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321.  ガメラ2  レギオン襲来
十数年前の初見以来、かなり久しぶりに見た。以前見た時は仙台の壊滅などに衝撃を受けながらも前作「ガメラ 大怪獣空中決戦」のインパクトが強すぎてこの2作目は全体としてはそれほど印象に残っていなかったが、今回改めて見てみると前作より面白かった。前作もかなりリアリティーを持った怪獣映画だったが、本作はそれ以上にリアリティーを感じさせており、自衛隊の描写も「機動警察パトレイバー2」で自衛隊のクーデター事件をリアルに描いていた伊藤和典が書いている上に全面協力のもとで撮影しているだけあって今まで見たどの怪獣映画よりもリアルさが際立っている。ただ、いささか自衛隊の広報のようになってしまった気もするが。後半の自衛隊とレギオンの攻防も自衛隊側に非現実的な描写がないのがいい。レギオンの生態解明に迫っていく部分が前作のギャオスのそれよりもさらに凝っていてよりミステリーとしての面白さがある。特撮部分も草体レギオンのシーンは「ウルトラQ」の「マンモスフラワー」を思わせていて印象的だし、小型レギオンの群れがガメラに吸い付くシーンもなかなかだと思う。レギオンの名前が聖書から取られているのは今にして思えば押井守監督の影響があるのかもしれないなあ。何はともあれ、プレッシャーもあったであろう中で前作に負けないほどの完成度の高い怪獣映画を作り上げた金子修介監督、樋口真嗣特技監督以下スタッフの力量にはおどろかされる。(この勢いが三作目まで持続しなかったのは少々残念だが。)最後に出演者について少し。渡良瀬を演じる永島敏行は「異人たちとの夏」や「地震列島」に続いて今回もレギオンに襲われる吹越満とラサール石井を助けに現れ、もうこういうのが個人的にイメージとして出来つつある。(まあ今回は自衛隊のメンバーということもあるんだけど。)川津祐介は若い頃より年を取ってからのほうが好きだな。そしてワンシーン出てくる小林昭二。「ウルトラマン」や「仮面ライダー」などで特撮ファンにはお馴染みの俳優(1976年の「犬神家の一族」以降の市川崑監督作品の常連でもある。)で、幼い頃からとても好きな俳優なのだが、特撮作品ではこれが遺作なのかと思うとなんだか切なくなってくる。(2010年4月17日更新。)
[CS・衛星(邦画)] 9点(2006-06-03 13:49:33)(良:1票)
322.  太平洋の翼 《ネタバレ》 
先週に続いて見た松林宗恵監督の戦争映画。潜水艦を題材にした「潜水艦イー57降伏せず」に対して本作では新鋭戦闘機を有する松山の飛行隊が舞台となっている。もちろん飛行機に思い入れの強い円谷英二監督の特撮による空中戦も見どころのひとつなのだが、特攻に異を唱える三船の姿や命令を無視して戦艦大和の護衛に向かう夏木陽介ら4人の姿に松林監督の思いが感じられて、ドラマとしての見ごたえも充分ある映画になっている。それでいて全体的に重い雰囲気の中で佐藤允演じる隊長と渥美清演じる彼の部下とのやりとりはどこかコミカルで微笑ましく、松林監督が喜劇も得意としているのがよく分かるし、何よりこの渥美清の演技が素晴らしく、彼の持ち味や魅力といったものがよく出ていて改めて良い俳優だなあと感じさせてくれるのは嬉しい。それに三船との絡みを見ているとつい「男はつらいよ 知床慕情」を思い浮かべてしまう。(あれが最初で最後の共演じゃなかったんだ。)全体を通して見ると戦争の愚かさや空しさといったものをストレートに描いた傑作だと思う。しかし、やっぱり加山雄三と星由里子のシーンはこの当時セットで売ってた関係上仕方ないにしても少しムリヤリ感があるのがちょっと残念。池部良が潜水艦の艦長を演じているのは「潜水艦イー57降伏せず」を見た直後だけにデジャブな感じがした。
[DVD(邦画)] 7点(2009-09-09 18:22:01)(良:1票)
323.  超高速!参勤交代 《ネタバレ》 
参勤交代から帰ったばかりの小さな藩が、その直後に再び5日以内の参勤交代を命じられ、ないないづくしの中、知恵を駆使してそれを切り抜けるという昔からよくあるような娯楽時代劇。タイトルのインパクトに駆られて見たのだが、けっこう楽しめた。主演の佐々木蔵之介演じる殿様や西村雅彦演じる家老もコミカルにいい味を出しているし、伏線の回収の仕方も違和感がなく、よく出来ている。今まで竹光のために刺客に襲われても満足に戦えなかった一行がクライマックスでは真剣を持って戦うというカタルシスもありがちかもしれないが、時代劇として心地の良い展開で、見ていて気持ちがよく、全体的に予定調和な映画かもしれないが、逆にそこがよく、安心して見ていられる。ラストシーンもすっきり晴れ晴れとしていて、さわやかな気持ちで見終われるのもいい。ただ、少し難点をあげれば本筋としてはシリアスな部分も多く、それはいいのだが、本木克英監督はどちらかといえば喜劇映画の監督というイメージが強いだけにもう少しコメディーにてっしていても良かった気はするし、いちいち回想シーンを入れてくるのも少し気になった。深田恭子が女郎を演じているというのもちょっと違う気がする。でも、気軽に楽しめて安心して人に薦められる時代劇映画で、好きな作風の映画だった。もっとこういう時代劇は作られてほしいと思う。
[DVD(邦画)] 6点(2015-04-23 23:44:08)(良:1票)
324.  Wの悲劇 《ネタバレ》 
原作は推理モノらしい(未読)のだが、本作は原作のストーリーを主人公・三田静香が研究生として所属する劇団の舞台劇として表現し、メインストーリーは研究生の静香が女優へと成長していく青春ドラマとなっているというのが非常に大胆。静香の年齢を当時の薬師丸ひろ子本人と同じ二十歳に設定することによって役柄と実際に演じる女優をダブらせているのが見事で、薬師丸ひろ子のアイドル時代の出演作は何本か見ているが、本作で三田静香を演じる薬師丸ひろ子はそれらとは違う印象を残していて、とくにラストシーンの静香からはもう映画の役柄とかは無関係に、これからはアイドルとしてではなく、本格的な女優としてやっていこうという薬師丸ひろ子本人の決意のようなものが感じられて、映画と現実をシンクロさせたようなこの配役は成功していると思うし、このラストシーン自体も素晴らしい。本作は紛れもない薬師丸ひろ子の代表作といえるだろう。(以前、何かのインタビューで薬師丸ひろ子が自身の出演作で忘れられない作品として「セーラー服と機関銃」とともに本作を挙げていたが、本作で静香を演じている間はそうとう苦しかったのではないかと思う。)劇中劇として登場する舞台「Wの悲劇」は、劇中にも本人がモデルと思しき演出家役で登場する蜷川幸雄が監修した本格的なもので、劇中劇という扱いなのが勿体ないと感じるほど作り込まれていて、つい最初から最後までこの舞台を見ていたいと思ってしまうほど。(この舞台で刑事役を演じている三田村邦彦演じる五代を見て「危険な女たち」を思い出してしまった。)舞台のストーリー展開と演じる側のドラマが二重構造になっている点も凝っていて、ドラマとしても見ごたえがあるものになっている。そして忘れてはならないのが自分のスキャンダルの身代わりになる代償として舞台の主役を菊池かおり(高木美保)から静香に交代させる大女優・羽鳥翔役の三田佳子の悪女ぶりもすごくハマっていて、苦手な女優なのだが、静香に話を持ちかける長回しのシーンなどはこの人が演じるからこそ出せる迫力というのが確かにあって、印象に残る名シーンとなっている。本作は先ほど書いた薬師丸ひろ子の代表作であると同時に三田佳子の代表作でもあると思う。とはいえ今見ると、「私生活と舞台となんの関係があるの?」という翔のセリフはこの映画の数十年後に次男が逮捕され、それがスキャンダル化して干された三田佳子本人の本音のような気がしてしまう。劇中劇の舞台をもっと見ていたかったのと、後半が少し駆け足気味に感じたのでもっと上映時間が長くても良かったのではと思ったので少し低めの点数にするが、映画としてはじゅうぶんに面白く、今まで見た角川アイドル映画の中でも傑作のひとつと言える映画だと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2015-07-18 17:20:30)(良:1票)
325.  血と骨 《ネタバレ》 
崔洋一監督が「御法度」で俳優として共演したたけしを主演に起用して手掛けた映画。大阪へ渡ってきたたけし演じる在日朝鮮人の男の一代記を描いているが、とにかくこの男 金俊平の横暴で狂暴なキャラが終始際立っていて、演出やストーリー云々言う前にこのパワフルな主人公の存在に圧倒されっぱなしの2時間半で最後まで目が離せなかった。たけしは自身の監督作以外では久しぶりの主演だったそうだが、まさしくこの役はたけししか考えられないと思うほどにハマっていて、たけしなしにはこの映画は成り立たなかったのではと思う。ただ、やはり全体としては長い原作(未読)をがんばって映画にまとめているといった印象で、重厚で見ごたえある内容にも関わらずダイジェスト感が強くなってしまっているのは仕方がないと分かっていてもちょっと残念。とはいえ、連作でこの物語を見たいかと言われてもなにか微妙な感じ。絶対に感情移入できないような主人公なのだが、彼に振り回されるほかの登場人物たちには思わず同情に近い感情を抱いた。とくに、父親である俊平の暴行から逃れるために結婚し、その夫からも暴行を受け、自殺してしまう花子(田畑智子)が哀れすぎる。その通夜にふらりと現れた俊平が娘を出せと暴れるシーンは唯一、この映画の中で主人公の子供に対する愛情を感じさせていて良かった。(ちょっと笑ってしまったシーンでもあるけど。)ほかの出演者に目をやるとのちに「アウトレイジ」シリーズに出演する國村準や塩見三省が出演しているのが今になって見るとなんだかにやにやしてしまった。
[DVD(邦画)] 6点(2017-08-15 17:44:51)(良:1票)
326.  二十四の瞳(1954) 《ネタバレ》 
木下恵介監督の代名詞的な映画で、日本映画としても名作の一本として数えられている本作。11年前に田中裕子主演のリメイク版を見た時に「いい話だけどなんか古臭くてイマイチだなあ。」と思ったこともあって、なかなか手が出なかったが、今回やっと見た。なんだろうなあ、リメイク版では特になんとも思わなかった小豆島の風景やそこに暮らしている人々の営みがとても叙情豊かに綴られ、もうそこで引き込まれてしまった。そして、高峰秀子演じる大石先生が自転車に乗って颯爽と登場するシーンも最初から何やら暗い表情だった田中裕子の大石先生とは違って明るくはきはきとしている。この冒頭部分でもはやリメイク版との差がはっきりとしている。リメイク版と比べるとゆったりとした流れではあるが、その分、大石先生と十二人の子供たちとの絆がより強調されていて、だからこそ後半の戦争に駆り出されていく男子五人を見送り、病気で臥せっているコトエを見舞う大石先生の姿に感情移入することが出来るし、後半の大石先生はことあるごとに泣いているが、こちらも思わず「何もしてあげられないけど、一緒に泣いてあげる。」と劇中の大石先生の言葉をそのまま大石先生に返したくなるほど泣けた。劇中音楽を唱歌で統一したこともこの物語の感動をより深くしており、「仰げば尊し」や「浜辺の歌」など聴いているだけで涙が出てくる。一年生の時に浜辺で撮った写真も出てくるたびに切なくなり、ラストの同窓会のシーンで戦争で失明したソンキ(岡田磯吉=田村高廣)が写真を指で追いながら誰がどこに写っているかを挙げていくシーンでもうこの写真の中の二十四の瞳はもう全員揃わないんだと思うと泣けて泣けて仕方ない。戦争さえなければ、時代が違えば、この同窓会にはもちろん全員が出席でき、大石先生も夫や娘を亡くすことはなかったろうにと思うと凄く切ない。木下監督はここに戦争の儚さ、虚しさといったメッセージを込めているのがひしひしと伝わってきて、これが反戦映画と言われている理由もよく分かる。そしてまさにこの映画は普遍的なメッセージ性を持ったいつまでも語り継がれていくべき不朽の名作と呼ぶに相応しい映画だと思う。最後にもうちょっとだけ言わせてもらえれば、これを見てしまうと田中裕子版がいかにもつまらない映画のように思えてしまう。(好きな方、ごめんなさい。)大石先生は高峰秀子、高峰秀子、高峰秀子、誰がなんと言おうと高峰秀子以外に考えられない。
[DVD(邦画)] 10点(2010-05-06 15:05:41)(良:1票)
327.  人生劇場 飛車角 《ネタバレ》 
以前に永島敏行主演の同じ原作の映画は見ているが、やはり飛車角を主人公にしている本作のほうが面白いし、東映がその後、任侠映画で一世を風靡することになるその原点の映画であることにも感慨深さを感じる。沢島忠監督は錦之助や美空ひばり主演の明るい時代劇の印象が強いので、見る前はどうかなと思う部分もあったが、こういう題材でもそつなくこなしていて安心して見ていられる。本作から既にのちのパターンは出来上がっている感じだが、東映最初の任侠映画であることもあってか、まだその色は全面には出ず、どちらかと言えば文芸メロドラマのような感じ(沢島監督もメロドラマのつもりでやっていたと語っている。)で、東映任侠映画を見慣れていると、物足りなさも多少あるかもしれないが、その分、見やすさもあり、また格調の高い作品に仕上がっている。飛車角を演じる鶴田浩二はもちろんカッコイイのだが、月形龍之助演じる吉良常がそれを上回る存在感を放っており、カッコよさも飛車角以上で、この前見た「組織暴力」での悪役も印象的だったが、一線を退いた老客という設定が晩年の月形龍之助本人と被るところもあるのか、この映画の吉良常に月形龍之助というのはピッタリな気がした。宮川(高倉健)がおとよ(佐久間良子)に無理やり抱き着くシーンでは宮川を演じるのが、まだ本格的にブレイクする前の高倉健というので、その後の高倉健のイメージからすると少し違和感を感じてしまうのは仕方のないところ。その宮川が単身殴り込んで殺されるという展開だが、高倉健が任侠映画でこういう役回りなのは逆に新鮮だった。で、この映画の一番の見どころは既に書かれている方もおられる通り、ラストシーン、思わず、ええ、ここで終わり・・・と思ってしまったが、止めるおとよを振り切って宮川の仇討に向かう飛車角をラストシーンにすることで、余韻がすごく残るし、沢島監督の言葉どおりに、ああ、なるほど、これはメロドラマだなと改めて感じることができる。一応、続編も見るつもりだが、あまりに素晴らしいラストだっただけに、果たしてどうか。いずれにせよ本作はこれから始まる東映の新しい時代の到来を告げるのにふさわしい傑作と言える一本だったことは間違いない。
[DVD(邦画)] 7点(2019-06-28 00:54:22)(良:1票)
328.  雨月物語
僕も初めて見た溝口作品はコレ。それまで黒澤狂いで、邦画の最高傑作といえば「七人の侍」だと信じて疑わなかったからこの映画の凄さには衝撃を受けた。ラストの田中絹代のナレーションによる独白が悲しくて印象的。この映画を見て昔の日本映画を黒澤作品意外にももっと見てみようと思った。
[ビデオ(邦画)] 10点(2005-08-02 22:37:26)(良:1票)
329.  M:I-2
シリーズ第2作。1作目を見てから一週間としないうちの再見だったが、続けて見るとやはり監督が違えば同じシリーズでもこうも違うのかという感想になってしまう。ブライアン・デ・パルマ監督だった前作はサスペンスメインの構成だったのだが、ジョン・ウー監督の今回は(特に後半が)アクションメインの構成で、鳩を使った演出や二丁拳銃などウー監督らしいアクションシーンが満載で、それはそれで楽しいのだが、前作に比べると007に近い作風になり、本格的なスパイ映画というよりは普通にトム・クルーズ扮するイーサン・ハントが大活躍するアクション・スペクタクル映画という感じで、前作のようなスパイ映画としてのハラハラドキドキ感がなくなってしまっているように思う。前作はそうでもなかったが、今回はほぼ100%彼のための映画という感じで、前作のほうが話は面白かった。でも、アクションに関してはウー監督らしさはじゅうぶんに堪能できる映画となっている。(2012年11月4日更新)
[CS・衛星(字幕)] 5点(2005-05-13 23:51:19)(良:1票)
330.  戦艦大和 《ネタバレ》 
「男たちの大和」などで参考文献としてクレジットされている吉田満の「戦艦大和ノ最期」を映画化した新東宝の映画。戦後八年という時期に製作されていて、大和を扱った映画としてはおそらくこれが最初の作品になるのだろう。実際に大和の副長だった人物が関わっていて、それだけで重みを感じるし、艦内の様子や雰囲気などもリアルに再現できているのではと想像できる。前半は出撃前の乗組員たちの人間模様を描いた群像劇になっているが、やはりそれも大和を扱った後年のほかの作品では意外とあまり見ないような感じで、少し違う印象を残している。それぞれのエピソードを深く掘り下げているわけではないのだが、やはり胸に迫るものがある。とくに、アメリカ出身の乗組員がいたことには驚かされた。彼の境遇を考えるとなにかやりきれない気持ちになってしまうのだが、彼にかけられる「たまたま生まれた場所がそうだっただけ」という言葉に救いを感じる。出航シーンなどの乗組員たちの落ち着いてどこか達観したような様子も実際はこうだったのかもと思えるもので、かえってリアルだ。大和のセットなどは明らかに書割と分かる部分もあって、今から見るとしょぼいの一言なのだが、後半の沈没に至るまでの特撮はけっこうがんばっているように感じた。この後半では、前半で乗組員たちの人間模様をたっぷりと見ていたおかげで、彼ら(とくに学徒兵を中心に。)がいかに死んでいったかが丹念に描写されている分、やはり悲壮感を感じずにはいられない。全体としてはドキュメンタリータッチの印象が強いものの、やはり、ドラマとしてよく出来ているからこそこの後半の壮絶さが活きているのだと感じることができる。製作当時(同時期には「原爆の子」なども作られていた。)は、大和の資料も少なかったと聞くが、その中で作られた本作はそれだけで意味がある作品だと思うし、やはり、原作者である吉田満(実際に大和に乗っていた人で、本作に登場する吉村少尉のモデル。)はじめ、本作に関わった全員に大和の悲劇を後世に伝えようという気持ちがあったことがひしひしと伝わってくる。今から見れば地味な映画かもしれないが、やはり、歴史的に考えると貴重な一本だ。
[DVD(邦画)] 7点(2019-11-23 17:58:29)(良:1票)
331.  日本一のゴマすり男 《ネタバレ》 
シリーズ第3作。植木等主演の日本一の男シリーズの中でも前々から見たいと思っていた映画だったのだが、ようやく見る事ができた。とはいえ、このシリーズ自体をかなり久しぶりに見たので果たして楽しめるかというのにちょっと不安もあったのだが、その思いは冒頭すぐのバスから降りた植木等演じる主人公である中等が軽快に歌いながら笑顔で元気に走っている姿を見て吹き飛んだ。この出だしのシーンを見るだけでこちらも元気になれるし、前向きな気持ちになることができる。今回はゴマすりを武器に主人公が出世していくが、とにかく相手をおだてておだてて褒めまくる。これが普通ならやな奴と映ってしまってもおかしくないところを、植木等だとそうは感じさせない不思議な魅力があり、こんな生き方が実際にできたらいいなとつい考えながら見てしまう自分がいる。古澤憲吾監督の演出にも相変わらずで、このシリーズの底抜けなパワーは植木等のポジティブな魅力に加え、古澤監督独特の勢いのある演出によって生み出されるものでもあると感じることができ、その意味では古澤監督と植木等はまさに名コンビだと思わずにはいられない。(クレージー映画では坪島孝監督の作品ももちろん好きだ。)クレージーキャッツの面々も何人か出ているのだが、ハナ肇が出ていなかったり、谷啓がラストだけの登場(ノンクレジット)だったりして、このあたりからこのシリーズは植木等の単独主演作という方向を確立し始めた感もある。主人公にバイトとして雇われた学生の中に加藤茶がいて、さすがに若く、セリフもあり、けっこう目立っているので印象に残った。舞台となるのが自動車会社で、実際にヤナセが協力していることもあり、登場する外車もどれもカッコよく、その方面でもじゅうぶんに楽しめる映画になっている。
[DVD(邦画)] 8点(2022-02-06 17:49:11)(良:1票)
332.  男はつらいよ お帰り 寅さん 《ネタバレ》 
「男はつらいよ」シリーズの50周年の50作目。山田洋次監督の映画は「幸福の黄色いハンカチ」を初めて見た時から好きで、もちろんこのシリーズも好きなのだが、シリーズ全作を通しては一回通りしか見ていなかったので、ちょっと今まで見るのを迷っていたが、ようやく見た。満男(吉岡秀隆)と泉(後藤久美子)の再会物語に回想としてシリーズこれまでの名シーンを絡めた同窓会的な作品という感じだが、ツギハギ感を感じることなく見れたのは良かったし、過去作の名シーンだけではなく、とらや(くるまや)の周辺やさくら(倍賞千恵子)をはじめとしたレギュラー陣も雰囲気はそのままなので新しく撮影された部分も懐かしく感じて実家に戻ってきたような安心感を持って見ることができた。さくらはどことなくおばちゃん(三崎千恵子)を思わせる風貌になっているように感じたのには驚いたが、やっぱりいちばん懐かしかったのはあけみ(美保純)が登場したことだった。とはいえ、満男と泉の部分だけ見ると何か薄みで付け足し感があり、合間のおまけのように見えてしまうし、ゴクミの風貌や喋り方がすっかり外国人のようになっていて、回想シーンで登場するときとの落差が激しい。それに、満男が作家になっているという設定はたぶん「三丁目の夕日」シリーズの影響なんだろうなぁとつい思ってしまう。それでもラストの走馬灯のように出てくる歴代マドンナの映像にやっぱり感慨深いものがあり、最後まで見て本作は山田監督が渥美清が亡くなって突然終わったこのシリーズをちゃんと完結させておきたくて作った映画なのだと素直に感じることができた。本作は結局いちばんそれに尽きる映画で、そしてそれはじゅうぶんに果たされていると思う。少し甘めに7点を。
[DVD(邦画)] 7点(2022-07-10 18:54:18)(良:1票)
333.  昭和残侠伝 血染の唐獅子 《ネタバレ》 
東映のヤクザ映画ってガラが悪い印象が強くてほとんど見ていないのだが、池部良の訃報を聞き、思い切って本作を見た。東映のヤクザ映画に抵抗があるため、合わなかったらどうしようかと不安のほうが大きかったわけだが、とにかく、主演の高倉健と池部良がかっこよく、なんて粋なんだろうと思った。主演の二人だけでなく、周りの脇役たちも実にイキイキとしていてマキノ雅弘監督らしいにぎやかな映画となっていて面白かった。高倉健演じる花田秀次郎のところへ波紋にされた池部良演じる風間重吉が現れ殴り込みの助っ人を願い出るシーンなどは熱い男の友情を感じさせていて感動的だし、山城新伍が惚れた女のために纏を質に入れてしまうエピソードなど人間ドラマとしても見ごたえ充分。特に殴り込みの前にある高倉健と藤純子のシーンは、藤純子演じる文代の悲しみがストレートに伝わってきて彼女に思わず感情移入してしまう。そしていよいよ殴り込み。このシーンの高倉健と池部良のなんとカッコイイこと。とくに池部良は東宝の「雪国」、「青い山脈」などの文芸作品、あるいは「潜水艦イー57降伏せず」といった戦争映画での演技が印象に残っているのだが、ヤクザ映画でここまで粋な役を演じているのを見ると新鮮に感じるし、ああ、いい役者だなあと改めて思う。ラストの見事な余韻の残し方もマキノ監督らしく、繰り返しになるが本当に粋という言葉がよく似合う傑作映画だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2010-10-21 18:10:29)(良:1票)
334.  黒い画集 第二話 寒流 《ネタバレ》 
松本清張の連作「黒い画集」シリーズを東宝が同じく連作ものとして映画化したうちの一本。このシリーズを見るのは堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」に続いて二本目だったのだが、鈴木英夫監督による本作も非常に面白かった。ストーリーは不倫関係に陥った銀行支店長(池部良)と得意先の女将(新珠三千代)に、女将に横恋慕した常務(平田昭彦)が絡んでくるというものだが、この三人の色と欲にまみれたドロドロの人間模様が実にうまく描かれていて見ごたえがあるのはもちろん、金や地位と言ったものを前にした人間の醜さがこれでもかと言わんばかりにリアルに描かれているところが本作の凄いところで、人物描写も見事。展開が二転三転する脚本もうまく、飽きさせない構成も良かった。ラストがバッドエンドなのもリアルで、社会派映画として銀行の暗部をもしっかりと描いていて単なる娯楽作にしていないところに本作の肝があるような気がする。主人公を演じる池部良は不倫に走ったばっかりに社会の寒流に飲み込まれるという役柄を演じていて、「青い山脈」などで見せる爽やかなイメージとは少し違う印象もあるが、なかなかのハマリ役だった。そんな主人公と一度は結婚をしたいと言いながら後に本心をむき出しにしてあっさりと主人公を捨ててしまう女を演じる新珠三千代。「人間の条件」の美千子のような献身的な役柄もハマる人だが、こういう二面性のある役をやらせてもピッタリとハマるところがこの女優の魅力だと思う。そして、平田昭彦扮する常務のいやらしいこと。この俳優は怪獣映画などで子供のころから見ているが、ここまでいやらしい悪役を見るのは初めてかもしれない。そんなキャスト陣の演技もさることながら、やはり本作を見ていちばん感じるのは人間というもののだらしなさと怖さが痛いほど伝わってくる映画であること。事件らしい事件は描かれず、人死にもないのにここがしっかりと描かれていることによって、サスペンスとしての面白さがじゅうぶんにあるだけでなく、人間ドラマとしても一級のものになっていて、まさに傑作と言える、自信を持って他人に薦めることのできる映画だ。 本当に見て良かったと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2014-04-24 23:41:46)(良:1票)
335.  陸軍 《ネタバレ》 
田中絹代演じる母親が出征していく兵隊の列にいる息子をいつまでも見送るラストシーンが有名な木下恵介監督による戦意高揚映画。このラストシーンだけは何回も見ていた(ここだけ見ても泣ける。)のだが、最初から最後までちゃんと見たのは今回が初めて。戦意高揚映画ということもあり、ラストシーンだけが浮いていないかと心配だったのだが、そんなことはなく、戦意高揚映画でありながら、それを保ちつつも木下監督らしさはちゃんと出ていて、親子の情や、人間としての在り方がちゃんと描かれた映画になっている。高木(笠智衆)と桜木(東野英治郎)は事あるごとに喧嘩をしているが、互いの息子は戦友同士、だから父親同士ももっと仲良くしてほしいと高木の息子が訴え、その思いに応えようとする高木。このシーンは考えさせられるものがあるし、互いを思いやる心の大切さも感じることができる。高木と桜木の二度目の喧嘩のシーンで「日本は負けるかもしれない。」みたいなセリフがあり、(これが喧嘩の原因となる。)驚かされるのだが、おそらく、木下監督の本音であり、当時、日本の国民の中にもそういう人が少なからずいたのではないかと思えてくる。息子が戦地へ旅立った桜木がその安否を何度も何度も仁科大尉(上原謙)に尋ねるシーンも、建前上は天皇陛下に差し出した子だが、本音は息子のことが心配でたまらないという桜木の父親としての気持ちがストレートに出ていて、桜木に感情移入しないわけにはいかない。声高らかに反戦をうたってはもちろんいないが、ここにも木下監督の戦争に対する憎しみ、怒りといったものが、静かに、しかし、確実に感じられる名シーンとなっていて、ラストシーンとともに忘れることができない。そしてそれは、息子を戦地へ送り出す高木の妻 わか(田中絹代)とて同じことで、戦地へ行くことになった息子を喜んではいても、いざその日が来るとつらいから見送りには行かないという母。このあたりはこの母の葛藤がよく分かって非常に切ない。しかし、ラッパの音が聞こえると居ても立ってもいられず飛び出していくのはやはり人間としての母親の息子に対する愛や情の深さ、これをじゅうぶんに感じるし、群衆の中をかき分けて息子を追う母親の姿は、子を思う母親の気持ちがその表情を見ただけで痛いほど伝わってきて、やっぱりすごく感動させられるし、最後に手を合わせて息子の無事を祈る母親の姿を見て、こちらまでもが息子に無事に帰ってきてほしいと思えてくるのである。先ほども書いたが時局柄反戦をうたうことはできない。しかし声に出さなくても、戦争の愚かさ、悲しさを見事に訴えている。まぎれもない木下監督の代表作で、日本映画の名作の一本と言える映画だろう。
[DVD(邦画)] 8点(2016-09-04 00:45:27)(良:1票)
336.  みな殺しの霊歌 《ネタバレ》 
東映で活躍していた加藤泰監督が松竹でてがけたサスペンス。主演が東宝の佐藤允で演じるのが連続殺人犯というのもあまり松竹っぽくないが、実際、殺人事件のシーンではかなりショッキングに描かれており、モノクロ画面も手伝ってリアルに感じる。ただ、五人の女たちを次々と殺していく男の動機がラストに明かされるが、陰惨な連続殺人事件の動機としてはちょっと弱さを感じる部分もある、しかし、それ以上に見ごたえがあるのが、互いに過去に人を殺めたことがある男女、佐藤允演じる主人公・川島と彼が偶然立ち寄った食堂で働いていた倍賞千恵子演じる春子の重々しいドラマだ。この二人の哀しみがとてもよく描けていて加藤監督がこの映画で描きたかったものは連続殺人事件の凄惨さではなく、やはりこの二人の人間ドラマだったのではないか。ただ、90分の間に少し詰め込みすぎたような印象もあり、そこはちょっと残念。倍賞千恵子は「霧の旗」でもさくらとイメージの全く異なる悪女役を演じていて幅の広さを感じたが、本作でも哀しい過去を持つヒロインを演じていて、この映画の翌年に始まる「男はつらいよ」シリーズで世間一般にさくらのイメージが浸透してしまったのはもったいなかったのではないかと感じる。しかし、やはりさくらのイメージが強いからか今になって見るとヤクザな実の兄を殺して現在執行猶予中という設定に違和感を感じるのも事実だ。暗く重い映画だが、山田洋次監督が構成で参加しているためかどうかはわからないが、のちに「男はつらいよ」シリーズのレギュラーとなる面々も何人か登場しており、痔もちの年輩刑事を演じる松村達雄もくすっとくるが、クリーニング屋のおやじを演じる太宰久雄はどこから見てもタコ社長にしか見えず登場するだけで笑える。
[DVD(邦画)] 7点(2012-08-02 19:07:53)(良:1票)
337.  虹をつかむ男(1996)
渥美清の死去により、「男はつらいよ」シリーズが突然打ち切られ、急遽代わりに作られた映画。主演はこの年も作られるはずだった新作「寅次郎花遍路」に出演予定だった西田敏行、ヒロイン役も同作でマドンナを演じる予定だった田中裕子。そのほかのキャスティングもかなり寅さんと被る。倍賞千恵子、前田吟、吉岡秀隆の三人に至ってはこの映画でも親子役であり、製作決定から公開まで日がなかったことをうかがわせる。肝心の出来はというと、やはり急いで作られたが故にあまりよくない。が、ラストはちょっと感動した。しかしこういうのを見ると、巨匠と呼ばれながらも「男はつらいよ」という国民的映画シリーズを30年近くにわたって作り続け、それが終焉を迎えた後もこうやってお仕着せのプログラム・ピクチャーを作らされる山田監督がちょっと哀れに思えてくるのだ。
[地上波(邦画)] 5点(2005-05-11 23:34:12)(良:1票)
338.  肉弾(1968)
今まで見た日本の戦争映画でいちばん感動した作品。暗いストーリーでありながら、ところどころに笑えるシーンもあり、見終わってもあまり気が沈むようなことはなかった。つぶやくような仲代達矢のナレーションも印象的だった。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2005-05-28 16:29:17)(良:1票)
339.  ハウス/HOUSE(1977)
山口百恵主演の「泥だらけの純情」の同時上映作品として公開された大林宣彦監督のデビュー作で中学生の原案をもとに作られたB級ホラー映画。普通、映画監督のデビュー作というのはまだ作風や映像のスタイルなど何も確立していない場合が多いと思うのだが、デビュー作とは思えないような異様に凝った映像や少女たちを主役にしているなど、既にこの頃から大林監督独特の世界観が確立されちゃってる感じがしてとても楽しい映画だった。主人公の家の表札が「木枯」(父親を演じているのは笹沢左保。)だったり、監督一家がチラリと出ていたり、無声映画風のシーンがあったり、ラーメン屋に寅さんがいたり(松竹に許可はたぶんとってあるんだろなあ。)と遊び心も満載。
[DVD(邦画)] 9点(2007-10-22 02:41:30)(良:1票)
340.  忍ぶ川
話そのものは今から見るとどうってことはない少し暗めのラブストーリーなのだが、全体的に白黒であることを生かした美しい映像が印象的だった。熊井啓監督は撮影時、体調がすごく悪かったと聞いていたが、それでも(傑作かどうかは別として)それを感じさせないとても完成度が高い作品になっているのはちょっと驚かされる。ヒロイン役栗原小巻がとても美しく、今までも「男はつらいよ」シリーズのマドンナ役とか見てるけどここまでとは思わなかったし、見ていて可愛らしく思える。相手役の加藤剛は実は「砂の器」しか見たことなかったのだが、ここでも暗い過去を持つ役柄を演じていて和賀英良と少しダブって見える。(劇中、彼が演じる哲郎の口から「宿命」という言葉が出て、やっぱり意識した配役なのかと思ったら、「砂の器」よりも前の作品だった。)そんな二人が初夜を迎えるクライマックスは卒倒しそうなくらいにドキドキしてしまった。このシーンをめぐって吉永小百合が降板したエピソードは有名だが、原作小説が出た60年代の初めにも映画化が企画され、監督には川島雄三が予定されていたんだとか。洲崎橋でのシーンや哲郎の実家が青森という設定なのを見ると、ぜひとも川島監督で見たかったという気持ちになり、個人的には川島監督で実現しなかったことがとても残念に思えてならない。
[DVD(邦画)] 7点(2008-04-15 23:58:08)(良:1票)

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