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261.  太陽の王子 ホルスの大冒険 《ネタバレ》 
高畑勲監督のデビュー作。高畑監督といえば宮崎駿監督と違ってあまり活劇寄りの映画はやらない印象があるのだが、デビュー作となる本作は冒険アクションもので、どちらかと言えば宮崎監督の作品に近い印象で、保護者を亡くした少年が仲間を求めて旅に出る冒頭は「未来少年コナン」、登場する銀色の狼は「もののけ姫」の山犬を思わせていて、本作にアニメーターとして参加している宮崎監督に与えた影響が大きいことがうかがえる。ストーリーはやや子供向けにしては暗めで爽快感に欠け、そのくせつっこみどころも多いが、人間同士の信頼や団結といった社会的側面をこういった子供向けアニメに持ち込んでいたりするのは今ではちょっと考えられないこと。このあたりにスタッフの本気度が伝わってきて、ただの子供向けには終わらせないぞという熱意が感じられる。(このあたりも宮崎監督の作風に影響してそう。)ヒロインであるヒルダの存在感も子供向けとは思えぬもので、それが本作をより印象深いものにしている。(とはいえ、声は市原悦子で、ヒルダが喋るとつい「まんが日本昔ばなし」を思い浮かべてしまうのだが。)本作は現代のアニメを見慣れていれば、古臭く感じるかもしれないが、ストレートなメッセージ性があり、一度は見るべき映画だと思う。それにしても高畑監督は最近は「金曜ロードショー」でも監督作を放送しなくなり、新作の話も聞かず、忘れさられたような存在になってしまっているのはちょっと悲しい。
[DVD(邦画)] 7点(2012-12-11 22:50:45)(良:1票)
262.  獣の戯れ 《ネタバレ》 
三島由紀夫原作の映画で主演が若尾文子。となれば増村保造監督の映画かと思ってしまいそうだが違う。話としては決してつまらないというわけではなく、若尾文子演じるヒロインの悪女ぶりもいつものようにハマっていて、彼女が主演の映画を見るのがかなり久しぶりなこともあり、懐かしさもあるが、増村作品ほどのインパクトはなく、あまり生かされてもいない感じでそこが物足りないし、主要人物三人のドロドロした関係は退屈せずに見られるものの、このストーリーもなにか増村監督に向いている気がして、見ながら増村監督がもし手掛けていたらどんな映画になっていただろうと考えてしまった。(絶対に傑作になっていたに違いない。)話自体は悪くないだけになんかもったいない気がする。そんな中で印象に残るのはヒロインの夫を演じる河津清三郎。やな感じで女遊びの激しい前半の社長の姿から、頭を殴られたことで脳に重度の障害を負った後半の姿を演じているのだが、この変わり身がうまく、前半はいつもの憎まれ役という感じだったのに、後半では全く違うどこか哀れみを感じさせる演技で、さんざん弄んだ妻に介護されながら生きる男の皮肉や哀しみを見事に演じていて、後半ではこの夫に感情移入してしまうシーンも何度かあった。この後半の河津清三郎の哀れさがいちばん心に残る。でも本作に関してはやっぱり三島由紀夫原作で若尾文子主演なら増村監督で見たかったと強く思うのが正直なところである。
[DVD(邦画)] 6点(2017-01-26 00:23:02)(良:1票)
263.  キングコング: 髑髏島の巨神 《ネタバレ》 
2014「ゴジラ」とも関連のある(モンスター・バース)新作キングコング映画。これまで見たキングコングの映画はリメイクが主だったせいもあって東宝版も含めてオリジナルを踏襲した展開が多かったのだが、本作では舞台となる髑髏島だけで話が展開するのがコング映画では新鮮に感じる。コングの登場も早く、コング以外の怪獣も多数登場するなど、怪獣映画としての醍醐味がこれでもかと詰め込まれていて、まさに王道の怪獣映画という感じの作風(久しぶりにこういう怪獣映画を見た気がした。)で、すごく楽しいし、さきほど書いたように舞台は髑髏島から移動しないので、往年の東宝特撮怪獣映画を見ているような懐かしさや楽しさ(巨大タコとの戦いは「キングコング対ゴジラ」を思い出さずにはいられない。)が感じられるのが嬉しい。2014「ゴジラ」では怪獣どうしの戦いの描写に不満しかなかったのだが、本作ではもちろんその点もしっかりと描写されていて、もう大満足。とにかく最初から最後まで小難しいことを一切考えずに見られる娯楽映画に徹しているのが素晴らしく、あまり期待しないまま映画館に入ったのがウソのようにすごく面白かった。エンドロール後のエピローグに次回作であるレジェンダリーゴジラへの布石が描かれているのだがこの感じだと思わず期待してしまうじゃないか。コングを殺すことに執念を燃やす男をサミュエル・L・ジャクソンが演じているが、見ていて昔「ジュラシック・パーク」に脇役で出ていたことをつい思い出した。
[映画館(字幕)] 8点(2017-04-14 00:55:52)(良:1票)
264.  東京物語 《ネタバレ》 
「晩春」、「麦秋」に続く小津安二郎監督と原節子の紀子三部作の最後の作品。尾道から子供たちに会うために東京に出てきた両親と子供たちのすれ違いが描かれた映画だが、ここに現代でも通じる普遍性を感じることができるし、やはりこの普遍性こそが本作を不朽の名作たらしめるゆえんではないかと思う。実際に今見ても現実味を感じられるし、真に迫るものがあり、なにか身につまされるものもあった。子供たちの両親への対応がとても冷たいのだが、それは彼らには彼らの生活があるからであってたとえ親子であってももう別の人生を生きているということがリアルに伝わってくる。だから終盤の京子(香川京子)と紀子(原節子)の会話の部分も、兄姉を非難する京子を諭す紀子の言葉にすごく納得できる。(この部分、初めて見た時は京子のほうに共感してたと思ったんだけど、見方が変わったみたいだ。)周吉(笠智衆)が再会した友人(東野英治郎)と酒を飲みながら交わす会話も二人のさびしさをよく表していて印象的だったし、とみ(東山千栄子)が紀子の部屋へ泊るシーンのやりとりもすごく良い。笠智衆はもちろんだが、このとみを演じる東山千栄子がなんといっても素晴らしかった。この老夫婦が「それでもやっぱり、孫より子供のほうがかわいい。」と話し合うシーンは親のわが子への愛情が永遠であるということをあらためて感じることができ、素直に感動してしまった。(今、これを言えるような親が少ない気がする。)でも、当の子供たちは自分たちの人生を生きるのに精いっぱいで両親にかまっていられないという現実の悲しさ・・・、そういうものが見事に描かれていて、見終わった後には「家族」や「親子」というものについていろいろ考えさせられた。二十歳くらいの頃に初めて見た時は正直、そこまでの良さは分からなかったのだが、久しぶりに見て世界的な名作と言われる理由も分かるし、そしてもちろん、小津監督の最大の代表作、間違いなく日本映画の美しい名作の一本であると確信することができたし、再見して本当に良かった。何度でも繰り返し見たくなる映画というのはあるが、この「東京物語」は自分が年を経るごとに繰り返し見たくなるような映画だと思う。もう10点以外ありえない。(2020年1月6日更新)
[DVD(邦画)] 10点(2005-04-12 21:09:24)(良:1票)
265.  銀嶺の果て
黒澤明監督や本多猪四郎監督とともに山本嘉次郎監督の助監督をやっていた谷口千吉監督のデビュー作となる山岳サスペンスアクションで、主役の強盗犯の一人を演じる三船敏郎もこれがデビュー作。戦後2年しか経っていない時代の作品なので娯楽アクションとしては面白いのかどうか不安な面もあったけど、脚本を書いているのが黒澤監督だからか、娯楽性はもちろんだが、人間ドラマとしても見ごたえのある骨太な作品に仕上がっていてなかなか面白かった。三船はこの頃からギラギラした演技で横暴な強盗犯を演じていて、もう既に後のキャラクターが出来つつあるのには驚くし、本作の脚本がのちに黄金コンビとして数々の名作を世に放つ黒澤監督というのも興味深いものがある。志村喬が共演してるので途中から何だか黒澤映画を見てる気分になった。ラストの志村喬と若山セツ子のやりとりと「オールド・ケンタッキー・ホーム」が泣ける。それから音楽といえば忘れてはいけない、伊福部昭にとっても映画音楽デビュー作であるのだが、谷口監督と揉めたというスキーのシーンの音楽をはじめ叙情的な音楽がどれも画面と調和していて素晴らしい。三船もそうだが、伊福部昭もこの後、日本映画の歴史に名を刻んでいくことになるんだなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-02-19 11:57:04)(良:1票)
266.  フィッシュストーリー
それぞれの年代の一見なんの関係もないバラバラのエピソードが一つにつながっていくというのはとても面白いし、時系列の組み換えや演出のミスリードも映画的で良く、最後にストンと落とす終わり方もこの監督、原作コンビの映画らしくてすっきりしていていい。それぞれのエピソードはどれも面白く、中でも多部未華子と森山未來のエピソードは特に印象に残り、ここから一気に引き込まれた。物語のキーとなる「フィッシュストーリー」をうたう逆鱗のパートも普通にバンド音楽ものとしてよく出来ていて面白い。録音シーンを最初から最後まで見せているところなどこだわりを感じる部分も多く、B級臭さも確かにあるものの、全体的によく出来た映画で、佳作と言っていいものになっている。しかし、個人的には「ゴールデンスランバー」や「ポテチ」に比べて少し物足りないと思う部分もあったのも事実。ラストは確かにさっきも書いたようにうまいのだけど、そこへの入り方がやや唐突に思えたのも少し残念だったかな。見て数日経つのだが「フィッシュストーリー」のメロディが今も耳に残ってる。
[DVD(邦画)] 6点(2017-06-03 17:31:36)(良:1票)
267.  最後の特攻隊 《ネタバレ》 
神風特攻隊を題材にした佐藤純弥監督による東映のオールスター大作戦争映画。1970年というカラー映画であってもおかしくない時代にあえて白黒で撮影されているところにこだわりを感じる。群像ドラマとしてもしっかりと作り込まれていて、見ごたえがあり、とくに中盤以降は渡辺篤史演じる吉川のエピソードを中心に構成されていて、この吉川の話はかなり丁寧に作り込まれている。実家に帰ってきた吉川を母親が涙ながらに叱責し、追い返すシーンや、その直後に自殺しようとする吉川を宗方(鶴田浩二)ともう一人の仲間が止め、必死に説得するシーンが良いし、特攻作戦で死ぬのを恐れていた吉川が空襲で燃えはじめた戦闘機に自ら乗り込み、自爆して最期を遂げるという彼の結末には思わず泣いてしまった。吉川を演じる渡辺篤史もいい演技を見せていて、彼の代表作とも言える役柄だと思う。そのほか、山本麟一と梅宮辰夫の兄弟のエピソードも印象深かった。得てして大味になりがちなこの手の映画であるが、本作はこの二つのエピソードのおかげで印象に残る佳作になっているし、また70年代後半以降に大作映画を多く手掛けることになる佐藤監督の演出にも光るものがあり、今まで見た彼の監督作の中でもいちばん面白い映画だった気がする。ただ一つ、終盤の終戦になったというシーンがえらく唐突に感じたのはちょっと残念。このあたりにもう少し配慮があれば良かったかなと。
[DVD(邦画)] 8点(2015-09-05 17:23:23)(良:1票)
268.  母と暮せば 《ネタバレ》 
井上ひさしが構想していたという「父と暮せば」に対する長崎原爆をテーマとした物語を山田洋次監督(井上ひさしとは「キネマの天地」で一緒に仕事をしている。)が映画化した作品で、「父と暮せば」とは逆に原爆で死んでしまった息子・浩二(二宮和也)が生き残った母親・伸子(吉永小百合)の前に現れるという設定は見事に「父と暮せば」と対になっている。「父と暮せば」と同じく二人の会話劇が中心で進んでいくが、夢や希望に満ちた将来がありながらそれを原爆によって絶たれてしまった息子の無念さや、息子に先立たれた母親の悲しみがよく描かれていて、考えさせられるものがあるし、戦争に対する山田監督や井上ひさしの思いも伝わってくる。あまり回想シーンを使わずにセリフだけで語らせているのも「父と暮せば」同様に舞台的ではあるが、登場人物たちの口から発せられるセリフを聞いていて思わずその情景が頭に浮かんでくる。中でも浩二の恩師(橋爪功)の最期や、浩二の恋人・町子(黒木華)が友人を原爆で失った時のことを話すシーンは思わず胸が張り裂けそうなほどつらかったし、町子の同僚のメンデルスゾーンのエピソードも良かった。山田監督は作品によっては説明過多になってしまう場合もあるものの、映画を見ている人に想像の余地を与えるのがうまいなとあらためて思う。(回想シーンとのバランスも良い。)冒頭の原爆投下シーンの見せ方も決してスペクタクル調になることなく、それでいて原爆の尋常ではない恐ろしさを伝えるにはじゅうぶんな映像になっているのが見事で、直接には生々しさを見せていないのも山田監督らしい。主演の吉永小百合はいつものように演技は微妙ながら「母べえ」ほどの違和感はそれほど感じなかった。ただ、坂本龍一の音楽はやはり少し癖があって山田監督の映画には合わないかもしれない。(このテーマだからこそのこの二人の起用なのは分かる。)それにラストの結末部分がファンタジーに寄りすぎてしまった感があり、とくに伸子が死ぬシーンは完全にホラー映画のようで、全体的にかなり浮いてしまって見えたのが残念。せめて同じ展開でももう少し違う描写の方が良かった気がするし、伸子の死を暗示だけで済ましても良かったのではとも思う。しかし、エンドロールの合唱は多少宗教的ではあるものの、原爆への怒りよりも戦争によって亡くなってしまった人々に対する山田監督の鎮魂の思いがストレートに感じられるエンディングで、同じく長崎原爆を題材とした木下恵介監督の「この子を残して」よりも幕引きとしてはこちらのほうが良かった。(ただ、音だけならもっと良かったような気はする。)「父と暮せば」には劣るものの、全体的には優しい雰囲気で作られた山田監督らしい良作だと思う。7点でもいいのだが、やはり話の結末はもう少し違う展開や描写でもっと余韻のあるほうが良かったと思うので1点マイナス。それにしても山田監督も80歳を超え、そろそろ死を意識する年齢になってしまったが、あと何本新作が見られるだろう?
[DVD(邦画)] 6点(2017-03-25 17:14:59)(良:1票)
269.  シェルブールの雨傘
噂には聞いてたけど、本当に最初から最後までセリフが歌になっているのが驚きだった。この見たこともない手法に最初はちょっと面食らってしまったが、30分もすれば慣れていた。ストーリーは本当にオーソドックスすぎるが、全編に流れるミシェル・ルグランの美しい旋律を聴いているだけでも満足。雪のガソリンスタンドでのラストシーンがちょっと切なかった。本当はこの映画の点数を8点にして、音楽評価を10点にしようかと思ってたが、音楽がこの映画の魅力の大半だと思うので、ちょっと甘いかもしれないが両方10点にしておこう。
[ビデオ(字幕)] 10点(2005-09-05 01:34:56)(良:1票)
270.  遊び
同じ増村保造監督のデビュー作「くちづけ」と同じような感じの青春映画。増村作品を以前に見たのはその「くちづけ」だったが、二本を比べるとこちらのほうが70年代前半という時代性もあってか、より内容が重く感じるが、これもなかなか良い映画だったと思うし、関根(高橋)恵子と大門正明が主人公を瑞々しく演じていてとても良かった。ただ、増村監督の作品としてはデビュー作の後にいきなり後期のこの作品を見たせいか、「くちづけ」にあった演出のテンポの良さがなかったのがちょっと残念。これが増村監督最後の大映映画らしいが、最初と最後が同じような青春映画なのは偶然だろうか。
[DVD(邦画)] 7点(2007-10-16 17:13:41)(良:1票)
271.  人間の條件 第一部 純愛篇
小林正樹監督が五味川純平の戦争文学を映画化した6部作、上映時間の合計が9時間半という超大作の第1部。本当にこれは日本映画なのかと思うくらいに日本人による中国人捕虜に対する迫害がリアルに描かれていてビックリ。捕虜たちに対し非道な扱いをする現場監督 岡崎役の小沢栄太郎や所長役の三島雅夫の演技も憎々しく、「シンドラーのリスト」ほどではないが、それに近いものを感じてとても重苦しく辛かった。でも、普通、日本の戦争映画ではまず取り上げないような日本人の負の歴史を目を背けずに真正面から堂々と描いているところは感心させられる。下にも書いておられる方がいらっしゃるが、この第1部だけでもじゅうぶんに見ごたえがあるし、傑作だと思う。あと5作、たぶん回が進むにつれて重苦しさが増して来るんだと思うけどぜひ最後の第6部まで見てみよう。
[DVD(邦画)] 8点(2008-05-27 14:29:23)(良:1票)
272.  GODZILLA ゴジラ(1998)
ゴジラだと思わなければそれなりに面白い。ところで公開当時、テレビでアメリカのゴジラファンの人たちに日本のゴジラとこのゴジラどっちがいいかインタビューしてて、ほとんどの人が日本のゴジラのほうがいいと答えていた。
[映画館(吹替)] 5点(2005-03-11 23:22:11)(良:1票)
273.  少年H 《ネタバレ》 
映画化に少し今更感があるが、90年代末期に話題になった妹尾河童の自伝的小説が原作。戦時中のカトリックの家族が描かれた映画ということで「この子を残して」のような堅苦しくてとっつきにくい映画かと思っていたが、そうでもなくすんなりと見れる無難な反戦映画という印象。戦争という激動の時代を一人の少年の目を通して分かりやすく描いており、降旗康男監督の演出もそつなく丁寧。肇の父(水谷豊)がやたら先見性のある人物に描かれていてやや不自然な気もするが、ひょっとしたら当時本当にこういう人がいてもおかしくはないと思える程度の描写で、お前は未来人かとツッコミを入れるほどの違和感は感じなかった。鬼教官だった男が戦後になって態度が豹変し、質屋になるというのも終戦直後のあの時代ならば普通のことだったのだろうと思わされる。ただ、演じているのがお笑い芸人の原田泰造なのでどうしてもコントっぽく見えてしまい、つい笑いそうになってしまった。この役にお笑い芸人は使わないほうが良かったのではないか。その他、戦争が終わったことで突然世の中が変わってしまったことに対する肇の怒りももう少し掘り下げて描くべきだったと思う。「火垂るの墓」を思い出すような神戸空襲のシーンで父親のミシンを運び出そうとするシーンは感動させようというのが見え見えで少々冷めてしまった。でも、その後の焼け野原と化した町に立った父親の無常感はよく表現できていたと思う。最近では世間的には「相棒」の杉下右京のイメージが強い水谷豊なのだが、あまり「相棒」を見たことがないせいか、ハマっている云々は別にして特定の先入観なくこの父親役を見れたのも良かった。リアル夫婦の夫婦役共演もさほど変な感じはない。ただ、映画として全体的に考えてみるとドラマとしての物足りなさや中途半端さを感じてしまうのも事実で、もう少し深みがほしかったところか。しかし、子供向けの教材戦争映画としてはこれくらいがちょうどいいのかもしれない。最後に、あまり好きな監督というわけではないのだが、本作が高倉健という相棒を失った降旗監督の遺作にならないことを願う。
[DVD(邦画)] 5点(2015-08-20 23:18:34)(良:1票)
274.  翔んで埼玉 《ネタバレ》 
かなり話題になった映画でちょっと気にもなっていたが、舞台になった地域以外の人は楽しめない云々の評価もあり、見るか否かを迷っていたが、実際見てみるとそこは気にすることなく、思っていた以上に楽しめた。最初から最後までテンションが高く、見ていて非常にバカバカしいのだが、大筋のつくりや出演している俳優たちの演技は総じて真面目であり、それが面白さにつながっているし、バカバカしさの中にも差別や偏見といった社会的なテーマも含んでいると感じる部分もあるように思う。それはともかく、いちばん盛り上がったのはやはり埼玉と千葉の川をはさんだにらみ合い。時代劇の合戦シーンを思わせる雰囲気になっているが、やっていることはそれぞれの出身有名人の写真を出し合うというバカバカしさでそのギャップが面白い。麗(ガクト)が草加せんべいの踏み絵をさせられるシーンも純粋にパロディとして面白く、つい笑ってしまう。ガクトが学生役というのは普通に考えたら違和感があるのだが、これだけぶっ飛んだ設定だからかまったく気にならずに見れたし、逆に見ているうちにだんだんとはまり役のように思えてくる。麗と生徒会長である男子生徒・百美の同性愛も描かれているのだが、百美を演じているのが二階堂ふみというのはさすがに同性愛として見るのは違和感があるのではと思っていたが、原作が昔再放送のアニメをよく見ていた「パタリロ!」と同じ人ということで、マライヒとバンコランを思い出したが、そのおかげかとくに違和感もなく見ることができた。描かれる話をラジオで聞いている狂言回しの家族(ブラザー・トム、麻生久美子、島崎遥香)のやりとりも面白く、またこのパートがあることによってこの話をこの家族と一緒に客観視できるつくりになっているが、この三人のなかでぱるる演じる娘が最後のほうまで結納に間に合うことだけを考えているのは製作側も映画で描かれる話がどうでもいいようなことだと分かっていたんだろうと思う。その家族の最後の会話を見ていて、自分自身にとって春日部、いや埼玉といえば「クレヨンしんちゃん」のイメージがあまりにも強いことに気づかされた。テレビドラマチックな映画で、とくに映画的な何かがあるわけではないが、最初にも書いたようにじゅうぶん楽しめたし、純粋に面白かったと思える映画だった。それからエンドロールのはなわの歌も映画の内容にストレートに合わせた曲になっていて、そこまできっちり楽しめる仕様なのも良い。なにか久しぶりに「映画はエンドロールまでが本編」というのを実感した気がする。
[DVD(邦画)] 7点(2020-08-29 23:54:29)(良:1票)
275.  南の島に雪が降る(1961) 《ネタバレ》 
加東大介が戦地での自らの体験をもとに書いた小説を自身の主演で映画化した作品。脚本や監督が「社長シリーズ」や「駅前シリーズ」の面々なこともあってか、さほど重くもならず、明るい雰囲気で見ることができた。伴淳三郎やフランキー堺、森繁久弥に渥美清まで出ていて彼ら一時代を築いた喜劇俳優たちの贅沢な共演も見どころで、ピアノを弾くフランキー堺はさすがにうまく、舞台上で子守唄をうたう森繁も実に良いが、伴淳が夜中に一人で練習に励む姿がとても印象的である。舞台の衣装や照明、背景の水車や桜を見て内地を思い出す兵隊たち、たぶん実際もこんな感じだったんだろうなあとつい思ってしまった。ラストも感動的。これだけ喜劇色の強い俳優たちを起用しながらただの喜劇に終わらず深く考えさせる映画になっているのは実話、しかも当事者が出ているからかもしれないが、当時の映画人たちの意気込みが感じられる。あまり知られてないみたいな映画だが、これは隠れた名作だと思う。95年にリメイク版が作られたらしいが、そちらはどうなのだろう。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2007-10-05 02:38:24)(良:1票)
276.  刑務所の中
崔洋一作品を初めて見た。刑務所の受刑者たちの生活を描いた起承転結のない物語だったが、飽きることなく最後まで面白く見られた。出される食事がものすごくうまそうだったのが印象的。
[ビデオ(邦画)] 7点(2005-04-12 23:49:25)(良:1票)
277.  金田一耕助の冒険 《ネタバレ》 
大林宣彦監督が初めて手がけた角川映画で、当時空前のブームを巻き起こしていた金田一耕助シリーズをはじめ、公開当時の時事ネタをこれでもかと言わんばかりに盛り込んだパロディー映画。当時をリアルタイムで知らなきゃつらい映画かと思ったが、ついていけない部分は確かにあるものの、古谷一行演じる金田一と田中邦衛演じる等々力警部のコミカルなやりとりや大林監督らしい遊び心あふれる映像は見ていて楽しいし、絶対見ていて呆れるだろうと思っていたパロディー部分も石膏の首を持った東千代之介が「柳生一族の陰謀」の錦之介のマネをしていたり、(やや芝居が真面目すぎる気もするが、同じ東映のスター俳優であった東千代之介がやっているというところが妙に笑える。)紙吹雪が舞う中で行われる「八甲田山」のしょーもないパロディー(元ネタと同じ木村大作が本作も撮影してる。)、麦藁帽子が飛んでいくシーンでかかる「人間の証明」の主題歌など自分がこの当時の映画をけっこう見てるからか面白く見ることが出来た。出演者もかなり豪華で、劇中劇のサイレント映画で金田一を演じる三船や、同じ劇中劇で等々力警部を演じる三橋達也(市川崑監督の金田一もので加藤武が演じる警部の真似をする姿が笑える。)、それに岡田茉莉子などよくこんな映画に出たなと思うような名優から、原作者である横溝正史やほかの作家、大林監督自ら演じる老人ホームの入所者や角川春樹はもちろんのこと、普段はスタッフとして映画に携わっている人まで出ているのはすごい。どう収集をつけるのかと思っていたらラストはちゃんと余韻を残す終わり方だったのは良かった。脚本を斎藤耕一監督が書いているのにはビックリするし、僕自身が古谷一行の金田一を見たのが本作が初めてなのもいいのかなと思ってしまうのだが、こういう映画は嫌いではない。
[DVD(邦画)] 7点(2010-03-09 14:03:05)(良:1票)
278.  無宿
アラン・ドロン主演の「冒険者たち」を焼き直した勝新太郎と高倉健の共演作で監督は勝新が「旅の重さ」に惚れ込んで抜擢したという斎藤耕一。「旅の重さ」が瑞々しい青春映画だったのでちょっと心配だったが、大物スターの共演作で感じがちな大味感や冗長さが感じられず、逆に「冒険者たち」にもひけをとらないなかなか完成度の高い作品になっていると思う。勝新と健さんは二人並ぶとなにか異様な迫力を感じてやっぱり二人とも存在感のあるいい俳優だと思ってしまうが、やはりこの監督は「旅の重さ」でも思ったけど、今回も海や砂浜の映像が美しく、風景描写のうまい監督だとあらためて感じた。ヒロイン役の梶芽衣子は本作で初めて見た。聞くところによると、アクション映画で主役を演じていたり、東映のヤクザ映画に何本か出てるみたいだけど、この映画ではそんな感じは全くなく、全編に渡ってどこか儚げな感じでラストのあのやりきれない悲しげな表情が印象的ですごく良かったと思う。これも「旅の重さ」で高橋洋子の瑞々しさを見事に引き出していた斎藤監督の腕だろう。映画の全体的な雰囲気も「旅の重さ」同様良かった。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-08-11 02:39:18)(良:1票)
279.  決算!忠臣蔵 《ネタバレ》 
東映の任侠映画をいろいろ見ていると実は忠臣蔵に近いものがあるのではと思えてくるのだが、本作に出て来る大石内蔵助(堤真一)をはじめとする赤穂浪士たちは関西弁で喋り、ガラも良くないというのが、いよいよ任侠映画を思わせていて、それが変にリアリティーを感じさせているし、時々抱いていた、美談としての忠臣蔵に対する違和感も赤穂浪士をこういうふうに描いていれば、それに対する答えも出ているように思う。中村義洋監督の映画としては「殿、利息でござる」と同様に歴史学者(今回も磯田道史原作かと思ってしまうところだが、違うのね。)が原作で、経済的な面から見た忠臣蔵が描かれているが「殿、利息でござる」同様に軍資金を現代のお金に換算して表現しているので分かりやすいし、面白く、だんだん減っていく残金をちゃんと計算機のような形で表示して見せてくれるのも良い。吉本興業メインの映画ということもあって、吉本芸人が大量に出演していて、笑いの部分がちょっと濃いかなあとは思うものの、それほど気になるということもなかった。勘定方 矢頭長介を演じる岡村がなかなか良い味を出していて、浪士たちを「無駄遣いするなよ」と咎めるところなどちゃんと見ている観客側の立場に立ったキャラになっているのも良かった。この長介が死ぬところが中盤の山場となっているが、公開時の宣伝では堤真一とW主演のように言われていたので、けっこう早くに出番が終わってしまったように感じたのが意外で、それが残念と言えば残念。忠臣蔵といえばクライマックスは討ち入りと決まっているのだが、本作はあくまで赤穂浪士の予算のやり繰りを描くということを徹底していて、討ち入りが予算内に収まるか否かの会議をクライマックスに据えていて、討ち入り場面はシミュレーションだけという形をとっており、それも本作らしいところだが、本作は忠臣蔵でありながら吉良上野介(およびその周辺)が一切登場しないという異色さになっていて、これがかなり新鮮に感じた。大石の妻であるりくを中村監督作品では常連の竹内結子が演じているのだが、山科の別れのシーンでりくが大石に言う最後のセリフが今となっては何だかさびしく感じてしまう。
[DVD(邦画)] 7点(2024-03-18 00:21:46)(良:1票)
280.  黒い画集 ある遭難 《ネタバレ》 
山岳遭難事故を題材に、その事故で三人のパーティーのうちたった一人死んだ山慣れしているのに今回の登山では最初から疲れ切っていた男(児玉清)の死の真相をめぐるミステリーとなっている。前半は三人が山に入り、遭難して、児玉清演じる男が転落死するまでを回想形式で丁寧に描いている。そしてそれを受けた後半の展開という構成。前半もゾクゾク緊張感があるのだが、再び遭難のあった山へ行く後半、主人公の伊藤久哉と真相に迫る土屋嘉男の二人きりになってからはもう目が離せなくなり、クライマックスの数分間の急展開は鳥肌もので、思わず見入ってしまった。この二人の死によって真相は結局闇に葬られ、すべては山だけが知っているというラストがなんとも切なく、いちばん最後の香川京子の独白がいつまでも耳に残りやりきれない気持ちにさせられる。そんな本作の監督は三人娘シリーズや社長シリーズで東宝プログラムピクチャーの喜劇の印象が強い杉江敏男監督というのが驚き。もともとサスペンス映画の監督を目指していたという杉江監督だが、本作ではその手腕も発揮され、喜劇とはまた違う一面やうまさが感じられる。石井輝男監督が担当した脚本も巧みで面白く、松本清張原作らしさもちゃんと出ていて、「網走番外地」シリーズや世間で言われているようなカルト映画だけではなく、こういうちゃんとした脚本も書けるというところに石井監督の職人としてのうまさを感じる。山岳遭難を題材にしているためか、見る前は「あるサラリーマンの証言」や「寒流」とは少し毛色の違う印象もあったが、結局根本には同じテーマがある映画で、やはりこれもじゅうぶんに面白かった。これで東宝の松本清張「黒い画集」シリーズはすべて見終わったことになるが、どれも人間の身勝手さや欲といった本質的なところを鋭くついた内容で3作とも水準が高い見ごたえのあるシリーズだったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2014-04-29 17:34:17)(良:1票)

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