Menu
 > レビュワー
 > no one さんのレビュー一覧。4ページ目
no oneさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順12345678910
>> 通常表示
61.  善き人のためのソナタ 《ネタバレ》 
終始抑えた調子で語られる、硬質で重厚なドラマ。  作中に流れる「善き人のためのソナタ」はすごく上手というわけでもないのにとても美しく響いて、よくもこんなうってつけの演奏を取り入れられたものだなと感心した。  人物の心の動きについて説明が不親切だと感じるところもあったけれど、おおむね感情移入してついていくことができた(もっとも、台詞よりも役者の演技で表現しようとしている部分が多く、不親切というのとはちょっと違うかもしれない)。  静かなようでいて飽きさせないスリリングな筋運びのなかに、社会主義国家の息詰まるような空気が巧みに表現されている。今までは子どもの頃に観た「壁」崩壊のニュースの意味がよくわかっていなかったけれど、この映画を観たことで初めてあのニュース映像のなかで飛び跳ねていた人々の気持ちがわかったような気がした。  個人的には最後まで直接対峙することのなかった、ヴィースラーとドライマンの不思議な友情の形に感動させられた。言葉を交わしたこともない相手を影から助け続けたヴィースラーと、あえて顔をあわせずに作品を捧げたドライマン。あっさりとした幕切れが洒落ていて、静かに胸を揺さぶった。 
[DVD(字幕)] 8点(2007-08-28 02:38:47)(良:2票)
62.  シャイニング(1980)
初めて鑑賞したのはほんの小さな頃のことで、これが大きな間違いだった。いやおうなく"ダニー"として劇中に放り込まれ、半ばトラウマになってしまった。  怖そうな父親と、神経質で気弱な母親。まずこの配置がすごく嫌だ。男性なら想像がつくと思うが、あの年頃の少年は母親にべったりのマザコンで、父親にはエディプス・コンプレックス的な反感を抱いている。父親は家族を守ってくれる頼りになる存在でもあると同時に、非常に強くて恐ろしい存在でもある。男性にとって父親がもっとも大きな意味を持つ時期に、発狂した父親が襲ってくる。これ以上に恐ろしい怪物はいない。  キングが母子家庭に育ったことを思い出した。世界でいちばん安らげる場所であるはずの家庭が、この世界でいちばん恐ろしい場所になる。それは子供にとっては、文字通り世界がひっくり返る恐怖だ。そしてキング版とは違って、まがりなりにも親子の絆が回復することはない。父親は怪物となり、平和な家庭は崩壊したまま二度と元には戻らない。安心して眠れる場所は、もうどこにもない。  また、あの海となって流れてくる血の色が忘れ難い。おぞましく、それでいて不思議に美しい。上品さと下品さのどちらにでも転びかねない色。あんなにたくさんの血が流れるのは、人が死ぬときか生まれるときのどっちかだ。腐乱した女性の誘惑もまた性と死というありえない組み合わせであり、生理的に不愉快極まりない。  この映画は人間のもっとも根源にある、本能的な恐怖を刺激する。『シャイニング』は、幼い頃の筆者のむき出しの感受性に深々と突き刺さり、消えない痕を残した。今でもあの雪中の迷路の場面を思い出すと胃がぎゅっと縮こまるような恐怖を覚える。あの限りなく絶望に近い恐怖と、途方もない心細さ。個人的には今なお特別な意味を持つ作品であり、恐怖の原点ともいえる作品だ。
[ビデオ(字幕)] 10点(2006-01-04 09:31:05)(良:2票)
63.  時計じかけのオレンジ
『フルメタル・ジャケット』や『バリー・リンドン』と同じく、前半と後半で明確な対称性を為す構成となっている。前半では悪の化身ともいうべきアレックスが好き勝手に暴れまわり、多くの観客は不愉快になって、アレックスに対する憎しみを募らせる。後半ではアレックスが暴力を封じられて、ここぞとばかりに被害者たちが復讐する。しかしこの復讐がまた陰惨で、勧善懲悪のカタルシスなどとは程遠い。前半であれほど憎んだ邪悪、"アレックス"たる可能性が、実はすべての人間に潜んでいることを見せつけられる。アレックスに対して怒りを燻らせて「こんなやつ、死刑でも足りない」と思っていた人は少なくないはずだ。その欲求を満たそうとしたとき、被害者はあんなにも醜い加害者になる。前半では犯罪者/悪の側にあった暴力性が、後半では一般人/正義の側にそのままシフトする。  洗脳して表面上は悪から遠ざけることができても、アレックスが更生していなかったのはあきらかだ。暴力性はちょっとやそっとの小細工で封じ込められるものではなく、人間に普遍的に存在する性質の一つだからだ。暴力を憎む気持ちそのものが、暴力に転ずるという皮肉な真実。時計じかけにしたとしても、オレンジはオレンジ。いくら法律や倫理で縛ったとしても、人間もまた動物だ。いずれにせよ、完全な統制は不可能であり、腐敗する可能性は消えることがない。ところで、この映画を嫌悪してキューブリックに嫌がらせした者も少なくなかったそうだけど、随分と「暴力的」な連中だ。本当は「正義」を嵩に掛けた連中こそ、自らの暴力性を意識すべきなのだと思う。  【暴力表現について、追記】 たとえば『はだしのゲン』にだって残酷な表現が多いけど、それはもちろん戦争の悲惨さを伝えるのが目的なのであって、間違っても読者の暴力性を満たすためではありませんよね? キューブリックの場合ひねくれてるからわかりにくいんですけど、本作の暴力表現もそれと同じ意味で必要だったと思うのです。暴力性を満たすための表現ではなく、暴力性を告発するための表現として。キューブリック作品には一貫して人間の暴力性に対する批判的な姿勢が見られます。決して「芸術的だから」というあやふやな理由で軽々しく暴力を扱う人物ではありません。
[ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-21 19:38:17)(良:1票)
64.  禁じられた遊び(1952) 《ネタバレ》 
冒頭で入り込めないと結局最後まで感情移入できないことが多いんだけど、この映画がまさにそれだった。  まず感じたのは映像的な薄っぺらさで、モノクロだからまだいいものの、映画というよりは古いテレビドラマを観ているかのようで、想像以上に安っぽかった。とくにあの空襲の場面でのぎこちなさには興ざめしてしまった。  あと子どもに対して大人の描き方が偽悪的に過ぎるというか、狙ってやっているんだろうけど過剰に感じた。まず橋から犬の死骸を投げ捨てるシーンで唖然。ミシェルの家族にしてもあまりにも無神経な言動が多く、かなり引いた。戦争がそうであるように大人の身勝手な理屈の犠牲になるのはいつも子ども、ということだろうか。  終盤に至ってはミシェルの両親がまるで悪役のように思えた。孤児院に引き渡さざるを得ないのは仕方ないとしても、短期間とはいえ娘のように扱っていたのだから、もう少し配慮してあげてもいいだろうに。とくに平然と笑顔で引き渡そうとする母親は空恐ろしくすらあった。  テーマ曲については、まったく個人的な理由から受け付けなかった(というのはうちの両親の趣味がギターで、子供の頃からこの曲が家に流れているのがごく当たり前だったため、耳に入ると悲しみや切なさを感じるよりも全然関係ないことを思い出してしまうので)。この映画に音楽が果たしている役割は相当に大きいはずで、それがないから余計に脚本のあざとさや映像の貧しさに目が行ってしまった。  というわけで、平均点が非常に高い中心苦しいけれど、終始心を動かされることはなかった。八十分がひどく長く感じられた。
[DVD(字幕)] 5点(2007-11-18 19:56:27)(良:1票)
65.  イレイザーヘッド 《ネタバレ》 
幻想と現実が入り混じり、しかもその幻想が安易な解釈を許すほどわかりやすくない。おおざっぱにまとめれば、駄目な男が不幸な現実から幻想の「天国」へ抜け出すまで、といったところだろうか。 あの奇形の赤ん坊から、萩尾望都のマンガ『イグアナの娘』を思い出した。このマンガは子供に愛情が抱けない母親の心情を、「娘が醜いイグアナに見える」という映像的にわかりやすい形で上手く表現した作品。  同じように、もしかしたらヘンリーと妻が子供を気持ち悪い怪物のように感じているだけで、ほんとうは義母の言ったように「ただの未熟児」だったのかもしれない、と思った。近所に住む女から見たら、ヘンリーの顔が赤ん坊の顔だったというシーンでさらにその疑いが強まる。赤ん坊が醜く見えるのは、自分にそっくりだからなんじゃないの? だから殺したかったんじゃないの? と。多分ヘンリーは、妻やその家族、赤ん坊よりも誰よりも、自分が一番嫌いだったんじゃないだろうか。  おそらくヘンリーは赤ん坊を殺したあと、自殺したのに違いない。醜い現実を何もかも目の前から消すために自分自身をこの世から消し、文字通りの意味で「天国」へ向かった。それがこの作品の、ほんとうの結末なのではないだろうか。
[ビデオ(字幕)] 8点(2005-04-25 22:46:08)(良:1票)
66.  情婦 《ネタバレ》 
始まりがあまりにほのぼのしてるので不安になったけど、裁判に差し掛かってからは目が離せない。トリックについてはクリスティの某代表作の変奏曲といった感じで、みせ方ひとつでこうも変わるものかと感心させられた。大胆なミスディレクション(誤導)の名手として知られるクリスティだが、この結末の二重の裏切りは大したもの。第一のどんでん返しに観る側の注意をひきつけておいて、まったく違った方向での第二のどんでん返しが待ち受ける。右手で殴るぞと威されたから左手のパンチを警戒していたら、予想通り左からきたけど、最後の回し蹴りはもろに喰らってしまった、というか。  また、クリスティが確かな仕事をしているのはもちろんだけど、秀逸なプロットを人間味あふれるユーモアで包みこんだビリー・ワイルダーの功労も絶大なものがある。弁護士と看護婦とのやりとりがなければ、ここまで魅力的な映画になってないだろう。  ただ、このサイトでここまで高評価を獲得しているのにはちょっとびっくりした。確かに面白いけど、そこまでずば抜けた感動があったとは思わない。とても意地の悪いいい方をすれば、とりたてて欠点はない代わりに絶大な感動もない、優等生的な作品だ。平均点は高くなるけど、誰かにとっての宝物的な映画になることはあまりないんじゃないだろうか。いや、いい作品なのは確かなんだけど。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-11-05 01:34:51)(良:1票)
67.  ウェイクアップ!ネッド
ほのぼのすぎてあんまり笑えないか、ブラックすぎて笑うに笑えないかのどちらかでした。
3点(2004-11-03 15:35:00)(笑:1票)
68.  ホーカス ポーカス
ハリポタとかと比べるとまったく地味な話なんですが、三姉妹の魔女のキャラクターが強烈で楽しめました。妹二人のバカぶりが○。歌唱力には驚きです。ハロウィンで魔王の仮装をした男性を勘ちがいして崇めたり。口臭のきついゾンビや、とことんださい田舎の不良も好き。この映画の悪役は憎たらしいはずなのにとぼけていて憎めないんです。その代わり、主人公二人のキャラクターはとても薄っぺらいんですが(とくにヒロインの存在感のなさ!)。 ストーリーが町を駆けずり回るだけで終わるので、もっと派手なクライマックスがあればよかったと思います。 それにしても、子供向けの割には台詞で「童貞」を連発しすぎですよね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2005-04-20 17:31:04)(良:1票)
69.  イージー・ライダー 《ネタバレ》 
案外楽しかった。車に揺られて窓に流れる風景を眺めているのは嫌いじゃないので。広い道路と真っ青な空、障害物のない開けた風景がすがすがしく、バイクは乗らないがその快感の一端ぐらいは感じ取ることが出来た。無限に色彩を変える空を眺めていると、自分がゼロになっていくような爽快感がある。その快感に二人のライダーは求めていた自由を見た気がしたのだろう。  しかしワイアットはどんなに走っても満たされない自分に気づく。「大金があって、しかも自由だ」と無邪気にはしゃぐビリーに、「それでも、ダメなんだ」とつぶやくワイアット。保守的な田舎者連中が正しいとは思っていない。かといって、麻薬に溺れて放浪する自分たちが正しいとも思えない。  人が進化して一段上の社会が訪れるという、あまりにもちゃちなヒッピー思想。理想社会に憧れた連中は虚ろな目つきで砂地に種を蒔き、誰もが平等に暮らす「金星人」は地球人の前に姿をあらわそうとしない。現代社会に失望して輝かしい理想を掲げるが、けっしてそこに行き着くことはない。  二人は外見は怖いが、ある意味では純粋すぎるくらい純粋だ。最後に吹き飛ぶバイクの無残な姿は、現実に押し潰される理想と重なって見えた。
[DVD(字幕)] 8点(2005-11-18 15:42:21)(良:1票)
70.  トウキョウソナタ 《ネタバレ》 
現代版『東京物語』を目指したのだろうか。とてもよく練られた脚本だと感じた。かなり突飛な展開もあるが、それも込みですべてが明確に家族の破綻へと収束していく。映像は常に被写体と一定の距離をとり、情緒的なべたつきを許さない。一家団欒のシーンでは小津ばりにカメラを固定しているが、おそらくかなりこだわったのだろう、これほどまずそうな食事の場面も珍しい(あ、でも朝ごはんのところはちょっとおいしそうかも)。  しかし筋書きがしっかりし過ぎているせいで、香川照之や小泉今日子の演じる人物が平板であるようにも思えた。今どき珍しいほど家父長的に振る舞う夫と従順な妻、という家族モデルは90年代の社会学研究から引っ張り出してきたようで、正直ちょっと古いんじゃないかと思う。俳優の力で救われているものの、率直過ぎる台詞もいくつかある(そうした台詞は一歩間違えるとまるで自分の不幸に酔っているようにも聞こえる)。  とはいえさすがは黒沢清だなと思わされたのは、単純に家族の再生を暗示して終わるのではなく、家族の変容を受け入れるという答えを提示して見せたことだ。初めは単純に反発していただけの長男はやがて精神的にも自立していくし、次男がピアノの才能を開花させたことも将来の独立を予想させる。そして無闇に威張りくさっていただけの父親は、次男が弾くソナタに黙って耳を傾ける。  無理に古い家族の形式を守るのではなく、それぞれが精神的に独立した個人であることを認めて、かつ家族であり続けようと努力する。題名が『ソナタ(=独奏曲)』である理由はここだろう。これはソナタが合奏になるのではなく、ソナタがソナタとして完成されるまでの物語なのだ。核家族のその先、という新たな時代と家族の変遷を描くことで、明確に『東京物語』“以降”であろうとする意欲が見て取れる。  ただ単純に楽しめたかどうかというと、この点数になる。人物の平板さもあるが、強盗のエピソードの唐突さに引いてしまったというのが一番の理由かもしれない。なぜもっとリアリティに徹しなかったのか、理解できない。
[DVD(邦画)] 6点(2009-07-14 08:17:37)(良:1票)
71.  フロム・ダスク・ティル・ドーン
ものすっごい、バカ。これでタランティーノが好きになりました。映画って何やってもいいものだと思うんですけど、タランティーノほど無邪気に、ばかげたことを平気でやっちゃう人は存在しない。唯一無二、子供のような天才です。  絶対に読めない後半の展開。深い人間ドラマも何もなく、脚本は意図的に破綻させられている。まちがっても完成されている作品とは言い難い。それなのに、感動してしまった。この超がつくほどのバカぶりに。どこまでも自由な、あまりにも自由なタランティーノに。万人受けするものではないが、個人的には心から楽しむことが出来た。  常識的な考え方、大人ぶった良識にファック・ユーを突きつける爽快感。中学生の頃に初めてこの映画を見てから、自分の心を縛っていたある種のくだらない思い込みを振り払うことが出来たように思う。もっとバカになって、はちゃめちゃに生きてもいいんだ、むしろそうしなきゃ損なんだと思えた。常識を捨てて、バカをやることの素晴らしさというものを教えてもらった。こういう作品に出会わなかったら、自分は今よりずっとつまらない人間になっていただろう。そんな思い入れをこめて、大サービスの10点。
[ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-13 03:28:55)(良:1票)
72.  ガンジー
映画としての出来はともかくとして、ガンジーという人物像に圧倒されてしまう。冒頭で引かれている「このような人物が存在したことを後世に伝えても人は信じないだろう」というアインシュタインの言葉はもっともである。  非暴力・不服従というほとんど非現実的とすら思える手段が力を持ち、やがては英国を退けてしまう過程は圧巻、脱帽だ。おそらくガンジーは、無闇に理想を唱えただけではなく、戦略を練り、十分な勝算を持った上で運動に身を投じていたのではないかと思う。イギリスの第一次大戦への参戦を支持したり、日本の太平洋戦争の会戦を支持したりと、必ずしも絶対の暴力反対を主張していたわけでもない。非暴力という手段が英国人に与える心理的影響もまた計算していたに違いない(そして相手がナチスドイツであれば違う手段を取ったのではないか)。つまりガンジーはずば抜けた知性と、高潔な人格の両方を兼ね備えた稀有な存在だったからこそ、歴史を大きく動かしたのではないか。甘っちょろい理想主義者であると同時に、鋭い知性を兼ね備えた現実主義者でもある。  ガンジーは言う、「私は楽観主義者なんだよ」。そう、この映画を観ると何よりもまず楽観主義者になれる。非暴力・不服従が現在の世界でどれだけ通用するかは定かではないものの、この映画を見るとその可能性を信じたくなる。高潔な精神が、暴力を超越するという、甘ったるい理想を信じたくなるのだ。
[DVD(字幕)] 7点(2005-12-08 16:30:10)(良:1票)
73.  赤ちゃん泥棒 《ネタバレ》 
意外と評判良くないみたいですね、これ。個人的には今まで観たコーエン作品のなかではダントツに良かった。昔のほうが面白かったんじゃん、コーエン兄弟。  笑えるだけじゃなく、洒落ている。刑務所入りする犯罪者と入所管理の警官が恋に落ちる冒頭から、夢のなかで平和な未来を垣間見るラストまで、ロマンティックで優しいユーモアがある。コーエン兄弟が登場キャラクターのひとりひとりを愛情をもって描いているのも心地良い。とんでもないやつばかりなのに誰一人憎みきれず、悪役までかわいらしい。  映画全体に明るくポジティヴなエネルギーが満ちていて、幸せな気持ちで鑑賞を終えられた。久々に、もう一度観たいと思わせられた作品。
[DVD(字幕)] 8点(2006-10-26 19:47:48)(良:1票)
74.  赤目四十八瀧心中未遂
勢子さんにあげるための香り袋を綾が手にとるシーンで、次に出る台詞がわかった――「これ、あたしにちょうだい」。思わず苦笑した。いかにも女性らしい言葉、いかにも女性らしい逞しさだと思う。生島の弱さを見透かして心中をやめたのにもかかわらず、他の女への贈り物を取り上げる。そこにちょっとは嫉妬というか、生島に自分を最優先させたい気持ち、支配欲のような気持ちが働いていたと推測する。もしかしたらただ単にほしかっただけなのかもしれないが、それにしても、あの台詞から感じる逞しさとずうずうしさ、そしてちょっと可愛いらしい感じが、いかにも女の強さだと思った。    最終的には兄貴に売られて博多に行くことを選んだ彼女の姿を生島は間抜け面で見送ることしかできない。綾はあんなにどうどうとしてるのに(強いよなぁ、そりゃ刺青入れられても悲鳴あげないわ)。    主人公はとんでもなくだめ人間で、綾の存在でその弱さがいっそう際立った。でも最後に少年の日に追いかけた蝶々を見つけたのは、彼が再び生きる意志を抱く象徴だったのだろうか? 綾に出会うことで極楽の鳥たる蝶々を見つけて、もう一度それを追いかける道を選んだのだろうか。それとも結局、蝶々を捕まえることはできないということだろうか。前者であってほしいと願う。とことん情けない主人公だったが、あんなに強い女性に出会ったなら、さすがに目を覚ましてもいいんじゃないかと思う。頑張って生きてみてもいいんじゃないか? 心中は未遂に終わったんだから。
[DVD(字幕)] 8点(2005-06-13 11:36:01)(良:1票)
75.  キャンディ(1968)
ポップでえっちな不思議の国のアリス。可愛くてお洒落な雰囲気はいいんだけど、面白いかといわれたら微妙。あの軍人のとこが一番笑えた。なぜか常に前方から風が吹いている詩人も好きだけど。フィナーレも個人的には好き。 なんとも言いがたい映画ですね。インド映画をみせられたようなカルチャーショックがありました。
5点(2005-01-23 05:36:45)(良:1票)
76.  ジャージの二人 《ネタバレ》 
原作が好きだったのもあってちょっと敬遠していたのだけれども、ちゃんと面白かった。筋書きを忠実に辿るだけだけでなく、原作に漂う独特の空気感までもがきちんと再現されている。これは案外難しいことだと思う。二人の俳優の力、気を使われているが凝り過ぎてはいない映像、どこを取っても絶妙の匙加減だ。  真横で暮らしていても人のことはわからない。しかしまったくの孤独というわけでもなく、緩やかに繋がっている。各々で好き勝手しつつ、縛り合うわけではないが、たまになんとなく歩調を合わせてみたり。濃密で親しい間柄よりも、これぐらい緩い方が心地良く、自然なのかもしれない。  特定の場所に行って妙ちくりんなポーズでも取らない限り着信しない携帯電話、あれがこの作品を象徴しているように思う。しかし『二人』が『三人』になっただけでちょっとがちゃがちゃしてしまうのだから、人間関係というのはどうにも煩わしいものだ。『一人』でも割かし居心地が良い。だからこそ『二人』にも成れる。  心配が的中して地味なわけですが(笑)、大満足です。長嶋ファンである分贔屓目に見ているかもしれないけれど、それにしてもよくできていると思う。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-17 21:10:31)(良:1票)
77.  BLOOD THE LAST VAMPIRE
デジタル技術はすごいが、かっこいいとは感じなかった。技術はあるが、センスがない。見せ方が上手いのはせいぜい冒頭の列車のシーンくらいか。せっかく日本刀という絵になる武器を持っているのに、普通にぶったぎるだけ。戦闘機に飛び移ろうとするモンスターを斬るクライマックスなんか、もっとドラマティックに演出できたはずで、これじゃ尻すぼみだ。セーラー服に日本刀というキャラクターも好評のようだが個人的には「?」。男みたいな顔立ちなので女子高生が日本刀を持つというギャップも薄れている。心理描写も少なく愛着も湧かない。本作ヒロインをモデルにしたGOGO夕張は可愛くてかっこいいのになあ。モンスター造型は安っぽいの一言で、デビューしたての三文漫画家レベルのデザインだ。いちおう退屈はしなかったので6点。短くまとめたのは潔くてよい。
[DVD(字幕)] 6点(2005-12-28 00:22:11)(良:1票)
78.  ボーン・スプレマシー
ボーンが超人ぶりを発揮しているのにも関わらず、ディティールが非常にリアルなのが面白い。たとえば車ごと河に転落したとき、車内の隅に残った僅かな空気を吸ってから行動に出るのだが、普通のアクションならこんなところまで描かない。工夫の積み重ねで単なる絵空ごとと感じさせない、厚みと迫力を出しているのだ。銃を乱射するでもなく、身の回りの日用品――トースター、酒、自動車などを使って敵を圧倒する。彼にかかれば丸めた雑誌ですら、人を殺す武器となる(この辺、浦沢直樹の『マスターキートン』に似ている)。同じ特殊工作員でもジェームズ・ボンドとはまったく違った、知的でクールなヒーロー像だ。これで脚本にベタ過ぎる展開がなければ最高なのだが……。(以下ネタバレ)とくにCIAの若いメンバーが上司に殺される場面、ちょっとバカバカしくなってしまった。あいつ『マイノリティ・リポート』観てたら死なずにすんだだろうな。
[DVD(字幕)] 7点(2005-12-27 22:21:59)(良:1票)
79.  ジーパーズ・クリーパーズ
前半を撮った時点で監督が強く頭を打ったとか、そういうことだろうか?
3点(2004-02-28 06:19:34)(笑:1票)
80.  スウィングガールズ
女子高生の集団は見た目は可愛い。だが内面は獰猛な獣の群れも同然――とかねがね思っていた。この映画の彼女たちはまさにそんな感じ。  青春ものということで、もっと成長や恋愛にスポットを当てているのかと思ったら、いさぎよくエンターテインメントに徹している。これはこれで悪くない。でも主人公らに次々と降りかかる困難に直接音楽に関係ないものが多く、設定を生かしきれていないと思った。たんなるドタバタの印象が強い。音楽の見せ場も主にラストだけで、中盤にもう一つくらい印象的なシーンがあってもよかったんじゃないだろうか。  DVD特典であるメンバー一人一人のプロフィールが秀逸。脱力系のユーモアに満ちたエピソードの作り方がほとんど神がかり的に上手く、この点前作を超えている。矢口監督には純粋なコメディを手がけてみて欲しいと思った。 この映画で一番好きなのは、偶然川越しに演奏していた二人が相手の出す音に気づき、うれしそうに曲を合わせるシーン。音楽で心が弾んでくるようすが観ていて伝わってきた。  音楽ってこんなに楽しいよ、人生ってこんなに楽しいよ、という明るい作品。気分が落ち込んでいるときに見ればいいかもしれない。
[DVD(字幕)] 5点(2005-08-30 13:49:40)(良:1票)

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS