21. ウォルト・ディズニーの約束
《ネタバレ》 ああ そうなのか。P・L・トラヴァースという作家の人となりを知って、原作メリー・ポピンズの世界がやっと理解できたような気がする。本当に長年のつかえが取れた思い。 メリーは甘くない。「スプーン一杯のお砂糖」なんかでごまかさず、子供に現実を直視させ乗り越えさせる。(E・ワトソンの台詞)この厳しさは父性の強い英国の子育ての伝統なのかと思っていた。しかしトラヴァース女史は意外やオーストラリア育ちなのだった。そしてそこで幼い頃に敬愛する父の苦しむ姿を経験していた。 メリーポピンズの背景である女史の幼少期がしばしば挿入され、おとぎ話の骨格がよりわかりやすく肉付けされてゆく展開は見ごたえがある。そして、それ以上に私の胸を衝いたのはウォルトの、愛の少なかった子供時代の告白だった。「もう疲れた。辛く悲しい風に過去を思うのは。」 ディズニー映画の、幸福や希望への強迫観念めいた迷いの無さがどこから来ているのか判った。 スプーン一杯のお砂糖が人生に必要なこともある。 方向性に違いはあっても、子供たちの良き成長を願う二人が歩み寄った時、もう泣けて仕方なかった。 そして巨大なディズニーワールドを支える、たくさんのトップレベルの才能にも感銘を受けた。作曲、脚本、作画etc。皆全力を尽くして作品に貢献している。バンクス夫人の造型については作者本人よりも深く考察していたほどだ。 偏屈女史をなだめすかしながら、ストレス過重の仕事を完遂したスタッフにも、敢闘賞を差し上げたい。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-22 00:08:23)(良:1票) |
22. ソードフィッシュ
《ネタバレ》 結局、トラボルタも監督も何がしたかったんだろ。予告では二転三転したはずのプロットが、元々の意味が分からないままなので何転したのかもわからない。ハル・ベリーは生きていました、トラボルタの元顔の人は死んでいました、と言われてもなんのことだか。もっと驚きたかったぞ。D・チードルの役回りも実に無駄。無駄に乱暴な捜査官。やたら脱ぐオネーサンたちはお色気というより下品。あげくトラボルタが乗ってるバスが宙ぶらりんではないか。これ事故でしょ。駄目スタッフでしょトラボルタの部下。何をやってんのよー。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2014-08-21 00:10:48)(笑:2票) (良:1票) |
23. シャーロック・ホームズ(2009)
ガイ・リッチーの思い切ったキャラ造形が、ロバートとジュードという適材を得て生き生きと動いている、そこが一番の魅力。“結婚するのー?”“まじで?”とワトソンにちくちく嫌がらせを仕掛けるホームズ。全く12才のガキのようである。楽しい。見るたびにかちーんと固まっている受難犬トレッドストーンも可愛い。そして音楽と美術、こちらも優秀。19世紀のロンドンを全身全霊をこめて再現したかのような見事さ。女性のドレスは優雅で、男性のスーツは化繊のてろてろ感の無い上質さ、ああ眼福でした。 [DVD(字幕)] 8点(2013-11-11 01:10:18) |
24. キラーカーズ/パリを食べた車
《ネタバレ》 ピーター・ウィアーのデビュー作らしい。監督、これキャリアにしといていいんですかね?内緒にしときましょうか、と気を利かしたくなるようなヘンテコ映画。何が変ってうまく説明し難いんだけど・・、まず舞台が街ぐるみで追いはぎやってる犯罪タウンなんだ。ここに偶然たどりついた主人公、彼によってこの街の非道が暴かれ、裁かれるのかな?と思ったら、さにあらず。この彼がけっこうなぼんくらで、悪徳市長に言いくるめられるのみ。観てるこちらの正義はどこにも預けられないの。でもって凶悪な暴走族が登場、街を破壊するクライマックスなんですがここもハリネズミみたいな改造車でどかーんと建物に体当たり。迫力もあまり無い。正直住民が逃げ惑う姿に違和感あり。主人公はといえば人ひとり圧殺して“運転できるようになった♪”と嬉々として街を去るのだった。こらーっ。おまけに音楽が、こんなに変で異様な展開なのにリゾート地でかかる系のBGMだった。なんか色々と、映画を観るうえで初体験なこと多かったです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-10-21 00:45:20) |
25. マッドマックス サンダードーム
ティナ・ターナーが張り切って姐御役を引き受けた3作目。張り切ったわりに、あまりキャラが練りこまれておらず、良い人なのか悪い奴なのか宙ぶらりんに。宙ぶらりんになってたのはM・ギブソンだったか。ちょっとTVのバラエティみたいだったな。未来都市を夢見る一団と、突入するのも逃げ出すのもなんだか安易に事が進む。前作までのオマージュどころか単なる焼き直し。柳の下に3匹目のどじょうはいませんでした。 [ビデオ(字幕)] 4点(2013-06-20 00:06:52) |
26. ザ・プラマー/恐怖の訪問者
《ネタバレ》 観終わったとたん「はあー?何だよコレ」と思わず口をついて自分で笑ってしまった。不愉快な配管修理人の得体の知れなさと、時折はさまってくるクル病患者の画。不気味さを増幅させようとの意図はわかりますがいちいち見過ごせないほどの“そんなばかな”な出来事目白押しで観てて困ってしまう。奥さんさっさと大学に問い合わせないし。天井破って入ってくる修理人なんておるかあーっ。おまけにその怪しい他人を家において外出するし。ラストも驚いたというより呆気にとられた。アフリカ民族系音楽の「ほえあ~っ」という叫びに被ってJ・モリスの顔を下から撮ってTHE・ENDですがな。・・なんだようコレ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-06-16 23:18:40) |
27. マッドマックス2
《ネタバレ》 私にとってマッドマックスといえばこっち。2です2。前作も良かったけれど、吹っ切れたような有無を言わさぬ押しの強さが格段にパワーアップ。最終戦争後の世界を造形したこのセンスはもうピカ一。一体どこをどう間違って凶悪パンク暴走族が跋扈する世界になっちまったのか。あまりのパワー押しにこんな疑問も一切挟む余地がない。終末はモヒカンなんだ。そうなんだ。・・そして当時脂の乗りきったメル・ギブソンのかっこいいこと。顔が細い!身体締まってる!この“語らず”な男がでかいトレーラーのでかいハンドルを片腕でぐいぐい操縦するんだもの。当時キレイ系好きの女子にもウケが良かったのが印象深い。荒野の一本道を疾走するマシン群と赤く染める夕陽。砂埃を巻き上げながら突き進む姿は美しい野獣にも見える。広大な大地を活かしきったロケと、美的センスあふれる(?)世界観と単純明快逃げ切れ型ストーリー。傑作ですわー。 [ビデオ(字幕)] 9点(2013-02-06 18:21:59)(良:1票) |
28. インベージョン
なんたって主演がN・キッドマンと、D・クレイグですし子役が可愛い顔なので画的に観やすいです。何にでも手を挙げるニコール、今回は寝不足という美容に大敵なシチュエーションに挑むのですが、いやいつにも増してキレイねえ。なんだろう しげしげと彼女を見つめるうちに時間が過ぎちゃう。あーそしてダニエル・クレイグが地味な役割にも関わらず包容力と優雅な雰囲気でとても素敵。ぽん、とキーを投げてよこす仕草は必見。真っ黒パンケーキもベタ演出ながらくらっときます。あ、お話はどんなだったかな。そういえばハラハラとかは全然しなかったのは確かです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-01-31 01:12:07) |
29. マッドマックス
広大なオーストラリアの大地がこの物語にとても有効で、それだけで世界観が確立できちゃってる。お得。M.ギブソンが二枚目の主人公らしからぬ容赦ない暴力を撒き散らして、ざっくりした幕切れとともに当時強烈な印象を残しました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-01-16 17:54:31) |
30. マトリックス
やっぱりこれ面白いですよね。発想の斬新さと、目を瞠る映像。99年といえば当時すでに散々特撮技術には目が慣れ、ミステリアスな謎解き話も数々経験し、スタイリッシュな感性の名作をいくつも観てきてすっかり映画擦れしてしまった身でありましたが、子供の頃スクリーンに向かった時のようなわくわく感をもらうことができました。映像技術というのは、まだまだ映画の可能性を広げてくれるんだ、と世に知らしめた功績はとても大きいと思うのです。それに、キアヌがこんなにもかっこいいのはほんと久々でしたしね。 [ビデオ(字幕)] 9点(2012-12-06 11:17:33) |
31. 月のひつじ
《ネタバレ》 月面着陸中継を、オーストラリアでキャッチしていたとは知らなかったー。いかにもオージーなのどかさ、茫洋と広がる牧草地と羊羊羊の真ん中に忽然と佇むでっかいアンテナ。科学技術の粋を集めた施設と、牧歌的環境のアンバランス。冒頭から掴まれます。現地所員3名と、ほぼこの部署いらないんじゃないの的な警備員1名にNASAからの派遣員1名が前線で頑張るんだけど、一生懸命な割りにすったもんだな展開になっちゃって可笑しいのなんの。外野の田舎町の皆さんも首相や大使を迎えてわあわあ楽しそうに大騒ぎ。合衆国国歌を悪意無く間違える・・ありなのか。笑ったけど。困難あり、恋バナありでサービス満点。全編に漂うほのぼの感が心地良く、あざとさが無くてそれでいてお客に楽しんでもらおうという制作姿勢の気持ちの良い映画。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-09-26 00:34:17) |
32. イン・ザ・カット
《ネタバレ》 ああメグ・ライアン。ラブコメの女王として不動の地位をキープしていた頃は顔も頭も小さくて瞳くりくり、キュートで可愛いひとだなあと感嘆したもんだった。“ユーガットメール”の頃はまだいけてた。“ニューヨークの恋人”でやや?感。そしてなんでこうなったのか。アップに耐えない肌のくすみ、艶のない髪。目をそむけたくなるバストに肉のついた背中。こんな有様晒さなくたって。なんで脱いだんだろう。N・キッドマンにそそのかされたんだろうか。「脱がなきゃだめよ 一皮むけようと思ったら」とかなんとかって。メグは散々だしサスペンスにもなってない話もひどい。出来は散々なんだけどメグは大真面目に頑張った感じがあってこれまた切ないんだ。うんメグは頑張ったよ こんな脚本ではM・ストリープが演じたって似たようなもんだろう。 [CS・衛星(字幕)] 1点(2012-06-24 12:07:29)(笑:1票) |
33. 英国王のスピーチ
《ネタバレ》 “王”たる者にとって周囲の人間とは「臣民」・「臣下」それに「家族」の三通りしかいないのではなかろうか。「友人」は存在し得ない。神から遣わされた絶対君主に、対等な相手など認められないのだから。しかし時は20世紀、キングであっても平民のドクターに力を借りなければならない時代なのだった。「友人」という前例の無い関係を築くにあたって、それはそれは骨の折れる精神作業だったことでしょうなあ。王にとってもローグにとっても。王族の生まれとはいえ、そこは人間、けっこうなかんしゃく持ちだったり、突如迫ってきた王座のプレッシャーに耐えられなかったり、コリン・ファース演じるジョージ6世はしごく生々しい人間くささをあらわして、畏れ多くも共感できる。妻を相手に「重大な間違いだ。私は王なんかじゃない。」と弱音をぼろぼろこぼすジョージ6世。ああ、弱いところを見せられる相手がいて良かったなあ、と思った。その王妃を演じるヘレナがまた上手い。背中まわりの肉付きのよさにトシを感じてしまうけれど、それがまた王妃たる貫禄になってもいる。ラストのスピーチにはまんまとほろりとさせられた。一言一言、王様が単語を発するたび、次を促すべくローグとともにリズムをとる自分がいた。それにしても、これから戦争だという緊張のほかに、王のスピーチのつつがなきことをも祈らなきゃならなかった関係者各位の気苦労を思うと・・大変だったろうなあ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-06-12 00:05:12)(良:1票) |
34. シャイン
《ネタバレ》 全く前知識なしに観たから、主人公が心を患っているとは知らなかった。いやあ、J・ラッシュが鬼気迫るというか、凄いんだけれども、青年期を演じたノア・テイラーの繊細な情感も良いと思います。才能のある人に特有のひ弱そうな、もろくて危うい感じにどきどきします。スケベ心がちょくちょく顔を出す中年以降のジェフリーより、ノア君の方が好き。パンツ忘れないようにね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-02-28 01:09:26) |
35. ピクニックatハンギング・ロック
《ネタバレ》 美少女メリンダと、一世紀前のクラシックなレース飾りも優美な衣装が鮮烈に印象に残る。あの白いひらひらが、幻想感を一層際立たせるんだろうな。白いひらひらをまとった少女たちと神隠し。不謹慎ながらぞくぞくするシチュエーション。実際の事件ながら、真相を探す推理的な要素がほとんど無いってことはこの監督もやはり「ぞくぞくする感じ」に魅せられたのでしょう。翻って幻想の欠片もない、シビアで冷酷とすら感じる女校長の視点も極めてリアル。こんなんだろうな、どうせと思わせる。うっとりしたり、目が覚めたりが交互にやってくる映画。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-02-20 18:07:37) |
36. グリーン・カード
《ネタバレ》 節度のある大人の恋愛。距離を保ちながらじわーっと心が近づいてゆく、いろんなエピソードが微笑ましくて品がある。ピアノがあんなに上手いなんて・・、や フランス男は侮れんな。 [映画館(字幕)] 8点(2012-01-30 16:53:32) |
37. ベイブ
シンガポール・・だったかな、この映画が封切された直後は豚肉の売り上げが激減したのだとか。いとしい子豚くんも、J・クロムウェルの素朴な農夫っぷりも良い。ただこれを観た当時は我が子がまだ幼子で、うちの子の方が可愛い、と思ったものだった。豚と比べるのもどうかと思うが。 [地上波(吹替)] 8点(2012-01-28 01:28:24)(笑:1票) |
38. ビール・フェスタ
酔ってもないのに目が回りそうなクダラなさ。あ~あ~と脱力しつつ、でもなんかだらだら観ささっちゃいました。ビールとおネエちゃんとアメリカ大好きな向きには楽しめると思います。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2012-01-21 15:00:49) |
39. 戦場のメリークリスマス
これを観た時の衝撃。それこそ頭をハンマーで殴られたようだった。何もかも美しくて切なくて呆然とした。まだ柔らかかった心に(笑)ざっくり突き刺さった、数々のシーン。脱走兵がボウイと知って一瞬怯む坂本。剣を捨てるボウイ。埋められて首だけ出ているボウイ。音楽。ラストシーンに至ってはたけしすら美しい。安易な涙すら出なかった。この映画を観た後、憑かれたようにこの曲を練習し、D・ボウイを追い求める日々が続いた。気恥ずかしいですが、これほど身も心も持ってかれた映画は後にも先にもこれだけです。 [映画館(邦画)] 9点(2011-12-14 00:06:34) |
40. ブレイブ ワン
《ネタバレ》 エリカが私怨にとどまらず、直接には関係の無い殺人を次々犯してしまうとこが人それぞれ意見の分かれ目。コンビニでは正当防衛だし、冒頭の暴漢に復讐することについては異議を申し立てる人は少ないのではないかと思われる。映画作品としてのメッセージはわりと明確。タイトルはbrave oneで、エリカは生き残る。けれど、犬を取り返したとはいえ、「以前のようには戻れない」とも言わせてるわけで。殺人の代償をこれから払っていかなければならないエリカの後姿に復讐を遂げた達成感はまったく無かった。年齢を重ねても、きびきびと動きの良いジョディがスマート。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-12-12 00:58:40) |