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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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101.  バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 《ネタバレ》 
   馬場監督の映画ではお馴染みの「田中真理子」と「吉岡文男」の名前が出てくるという、それだけでもファンとしては嬉しくなっちゃいますね。   インタビューによると、元々は「タイムマシンを題材にした映画を撮りたい」という気持ちがあり、バブル要素は後付けで話を作り上げたとの事ですが、それも納得。  終わってみれば「タイムスリップした先はバブル景気の頃でした」というのは大して重要ではなく「タイムマシンによって過去を変えた結果、現代の状況が良くなる」という、王道なハッピーエンドストーリーでしたからね。  とかく世間では「馬場監督」=「バブル映画」というイメージで語られがちだけど、一番の傑作と言える「メッセンジャー」(1999年)はバブルと関係無い内容だったし、少なくとも監督当人は、そこまで「バブル」に拘ってる訳では無いんじゃないかなって気がします。   実際どうだったかはさておき、馬場監督がバブル期に手掛けた過去作よりも「贅沢過ぎて有り得ない世界」が描かれており、意図的に「バブル」をギャグとして描いてると分かる辺りも、興味深いポイント。  監督自身も「俺なんかがそういうストーリーを考えたとき、最高! っていうバブルは思いつかない。絶対」と語られていますし、誇張されまくってるであろうバブル期の描写が、ナンセンスギャグっぽくて面白かったですね。  案外、本当にバブル期を経験した年代の人こそ「有り得ねぇ」「こんなんじゃなかった」と笑いながらツッコみ、自分みたいにバブル期を直接知らない世代ほど「当時は凄かったんだ」と真に受けちゃう人も多いんじゃないかなって、そんな風に思えました。   「百円玉」「髪を掻く仕草」などの伏線が、ちゃんと分かり易いのも親切だし「クラブ」や「ヤバい」という言葉の意味が、時代を経て変わってるのを示す場面なんかも、如何にもタイムトラベル物っぽくて、ニヤリとしちゃいましたね。  かと思えば、首相に「話せば分かる」と訴えるという五・一五事件をパロった場面もあったりして、本当に幅広く色んなネタが散りばめられているので、観ていて飽きなかったです。   主演の阿部寛は実際に「バブルのド真ん中にいた」との事で、バブル期の世界を遊び過ごしてる姿に説得力があった辺りも良い。  ヒロイン格の真弓を演じた広末涼子も、わざとらしい仕草や演技が愛らしく、2007年当時は無かったであろう「あざと可愛い」って言葉が似合うような魅力がありましたね。  当初は「女を口説こうとする男」として彼女に接していた主人公が、その正体を悟った途端に「娘を守ろうとする父親」に変貌する様も微笑ましく、個人的には、ここの「軟派男が父親の顔になる瞬間」が、本作の白眉だったように思えます。   そんな具合に、色々と良い部分もある映画なんですが……  正直に告白すると、総合的な満足度としては、決して高くなかったんですよね。  この度、馬場監督の映画五本を通して鑑賞し、デビュー作から徐々に面白さがアップしていく様を見守ってきていたもので(あの「メッセンジャー」の次に撮った映画となれば、さぞ傑作だろう)と、勝手にハードルを上げ過ぎてしまったのかも。   作品全体の演出が、やたらコメディタッチ……というより漫画的なのも(何か、馬場監督らしくないな)と思えて戸惑ったし、台詞の切れ味も鈍ってた気がします。  上述の「父親の顔になった主人公」って場面が好きだっただけに、ラストにて「結局、今も愛人を囲ってるような浮気者のまま」と示唆して終わるのも、ガッカリしちゃったし……  ここまで「何もかも上手くいくハッピーエンド」にした訳だから、そこは変に捻ったりせず「家族を大切にするパパになりました」で良かったと思うんですよね。  「国の景気なんかより、家族の絆が大事」って結論を出したはずなのに、最後の最後で「景気は上向いたけど、家庭不和の火種は残ったまま」になるだなんて、どうにも受け入れ難いものがありました。   そんな訳で、結果的に「最新作がデビュー作の次につまんない」って評価になってしまった事が、本当に残念。  でも馬場監督って、まだまだ現役で2022年にもドラマの監督を務めてる訳だし……  自分としては映画の新作にも、是非期待したいですね。  以前チラっと語っていた「波の数だけ抱きしめて」 (1991年)の続編っぽい話とか、何とか実現させて欲しいものです。
[ブルーレイ(邦画)] 5点(2022-10-10 18:13:49)(良:1票)
102.  私をスキーに連れてって 《ネタバレ》 
 馬場監督の映画の中では、一番バブルの匂いがする代わりに、一番完成度が低い映画って感じですね。   「あの頃の雰囲気を楽しみたい」という目的で鑑賞するならば、同監督作の中では最も適してるでしょうし、バブル期とか関係無く、純粋に物語を楽しみたいというのであれば、かなり退屈な映画になっちゃうと思います。  そもそも商業映画デビュー作なので、作りが粗いのも仕方無い話ではあるんですが……  馬場監督の映画の中で、始まって二十分ほどで(退屈だなぁ)って感じたのは本作だけですし、かなりキツい出来栄えです。   まず、根本的にストーリーが古臭いというか、ベタで王道な魅力も無いもんだから(わざわざ映画にするほどの話じゃないだろ)って思えちゃうんですよね。  主人公とヒロインの恋路にしたって、中盤でアッサリ誤解がとけて問題無く結ばれるし、新製品のお披露目イベントにしても「苦労した主人公達は結局間に合わず、別行動の仲間達が成功させた」ってオチになるもんだから、拍子抜け。  紆余曲折を経て恋が成就したとか、頑張って仕事を成功させたとか、そういうカタルシスを得られ難い作りになっており、観た後にスッキリした気持ちになれないんです。  最後に「バーンっ!」って銃を撃つ仕草で終わるのも(それ、最後まで引っ張るようなネタかな?)って微妙に思えたし、テンションが低いままで、映画の終わりを見届ける形になっちゃいました。   そんな訳で、どうしても高く評価出来ない一作なんですけど……  監督のファンとしては、それだけじゃあ寂しいので、以下は良かった点を。   まずは何と言っても、オシャレな作りなのが良かったです。  ヒロインの真っ白いスキーウェア姿は素直に可愛いなって思えましたし「冬の間恋人にするなら最高ね」なんて台詞回しも良い。  素敵な内装の山小屋で、バニーガールに給仕されたシャンペンを味わう場面なんかも、憧れちゃうものがありましたね。   真理子さんが面白おかしく話してた「矢野を好きだった女の子」の正体が、実は真理子さん自身だったと判明する件にも感心しちゃったし、話の盛り上がりという意味では、あそこがピークだったかも。  スキーを楽しむ場面も中々爽快感があったし、車やトランシーバーなどのアイテムの使い方も上手かったと思います。   そして何といっても、ユーミンの曲が魅力的。  映画作りにおいて、映像よりも音を重視しているという馬場監督らしく、全編に素敵なナンバーが散りばめられており、ミュージックビデオ的な楽しみ方も出来ちゃうんですよね。  この映画のMVPって、画面には登場していない荒井由実(松任谷由実)なのではって思えたくらいです。   後は……「メッセンジャー」(1999年)でも加山雄三を起用してる馬場監督だけど、この頃から「若大将シリーズ」へのリスペクトを感じさせるのが微笑ましいとか、そのくらいになるでしょうか。   「時代と寝た映画」って言葉がありますけど、恐らく本作も、それに当てはまるんでしょうね。  ただ、時を越えて愛されるユーミンの曲に比べると、本作に関しては「昔の恋人」って感じであり、思い出の中でこそ輝く存在じゃないかな……と、そんな風に思えました。
[DVD(邦画)] 5点(2022-10-10 17:42:45)
103.  風雲児たち 蘭学革命(れぼりゅうし)篇<TVM> 《ネタバレ》 
 まず最初に書いておきますが、原作の「風雲児たち」は紛れも無い傑作です。  「明治維新を描くのであれば、関ヶ原の合戦から描く必要がある」という壮大な歴史観に基づいた品であり、大河ドラマならぬ大河漫画として、自分も愛読させてもらっています。  本作の鑑賞前、原作コミックスを本棚から取り出し「蘭学革命篇」だけを読み返すつもりが、ついそのまま最新の「幕末編」に至るまで読み切っちゃったくらい……と言えば、多少はその面白さも伝わってくれるんじゃないかと。   そんな訳で、本作には大いに期待していたし、映像化にあたり「蘭学革命篇」をチョイスしたと知った時には、小躍りしてしまったくらいなのですが……  出来上がった品を観終えた後は、暫く無言になって、落ち込んじゃいましたね。   勿論、最低限のハードルはクリアしているというか、映像化した意義はあったと思んです。  例えば、主人公の前野良沢の屋敷内の描写、庭で舞い散る桜が美しかったというだけでも、漫画ではない動画ならではの魅力があったし、音楽やナレーションも良い味を出している。  役者さんも実力のある方ばかりで、安心して鑑賞する事が出来ました。   じゃあ、何が不満かっていうと……それはクライマックスの描き方についてなんです。  本作って、冒頭にて「何故、前野良沢と杉田玄白は仲違いしてしまったのか?」という謎を提示しているのですが、その起承転結の「起」の部分が上手い代わりに「結」の部分が余りにも拙いんですよね。  そもそも原作ではアッサリ短期間で和解した良沢と玄白を、数十年に亘って険悪な仲という設定に変えた挙句、仲直りの仕方は原作と同じアッサリ風味にしているんだから、こんなの違和感あるに決まってるだろと言いたくなっちゃいます。   脚本家としては「最初に劇的な要素を提示して、観る者を惹き付ける必要がある」と考えたのであろう事は、良く分かるんです。  でも原作には無かった要素を付け足し、ハードルを上げてみせた以上は、それを飛び越える必要があると思うんですよね。  本作の和解シーンに関しては(だって原作でもアッサリ仲直りしたでしょ?)という言い訳というか、自分で勝手に上げたハードルを飛ばずに潜り抜けたような恰好悪さを感じてしまい、全然心に迫るものが無くって、非常に残念でした。   「フルヘッヘンド」の件についても原作と違うというか、本当に杉田玄白が昔を忘れてボケちゃったか、あるいは自らの手柄を捏造したかのような描写になっており、大いに不満。  原作では「読者に分かり易いように、聡明な玄白はあえてそう書き残した」という描写が為されており、受ける印象が全く違っているんですよね。  他にも、チョイ役に格下げされた高山彦九郎や林子平はともかく、結構な尺を取ってる平賀源内からも原作のような魅力が伝わってこないんだから、本当にガッカリしちゃいました。   世の中には「原作と違うけど、これは面白い」と思える映画やドラマも沢山ありますが、本作に関しては「原作と違うし、その違う部分が面白くない」と感じてしまい、観ていて辛かったですね。  平賀源内の部屋に「本日土用」の看板があるとか、原作好きならニヤリとする小ネタが散りばめられてるし、作ってる方々の原作愛は本物で、面白い作品にしようと努力されたのだとは思いますが……  正直、出来上がった品を評価する限りでは「凡作」か、贔屓目に見ても「それなりの良作」くらいになっちゃうと思います。   それでも一応、本作独自の良さがある部分を挙げるとしたら「鼓膜」「十二指腸」「神経」という言葉が生まれた瞬間を描いてる辺りが該当しそうですね。  ここは感心させられたというか、解体新書の存在が「後の世を変えた」事が分かり易く伝わってくるし、歴史物ならではの醍醐味があって、良かったです。   んで、その他の良かった点を挙げようとすると…… 「私の名前が泥に塗れようが、そんな事はどうでも良い」 「私の名前など、歴史に残らんでも良い」  という玄白と良沢の台詞が交差する演出とか「原作の名場面を再現した箇所」ばかりになっちゃいますね、どうしても。  まぁ、これに関しては天邪鬼にならず「押さえるべきところは押さえた作り」として、褒めるべきなのかも。   冒頭にて述べた通り、原作は文句無しで傑作なのだから、奇を衒わず素直に作って欲しかったなぁと思わされた……そんな一品でありました。
[DVD(邦画)] 5点(2020-08-05 19:41:42)
104.  タッチ(2005) 《ネタバレ》 
 冒頭のモノローグからして、ヒロインの南目線で進むのかと思いきや、何だかんだで達也が主役でしたね。  原作でも主人公は達也なのだから、当然と言えば当然なんですけど、それなら無理して南の比重を増すような真似しなくても……と、つい思っちゃいました。   この映画、それ以外にも「無理してる」部分が多々あって、ちょっと褒めるのが難しいんですよね。  ラストの告白台詞に関してもそうなんだけど「無理して名場面を挟んでる」「無理して名台詞を言わせてる」感が強くって、観ていて気恥ずかしかったです。   そもそも原作コミックス26巻分を116分に収めるって時点でキツい訳だけど、それに関する原作エピソードの取捨選択も、あまり上手くなかった気がします。  南が新体操やらないとか、その辺は納得なんだけど……やはり、柏葉英二郎の不在が痛い。  「タッチ」で一番魅力的なキャラクターといえば彼だと思うし、せめて明青の監督は彼にして欲しかったですね。  グラサン掛けた強面の監督で、達也に厳しく接しつつも最後は彼の実力を認めるとか、その程度の描写でも充分嬉しかったと思うし……完全にいなかった事にされちゃうのは寂しいです。   そんな柏葉監督だけでなく、西村に吉田といった魅力的な脇役陣も出てこないっていうのに、映画オリジナルキャラである小百合ちゃんを出して、彼女に尺を取ってるというのも悲しい。  序盤から達也に好意を示し、デートしたりもするんだけど、終盤になってからは全く出てこないというチグハグっぷりだったし……  彼女に関しては、あまり存在意義を感じられませんでしたね。  同じオリキャラでも、原田くんと良い雰囲気になるソノコちゃんは画面の賑やかし役に徹していたし、小百合ちゃんもあんな感じで、主筋には絡ませない方が良かったと思います。  決勝戦前日に和也が草野球で投げてるとか(ちょっと無理があるのでは?)と思える描写が散見されるのも辛いところです。   でも、本作にはそんなアレコレも霞むほどの大きな欠点があって……  原作漫画が大好きな身としては、こんな事を書くのも辛くなっちゃうんだけど、この映画って「和也が死んでも悲しくない」んですよね。  映画の中盤、始まって一時間くらいで退場しちゃうし、それまでの尺も達也と南のキスシーンとかに費やしているもんだから、根本的に和也を応援したり、感情移入したりする気持ちになれないんです。  達也と和也の性格の対比も中途半端で、達也は毒舌属性がやたら強化されて「嫌な奴」としか思えない一方、和也の「良い奴」っぷりは全然伝わってこないというんだから、困っちゃいます。  南とのキスシーンや、オリキャラ女性の出番よりも、もっと和也の魅力を表現する事に尽力して欲しかったですね。  「タッチ」という物語の構成上、和也の死が悲劇でなければ面白さの根底が崩れちゃいますし、そこだけはキチンと押さえておくべきだったと思います。   ……以上、色々と不満を述べる形になりましたが、それだけじゃあ寂しいし、何やら申し訳無い気分になるので、以下は良かった点を。   まず、主人公達三人が子供の頃から野球をやってたって設定にしたのは上手かったですね。  ちゃんと幼い南が背番号2を付けてて、その後に捕手となって達也の球を受ける場面にも自然に繋がってますし、南の見せ場って意味ではここの「捕手」の場面が一番良かったと思います。  原田くんに孝太郎など、男っぽい脇役陣が気を吐いて、画面をビシッと引き締めてくれたのも嬉しい。  高校一年で140キロのスライダーが投げられる和也とか、打率が七割五分以上で甲子園七本塁打の新田とか、具体的な数字が出てくるのも、野球好きとしてはテンション上がるものがありましたね。   それと、先程自分は「映画オリジナルの女性キャラ」に尺を取るのを否定しましたけど、映画オリジナルの展開そのものについては、結構良かったと思うんです。  達也が秋季大会で滅多打ちされてコールド負けするのも、その後の躍進が「ドン底から這い上がった」感が出て好みですし、雨の中で原田くんに殴られ、再び野球を始める流れも「泥臭い青春物」って感じがして良い。  和也に命を救われた子供と、その母が命日に上杉家を訪れる場面も、何だか救われるものがありましたね。  新田の最終打席にて、和也と同じスライダーを投げた後、達也らしいストレートを投げて勝利するというのも「和也の幻影を振り切った」「達也として甲子園出場を決めた」感があって、良かったんじゃないかと。   そんなこんなで、原作と比較しちゃうと不満も多々ありますが……  青春映画として一定のクオリティはあったんじゃないかな、と思います。
[DVD(邦画)] 5点(2020-07-16 10:33:11)(良:3票)
105.  大巨獣ガッパ 《ネタバレ》 
 ストーリー展開が「怪獣ゴルゴ」そのままな訳ですが、それを差し引いても「ガッパという怪獣だからこその魅力」をあまり感じられない内容だったのが寂しいですね。  熱線を吐いて戦車を爆発させる描写、翼から生じる風圧で瓦が剥がれていく描写なども、ゴジラとラドンの良いとこ取りを狙ったんでしょうけど、それが結果的に個性を削ぐ形になっていたと思います。   そんな中、忘れられないインパクトを与えてくれるのは主題歌の存在。  最初に聴いた時こそ(なんじゃこりゃ)とズッコけたけど、二度、三度と聴く内に(あれ……案外良い曲かも)と思えてくるんだから、全くもって不思議。  牧歌的で、如何にも昭和特撮ソングってノリなのが、映画の内容とも良く合っていた気がします。   現代の観点からすると特撮がチャチだとか、島の原住民がどう見ても肌を黒塗りしているだけの日本人だとか、欠点と呼べそうな部分は多々あるんですが、まぁ御愛嬌。  河童というより鳥みたいな外見だなぁと思ったら、本当に劇中で「鳥に近い生態を持っている」という研究結果が出るのは面白かったし、人間側に「仕事にかまけ、娘に素っ気ない父親」を配置し、家族の事だけを考えて行動する怪獣側と対比させているのも良かったです。  「女性は仕事を頑張るよりも、家庭に帰ろう」というメッセージが提示されているのも、当時の世相が窺えて興味深い。   ただ、ガッパが蛸を咥えているシーンに関しては、特典の解説によると「我が子に食べさせようと蛸を持参する親の優しさ」を表しているそうなのですが、ここはもう少し分かり易く、映画単体を観ただけでも伝わってくるように描いて欲しかったですね。  解説されないと(なんで蛸?)と戸惑っちゃうし、解説を踏まえた上で観れば良いシーンだと思えるだけに、実に勿体無い。   後は……クライマックスにて、親が子に飛び方を教える流れも感動的で良かったんですけど、空港のセットが簡素過ぎて、せっかくの感動が冷めちゃう辺りも「勿体無い」「惜しい」って思える部分。  城や都市部のセットは結構頑張っていたのに、よりにもよって最後の最後で一番力の入っていない空港のセットが舞台となっている訳で、なんかチグハグなんですよね。  背景の書き割り感も凄いし、地面には滑走路に見えるようマットを敷いているだけって丸分かりだしで、せっかくの感動的な音楽や、ガッパの涙が台無しになっている形。  これって「中盤のセットは稚拙だが、クライマックスでは流石に気合いが入っている」という形なら、大分印象が違っていたでしょうし、本当に(もっと上手くやればいいのに……)って、じれったくなっちゃいます。   本来は畑違いの日活が、当時のブームに乗って怪獣映画に手を出してみた一本、という事で、やはりその辺りの「手探り感」「ノウハウの無さ」は、如何ともしがたいものがあったのでしょうね。  そういった背景の諸々も含め、色々考えながら観る分には楽しめたけど、純粋に娯楽作品として考えると、ちょっと厳しいかも。   ともあれ、怪獣映画好きであるならば、押さえておいた方が良い一本だと思います。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-09 12:42:26)(良:1票)
106.  猫の恩返し 《ネタバレ》 
「猫舌のお前さんには向くまい」「お前こそ鳥目だろ」  という鳥と猫とのやり取りが印象深い。   作品全体の印象としては、丸く綺麗な小石、といった感じですね。  尖って良い部分も無く、悪い部分も無いという。   児童向け作品らしく、伏線とその回収も分かり易くて ・幼少時に出会っていた猫との再会。 ・「何処かで見たような……」という台詞。 ・遅刻していた主人公が成長したのを表す為に、早起きするようになる。  等々、微笑ましい気持ちで各シーンを見守る事が出来ました。   猫好きな観客の欲求に応えてくれるように、作中の猫達は魅力的に描かれていたと思いますし、その時点で、ある程度は満足。  じゃあ不満点は何だろうと考えてみると、終盤の盛り上がりに欠ける事が挙げられそうですね。  もう少しこう……画面を見ているだけで楽しくなっちゃうような、動きのある活劇要素が欲しかった気がします。  折角バロンと王様との一騎打ちがあったのに、あっさりと前者が勝って終わりというのでは、如何にも寂しい。   それと「恰好良いから」という子供っぽい理由で好きだった男性に興味を無くす事を、前向きに描いているはずなのに「主人公がバロンを好きになった理由」が「恰好良いから」としか思えない辺りも気になります。  見た目に囚われず、内面の恰好良さが分かるようになったという意味なのかも知れませんが、バロンというキャラは見た目の時点で恰好良く描かれている訳だし、何だか中途半端な印象が残りました。   エンディング曲については、凄く良かったですね。  「猫の国から現実世界に戻ってきた主人公が、いつでも傍にバロンがいてくれると思いながら日々を生きていく」という感じで、歌詞も作品に合っていたかと。  正直、退屈に感じた時間も長かった映画なのですが、この曲が流れ出すラストシーンだけでも「観て良かったな……」と思えました。
[DVD(邦画)] 5点(2017-05-15 10:44:12)(良:1票)
107.  エヴェレスト 神々の山嶺 《ネタバレ》 
 原作小説が大好きなので、期待を込めて観賞。   絶対に二時間で纏めるのは無理だろうと思っていただけに、ちゃんと物語を完結させている事に感心半分(やっぱりダイジェスト感は否めないなぁ……)と落胆半分、といった感じでしたね。   結構な尺が必要となるであろう「マロリーのカメラ争奪戦」の件を思い切って省略したのは正解だと思うし「鬼スラへの挑戦」「岸との別離」「グランドジョラスからの生還」と、羽生丈二というキャラクターを語る上では外せない場面を映像化してくれた事は、素直に嬉しかったです。  それでも、どうしても「あれも見たかった」「これも見たかった」というモヤモヤが残ってしまうのだから、全く以て困り物。  折角モノローグを多用して小説の文章そのまま再現する演出をやっているのだから「きしよう」や「地球を踏んだ」などの言葉も、心の声として聞かせて欲しかったなと、ついつい思ってしまいました。   主演の岡田准一と阿部寛は熱演されており、特に後者の存在感はお見事でしたね。  凍死した羽生の「死体」をここまで迫力込めて演じられる人は、ちょっと他にはいないかもと感じるくらい。  ライバルである長谷の扱いが軽い事も含め、どうしても原作に比べると羽生に関する描写は薄くなってしまっていたのですが、それでも「これは間違いなく羽生丈二だ」と思えたのは、役者さんの力が大きかった気がします。   中でも、遭難しかけた深町を羽生が助けるシーンは凄く良くて、ここが本作の白眉であるように感じました。  ちょっと原作に比べるとエキセントリック過ぎるというか「羽生の魂を継ぐ者」として、野性味溢れて描写されていた深町であっただけに「もういい、もうやめてくれ……」と弱々しく呟き、自分を見捨てるよう訴えかける姿が、一際胸に迫るものがあったのですよね。  その後に「最初から羽生は最も困難なルートを登るつもりだった」と明かされる展開についても、良かったと思います。  正直、原作と異なる部分に関しては不満も多かったりしたのですが、ここの流れは原作よりも好み。   最後も深町の生還というハッピーエンドで〆てくれる為、後味も悪くなかったですね。  久々に本棚から「神々の山嶺」を取り出して、蜂蜜を溶かした紅茶片手に、ゆっくりと読み耽りたくなりました。
[DVD(邦画)] 5点(2017-04-11 18:14:38)(良:1票)
108.  犯人に告ぐ 《ネタバレ》 
 とても真面目に作られた、硬派な一品だと思います。   ただ、こういった品は「堅苦しくて退屈」という印象に繋がってしまう危険性も孕んでいる訳で……  残念ながら、本作はそれに該当してしまった気がしますね。  メディアを使って犯人を挑発、対話というテーマは非常にエンタメ性が高く、コメディタッチな作風と相性が良さそうなのに、あえてシリアスに徹したのが本作の特徴であり、魅力にもなっているのでしょうが、自分には合わなかったみたいです。   楽しめなかった理由としては、主人公に感情移入出来なかった点も挙げられそう。  彼は同僚との手柄の奪い合いの為に捜査に最善を尽くさず、結果的に幼い子供の死を招いてしまう。  そこの件で、観ているこちらとしては決定的に幻滅してしまい、最後まで挽回する事が出来なかったんですよね。   序盤で妻と息子の死が連想される展開だったのに「結局二人とも生きていました」というオチが付くのは、恐らく「誘拐によって子供が死んだのに、自分の息子は生きている」という主人公の罪悪感を描く為、そして終盤に息子が誘拐されてしまう展開に繋げる為なのでしょうが、その辺りがどうもスムーズに感じられない作りなのも残念。  これに関しては、いくら終盤に盛り上げる為の伏線とはいえ、序盤で(えっ、結局生きていたの?)と拍子抜けしてしまうデメリットの方が大きかったように思えました。  犯人の捕まるキッカケが「偶然手紙を落としてしまった」「服の色に関する勘違い」というのも、ちょっとネタとしては弱いかなと。   ラストに主人公が目を見開いて終わる演出に関しても  1:真犯人が別に存在する事に気付いた。まだ事件は終わっていない。 2:結局、罪滅ぼしする事は叶わなかった為、未だに昔の誘拐事件のトラウマに囚われている。 3:全てが終わった事に安堵したがゆえの死。   といった具合に、色々解釈の余地があるのですが、どれだったとしてもバッドエンド色が強く、好みとは言い難いですね。   翻って、良かった点はと言えば……やはり、主演の豊川悦司の魅力に尽きるのではないでしょうか。  その話し振り、立ち居振る舞いには流石の存在感があったし、カリスマ的な犯人役なんかも似合いそうな、ミステリアスな魅力を備え持っている。  それだけに、そんな彼があえて刑事役を演じるというのが、絶妙な配役であったように思えます。   過去の罪を清算する為とはいえ、自分を刺した誘拐犯を庇って逃がそうとする辺りなんかは(警官として、それはマズいんじゃない?)と感じ、賛同するのは難しかったのですが、彼が演じる事により、その選択にもそれなりの説得力が生まれていた気がするんですよね。  本作のクライマックスである「震えて眠れ」のシーンの迫力と恰好良さも、豊川悦司だからこそ醸し出せたんじゃないかな、と感じました。
[DVD(邦画)] 5点(2017-04-06 12:33:05)(良:1票)
109.  八月の狂詩曲 《ネタバレ》 
 所謂「夏休み物」に分類されそうな一品。   とはいえ、劇中にて「原爆」の影響が色濃過ぎる為、素直に楽しむ事が難しい作りとなっていますね。  序盤にて子供達が、被爆地となった学校を見学したり、滝壺で弁当を食べたりしている辺りは、まだ遠足的な雰囲気を味わえたのですが、リチャード・ギア演じるクラークさんが登場して以降は、完全に反戦、反核映画といった感じ。   「アメリカは被爆地に慰霊碑を送っていない」という指摘だけで済ませず、日系とはいえアメリカ人であるクラークに「すいませんでした」と謝罪させるシーンまであるのだから、日本人としては、何だか居心地の悪さを覚えます。  後者の台詞に関しては「オジサンの事、知らなくて……」という前置きがあるのですが、その後に「私達、悪かった」という言葉まで続く為、どうしても「原爆を投下した事をアメリカ人に謝罪させている」というニュアンスを感じてしまうのですよね。   こういった内容の映画も必要だと思うし、学校の教材映画としても有効活用出来そうではあるのですが、純粋に娯楽作品として考えた場合「面白い」と思えるシーンが少なくて、何だか物足りないものがありました。   終盤、お婆ちゃんが錯乱してしまう展開に関しても「雷をピカ(=原爆)と勘違いして、子供達を守ろうとする姿」には心揺さぶられるものがありましたが、その後に関しては、唯々唖然。  「お婆ちゃんの頭の時計は、逆に回ってんだよ」「多分、あの日の事ば思い出して……いや、あの日の気になって」という説明的な台詞の数々にも (えっ、何で孫だけじゃなく近所の人まで、そんなに正確に分析出来るの?)  という違和感が生じてしまい、どうも納得出来ない。  童謡「野ばら」を流す演出に関しても、ちょっとシュール過ぎたと思いますし、そのままブツ切りのように終わる形だったのも、好みとは違っていて、残念でした。   そんな中で「河童」が窓から顔を覗かせるシーンは「いや、それどうやって扮装したんだよ!」と観客にツッコませてくれるの込みで、楽しかったですね。  この映画には、こういった「親戚の子供達が、お婆ちゃんの家に集まってワイワイ騒ぎながら素敵な夏休みを過ごしている」という空気が、確かに存在しており、そこは大いに評価したいところ。  また、家に泊まる事になったクラークさんが「片言の日本語」で、それを歓迎する子供達が「片言の英語」でと、それぞれ異なる言語で会話する場面なんかも、とても良かったと思います。   黒澤監督としては、反核というメッセージ性の強い作品を撮りたかったのかも知れませんが、自分としては、そんなメッセージとは関係ない部分の方が楽しめたという……  何だか擦れ違いを感じてしまう映画でありました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-09-26 21:54:42)
110.  元禄忠臣蔵 後編 《ネタバレ》 
 何と吃驚。まさかの討ち入り場面カット!  「忠臣蔵」におけるクライマックスが、事の仔細を書状にて読み上げる形で、台詞のみで表現されてしまうのだから、唖然とさせられました。   後に色々と調べてみたところ  「溝口監督としては、忠臣蔵を撮るとしても、戦意高揚のプロパガンダ映画にはしたくないと考えており、血生臭い討ち入りの場面が存在しない『元禄忠臣蔵』を原作に選んだのではないか?」  なんて推測も浮かんできたのですが、真相や如何に。   いずれにしても、楽しみにしていた「溝口監督の描く吉良邸討ち入りの場面」を観られなかった事は、非常に残念でしたね。  映画としては、その代わりのようにクライマックスとして「十郎左と、おみの」のエピソードを用意しており、それに関しては、実に溝口監督らしい仕上がりとなっていた為、満足。  作中の台詞で「女の心」なんてワードが飛び出すだけでも(あぁ、溝口映画だなぁ……)と、奇妙な安堵感を味わえましたね。  いっその事、もっとこのエピソードを中心に据えて、オーソドックスではない、外伝的な忠臣蔵映画として纏めた方が良かったんじゃないかな、と思えたくらいです。   この映画を楽しむ上では 「忠臣蔵のストーリーを、殆ど知らない」 「討ち入りの場面が存在しない事を、予め知っている」  という、いずれかの状態である事が望ましいのでしょうが、自分はどちらにも当てはまらなかったようで、実に無念。   とはいえラストシーンにて、これから切腹を行う大石内蔵助の、満足気な笑みを湛えた姿を映し出して終わる形なのは、好みであり、嬉しかったですね。  悲劇的でありながらも、仇討ちを遣り遂げた達成感が窺えて、ハッピーエンドとも呼べそうな雰囲気。   期待していた内容とは違っていたけれど、その格調の高さゆえに「期待外れ」と評する事は憚られる……そんな映画でありました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-09-13 18:13:33)(良:1票)
111.  元禄忠臣蔵 前篇 《ネタバレ》 
 溝口健二監督の「忠臣蔵」という事で、観るのを非常に楽しみにしていた本作品。   冒頭にて「刃傷松の廊下」が起きる構成となっているのですが、この時点で少し嫌な予感がして、それが的中してしまった事が残念でしたね。  これは「忠臣蔵」全般に言える難点だと思うのですが「どう考えても悪いのは斬り付けた浅野内匠頭の方であり、吉良上野介が哀れな被害者にしか見えなくなる」という現象が、本作においても起こってしまっているのです。   やはり事前に「吉良が如何に意地悪をしてきたか」を濃密に描いてくれないと、どうしても浅野側に共感出来ないのですよね。  この映画に関しては、特に「吉良側が可哀想に思えてくる」度合いが高いように思えて、前編と後編に亘り、やれ「侍としては風上に置けぬ人」だの「汚い白髪首」だのと言われてしまうものだから、何とも不憫。  映画冒頭で吉良が口にしていた「無知、不作法」などの悪口よりも、ずっと酷い言葉を善玉側が何度も口にするもので、どうにも肩入れ出来なくなってしまうのです。   全体のストーリーとしては、現代目線からするとオーソドックスな「忠臣蔵」であり、特に目新しく感じる要素が無かったのも、辛いところ。  いっそ割り切ってカメラワークやら演出やらのテクニック面を楽しもうかとも思ったのですが、それも溝口監督の後年の作となる「雨月物語」や「近松物語」などに比べると、まだ洗練されていないように思えたりもして、何だか袋小路に陥ったような息苦しさを覚えました。   勿論、才能のある監督さんが、普遍的な魅力のある題材を扱っているのだから「つまらない」「面白くない」という訳ではないのですが、期待値が高過ぎたせいか、どうしても落胆に近いものがありましたね。   そんな気持ちのままで前編を観終わるも 「吉良邸への討ち入りを、溝口監督は如何に描くのか?」  という好奇心は残っていたがゆえに、まだまだ弾む心を保ったままで、後編を再生させたのですが……
[DVD(邦画)] 5点(2016-09-13 18:07:27)
112.  湘南爆走族 《ネタバレ》 
 織田裕二演じるアキラの出番が多く、実質的に江口洋助とのダブル主人公となっているのは、原作通り。  けれど、映画単品として考えると、少々バランスが悪いようにも思えましたね。  観客としては、単身で敵地に乗り込むアキラを応援したくなるのに、最後は江口が助けに駆け付けてオイシイところを持って行くのだから、何だかズルい感じです。   喧嘩シーンに関しても、頑張っているとは思うのですが、原作の豪快な魅力とは違う路線なのですよね。  同時代の不良漫画「BE-BOP-HIGHSCHOOL」が、原作はリアルなのに実写映画は破天荒アクション。  そして湘爆は原作が破天荒なのに、映画は比較的リアルなアクションという形となっており(逆だよなぁ……)と、ついつい思ってしまいます。   仲間五人で集まって、一杯のラーメンを分け合うシーンの馬鹿々々しさなんかは、結構好み。  金欠に悩む主人公達が、暴走族を「アドベンチャー茶道部」と言い張り、学校側に予算を求める件も面白かったですね。  その場面にて、他の部活動の面々が、ご丁寧に野球やラグビーのユニフォームを着ていたりする漫画的な分かり易さも、ベタな笑いに繋がっていたと思います。   「族の縄張り争いで喧嘩するより、一緒に単車で走った方が楽しい」というメッセージを最後に据えて、綺麗に纏めてみせた点も、非常に好印象。  絶賛するのは難しいけれど、何だか憎み切れない、愛嬌のある映画でした。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-25 21:37:00)
113.  醜聞(1950) 《ネタバレ》 
 とにかくもう、悪役となっているマスコミ側が徹底的に憎たらしく描かれていて、いっそ痛快。   「記事なんか少しぐらい出鱈目でも、活字になりさえすれば世間が信用するよ」 「(抗議されたら)誰も読まないようなところに謝罪広告を出せば、それで済む」   と言い放つ姿には、狡賢い悪党としての「大物」感すら窺わせました。   観客側としては、当然そんな彼らが敗訴して、溜飲を下げる展開を期待する訳なのですが、どうも毛色が違う結末。  分かり易い人情譚として纏められており、感動的と言えば感動的なのですが、正直ちょっと不満が残る形でしたね。   三船敏郎演じる原告側からすると「被告による買収が発覚して勝てた」という訳なのだから、どうも相手側の一方的な自滅というか、勝利のカタルシスに乏しくて、法廷物としては如何なものかと思われます。   志村喬演じる弁護士が、最後の最後で正義を貫く事になるキッカケが「愛娘の死」という点に関しても、申し訳ないのですが娘が登場した瞬間に(あっ、この子死んじゃうな……)と覚らせるものがあったせいで、どうにも予定調和な印象が拭えず、残念でした。   長所としては「横暴なマスコミに対し、決して泣き寝入りはしない毅然とした態度」を描いている事。  そして山口淑子演じる声楽家の「尊敬のない人気なんか沢山だわ」と言い放つ姿から、誇り高く生きる人間の美しさを感じられた事でしょうか。   新進気鋭の若き画家という、他の作品ではあまり見かけない役柄を演じている三船敏郎の姿にも、流石と思わせるものがあり、それだけでも観る価値がありましたね。  独特の渋い声音で  「僕達は生まれて初めて、星が生まれるところを見たんだ」 「その感激に比べれば勝利の感激なんて、ケチくさくて問題にならん」   と言われてしまえば、そういうものかと納得しかけてしまうのだから、全く不思議なものです。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-15 20:35:56)
114.  淑女は何を忘れたか 《ネタバレ》 
 先日観賞した「秋刀魚の味」が面白かったもので (これはいよいよ、自分にも小津映画を楽しめる器量が備わったのか?)  と調子に乗って手を出してみた本作。   で、結果はといえば……やっぱり、まだ早かったみたいですね。  監督さんの個性である独特のカメラワークだとか、演出だとか、会話の間だとかが、どうも退屈に感じられてしまう。  テーマとしては女性というか、主婦に対する皮肉なのかなと思いきや、最終的には「色々あるけど夫婦は仲良く」という結論に落ち着いてしまったみたいで、それが妙に物足りず、中途半端な印象を受けてしまいました。  「奥さんには花を持たせんきゃいかんよ」 「子供を叱る時にね、逆にこう褒めるだろ? あれだよ。つまり逆手だね」   などの台詞によって、一見すると尻に敷かれていた夫の方が、実は巧妙に妻を手懐けていると判明する件は面白かったけど、ちょっと女性を男性より下に捉え過ぎているようにも思えます。  夫に頬を打たれた妻が、その事を喜び、茶飲み仲間に話して羨ましがらせるというのも、何だか都合の良過ぎる話。  この辺りは、監督の価値観がどうこうというより、制作当時の時代性が大きいのでしょうか。   そんな風に、今一つ乗り切れない映画であったのですが、そこかしこに散らばるユーモアのセンスには、流石と思わせるものがありましたね。  特にお気に入りなのは、地球儀を使った地名当てクイズにて、周る地球儀の天辺を指差して「北極」と答えてみせる件。  その手があったかと、大いに感心させられました。   「バカ」「カバ」というやり取りに関しても、初出の場面では子供っぽさに呆れていたはずなのに、二度目に使われた際には(えっ? また使うの?)という意外性も相まって、思わずクスっと笑みが零れたのだから、不思議なもの。   ラストシーンに関しても、少しずつ部屋の灯りが消えていく様が幻想的で、好みの演出だったりするんですよね。  観賞中は退屈な時間の方が長かったはずなのに、この終わり方を目にするだけでも(良い映画だったなぁ……)と思えてくるのだから、全く困った話です。   小津安二郎という人は、今後も自分にとって評価の難しい監督さんであり続ける気がします。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-09 22:34:05)
115.  最も危険な遊戯 《ネタバレ》 
 コメディ調に始まり、コメディ調に終わるのだけど、劇中の大半はハードボイルド風アクションで構成されているという、何とも奇妙な一品。   松田優作演じる主人公の鳴海にとって、賭け麻雀で負けてヤクザに殴られたり、ストリップ嬢に振られたりする事こそが日常であり、銃撃戦などは非日常だからこそ、こんな作りにしたのだろうか……とも思ったのですが、主人公の職業は「殺し屋」なのだから、そんな推測も当てはまらないのですよね。  冒頭とラストシーンでの情けない姿と、スタイリッシュに殺しを行う中盤の姿とが、どうしても上手く重ならなくて「殺し屋としての活動は、全て主人公の妄想だったんじゃないか?」と、疑ってしまったくらい。   そんな振れ幅の大きさ、シリアスな演技もコミカルな演技も、格好良く見せられる度量の大きさこそが、俳優松田優作の魅力なのでしょうが、本作は今一つ肌に合わなかったみたいで、残念。  同監督作の「野獣死すべし」では気にならなかった拳銃の発砲音なども、本作では何故か玩具っぽく聞こえてしまったりして、肝心のアクションにも集中出来ず仕舞いでした。   それでも、流石は名優の貫録と言うべきか 「まぁ慌てなさんな、やるったらやりますよ」 「素敵なゲームをありがとう」  等々の台詞を口にするシーンでは、観ていて痺れるものがありましたね。  決めるべきところは、ちゃんと決めてくれる。  観客を裏切ったりはしない映画であると感じました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-07 15:41:12)
116.  江ノ島プリズム 《ネタバレ》 
 「デロリアンは何処だ?」「(ドラえもん風に)タイムウォッチ~」などの台詞には、クスッとさせられました。   前半部分はコメディタッチで、明るいハッピーエンドを予想させる流れだったにも拘らず、後半からシリアス濃度が高くなり、自己犠牲を伴った切ないハッピーエンドに辿り着く……という流れだったのも、良かったですね。  作風が途中で百八十度変わる訳でもなく、ちゃんと冒頭から人死にを扱ったりしていて(この映画は完全にコメディという訳ではありませんよ)と伏線を張っておいた形だったので、作品の空気が徐々に変わっていく様も、自然と受け入れられた感じ。   個人的には、主人公の性格がワガママ過ぎるというか「相手が嫌がっていても、自分が決めた事はやり通す」ってタイプだったのが、ちょっと抵抗あったんですけど……  それよりも気になったのは、携帯電話の扱い。  途中(何で携帯を使わないの?)と思わされる場面が多くて、映画のストーリーに没頭出来なかったのですよね。  もしかして、この世界には携帯電話は存在しないのか……とも思ったのですが、そういう訳でもなさそう。  ならば、時代設定を1980年辺りにするか、あるいは劇中にて「誰かがタイムトラベルを行った副作用で、携帯電話が発明されない世界になっている」という設定を付け足した方が、自然に受け入れられた気がします。  後者の場合は、タイムパラドックスについて説明する際に「時間改変によって、元の世界に存在していた何かが失われてしまう可能性もある」「この世界も、既に変わってしまい、何かが失われた後なのかも知れない」「たとえば、手のひらサイズで持ち運べる電話とか」などと言わせるだけでも、かなり印象が違っていたんじゃないでしょうか。   あと、中盤辺りから完全にヒロインと化す「タイムプリズナー」の今日子ちゃんは可愛かったのですが、ちょっと扱いが大き過ぎたようにも思え、本筋から外れてしまった感があり、残念。  思い切って彼女が主役級の映画にするか、もっと主人公との絡みを減らして、脇役に留めておいた方が良かった気がしますね。  ラストにて、他の人物が主人公を忘れてしまったとしても、今日子ちゃんだけは憶えているというのは救われるものがあり、嬉しかったのですが……  本当に「ただ憶えているだけ」であり、その後に主人公と再会するのかどうか不明というのも、流石に中途半端なんじゃないかと。   主人公が最後に振り返り、もはや他人となった幼馴染の二人を見つめる演出なども、味わい深くて魅力的だとは思うのですが(本当にそれで良かったのか?)という疑問も残ってしまい、どうもスッキリしないんですよね。  元々親友の命を救うのが目的だったとはいえ、相手にとっては命よりも大切かも知れない思い出を、主人公の独断で失わせているってのが、納得出来なかったです。   ……とはいえ、そんな疑問、ちょっとした後悔まで味わえるという辺りが、結果的に、本作の青春映画としての完成度を高めていた気もしますね。  納得いかない事もあるし、正しい選択じゃなかったかも知れない。  それでも、学校での花火や、皆で記念写真を撮った瞬間など、楽しい事も確かにあった……と、しみじみ後から思い出せる形になっている点に関しては、好みの映画でありました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-06 19:51:47)
117.  祇園の姉妹(1936) 《ネタバレ》 
 冒頭、タイトルが「妹姉の園祇」と表記されるのを目にして、これが戦前の映画である事を実感。   溝口監督作というと「雨月物語」が印象深いのですが、あちらと異なり、本作は「現代の観点からすると、ずっと昔の話」「しかし、制作当時からすると、紛れもない今の話」という時代設定なのが、何だか不思議な感じでしたね。  実に八十年前の映画でありながら「主人公の芸妓が、男どもを翻弄する姿の痛快さ」「ラストシーンにて、芸妓の存在そのものを嘆く姿の哀れさ」は胸に迫るものがあり、そこを考えると、やはり凄い作品なのだと思います。  涙を「不景気なもの」と表現するユーモア感覚なんかも、非常に新鮮に感じられて、良かったです。   ただ、歴史に残る名作に対して、こんな事を告白するのは心苦しいのですが、正直ちょっとインパクトが弱いというか、全体的に「平坦」な、盛り上がりに欠ける映画のようにも思えてしまい、残念でしたね。  上述のラストに関しても、ドン底の姉妹がここからどうやって立ち直っていくのだろうかと期待したのに、容赦なく「終」の字が飛び出すものだから、呆気に取られる思い。   この映画の悲劇的な結末を「芸術的である」「素晴らしい」と絶賛する人の気持ちも、分かるような気はします。  それでも、やはり自分としては、ハッピーエンドの方が好きみたいですね。   本作に関しても、たとえ逆境のまま終わるにせよ、主人公姉妹が我が身を憐れんで泣いて幕を閉じるのではなく、もっと力強く前を向いて生きる姿を示して欲しかったな、と思わされました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-03 11:35:47)
118.  愛と誠(2012) 《ネタバレ》 
 実際にコミックスを手にした事は無いという自分ですら「タイトル」「あらすじ」「主要人物」「名台詞」「ラストシーン」くらいなら聞きかじりで知っているという、有名漫画の実写化。   まさかまさかのミュージカル構成には驚いて、主人公の誠が唄いながら喧嘩を始めた時には「これは傑作か!?」と、大いに興奮させられましたね。  けれど、もう一人の主人公である愛が唄う「あの素晴しい愛をもう一度」の時点で(もういいよ……)と、食傷気味になってしまい、後はひたすら満腹状態。   我ながら飽きるのが早過ぎるよなぁ……とは思うのですが、そのくらい「濃い」味付け、演出だったのですよね。  「君の為なら死ねる」などの名言が飛び出した時には「おっ」と身を乗り出しましたし、格闘シーンが同じ三池監督の「クローズZERO」を彷彿とさせる辺りは嬉しかったのですが、それも一過性の感覚。  「ガムコは可愛いけど、大筋に絡んでこないなぁ」 「由紀の生い立ちの件だけが陰鬱過ぎて、バランス悪い」  等々、見方を変えれば長所と言えそうな部分まで短所に思えてしまったりして、どうにも相性が悪かったみたいです。   それでも、終盤の台詞「気が変わっちまったよ、おふくろ」からの、一気にシリアスな結末へと向かう流れには、流石と思わせるものがありましたね。  やっぱり、決めるべきところは決めてくれるんだなと、監督の力量を改めて感じさせてもらいました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-27 10:54:10)
119.  ぼんち 《ネタバレ》 
 「しきたり」「世間体」という言葉が出てくる度に、ちょっとした違和感というか、浮世離れした感覚を味わえましたね。  主な舞台となるのは戦前の日本なのですが、どこかもっと遠い国、遠い昔の出来事であるようにも感じられました。   何せ「妾を持つ事」ではなく「妾を養わない事」が世間からの非難の対象となるというのだから、現代の一般庶民からすると、眩暈がするようなお話。  お妾さんを何人も囲って、何人も孕ませて、主人公は良い身分だなぁ……と皮肉げに感じる一方、男性の本能としては羨ましく思えたりもして、何だか複雑でした。    終盤、戦争によって主人公は没落していく訳ですが、その尺が二十分程度しかなく、ちょっとバランスが悪いようにも感じられましたね。  もう少し苦労した事を示す描写が多かった方が、ラストの「まだまだ一旗あげてみせる」と気骨を失っていない主人公の姿を、素直に応援する事が出来たかも。   監督と主演俳優の名前を挙げるまでもなく、作り手の力量が確かなのは疑う余地が無いのですが、正直、少し物足りなさを感じる内容だったりもして、残念。  オチとして衝撃的に描かれている「男に囲われているだけと思われた女たちが、実は男よりもずっと強かだった」というメッセージに対しても(そんなの、もう分かり切った事だしなぁ……)と思えてしまい、今一つ盛り上がれない。  撮影技術が云々ではなく、こういった感性というか、価値観の違いによって、昔の作品である事を実感させられてしまった形ですね。   軽妙な関西弁での会話を聞いているだけで楽しくて、退屈するという事は全く無かったのですが、もう一押し何か欲しかったなと、勿体無く感じてしまう映画でした。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-20 19:46:12)
120.  スタア 《ネタバレ》 
 元々が舞台劇ゆえか、演出のテンポが非常に良いですね。  物語の殆どが、マンションの一室の中で進行するという作りも好み。   ただし、筒井康隆が原作の為か、強烈な毒を孕んだ作品でもあり「赤ん坊を殺して調理し、客に食べさせる」という展開には、流石に気分が悪くなりました。  勿論、画面には血の一滴どころか、その赤ん坊の顔すらも映らないように配慮されているのですが、泣き声を聞かされただけでも、文字媒体より遥かに生々しく感じられたのですよね。  他にも複数の殺人が発生し、それらに対しては「実は生きていた」オチが付いたりするのに「赤ん坊は、本当に殺されて食べられていた」という徹底振りなのだから、もはや呆れ半分、感心半分といった気持ち。   中盤にて主人公が叫ぶ「芸能人とはかくあるべき論」に関しては、正に熱演と呼ぶに相応しく、一見の価値があるかと思います  「芸能人は、悪い事だってしなきゃいけないんだ」 「後ろ暗い体験が、芸のプラスになっている事だって多いんだ」 「面白くも可笑しくもない清廉潔白な人間が、ドラマを演じたり、失恋の悲しみや庶民の苦しみを謳った歌謡曲を唄えるものじゃないんだ」 「私生児を産んだって良いんだ」 「人を絞め殺したって良いんだ」 「芸の為なんだ」   主張の正しさはともかくとしても、非常に印象深い場面でした。  けれど、その辺りから徐々に暗雲が立ち込め始めたというか、SF的な要素が色濃くなって「何でもあり」な空気になってしまった事は、とても残念。  一応は主人公夫妻の殺人行為をメインに据えており、終盤にて彼らが逮捕されそうになる流れなのに、そこで「空間のひずみ」がどうの「冷蔵庫の中が北極になっている」だのと、新たな要素を付け足されても、話の展開を阻害しているようにしか思えなかったのですよね。   ラストにおける「後藤さんの来訪」も、不条理劇の代名詞である「ゴドーを待ちながら」のパロディであるのは分かるのですが(だから何? 来ないはずのゴドーが来ちゃうのが一番の不条理って事?)と、ひたすら疑問符が浮かぶばかり。   とはいえ、出演者は非常に豪華であり、次々に登場する有名人の顔を眺めるだけでも、それなりに楽しめたりするのだから、全く以て困り物です。  筒井康隆自身も「犬神博士」なるマッドサイエンティストを、楽し気に演じており、彼の小説のファンとしては、それだけでも「素敵な映画」と呼びたくなってしまう。  何とも評価の難しい、さながら「好き」と「嫌い」の境界さえをも捻じ曲げてしまうような、独特な一品でした。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-02 05:53:45)
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