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プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  プロミシング・ヤング・ウーマン 《ネタバレ》 
私はフェミニズムにも#MeTooにも正直言って関心は薄いけど、あのバカ医学生たちがやらかしたことは普通に弁解の余地がない立派な犯罪でしょ。その事件で親友ニーナが自殺してしまったキャリー・マリガンの復讐譚を見せられるわけですけど、彼女自身もやっぱおかしいんじゃないでしょうか。事件から7年たって、飲み屋で泥酔したふりをしてヤルことを目当てに声をかけてきた男たちを懲らしめるのが唯一の趣味みたいになっている、これじゃセルフ美人局ですよ(笑)。そんな彼女が医学部の同級生だったライアンと偶然再会してから親友が自殺に追い込まれた顛末がフラッシュバックの様に蘇ってきて亡きニーナに成り代わったように復讐に邁進し始める、でもニーナの母親が言った「前へ進んで、お願い、みんなのために…」という歎願がほんとは正論なのかもしれない。最初は学生時代の女友達や教授には嫌がらせみたいなレベルだったけど、この女も相当性格が悪い(笑)。それがライアンの秘密を知ってからはどんどんエスカレートしてゆき、自分にはちょっと衝撃的だったラストの展開になってゆくのです。 この映画で感情移入出来るキャラには巡り合わなかった気がするし、みんなクソみたいな連中で復讐は成就したと言ってもカタルシスはなくて正直言って後味はすごく悪い。でも後半の脚本の構成力はとくに秀逸、怒涛の展開は息を飲まされました。だいいちキャリー・マリガンが演じるヒロインの名前が“カサンドラ”というところからして意味深、性被害を訴えても男性優位の社会では信じてもらえない・相手にされなかったという悲劇を、ゼウスに呪いをかけられたギリシャ神話のカサンドラに重ねているような気がします。 どうしても意味が理解できなかったのは、途中からチャプター建ての様にシーン転換のカットにⅠ・Ⅲ・||||(何故かⅣではない)というローマ数字があるところで、最後にはその||||に斜線が入るんです。どなたかこの意図するところをご教授いただけませんかね?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-15 23:15:05)
2.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 
そうか、SF三大ブラック企業の雄タイレル社は倒産しちまったか、でも『エイリアン』のウェイランド湯谷や『バイオハザード』のアンブレラと比べるとそれでもタイレルにはまともなところもあった様な気がしますが、その後釜にはウォレス社というはるかにブラックな企業が収まっていて、新御三家の誕生です(笑)。 80年代SFをリードした映画群の中で唯一シリーズ化されなかった『ブレードランナー』にもついに続編が登場というわけです。どういう展開なんだろうと恐る恐る観てみましたが、レイチェルがデッカードの子供を妊娠・出産とは予想をはるかに超えた展開でした。まさかレプリカントが妊娠できるなんて、こうなってくると人間とレプリカントの違いは何なのかという素朴な疑問に行き着きます。そしてAIのジョイが加わってきて、本作はまさに人間・レプリカント・AIの境界線はどこにあるのかという実存的不安がテーマだともいえるんじゃないでしょうか。あ、それから、デッカードは爺さんになって登場しますから、一部のファンの中で燻っていた“デッカード・レプリカント説は”公式に否定されたってことになりますね。老人ホームで余生を過ごすガフも姿を見せてくれてあの折り紙を相変わらず造ってましたが、エドワード・ジェームズ・オルモスもほんと老けましたね。新ブレードランナーであるライアン・ゴズリングもそれなりに雰囲気は出てましたけど、この人はシリアスな作品に出てくるとどれも同じような演技パターンなので、自分としてはちょっと食傷気味です。 “レイチェルの産んだ子は実はあの人だった…”という幕の引き方は正直上手いと思いました。けどレプリカントの抵抗軍みたいな連中が登場してくると『猿の惑星』や『ハンガーゲーム』みたいな最近流行の“抵抗もの”みたいな安っぽい話しになるのかとガックリきました。しかもあの終わり方からすると、レプリカント抵抗軍を前面に持ってくる続編を撮る気なんじゃないかとゾッとしてしまいます。頼むからもう止めてくれ・・・
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-02-27 22:35:07)
3.  ブラニガン 《ネタバレ》 
『マックQ』の続編かと思いきや、主演が刑事でジョン・ウェインということ以外は共通点はなく、役名もジェームズ・ブラニガン(あとアイルランド系であるという設定はお約束です)。勤務地もシアトルからシカゴになっていますけど、二作とも当時の刑事もの映画で定番だったNYを舞台にしていないのは、ジョン・ウェインのNY嫌いが反映しているのかな? 『マックQ』の翌年の製作なのに、ジョン・ウェインはやけに老けて衰えた感じは濃厚でした。この映画は『ブラック・レイン』や『レッド・ブル』などの刑事バディ+異文化衝突パターンの元祖みたいなものです。ロンドンでブラニガンとはからずもコンビみたいな関係になるのがリチャード・アッテンボローで、チビの世襲貴族の警視と大男のシカゴ刑事の凸凹コンビはいい味出していました。軽いコメディタッチのストーリー・テリングも軽快で、ジョン・ウェインも刑事役二作目で肩の力が抜けてきた印象です。監督はというと、英国ノワールの快作『電撃脱獄・地獄のターゲット』のダグラス・ヒコックスじゃないですか、どおりでブラニガンを狙う殺し屋がモーゼル・ミリタリーを使ってたわけです、この監督はほんとモーゼル・マニアですね。刑事ものは悪役に魅力があるかが評価のポイントの一つだと思いますが、悪徳弁護士を演じたメル・ファーラーが実にいい味を出していました、さすが名優です。 ジョン・ウェインの人生はこの後5年足らずで、ほとんど遺作に近い本作で刑事役は終わりました。もし彼の刑事役挑戦が10年いや5年でも早かったら面白い刑事ドラマの連作が残せたかもしれません。この映画の様に一作ごとに勤務地や役名を変え、ジョン・ウェインのキャラがアイルランド系大男の刑事という設定にしていたら面白かったでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-11-29 23:22:09)
4.  ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期 《ネタバレ》 
12年ぶりに続編が製作されるとは、『T2 トレインスポッティング』ほどの驚きはないけど、なんでこんなに間が空いたのかというのは素朴な疑問。前半の展開はまるで『ブリジット・ジョーンズのセックス・アンド・ザ・シティ』といった感じで、悪友のシャザーやジュードがすっかり貫禄あるママになっている中でブリジットだけが凄く浮いている感じ。のっけからヒュー・グラントのお葬式と来るからなんか嫌な感じがしましたが、ラスト・カットを観て「あぁ、やっぱりそうか」と予感的中、こりゃ次回作もあると確信しましたがなんでグラントが本作では抜けたのかはまた疑問のタネとなりました。これは『キングスマン』のコリン・ファースのキャラのパロディなのかとも思いましたが、単にスケジュールかギャラの揉め事なのかもしれません。本来はコリン・ファースとブリジットの子供の腹ませ役を争うのはグラントのはずで、ここにパトリック・デンプシーを持ってこざるを得なかったところが、本作の最大の欠点でしょう。そりゃあヒュー・グラントとじゃ格というか存在感が段違いですからねえ。 予定調和な脚本ですが、監督が第一作目のシャロン・マグワイアに戻っていますので、原点回帰といった雰囲気だと感じます。皆さんご指摘の通り、レネー・ゼルウイガーとコリン・ファースのふけ具合は隠しようがないですが、両者ともアンチエイジングというか自分の年齢にあったメイクで役に臨んでいるので好感が持てます。レネーは最近ネットで観るすさまじい画像(失礼)から見ると、これでもかなり盛っていると考えた方が良いですけど。こういう大人向けハリー・ポッターみたいなお話しにケチをつけてもシャレになんないのは判ってますが、さすがにブリジットが出産するまで父親がどちらかを知ろうとしないのは、ちょっと浮世離れしてますね。まあこれを言っちゃったら野暮というものかもしれませんが。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-07-23 23:50:21)
5.  フォロウィング
本作がクリストファー・ノーランの監督デビュー作になるわけですが、時系列をぐちゃぐちゃにする語り口はまるで『パルプ・フィクション』みたい。あのクリストファー・ノーランまでもが初期にはタランティーノの影響を受けていたことは感慨深いものがあります。だがこのパルプ・フィクション方式は順にストーリーをつなげてみると単純なお話しにならないと上手く機能しないもので、本作の様に複雑なプロットでどんでん返しがおこる物語では成功しているとは言い難いところがあります。要は普通に順撮り風に見せた方が映画としては良かったんじゃないかってわけです。そこはノーラン、技巧に走り過ぎた若気の至りと解釈いたします。でもモノクロ撮影と暗い語り口は、いかにも英国ミステリーらしくて好感が持てました。『プラーグの大学生』みたいなドッペルゲンガー的な展開にすれば、そのまんまホラーになるかなと思います。
[ビデオ(字幕)] 6点(2019-06-17 23:31:55)
6.  ブリングリング 《ネタバレ》 
「事実は小説よりも奇なり」、本作はまさにこの古人の名言につきます。こんなお話し、フィクションならば脚本段階で即ボツにされること間違いなしでしょう。ハリウッド・セレブの自宅があんなにセキュリティが甘かったなんてとても信じ難い。ビバリーヒルズなんか町の入り口でセレブの自宅を案内するマップが売られているぐらいだから住所をネットで特定するぐらい誰でもできるでしょうが、まさかパリス・ヒルトンが鍵をマットの下に隠していたなんて(笑)。撮影には実際の彼女の家を使わせたそうで、この女どこまでアホなのかそれとも売れるためなら手段を選ばないタレントの鑑なのか?被害者の中にリンジー・ローハンもいましたが、パリスといい今や落ちるところまで落ちてしまった者同士という共通点があります。事実なのか脚色なのか判断に迷いますけど、ラストのインタビューで主犯格のエマ・ワトソンが「刑務所で隣の房にリンジー・ローハンが入っていた」と語るシーンが強烈な皮肉になっています。つまり、盗るほうも盗られるほうもその差は紙一重の似た者同士というわけです。 共感できる要素は一かけらもないんですが、ガーリー・ムーヴィーの巨匠ソフィア・コッポラだけあってそのセンスだけは円熟の域に達していると思います。彼女自身が育った環境の賜物かもしれませんが、こういうファッションとブランドものをアイコンに使わせたら、ハリウッドでも彼女の右に出るものはいないのは確かです。でもそのセンスが映像化されても、観る者の心に何かが残るかという観点から言うと、ちょっと苦しいところがあります。まあこれが彼女の趣味なんだからどうしようもないんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-10-22 22:42:19)
7.  ブラックブック 《ネタバレ》 
第二次世界大戦でドイツに占領された国々にはいわゆる“レジスタンス神話”大なり小なり存在しますが、さすがヴァーホーヴェンらしく「神話なんてなかったんだよ!」とオランダ・レジスタンスの内情を赤裸々にさらしてくれます。彼のかつて撮った『女王陛下の戦士』もレジスタンスものでしたが、これも単純な戦争アクションではなくレジスタンスに対するシニカルな視線が印象に残る映画でした。 サスペンスドラマとしてはよく出来ています。観終わって気が付くのは序盤にちりばめられた伏線の多さで、必ずしもストーリー展開に関わった伏線ばかりではなかったけど、実に凝った脚本です。そしてヴァーホーヴェン風味のシモネタ・お下劣ネタは健在で、オランダ時代の盟友脚本家のジェラルド・ソエトマンとのタッグはやはり強烈です。なんせ『ルトガー・ハウアー/危険な愛』を生み出したコンビですからねえ。レジスタンス側もナチ側も出てくるキャラはもうゲスばっかり、ヒロインのラヘルにしたって匿ってくれていた農家に爆弾が命中しても一家の安否は眼中になく、次の隠れ家をどうしようかと悩むだけなので、「おい、おい…」と引いてしまいます。ヒーローもヒロインも癖が強いのがヴァーホーヴェンの映画の特徴なので、まあ理解してあげてください。さんざんナチとやりまくったくせにすぐにカナダ兵とくっついちゃうロニーや、降伏後も連合軍に協力すると称して態度がでかいカウトナー将軍など、すっきりした勧善懲悪とは程遠い結末はいい味出してます。 砲声が近づいてくるラスト・カットでしたが、1956年ということでこれはスエズ動乱の始まりを示唆しているんでしょうね。ラヘルはなんかまだまだ苦労しそうですが、続編を制作してみても面白いかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-07-04 21:55:16)
8.  フレンジー 《ネタバレ》 
70年代になって本作でヒッチコックは復活したと評されていますが、「ヒッチコックは本作でついに本性を現した」と言った方が正しいんじゃないでしょうか。お話しは濡れ衣を着せられた主人公が刑務所から犯人のもとへ乗り込むという閉め方なんかからして『ダイヤルMを廻せ!』のサイコ・キラー版だとも言えます。主人公のろくでなしのバーテンダーは元空軍少佐という設定、そういや『ダイヤルMを廻せ!』の暗殺者チャールズ・スワンも空軍の退役将校だったですね。本作ではジョン・フィンチが演じる主人公が最後までだらしない男のままで終わってしまうのが作品のイメージを悪くしがちですけど、これはヒッチコックの計算通りなんです。彼が見せたかったのは生々しい殺人シーン(もっともまともに見せたのは一人だけでしたが)で、べろーんと舌を出した絞殺死体は今の眼でも衝撃で、私は古今東西の映画の殺人シーンで三本の指に入ると思っています。ヒッチコックは『サイコ』の有名なシャワー・シーンもこういう生々しい撮り方をほんとはしたかったけど、さすがにそれは無理だったということでしょう。あれだけ大量の殺人ミステリーを撮った巨匠ですが、ほんとに撮りたかったのは殺人シーンだったんじゃないでしょうか。あとヒッチコック映画でついに女性の裸体が映しだされたというのも、画期的ですがこれは時代の流れだったとしか言いようがないですね。でもカット割りから見てバーバラ・リー=ハントとアンナ・マッセイに関しては、ボディ・ダブルだと思って間違いないでしょう。面白いのは犠牲者がテムズ川に浮かんだ娼婦を含めてみんな金髪だったことで、ここにもヒッチコックの金髪コンプレックスがうかがえます。 不味いフランス料理ばかり作る警部の奥さん(でも実は名探偵)や死体の拳からタイピンを回収しようとする犯人の悪戦苦闘など、ヒッチコックお得意のユーモアは確かにあるんですけどかなりブラック風味が強くて、この作品の不思議な味付けになっています。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-01-05 22:57:50)
9.  フッテージ 《ネタバレ》 
主人公がイーサン・ホークですから、まあだいたいの展開は読めたような気がします。この人が主役の映画で、ヒーローらしく雄々しく邪悪と闘うなんてキャラな訳はないですからね。過去のヒット作へのプライドは高いけれど、最近は著書が売れなくて破産寸前のノンフィクション作家なんてイーサン君にはピッタリの役です。マスコミには正義を求めて作家活動してるんだと大言壮語しているけど、頭の中はカネのことしかないという平凡さがリアルです。でも家族に内緒で未解決殺人事件のあった家に引っ越すなんて、ちょっと無茶すぎでしょ。想像してみてください、あなたが作家だったとしても世田谷一家惨殺事件のあったあの家に住むことができますかね? 実はこの映画の怖がらせ方の基本はこの事件のあった家に集中しているんだと思います。そのおどろおどろしい雰囲気も中盤に子供の霊が映るようになってからは一気にスケールダウンしてしまった感じがします。だいたいあの世の邪悪なものが、あんなに律儀に自分の犯行を8ミリ映像に残しますかね?それも60年代からきっちり10年ごとに。それに90年代以降では8ミリのフィルムなんてもう入手困難だったはず、まあそれは魔界の人がすることですから突っ込みを入れてもしょうがないですけどね(笑)。 サイコキラーものと思わせておいて実はホラーというひねり球でしたが、ホラーらしい雰囲気は出ていました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-03-21 23:56:24)(良:1票)
10.  封鎖作戦 《ネタバレ》 
もし私が“若いころから容貌が変わらなかった俳優ベスト10”というランキングをするなら、間違いなくベスト1の称号を奉るのはトレヴァー・ハワードです。彼ほど生涯顔つきが変化しなかった男優は他にいないんじゃないでしょうか、ということは若いころから恐ろしく老けた顔だったわけですけど(笑)。 この映画の原題は“Gift Horse”、これは第二次大戦中にまだ参戦していなかった米国が英国海軍に貸与した中古駆逐艦のことを表しています。第一次大戦中に建造されたレトロな艦で、平甲板で煙突が4本もついていて“four-pipers”などとも呼ばれていました。この中の一艦の艦長に任じられたのがトレヴァー・ハワードで、彼は戦前に衝突事故を起こして海軍を退役させられた古傷を持っています。任務は船団護衛ですから地味な物語展開で、前半はこのオンボロ艦との悪戦苦闘ぶりがメインで、沈没船とは衝突するわ防潜網をスクリューにからませるて立ち往生するわでほんといいとこなしです。旧帝国海軍ならこの艦長は間違いなくクビでしょうが、船団護衛に猫の手も借りたい英海軍はそれどころじゃないってわけです。興味深いところは艦長を含めてこの艦の乗組員はほとんどが招集兵であることで、戦闘艦には現役兵しか乗せなかった帝国海軍とはこれまた違いますね。この乗員の中にはリチャード・アッテンボローがいます、50年代に撮られた英国戦争映画には必ずと言っていいほど彼がわき役で出演している感じがするぐらいです。 ストーリーは後半からガラッと変わってこの駆逐艦が特殊作戦に加わってフランスのドイツ軍港に突入することになります。これはサン・ナザール軍港に突入して艦ごとドックをふっ飛ばした「チャリオット作戦」の史実に基づいています。つまりこの映画のHMSベントレーという駆逐艦は、実はこの作戦で戦史に名を遺したHMSキャンベルタウンだったというわけです。偽装のために煙突を二本に減らしたり突入後は艦長以下の生き残りが捕虜になって終わるところなんかは史実通りですけど、作戦名や細かい部分は架空になっています。当時はまだ戦後まもなくなので、こういう特殊作戦については機密解除になっていなっかったからなのかと推測されます。そういう事情もあってか、この突入作戦をメインに出来なかったので牧歌的ですらある前半部との継ぎはぎ感はけっこう半端ないですね。まあそこら辺にこの映画の味があると言えなくもないんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-02-11 22:39:10)
11.  不思議な世界・未来戦争の恐怖 《ネタバレ》 
リチャード・レスターといえばケン・ラッセルといい勝負ができる英国映画界の鬼才ですが(もっともレスターは米国人ですけど)、そのフィルモグラフィの中でももっともカルトで奇天烈なのが本作でしょう。自分もいろいろと映画を観てきましたが、本作はその奇妙さではベスト5にランクインできる珍作です。 なぜか核戦争が起こってしまってロンドンは核ミサイル直撃されて文字通り蒸発、まあ世界大戦じたいは2分30秒で終結してしまったそうですが。そういう設定なので壊滅後のロンドンは地表には車の残骸や食器が散乱するほとんどなんもない荒地で、どっかのゴミ捨て場みたいなところロケしたみたいです。映画の雰囲気はそういえば『不思議惑星キンザザ』に似ているとも言えますけど、登場人物の奇天烈さと薄汚さははるかに凌駕してます。もう出てくる連中がヘンな奴ばっかり、そして見せられるギャグは下らないを通り越してシュール過ぎ、さすがに訳が判らず全然笑えません(でもBBCニュースのキャスターのくだりだけは傑作)。しかし放射能の影響で人間が部屋や家具といった無機物や動物に変化してしまうというのは、なんかカフカ的な不条理が感じられてちょっと面白かったです。登場人物の中でもラルフ・リチャードソンはなぜか“部屋”に変身しちゃいます、それにしてもサーの称号を持つ名優なのにこの人けっこう前衛的というかヘンな映画によく出てますよね。ローレンス・オリヴィエやジョン・ギールグッドに比べるとその傾向は顕著で、けっこう茶目っ気がある人だったのかもしれません。 本作はもちろん本邦未公開、本国でもあわやおクラ入りされかけたといういわくつきで、さすがのリチャード・レスターも好き勝手に撮ることはできなくなって以降は単なる職人監督としてしか映画界で生きることができなくなりました。それを思うと、我が愛するケン・ラッセルは死ぬまで好き勝手し放題できて幸福だったんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 5点(2016-12-03 23:21:15)
12.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
ここ10年ぐらいブラピの映画にははずれがないと信頼していましたが、今回は期待を裏切られてしまいました。 まず、フューリー号の乗員を始めとする戦車兵がなんかとても薄汚い感じがします。イケメンのブラピですらとてもヘンな髪形で、シャバにいたときはブルーカラーかド田舎の百姓の兄ちゃんみたいなとても粗野なキャラが最後まで馴染めませんでした。『イングロリアス・バスターズ』のアルド・レイン中尉が戦車兵になった様な感じかと思っても、彼の行動にはユーモアのかけらもないんでつまらない、そう言えばこの映画には全篇を通じてもユーモアが皆無なんですよね。彼のキャラに古参の乗員たちがなんで敬服するのかも判らなかったですよね。すでにご指摘がありましたが、この映画は『プライベート・ライアン』の縮小バージョンみたいな脚本構成なんですよ。ブラピがトム・ハンクスのミラー大尉みたいな説得力ある演技が出来なかったのがこの映画の失敗でしょう。 確か世界で一輛しかない可動する本物ティーガー戦車を撮影に使えたことは、マニアにとっては眼福としか言いようのない感激でした。敵味方とも本物の戦車を使った欧州戦の映画となると、ルネ・クレマンの『鉄路の闘い』以来の快挙になるんじゃないでしょうか。米独両軍とも軍服や徽章にまで凝りまくっていましたからね。ただ両軍の機関銃が撃ち出す曳光弾はCGを使っているんでしょうけど映像的には強調し過ぎ、あれじゃあまるでスター・ウォーズです。 兵器考証については完璧なんですけど、プロットはどうもムリがあり過ぎです。だいたい45年4月というソ連軍がベルリンに突入しようかという時期に、いくら武装SSとはいえ軍歌を歌いながら意気揚々と行軍してくるなんてちょっとあり得ないでしょう。つまりドイツ軍があまりに戦意があり過ぎで、こういう展開にするならちょっと前のバルジの戦いあたりのストーリーにしたら良かったんでしょうね。それを言ったらもっとおかしいのは米軍の方で、史実では4月にはドイツの敗北は決定的なのでお偉いさんも下っ端の実戦部隊もいかにムダな損害を出さずにドイツ国内を進撃するかが最大の関心事だったのです。悲壮感を出したかったのは判りますけど、あれじゃみんなムダ死にですよ。
[DVD(字幕)] 4点(2015-05-12 23:15:01)(良:3票)
13.  プラトーン 《ネタバレ》 
ベトナム戦争に従軍した人がこの映画を観て号泣したという話がありますが、なんか良く判る気がします。なんせオリヴァー・ストーン自身のベトナム戦争体験を基にした脚本ですから、軍隊生活のディティールはきっと真に迫ったものでしょう。そしてこの映画に全篇にわたって満ち溢れているのは“モラルと価値観の崩壊”でしょう。その象徴としてエリアスとバーンズという人物を創造したストーンの作劇術はレベルが高く、彼の書いた脚本の中でもベストと言ってよいでしょう。また随所に“弦楽のアダージョ”を流すセンスもベタながらも感動的で、エリアスがまるで弁慶みたいに大往生するシーンは観るたびに泣かされます。この有名なシーンはいまやベトナム戦争映像のアイコンにまで昇華していますからね。ジョニー・デップがチョイ役で出演しているところも注目です。 日本の団塊世代がいいとこ取りの食い逃げしてるのとは大違いで、アメリカのベビー・ブーマー世代は血を流し犠牲を払ってきたんですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-01-08 22:25:17)(良:1票)
14.  二つの世界の男 《ネタバレ》 
東ドイツのスパイとして西側から必要な人物を拉致してくるのが稼業のジェームズ・メイスンが主人公です。舞台となるのはベルリンでロケ撮影されています。この映画の見どころ(?)は、戦後まだ8年しかたっていない当時のベルリンの荒廃した街並みが生々しくフィルムに残されているところです。良く考えたらこの当時はまだベルリンの壁が出来る前で、東西の行き来が比較的緩かったみたいです。 冒頭、ベルリンに着いたクレア・ブルームを自転車に乗った12歳ぐらいの少年が尾行するところはちょっとサスペンス感が有りました。キャロル・リードは『第三の男』のウィーンからベルリンに舞台を移したサスペンスを撮りたかったみたいですが、メロドラマ色を強くしたためにどうも緊迫感が持続しないストーリーになってしまいました。 あと見どころとしてはヒルデガルド・ネフ。ドイツ映画で初めてヌードを見せた女優なんだそうですが、たしかにグラマラスでしたね。もちろん本作では脱いではいませんけど(笑)。
[DVD(字幕)] 5点(2014-05-18 21:48:35)
15.  冬のライオン 《ネタバレ》 
キャサリン・ヘップバーンが、この映画で『ファニー・ガール』のバーブラ・ストライサンドと同点でオスカー主演女優賞を分けあったのは有名な話ですが、これだけ格調のある堂々とした演技を拝めるのは滅多に体験できることじゃありません。ピーター・オトゥールとの壮絶な騙し合いと相手の心理を知り尽くしたうえで撃ちまくる壮絶なセリフのバトル、あの『バージニア・ウルフなんてこわくない』の壮絶さに匹敵するんじゃないですかね。 ピーター・オトゥールはこの映画の前に『ベケット』でもヘンリー2世を演じているわけで、ヘンリー2世は『アラビアのロレンス』とならぶ彼の当たり役でしょう。アンソニー・ホプキンス、これも彼の名演の賜物なんでしょうけど、歳の割には妙に老けて見える“ライオン・ハート”リチャードがとても印象に残りました。 時代考証的には正しいのでしょうけど、ヘンリー2世やフランス王フィリップ2世たちのとても王族とは思えない質素と言うか粗末な衣装には驚いちゃいました。でもキャサリン・ヘップバーンの装束は同じ様に質素ではあるが気品があって、特にラストにかけて身にまとうドレスの鮮やかな赤は気品に満ちていました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-09-16 17:10:05)
16.  THE 4TH KIND フォース・カインド 《ネタバレ》 
へーえ、M・ジョヴォヴィッチはスタッフに騙されて出演してたんだ、それにしてもミラは最近ふっくらしておれ好みのいい女になってきたよな、以上終わり。  すいません、映画の感想になってませんでした。でも原題を訳すと『第4種接近遭遇』になると知っていたら、こんな映画絶対に観なかったと思うんですよ、ほんと時間のムダでした。 TV番組で「この番組はフィクションで実在の人物や団体とは何ら関係ございません」とエクスキューズするのをまるっきり逆手に取った様なプロットなんですが、その手法自体は『ファーゴ』の例を出すまでもなく“有り”です。しかしことUFOや宇宙人がらみになると、こういうフェイクをマジで信じちゃう人がいるから、いくら商売とは言っても罪つくりなことは止めて欲しい。 これで映画としての出来が良いならまだしも、矢追純一のUFO特番に毛が生えた程度なんですからねえ… アメリカ人はアプダクションと催眠療法が大好きだということだけは理解できましたが、シュメール語が実は宇宙人の言葉でその宇宙人が「私は神だ」なんてシュメール語でほざくに至ってはさすがに観ていて腹が立ってきました。 宇宙人ならぬ北朝鮮人に同胞を拉致されている日本人からすれば、「何を能天気なこと言ってやがるんだ!」とあきれるしかないですね。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2013-06-12 00:32:48)
17.  フレンチ・ドレッシング(1964) 《ネタバレ》 
先日天に召された鬼才ケン・ラッセルの劇映画デビュー作です。英国南部のさびれた海岸町ゴームレー、町おこしのためにカンヌみたいな映画祭を開催してBB(ブリジッド・バルドー)を招待しようと目論むジムだったが、そんな田舎町に人気絶頂のBBが来てくれるはずもない。そこで目をつけたのが同じフランスのセクシー女優FF(フランソワ・フェイヨール)で、アタックしたら何とOKしてもらえちゃった。かくしてお色気女優を招いて第一回ゴームレー映画祭はドタバタのうちに開幕したが、果たしてその首尾は? というわけで、町内会の夏祭りにタレントを呼んだらAV女優が来ちゃったと言う様なお話しです。「ジャック・タチの映画を研究してコメディ映画を撮った」とケンちゃんは語っていたそうですが、そう言われれば海辺のリゾートで展開するコメディなので、『ぼくの伯父さんの休暇』みたいですが、似ているのはそれだけ、まだ薄味ながらもケン・ラッセル印の毒気はしっかり出ています。市長と、金魚のフンみたいに市長と必ず一緒にくっついてくる市会議員たちが傑作で、彼らが海辺でFFと戯れるシーンはもう笑ってしまいました。そしてリチャード・レスター映画の常連であるロイ・キニアも大活躍で、60年代英国コメディには彼は欠かせませんね。ラストもなんか青春映画っぽいさわやかな終わり方で、このセンスが後に撮った傑作ミュージカル映画『ボーイフレンド』に繋がってゆくんですよ。
[ビデオ(字幕)] 7点(2012-01-11 23:43:17)
18.  フランス軍中尉の女 《ネタバレ》 
撮影中の映画と、その出演俳優の私生活をシンクロさせると言う語り口はトリュフォーの『アメリカの夜』と似ていますが、俳優としてのジェレミー・アイアンズとメリル・ストリープのW不倫劇より撮影中の映画の方がはるかに面白いところが『アメリカの夜』との大きな違いでしょう。映画の物語と現実の世界をほぼ同等の時間を使って描いていますが、“フランス軍中尉の女”と呼ばれる地雷女に引っかかって人生が狂ってゆく男の物語は大変面白く、こっちだけで一本の映画とした方が良かったかも。まあ原作小説があるのだから詮無いことですけど、映画としては文学の香りが高い一編でした。
[ビデオ(字幕)] 6点(2011-12-28 23:37:58)
19.  ファーゴ 《ネタバレ》 
“実話”なんて大ウソで、実在するのは地名ぐらいでしょう。その地名にしたって、タイトルになっているファーゴからして冒頭ブシェミたちが打合せに集まった場所ですが、その後まったくストーリーに無関係というおとぼけぶりです。田舎の町ですから警察署長を始めのんびりした人ばかりのところに、ウィリアム・H・メイシーが立てた間抜けな誘拐計画のためにやって来たよそ者二人が期せずして凄惨な殺しを重ねてゆくところは、後年の『ノーカントリー』に繋がってゆくわけです。メイシーのかみさんが拉致されるシークエンスは、侵入してくるところから実に怖いカットの連続なのですがドタバタ喜劇の様なかみさんのリアクションが妙にシュールに見えてコーエン兄弟の演出の真骨頂です(このかみさん、その後殺されるまでずっと袋かぶせられたままというのもおかしい)。フランシス・マクドーマンドの食事シーンが何度かありますが、どれも脂ぎった喰い物をバクバク平らげているのが、とってもグロテスク。「食べる」ことは「生きる」ということに直結しているということが言いたいシンボリックな表現なのかなと思いました。いずれにせよ、コーエン兄弟映画のひとつの頂点であるのは確かです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-25 19:12:00)
20.  フレンズ/ポールとミシェル 《ネタバレ》 
悲しいことに、アニセー・アルヴィナはもうこの世にはいません(2006年ガンで死去)。『小さな恋のメロディ』のトレーシー・ハイドほどではないにしろこの後作品には恵まれなかった彼女ですが、『フレンズ』のミシェルとしてその超絶的な美しさをフィルムに永遠に残せたのだから、幸福な女優だったと言えるのではないでしょうか。同じティーンエイジャーの恋を描いた『小さな恋のメロディ』と比べて本作はリアルでシリアスな作劇ですが、ポールとミシェルのままごとのような生活がアルル地方のため息が出るほど美しい自然(ここは、アルベール・ラモリスの『白い馬』と同じロケ地ですね)の中で展開されるのでどこか寓話のような味わいが出ています。海辺を駆ける野生の白馬、繰り返し映される美しい落陽、そして麦畑の真ん中でハグするポールとミシェル、この映画は素晴らしい映像に溢れています。そして名曲中の名曲『フレンズ』を始めとするエルトン・ジョンのスコアも忘れてはなりません。ほんとこの頃のエルトン・ジョンは良かったですねー。 心に残る不朽の名作だと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-11-20 18:20:15)(良:1票)
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