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プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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81.  機械じかけのピアノのための未完成の戯曲 《ネタバレ》 
終盤近く、「俺(の存在価値)はゼロだ!」と絶望する夫に向かって、「あなたのすべてを愛してる」と言う妻。いいシーンです。誰だってああいうふうに絶対的に肯定してくれる人が必要なんだと思います。
8点(2004-02-28 03:45:48)(良:1票)
82.  まぼろし
まだ若いのもあって私には大切な人を失った経験がなく、その痛みは想像もつきません。夫の失踪を受け入れられず、幻想で何とかバランスを保つ妻。それでも否応なくつきつけられる現実が幻想を少しずつ打ち壊していきます。そして終盤の彼女が泣いているシーンで、夫の死を受容して終わるのだなと思いきや…あのラスト。いったいどう解釈すればいいのか…幻想に逃げた哀しい結末だったんでしょうか? それにしては圧倒的に美しい光景で、けっして陰鬱なシーンではありませんでした。  ところで、私は『ポネット』のような作品が嫌いです。「お母さんはあたしの心の中で生きている」と言って立ち直るのですが、ずいぶん妙な理屈だし、そもそも喪失の痛みってそんなに生易しいものでしょうか。もしかしたら、一生その痛みが癒えることはないかもしれない。思うに、愛する人を失って生きていけるか?と問われてはっきり答えられる人は少ないでしょう。だからこそ、曖昧なラストでよかったと思います。答えは一人一人の胸の中にしかないからです。それに、彼女が現実を選んだにしろ幻想を選んだにしろ、あそこまで人を愛することができたということ自体、奇跡には変わりありません。どんな解釈をしたとしても、あの海の美しさは誰にも否定できないでしょうから。
9点(2005-01-23 05:20:52)(良:1票)
83.  サンゲリア
あってないようなストーリー…よくこれで91分も続いたなと感心した。キモい、エグい、エロい、それだけ。あのゾンビ対ジョーズの企画は誰が考えたのか。バカなのか。バカだよな。いやに温和そうなサメで、あんまりゾンビに興味がなさそうだった(そういえば、サメのなかでも人間を襲う種類は希少らしい)。さっさと逃げようとするサメの口に無理やり腕を突っ込むゾンビ。アホな人間の思いつきに巻き込まれたサメ君が哀れでならなかった。
[DVD(字幕)] 5点(2006-03-23 00:43:04)(笑:1票)
84.  幻影師アイゼンハイム 《ネタバレ》 
映像はきれいだし、雰囲気もいい。しかし、それらもまずまずといった程度に留まっている。脚本は複雑な割に荒っぽく、とくに後半は話の筋を追うのに必死で、とりえであるはずの映像もなおざりになる。この題材なら世界観を魅せるのを優先して脚本は単純化しても許されただろうに、やっていることがまるでちぐはぐだ。肝心のどんでん返しも新味はない。なにもかもがひどく中途半端だ。  また奇術の描写に堂々とCGを使っているが、それをやったら映画だからなんでもありというのが前面に出てしまうわけで、マジック本来の魅力である不思議さ、幻想性が損なわれてしまう。トリックとも魔法ともつかないぎりぎりの境界線上を描くべきだったんじゃないだろうか。E・ノートンを十九世紀の奇術師に据えるというわくわくするような配役だが、充分に魅力を引き出せているとはいい難い。  恋愛描写に重みがないのも痛い。少年時代に引き裂かれた初恋の相手が現れたからといってそうそう夢中にならない――っていうか幻滅するパターンの方が多いだろう。  そもそもどうしてスティーヴン・ミルハウザーの小説を、どんでん返しがメインの娯楽映画にしようと思ったのだろうか? 別に原作に忠実である必要はないが、これは村上春樹を原作にミステリを撮るぐらいむちゃな挑戦だ。その結果がこの微妙な出来なのだから、なんとも残念としかいいようがない。
[DVD(字幕)] 5点(2009-07-08 00:50:06)(良:1票)
85.  独立少年合唱団 《ネタバレ》 
「僕でもウィーン少年合唱団には入れるって言ってくれたんだ」「父親は自動車工場で働いてる」「声が、出ない」――嘘に嘘を重ねる康夫。学生運動に刺激を受けた彼が「革命」を応援しようとしたことは、厳しい現実に押しつぶされそうになっている少年の精一杯の抵抗だったんでしょう。一方で、「音楽には意味なんかないんだよ。だから音楽はいいんだよ」、と教師は言います。そうです、意味なんかなくても、音楽はそれ自体が美しい、それ自体が価値を持つものです。 (とんでもないきれいごとを言わせてもらうと)生きることもそれと同じだと思います。道夫の父は死ぬ間際に何も思い出せず、革命を夢見た女性は悲惨な死を遂げ、池で溺れた少年は走馬灯なんて見ない。事故にあった康夫が思い出したのは、同じく死にかけたときの記憶。この作品が描く死は残酷で、生きることの空しさを思い知らせます。でも、それでも、最後の合唱はとても美しく響くんです。たとえ生きることがどんなに過酷だとしても、実はかけがえのない美しい瞬間があって、だからこそ人生はそれ自体が価値を持ちます。 初め学園から逃げた道夫は康夫に止められたけど、事故のシーンでは道夫が康夫を引き止める番でした。「戻れよ、ここもそんなに悪いところじゃない。約束するよ」この映画は、どこかにいる「康夫」に届けるために作られたんじゃないでしょうか。
9点(2005-01-21 01:52:27)(良:1票)
86.  プライマー
シンプルでコンパクト、それでいて繰り返しの鑑賞に耐える面白さ。監督は数学畑の人らしいが、この映画はそれ自体が一つの数式のようだ。秀逸な公式のような鋭いひらめきと、無駄のない機能美がある。  冒頭の数分で『π(パイ)』という映画を思い出して嫌な予感がしたのだが、杞憂だった。明らかに低予算ではあるけれども、一切の贅肉を削ぐスタイルを取ることで巧みに弱点を補っている。それに一定の美意識に沿って作られているのも確かで、作品を包み込む雰囲気も悪くない。個人的には美しいと感じる下りすらあった。また短い尺の中にも人生の苦味が込められ、単なる味気ないパズルには終わっていない。良質の作品だ。  しかし無駄がない分、観客への親切心もない(!)ので、間口が狭い作品であるのも確かだろう。ミステリ、SFなどのジャンルが好きな方であればおすすめできるけれども、万人受けする類の映画では決してない。観終えたあとにああでもないこうでもないと考えるのが好きな人であれば、きっと楽しめるんじゃないだろうか。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-07 11:20:43)(良:1票)
87.  リトル・ミス・サンシャイン 《ネタバレ》 
面白かった。でも正直、大好きといえるほどでもなかった。  まず、ユーモアとお洒落さが合わさったセンスの良さが目を惹いた。何度か絵葉書のようにきれいな映像があったけど、気取った感じはなく、どれもふっと気が抜けてしまうようななんともいえないやわらかさがある。たとえばみんなでバンを押している後ろで発電所の機械がシーソーみたいに稼動しているところ、思わず笑ってしまった。細かなネタをはずさないのにも笑いのセンスを感じる(とくにゲイのおじさんがポルノ雑誌を隠そうと微妙に体勢をずらすのがツボ)。  ただどうしても鼻についたのは、あまりにも大げさに負け犬っぷりを印象付けようとする強引な脚本。おじさんのライバルが大々的な成功を収めたり、兄の色弱が突然判明したり……。ロードムービー調でコメディタッチだからこそ許されたようなものの、にしてもやり過ぎじゃないかと思う。「勝ち負けといった世間が押し付ける価値観に捕われず、自分らしく楽しんでやっていこうぜ」みたいなテーマに異論はないのだけれども、ここまで声高に主張されると引いてしまう。  あと、タイトルは失念してしまったんだけれども、大昔に観た変人一家が自動車旅行するコメディ映画(ドラマ?)に似通ったエピソードがいくつかあったのが若干気になった。とくにおじいちゃんが死んで、死体を一緒に運んでいってしまうブラックなネタ、あれはもろにパクリだ。パクリじゃなくてオマージュ、なのか?  と、なんだかんだと文句を垂れつつも、ラストのダンスでは感動したのも事実。とくにあのバカ親父が率先して踊りに加わったのには、涙腺がじわりと熱くなった。いまひとつ物語に入り込めなかったのが残念でならない。
[DVD(字幕)] 7点(2007-06-12 00:44:56)(良:1票)
88.  ダイ・ハード 《ネタバレ》 
新作公開とはいえ、またTV放映かよ(笑)とバカにしつつ最後まで観てしまって、なんだか悔しい。初めての出会いがたぶん小学生に上るか上らないかという歳だったので、懐かしさすら感じた。  昔はそんなに意識してなかったけど、改めて観ると敵役のハンス、すごいキャラクターだ。凶悪さと上品な物腰という組み合わせだけなら他のアクション映画にも大勢いる。しかしこのハンス、なんと中盤でドジを踏んでマクレーンに捕われてしまう。こんな隙だらけのボス役なんて他にいるか?   しかもそこでとっさに機転を効かせて人質を演じ、情けない命乞いまでして危機を切り抜ける。すぐにマクレーンの罠に引っ掛かって尻尾を出すものの、結果的に窮地を脱し、おまけに新たなガラスの作戦を考案してマクレーンを苦しめる。肉体派のマクレーンに対し、精神力、知力で対抗するハンス。このコントラストは上手い。  そしてハンスがビルから転落する場面、久々に再見して、強烈に記憶に焼きついていることに気がついた。何がすごいってこいつ、自分が死にかけてるのをわかっていて銃を向けてくるのだ。死への恐怖よりも道連れにしてやるという悪意が勝る。アクションなら主役が落ちかけてピンチってときに手を踏みつけるのが悪役の定石だけど、こいつはある意味さらに怖い。情けないようでいて、とことん邪悪。  ある漫画家が魅力的なキャラクターを作るコツを訊かれて、「まず最初に欠点を考える」と答えていたのを思い出した。普通なら長所ばっかり考えてしまうところを、短所を加えることで人間味がぐっと増すのだそうだ。この映画の製作者達はそこのところをよくわきまえている。主役はもちろん、悪役も。弱さを見せることで、弱さを乗り越える強さもまた引き立つ。そういう強さは、とても人間臭い。  『ダイ・ハード』の面白さはそこにあると思う。派手なドンパチである以上に、人間と人間との対決なのだ。銃撃戦も大爆発も装飾でしかなく、核にあるのは人間同士が肉体と精神を限界まで振り絞ってぶつかり合うドラマだ。これで面白くないはずがない。
[地上波(吹替)] 8点(2007-06-25 01:41:43)(良:1票)
89.  クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 
ディズニーランドのアトラクションの、映像に同調して座席がぐいんぐいん揺れるやつを思い出した。乗り物酔いは一切しない体質なので個人的には平気だったが、辛い人は辛いだろうなと思う。実際そういう上映方法をしても違和感はないレベルだった(健康には障るだろうけど)。  自由の女神の首が飛んで来る画は、それだけでニューヨークの死を明示する名場面。しかし以降それを上回る劇的な映像はなく、ちょっと退屈した。地下鉄に入ってからのありきたりな展開がとても残念。  有名俳優を起用しないことで登場人物の普通っぽい雰囲気が増し、また誰が生き残るか予想がつきにくくなっている。怪物の全貌を見せずに恐怖感を煽るところもそうだが、『エイリアン』第一作を思わせるテクニックを怪獣に用いたところが斬新。  でもこの映画に一番影響を与えているのは過去の作品ではなく9・11の記録映像だろうと思う。粉塵が押し寄せる光景は現実そのまま。家族から電話がかかってくる下りは、描写が素朴なだけに痛々しかった。幕の閉じ方も非常に秀逸。パーティーのときに暗示するような応答はあったが、なるほどあの伏線をこう回収するのか、と感動させられた。カメラマンをあえてああいう性格にすることで視点を明快にしたのも上手い。  ただ、実験精神は買うけれども、全体として普通に面白かったかというとそうでもない。せめてもう一箇所、女神像レベルの見せ場があれば作品が引き締まったのではないかと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2008-09-09 18:56:53)(良:1票)
90.  シン・シティ
『パルプ・フィクション』への最高にクールなオマージュ。これほどの敬意をもらって、タランティーノも幸せだろう。  想像を絶する暴力と、その奥底に流れる温かな情愛。原作はコミックだし、単純に面白いのも確かだが、暴力のカタルシスの裏には常に悲しみが潜んでいて、浅いドラマには終わっていない。敵役だけじゃなく、ヒーローも皆罪を犯している。善を成すためには悪を為すしかなく、罪を償うためには罪を犯すしかない、という運命が苦い。  この街で頼りになるのは力だけ。だけど力の影にはときおり優しさが見え隠れし、暗闇に支配されたこの街が、ときおり途方もなく美しい瞬間を見せることに気づく。ときには交叉しながら繰り広げられる三人の物語が重層的に「罪の街」を浮かび上がらせ、この荒唐無稽な世界がいつのまにかリアルになる。それと気づかぬうちにこの冷え冷えとした世界に魅き込まれ、観る者はいつのまにか「罪の街」の住人になっている。目を逸らしたいのに、いつまでも見ていたい、残酷で美しい街。  グロテスクな映像が苦手じゃなければ、お奨めします。
[映画館(字幕)] 9点(2005-10-16 04:16:59)(良:1票)
91.  鬼畜大宴会
グロいというよりかは、汚い。登場人物も舞台も、とにかく汚い。70年代の若者の不細工さが妙にリアルで、役者に演技力はないが、とにかく嫌なキャラクターばかりで胸がむかついた。狭い部屋にやり場のないどろどろとした鬱屈が溜まっていく息苦しさはひどく不愉快で、そりゃ学生運動で爆発しなきゃやっていけないだろうなと思わせる。映像にも音楽にも独特のこだわりがあって、なかなかどうして成功しているように思えた。とくに荒んだ空気の表現が非常に上手いのだ。しかし人間が狂気に囚われていく過程としては、さほど真に迫っているとは思えなかった。恐慌へ向かう集団心理のリアルな描写を期待していたのだが、細かな経過はすっ飛ばしていきなり発狂。「へ?」という感じ。これじゃ学生たちにもともと発狂する素質があったとしか説明のしようがない。狂気そのものを描くという意味ではすごいのだが、おかげで少し物足りなかった。もっともこんな題名の映画にドラマを求める方が筋違いなんだろうが……
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-03 05:41:51)(良:1票)
92.  ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
平均点高っ。海の場面はさすがにぐっときたけど、他はそんなでもない。この設定であればもっと疾走感があっていいと思うし、映像的なセンスもとくに突出したものはない。ユーモアも微妙な抑え方で、大笑いさせられるようなギャグはなかった。もっとやろうと思えばかっこよく、むちゃくちゃにできたろうに。ただ、後味の爽やかさは抜群。暴力シーンも女の裸もあるのに、ものすごく健康的な映画だった気がする。死の宣告が主人公たちの生の密度を奇跡的に高め、短くとも生きている実感のこもった最高に楽しい時間が過ぎる。まったく悲壮感のない、幸福な最期。乗ることができればものすごく気持ちいい映画であることは間違いない。
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-18 02:25:01)(良:1票)
93.  宇宙で最も複雑怪奇な交尾の儀式
宇宙では地球人は「ファック星人」と呼ばれているらしい……あんまりである。けっこう地味(宇宙人視点なのに宇宙人は声だけ)なのに、すごく笑えたのはセンスがいいからだろう。精子の擬人化ネタには驚愕した。ばかばかしいのも限度を超えるとリスペクトに転じてしまう。ていうか、監督と友達になりたいな。
[DVD(字幕)] 6点(2005-07-31 01:36:24)(笑:1票)
94.  空の大怪獣ラドン
もちろん「空想科学読本」みたいに厳密に考えればラドンのような生物はありえないのだろうが、その怪物の存在をいかにもリアルに思わせるのが上手い。卵の殻からラドンの体長を推測するシーンなど、細かな取材と考証に基づいているのがわかる上質のSF作品である。たとえ特撮技術が現在のそれからすると見劣りするものだとしても、戦闘機との空中戦、衝撃波で吹き飛ぶ市街地、そして阿蘇山での徹底的な爆撃のシーンはかなりの迫力を感じた。製作者の気迫も伝わって来たように思う。ときには明らかに着ぐるみであるラドンに恐怖すら感じた(さすがにメガヌロンは可愛いだけだったが)。ラドンたちが死んでいく場面も哀れまずにはいられない。  努力と工夫次第でアナログな方法でも優れた表現ができることを知った。
7点(2005-01-31 04:28:19)(良:1票)
95.  2000人の狂人 《ネタバレ》 
普通こんな映画を観るときはB級ぶりを楽しむものだし、実際そういう見方もできる。でもこれ、意外と面白い。  まず音楽の使い方。冒頭はバンジョーの陽気な音楽に乗せて、牧歌的な雰囲気の片田舎の描写で始まる。これ、適当な音楽を入れたからちぐはぐになってしまったわけではなく、明らかに意図的です(監督本人が音楽担当。おまけに作中の村の名前が付けられたバンドの演奏)。ここで引き合いに出すと笑われるかもしれないけど、『フルメタル・ジャケット』のミッキーマウスマーチみたいにあえて明るい音楽を合わせることで恐怖を増しているのだと思う。村に迷い込んだ被害者たちの台詞にあるように、村人といい音楽といい、異様に明るすぎて却って不気味な空気が漂っている。  しかも一人一人の殺し方が凝っていて、祭りのイベントに見立てて殺しては村人が喜んではやし立てる。明るく楽しく行われる、おぞましく残虐な殺人。すっごく気持ち悪い…。取り囲んでいる一見普通の人々が全員狂人だっていうのがまた逃げ場がない感じがして、息が詰まるようだ。  そしてラスト、なんとか主人公カップルは村から逃げ出すのに成功するが、警察に通報すると、実は二人がいた村は100年前に戦争で全滅していたことがわかる。最後にまた冒頭の明るい音楽が流れる。  平凡なホラーなら怖がらせようとするあまり陰惨な音楽をかけて、ラストでは殺人鬼が復活して「恐怖は続く」的な占めにするだろう。しかしこの映画は奇妙な明るさと、起承転結のはっきりしたストーリーで、残酷なおとぎ話にも似た独自の世界を築いている。ちょっと『注文の多い料理店』を思い出した。 欠点もたくさんあるけど、単なるクズ映画扱いはちょっと可哀そう。
[ビデオ(字幕)] 7点(2005-05-03 11:02:30)(良:1票)
96.  かもめ食堂
「フィンランド人ってなんでゆったりしているのかしら」という疑問に対してフィンランド人が、「森がありますから」と答える場面がある。で、実際に森に行ってみて、たいしたできごともなく、せっかく採ってきたきのこも落としてしまったのに、「よかったわぁ」と満足できてしまう。この映画全体が、そんな存在だった。  劇的なドラマもなく、人生の深遠に対する考察もない。だけど単純に居心地が良くて、忘れ難くて、またいつか観返してもいいかな、と思えた。「世界の終りに何をするか」という問いに対して、「好きな人たちとおいしいものを食べる」と答えられる単純さ、素晴らしさ。そうそう、なんだかんだ言ってそういうことが一番大切なんですよね。ありふれた日常の価値を噛みしめる力というものが。  役者さんがまた良い。ちょっと失礼な言い方ですが、これが美女三人組であればこうは行かなかったでしょう。片桐はいりの外見はたくましくて内面は繊細すぎるというキャラクターは、なんだかムーミン谷の住人を思い起こさせる。脇役みんなにも言えることだけど、これといった長所もなくむしろ欠点の方が目に付くのに、妙に可愛らしくて魅力的だったりする。不完全なものに対してあれこれ批評するわけでなく、やんわりと受容してしまう大らかな空気がある。  毎日が多忙で鬱病になりかかっているような人におすすめ。森林浴をするように安らげる作品です。
[DVD(邦画)] 8点(2006-12-16 10:46:57)(良:1票)
97.  男と女(1966)
いつも脚本を中心に映画を観てしまう方なので、初めはかなり戸惑った。脚本よりも映像が優位にあり、映像以上に音楽が物語を引っ張る。音楽とともに台詞のない場面を積み重ねるモンタージュは普通の作品でも一部では使われるけれど、ほぼ全編にわたってこの調子というのには驚いた。すごいのは、それでも退屈せずに引き込まれること。作りはプロモーションビデオ的なのに、映像感覚や音楽、少ない台詞のひとつひとつが瑞々しくて、心の奥まですうっと浸透していく。白黒とカラーの使い分けやロングショットの多用が美しいと思ったら、予算との兼ね合いで偶発的に生まれたものらしいですね。ううむ、ますますすごい。あとは、役者の力。子供も含め、最大限に魅力が引き出されていると感じた。この映画では、脚本がいちばん下にあるのかも。
[DVD(字幕)] 7点(2006-01-03 00:31:02)(良:1票)
98.  王と鳥 《ネタバレ》 
寓話系ってあまり好きじゃないけれど、これは別だった。  まず、作画が素晴らしい。けっして昨今のCGのような迫力を持っているわけではないけれど、一枚一枚の絵が単純なようで工夫が凝らされていて、何度も目を見張らされた。城の造型はもちろん、巨大な機械兵の手の形など、諸処に独創的なセンスが表れている。キャラクターのちょこまかした動作はとてもナチュラルで、しかも愛嬌いっぱい。とくに王様の愛犬! あの可愛さはやばい。  宮崎駿作品との類似点の多さはちょっとびっくりするほどで、無条件に宮崎駿の才能を信じていたものとしてはショックだった。魔法と科学を融合したような不思議な世界観はジブリだけのものだと信じていたのに……。もっとも、似ているのは表層的な部分に留まっているし、ジブリはジブリで独自の境地に達しているから構わないと思うけれども。  この映画でいちばんコミカルなのが臣下たちが盲目的に王様を崇める下りで、次々とまぬけな銅像が製造されるシーンでは笑ってしまった。でもそこが同時にいちばん嫌なエピソードでもあって、笑う一方で薄ら寒い思いがした。実際、独裁者ってのは傍からみると明らかにバカでしかなかったりする。こんなにも滑稽な世界がある意味では「現実的」であるということに気づかされて、心底嫌な気分になった。  そしてこの結末は……尾を引く。普通なら煙突掃除と羊飼い娘が結びついて予定調和のハッピーエンドを迎えるところを、瓦礫の山を築いて放り出してしまう。機械兵が何かを考え込むかのようにたたずむ寂しげなラストシーンと、あの素朴だけどとても美しいピアノの音楽。愚かな独裁者を倒す正義もまた浅はかなものでしかなく、跡に残るのは廃墟に過ぎない。なんともまあシビアで、辛すぎる結末だ。  よくできた寓話だと思う。遠い時代の遠い世界の物語でありながら、まぎれもなく現代の、現実の物語でもある。
[DVD(字幕)] 8点(2007-08-05 00:48:54)(良:1票)
99.  28週後... 《ネタバレ》 
ゾンビ映画は数あれど、すぐに忘れ去られてしまうのが明白なものが九割以上。しかしこれは、久々に当たりといっていい良作だったと思う。筋書きの荒さが目立つが、それにしても主題の明確さ、映像や音楽の質の高さは頭一つ抜けている。  狙撃部隊による無差別攻撃や、ナパーム弾で炎上する市街地の場面はとくによくできていると思う。かつての名作『ゾンビ』でショッピングセンターをだらだらと徘徊するゾンビたちに現代人の虚ろさを重ねて見ることができたのと同じように、この映画の凄まじい勢いで襲い来るゾンビたちには戦場における人間の暴力性を重ねることができる。  間の抜けた無計画さ、一見理性的なようでいて極端すぎる決断、いざというときには歯止めが利かない獣性によって見る見るうちに無残な結果へ向かっていくさまは、まったく現実の米軍を見ているようで、洒落になっていない。そういう意味では、『ドーン・オブ・ザ・デッド』などよりも遥かに“走るゾンビ”の必然性があるように感じられた。  残酷なエピソードが多く、それも生理的というよりは精神的に訴えてくるのがこの映画の特徴だ。家族で殺しあったり、軍唯一の良心ともいうべき兵士があっけなく焼き殺されてしまったりと、驚くほど救いがない。閉所恐怖と暗所恐怖の両方を同時に覚える地下鉄の下りは見る人によっては半ば拷問ではないかと思う(まあヘリコプターの攻撃は、半ばギャグだけど)。  中盤、姉弟がバイクで疾走する廃墟と化したロンドンの光景が印象に残った。無人の市街地の寂寥とした美しさに、全編を覆う絶望的なヴィジョンが集約されているように思う。
[DVD(字幕)] 8点(2008-08-06 15:46:30)(良:1票)
100.  ヒストリー・オブ・バイオレンス
ありふれたアクション映画やコミックになりかねないネタを、抑えた表現であえて暴力の否定へと繋げる手法は秀逸。普通ならヒーロー役であるはずの主人公の振るう暴力に爽快感のかけらもなく、敵と同類の邪悪として描かれている。  また、(変な下心抜きに)セックスの場面がよかったと思う。上手くいえないが、なんというかあの描写があったからこそ、この夫婦の存在が厚みを持った人間として浮かび上がってくるのだと思う。男性サービスの意図はまったくなく、夫婦の愛情や、一言では言い表せない複雑な心の機微を巧みに表現していた。心理描写として意味のある性描写だ。  家族関係にリアリティがあるので、荒唐無稽な設定や展開もあまり気にならずに観ることができる。暴力シーンも厳密にいえばリアルではないのだが、もっともらしく感じられた。クローネンバーグ監督の手腕が、作品に強い説得力を与えている。
[DVD(邦画)] 8点(2006-10-26 18:18:10)(良:1票)

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