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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2005
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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1.  インセプション 《ネタバレ》 
これは大好き。何がいいって、驚愕にして緻密なアイディアと、それを美しく視覚化した映像の素晴らしさ。音楽も良いし、キャスティングが100%はまった、その心地よさ。こうまでハマった!と感激なのは”L.Aコンフィデンシャル”以来。主演クラスからM・ケインやP・ポスルスウェイトに至るまで良い。 「夢」を扱ったものはファンタジーテイストで独り浸りな感性のものが多いように感じて、あまり合わないなあと思っていた。けれど本作はそれこそ夢中になった。理屈についていくのが精一杯で、148分阿呆ヅラで観賞したけれど、もうわくわくでいっぱい。無重力映像の摩訶不思議なこと、予期せぬピンチがいい具合に訪れて話を締める脚本の良さ、役者の好演。 「三階層」「潜在意識の武装化」「キックまでの時間」と初めて触れる概念に圧倒されつつ、仕事に集中するJ・G・レヴィットの手際の良さに見惚れ、T・ハーディの軽い伊達男っぷりにくらくらし、いつになくしくじるディカプリオには突っ込みを入れ、「謙さんがんばって!」と手に汗握って、と大変忙しくそして楽しい。 悩める大富豪の御曹司役のC・マーフィも良かったな。”他者から植え付けられた”偽自意識ではあるけれど、彼の場合これで良かったのだと感じる。一生父親への確執を抱えてうじうじすることにならず、自分の足でちゃんと前に進めそうだもの。依頼者の希望は叶うし、ターゲットも結果良い方向へ向かいそうだし、コブも家に帰れたしで、商売で言うところの「三方ヨシ」みたいでストーリーもすごく好き。私はあのコマは当然倒れると信じて疑ってません。
[DVD(字幕)] 10点(2016-12-16 17:04:49)(良:1票)
2.  キングスマン 《ネタバレ》 
終わっても、映画館の椅子からすぐには立てないほど面白かったですねえ。 ずらりと顔をそろえた渋いところの英国男優の面々。本格派の予感。ブリティッシュの伝統も薫り高き高級な調度品。仕立ての良いオーダーメイドのスーツ。その麗しい姿でまさかコリン・ファースがあんな見事な殺陣(?)を見せるとは。でもって、コレ タランティーノだっけか?と呆然とするような展開になだれ込むとは。呆然となったけど、しかしこれが確かに爽快であったのだ。人の頭が次々吹っ飛ぶ場面でカタルシスを覚えるとは私は疾患か? こと切れる前に自分の血をみて嘔吐するS・L・ジャクソンの唯我独尊なヒール感も素晴らしく、息もつかせぬ展開にここ数年007でもMIPでも感じることがなかった、はらはら・どきどき・わくわくを堪能しました。 ダイアー・ストレイツで始まり、ブライアン・フェリーで締める。平民クラスの者が、”マナー”を身につけ教養人となる、キングスマンとなるための成長の意味合いを秘めた選曲だとしたら、これまた粋じゃありませんか。
[映画館(字幕)] 10点(2015-09-30 00:45:59)
3.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
アラン・チューリング。浅学にして”コンピュータの父”と呼ばれるこの人のことを知らなかった。人類の発展にこんなにも寄与し業績を残したのに、大戦中の軍事機密に関わったゆえ秘匿扱いにされた。挙げ句 彼に対する国家の余りに不当な仕打ちにはこの映画の製作に立ち上がったスタッフのみならず、作品を観賞した外国の一市民のワタシも憤激のあまり涙が出そうになった。 B・カンバーバッチの精魂込めた丁寧な演技が素晴らしい。変わり者でクセがあって協調性は皆無だが、悪意なく正直で生真面目なアランの人物像を見事に立ち上げていると思う。ちなみに彼の少年時代の役者さんもなかなかの好演だった。 K・ナイトレイも知的でウィットに富んで素敵な女性だった。”仲間に頼る”ことの大切さをアランに説き、傍にいてくれた。どうしても添い遂げることの叶わぬ二人だったけど、アランの人生に彼女がいてくれたことに感謝したくなった。 エニグマの暗号を解くまで、解いた後、さらにその後のアランの人生を周囲の人間模様と絡めて重厚なドラマにまとめあげた。胸にずっしりと溜まって、忘れ難い作品だ。
[映画館(字幕)] 10点(2015-06-28 23:56:34)(良:1票)
4.  裏切りのサーカス
原作未読で臨んだところ、やはり一度目の観賞では全体像を掴むことは無理だった。でも、二度三度と観直して、一つ一つの場面の意味が分かるにつれて緻密に織られた脚本の見事さに仰天する。2時間という限られた時間の中に隙間なく美しく整えられたプロット、意味深い場面の連続に集中力は必要とするけれど、とても面白い。 諜報部員を演じる俳優陣の、職業柄、顔の皮膚の一番上っかわだけ動かしているかのような曲者演技が素晴らしい。特に主人公のG・オールドマン。表情筋をほぼ動かさずして、暗い淵を覗いているような瞳の演技だけで老獪なスパイの孤独を滲ませる。 スパイが生身の身体を張って、国家の誇りをも代弁していた時代。冷戦下に行き交う謀略と、個人の愛情や屈折した思い。非常にとっつきにくい印象を受けるけれども、話の流れさえ分かればこんなに深くて味わい深いスパイ映画はそう無いだろう。 数多の名画と同じく、年月が経っても複数回の観賞に耐えうる名作だと思う。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2014-01-22 00:09:50)(良:1票)
5.  博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 《ネタバレ》 
一寸先も見えない位真っ黒黒、強烈にブラックな喜劇。今日の核拡散の情勢を鑑みれば洒落にならないんだけど、次々繰り広げられる馬鹿者どもの狂気乱舞に笑わずにいられない。米国大統領に将軍、少佐に英国将校、元ナチ御用達博士とソ連大使。みんなのキャラ立ちが半端ない。うち三名を一人の役者が演っているなんて、神がかり的な人間離れした技に圧倒されるばかり。個人的に好きなのは、同士討ちになっちゃってる基地内部のやりとり。純血主義のリッパー将軍と、それをなだめすかすのに必死な英国将校。あろうことか公衆電話で小銭を調達しながら大統領に電話しなきゃならないシチュエーションの馬鹿らしさ。そこへ自販機会社に訴えられる、と主張する大佐。あーここにも馬鹿が~。さらにペンタゴンの地下では政府高官がずらりと顔を並べる中、いかにもソ連人な面構えの大使が盗撮(!)なんかして将軍と取っ組み合い。あと数分で核が落ちるんですよ?あっ、やっとつながったソ連首相、酔ってるってさ。極めつけの狂気はストレンジ・ラブ(なんて名前だ)博士、キワモノ中のキワモノ。この怪演に水を打ったように静まり返る作戦室。博士によって提示される地中の新世界構想。これがまた酒池肉林的な側面があってアヤシイことこの上ないんだけど、事ここに及んでも共産主義社会との格差を心配して声を張る馬鹿将軍。ここまでくると「もうお前ら死んでしまえっ」という気持ちになるわけで、果たしてソ連大使もそう思ったか人類滅亡スイッチをONする始末。キノコ雲にのせて「また逢いましょう」の調べが美しすぎる。なんという逆説。たらたらとあらすじ書きになってしまったけど、「こんな馬鹿みたいなことで絶滅なんてヤだろ?」とキューブリックの声を確かに聞いたような気がする私はこの映画を愛してやまないのです。
[DVD(字幕)] 10点(2013-02-14 01:15:25)(良:1票)
6.  時計じかけのオレンジ
ああ、狂ってる。この映画を観たときの衝撃。気分が悪いのなんのって。残忍で狡いアレックス、こいつには心から辟易するのだけど、彼がさらなる巨悪に蹂躙されたところで爽快になるわけもなくむしろ不快感は増すばかりの“二度とごめん”映画であることは間違いないのだけど。ああでも何この美しさは。陰惨な暴力に被って何故かしっくりくるベートーヴェン、網膜に焼きつくようなプラスティックな人工美。独特の言語。いちいち完璧な出来栄えに完全にパワー負けした。芸術というものが、人の感情に訴えるものであるならば、たとえそれが不快感であってもこんなにも心乱されるのであればそれは間違いなくアートであろうし、この心の動揺を感動ともいうのじゃなかろうか。才気が毛穴からほとばしっているようなこの映画にはやはり最高点をつけるしかない・・のか?こんなに10点をつけるのに躊躇する作品も珍しい。
[ビデオ(字幕)] 10点(2012-12-12 18:30:31)(良:1票)
7.  エイリアン
79年当時でこの映像技術・・、凄いなあ。初見の時「あ、宇宙船の中ってこんな風なんだ」と素朴に信じたくらい凄い。パイプが何本も交錯する機関室や船体爆破装置の重厚感に心奪われる。無駄を一切廃したスリリングな展開のシャープなこと。S・ウィーバーの男らしさに惚れ惚れ。猫の目を通して凄惨な場面を想像させたり、遠隔地のビーコンで恐怖を煽る手法も未だに新鮮で粋(?)。グロすら芸術の高みに昇華した、唯一無二の正に名作。
[映画館(字幕)] 10点(2011-11-27 16:33:50)(良:1票)
8.  ブラス!
すごく好き。この映画は人生そのもの。こういう作品に出会いたくて、私は映画を見続けている。なにしろ先の生活が見えない現状で、イギリスだから天気もぱっとしなくて。生活のために誇りを犠牲にしなくてはならなくて。八方ふさがりに見えて、尚ユーモアを失わない彼らに感嘆する。英国人の底力、とも思う。ユーモアを持ってしても、ついに心の折れたフィルとその家族に差し出される隣人や同僚の心遣いが、人としての普遍的な優しさに溢れている。ラストでの音楽一辺倒に見られていたダニーの、共同体を代表した政治批判が心に響く。「彼らは素晴らしい音楽を奏でることができる。だがそれが何になる?」音楽は、必ず結実すると思いたい。人の心と尊敬を勝ち得るものだと思いたい。少なくとも私は、隣人のような彼らを尊敬する。威風堂々、まさしく顔を上げて、人生を生きていってもらいたいと願っている。
[ビデオ(字幕)] 10点(2011-11-26 15:37:43)(良:1票)
9.  スナッチ
さくさく展開する話のノリの良さ、群像劇のお手本のような怒涛の交錯っぷりが、間抜けでしれっとしていてもうしびれる。イギリスっぽいひねた笑いのセンスが絶妙。(笑)をつけたくなるエピソードのオンパレード、小汚いけどスタイリッシュ。デルトロがあんな扱いで・・犬のおなかがきゅーきゅーゆってて・・名前はデイジー、これだけでまた思い出し笑いできます私は。大好きだー。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2011-10-07 11:41:39)
10.  フロッグ
うわー凄い。鮮やかなミスリード、真実を知った時のカタルシス。構成力は超一級品です。 この作品を一枚の大きなからくり絵とします。端から時間の経過とともに目で追っていくと途中で紐が引かれて、それまで見てきた絵のパーツがひっくり返って違う絵が現れる。それが終幕までに何度か繰り返され、最後の紐が引かれた時現れた絵は最初と全く違っている、そんな感じです。 観ている側にあえて情報を伏せる場面もありますが、繋がりに不自然さが無いので違和感を抱かせません。騙され好きな方におすすめです。 なんだか不安な気にさせる音楽と映像も良いです。清潔感があって美しくでも冷ややかな画ヅラがとても印象的で、モデルルームのように生活感の乏しい豪邸のショットが頻繁に挟まります。大きな屋敷ってしん、としているだけで何故緊張するのでしょうね。 自動シャッターの巻き上げの部分とか冷蔵庫の電球がぽっと灯る瞬間とか、丁寧すぎるほどの描写にも注目。この映画全シーンが伏線みたいなものなので二度目に観たときはそんな何気ない場面のひとつひとつにも過剰に深読みしがちになりました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-05-13 22:56:01)
11.  僕たちのラストステージ 《ネタバレ》 
キャリアの頂点を過ぎるというのは残酷な扱いを受けるものです。「あの人は今」なんて言われ方をされますし。 一世を風靡したローレル&ハーディでさえ、娯楽の座が映画館からテレビへと映る時代の変化に取り残されてしまい、今でいうなら「大物」なのにドサ回りのような巡業に甘んじることに。自ら何度も映画プロデューサーに電話をするスタンの姿は切なくはあるのだけど、喜劇役者としての矜持でいつもピン、としていてその尊さが胸を打ちました。もう泣けました。 なんといってもこの映画、ローレル&ハーディに対して敬意があふれています。お二方を完コピしたジョン・C・ライリー(なんて凄い特殊メイクだろう)とスティーヴ・クーガンの仕事が素晴らしい。この、泣けてしょうがない胸のざわめきが‶スタンとオリー”になのか‶ジョンとスティーヴ”に対してなのか、自分でもわからなくなっちゃった。 それに戦前のお笑いってやっぱり素朴で良いなと思いました。毒気が少なくて絶妙にとぼけていて、あの時代に生きていたらお腹を抱えて爆笑できたのになあ。今ではくすくす笑いでの鑑賞ですけど、十分幸せな気持ちになりました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-03-26 09:47:54)
12.  ダンケルク(2017) 《ネタバレ》 
ノーランに1940年のダンケルクに連れて行かれました。 押せ押せのドイツ軍の猛攻から、とにかく逃げの一手のダンケルク。袋小路に追い詰められた鼠のごとく海岸に集まったイギリス兵。 彼らと一緒に息をし、なんとか故国に帰ろうとする自分がいました。物凄い臨場感です。陸にあっては爆撃に怯えて砂に伏せ、海にあっては魚雷によって開けられた横穴からなだれ込む海水に首まで浸かり、あるいは墜落した機体の脱出口が開かず猛烈に焦る自分がいました。106分間もう恐ろしくて恐ろしくて。海原に無数の民間船が見えた時は泣きそうになったもんね。 今作においてノーラン監督は主人公を設けず、柱となる人間ドラマもほとんどありません。出ている人物は皆モブシーンの群像のようです。ドイツ兵すら姿を見せません。雨あられと銃弾が降ってくる描写のみです。このことこそが監督の意図するところなのでしょう。エンドロールに流れる「ダンケルクに人生を左右されたすべての人々へ捧ぐ」が胸に刺さります。 あの場にいた全員が主人公であるけれど、でもその無意味なことに戦争の不条理で非道なことを思い知ります。 映像は美しく、大空や水平線の広がりに目を奪われます。紺碧に輝くドーバー海峡、そこに真っ黒に広がる重油のシミ。かぶさるハンス・ジマーの不吉な音楽。キューブリックの‶フルメタルジャケット”以来の、画と音で迫りくる不条理の極みでありました。 帰投する選択を捨て、同胞らのために燃料を使い切り捕虜となった英国空軍パイロットの立ち姿。お気に入りのトム・ハーディとあってはいっそう涙無くして見られません。 銃口交える戦闘シーンは無し、ただ逃げ惑う戦争映画ですがこれもまたあの戦争のリアルなのでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-12-01 00:00:48)(良:2票)
13.  わたしは、ダニエル・ブレイク 《ネタバレ》 
ケン・ローチが引退を撤回してまで撮りあげた、渾身の作品と思います。 かつて「ゆりかごから墓場まで」と言われた英国の福祉が機能不全となって久しいと聞いてましたが、もはや人間の尊厳をも削り取るシステムになってしまっているとは。 ダニエルが振り回される所定手続きの複雑怪奇なことったら、喜劇さながら。見ているこちらも電話が先なのか書類提出が先なのか、どっちなんだよ、と思います。60過ぎて受ける「履歴書の書き方講座」や形だけの求職活動といった茶番。40年も大工一筋だった男にウェブで手続きしろと言い放つ。煩雑な手続きに疲弊しているのは職員も同じで、彼らも余裕が無くて辛そう。ちょっとでも温情をかけて処理したら上司に「前例を作らないで」と叱責されます。この女性職員はダニエルに手続きをあきらめないよう励ましてくれてたんですけどね。ラストには葬儀に出席している姿も見えました。 ダニエル・ブレイクは本当に良い奴なのです。他者を労わる心を持ち合わせ、まっとうな権利を行使するために他人のために声を上げることのできる隣人なのですよ。 そして、こんな苦境にあってもキレの良いユーモアを忘れないのが英国人の偉いところで、私が傑作と思うのは「保留音のBGMをマシなものに変えろ」でした。 格差とか移民問題とか、山ほどの問題を抱える現状はかの国の政治家だって百も承知なのでしょうが、一市民として思うことはダニエルのような善良な市民がこんな目に遭う社会は嫌だ、この一点に尽きます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-10-09 18:52:06)(良:2票)
14.  ケス 《ネタバレ》 
社会的弱者の視点、という立ち位置のぶれないケン・ローチ。初期作品からしてその眼差しの透徹していること、ちょっと震えがきました。背景描写が濃くてドキュメンタリーのようなカメラ。60年代英国の炭鉱街のうらぶれよう、貧しさ。華やぎのないこと、社会全体のゆとりの無さがはんぱない。週末に出会いを求めて出かける場所が成人した息子もオカンも一緒の公民館的なホールだなんて。ちょっと呆然。大人社会に希望が無いので子供社会だって明るいはずもない。学校に行けば自己中教師や高圧的な校長だし。ちっ。 社会において今んとこ完全アウェーのようなビリー少年だけど、しかし監督は子供が苛められるばかりの悲愴な話にしていないのだ。だってビリーには動物を飼いならす才能があって、それを認める周囲の人間もちゃんと存在する。牛乳や本や2ペンス。「必要なもの」をちょっとくすねる如才なさも見せる。おお、いいぞビリー。”大切なもの”に心から愛をかけるビリーに、クソな大人は本当にひどいことをする。大事な物を大人に破壊された経験のある先輩としてビリーに言えることがあるとすれば、”それでも人生は続く”と。心の傷は癒えない。けれど、君が生き抜くことには大きな価値があるよ、と。負けるなビリー。そばにいるよ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-08-11 01:09:59)
15.  パイレーツ・ロック 《ネタバレ》 
ユルくてお馬鹿で、でも人生にはロック、という信念が一本強固に通ってて大好きな映画です。出てる英国俳優がいかにもイギリス映画っぽい多彩な「顔」博覧会で唸る。ホフマンは米国人だけど。見てるだけで面白い。 舞台が船内に限られているにも関わらず、話の一つ一つがとても楽しい。ほぼセックス事ばかりなのはご愛嬌。狂言回しも兼ねるトム・スターリッジ君、あからさまな童貞顔で役にぴったりだ。極めて不道徳な檻に放り込まれた彼、かなり気の毒な目にあったりしながらも成長(?)してゆくのだった。多分。 戻ってきた往年のキングVSホフマン演じる伯爵の対立が一触即発の事態になったりするのかな、と思いきやこれが思いもかけぬ流れでもってお互い手打ちで締める展開へ。一本気ながら妥協点を知る、みたいな適度なしょーも無さ。このエピソードが一番好き。 敵役の政府側は完全にコメディ。強敵なようなそうでもないような。感じはモーレツに悪いが。 遭難ラストの緊迫感はかなりのものです。電波に乗って流れてくるラジオからのSOS、なすすべなく呆然となるリスナー。海の底へ沈むレコード。泣きたいのをこらえて見守りまして、ついに伯爵が浮いてきたときの喜びったら。ああよかったなあ。だってロックは悲愴なものじゃない。生きるための音楽だからね。制作は正しい判断をしました。 全編通して耳に心地よい音楽はもちろんパーフェクト。でも時代はちょっと違うのね。レビュワーの皆さん、勉強になりました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2016-11-19 17:28:40)
16.  ウォルト・ディズニーの約束 《ネタバレ》 
ああ そうなのか。P・L・トラヴァースという作家の人となりを知って、原作メリー・ポピンズの世界がやっと理解できたような気がする。本当に長年のつかえが取れた思い。 メリーは甘くない。「スプーン一杯のお砂糖」なんかでごまかさず、子供に現実を直視させ乗り越えさせる。(E・ワトソンの台詞)この厳しさは父性の強い英国の子育ての伝統なのかと思っていた。しかしトラヴァース女史は意外やオーストラリア育ちなのだった。そしてそこで幼い頃に敬愛する父の苦しむ姿を経験していた。 メリーポピンズの背景である女史の幼少期がしばしば挿入され、おとぎ話の骨格がよりわかりやすく肉付けされてゆく展開は見ごたえがある。そして、それ以上に私の胸を衝いたのはウォルトの、愛の少なかった子供時代の告白だった。「もう疲れた。辛く悲しい風に過去を思うのは。」 ディズニー映画の、幸福や希望への強迫観念めいた迷いの無さがどこから来ているのか判った。 スプーン一杯のお砂糖が人生に必要なこともある。 方向性に違いはあっても、子供たちの良き成長を願う二人が歩み寄った時、もう泣けて仕方なかった。 そして巨大なディズニーワールドを支える、たくさんのトップレベルの才能にも感銘を受けた。作曲、脚本、作画etc。皆全力を尽くして作品に貢献している。バンクス夫人の造型については作者本人よりも深く考察していたほどだ。 偏屈女史をなだめすかしながら、ストレス過重の仕事を完遂したスタッフにも、敢闘賞を差し上げたい。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-22 00:05:41)(良:1票)
17.  いつか晴れた日に 《ネタバレ》 
ジェーン・オースティンって基本 少女マンガだと思うんだけど、ベタなラブストーリーをこうも格調高く美しく撮り上げたアン・リーの手腕は大したものです。彼の作品では感情の発露がいつでも節度をわきまえていて慎ましい。そこんとこがこの原作の時代性にはまったのでしょうか。 三姉妹の配役がベストです。マーガレットは愛らしく、ウィンスレットは若く瑞々しく、とても綺麗。そして演技が巧み過ぎてたまに鼻につくE・トンプソンですが、今作の“耐え忍ぶ長女”役は学級委員長的な彼女のキャラにぴったりでした。 翻って男性陣は時代劇の衣装がなかなかキビシイ。着こなせてないのはH・グラントだけではないような。でも各人、演技力でそこはカバーしてます。クサい台詞も浮いてません。 オースティンの話を聞くたび、社会保障も相続権も無い時代の女たちの生きる厳しさを思います。玉の輿に乗るしか生活が保障されないのだから、そりゃ必死にもなりますわな。そして恋バナのお節介ばかり焼く中年のオバサンたちも健在。息せき切って仕入れたゴシップの披露に及ぶ、その逞しさ、正直さには苦笑い。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-12-03 00:18:01)
18.  シャイニング(1980)
ホラーもキューブリックの手にかかれば、ゴージャスで華麗であのホテルはまさにキューブリック劇場。奔流する真紅の血の波にはぞっとするよりも恍惚を感じる。怖いのは同じ一文を延々とタイプしてあるジャック・トランスの原稿、いやそれよりもシェリー・デュバルか。貴女の驚きぶり、怖がり顔がワタシは怖い。もしかしたらニコルソンよりも。  水色の双子が立っている。三輪車をこぐ子供の後ろ姿。生垣の迷路。これらはシャイニングを経験した者たちの、恐怖アイコン。怖いけど美しいというのも凄い。
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-01-11 12:23:43)(良:1票)
19.  フルメタル・ジャケット 《ネタバレ》 
どこを切っても狂気の成分でできている戦争という出来事を冷え冷えとしたクールさで描くキューブリック。戦地に赴く前から、徐々に狂ってゆく若い志願兵たち。人格を破壊され、兵器になり損ねたデブが狂気の中で死に、支配者だったはずの教官すらデブの狂気に巻き込まれて死ぬ。“フルメタル・ジャケット”と化した残りの者たちも、まるで無駄撃ちされる弾丸のごとく次々死んでゆく。スローモーション無し、バラード調の音楽も無し。狂気の世界に被ってチョイスされるは阿呆みたいに能天気な音楽、ああこれこそがキューブリックテイスト。痺れた。戦争映画なのに映像も妙に美しい。デブが臨界点に達した真夜中の青いトイレ、廃墟のあちこちでゆれる赤い炎。ラスト、血まみれのミッキー・マウスが凱歌をあげて行進する。きっと奴の黒目は狂気で真っ赤だ。戦争を悲劇とみなしたり、怒りをこめた映画は多い。けれど、闘う人間の業そのものを冷笑してみせるのはキューブリックをおいて他にいない。凄いと思うんだ。
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-19 17:18:54)
20.  リトル・ダンサー 《ネタバレ》 
舞台となっている炭鉱街が坂の多い街で、これが情緒あって良いんです。坂の上から見渡す先には水平線、道の両側には赤いレンガ壁の家並みが段々と並び、そこをビリーの父が「受かった!」と初めて見せる満面の笑みで駆けてくる。泣く。ビリーへ残したお母さんの手紙、クリスマスのほのかな彩り、頑固一徹かと思われた親父の豹変にも近い愛情の発露、二人して心細そうなロンドンへの旅。ああ~泣く。ビリーの思春期を迎えた拗ねた表情や、辛さに耐えかねてバレエ教師に悪態をついては泣く、ひとつひとつのエピソードも良いのだけど、なんたって親友に恋心を寄せられるとは驚いちゃうよねビリーも。引くかと思いきやチュチュまでプレゼントだ。なんて麗しい友情だ。通知が届いた時は身内の如くどきどきして見守りました。ビリーの帰りを待って、誰からともなくすっと食卓に集まる家族の描写が素敵。
[DVD(字幕)] 9点(2012-10-12 00:25:06)
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