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ドラえもんさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  007/ゴールドフィンガー
007の人気が一気に爆発し、一大ブームのきっかけともなった作品。女性が全身に金粉を塗られて殺害されるというアイデアが新鮮で、またシリーズ中、もっともエロティシズムが色濃くでた作品としても、当時としてはセンセーショナルな話題を集めた作品でもある。オープニングのバスタブに温熱機を投げ入れて感電死させるシーン(クライマックスのオッド・ジョブとの対決の暗示ともなっている)は、当時のTVコマーシャル(薬品)のタイトルバックにもなったほどの名場面の一つとなっている。スイスでのロケーションの美しさや、ゆったりとした映画の流れと、テンポ良く描かれていくシーンとが巧く纏め上げられていて、今観ても懐かしいというよりは、むしろ新鮮さすら感じる。
9点(2001-01-28 00:17:24)
22.  ブラザー・サン シスター・ムーン
フランコ・ゼフィレッリ監督といえば、どうしても「ロミオとジュリエット」ということになるが、もう一つ忘れてはいけないのが本作。史上有名なアッシジのフランチェスコを主人公にしたこの作品は、歴史物あるいは伝記ドラマである以上に、現代に通ずる平和的な愛の思想を謳い上げている。フランチェスコは自然を愛し、鳥や動物に親しみ、その無限の優しさに生きる事の意味を見出す。その思想が単なるメッセージとしてではなく、人間の優しさ、自然の優しさとして画面に純粋な実を結ぶ。絵画のようなロングショットの美しさが印象に残る作品で、賛美歌のような崇高な旋律のテーマ曲もまた素晴らしい。
9点(2000-11-12 21:08:42)(良:2票)
23.  ジャッカルの日
緑の森の中に砕け散る真っ赤な西瓜。恐ろしいほどの静けさ。暗殺用の特殊ライフルの試し撃ちのワン・シーン。一匹狼でプロの殺し屋“ジャッカル”の情感というものが見事に表現されている。最後まで顔を合わせることの無い二人の男。作品は、人間味豊かに描かれるルベル警視と、孤独で冷徹・不敵なジャッカルとを対比させ、フィクションでありながらノンフィクションと錯覚をおこす程の、見事な緊迫感をもって描かれている。
9点(2000-10-16 23:34:46)
24.  秘密と嘘
主人公たちそれぞれに秘密があり、告白するべき嘘をもち、そしてそれに涙する。それはそれぞれの痛みを分かちあい、そこに愛の存在というものを確かめ、やがてファミリーという自然な姿となる。この人生の悲喜こもごもの物語を、マイク・リー監督は中産階級や労働者階級の人々の生活に、喜びや哀しみ、さらに戸惑いや感動をも含めた、親しみを込めて切々と謳いあげていく。出演者のすべての演技が素晴らしい名作。
9点(2000-10-16 23:11:29)
25.  博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
米ソ冷戦時代の核戦争の恐怖とその愚かさを、ブラックな感覚で描いたS・キューブリックの傑作SF。この作品で特に印象的なシーンは、終盤、米軍爆撃機のたった一機が旧ソ連ミサイル基地上空で、水爆投下のハッチが故障して開かなくなってしまう。しかし少佐(=名前がキングコング)が水爆ミサイルに乗っかったまま修理しようとしたとたんハッチが開いてしまう。その彼がロディオのカウボーイよろしく落下していく様子を上空から俯瞰でとらえ、やがて小さく見えなくなった途端、水爆が爆発してしまう。それから、やがて世界中にキノコ雲が立ち上がるわけだけど、この悲惨な中、“♪いつかまた逢いましょう・・・”と女性ボーカルの甘いラブ・ソングが流れて映画は終わる。他にもドクター・ストレンジラブが時折、自分の意思とは関係なく右手がナチスの挙手のように上がってしまうのを、必死になって押さえるおかしさや、彼がラストで「私は立てる」と車椅子から立ち上がるシーン等、意味深く印象的なシーンは多い。この公開時期、日本では東京オリンピックが開催されていたこともあり、記録的な不入りとなった不幸な作品でもありますが、かえってS・キューブリック(当時はカブリックでした)の名前を高めた作品として記憶に残る。
9点(2000-10-09 00:08:20)(良:2票)
26.  女王陛下の007
これだけ長年シリーズとなっているのにも拘わらず、そのコメント数の少なさは信じられないほど!このアクション映画の原点ともいえるこのシリーズをもっと観てコメントしてくださいっ!子供の頃からほぼリアルタイムで接してきた者にとって、J・ボンド=S・コネリーという固定されたイメージは拭いきれないけれど、本作で主演したジョージ・レーゼンビィだけは唯一の例外。彼はアクションの決め方にスピード感やパンチ力があり、コネリー=ボンドよりも好感がもてる部分が多い。僕的にはボンドの本来のイメージに一番近いと思っています。この作品、雪山が舞台だけに困難な撮影状況であったにも拘わらずカメラが素晴らしく、特にスキーチェイス(追っ手がラッセル車に巻き込まれ、吹き上げられた除雪が真っ赤に染まるショッキングなシーンもあります)や要塞を奇襲するヘリの朝焼けのシーンなど数多くが印象に残る。唯一という意味では、本作は見事なラブ・ストーリーとしても良く出来ていて、山小屋で一夜を明かし、翌朝揃ってスキーで下山するときの2人の歓喜の表情が印象的です。さらにボンドが結婚式をあげ、そしてやがて悲しい結末を迎えるというのも唯一本作だけであります。“邪道だ”とか“センチメンタルすぎる”とかいった批判もあったけれど、誰がナント言おうとこの作品を支持します。劇中の挿入曲、ルイ・アームストロングの“♪愛はすべてを超えて”はシリーズ中、最も好きな名曲でいつまでも耳に残っています。
9点(2000-10-08 18:15:54)(良:1票)
27.  カプリコン・1
決してSF映画などではなくて、“こんなことって実際あるんじゃないか”と思わせるような、ポリティカル・サスペンスの秀作。NASAが火星に人間を送ると言いながら、本当は地球上に火星そっくりのセットを創り、その様子をTV中継するという事で国民に体裁をつくろうとする。映画はそのダシにされ脱出を試みる宇宙飛行士と、秘密を隠すため彼らを抹殺するべく執拗に追い詰めるNASAとの、ハラハラ・ドキドキの追跡劇が展開される。これぞアメリカ映画でしか成立しないような設定とそのスケール感。ピーター・ハイアムス監督の最高傑作で、未見の方には超オススメ!
9点(2000-09-25 00:37:04)
28.  ストレイト・ストーリー
この映画で「八月の鯨」のことを考えていました。ノミネートだけで終わったR・ファーンズワースはもはや演技を超えている。アカデミー賞“程度”では失礼だろう。
9点(2000-04-09 23:57:51)
29.  ダイ・ハード/ラスト・デイ
酷評につぐ酷評で、シリーズ最低作の烙印をも押されてしまった気の毒な作品だが、本当に、そんなに酷い出来なのだろうか。存分に楽しめたという点では、私などは少数派だが、冒頭からクライマックスに至るまで、昨今、これほどダイナミックでスピード感溢れるアクション映画を他に知らない。些かもダレることなく、切れ味鋭くストレートな印象を魅せているのも、余計なドラマを極力廃し、アクションに徹する事で、上映時間を最小限に抑えているからなのだろう。この設定と内容なら、極めて妥当であり、過去の優れたアクション映画と呼べるモノは、すべからく上映時間は1時間半程度であり、そういう意味において、本作は、まさにアクション映画の王道なのだ。随所に、“偉大なる第一作”にオマージュを感じさせてはいるが、むしろ、これらは、“プチ・リメイク”と言えるもので、ご愛嬌として楽しめる。それと言うのも、監督に“リメイクの帝王”J・ムーアを迎えた事から、製作者側の狙いが読み取れ、彼もまたそれに見事に応えたのである。難を言えば、父と息子が殴り込みをかける戦場に、チェルノブイリを設定した事。アイデアは面白いんだけど、これはちょっと無茶だったかも。ただ、無茶は、このシリーズの大きな特徴で、ジャンプしたパトカーでヘリを墜落させたり、ライターの火で旅客機を空中爆発させるという、物理の法則を無視したり、高速道路で戦闘機がミサイルをぶっ放したりと、過去の事例を言い出したらキリが無いほど。だが、本当に問題なのは、テロ集団の襲撃に巻き込まれ、孤立無援の高層ビルの中、戦いを余儀なくされていく若き日のマクレーンから、冒頭の射撃の的に風穴を開けた時から、既に戦闘モードになっている、本作の彼の姿の変貌ぶりだろう。
[映画館(字幕)] 8点(2013-04-06 15:17:47)(良:2票)
30.  ブラックブック
レジスタンスものは、近年の戦争映画の中では少数派とも言えるが、本作ではむしろ一人のユダヤ人女性の戦争体験による、波乱に満ちた数奇な運命を中心に、戦争というものがいかに残酷で、人間の運命を狂わしていくかを描いたものである。しかも監督がP・ヴァーホーヴェンという事もあり、展開は必ずしもセオリー通りとはならず、かなりアクの強い作品に仕上がっている。ナチスとレジスタンスという明確な対立の構図の中を、女スパイとして綱渡りをするのも、肉親を虐殺された事による私憤の為であり、映画としては常識的に、彼女の復讐劇が描かれていく筈のものが、そうはならないのは、従来から既成概念に捉われず、自由闊達な視点で創作するヴァーホーヴェンの一つの特徴と言えるだろう。そういう意味においては、中盤の見せ場である仲間の救出劇や、ムンツェとのラブ・ロマンスにしても、敗北感や虚無感ばかりが覆い尽くしている。つまりは本当の意味で、溜飲を下げる要素は何一つ無いと言ってもよく、波乱万丈の大娯楽作品としての味わいとは程遠いのである。しかしながら、ただひたすら荒っぽい筋立てで、まったく先の読めないまま、目まぐるしく展開していく事と、彼の作品の特徴でもある、残虐性や露骨さ、或いは猥雑さ(中でも美女を裸にして汚物まみれにするという悪趣味の極み!)等が渾然一体となって、本作を魅力的なものにしている事も事実である。全編、既成の善悪の判断の無意味さと、欲望に駆られた人間の愚かしさが痛烈に炙り出されていくが、やがて平和を迎えた時に、かつて、仇の男と毎夜の如く情痴を繰り返していた、もう一人の女性と再会した事から物語が回想されていくのも、何やら皮肉な運命を感じさせる。女たちの生きる事への貪欲さとしたたかさに、改めて人生を教えられた思いだ。注文を付けるとすれば、何の前触れも無く唐突に出現した感のある、肝心の“ブラックブック”の(まるで葵の印籠のように)有無を言わせぬその信憑性と齎す意味に 、あまり説得力を感じない点だ。
[映画館(字幕)] 8点(2007-07-29 15:53:51)(良:1票)
31.  カオス(2005) 《ネタバレ》 
「トランスポーター」でお馴染みのJ・ステイサムを主役に据えているからには、ド直球のアクション映画を連想しがちであり、少なくともトリッキーなキャラクターではない(?)分だけ、余計な先入観を持たれないという事が、本作の本当の狙いであって、最後の最後で、ものの見事に思い知らされるという、実に巧妙に作られた作品である。 映画の設定としては、まず頭脳明晰な敏腕の刑事と新米刑事とのコンビを軸にしていること。そのベテラン刑事は誤射という不祥事を起こし停職中であること。同僚の女刑事との関係はワケありで、また一方、新米刑事は殉職した父親の意思を受け継いで刑事となったこと。白昼に起こった銀行強盗の首謀者は、停職中の刑事を名指しで交渉役にあたらせ、挑発し続ける。やがて、警察内部に内通者がいる事が浮かび上がってくる等々 ・・・。つまりは、どこにでも転がっていそうな刑事モノであるが、それら定番の要素を物語に生かしつつ、映画は観客を“ある方向”へ巧みに誘導していく。ここには犯罪者集団と刑事たちとの白熱の頭脳戦と追撃戦、それに伴う若き刑事の成長物語といったパターン化された面白さが流れとしてあり、決して謎解きとしてではなく、さも純粋な刑事モノであるかの様な体裁を保持しながら、途中で主役が死亡(?)するというハプニングを経て、ラストの大ドンデンへと繋いでいく。劇中、この巧妙なシナリオを仕掛けた男の「カオス理論」を示唆する事による暗示は、映画の中のセリフひとつひとつが伏線やヒントとなって提示されている事を意味し、散りばめられた事象がひとつに収束していく事により、驚愕の結末へと辿り着くのである。昨今のアクション映画としては小品で、腑に落ちない点もあるが、話題になるだけの事はある。監督は、「Uボート 最後の決断」を撮ったT・ギグリオで、脚本家としてもなかなかの才人で、この人も将来が楽しみな一人だ。
[映画館(字幕)] 8点(2006-12-24 18:02:01)
32.  007/カジノ・ロワイヤル(2006)
任務を遂行しながらも、頭の中は、昨夜寝た女のコトばかり考えているような好色漢で、身のこなしはスマートかつエレガント。何事にもアクティブで多趣味だが、いかにも頑張っているイメージには程遠く。ピタリと決まるキザなセリフも嫌味にならず、どこか人を喰っているような余裕すら感じさせ、それでいてそれらが決してマンガチックにならない。我々が記憶するJ・ボンドのイメージの一端を述べたものだが、半世紀近くリアルタイムでシリーズと接してきた者にとって、ボンド=コネリーの強烈なイメージは、そうそう拭いきれるものではない。世代によっては肩入れが違うのは無理からぬところで、、比較的若い人は、P・ブロスナンを推すようだが、あの金太郎飴のような表情の乏しさだけは許しがたい。今回の新作におけるボンドは果たして如何に?“ジェームズ・ボンド・ビギニング”と呼称してもいいような、ボンド誕生前史を描いているだけに、D・クレイグ=ボンドはやたら人間臭く、無鉄砲で、いかにも若々しいがむしゃらさを前面に押し出して描かれている。“21世紀のニュー・ボンド”と言うよりも“先祖がえり”という意味で、我々がイメージとして定着する前のボンドであり、シリーズに於ける過去のあらゆる約束事をブチ破りながら、ストーリーそのものと、ボンドという人物像を築き上げていくプロセスの面白さで、純粋なアクション映画としては上々の作品であり、見せ場作りの巧さでは定評のあるM・キャンベルの新たなる代表作と言っていいだろう。しかし、言い換えると、ここには本来の“お正月映画としての007”の楽しさと言うものは無く、むしろ異質のものに感じるのは致し方のないところ。全般に演出も演技も真面目で手堅いものの、遊びや余裕が感じられないのが、シリーズを楽しんできた者にとっては、やはり物足りない。談笑しながら見向きもしないで、的をものの見事に命中させる離れ業を見せたのが、「サンダーボール作戦」でのクレー射撃場でのひとコマ。そのあと、まるで射撃が初心者であるかのように「単なるまぐれさ。俺は何の取り得もない、つまらん男さ!」のセリフで相手を煙に巻くコネリーの不敵さと、この痛快極まりないシーンを編み出した、T・ヤングのハッタリ演出が、今では懐かしい。
[映画館(字幕)] 8点(2006-12-16 17:24:53)(良:1票)
33.  ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
膨大な原作に沿って映像化するとどうしても冗長になり、様々なエピソードを大胆にカットするとマニアからブーイングの嵐・・・と、いずれにせよ世界的大ベストセラーの映画化には常にリスクが付きまとう。誰もが満足するような作品など至難の業であり、それほどに長編でのポイントを絞ることの難しさを改めて考えさせられるが、原作のファンなどでは決してない私に言わせれば、本作はそのあたりを上手くクリアーしているように思う。それは、良く言えばまったりとした悪く言えばぼやけた演出のC・コロンバスから新鋭A・キュアロンへのバトンタッチが功を奏したようで、監督が替わればこうも変わるものなのかと思わせるぐらいメリハリのある演出で、展開の鮮やかさとテンポの良さはさらに申し分ない。もはや何を見ても驚かなくなってしまっている此れ見よがしのVFXのオンパレードも、今回は必要不可欠で納得いくものばかりだが、あくまでも筋立ての面白さで勝負していて、決してビジュアルだけに頼っていないことにも好感がもてる。オープニングの疾走する三階建てバスや「もののけ姫」を連想させるような森でのワン・シーン、そしてクレジット・タイトルに至るまで印象に残るシーンは数限りない。このように全体が引き締まりモタついたところもない上出来の作品だが、G・オールドマンやT・スポールといった脇を固める名優たちには実に気の毒な役回りであり、しかも大した見せ場もなく去っていくには余りにも勿体無く、CGで表現されたニューフェイス・バックビークの見事な描き方がポイントを高めているだけに、余計残念に思う。
8点(2004-08-09 18:04:23)(良:1票)
34.  ヘヴン 《ネタバレ》 
冒頭、いきなり高層のエレベーターの爆発から物語は始まる。夫を失った悲しみとその恨みから、或る麻薬密売人に復讐する為に爆薬を仕掛けたのだ。覚悟の上での犯行だったが、しかし恨みを晴らすどころか、関係ない人たちを爆死させてしまう結果に。この時のヒロインの英語教師を演じるC・ブランシェットの凍りついた表情が印象的だが、普通の一般市民のテロ行為がまかり通る国家の恐怖を感じざるを得ないエピソードではある。この後、取調べに通訳として立ち会った若き憲兵が、彼女を助けながら思いを遂げさせるという展開となるが、何故彼はそこまでして彼女に想いを寄せるのかは、あまり多くは語られないので、やや唐突な印象を受ける。絶望感に打ちひしがれ、もはや生きていく気力も失いかけていた彼女だが、青年の純粋な愛に応えるべく、共に逃避行を決心するのが物語の後半。それはまさに絶望に向かってのものだが、サスペンス・タッチの前半から舞台がトスカーナ地方に移ったこともあって、陰惨さというものが徐々に薄れていき、いつの間にかピュアで詩情溢れた画調に変転している事に気づく。極度にセリフを抑え、表情だけで純粋な愛の形を描出したT・ティクヴァ監督の、この流れるような演出の手際の良さは実に見事である。ブランシェットと相手役のJ・リビジは共に本作のイメージ通りの透明感溢れる好演を見せているが、既に「ギフト」で共演していた事もあって、さすがに息がピッタリであった。二人を乗せたヘリが上空高く舞い上がり、やがて小さく小さくなって空に吸い込まれていくラストは、まさしく天国に召されていくという象徴的なイメージで、近年における名場面だといえる。
8点(2003-11-25 01:02:45)(良:1票)
35.  マグダレンの祈り
この映画ばかりは、なんの予備知識もなく崇高なタイトル(邦題)だけで鑑賞に臨むと、その余りのイメージの落差に愕然としてしまうだろう。もちろん修道院での女性たちを描いていることには違いないのだが、このマグダレン修道院は更生という名の強制収容所で、まさにここでの女性たちは徹底して罪人のように扱われる。人間として本来あるべき自由を奪われ、永久にともとれる外界からの断絶から、希望を失い、生きる気力すら奪い去られ、虐待と屈辱の日々を送り続ける女性たち。いったい彼女たちがどんな罪を犯したというのだろうか。レイプされて本来なら被害者であるはずの女性が、不貞な女としてのレッテルを貼られこの修道院へ送られるように、映画は終始、こういった理不尽さで貫かれていくが、要は彼女たちは十九世紀からの古い因習と歪められた信仰の犠牲者なのである。権威というものは長きに続くと堕落したものになりがちである。カトリックもまたそうであるが、腐敗させているのは他でもない、盲目的な信仰心を持つ人間そのものなのである。そしてその古い価値観に目覚め抗する女性たちが出現し、自分たちの権利を主張し始めたのも、この映画の時代以降だというから驚きだ。
8点(2003-11-24 16:47:25)
36.  the EYE 【アイ】
この作品への自信を覗かせるような、点字と触覚を意識した白地のタイトルバックが、まず巧い。眼の見えなかった女性が、手術により、本来見えないものまで見えてしまうという恐怖を描いた本作、例のエレベーターのシーンやショッカーなど、その怖がらせ方に熟知した演出力には只ならぬものを感じる。まさに纏わりつくような恐怖といったところだろうか。ただ、後半の謎解きあたりからクライマックスにかけては、いかにも強引で作り話っぽくて残念だが、近年では出色のホラー映画だと言える。
8点(2003-07-21 15:43:43)(良:1票)
37.  マーフィの戦い
P・オトゥールといえば「アラビアのロレンス」がベストだとは思うが、もうひとつ忘れてはいけないのが本作のマーフィ役。冒頭、いきなり英海軍の戦艦が独軍のUボートの攻撃で撃沈されてしまい、たった一人生き残ったマーフィが、単身、弔い合戦を決行しようとする。いたって単純明快なストーリーながら、どうやって彼が仲間の復讐を果たすのかに焦点を絞ったP・イエーツ監督の職人芸ともいえる演出力で、見事な娯楽作に仕上げられている。マーフィが整備士という設定がミソで、あの手この手でポンコツの機械から武器を作り出すというプロセスが、なんともユーモラスに描かれていく。この復讐の鬼と化したマーフィを演ずるオトゥールの、何かに取り憑かれたような表情は、まさに彼の独壇場で、この孤独で執念の塊のような男を好演している。海に囲まれた島を舞台にした事と、共演者にF・ノワレを配したこともあって、緊迫感や殺伐感が中和されたかのように、ゆったり・のんびりといった印象を受けるが、それらの事がマーフィの人間性をより強烈に印象付けるには、実に効果的ではなかったろうか。本作は豊かな娯楽性と同時に、一人対潜水艦という刺し違え覚悟の無謀な戦いが、戦争終結となっても止むことなく、彼個人のレベルで展開されるという、まさに戦争がもたらす人間性の崩壊をも鋭く突いたことで、名作たり得たのではないだろうか。
8点(2003-06-12 01:12:17)
38.  裸足のイサドラ 《ネタバレ》 
現代舞踏に新風を巻き起こした不世出のダンサー、イサドラ・ダンカンの波乱の半生を綴った作品。彼女は既成概念にとらわれることなく、また虚飾を廃すことで自己主張を貫き通す。その端的な例として挙げられるのが、トゥ・シューズを履かずに踊ること。その大胆かつ野性的なイメージは、情熱のおもむくまま男性遍歴を重ね、やがて未婚の母として生きていくという、時代の異端者としての彼女とだぶる。首に巻かれたスカーフが車輪に巻き込まれて、非業の死を遂げるラストは強烈だが、ヴァネッサ・レッドグレープがイサドラ本人を終始見事に演じきり、カンヌで主演女優賞を獲得している。
8点(2003-05-15 00:21:49)
39.  ゴスフォード・パーク
30年代のイギリス貴族の屋敷を舞台に繰り広げる、R・アルトマン監督お得意の群像劇。複雑に入り組んだ登場人物を手馴れた演出でひと通り紹介した後、ある殺人が生じる。しかし本作は犯人当てのミステリーと言うよりも、むしろ階上の貴族たちと階下の召使たちそれぞれが織り成す人間模様に、より重点が置かれている。とりわけ表向きは平静を装っているものの、台所事情の苦しい名ばかりの貴族や、様々な思惑が交差する中での退屈極まりない浮世離れした宴といった描写など、彼らのエゴむき出しの俗物ぶりが炙り出されていく。貴族と召使との対比の構図ながら、建前と本音とを使い分けて世の中を生きていくことは、人間すべてに通ずる事。結果的には復讐劇のようでもあるが、これは人間の宿命と情愛の物語と捉えるべきだろう。それにしても、登場人物それぞれに見せ場をもたらすこのアルトマンの新作には、ある種の爽やかさと品格を感じずにはいられない。
8点(2003-02-01 00:01:35)
40.  バイオハザード(2001)
結論から言うと、予想以上に出来が良く、実に見応えのある作品となっている。単に日本が生んだ世界的人気ゲームの映画化という以上に、アイデアと技巧を凝らした、まさに力の入ったアクション映画となっていて、こういった作品にありがちな企画の安直さなど微塵も感じさせない。見せ場のひとつ、逃げ場のない通路でのレーザー攻撃で人体がスライスされるシーンは、見事な特殊効果で唖然としてしまうほど強烈なインパクトがあるし、ゾンビ化した人間たち以上にドーベルマンの襲撃シーンはさらに恐怖心を煽って、少々呆気ないものの新機軸としては面白く出来ている。さらなる展開が予想される終末観溢れるラストの視覚映像もなかなかのものだが、ただ前段の研究施設から地下鉄道での脱出のタイム・リミットのスリリングさが出ていないのが惜しい。
8点(2002-09-16 16:07:54)(良:1票)
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