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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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121.  アルゴ 《ネタバレ》 
コメディにしかなりようのない題材をシリアスなサスペンスとしてまとめてみせたベン・アフレックの演出は素晴らしかったと思います。前2作でも感じたのですが、この人は空気作りが抜群に巧い。件のサスペンスフルな演出といい、一滴の血も見せずして殺伐とした舞台を作り上げた手腕といい、ベテラン監督以上に小慣れた技を披露しています。さらには、クライマックスにおける滑走路上のカーチェイスではスペクタクルもモノにしており、その内容はかなり充実しています。かつて『パールハーバー』に主演したのと同一人物とは思えないほどの活躍ぶりです。。。 また、脚本もよく練られています。イランでの作戦行動自体はかなり地味なのですが、本国での下準備や決裁ルートでの混乱を丁寧に描くことで、映画全体のボリュームをうまく調整しているのです。その一方で、主人公・トニーの家庭環境や上司との関係など、本筋とは直接関係のない要素には深入りしすぎなかったバランス感覚も見事なものだし、あえてヒーローを作らなかったという地に足のついたキャラ造型も素晴らしいと感じました。感動的なセリフや熱い演説を排除したことにより、必死で職務をこなす役人達の誠実さがより際立っているのです。。。 地味ではあるのですが、欠点らしい欠点のない素晴らしい映画でした。こういう堅実な映画をきちんと評価して最高賞を与えるオスカーは、やはり侮れない賞だと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-03-27 22:52:15)(良:2票)
122.  her 世界でひとつの彼女 《ネタバレ》 
前妻がルーニー・マーラで、エイミー・アダムスが元カノ兼親友で、友人からの紹介で渋々会ってみたらオリヴィア・ワイルドとか、どんだけ恵まれてるんすか、お兄さん。これだけの女性に囲まれたリア充の主人公がOSとの恋愛にハマるという設定がよく飲み込めなかったので、お話がなかなか頭に入ってきませんでした。もっと孤独で情けなく生きてる男が、やむにやまれず辿り着いたのがOSとの恋愛だったという設定の方が今日的で、より多くの独身男性の心に届いたと思います。 そもそもの問題として、OSが人格持ってたらウザイでしょ。メールの内容も通話の内容も筒抜け、何を検索したかも丸分かりで、夜な夜な増えていくエロ画像コレクションも全部お見通し。私だったら耐えられません。そんな感じで基本設定が弱すぎるため、核心部分にまで私の興味・関心がたどり着かないということが難点でした。SFというよりも寓話に近い作品なのでリアリティを追求する必要はないのですが、そうは言っても2時間は観客を納得させておけるだけの設定は準備しておくべきでした。 そんな感じで全体としてはイマイチだったものの、基本的には甘い作りの作品ではないので、部分評価が可能な点はいくつかありました。例えば、長年連れ添ったエイミー・アダムス夫妻が、ものすごく些細な理由で離婚してしまうこと。男女関係って、確かにそんなものだったりします。相手の明確な欠点や弱点については了承済なので意外と破局の理由にはならず、本当にどうでもいいことが火種になるものです。また、主人公とOSが破局に至った原因も、男女関係というものの一側面を的確に捉えているように感じました。リアルで何人かの女性から拒絶され、自分を肯定してくれる相手を欲していた主人公と、人間についてもっと知りたいと思っていたOSが、タイミングの一致もあって交際を開始。しかし、交際によって双方ともに変化が起き、誰が悪いでもなく交際が終了してしまうという呆気ない別れ。リアルの恋愛もこんなもので、♪寂しさゆえに愛が芽生え、お互いを知って愛が終わる~と長渕剛が歌っていた通りです。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-07-09 01:19:51)(良:2票)
123.  ロード・オブ・ウォー 《ネタバレ》 
冒頭の、弾丸の一生から映画にのめり込みました。とってもヘンなイントロなんだけど、そのアイデアには面白みと遊びがあり、映像的にも斬新で目を引き、そして武器の流れを分かりやすく説明し、その果てには少年を殺害して悪い後味を残すという、本作を象徴する絶妙な掴みです。ニコラス・ケイジ扮するユーリーがのし上がる前半は出色の面白さで、入念なリサーチに基づくと思われる脱法行為の数々には「へ~」と唸ったし、彼が成功を重ねる様はサクセスストーリーとしてのカタルシスまでが存在しています。さらに彼の商材は武器、取引相手はゲリラや独裁者であるだけに、死の危険を身近に感じながらのビジネスという緊張感もエンターテイメント作品としての面白さをサポート。捻じれたユーモアも絶好調で、このままいけば空前の傑作になるのではという勢いでした。しかし、シリアスモードに入る後半になると映画のテンションは一気に落ちてしまいます。夫のビジネスの正体を知った家族がドン引きし、夫は家族のためにビジネスから足を洗おうとするという展開は月並みで、意外性溢れる前半と比較すると見劣りします。目の前で弟を殺され、両親からは勘当され、妻も子供も失うという展開も監督が意図するほど衝撃的ではなく、こんな商売してればこんくらいのリスクは付き物だろうなぁという印象しか持てませんでした。ただし、最後の最後になってこの映画は大ドンデン返しを仕掛けてきます。飄々と商売してきたユーリーもいよいよお終いかと思いきや、最大のパートナーが突如彼を救いに現れるのです。そのパートナーとはアメリカ合衆国。アメリカ合衆国こそが世界最大の武器輸出国であり、法律上・国際世論上取引が困難な国に対してはユーリーのような民間業者に取引をさせていたことが、ラストで明かされます。このドンデン返しには驚いたし、本作の核となる事実をもっとも衝撃的なタイミングで観客に提示した構成力には唸らされました。。。と、こんな作品なのでアメリカ資本からの出資はビタ一文受けられず、60億円もの製作費をすべて海外資本から掻き集めたそうです。それを可能にしたのがニコラス・ケイジという看板ですが、ジェリー・ブラッカイマー作品で知名度を売りつつ、本作のようなリスキーな企画に名前を貸す姿勢はもっと評価されても良いと思います。安全な作品ばかりに出演するそこいらの名優よりも、よっぽど立派な俳優です。
[DVD(吹替)] 7点(2010-08-14 01:57:31)(良:2票)
124.  ヒート
【2012/4/30レビューを変更しました】 公開当時、クライムアクションに3時間という長さはかなりの衝撃でした。そこまで長いクライムアクションは「スカーフェイス」くらいしか前例がなく、その「スカーフェイス」にしても成り上がり者の一代記という大河要素があったため、純粋な犯罪映画でこの上映時間は異例中の異例。実際、本作をはじめて鑑賞した時には退屈に感じたし、世間一般の評価もそれほど高くなかったと記憶しています(決して駄作ではないが、これだけのキャストと上映時間を費やして作る内容ではないという意見が多かった)。映画を観る目がそれなりに肥えた(つもりの)現在の目で見ても、本作は上映時間の使い方がうまくないという印象を持ちます。大銃撃戦でテンションがピークを迎えた後に、1時間もダラダラと映画を続けたのは失敗でした。「事が起これば30秒フラットで高飛びする」が口癖だった職人気質の犯罪者が、銃撃戦後数日もロスに留まってはいけません。あの数日を数時間に凝縮し、厳しい環境下で厳しい判断を瞬時にこなしていくという展開にした方が面白みがあったと思います。。。 ただし、本作には素晴らしい要素が多いことも確か。年月を経ることで作品の評価が上がっていき、最終的にはジャンルの代表作となったことにも納得がいきます。銃撃戦の演出は、いまだにこれを超える映画は存在しないと言い切れるほど完成されているし、捜査官と犯罪者がともに優秀であることを観客に伝えるためのエピソードの積み重ねも実に丁寧です。そして、本作が傑出しているのが捜査官と犯罪者の関係性で、互いに敬意と友情を感じつつも、プロとして戦うべき覚悟も固めているという熱いつながりには悶絶しました。それを象徴するのが、はじめて二人が言葉を交わすカフェの場面です。捜査官パチーノは仕事に打ち込みすぎるあまり家族とうまくやっていくことができず、プライベートが破綻寸前に追い込まれたことで、犯罪者デニーロに会いに行く決心を固めます。デニーロは敵ではあるが、数少ない自分の同類である。彼の人生観、仕事に対する思いを聞くことで、迷う自分が進むべき道を見つけようとするのです。そして、「普通に暮らす気はない。あくまでプロに徹する」というデニーロの言葉を聞き、パチーノは自分の生き方に自信と確信を取り戻します。最後には「今度会う時はお前を殺す」と言い合って別れる二人。熱すぎるでしょ。
[DVD(字幕)] 7点(2004-08-05 12:22:42)(良:2票)
125.  ニック・オブ・タイム 《ネタバレ》 
なんとなく面白い映画でした。劇場で見ればいろいろと不満も出るでしょうけど、日曜洋画劇場なら「昨日のあれ見た?」って話題になった映画だと思います。みなさんが指摘する「自分で殺せよ」問題ですが、クリストファー・ウォーケンの目的はあくまでジョニー・デップを暗殺犯に仕立て上げることであって、本当に殺すことは期待していなかったように思います。その証拠に、クライマックスではウォーケン本人が銃をかまえてたでしょ。殺しはウォーケンが確実に行い、その罪をデップに着せるハラだったと考えられます。それでもウォーケン軍団のヌルさ加減はヒドイものでしたけど。「ここで撃て」ではなく「1時半までに殺せ」ですからね。そんなアバウトな命令があるかって思いました。そんな中、何度か巡ってくるチャンスに発砲を躊躇するデップ、「お前、さっきチャンスだったじゃねぇか」と怒るウォーケン。「勇気出して告白しろよ」「でもまだ決心がつかないよ」って校門の前で揉める男子中学生じゃないんだから。そしてラスト、なにがなんでもデップの娘を殺そうとするウォーケンさんたちですが、暗殺が失敗した今となってはそんなことはまったく重要ではないと思うんですけど。そんな感じでツッコミどころ満載ですが、90分に満たない上映時間のおかげできちんと緊迫感を維持できていたと思います。これは一風変わったワンアイデアと、それをギリギリ維持できるラインの中でうまく引き上げた構成の勝利ですね。
6点(2004-09-06 00:39:19)(笑:1票) (良:1票)
126.  ブルー・リベンジ (2013) 《ネタバレ》 
情念のぶつかり合いこそが復讐映画の醍醐味なのですが、本作にはそれがありません。冒頭20分にはほとんどセリフがなく、観客に対する状況説明もなし。虚ろな目をしたホームレスが人を殺すのですが、この時点で観客は誰が誰を殺したのかがよくわからないため、そこには何の感情も起こらないのです。その後の説明で、どうやらこのホームレスは親の仇を殺したということが分かるのですが、当のホームレス自身も復讐による高揚感や、人を殺したことへの後悔といったありがちな感情をほとんど表していないという点が、作品の異様さをより高めています。 本作のテーマは復讐の連鎖であり、対テロ戦争開始後のアメリカ映画ではさんざん扱われてきて若干陳腐化の傾向もあるテーマですが、本作ではかつてなかった切り口でこれが描かれています。主人公は両親を殺されたショックで精神をやられてホームレスとなっていたが、現在の淡々とした表情を見るに、親の仇に対する怒りも時間とともに薄れていたようです。しかし、事前にやると決めておいた復讐は一応果たしに行く、失うもののないホームレスだから刑務所に入れられることも怖くないし。主人公がやり場のない怒りや、どうしようもない使命感に突き動かされているのではなく、ただ何となく復讐に走るという点が異様だったし、そのドラマ性のなさにある種のリアリティを感じさせられました。 しかし、事は一筋縄にはいきません。復讐を果たした自分が服役して終わるだろうという見込みは外れ、加害者家族は警察に被害届を出すのではなく、主人公(と姉一家)に報復するという行動に出ます。ここに、被害者一家と加害者一家の血で血を洗う抗争が始まるのですが、ザ・ホワイトトラッシュといった感じのイカつい風体と重武装、しかも貧困層らしくやたら人数の多い加害者一家に対して、戦闘力ゼロに等しく不意討ちをかけるしか逆転の目のない主人公はモルドールに潜入したホビット同然の存在。この絶望的な戦力差が作品に大変な緊張感を与えており、特に姉宅襲撃場面では『ノーカントリー』を初めて見た時並みにハラハラさせられました。 その後、加害者一家側の事情も明らかにされ、序盤で主人公が殺した相手が実は親の仇ではなかったこと、両親殺害の犯人はすでに死んでいることが判明します。しかし、一度始まった復讐の連鎖は誰にも止められず、第一の当事者である親の世代が全員鬼籍に入っているにも関わらず、子の世代はもはや何の目的かもよくわからない殺し合いを延々と続けます。これを終わらせるには、どちらかの家族が全滅するしかない。アメリカの対テロ戦争やパレスチナ問題など、多くの国際問題に共通する論点を主要登場人物10名程度の小さなドラマに圧縮してみせた脚本の出来が素晴らしく、単なるバイオレンスの佳作に終わらせない含蓄ある作品となっています。 監督のジェレミー・ソールニアーは記事によっては驚異の新人扱いされているものの、実際には本作以前にも10年ほどのキャリアを持つ人物です。長い下積みに終わりが見えず本作を最後に引退しようと考えていたものの、その最終作がカンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を受賞して映画祭の目玉作品のひとつとなったことから、キャリアが一転しました。人生とは分からんものです。次回作の”GLEEN ROOM”も引き続き高評価を得ており、今後、大化けする可能性のある監督として要注目なのです。
[インターネット(字幕)] 8点(2016-06-23 18:13:38)(良:2票)
127.  コン・エアー
90年代を代表するバカアクション超大作。長年のパートナーだったドン・シンプソンと死別後、ジェリー・ブラッカイマーが単独で仕切ることとなった初の大作であり、本作はブラッカイマーにとってキャリアの分岐点となった作品でもあります。『クリムゾン・タイド』や『ザ・ロック』の頃にはまだ企画力で勝負しようという姿勢のあったブラッカイマーですが、本作以降は完全にB級バカ街道を突っ走ることとなるのです。。。 とはいえ、B級路線であってもマジメに仕事をすることがブラッカイマーのエライところで、基本設定のバカさ加減を除けば、意外なほど丁寧に作られている映画でもあります。この手の映画にありがちなご都合主義(なぜか現場に居合わせる主人公、戦いが終わったところで都合よく駆けつける警官隊etc…)がほとんどなく、すべてのイベントについては事前に理由付けがなされています。登場人物は多いものの埋没したキャラはおらず、全員にきちんとした個性が与えられている点でも感心しました。VFXの完成度は非常に高く、現在の目で見てもアラがほとんど見当たりません。同時期に製作された『エグゼクティブ・デシジョン』や『エアフォース・ワン』にミニチュアやCG丸出しの場面が散見されたことを考えると、このクォリティは驚異的だと思います。キャスティングはかなりの邪道で、ジョン・キューザックを除けばブサイクなおっさんばかり。当時のニコラス・ケイジは大作に主演するクラスの俳優ではなかったし、コンエアーに乗り込む唯一の女性はヒスパニック系の微妙なおばさん。普通の映画であれば、このふたつの役柄くらいは美男美女で固めてくるところなのですが、そういった王道は完全に外してきているのです。そして、こんなにもヘンテコなキャスティングで映画を成功させたわけですから、ヒットメーカーとしてのブラッカイマーの勘の良さは相当なものだと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2012-11-10 15:36:54)(良:2票)
128.  ワイルド・バレット
各々思惑を胸に秘めた悪人達が多数入り乱れるサスペンスアクションはよく見かけるジャンルですが、本作の面白さはその中でも群を抜いています。タランティーノやガイ・リッチー作品にも比肩するほどよく出来た脚本に加え、トニー・スコット風のかっこいい画面作り、ノンストップのスピード感、ハマりまくりの俳優陣(ポール・ウォーカーかっこよすぎ!ヴェラ・ファーミガ美人過ぎ!)、もはや文句のつけようのない仕上がりです。ヤクザ同士の権力闘争に加え、DVや児童ポルノなどネタにしていいのか微妙な題材にまで臆することなく手を付けたおかげで、本作は独自性を打ち出すことに成功しています。話が桁外れに陰惨なのです。陰惨ではあるが、救いがないわけではない。バイオレントな落とし前はきっちり付けるため、後味は妙に爽やか。その辺のバランスの取り方も最高です。この監督、「トゥルー・ロマンス」や「ナチュラル・ボーン・キラーズ」といったタランティーノ自身が監督していないタランティーノ作品の大ファンと見ました。
[DVD(吹替)] 9点(2011-05-29 19:55:08)(良:2票)
129.  Mr.&Mrs. スミス 《ネタバレ》 
ブラピ&アンジーという豪華キャスト(しかも単純な娯楽作を敬遠する傾向にあるふたり)を揃えながら、意外なほどストレートなアクションコメディとなっています。また、監督がダグ・リーマンだけに一筋縄ではいかない作品になるのかと思いきや、最後まで軽いノリを通しているのが好印象です。この手の作品にありがちな「絆を再確認する夫婦の感動的な姿」みたいなホロっとさせる展開も入れておらず、アクションコメディはこうあって欲しいという仕上がりとなっています。豪邸に住む美男美女の殺し屋夫婦という浮世離れした設定ながら、これを違和感なく演じてみせるブラピ&アンジーのスターオーラは大したもので、高い服を着こなしたり、夫婦の軽いやりとりをしたり、激しいアクションをやったりとどれも様になっているのはさすがです。ボーン・アイデンティティの時に「もっと見たい」と思ったダグ・リーマンのアクションもたっぷり楽しめます。この人のアクションに独特のクセはないものの、美しさと合理性、武器へのこだわりが調度いいバランスで同居しており、なかなか良い見せ場を作ります。またコメディ部分もただバカバカしいだけではなく、夫婦というものがきちんと描けています。片方の話をもう片方がほとんど聞いていなかったり、悪意なくとっさに出た一言(ここでは一発の銃弾)が相手に火を点けたり、一方が優しくなった時にもう一方が意固地になってトゲのあることを言ったり(そして直後に後悔)、日本もアメリカも夫婦のやることは同じなんだなぁとしみじみしました。ジョンはガレージに、ジェーンはキッチンにと、家の中なんだけど男(女)にはわからない場所に武器を隠してあるのもツボでした。残念なのは夫婦ゲンカが終わって二人が力を合わせる後半になると、途端に話がつまらなくなること。会話の面白みはなくなるし、アクションも大味でありきたりなものとなります。「二人を相討ちさせるために全部組織が仕組んだものだった」というオチは完全に蛇足で、そんな気の長く不確実性の高い罠を張るくらいなら、直接殺した方が早いわけです。またスミス夫婦は「逃げずに戦おう」と決心したのでてっきり組織の中枢に襲撃でもかけるのかと思いきや、ショッピングモールで刺客を返り討ちにして終了(ど真ん中に突っ立って一心不乱に撃ちまくったら敵が全滅という投げやりなアクション)で、大変な肩透かし感がありました。
[映画館(字幕)] 7点(2009-06-13 13:46:58)(良:2票)
130.  2012(2009) 《ネタバレ》 
21世紀のジョン・ギラーミンことローランド・エメリッヒが放つ、映画史に残る大バカ超大作でした。これまでもエメさんは大風呂敷広げまくりのバカ映画を作ってきましたが、今回はバカの度合いが桁外れ。合衆国大統領が娘にまで隠している国家機密を、なぜかド田舎でDJやってるキ○ガイが事細かに知っているという不思議。超極秘とされている箱舟建造場所まで知っているのはナゼなんだ。その箱舟は全長が数キロにも及ぶ巨大船であるにも関わらず、工具がたったひとつ挟まっただけで動かなくなるというハリボテ仕様。「ドアが完全に閉じないとエンジンが動かない」って、一体どんな設計してるんだ(笑)。主人公は自分達が助かりさえすれば良いと思っている超絶ワガママ人間で、眼下で数千万の人間が死んでいても冗談を言えるタフな心を持っています。彼らが乗る巨大輸送機を使えば数百人の命を救えたにも関わらず、10人程度の身内・知り合いだけを乗せて火事場から飛び立つという倫理観の欠落ぶりには呆れました。合衆国大統領、輸送機のパイロットら、勇気を出して自己犠牲を買って出た人間は必ず死ぬという暴虐ぶりで、生き残った人間達はその自己犠牲について省みることもなく「俺が俺が」と言い続ける有様。ラストでは、家族の絆を取り戻したんで邪魔になってきた再婚相手が、実に調度良いタイミングで死んでくれるというハイパーご都合主義が炸裂します。生き残ったファミリーは、彼らの生存のためにあれこれ頑張ってくれた再婚相手のことを微塵も思い出すことなく、「俺ら生き残って良かったよねぇ」と新天地への希望を膨らませるのでした。。。なんだこの映画は(笑)。もしこれらすべてが計算のうちで、アメリカ人の貪欲さを描く壮大なブラックコメディであったとしたら、この映画は世紀の大傑作であると思います。ただし、ヘルムズリー博士がたまに英雄的な行動をとったり、家族愛で泣かせようとするくだりがいくつか挿入されている点から判断すると、エメさんはこの映画を大真面目に作ってるっぽいんですよね。その頓珍漢ぶりがなんともカックンなのですが、映画史上最大の破壊が繰り広げられる前半の素晴らしさに免じて5点とします。
[DVD(吹替)] 5点(2011-12-06 20:20:06)(笑:2票)
131.  スター・ウォーズ/帝国の逆襲
EPⅣは映画史上において重要な作品だと思うのですが、製作から30年以上を経た現在の目で鑑賞するとビジュアル的にもストーリー的にも不十分な点がいくつかあって、時代性を差し引いて評価せねばならない作品だと言えます。一方続編である本作の面白さは圧倒的で、現在の娯楽作と比較しても遜色のない仕上がりとなっています。起承転結の「起」と「結」は前後作にお任せし、本作は頭からお尻までフルスロットル。当時の作品として、ここまでの密度とテンションを保った作品は他になかったと思います(翌年の「レイダース」も担当した脚本家のローレンス・カスダンの手腕でしょうか)。ビジュアルの進化も著しいものがあります。EPⅣのVFXは当時としては画期的だったとは言え、現在の目で見るとスピード感に欠けており、空中戦の場面であってもゆっくりとした動きが気になる部分がありました。しかし本作ではその欠点が解消されていて、新3部作と比較しても見劣りしないほどビジュアルが完成されています。また空中戦のイメージの強かった「スター・ウォーズ」において雪上での戦闘を映画の冒頭に持ってきたことは、サーガの世界観を広げるために効果的でした。迫りくる巨大歩行ロボットから走って逃げる歩兵の図というものは見たことがありませんが、戦争映画としての側面を突き詰めると当然行き着く結論であり、これをきっちり見せたことでスター・ウォーズという作品の深化を図ることに成功しています。この場面はメカデザインもVFXも演出もシリーズ中最高峰であり、本作製作時にはルーカスもスタッフも絶好調だったことが伺えます。。。ホスの戦いが象徴するように、単純明快な冒険活劇だったEPⅣから一転して物語は戦争の過酷な面が強調され、またガンコな師匠の登場や悲劇的な恋愛要素の追加でドラマもアダルトなものに。これは、ドキュメンタリー出身のアービン・カーシュナーを監督に、ハワード・ホークスのお抱えだったリイ・ブラケットを脚本家(初稿を書き上げた直後に死亡したため、仕上げたのは新人のローレンス・カスダン)に起用したことの成果ですが、スター・ウォーズの続編としてハード路線への転向を決定したルーカスはさすがの慧眼でした(ただし公開当時は不評で、EPⅥではソフトな面を強調するためイウォーク族が登場することに)。本作がEPⅣの延長に過ぎなければ、シリーズの熱狂的なファンなどは現れなかったはずですから。
[DVD(吹替)] 9点(2010-09-05 00:36:42)(良:2票)
132.  マネーモンスター 《ネタバレ》 
ジョディ・フォスター、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツというハリウッドの意識高い系が揃って参加しているだけに重厚な社会派サスペンスを予想していたのですが、実際にはフットワークの軽いコンパクトな犯罪ドラマでした。 本作で驚いたのはジョディ・フォスターの演出力や構成力の高さであり、実にうまくドラマが流れています。主要登場人物の紹介や人となりの説明を冒頭10分で簡潔に終わらせるとすぐに事件発生という手際の良さ。また、被害者と加害者から協力者へという主人公二人の関係性の変化も極めて自然であり、そこに違和感はありませんでした。リーが自身とカイルの幸福度をスコアー化し、金を持っていることが必ずしも幸福には繋がっていないという事実を突いたり、カイルが奥さんにこっぴどく叱られたりといった象徴的なイベントがうまく挿入されているため、語り口に説得力があるのです。 またサスペンスの構図もうまく作られています。小市民に過ぎないカイルではリーを撃てないことは誰の目にも明らかであるため、代わってリーの救出よりも爆弾解除を優先したい警察のスナイパーがリーの懐にある起爆装置を狙っているという設定を置いています。「リーは重傷を負うけど心臓には当たらない位置に撃つから、すぐに蘇生すれば大丈夫だと思う」などと怖い計画を立てているわけです。これにより、いつ発砲されるか分からないというサスペンスを作り出しており、うまく考えられた設定だと感心しました。 問題点は、鑑賞後に何も残らないということ。前述した幸福度のスコアー化や、大企業の資金運用の杜撰さなど、何か深いことを言おうとはしているものの、そのどれもが観客の思考や人生観に影響を与えるレベルにまでは昇華されていないのです。この辺りがもっと鋭く尖っていれば社会派サスペンスの秀作になった可能性もあっただけに、やや中途半端に終わった点は残念でした。 他方、衝動的で子供っぽいリーの後ろにはしっかり者のパティがいたり、愚かなカイルが奥さんに叱られたり、運用で大赤字を出したうえに隠蔽したアイビス社CEOの不正を女性幹部が暴いたりと、劣った男と賢い女という図式が全編に渡って繰り返し示される点は、ややしつこいかなと思いました。この点については、監督の個人的な志向が表に出すぎているように感じます。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-12 20:07:48)(良:2票)
133.  大脱出(2013) 《ネタバレ》 
日曜洋画劇場に育てられた私にとって、スタ・シュワは神のような存在です。その点において、私は本作が対象とするジャストの観客だと思うのですが、そんな私が見ても、本作の出来はいただけませんでした。。。 まず、スタ×シュワの競演という点が本作最大の売りとされていますが、二人の顔合わせは『エクスペンダブルズ』で終わっている以上、観客にとってそれほど大きな価値は持ち合わせていません。さらには、両者ともピンでの主演作が大コケしており、「夢の競演!」というカードを使うしかヒットを見込める道がないという台所事情も観客には見抜かれているだけに、往年のスターをただ共演させるだけではなく、全盛期であれば絶対にやらなかったことをやらせるくらいのファンサービスが必要だったと思います。しかし、この企画にはそうした工夫が足りていません。スタとシュワが会話したり、同じ画面で戦ったりしていれば、それだけで観客は喜ぶだろうという誤った前提で映画を作っているのです。。。 また、アクション映画としても非常に中途半端。派手なドンパチをやりたいのか、緻密な頭脳プレーを見せたいのかが製作者の中で固まっておらず、その結果、目の覚めるような見せ場もなければ、あっと驚くような展開もない、どちらに振れることもなくダラダラとやっているうちに脱獄成功という、本当にどうしようもない展開を辿ります。「難攻不落のハイテク刑務所!」とハードルを高く設定した割に、主人公達には大した困難が降りかかることはなく、それどころか、いとも簡単に協力者を得られたり、看守や所長がアホ揃いだったりと、当初は高かったハードルが勝手に下がっていくので萎えてしまいます。あえて懲罰房に入ることで刑務所の弱点を突くという方法を序盤で見せておきながら、本編においてもこれとまったく同じ方法で脱獄を試みるという愚かな構成は、さすがにどうかと思いました。”Escape Plan”というタイトルを冠してる割には、脱獄のバリエーションが少なすぎます。。。 本作を見ると、『エクスペンダブルズ』がいかに優れた企画だったかが分かります。ネームバリューのある老人軍団は看板を背負うだけで、派手なアクションは現役のアクションスター達にやらせることで、アクション映画としての体裁をきちんと守っていたのですから。動きに限界のある老人2人が共演したアクション映画は、本当に悲惨なことになっています。
[映画館(字幕)] 4点(2014-01-12 00:19:36)(良:2票)
134.  アナザー プラネット 《ネタバレ》 
【注意!壮絶にネタバレしています】 これまた評価に困る映画です。「もしあの事件がなければ、自分の人生はどうなっていたのか?」誰もが漠然と考える話を「もうひとつの地球」というSF設定に落とし込んだアイデアと構成力には素直に感心しました。現実的なドラマを主軸にしながらも、空に浮かぶ地球というシュールなイメージによってちゃんとSFしているバランス感覚はお見事だし、低予算映画とは思えないほど演技もしっかりしています。ただし内容にはほとんどメリハリがなく、正直言って退屈します。アート系ぶってる作りは時に鼻につき、もうちょっと観客にサービスしても良かったのではないかと思います。鑑賞中は「良い点と悪い点を差し引いて5点くらいが妥当かな」なんて考えていました。。。 しかし、クライマックスで作品の評価は一転しました。これは紛れもない傑作ですよ。ラスト、主人公はもう一人の自分と遭遇します。つまり、「もうひとつの地球」でも主人公は同じ悲劇を経験していたのです。この映画は「人生に”もし”はないのだ。起こったことは常に自分で背負わなければならない」と訴えているのです。そして、「その延長にある赦しもまた、自分自身でしか与えられない」と主張します。主人公は被害者の父親と親しくなり、一時的には心を通わせました。しかし、彼女の罪が明らかになった途端に被害者は再び心を閉ざし、彼女に赦しは与えられませんでした。結局、彼女は「アナザープラネット」へ行く権利を父親に譲り、家族と再会する機会を彼に与えることで赦されようとしますが、この結末はその願いをも全否定します。そこいらの安っぽいドラマであればこれら一連の心の交流で彼女は赦されるところですが、本作は「"罪と決別する点"は自分で見つけるしかない」と突き放すのです。その点を見つけられなかった老人は自分自身を完全に壊してしまいましたが、主人公が同様の末路を辿らないためには自らの判断で罪と決別するしかありません。しかしこれは他人に赦しを請うよりも難しいこと。本作は非常に重い主張をしているのです。SFという変化球でこんな重いことを言われるとは思いもよりませんでした。本作の構成は神がかっていますよ。
[DVD(吹替)] 8点(2012-04-25 01:48:55)(良:2票)
135.  亡国のイージス
原作を読んでいない私にはさっぱり意味不明な映画でした。それも話が複雑すぎて未読者では把握が困難というのならまだしも、伏線も張らずに「この人、実は○○でした」なんてことを平然とやるなど論理的に話がつながっていないという、映画単体として成立させることを完全放棄したかのような姿勢はさすがに問題です。ジョンヒなどは背景説明の描写すら一切なく、何者かよくわからないまま登場して死んでいくという、だったら出さなきゃいいじゃないかという人物までいます。原作に仁義切ってなるべく要素を詰め込もうとした結果なのかもしれませんが、そのために映画文法なんてものもかなぐり捨ててどれだけ丁寧に見てもわからない映画にしてしまうのなら、映画化の価値を製作サイド自身が否定する態度だとも言えます。また、話だけでなく画面作りもまずく、あんなにスピード感や緊迫感に欠けるアクションは久しぶりに見ました。いそかぜ艦内を知り尽くしている仙石と、防衛庁情報局エージェントの如月を組ませたのなら、それぞれの長所を活かしながらアクションに差別化を図るのが普通なのに、どいつもこいつもダラダラと撃ち合っては走り回ってるだけ。仙石とヨンファの対決などはもっとも盛り上がるべきところなのに、ごろごろ転がりながら延々殴り合ってるだけという、いつの時代のアクションやってんだと呆れてしまいました。カットが変わるといきなり撃ち合いが終わってる、「こんなアクションもありました」みたいな感じでスローモーションでアクションを締めくくるなど、むちゃくちゃな編集にも脱力。編集の人ってわざわざハリウッドから雇ってきたのに、なんでこんなすごい仕事をしてるのか理解に苦しみました。お雇い外国人にやっつけ仕事されたか、監督の撮ってきた素材があまりにひどいんでこうせざるをえなかったのか。そんな感じで何をとってもここまでダメなのはすごいことです。沈黙の戦艦が大変な傑作に思えてきます。一流キャストをずらっと揃えたり、見せ場にもそれなりにお金をかけるなど相当気合入れて作った映画がこれでは、日本映画もお先真っ暗だなと。そのうち泣ける映画しか作られなくなるんでしょうね。シベ超や北京原人のように笑う価値すらないという、これぞ本当のダメ映画だと思います。
[DVD(邦画)] 0点(2006-11-05 17:37:21)(良:2票)
136.  ドント・ブリーズ 《ネタバレ》 
恐怖シーンにおける豊富なギミックや意表を突く展開など、実によく考えて作られていることは分かるのですが、主人公・ロッキーにビタ一文感情移入できないという点が致命的でした。事故で娘を失った盲目の老人宅に侵入し、事故の示談金を盗んでやろうという発想の時点でクズ。また、自分に惚れていて何でも言いなりになるアレックスを無理に強盗に引き込むという女としてのズルさや、「クズ親から幼い妹を引き離す」という大義名分によって自己の悪事を正当化している点など、とにかくロッキーのすべてが気に入らんかったです。 また、彼氏のマネーがぶっ殺されたり、監禁されている加害者を発見したり、自分自身が孕まされそうになったりと、もはや金なんて言ってられる状況じゃなくなっても金への執着を捨てないという点も受け付けませんでした。最後には、マネーとアレックスに罪を擦り付けて、まんまと金をせしめるという驚愕のクライマックス。空港で妹にオレンジジュースを飲ませてましたけど、ああいうとこのジュースはそこそこ高いんですよ。何人もの命を犠牲にして得た金でオレンジジュース飲ますんかいと、そんな些細な点まで気に入らなかったです。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2017-08-06 13:04:06)(良:2票)
137.  ファイト・クラブ 《ネタバレ》 
デヴィッド・フィンチャーの前作『ゲーム』と同じく、物質的には満たされている独身男性がカルトにハマっていく物語です。『ゲーム』はかなり荒削りな内容でしたが、一方本作はより洗練されていて、映画としては俄然面白くなっています。空虚な毎日に嫌気がさしてはいるが、かと言って反発すべき敵も目指すべき目標も見当たらず、生きている実感を得られない主人公の姿などは、多くの方が共感できるのではないでしょうか。また、社会に飼いならされていた主人公が徐々に常識を逸脱していく前半部分には、爽快感すら宿っていました。フィンチャーによる演出も絶好調で、哲学的な説教を合間に挟みながらも、見事なテンポで話が進んでいきます。これほど深く、かつ見やすい映画も珍しいのではないでしょうか。。。 俳優陣も完璧です。役作りが過ぎてイヤミになりがちなエドワード・ノートンの演技も、本作では適度に抑制が利いていて極めてナチュラルです。一方、ブラッド・ピットは堂々たる存在感。大スター・ブラッド・ピットにしか演じられない役柄を演じきっており、彼のスターオーラが遺憾なく作品に活用されています。かつてのピットは鼻持ちならないアイドル俳優と見られており、同性からの支持はほとんどなかったのですが、本作をきっかけに男性ファンをも取り込み、同世代の俳優の中では突出していたトム・クルーズに比肩する人気を得るに至りました。それほど、本作のタイラー・ダーデンはかっこいいのです。フィンチャーもブラッド・ピットの扱いには慣れたもので、難しいところはノートンにやらせながらも、美味しいところではちゃんとピットを目立つようにしています。この采配は見事なものです。。。 残念なのは、後半があまりに飛躍しすぎるということ。社会からはみ出すだけでは満足できず、社会そのものを破壊しようとするに至っては、共感の度合いがぐっと下がってしまいました。後半では演出のテンポも悪くなるし、タイラー・ダーデンの正体が判明した時点で映画が終わってもよかったのではないかと思います。。。 なお、現在では傑作と評価される本作も、公開時には興行的に失敗し、批評的にも苦戦しました。その時にぶつけられた悪評についてはプレミアム版DVDに付属しているブックレットに評論家の名前付きで載っているので、映画の価値を見抜けなかった評論家達の恥ずかしい言動も併せて楽しむことができます。
[DVD(吹替)] 7点(2013-06-03 22:18:26)(良:2票)
138.  ウォール・ストリート 《ネタバレ》 
全盛期のオリバー・ストーンは本当に凄かったんです。脚本家出身のストーンはセリフの洪水と巧みな構成によって密度の高い物語を次々と作り上げ、それが3時間越えの大作であっても、一瞬たりとも観客を飽きさせることはありませんでした。社会問題の扱いにも長けており、映画によって社会を騒然とさせることもしばしば。そんなストーン全盛期を象徴する作品こそが前作『ウォール街』であり、どうやっても映画のネタにはなりようのなかった金融戦争を真正面から扱い、これを堂々たるエンターテイメントに仕立て上げた手腕は驚異的なものでした。。。 そんな『ウォール街』から四半世紀を経て製作された『ウォール・ストリート』ですが、これが完全な凡作であり、ストーンの才能は完全に枯れしまったことが本作ではっきりとしました。社会派映画としての見応えはなく、本作におけるストーンは世界中の人々が遠の昔に知っている話をただ復唱しているのみ。小さなニュースサイトに暴露記事を掲載しただけで巨悪が倒れるという安易な決着に至っては、『JFK』で保身に走る時の権力の手強さを描いたストーンとは思えぬ手の抜きようでした。おまけにドラマの密度も低く、2時間強というストーン作品としては短い部類に入る上映時間ながら、途中で飽きてしまいます。サブプライムの扱いなどは本当に勿体ないもので、この爆弾がいつ爆発するのかという大きな山場を作り損ねています。さらには劇中のキャラクター達にも魅力がありません。特にマズかったのがキャリー・マリガン演じるウィニーを単なるヒステリックな女にしてしまったことで、マネーゲームに溺れるキャラクター達が入り乱れる本作において、一般人の代弁者たる立場にいる彼女の個性に難があるようでは、ドラマに説得力が生まれるはずがありません。彼女は拝金主義を毛嫌いしながらも、その実、大金を奪われたことがきっかけで婚約者をフったり、あれだけ嫌っていた父親が大金持参で詫びに来れば笑顔で許したりと、まさに金中心の振る舞いを繰り返します。その筋の通らなさ・薄っぺらさには唖然とするのみでした。
[DVD(吹替)] 5点(2012-11-03 17:37:34)(良:2票)
139.  リダクテッド 真実の価値 《ネタバレ》 
ヨーロッパの映画祭で絶賛された一方でアメリカ本国では強い反発を招いた作品ですが、映画としてはよく出来ています。とにかく素晴らしいのがデ・パルマの演出で、40年超のキャリアを誇るハリウッド屈指のベテラン監督とは思えないほどの若々しい演出を披露。最近流行りの主観的映像による疑似ドキュメンタリースタイルを積極的に採り入れ、それをいとも簡単に自分のものとして操ってしまうフットワークの軽さには驚きました。監督名を告げられずに本作を見て、これがデ・パルマ作品だと気付く人間はこの世にいないでしょう。デ・パルマについては、そのテクニックのすべてをぶち込んだ究極の犯罪ノワール「ファム・ファタール」を見た時点で「この監督は今後何も撮れなくなるだろう」と思ったのですが、まさかこのような形で戻ってくるとは思ってもみませんでした。さらに、デ・パルマ自身による脚本の出来も上々です。確かにアメリカ兵の悪い面ばかりが強調されており、アメリカ人にとっては胸糞の悪くなる内容ではあるのですが、ともかくイラク戦争というものの一側面を伝えることには成功しています。アメリカ本国であれば刑務所に入っているべき人間が従軍し、銃を持たされていること。教養がなく的確な状況判断を下せないような人間に、場合によっては一般市民を射殺することが肯定されるほどの権限が与えられていること。戦争の正当性を守るために、軍はそうした兵士たちが起こす数々のトラブルを揉み消していること。本作が公開された当初は「あまりにも誇張され過ぎている」という批判が起こりましたが、後にウィキリークスによって公開された、アメリカ兵が冗談を言いながら一般市民を射殺する映像を見るにつけ、本作の内容はイラクの実状にかなり肉薄したものだと評価できます。さらに、狭い舞台、限定された登場人物の中において、ここ10年繰り返されている報復の連鎖を伝えることにも成功しています。状況判断を誤ったアメリカ兵がイラク人の妊婦を射殺してしまう→報復テロに遭い、尊敬する上官が部下の目の前で爆殺される→兵士の中にイラク人を敵視する感情が芽生える→テロとは関係のないイラク人家庭を襲撃し、レイプの末に一家を惨殺してしまう→犠牲者の遺族がテロ組織に入り、さらに過激な報復を行う。オスカーを受賞した「ハート・ロッカー」よりも的確な作品ではないかと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2011-04-08 21:15:57)(良:2票)
140.  恋の罪 《ネタバレ》 
公開時には3人の女性の物語と宣伝されていましたが、実質的な主人公は神楽坂恵演じるいずみ。夫から女性扱いされず人生の目的を見失っていたいずみが、生の実感を求めて新たな行動を起こしたことから地獄を垣間見る前半部分はなかなか楽しめたのですが、完全にイっちゃった後半は何がなんだかでした。自分の女房を主演にしてここまで激しいことをさせるのだから、この監督は特殊な感性をお持ちなのだと思います。凡人の私では付いていけない部分が多々あって、2時間半という長尺はちょいと厳しく感じました。。。 と、全体としてはイマイチだったのですが、才気あふれる監督による作品だけあって、部分的には魅力的なものもありました。特に興味深く感じたのは美津子といずみの関係性。いずみと初めて対面した時、美津子は「この世界に足を踏み入れるな」と言っていずみを突き放すのですが、いずみから旦那の名前を聞かされると、それまでの態度を翻して彼女はいずみを受け入れました。このやりとりの意味がわかるのはクライマックス近く。いずみの旦那も愛欲の世界にどっぷりと浸かっており、美津子はいずみに”戻る場所”がないことを悟ったからこそ、彼女は地獄の案内人役を引き受けたのです。登場人物達の運命を分けたのは、この”戻る場所”の存在でした。美津子は母親から憎まれており、彼女にとって家は戻る場所ではありませんでした。美津子の母親は、表面的には「血筋が悪い」と言って美津子を疎んでいるのですが、実のところは愛する夫を娘である美津子に奪われたために、殺したいほど娘を憎んでいます。大方斐紗子による怪演も手伝って、老いてなお燃え上がる女の情念には圧倒されました。一方、”戻る場所”の存在によって何とか踏みとどまったのが、水野美紀演じる和子。ラストは曖昧なようですが、よくよく考えれば監督の言いたいことははっきりとしています。一心不乱に走っているうちに家から遠く離れてしまった和子が、「どこにいるのか?」と聞かれて「わからん」と答えるラスト。「わからん」とはその場所に違和感を覚えていることを表しており、この後彼女は愛する夫と娘の待つ家庭に戻ることが推測されます。。。 この映画はドロドロでグロテスクなのですが、込められたメッセージは意外とポジティブ。愛とは厄介なものだが、愛する人との関係性を間違えていなければ、意外と何とかなるもんだと言っているようです。
[DVD(邦画)] 6点(2012-09-08 19:00:23)(良:2票)

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