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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2597
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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61.  ワイルド・スピード/EURO MISSION 《ネタバレ》 
この娯楽映画シリーズのファンとしては、相応しいタイミングでこの最新作を見ることができたと思う。それは、とても嬉しいことでもあり、あまりにも悲しいことでもあった。  今年の夏に、シリーズ中で唯一観られていなかった「3」見たばかりだった。 シリーズのファンなら周知の通り、“東京”を舞台に描かれる「3」は、シリーズの番外編的なニュアンスが強く、レギュラーキャストは殆ど登場しない。 そして、その中で唯一主要キャストとして登場する“ハン”の悲劇的な末路が描かれている。「3」を観た段階では、なぜ彼が独り東京に流れ着き、ヤクザ相手の危険な仕事に手を染めているのかの説明もなく理解し難い部分があった。  が、それを裏打ちするエピソードが、この最新作では描かれている。  “或る人物”の突然の登場に驚愕するエンドクレジット後のシーンからも明らかな通り、今作は、いささか変則的に繋がっていた「3」をシリーズの本流に結びつけ、次作に向けての新展開への起点となるシリーズの中でも非常に重要な作品に仕上がっていた。  シリーズも6作目となり、正直「一見さんお断り」な状況になっていることは否めないけれど、「EURO MISSION」という軽薄な邦題にミスリードされて、劇場鑑賞を見送ってしまったことをファンとしては甚だ悔しく思う。  ハン&ジゼルの悲しい運命に対して、想定外に胸を締め付けられたことは、この娯楽映画シリーズが少しずつ培ってきた“チーム感”の結晶とも言え、ますますド派手になっているアクションシーン以上の付加価値だったと思う。  あと、タイミング的には、「エージェント・マロリー」も今年観たばかりだったので、ジーナ・カラーノのナイスなキャスティングも嬉しかった。復活したミシェル・ロドリゲス嬢との“肉弾戦”は白眉だった。   そして、2013年11月30日、ポール・ウォーカーの突然の訃報。 そのあまりに悲しくショッキングな出来事が、この映画シリーズに与える影響は当然計り知れない。 映画スターの死が、その人の周囲の人間は勿論のこと、世界中の映画ファンに悲しみを与えるということを改めて思い知った。  心より冥福を祈りたい。 ただ、叶うことなら、撮影中だったシリーズ最新作「7」の完成を待って、彼の最期の姿を心に焼きつけたい。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-12-23 14:59:00)(良:1票)
62.  オーメン(1976)
よりによって妻子が実家に泊まり誰もいないひとりぼっちの夜に、この有名過ぎるホラー映画を観なければならなかった一週間レンタルの最終日。 ホラー映画に限ってはまだまだ“ビギナー”なので、どうなることかとビクビクしながら観すすめたが、流石はホラーというジャンルを超えた「名作」の呼び名に相応しく、“しっかり”と面白かった。  “恐ろしい”映画であることは言わずもがなだが、描き出される物語をどう「解釈」するかによって、この映画の“恐ろしさ”は大いに様変わりすると思う。  映画が伝える雰囲気のまま、悪魔の申し子“ダミアン”の禍々しさに恐怖することも勿論正しかろう。 一方で僕は、この映画が伝える「恐怖」のもう一つの側面に震えた。  それは即ち、この映画において、ダミアンは「実は何もしていない」という事実だ。  描き出される“おぞましさ”の殆どは、彼を崇める悪魔崇拝者の言動によるものであり、主人公のグレゴリー・ペックらを襲う恐怖の正体も、神にしろ悪魔にしろ狂信者たちの煽動によって導かれたものに過ぎないのではないかということ。  ラストの顛末に明らかなように、端から見れば、主人公の姿は完全に気が狂った父親にしか見えず、この映画が描く本当の恐怖は、「悪魔」の存在などではなく、人間が元来持っている不安定さとそれに伴う危うさそのものであることに気付かされる。  ジェリー・ゴールドスミスの荘厳な調べに誘われて、深く暗い「恐怖」というエンターテイメントを堪能した夜だった。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-12-03 01:01:37)(良:2票)
63.  ワールド・ウォー Z
どこかの悪大佐じゃないが、「人がゴミのようだーーー!」と思わず叫びたくなる“見せ場”は、トレーラーで何度も観ていてもやっぱり衝撃的で、個人的にはその過剰なまでの仰々しさが非常に好ましかった。  「ゾンビ映画」ということを大々的に触れ込むと、客層が限定されると思ったらしく、いやに“家族愛”を強調した国内プロモーションには辟易したが、言うまでもなく、この映画は紛れもない“怒濤”の「ゾンビ映画」である。  ただし、基本設定として描かれるストーリーテリングは、あくまで感染症のパンデミックであり、必然的に全世界的にゾンビが大発生している状態であるので、前述の通り良い意味で仰々しい映画世界は、恐怖性というよりもエンターテイメント性に富んでいて、僕のようなホラーが苦手な者でも程よい恐怖感と共に終始楽しめる「ゾンビ映画」に仕上がっていると思う。  “人体”そのものが虫の大群のように襲いかかる衝撃のビジュアルもさることながら、印象的だったのは、主演のブラッド・ピットの“目尻の皺”だ。 「ああ、もうこんな深い皺があるんだ」と稀代のハリウッドスターの老いを感じる一方で、これまでのブラッド・ピットの主演作のどれよりも、彼の「生身」の姿が投影されている映画のように思えた。  国連の紛争地域担当エージェントという他の映画ではあまり聞き慣れない役柄が、私生活のパートナーであるアンジェリーナ・ジョリーの国連親善大使としての活動から着想を得ているだろうことは言うまでもなく、途中両親を亡くした少年を家族の一人として受け入れる様なども、難民の子供たちを養子としている私生活の投影そのものだろう。  そういう意味で、プロデューサーでもあるブラッド・ピットが、俳優業を礎にして積み上げてきた己の人格そのものを反映したとてもパーソナルな映画であるとも言えると思う。 それがただの自己満足に終始するでなく、きちんとした娯楽性を備えた作品に昇華されていることが、ハリウッドのトップをひた走る映画人として“エラい”ところだと思う。  どうやら例によって続編の企画もあるらしい。 今作では、都合の良い解決策で安直なハッピーエンドを描いているわけではないので、ここからどう展開していくのか非常に興味深い。  まあいずれにしてもはっきり言えることは、「全力疾走」が出来るゾンビほどコワいものはないとうことだろう。 
[映画館(字幕)] 8点(2013-08-11 00:07:37)
64.  アタック・ザ・ブロック
漆黒の闇の中で蛍光色に光るエイリアンの牙、真っ黒なフードを被った少年ギャングの目、両者は互いにメタファーとして対峙し、“襲う者”と“襲われる者”が突如として入れ替わり立ち替わる。 ヒップホップに彩られたSFとバイオレンスとコメディの中で痛烈な社会風刺が差し込まれる。 この英国産のエンターテイメント映画は、ポップカルチャーの体裁を示しつつ、想像以上にハードで、それに伴うカタルシスに溢れた映画に仕上がっている。  少年ギャングが巣食う団地にエイリアンが襲来してきて決死の攻防を繰り広げるというプロットだけを聞くと、とても気軽に楽しめる類いの娯楽映画のように思う。 実際、この映画は表面的にはそういう方向性でプロモーションされているが、そもそもの発端となる舞台設定、ストーリー展開、そして映画の到達点は、非常に根深い社会問題に根ざしていて、予想外に深い感慨を観客に訴えてくる。  英国の社会問題となっている低所得者層の不遇。そこからある意味必然的に派生している暴力と犯罪。 文字通り“降って湧いた”凶暴なエイリアンとの攻防の中で、少年たちは、暴力と明確な「死」に曝される。そのプロセスにおいて、自らが置かれた社会環境の問題性と、自らが犯してきた罪の深さを知っていく。  前述の通り、この映画は表面的には敢えてライトに作られている。上映時間も88分と短く、映画内の時間経過も、事態の異常性のわりにはほんの2~3時間程度の出来事として描かれる。 そういったコンパクトさこそが、この映画で描かれていることが社会の「縮図」であるということの明確な意思表示のように思える。  この映画の製作スタッフは、自らが楽しみながら、あらゆる人々にとって楽しい映画を作り、同時に大きな付加価値を付けることに成功している。見事。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-03-11 11:12:22)
65.  ダークナイト ライジング
見事、クリストファー・ノーラン。 ジョゼフ・ゴードン=レヴィット演じるジョン・ブレイクの「本名」がさりげなく明かされるエピローグのシークエンスを観ながら、この新しいバットマンシリーズを完結させた鬼才監督を思わず賞賛したくなった。  「ビギンズ」でバットマンという周知のヒーローをまったく新しい「黒色」で塗り替え、様々な要素が重なり“伝説”とまでなった続編「ダークナイト」でその「黒色」を漆黒の闇にまで更に深めた同シリーズ。 否が応にも世界中の期待は高まり、ハードルはその分高まった完結編だったと思うが、ベールを脱いだその出来映えは素晴らしかったと思う。  165分と非常にボリュームのある長尺だが、決して「長い」と感じることはなかった。 序盤の展開に対して冗長な感覚も覚えたが、それらも含めてシリーズで描かれたことのすべてが、ラスト30分の怒濤のクライマックスで意味のあるものとして昇華される。 大富豪のブルース・ウェインが蝙蝠男のコスチュームを着て闘う理由は何なのか、この世界における「悪」とは何なのか、そして「ヒーロー」の意味とは何なのか。 シリーズを通して突き詰められてきたそれらのテーマが、過不足なく描きつけられていたと思う。  前作において完全に悪役に食われてしまったヒーローを、更に滅茶苦茶に打ちのめした上で「復活」させる。そういう娯楽映画としての王道をきちんとプロセスとして描きつつ、独特のシリアス性を併せ持たせる。 その卓越したエンターテイメント性が何を置いても素晴らしい。  “ジョーカー”により闇にまで深まったヒーローの黒い造型を丁寧に浮かび上がらせ、遂には白い光に転じさせてみせた。 一作目、二作目の両作を踏まえて描き出されたストーリーと顛末は、クリストファー・ノーランが導き出したこの世界観に合致したとても真っ当な「結論」だったと思う。まさに「THE DARK KNIGHT RISES」というタイトルに相応しい。
[映画館(字幕)] 8点(2012-07-29 12:05:07)
66.  宇宙人ポール
昨年「SUPER8」を観た時に、作品としての完成度には不満を持ちつつも、溢れる“映画愛”に対して無下に否定することが出来なかったことが思い出された。 あの映画と今作は、映画としての立ち位置はまったく違うように見えるけれど、本質的な“理念”はむしろ全く同じと言っていい。 即ち、かつて世界中が熱狂し愛したスティーブン・スピルバーグをはじめとする偉大な映画監督たちが生み出した数々のアメリカ娯楽映画に対する「敬愛」。まさにその一言に尽きる。  ただ、今作が「SUPER8」と少し違うところは、そんな理屈抜きにして問答無用に面白い映画であるということだ。 往年の娯楽映画に対するオマージュに溢れてはいるが、そんなものはあくまで“おまけ”であり、きっと誰が観たって「面白い!」そういう映画としてきっちりと成立している。それが、「娯楽映画」として最も素晴らしいことであることは言うまでもない。  英国の“ボンクラオタク男子”の二人組が、憧れのアメリカ旅行中に宇宙人に遭遇する。紆余曲折を経つつ意気投合し、宇宙人の彼を仲間の元へ送り届ける。 実際ただそれだけの話である。ただそれだけの話が極上の「娯楽」になる、だからこそ映画は素晴らしいのだということを、この映画は再確認させてくれる。  何と言っても、宇宙人“ポール”の存在感が凄い。 実写映画の中の一キャラクターをフルCGで描き出すという試み自体はもはや珍しくもない。 しかし、そこに娯楽映画の主人公に相応しい愛着と、周囲のキャラクターと同様に息づく存在感を持ち合わさせることは、並大抵のことではない。 決して仰々しくなく、さりげなく描き出されているように見えるが、このクオリティーの高さは「凄い」としか言いようがなく、それを生み出しているものこそが、製作スタッフの紛れも無い「映画愛」に他ならないと思えた。  最高に楽しくて良い映画だったと思う。ただし、惜しむらくは自分自身が“SF映画オタク”になりきれていないこと。 前述の通り、過去の名作SF映画を観ていなくても存分に楽しめる映画であることは間違いない。 しかし、オタクだったならばもっともっとはしゃげたんだろうと思うことも事実。 「ああ、これは何かの映画のオマージュなんだろうな」と気付きはするが、それが何なのか明確にならない悔しさは随所で感じてしまった。  とりあえず「未知との遭遇」は早急に観よう。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-07-14 22:54:32)(良:3票)
67.  ショーン・オブ・ザ・デッド
エスプリの効いた思わずニヤリとしてしまうラストシーンを観て、「ゾンビ映画」は、詰まるところ“コメディ”なんだなと思い知った。  それは、この映画において、ゾンビ映画における定番的展開が、ほんの少しタイミングや視点を変えただけで可笑しさを連発させることに如実に表れている。 この根底に潜む“可笑しさ”を含めた娯楽性が、ゾンビ映画が世界中で愛される要因なのだろうと思った。  故に今作はゾンビ映画が苦手な者でも充分に楽しめる映画だと思うが、ゾンビ映画が好きな人ならもっと余計に楽しめる映画だと至極当たり前のことを思った。   そして、この映画がただ愉快なコメディ映画で終わっていないのは、映画の面白さが必ずしもゾンビ映画のパロディ的な部分のみによって構築されていないことだ。 ゾンビに汚染される前の日常風景のあちらこちらにもゾンビ映画的な“雰囲気”が表現されているように、普遍的な人間社会そのものに、実はゾンビが蔓延る世界以上の禍々しさが溢れているということをこの映画は伝えてくる。    駄目男の主人公は、突如として放り込まれたゾンビとの死闘を経て、大切な人を失い、同時に何か大切なものを得る……ように描かれる。 しかし、実際は行き着く生活に結局大差は無いというラストには、爽快感や痛快感と共に絶妙なブラックユーモアが溢れている。   “表裏”両面の笑いが散りばめられ、感動もあれば、それらを包括する哲学性すら感じる。色々な観点から楽しみがいのある素晴らしいコメディ映画だ。
[DVD(字幕)] 8点(2012-02-02 13:49:23)(良:1票)
68.  ブラジルから来た少年
「2年半以内に、94人の65歳の男性を期日通りに殺害せよ」 と、ナチスの残党のマッドサイエンティストが命令する。 そこには壮大で恐るべき計画が秘密裏に進行しており、その陰謀を年老いたナチスハンターが追う。  非常に濃密な面白味を孕んだSF映画であり、サスペンス映画だったと思う。 余分に派手な演出を控えて、鈍く抑えた演出が殊更に見え隠れする恐怖とおぞましさを煽っている。  今でこそ“クローン”なんて題材は様々な作品で使い古されているけれど、1978年当時としてはとても前衛的で、ショッキングだったろうと思う。 今観ても、描かれる陰謀の真相が明らかになるシーンでは、身震いを覚える程の衝撃を感じたのだから、当時の観客にとっては尚更だったろう。 故に賛否両論も激しく、そのことが日本未公開の所以だったのかもしれない。  キャストにおいては、やはりグレゴリー・ペックの演技が圧倒的だった。 あらゆる名作で好漢を演じ続けてきた大スターが、よくもまあこれ程まで狂気的な科学者の役を引き受けたものだ、とまず思った。 そしてそのパフォーマンスは凄まじく、この俳優が本当にグレゴリー・ペックなのかと一瞬疑ってしまったほどだった。  原作の面白さに卓越した映画術が合致した完成度の高い「問題作」だと思う。  ラストシーン、残った“少年”の言葉と眼差しが、追い討ちをかけるようにおぞましい余韻を残す。 そう、94人分の可能性を携えて……。
[DVD(字幕)] 8点(2011-09-23 02:18:09)
69.  チャーリー
”チャーリー・チャップリン”、この固有名詞はもはや全世界の映画史に残る一つのアイコンであろう。 「波瀾万丈」という言葉がふさわしい彼の喜劇人、そして映画人としての長い人生を、ひとつの「映画」として表現する試みは、「必然」であったと同時に、物凄く高いハードルだったと思う。 145分間のこの映画で、チャップリンという男の人生の本質をくまなく描き切れているとは思わないし、それは到底無理な話だ。  ただ、想像以上に「面白い」映画だった。深夜0時過ぎに鑑賞を始めたが、まったく眠気を覚えなかったほどに。  その“面白味”の大部分は、ロバート・ダウニー・Jr.のパフォーマンスに尽きる。 チャップリンの人生を映画化するハードルの高さは、即ちチャップリンを演じる俳優に与えられる試練の大きさだろう。まともな俳優であれば、その仕事の困難さに尻込みしてしまうはずだと思う。  が、ロバート・ダウニー・Jr.という俳優は、イロイロな意味で、まともではない。  舞台コメディアンとして仕事を始めた10代から、スイスで晩年を迎えた80代まで、チャーリー・チャップリンという男の人生の様を見事に“体現”していた。  冒頭、白塗りのメイクを落としていくチャップリン、その瞳には吸い込まれるような闇が垣間見える。 そこには、世界一有名な喜劇王が抱え続けた“孤独”と“虚無”が描きつけられている。  伝記映画としてその展開にはやや野暮ったい部分もある。アンソニー・ホプキンスが、珍しくあまり個性の無い編集者役で登場するチャップリンの晩年シーンなどは、何度も挟み込む必要は無かったように思う。 それでも、ダン・エイクロイド、ケヴィン・クライン、ダイアン・レインら実力俳優に加え、若く瑞々しいミラ・ジョヴォヴィッチも脇に配し、キャスティング的にも映画ファンとして非常に楽しめる。  チャーリー・チャップリンの人生を描くということは、即ち往年のハリウッドの舞台裏と、当時のアメリカ社会の“闇”描くということでもあった。そういう意味で、この映画はとても多面的な面白さを備えている。  そして何よりも、この映画を観ると、本物の“チャップリン”が観たくなる。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-11-07 11:26:05)(良:1票)
70.  月に囚われた男
月世界の静寂の中で響く繊細な旋律が印象的な映画だった。 美しく響き渡る音色が、殊更に映画世界に満ちる“孤独感”を際立たせた。  月の裏側で唯一人、貴重な地下資源の採掘業務に従事する男。 孤独と望郷の念に耐え続け、3年間の任期終了まであと2週間に迫った時からストーリーは始まる。  主要キャストは、主演のサム・ロックウェル“一人だけ”だということは認知していたので、果たしてこの性格俳優の「一人芝居」でどのように映画を転じさせていくのか。 もしかすると、物凄く地味で独りよがりな映画なのではなかろうか、という疑念も持ちつつ、映画の「試み」に対して非常に興味深かった。  しかし、その想定は数奇なSFスリラーの展開により、良い意味で裏切られた。  アイデア自体は「奇抜」という程では無いのかもしれないが、“驚き”への導き方と見せ方がとても巧い。 一人の男の淡々とした描写から、突如スリラーの渦に放り込まれる感覚。そのストーリーの転換を、決して映像や音響の急激な変化に頼るのではなく、一つの「視点」の変化のみでさらりと、だが劇的に成している。  そして、このSF映画が素晴らしいのは、ストーリーにおける“驚き”が映画のハイライトではないということだ。 “驚き”はスパイス的な一要素に過ぎず、そこから始まる悲哀に溢れたドラマこそが、この物語の核心となる。  主人公に課せられたあまりに残酷な運命。 それを受け入れる様、それに抗う様、相反する“二つの姿”の在り様こそが、この挑戦的なSF映画の深さであり、面白味だと思う。  SFとは科学的空想であり、だからこそ、そこには人間の心理描写が不可欠だと思う。 人の精神と科学が結びつき交じり合い、無限なる世界が創造される。  手塚治虫の「火の鳥」や、藤子・F・不二雄のSF短編漫画を彷彿させる、広大な奥行きを備えたSF映画だ。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2010-08-30 00:05:23)(良:2票)
71.  ナイト・オン・ザ・プラネット
自分自身もすっかり大人になってしまい、深夜のタクシーに乗る機会も度々あるようになった。  大概の場合酔っ払っていて、繁華街から自宅までのせいぜい20分間程度の道のりなので、特に何があるということはないけれど、タクシーの中というものには独特の雰囲気があると思う。  その雰囲気は、全く見ず知らずの運転手と客との間に生じるその場限りの「空気感」によるものだと思う。  地球という惑星のあちこちで、全く同時刻にひっそりと織りなされたタクシー運転手と客らによる5つのショートストーリー。 ジム・ジャームッシュらしい淡々とした語り口で繰り広げられるこのオムニバス作品には、本当に何気ない人間同士の関わり合いにおける素晴らしさが溢れている。  それぞれのストーリーの登場人物たちが、その束の間の出会いによって、何かが変わったということは決してない。 ただそれでも、その一つ一つの出会いが、次の瞬間の人生を築いていくということを、この映画は、深夜の静寂の中でしっとりと伝えてくる。  とても良い映画だと思った。
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-13 13:02:33)
72.  オリエント急行殺人事件(1974)
アガサ・クリスティ原作の「名作」というこの映画に対する評は随分と前から認知していて、10年以上前にレンタル落ちのビデオテープも購入していたのだけれど、なかなか食指が動かず、観る機会がなく、ビデオもどこかにいってしまっていた。  食指が動かなかった最大の理由は、“ストーリーのオチ”を知ってしまったからに他ならない。 原作も映画もあまりに有名な作品なので、どこかしらからミステリーの顛末が耳に入ってしまったのだ。 オチを知ってしまったミステリーほど魅力減のものはないわけで。  満を持して鑑賞に至ったわけだが、なるほど面白い。  何たってアガサ・クリスティのミステリーなので、そのストーリー展開はもはやミステリーの「定番」といったもので目新しさはない。 しかし、描き出される映画世界にはもちろん時代は感じるが、往年の娯楽映画によくある“古臭さ”は全くなかった。 それは名匠シドニー・ルメットの卓越した映画創りによるものだろうと思う。  前述の通り顛末は知ってしまっていたので、ミステリーに対する“驚き”は少なかったが、それでも思わず唸りたくなるような「真相解明」は、流石に上質だった。 
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-08 10:53:47)
73.  ヘアスプレー(2007)
素晴らしい。まさにこれこそがミュージカル映画だ。  歌って踊ることが大好きなおデブちゃんの女子高生が、テレビスターを夢見る。それに当初は反対する巨漢の母親。その母親役をなんとジョン・トラボルタが演じている。 そう聞くと、なんだかエディ・マーフィのコメディ映画みたいな印象も受けるが、ある意味、圧倒的に正統な楽しさに溢れるミュージカル映画に仕上がっている。  数日前に豪華俳優陣を揃えて大ヒットブロードウェイミュージカルを映画化した「NINE」を観たばかりだった。「NINE」は流石に豪華な大ミュージカル映画だったが、あくまで舞台ミュージカルの映像化という範疇を抜け切らなかった点が、ミュージカル映画好きとしては残念だった。  でも、今作は、映画だからこそ表現出来るミュージカルシーンをきちんと見せてくれる。 主人公の女子高生が、丸々とした愛らしいルックスで朝の街を歌い踊りながら登校するシーンからはじまり、ロケーションとカメラワークで多面的でバラエティ豊かなミュージカルシーンに溢れている。  ストーリーなんて二の次で、とにかく見ているだけで「楽しい」。ということこそ、ミュージカル映画が持つべき根本的な魅力だと思う。 その本質をしっかりと押さえつつ、“他人と違う”ということを肯定しその価値を魅力的に示すことで、あらゆる「差別」の否定にまで繋げたストーリー構成も良かった。   何と言っても、ジョン・トラボルタを自らの体型にコンプレックスを持つ母親役に配したことが、最大のファインプレイだろう。 やや引きこもり気味だった母親が、新進的な娘に刺激されて徐々に自分を曝け出していく流れは、トラボルタがどういう俳優か知っている人にとっては予定調和過ぎる要素ではあるが、巨漢の母親に扮した彼がBigな尻を振り乱し歌い踊る様は問答無用に爽快だ。 そして、すっとぼけてはいるけど理解のある人格者の父親を演じたのは、名優クリストファー・ウォーケン。 まさかトラボルタとウォーケンが「夫婦役」で共演し、愛に溢れたミュージカルシーンで共に歌い踊るとは……、拍手。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-03-22 12:43:08)(良:2票)
74.  シャーロック・ホームズ(2009)
“シャーロック・ホームズ”の今更の映画化、しかも監督は、ガイ・リッチー。 正直、「なんだそりゃ」と、イメージのアンバランスさに戸惑ってしまった。 更に、主人公“シャーロック・ホームズ”を演じるのは、ハリウッドきっての問題児、ロバート・ダウニーJr.。 流石に“悪ノリ”し過ぎなんじゃないかと一抹の不安を保ちつつ、鑑賞に至る。  予想通り、“悪ノリ”し過ぎている。が、問答無用に”面白い”。  コナン・ドイルの世界的古典「シャーロック・ホームズ」と、ブリティッシュ・ギャング映画を得意とするガイ・リッチーのまさかの融合。 そこに生まれたのは、奇跡的なエンターテイメントだった。  “英国紳士”という世界的なイメージが定着しているシャーロック・ホームズというキャラクターを、180度転じた無頼漢に仕立て直した試みが、何と言っても面白い。 しかも、そこにロバート・ダウニーJr.を配した潔い抜群のキャスティングに脱帽だ。  実は今年に入って、ロバート・ダウニーJr.主演の「アイアンマン」を観たばかりで、立て続けて新たな造詣の”ヒーロー”を演じる彼の姿を見て、自らの”過ち”を糧にして新境地を切り開いた役者魂を感じずにはいられない。  混沌とする現代社会は、汚れのない真っ当なヒーローなんて真実味がなくて魅力を感じないのだと思う。 不潔でだらしなくて、多少強引に「正義」を貫く新たなヒーローの姿に、共感し喝采を送る時代なのだ。  ただし、「アイアンマン」と並び、これでヒーローシリーズの主役を張り続けるしかないロバート・ダウニーJr.には、ぐれぐれも真っ当に俳優業を続けてほしいものだ。
[映画館(字幕)] 8点(2010-03-14 03:05:21)
75.  ターミネーター4 《ネタバレ》 
この映画は、「ターミネーター」という映画シリーズのSF性をどういう風に捉えているかによって、その是非は大いに変わってくるのだと思う。 まず理解しなくてはならないことは、この映画シリーズの各作品は必ずしも一連の時間軸上で連なってはいないということだ。  今作はそうしたシリーズのSF性を、根底に据えた上で、過去の名作に依存しないオリジナリティーをもって描き出されていると思う。  コンピューターに「自我」が芽生えたことに端を発した終末戦争のおいて、人類としての「自我」を忘れまいと戦いに臨むジョン・コナーの姿は、過去の作品において「未来からの情報」として語られつつも、決して描かれることのなかった抵抗軍指導者の圧倒的なカリスマ性を見事に表現し切っている。  そして、過去と未来、更に未来と過去を繋ぐためのキャラクターとして登場するマーカス・ライトの存在性は、まさにキーパーソン。その役割は本作のみにおけるものだけでなく、シリーズ全体をある意味において繋ぎ止める重要なキャラクター性を秘めている。  そして、崩壊し乾き切った空気の中で繰り広げられる圧倒的にメカニカルな迫力性は、明らかに独自の世界観を構築している。   シリーズの各作品それぞれで描かれる「未来を変えるための戦い」とその顛末は、結果的に幾つもの”パラレルワールド”を生じさせたのだと思う。  第一作目の「ターミネーター」で、ボディビルダー上がりのアクション俳優が、文字通りの「殺人マシーン」として過去に送られた時点で、未来のパターンは無数に枝分かれした。 美少年のエドワード・ファーロングがジョン・コナーである「T2」も、醜男のニック・スタールがジョン・コナーである「T3」も、それぞれが枝分かれした時間軸での“別世界”だと考えれば、途端に納得しやすくなる。  今作の最大の価値は、そういった一連の時間軸上に存在する様に見えて、実はバラバラの世界観を描いていた映画シリーズを、更に全く違う時間軸と、世界観を描き出した上で、繋ぎ止めてみせたことに他ならない。  密かに期待していたT-800(=?)の絶妙な登場シーンも含め、色々な意味で楽しみがいのある秀逸なエンターテイメントだ。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-17 01:15:15)(良:2票)
76.  ザ・ムーン
人類が「冒険」をしなくなって久しい。「アポロ計画」は、人類が臨んだ最後の「冒険」となっているのではないかと思う。  1本のロケットもまともに打ち上げられなかった時代、「人類を月に送る」と宣言したJFKは、その計画に対しどれほどの「確信」があったのだろう。 作品の中でも語られているが、彼(JFK)は、ヒーローだったのか、夢想家だったのか、狡猾な政治家だったのか、そのすべてだったのか。 ただ何よりも重要なのは、大国の歴史的リーダーが、自国の威信と誇りをかけて「未知」へと進むための具体的なアクションを起こしたということだと思う。 失敗も成功も、何かをしなければ得られないわけで、すべてはJFKの宣言から始まったのだろう。  月へ向かった宇宙飛行士たちが語るアポロ計画の真実、そして「未知」を経験した価値。それぞれのコメントも実に印象深いものばかりだったが、それ以上に感じたことは、彼らの「目」の輝きだった。皆、80歳前後の老齢のはずだが、その目の輝きは、おそらくかつて月へ向かったかの日のままなのだろうと感じた。  莫大な予算を投じ、多くの犠牲もあった。しかし「冒険」の価値は、そのすべてを凌駕する。 有史以降、未知に向けてのチャレンジは、人類自体の成長そのものだったと思う。 即ち、人類としての「冒険」を止めてしまうことは、人類という「種」自体の退廃に直結する。  大偉業から40年。人類は再び、冒険に向かうべきではないか。 
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-25 22:02:02)(良:1票)
77.  フローズン・タイム
失恋による傷心から不眠生活が続く青年。そんな彼が、深夜バイトをしながらふと手に入れた能力は、「時間を止める」というものだった。  いわゆるミニシアター系の作品なので、卓越したストーリーでぐいぐい見せるというよりは、美しい映像と雰囲気で見せる映画である。 こういう映画は元来嫌いではない。  フォトグラファー出身の監督らしく、一つ一つのカットがとてつもなく美しい。 時間が止まっているシーンよりも、他の何気ないシーンのそれぞれがとてもアーティスティックで、惹き付けられた。  最も興味深かったのは、主人公が新たに恋に落ちる相手の女性が、主人公の気持ちの深まりと共に、どんどん魅力的になっていく様だ。 まさに主人公の想いと同じように、観ている者の想いも深まっていく。  ある意味、非常にナイーヴでウジウジとした「男の子」映画なので、女性にはあまり勧められないかもしれない。(作中の小ネタなども、いかにも“男子”が喜びそうなネタが多い)  しかし、誰しも「眠れぬ夜」を過ごした経験はあるはず。 眠れない夜の主観的な感覚を、「時間が止まる」ということで表現したアイデアは、映画的にとても良いと思う。 
[DVD(字幕)] 8点(2008-12-27 08:06:30)(良:1票)
78.  バルカン超特急(1938) 《ネタバレ》 
サスペンス映画好きのくせに、実はヒッチコック映画を観ていない。 過去に見た作品は、「サイコ」と「北北西に進路を取れ!」くらいである。 久しぶりに物凄く古い映画を観たくなって、70年前に製作された今作を手に取った。  特急列車の中で突如姿を消した中年女性。主人公は彼女の行方を同乗者に聞いてまわるが、誰もが「そんな女性はいなかった」と彼女の存在を認めない。 という「奇妙」から端を発し、コトの真相が、列車に乗り合わせた群像と人間心理の中で徐々に描き出されていく。  おや、どこかで観たことがあるストーリー展開だなと思えば、まるっきりジョディ・フォスターが主演した「フライトプラン」ではないか。 当然、「フライトプラン」の元ネタが今作というわけなのだろう。  とにもかくにも、70年も前に製作されたサスペンス映画が、今も変わらず映画としての“面白味”という輝きを放ち続けていることに、アルフレッド・ヒッチコックという映画史の巨人の言うまでもない巨大さを感じずにはいられない。  ただ単に、謎とそれに対する真相を追い求めるだけでなく、登場する人物の性格や、言動、心理描写に映画としての核心があり、そのことがこの作品が劣化しない最大の要因だと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2008-12-23 10:02:20)(良:2票)
79.  ダイ・ハード4.0
十数年ぶりにまたもや巻き込まれてしまった全米一“不運”な男、ジョン・マクレーン。結論、この男、衰え知らず。 いや、正確に言うと、だいぶ衰えてはいる。第一作目の彼などと比べると、老け込んでいることはもはや明らかであり、もう風貌的には初老という印象さえ覚える。 が、その「不完全さ」こそ、ブルース・ウィリスという映画俳優を一躍スターダムに押し上げたジョン・マクレーンというキャラクターに他ならない。 ちょっとおかしな話だが、スマートで血みどろにならないマクレーン刑事など誰も見たくはないのだ。  おまけに今回の敵は、サイバーテロ。全米を揺るがすほどのバリバリのデジタル集団VS全米一のアナログ刑事という構図は、彼のキャラクター性を際立たせると共に、とてもユニークな対比を見せる。 「ダイ・ハード」シリーズでは、マクレーン刑事の奮闘ぶりと同時に、彼をサポートする「相棒」のやりとりも重要なファクターだと思う。今作では青年ハッカーとコンビを組むわけだが、アナログ豪腕刑事とデジタル貧弱オタクの間で生じるギャップの中でのかけあいは、娯楽性に溢れ、絶妙なバランスを生んでいた。  久しぶりに文句なく楽しめるアクション映画を観たという感じがする。 無味乾燥的な映像美の中で、アニメの「ルパン三世」ばりに何でもありのアクションシーンが連続して、息をつかせない。  「ダイ・ハード」といえば、「主人公VSテロリスト」という構図のアクション映画の金字塔的映画なわけだが(まあ正確にはこのシリーズに出てくる敵はテロリストではないのだが)、そのシリーズの最新作にふさわしい優れたアクション映画だったと思う。  そして、その第一作「ダイ・ハード」で大スターにのし上がり、以降20年間にわたってエンターテイメント映画の主人公で体を張り続けているブルース・ウィリスという男は、実のところかなりスゴイ俳優なのではないかと思ったりした。
[映画館(字幕)] 8点(2007-07-14 09:13:42)(良:4票)
80.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 
「007」シリーズにそれほど愛着があるわけではないので、賛否両論の“新ボンド”ダニエル・クレイグが「ジェームズ・ボンドにふさわしい」かどうかは実際定かではないが、個人的な感想としてはかなり良かったんじゃないかと思う。  ジェームズ・ボンドが“007”になるまでの物語というだけあって、今作のジェームズ・ボンドはあらゆる意味で“未成熟”である。「殺しのライセンス」を貰ったばかりであるが故、任務に対する繊細さに欠け、過去のシリーズ作品でのボンドが常に携える絶対的な“余裕”が無い。いろいろな意味で不器用で、非常に“感情的”である。 そこにダニエル・クレイグという俳優の無骨でワイルドな風貌も加味され、今作のジェームズ・ボンドはまるで“ジェームズ・ボンドらくしない”。 冒頭のシーン、ターゲットを問答無用に追いかけ回す様に、英国諜報員007の紳士的なスタイルは微塵も無い。 たぶん多くの人が「こんなので007としてやっていけるのか?」と不安を感じずにはいられなかったことだろう。  が、そういう“未熟さ”とそこからの“成熟”こそ、今作が描く“ジェームズ・ボンド”であり、そのボンドを演じる俳優としてダニエル・クレイグという俳優はとてもふさわしかったと思う。 数々の名優が演じてきた映画史に残るスーパースターを演じることは、非常に困難なことだろうが、この俳優独特の「憂い」を携えた存在感は、新たなジェームズ・ボンド像としてふさわしく、今後の期待を存分に感じさせる。  「007」としての資質を問われ、敵の策にまんまとハマッて死にかけ、騙され、ボンドにとっては一種の「悲劇」とも言える結末を迎える。 が、ラストカット、「Bond,James Bond.」という言い放ったその姿は、まさに“ジェームズ・ボンド”そのものだった。 文字通り“新たに始まった”007シリーズに期待していきたい。
[DVD(字幕)] 8点(2007-05-27 18:48:18)
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