林正樹らしさが出ています。それでもそれなりの出演者を揃えていますから、グッとくるところはキチンと押さえています。『茶碗の中』での中村翫右衛門が最後に狂ってゆく演技はさすが名優と感服いたしました。でもいちばんゾッとしましたのはやはり『耳なし芳一の話』でしょうね、なんせ芳一をお迎えに来る亡者があの丹波哲朗なんですから(笑)。 
[DVD(邦画)] 8点(2014-07-29 22:19:52)
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