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ザ・チャンバラさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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621.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
前半は本当にすばらしかった。ビグザムを思わせるトライポッド登場のシーンはすごすぎて爪先がつりそうになりましたよ。「激突」より、スピ演出の真骨頂は目線をまったくぶらさないことにありますが、その集大成とも言える名場面。「マイノリティ・リポート」前半の追跡劇といい、流れをもったアクション演出においてスピに勝てる監督はいないでしょう。そのぶん、スポットでの破壊力に欠けるのがスピの弱点。思えばスピルバーグ、彼は娯楽映画の王者とされながらも、今まで大量破壊映画を撮ったことがないんですよね。正直、私はそんなスピにスペクタクル描写ができるのだろうかという不安があったのですが、その不安は的中してしまいました。この映画には、「宇宙戦争」に当然期待される荒唐無稽なまでにとんでもないシーンってのがないんですよ。「ロストワールド」でも、せっかくT-REXをサンディエゴに上陸させながら、都市で暴れ回らせず郊外を散歩させるだけだったスピ。意図的にやってるのかと思うほど、彼はここぞというスペクタクルシーンを見せてくれません。軍隊総攻撃など、全然描写が足りませんでしたよ。軍隊がめっためたにやられるシーンまできちんとあれば、もっと絶望感が出たと思うんですけどね。一方で地下室の場面とかはムダに長すぎ。ティム・ロビンスの役が必要だったとはどうしても思えないし。ノコノコと宇宙人が出てくる必要もありませんでしたね。「ブーン」ってお時間のチャイムが鳴ると、すごすごとトライポッドへ帰っていく宇宙人さん達。観光に来たんですか?問題のクライマックスもカタルシスなさすぎ。ウィルスで弱った宇宙人を10人程度の兵隊さんがバズーカで攻撃。「うちの町でもトライポッドを倒したんですよ」みたいな終わり方では、ねぇ。やっぱり、形勢逆転に乗じてこれでもかってくらいの地球側の大反撃が見られれば、お腹いっぱいにはなれたでしょうに。こうして考えると、「インデペンデンス・デイ」とかぶることを極端に避けてるような気がしてきますね。都市の破壊、宇宙人相手に歯が立たない軍隊&ラストの猛反撃。「宇宙戦争」と聞いて誰もが連想する見せ場が、この映画からはことごとく排除されています。意図的なまでに。まさか、これがスピにも目覚めた巨匠のエゴの結果だったら、それはちょっと残念ですね。彼には、最高の技術を持った映画少年であり続けて欲しかったんですけどね。
[映画館(字幕)] 7点(2005-07-03 01:27:05)(良:1票)
622.  スパイ・ゲーム(2001) 《ネタバレ》 
公開時にはブラッド・ピット主演のアクション大作として宣伝されたため誤解を受けましたが、これは硬派で知的なサスペンスです(だからこそ、アクション大作への出演を嫌がるブラピもこの企画には参加したのでしょう)。「スパイ・ゲーム」は逆説的なタイトルで、これは鮮やかに敵を倒す痛快なアクション映画ではなく、神経を擦り減らすような死と背中合わせの駆け引きを描く作品です。よって派手なアクションはほとんどなく(終盤の救出作戦すら、地味な撃ち合いで終わる)、スパイという世界が持つ極限の緊迫感や、命をかけた「ゲーム」であることから生じる痛みを作品の核としています。序盤のベトナム以外にブラピが銃を撃つ場面はなく、カーチェイスも格闘もなし、敵と顔を合わせることもなし。現地の協力者を口説き、彼らを戦場に送り込む駆け引きがひたすら描かれます。作戦が敵に漏れていたため協力者を置き去りにして逃げたり、作戦の手はずを間違えて死なせてしまったりという痛みのドラマをきちんと描いており、スパイ映画としてはジェイソン・ボーン以上に誠実に作り込まれた作品だと言えます。。。と、このように硬派な作風であり、なおかつ過去の回想と現在の救出作戦が並行して語られるという厄介な構成をとるため、作りの誠実さの代償として娯楽性という意味では問題のある脚本だと言えるのですが、これがスコットの手腕により十分面白く作られていることには驚きます。派手な見せ場は少ないものの、美しいビジュアルにかっこいい音楽、キレのある編集により、勢いのあるアクションを見たような高揚感を味わえます。脚本にあったと思われる泥臭さは調度いい具合に抑えられており、必要以上に重い作品にしていません。ラスト、作戦名を聞いて師匠の仕業だと知るブラピと、ポルシェで颯爽と退場するレッドフォード、この締めはまさに痛快でした。話の交通整理もうまいもので、ややこしい構造の作品でありながら、特に混乱することがありません。困難な企画にあって、水準レベルのアクションは寝てても撮ることができ、プラスαの工夫に頭を使う余裕のあるトニー・スコットを引っ張って来られたことは幸運でした。そこいらの監督に任せていたら、観客の頭を混乱させるだけの映画になっていたことでしょう。頭空っぽの映画ばかり撮る監督だと思っていたトニー・スコットの見方が変わった一作です。
[DVD(吹替)] 9点(2009-08-14 10:52:10)(良:1票)
623.  もしも昨日が選べたら
人生をDVDのメニューのように自由に操作できるリモコンというアイデアは秀逸です。このアイデアにアダム・サンドラーの腕前も加わり、コメディ部分は非常に楽しめました。時間を止めている間に気に入らない相手をビンタしたり股間を蹴り上げたりとサンドラーらしいギャグが多くあって、志村けんのバカ殿様を見ている時のような抜群の安定感を感じました。ただし人情話になると途端につまらなくなったのが残念。「ブルース・オールマイティ」などもそうでしたが、独特のアイデアを活かしたコメディ部分は面白いのに、どうしてオチは毎回「日常こそ得難い幸福。家族を大切に」というありきたりな説教になってしまうのか。アメリカ人はこういう説教が好きなのでしょうか?最後まで人を食ったような話にしてもよかったと思います。また説教映画にするならするで、もう少しやりようがあったと思います。ルックスも性格も最高の奥さんと、素直でかわいい子供が二人も家にいるのですから、サンドラーが家庭に不満を持つ背景がイマイチ弱く感じました。ケイト・ベッキンセールが家にいれば幸せだろ!と誰もが感じたはずです。また、仕事が悪として描かれている点も、何か倫理感がズレているような気がしました。お父さんは家族を養うために仕事をし(職場は決して楽しい場所ではありません)、奥さんも子供もお父さんが頑張って仕事をしてくれているおかげで豊かな生活を送れているのですから、仕事は悪、家族のために何が何でも時間を持つべきという価値観にはあまり賛同できません。本作におけるサンドラーの仕事ぶりは決して極端なものではなく、家族を養うための範囲を逸脱しているように感じなかったため、このメッセージを伝えたいならもっと極端な仕事中毒にすべきだったでしょう。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2009-07-21 19:49:15)(良:1票)
624.  マイティ・ソー/ダーク・ワールド
ケネス・ブラナーが『エージェント・ライアン』に乗り換えたことを受け、監督はアラン・テイラーに変更。この人はTV界のベテランであり、現在、私がどハマリしているドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』では重要回を担当している人物だけに、その演出は実に安定しています。登場人物たちの愛憎関係を簡潔に提示したり、程よい笑いをとったりと、軽いフットワークでドラマパートをまとめる一方で、アクションパートでは重厚なスペクタクルをものにしており、初の大作ながら素晴らしい手腕を披露しています。2015年公開のリブート版『ターミネーター』の演出も務めるようですが、この監督ならば期待できるのではないでしょうか。。。 しかし、この監督の手腕をもってしても、映画全体を救うことはできなかったようです。アイアンマンとキャプテン・アメリカが続編の舞台を小さく設定し直し、パワーのインフレが起こることを回避したのとは対照的に、ソーは舞台を大きくしすぎて取り留めのないことになっています。わかるのは、正義の味方・ソーが悪い奴らと戦っているということだけで、悪人たちの目的は何で、彼らが勝つとどんな悪いことが起こるのかがピンときません。どうやら宇宙が滅びるらしいのですが、そんなことをして悪人たちに何の得があるのかが分からず、このお話にはポカンとさせられるのみでした。さらには、エーテルだのダークエルフだの、マーベル作品が出る度に追加される固有名詞を覚えることにもそろそろ嫌気が差してきており、肝心のお話自体に興味が持てませんでした。。。 キャストはとても豪華。一連のマーブル作品の中でも、もっとも多くの演技派俳優を揃えているシリーズだけに、演技の質は非常に高いです。ただし、前述の通りバカバカしい固有名詞が入り乱れる内容なので、オスカー俳優達との食い合せはよくないですが。アンソニー・ホプキンスやナタリー・ポートマンが真剣な顔をしてマンガチックなセリフを言う度に、何とも言えない居心地の悪さを感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-09-30 23:35:17)(良:1票)
625.  ヘルボーイ
興業成績がかなり苦戦中のヘルボーイ。私が行った回の観客は10人でした。しかもオタクっぽい人ばかりで、「デモンズに襲われたらこいつらと戦うのかよ」と一瞬不安になりました。そんな感じであまり期待感の高まらない鑑賞だったわけですけど、見て納得。これがなかなかよかったんです。個人的にはスパイダーマンよりお気に入りです。要するにX-MENとMIBを足したような話なんですけど、とにかく各キャラの個性がよく出来てるんです。かっこつけたがりで、しかも片思いに悩んでるというヘルボーイはまさに中学生。悪魔のくせに、育ての親である博士を父さんと慕ってる人情家でもあるのです。その一方で腕力を誇示したふてぶてしさも持ち合わせており、そのおかげでX-MEN達のような辛気臭さがないのがいいですね。半魚人のくせに博学なエイブはモロ文科系、暴走するヘルボーイを「あいつはああいうやつだから」と見守るナイス相棒です。「フレンチ・コネクション」で言えばラッソーみたいな感じです(見た目もロイ・シャイダーみたいだし)。そしてナチス最強を誇ったクロエネンはクールな暗殺者。刀を振り回す立ち回りのかっこよさに参ってしまいました。「スターウォーズ」で言えばダースモールのポジションで、悪の軍団には欠かせない最強のナンバー2ですね。そんな感じでこれ以上ないほど素晴らしいキャラが準備されており、「このままいけばアメコミ映画の最高傑作になるぞ」と期待も膨らみました。しかし問題は後半でした。中盤で負傷したエイブは後半の決戦には参加せず、鳴り物入りで登場した炎の少女リズは結局その能力をほとんど使わず、あれだけ強かったクロエネンはえらいアッサリと倒され、1体倒すと2体に増殖するという脅威の化け物(名前忘れた)はそこそこ個体数を増やしてるはずなのに、肝心の後半にはほとんど登場せず、ラスプーチンの罠にはまってしまったヘルボーイは意外と簡単にジレンマを乗り越えてしまいます。後半はとにかく肩透かしの連続でした。それでもクライマックスにはラスボス=神様も登場しますが、ザ・グリード似の大袈裟なルックスのこの神様も、ヘルボーイによって案外簡単に倒されてしまいます。ブレイドを見た時と同じモヤモヤを感じてしまいました。これで後半が完璧だったら10点満点もありえた映画だけに残念です。キャラがよくできてるので、できれば続編を作って欲しいですね。
8点(2004-10-28 00:57:26)(笑:1票)
626.  レッドクリフ Part I
お恥ずかしいことに三国志の知識は皆無に近く、国名と主要登場人物の名前を知っている程度での鑑賞です。物語の基礎知識を持たない状況での鑑賞には不安があったのですが、その点、国内での配給を担当したエイベックスは懇切丁寧な説明を冒頭にくっつけたり、場面転換の度に登場人物の名前と役職名をテロップ表示してくれたりといった親切設計で対応しており、一見さんにも問題ない鑑賞環境が整えられていたことは有難かったです。本作が劇場公開されたのは洋画に観客が入らなくなり始めた時期でしたが、そんな中で一般客をどうやって呼び込むかという点に配給会社が気を配り、結果として興行的に大成功を収めたのだから見事なものです。 有名な歴史ものには後世での自由奔放な脚色が含まれていることが常であり、これを素直に実写化すると「ありえねぇ」の連続となり(例『300/スリーハンドレッド』)、かといって説明可能な形にまとめようとすると「古典の面白さを台無しにした」とケチをつけられ(例『トロイ』『エクソダス』)、なかなかサジ加減が難しい素材だと言えます。そんな中で本作は基本的に”素直に実写化”路線に向いているのですが、かといって完全な歴史ファンタジーの領域に足を踏み込むこともなく、「昔、こういう戦争がありました」という歴史活劇として一定のルックスを作り上げることに成功しています。劉備軍の将軍たちはまさに一騎当千の活躍を見せるものの、物理的にまったくありえないというレベルに突入する手前のギリギリの描写で踏みとどまっており、生身の人間が戦っているという感覚を残せているのです。この辺りの演出は素晴らしかったと思います。 また、配役も絶妙なものでした。劉備軍の将軍たちの個性豊かすぎるルックスの再現度は高いし、超人的な頭脳を持つ諸葛孔明役にキャスティングされた金城武は、その浮世離れした個性により役柄に説得力を与えています。また、絶世の美女とされる小喬のキャスティングにも困難性が伴ったと考えられますが(見る人によって美醜の基準は異なるため、「誰の目にも絶世の美女として映る人」というキャスティングはかなり難しい)、そこに女優経験のないモデルのリン・チーリンを持ってきた判断も神がかっています。こちらもまた、国を動かすほどの超絶美女にきちんと見えているのです。また、彼女については難しい演技を要求される場面がなく、経験の少なさゆえのボロを出さずに済むよう脚本や演出レベルでも調整がとれています。 以上、本作のルックスは素晴らしいのですが、肝心のお話には面白みが感じられない点は残念でした。ジリ貧の劉備軍が、まだ戦禍に巻き込まれていない呉をどうやって同盟に引き入れるかが本作のスポットだと思うのですが、この交渉の困難な部分はどこにあって、どうやって呉を説得するのかという観客に対する情報の整理ができておらず、孔明と周瑜が弦楽器のセッションで意気投合したことで交渉が進み始めるという、なんとも面白みに欠ける展開となっています。弦楽器の件以外にも、馬の出産・虎狩り・牛泥棒などの面白みのないサイドストーリーの積み重ねにより本筋が進められていくため、中盤が本当に面白くありません。こうした中盤のグダグダの割を食ったのが孫権であり、これは優柔不断な孫権が為政者としての本分を発揮するまでの物語でもあったはずなのに、そこにあるべき感動が見事に失われています。熱い男を描かせれば天下一品だったジョン・ウーが男の成長ドラマでコケたことは意外でした。
[映画館(字幕)] 6点(2016-09-21 20:05:48)(良:1票)
627.  エドtv
前年公開の「トゥルーマン・ショー」の二番煎じとみなされて興業的にも批評的にも大失敗、ロン・ハワードの黒歴史と化している本作ですが、私は「トゥルーマン・ショー」よりも遥かに面白く鑑賞できました。本作では「トゥルーマン・ショー」に欠けていた点がほぼ完璧に補正されていて、メディア批判の映画としては超一級だと思います。。。 「トゥルーマン・ショー」の最大の欠点とは”「トゥルーマン・ショー」が面白い番組に見えない”という点でしたが、これに対し本作は①トゥルーマンを無理に拘束せずともテレビに出たがる人間はいくらでもいる、②視聴者が興味を持つのはハプニングとスキャンダル(清廉潔白なトゥルーマンのドラマなど面白くも何ともない)、この2点を徹底して深掘りすることで、「もしこんな番組をやっていれば、恐らく人気が出るだろう」という説得力を持たせることに成功しています。最初は「くだらない」と言っていた視聴者達が番組に対して徐々に関心を抱き始め、大人気番組へ成長していくという丁寧な描写はロン・ハワードならでは。次々と繰り出される"バラエティあるある"には笑わされるし、同時に考えさせられます。またエドが反撃に転じるクライマックスには適度なカタルシスがあり、脚本も演出も驚くほどしっかりしています。。。 三十路でフリーターのダメ人間だが、誰からも愛される可愛げを振りまくエド役にマシュー・マコノヒーは適任でしたが、このキャスティングも当時としてはかなりの意外性がありました。というのも、マコノヒーは弁護士(「評決のとき」「アミスタッド」)、神学者(「コンタクト」)等専らアカデミックな役柄を得意としており、ダメ人間を演じることは珍しかったからです。しかし本作は彼の個性を引き出すことに成功し、以後のマコノヒーは気の良いチャラ男を演じることが多くなりました。本作はキャスティング面でも成功を収めていたというわけです。
[DVD(吹替)] 8点(2012-06-25 01:18:06)(良:1票)
628.  レオン/完全版 《ネタバレ》 
はっきり言って蛇足な完全版です。劇場版は観客の想像に任せることで絶妙なバランスをとっていたのですが、完全版では描写がはっきりとしすぎてその味が失われています。マチルダがレオンの仕事に同行して人殺しを覚える場面など要らなかったし、レオンの昔話も不要でした。レオンに童貞臭さがあってこそマチルダとの恋愛が「ロリコン」にならずに済んでいたのに、過去の悲しい恋愛を持ち出してそれなりの人生を送ってきたことを明示されると、二人の関係性への解釈が大きく変わってしまいます。DVDやブルーレイの商品展開を見るとベッソンは劇場版を葬って完全版を主流にしたい様子なのですが、その判断は間違いだと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2011-01-17 21:35:52)(良:1票)
629.  ヒッチコック
ホラーやサスペンスというジャンルにおいて、当該ジャンルの流れを一変させるような傑作は、主にインディーズから現れると言われます。作品の内容に口出ししてくる人間の数が少ない、また、倫理コードという制約条件の影響を受けづらいという自由な製作環境が革新的な映画を生み出す素地となるためですが、例外的に『サイコ』は、大手スタジオにおいて生み出されたホラーの傑作でした。監督の自費で制作されたとは言え、大手スタジオの看板を背負う以上、スタジオの重役達は口を出してくるし、検閲官だってあれこれ文句をつけてくる。そんなハイプレッシャーな環境の上に、愛妻の不倫疑惑や、過去に因縁を抱える主演女優との微妙な関係、さらには自身の体調不良まで、本当に多くの問題を抱えながら、それでも意地を通して傑作を作り上げた天才監督の姿には非常に興味深いものがありました。ヒッチコックのフィルモグラフィーは傑作揃いであり、息を吸うように名作を撮っていたというイメージがあっただけに、これだけの苦労をしながら、それでも映画に拘っていたという点は、個人的に意外でもありました。。。 また、本作は老人映画でもあります。40年超のキャリアを持つスピルバーグや、70代のリドリー・スコットがハリウッドのトップに君臨する現在とは違い、50年代・60年代の一般的な映画監督の賞味期限は10年程度でした。生き神様の域に達していたデミルやワイラーならともかく、無冠の帝王にして、50年代には何本もの映画をコケさせていたヒッチコックは、「そろそろ引退しては?」という周りからのプレッシャーを受け続けていました。しかし、彼は「まだまだやれる」ということを証明しようとします。『世界最速のインディアン』の主人公のように。ヒッチコックが『サイコ』に拘ったのは、原作や題材の良さだけではなく、これが誰もやったことのない、まったく新しいものだったからであり、自分の感性の若々しさを証明するためには、これしかないと考えたためでしょう。時代遅れと言われていた者が、自己の存在をかけて大仕事に挑む、なかなか燃える話ではありませんか。。。 以上、素材は硬派なのですが、終始ユーモラスで肩肘張らない本作の演出は独特でした。テンポが良くて非常に見やすいのですが、それ以上のものになっていない点が惜しくもあり、決して悪い映画ではないものの、点数的には7点がせいぜいかなという印象です。
[DVD(吹替)] 7点(2013-12-05 01:16:22)(良:1票)
630.  スターシップ・トゥルーパーズ
本作の企画は83年頃から存在していたものの予算や技術面での問題から一度頓挫し、技術の進んだ97年になってようやく製作が実現したようです。VFXに注ぎ込まれた予算は「タイタニック」をも上回る史上最高額の7000万ドル、総製作費は1億ドルという凄まじい超大作なのですが、これがお馴染みバーホーベン節炸裂の神経逆撫でムービーに仕上がっているのですから二度驚きます。ハリウッドの偉い人たちは脚本に目を通してから意思決定しているのだろうかと実に不思議になりました。。。完成した作品には素晴らしい部分もあればそうでもない部分もあって、個人的には好きなタイプの映画なのですが、傑作の部類には入らないと思います。バーホーベンの狙いは、戦争というものの本質を描き出すことにありました。このテーマを扱うにあたって歴史上の戦争を題材としてしまうと、どうしても当事者である国や国民が存在してしまって満足な描写ができない可能性がある。観客の側でフィルターがかかってしまう場合もある。だったら誰も文句を言ってこないSFでやってしまえという発想は大胆で面白いし、的を射ていると思います。本作の4年後、映画で描かれたことをアメリカ合衆国が現実世界でまんま後追いしたことからも、その狙いは当たっていたと評価できます。ただし、本作には不十分な面もあります。舞台となる未来の地球連邦の作り込みが甘く、また敵となるエイリアンと人類が歴史上どのように関わってきたのかが明示されないため、軍事政権が大衆を煽動して戦争へと雪崩れ込んでいく様について、観客がその良し悪しを十分に判断できません。主人公達が軍事に携わる前の学園ドラマの出来も良くないのですが、戦争と対比させるためならここも面白く作っておく必要があったでしょう。軍事政権や薄っぺらな学園ドラマなどバーホーベンが不得意としたり嫌っていたりするものについては、とりあえずブラックジョークでバカにするというスタンスで作られているのですが、この姿勢のためにテーマが一部死んでしまっています。映画の前半部分が猛烈に退屈する原因ともなっています。ここはある程度マジメにやっておくべきでした。。。一転していよいよ戦争に突入するとこれがめっぽう面白く、バーホーベンはスペクタクルの巨匠であることを再認識させらます。「好きなことやれてうれしいなぁ」というフィル・ティペットの満足げな表情まで見えてきました。
[DVD(字幕)] 7点(2010-09-05 00:41:06)(良:1票)
631.  カウボーイ&エイリアン
ダニエル・クレイグとハリソン・フォードはいつもながら男らしいし、VFXの扱いに慣れたジョン・ファブローによる見せ場作りも悪くありません。特にラストバトルはハリウッド大作らしいボリュームできっちり楽しませてくれるので、観たことを後悔する映画ではありません。。。 ただし、右往左往する脚本が本作の足を引っ張っており、”悪い映画ではないが、決して褒められた出来ではない”というレベルに落ち着いています。「カウボーイ&エイリアン」、、、男子中学生が考え付いたような適当なアイデアではありますが、西部劇とSFとを違和感なく組み合わせることは非常に困難な作業だったようです。97年の発案当初から数えると12名もの脚本家が本作の執筆に関わり、脚本家が変わる度にコミカルとシリアスのバランスは大きく変動。結局、複数人の脚本家が出してきたアイデアのうち、良いものをパッチワークするという形で決定稿が作られたために、なんだかとっ散らかった印象を受ける仕上がりとなったようです。致命的だったのが、クレイグ、フォード以外のキャラクター達の個性の薄さで、多くのキャラクターが入り乱れる物語だったはずなのに、観客に好かれる者は皆無という状態となっています。悪徳牧場主、牧場主に苦しめられる市井の人々、治安を乱す盗賊団、白人社会と敵対関係にあるインディアン、これらの人々がラストバトルを前に主人公の元に結集し、”オール西部”で侵略者に挑むという燃える展開を準備しながら、個々のキャラクターの完成度の低さゆえに不完全燃焼で終わっています。この決戦前夜がビシっと決まっていれば、映画全体が締まったはずなんですけどね。
[DVD(吹替)] 5点(2012-05-07 01:33:56)(良:1票)
632.  SCOOP! 《ネタバレ》 
はみ出し者のベテランと真面目な若手という構図はかなり類型的ながらも、主演二人の華できちんと持ち堪えています。 問題はお話が面白くないことで、テンポ良く小ネタが繰り出される前半パートは楽しめなくもないのですが、連続殺人鬼の表情を捉えようと奮闘する中盤と、リリー・フランキー演じるチャラ源が暴走する終盤がまるで面白くないため、映画全体の印象は良くありません。 特に終盤の悲劇の取って付けた感には凄まじいものがあり、「俺一人で行くわ」と思いっきり死亡フラグがぶっ刺さった状態で現場にむかい、式次第通りに死亡する都城の姿を見て衝撃を受けた観客が一体どれほどいたのだろうかと、実に心配になってしまいました。 どうやらチャラ源と都城との間には深い深い因縁があり、周囲に止められても都城はチャラ源との付き合いを止めないという辺りに男の友情臭があったのですが、その二人の関係の根源とは何なのかがバッサリと割愛されており、「その辺はお察しください」という雑な描かれ方となっているためさほどの感情移入ができず、終盤は劇中のキャラクター達だけが勝手に盛り上がっている状態となります。都城が死んだ後のエピローグは異常なまでに長く、こちら大して感動も衝撃も受けていないのに余韻に浸らせまくられたため、大変しんどかったです。 また、後半パートでは「ジャーナリズムとは何か」という真面目な切り口を持ち出してくるのですが、彼らの奮闘が社会正義に繋がっているようには見えず、見ている側としては覗き見趣味を出ていない状態で真面目な話をされても困ってしまいます。同種の題材を扱った作品としてジェイク・ギレンホール主演の『ナイトクローラー』がありますが、そちらは「パパラッチは人間の屑である」ということを大前提としたピカレスクロマンとして作られており、ゲス野郎の活躍を冷めた視点で鑑賞するという実に安定した作風となっていました。対して本作は、前半と後半でまるで正反対の主張がなされるために、特に後半が綺麗事にしか見えませんでした。 あと、福山雅治と二階堂ふみの中途半端なベッドシーンは本当に不要でした。人間の下劣な覗き見趣味をテーマのひとつとしている作品なのに、ベッドシーンをやたら美しく撮ってどうすんの。この題材で下着を決して外さないってどういうことよ。俳優のパブリックイメージへの配慮や芸能事務所からのダメ出しが激しく垣間見えてしまい、ここで一気に冷めてしまいました。
[インターネット(邦画)] 4点(2017-11-15 23:57:51)(良:1票)
633.  パージ 《ネタバレ》 
1年に一度、12時間だけあらゆる犯罪が罪に問われないという着想は独創的で素晴らしかったし、年一度のガス抜きにより残り364日の治安が飛躍的に向上するという社会的な利点や、自己防衛手段を持たない弱者の間引き手段でもあるという裏の機能までがきちんと考えられており、突飛な基本設定でありながら、あの世界では受け入れられた法律であるということを観客に納得させるに至っている点でも感心しました。 ただし、良かったのは設定がテンポよく説明される冒頭15分のみであり、よくできた設定とは裏腹に本編の方はユルユルでガッカリさせられました。バカな奴がバカなことをしでかして事態が悪化していくという、この手の映画で一番やって欲しくない方法で物語が進んでいくため、いちいちストレスが溜まります。娘の恋人が突如親父に発砲してきた。さらには正体不明の人間が家に紛れ込んでどこに潜んでいるか分からないという状況で、娘が一家からはぐれてしまった。こんな逼迫した局面でありながら、残された一家はチンタラと会話をしたり、バラバラに行動して隙を作りまくったりで、見ていてイライラさせられっぱなしなのです。一刻も早く娘を回収して防御態勢を築くべき状況にありながら、一向にそれを実行に移さないというのはどういうことなのかと。 そもそも、一家の息子がホームレスを匿ったために惨劇が始まるのですが、あの子が見ず知らずの人を助けようとした背景がまったく描かれないため、「なぜそんなことを」と誰しもが思ってしまいます。本作では人命の扱い方がメインテーマとなっているにも関わらず、主要登場人物が元来それをどのように捉え、そして極限状態でどう変わっていったのかが明確に描かれていないためそこにドラマが発生しておらず、納得できなかったり、突飛に感じたりする展開が多くなっています。もっとも不自然に感じたのは主人公たる親父の心変わりで、このままではパージャーの群れに襲われてホームレスも一家も皆殺しにされるという状況下にあって、いったんはホームレスを突き出そうという意思決定を下すものの、直後にそれを覆します。この判断がどう考えても不合理であり、ショットガンや自動小銃で武装した十数人の若者を相手にした戦いに嫁・子供を巻き込んでまでホームレスを守ろうとした理由がサッパリわからないため、本編中もっともドラマチックであるべき箇所で疑問符の嵐となってしまいます。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-12-31 01:10:26)(良:1票)
634.  スター・ウォーズ/最後のジェダイ 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。 『フォースの覚醒』はレイがルークの元に辿り着くまでの物語でしたが、ようやく出会えたルークは『帝国の逆襲』のヨーダ以上の偏屈じじぃになっており、「もう弟子はとらん」といけ好かない態度をとるのみ。前作の冒険を見てきた我々からすれば、はるばる来てくれたレイの話に耳を貸し、その要望は聞けないにしても、じっくり説明くらいはしてやればいいのにと思うところなのですが、とにかく頑なに心を閉じている様にはイライラさせられました。ルークと旧知の仲であるチューイやR2もレイのために口添えしてやればいいものを、いるのかいないのか分からないほどの存在感だったし。 レイはレイでカイロ・レンと感応しておかしくなり、さらにはすぐ隣にジェダイマスターがいるという恵まれた環境にいるにも関わらず今の自分の精神状況を素直に相談しないので、こちらにもイライラさせられました。二人とも、ちゃんとコミュニケーションとりましょうね。 この前半部分の退屈さはシリーズ屈指のレベルに達しており、「こりゃ、『ファントム・メナス』をも下回るシリーズ最低作来たかな」と覚悟を決めました。そういえば、『ファントム・メナス』って邦題は何とかならんもんですかね。『ジェダイの復讐』を『ジェダイの帰還』に変更したのだから、『ファントム・メナス』も『見えざる脅威』に変更すべきではないかと思うんですが。って、本作とは全然関係ない話をしちゃいましたね。そんなことが気になるくらい、本作の前半は面白くなかったってことです。 しかし、後半になると作品は一気に息を吹き返します。レイとカイロ・レンの共闘、フィンとファズマによる元上司・部下対決、ダメ上司かと思われたホルド司令官が見せた男気(性別は女性ですが)などなど、燃える見せ場の連続で頭の毛が抜けそうになるくらい興奮させられました。ファンが愛着を覚えているメカの登場のさせ方、ピンチの際の救援のタイミングなど演出はもうキレッキレで、ディズニーはルーカス以上に『スターウォーズ』の撮り方を掴んできているように感じました。 とはいえ、次回作へは期待よりも不安の方が大きくなりましたが。本作ではキャラの整理が進みすぎており、どう見てもリーダーとしての才覚のないカイロ・レンが率いることになったファースト・オーダーと、ファルコン号に収納しきれる程度の人数しか生き残っていない反乱軍は今後どうやって戦うことになるんでしょうか。
[映画館(字幕)] 8点(2017-12-16 15:26:46)(笑:1票)
635.  リトル・チルドレン 《ネタバレ》 
大学院まで出たのに今は郊外で退屈に暮らす主婦と、ロースクールを卒業して華々しい人生を送るつもりが司法試験に合格できない主夫の不倫を通して、普通の人たちの抱える心の隙間、満たされないモヤモヤがうまく描かれた作品でした。豪邸に住んでるんだからいいじゃないか、美男美女の夫婦でうらやましい、世間的には満たされているように見えても、当の本人は満足していません。それは今の生活への不満ではなく、「ほどほど」で落ち着こうとしている今の自分を認めたくない、自分には何か可能性があるのだと信じ続けたいという欲求でしょうか。大人になるのは切ないことで、若い頃には持つことができた漠然とした希望を捨てねばならない、自分には何ができて何ができないのかを悟らされるため、広がった自我と限られた現実を突き合わせないといけない。そのギャップに悩まされるのが20代後半から30代前半という主人公達の年齢に当たります。反発すべき明確な対象もなく、努力すべき目標も見つからない(サラはただ退屈に日々を送り、ブラッドは司法試験に合格できないことを悟っているものの、他にやるべきことがありません)、しかし今の自分は自分ではないのだと思いたいという自我のみが存在する。その隙間を埋めるために見つけたのがフットボールであり不倫なのでしょう。本作の不倫は独特で、普通不倫といえば生活感ありすぎの奥さんから派手なものへ魅かれていくのですが、ここではスーパー美人のジェニファー・コネリーを捨て、主婦丸出しのケイト・ウィンスレットと駆け落ちしようとします。サラもブラッドも人生を賭けていいほど相手に魅かれているのではなく、このままでは認めざるをえない現実を否定するための幻想として不倫をしているのです。ラスト、サラは自分が守るべきものを再認識し、ブラッドはスケボー(!)で満足感を味わうことで、あっけなく駆け落ちを思いとどまります。ラストがつまらんという意見もありますが、このあっけなさこそが大事でした。もしここが劇的であると、映画の主張しようとすることが見えなくなります。また不評のナレーションも曲者で、状況説明や上っ面の心情描写はするものの、映画の主題に当たる部分については一切語らず、そこは見る者に投げています。小説のように行間を読むことを観客に要求してきており、そのため文学作品に近い質感を作るべく無機質なナレーションを挿入したのでしょう。
[DVD(吹替)] 8点(2009-05-30 17:49:35)(良:1票)
636.  ラッシュ/プライドと友情 《ネタバレ》 
仲間とワイワイやりながら戦果を挙げていく天才タイプの戦士と、人を寄せ付けないほど技術や鍛錬にこだわる職人タイプの戦士(たいてい良家の出身)。矢吹丈vs力石徹、孫悟空vsベジータ、纏流子vs鬼龍院皐月、マーベリックvsアイスマンetc…古今東西、非常にありがちな構図なのですが、この陳腐とも言える素材を、本作は驚くほど面白いドラマとしてまとめています。カッコいいのはニキ・ラウダの生き方だが、共感できるのは凡人の感覚を残したジェームス・ハントの方であり、観客がどちらの人物にも感情移入できるよう調整された脚本が絶品です。本作の脚本を手掛けたのはピーター・モーガン。現代史における大事件にフォーカスし、その渦中にいた人々が当時何を感じていたのかを推測しながらドラマを組み立てることを得意とする脚本家であり、その手法には「映画としては面白いが、歴史の捏造に繋がるのではないか」との批判もあるのですが、本作ではニキ・ラウダが存命中だったこともあり、余計な批判を受けずに済んだようです。。。 ロン・ハワードによる演出も絶好調で、両主人公に対してほぼ均等に見せ場を与えて二つのドラマを丁寧に描写しつつも、上映時間を120分程度に収めてしまうという見事なバランス感覚を持った娯楽作として仕上げています。力点の見極め方が実に素晴らしいのです。歴史的に確定した事実を描く作品である以上、「レースでどちらが勝つか」にこだわっても仕方のない題材であるため、そうした対決の要素はほとんど切り捨てています。レースシーンの迫力は素晴らしいものの、そこを追いかけ過ぎていないのです。監督があくまで重視したのは正反対の生き方をする男たちの仕事観や人生観を描くことであり、邦題の「プライドと友情」という要素すら、それほど重くは扱われていません。そのためにスポーツ映画としてはやや弱くなっているのですが、男の生きざまを描いた作品としては、掛け値なしの傑作として仕上がっています。この辺りの大胆な取捨選択は、本当に見事だったと思います。また、KinKi Kidsによる吹替も悪くなかったですよ。特に堂本光一は、プロの声優と遜色ないほどうまかったです。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-23 00:39:19)(良:1票)
637.  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生
文句つけろと言われてもどこにもつけようがないほどの傑作です。ゾンビの生態がこの一本ですでに完成されていること、それだけでもスゴイことなのに、さらにつっこんで人間の業までテーマにしていること、密室サスペンスとして完全無欠の完成度であること。ホラー映画としては今のところ最高の傑作でしょう。低予算であることもかえっておどろおどろしい雰囲気に貢献しており、傑作であることを運命付けられたような映画です。そんな傑作なんですけど、DVDで30周年版を見ると、そのあまりのヒドさに愕然としました。新撮部分がまったくの意味不明で、しかもいらん音楽までつけられてる始末。何がしたくて作ったバージョンなのかがサッパリわかりませんでした。とはいえ、このバージョンには日本語吹き替えがついており、やっぱり捨てがたいDVD。オリジナル版に吹き替えつけてくれれば完璧なんですけどね。
9点(2004-08-19 01:04:14)(良:1票)
638.  エージェント・マロリー
インテリぶったソダーバーグがコテコテのB級アクションを撮るということで、本作についてはもしかしたら意外な化学反応が起こっているのではないかとの期待がありました(文芸映画の専門家・ケネス・ブラナーが『マイティ・ソー』をとっても楽しい娯楽作に仕上げたという前例もあるし)。しかしフタを開ければ、純粋娯楽に対してソダーバーグが抱く照れが如実に表れた、何とも中途半端な映画に仕上がっていてガッカリでした。10年前に『オーシャンズ11』でやった失敗を繰り返してどうすんの。。。 美しすぎて、しかも実力もある格闘家ジーナ・カラーノが、ソダーバーグの顔で集められた一流俳優達をボコボコに殴るということが本企画のコンセプトだったと思うのですが、実際にカラーノと対戦するのは若い俳優ばかりで、大物は参戦しません。まず、これがマズかった。観客が期待するのは、ダグラスやバンデラスが完膚なきまでにぶちのめされる姿でしょ。おまけに格闘シーンは意外と少なく、さらにはカラーノの身体能力の高さを誇示できるような見せ方にもなっていません。監督も脚本家も、要らん手を加えすぎてせっかくの素材を台無しにしているのです。この手の映画の語り口はシンプルでいいのに、結果をみせた後で過去の経緯を振り替えるという回りくどい説明が2度もあってうんざりさせられるし、黒幕は一人いれば充分なのに、二人も置いたことで話の勢いが失われています。観客は謎解きをしたいわけではありません。序盤のバルセロナ作戦は効果音を排し、音楽と編集により美意識を強調した見せ方となっていましたが、これは完全にソダーバーグの自己満足。アクション映画を見に来る人間は、四方八方で鳴りまくる銃声や、腹に響く爆発音が三度の飯より好きなんだよ。見せ場のクォリティはクライマックスに向けて尻すぼみに落ちていき、ラスボス戦を迎える頃には映画のテンションは海の底。ソダーバーグには二度と娯楽作を撮らないことをオススメしたくなるような仕上がりでした。
[ブルーレイ(字幕)] 3点(2014-07-22 22:30:36)(良:1票)
639.  墨攻 《ネタバレ》 
原作未読の私にも、要約に苦労したことがよくわかる出来となっています。敵意むき出しだった王子が革離に傾注したり、革離暗殺を命じられた農民たちが革離に信頼を寄せるまでの過程がスッポリと抜けていたりと、唐突な展開が多々見られます。一方で荒っぽい要約が吉と出ている部分もあって、前半、革離が次々と知略を披露して敵を撃退する様は、矢継ぎ早な展開のおかげで彼が戦略家として際立った人物であることを強く印象付けます。アンディ・ラウは革離役に抜群にハマっており、ただ理屈を述べるだけではなく、人々を引きつけるカリスマ性も兼ね備えた人物にきちんと見えます。対するアン・ソンギもアンディ・ラウにまったく見劣りしない悪役となっています。弱小の梁国相手に負けを重ねるという下手すれば無能に見えかねない役柄であったにも関わらず、知性と人間性を併せ持った名将に見えるのですから、この役柄を脚本以上の人物にしてみせたと評価できます。後半は革離の影響力を恐れた梁王一派が粛清をはじめるという興味深い展開を迎えるものの、ここで映画はいったん失速します。基本的に本作はアンディ・ラウとアン・ソンギが引っ張っているため、ふたりが不在となるこの部分が致命的につまらないのです。脚本レベルでは人間の普遍的な残虐性や愚かさを提示しようとしたと思われるこのパートも、良い役者が不在であったり展開に深みがないため、梁王をはじめとした本作固有の登場人物がただ暴走しただけにしか見えません。王子を失った梁王の悲しみや怒り、また革離を排除せよとの命令にいったんは反対するものの、梁王への忠義からその先頭に立つこととなる将軍の葛藤など描くべきものは多くあったにも関わらず、お手軽なドラマ作りのために残虐な処刑等で不快な気持ちにさせられるのみです。しかし、アンディ・ラウとアン・ソンギが戻ってくると映画は再び息を吹き返します。どんな戦闘シーンよりも彼らのやりとりは見ごたえがありました。また、梁王によって反乱軍と見なされ、いったんは国を離れた部隊が趙軍を撃退するのですが、解放された民衆は過ちを犯した梁王を再び担いでしまうという皮肉な展開をとってみせたことには驚かされました。逸越をニアミスで殺してみせたり、民衆の愚かさにさすがに愛想尽かし孤児を連れて梁を後にする革離等、見る側に考えさせるバッドエンドは満点の締めだったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-06-16 22:39:11)(良:1票)
640.  スター・トレック2/カーンの逆襲 《ネタバレ》 
映画版はすべて鑑賞しているものの、テレビシリーズは1話も見たことがありません。よって、主要キャラクターが誰であるか、どんな世界観の元で動いている物語なのかという最低限度の情報は持っているものの、それ以上の知識はないという状況での鑑賞です。。。 シリーズ最高傑作との呼び声も高い本作ですが、映画としてはそれほどだなぁという印象です。ヘタな演技に臭いセリフ、宇宙を舞台にしている割には箱庭的なスケールの小ささも感じさせられ、テレビシリーズに起源を持つ作品ならではの弱さがドバっと出てしまっています。また、スピード感溢れるドッグファイトが魅力だった『スターウォーズ』と比較すると、2隻の戦艦がもっちゃりと動いているだけの本作は見せ場の迫力にも欠けています。。。 テレビシリーズにおける人気キャラクター・カーンをフィーチャーしたことが本作の人気の要因だと思いますが、カーンに係る説明があまりに端折られ過ぎているため、テレビシリーズを見ていない観客が完全に蚊帳の外に置かれる点もマズかったと思います。セリフでのフォローくらいは入れた方が良かったのではないでしょうか。また、カーンが悪のカリスマに見えないという点も大きなマイナスでした。彼は知力にも体力にも秀でた優生人類にして、リーダーとしての魅力と統率力にも恵まれた王の中の王という設定のはずなのですが、この映画版ではカーク憎しの感情のみで暴走する小物にしか見えません。部下の制止を聞き入れず、いとも簡単にカークの罠にかかるに至っては、並みの雑魚キャラ以下。設定を脳内補完できるファンならともかく、本作でカーンに初対面する一般客にとっては、なかなか厳しいキャラだったと思います。
[DVD(吹替)] 4点(2013-08-25 01:41:55)(良:1票)

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