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目隠シストさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2255
性別 男性
ホームページ https://twitter.com/BM5HL61cMElwKbP
年齢 52歳
自己紹介 あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2024.1.1


※映画とは関係ない個人メモ
2024年12月31日までにBMI22を目指すぞ!!

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141.  かしこい狗は、吠えずに笑う 《ネタバレ》 
これは凄い。スゴイです。一級品のミステリーです。先に投稿されているレビュワー様がおっしゃる通り、情報シャットアウトでご覧になる事をお勧めします。以下鑑賞済みの方のみ、お読みいただければ幸いです…。ややもすると、イズミの狂気が熊田に連鎖した、あるいは、イズミの人格が熊田に受け継がれたと解釈したくなる結末ですが、これは誤りと考えます。延々と観客が見せられていたのは、あくまで熊田の弁明(供述調書)。客観性を裏付けるものは何処にもありません。おそらく真相は、熊田がイズミの立場で、周りの人間をコントロールしていたのでしょう。熊田こそが事件の中心に居た張本人。マニキュアの色、生きていたインコ、ラストカットの席位置等の状況証拠に加え、鏡を割り『自分を守るための嘘、あなたの武器でしょ』とつぶやくシーンが決定打。こんな特殊なシチュエーションが偶然繰り返されるはずがありません。つまり、当初イズミの姿で再生された鏡割りは完全なフェイクと判断できます。さらに“あるミスリード”が、この仮説を強力に裏付けます。それはスーツ姿のふくよかな女性の正体について。体型と生理痛。たった2つの共通点だけで、観客はスーツの女=成人した熊田の姿と思い込まされました。しかもこのミスリード、本筋とは一切関係ないのです。本来必要のないミスリードを何故わざわざ仕組んだのか。其処に込められていたのは、監督からの“思い込み注意”のメッセージでありました。人は一度確定させた事実を覆したくないもの。何故なら自身の決断を否定するのは苦痛だからです。熊田=可哀相な被害者として一度認識してしまった以上、彼女が真犯人なんて不都合な真実、本当は認めたくないのです。ですから冒頭に示したような“イズミの狂気が熊田にも連鎖した”という、観客にとって都合の良い解釈が生まれてくるというワケ。何とまあ意地の悪い趣向でしょうか。全部まるっと熊田の創作話との解釈で問題ないと思いますが、そんな嘘の中にも幾つか“ほんとう”は隠されているはずで、それを想像すると…何とも味わい深い作品とも言えます。いやー、いい映画を観させていただきました。でも多分、監督はけっこう性格が悪いと思います。もちろんコレは褒め言葉ですが。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-02 01:03:40)(良:3票)
142.  悪の教典 《ネタバレ》 
壮絶極まる大虐殺の最中、山田孝之が女子高生のパンツの匂いを嗅いで「これは○○のか」なんてフザけた台詞を吐く映画の是非について、真剣に語るだけ馬鹿らしいというもの。悔しいけれど、それが三池監督の流儀。大した危機回避能力です。褒める気はありませんが、素直に凄いと思います。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-09-12 18:27:32)(笑:1票) (良:1票)
143.  ストロベリーショートケイクス 《ネタバレ》 
詳細なキャラクター設定と的確な描写に唸りました。ここまできめ細かに人を描けている作品は、そうそう無いと思います。彼女たちの心の内、考え方がよく理解できました。リアリティを欠いていたら、こうは行かない。もっとも、リアルではあるけれどツマラナイ作品も多い。そんな中、魅せる要素を忘れていないのも素晴らしかった。棺桶ベッドなんかがその例。リアルでなくても彼女の人物像を伝えることに役立っています。とかく男性諸氏へのサービスになりがちなヌードやエロ。本作では盛りだくさんです。でも全て必要だと感じました。無駄な裸はひとつも無かった。こういう作品で脱ぐ女優さんは幸せだと思います。彼女ら4人は、みな心に隙間を抱えている。満たされる幸せを願っています。2組のペア。望むものを相手が持っているという図式です。池脇が願う恋にホテトル嬢は身を焦がし、遣り甲斐ある仕事に憧れる中越にとって、ルームメイトは羨む存在。でもホテトル嬢やイラストレーターが幸せかというと、そうではない。それぞれの神様が異なるように、幸せの捉え方は違う。同じなのは、みんな寂しいということ。エンディング、そんな4人がある浜辺に集います。波は荒く、空は淀んでいる。彼女らを取り巻く環境は相変わらず厳しい。でも彼女たちは諦めていない。人生を投げていません。泣いたり笑ったり落ち込んだり縋ったりセックスしたりショートケーキを頬張ったりしながら、強かに生きていく。神様を介して4人の人生が交差する刹那、池脇の「恋でもしたいっすねぇ」がラストカット。この切り方にやられました。想像が頭の中を駆け巡り、気持ちが昂りました。情感溢れる優しい余韻でした。何もかもが上手い。絶賛させてください。ただ、ご指摘の方も多いように、声が小さ過ぎるのが難点。劇場だと違うのかもしれませんが、自宅鑑賞ではストレスになりました。伝えるセンスに長けている監督なのに、観客へ声を届けることに無頓着なのは解せません。それでも賞賛したい気持ちが勝るのだから、自分と相性がいい作品なのでしょう。本作については、ぜひ女性レビュワー様の感想を聞かせて欲しいと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2007-11-15 18:15:28)(良:2票)
144.  インターステラー 《ネタバレ》 
(真っ当な映画批評は他の優秀なレビュワー様にお任せして、私はいつも通り“自分語りの感想”でお許し願います。)私は親子の絆を描いた映画、それも“父と息子”を扱ったもの(例:ビッグ・フィッシュなど)に殊更弱い傾向があります。おそらく、父親に対するコンプレックスが極めて強いからでしょう。映画の中の“息子=自分自身”でした。そんな私も父親業を始めて10年が経ちます。長女もマーフと同じ10歳になりました。そんな理由から主人公への感情移入は半端ではなく、刻々と失われていく時間に胸を痛め、涙しました。息子の立場から父親の心境へ。人は変わってゆくのです。何故クーパーは宇宙へ旅立ったのでしょうか。種の存続を図るため。いえ、我が子の未来を守るため。息をしているだけで満足しないのが人間です。生きることより、活きること。彼は子供たちへ“希望”を贈るために命を賭したと考えます。もちろん、其処には自身の能力に対する“自己顕示欲”が在った事も見逃せません。彼の本質は農業家ではなくパイロットだったのですから。主人公の行動原理を“家族への愛”とするならば、マン博士のそれは“自己愛”です。同じく“愛”。ただし、ひたすら己が生に執着するマン博士と、自身を活かすことを望む主人公とでは、同じ愛でも値打ちは違うでしょう。この世で何よりも重い「子供との約束」を捨て、アメリア博士を救ったクーパーの献身は、漆黒のブラックホールの中「事象の地平線」を超え、人類を救う鍵となる「量子データ」の獲得という奇跡を生みました。彼が辿り付いた先は、時空を超える“5次元”の世界。そう、アメリア博士の言葉を借りるなら“愛”そのもの。クーパーが5次元で、最愛の娘と繋がったのは必然に他なりません。何故なら5次元に時や空間といった隔たりの概念は存在しないのです。あらゆるものを犠牲にして主人公が手に入れたのは、老いさらばえた愛娘が子孫に囲まれながら看取られる“最期の瞬間”を目にする権利。「だってパパは必ず帰るって言った」たった一言で全てが報われました。嗚呼、なんと切なくも美しい、そして幸せな光景でしょう。涙が溢れて仕方がありません。インターステラーは「星の間」。マーフという星、そしてアメリアという星。繋ぐのはクーパー。星の旅人が新世界を紡ぎます。
[CS・衛星(吹替)] 10点(2015-10-20 01:15:02)(良:2票)
145.  大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇 《ネタバレ》 
血の池も針の山も、あくまで空想の産物。さて、本物の地獄はどんな場所だったのか??地獄へのハネムーンという着想は実にユニーク。血の池じゃなくて、ビーフシチューの温泉。赤鬼も青鬼も角を切り落とすのが流行とは。この荒唐無稽なブラックコメディを成立させたのは、見事なキャスティングに拠るところ大かと。竹野内、水川コンビの力の抜け具合は絶妙でしたし、樹木、片桐、荒川の役作りは完璧でした(樹木希林なんて日野日出志の漫画のキャラクターそのまんま。)また最近大活躍の橋本愛も好印象。顔面真っ青でもその美少女ぶりが全くスポイルされないとは、いったいどれほど美人なんじゃい!物語に起伏があるわけでもなく、笑いも感動も大した事は無いですし、結構つくりは安普請だったりもするのですが、“この映画何となく好き”と言いたくなる不思議な魅力がありました。そうそう、音楽も気に入りました。本気でサウンドトラックを買いたくなったのは『嫌われ松子の一生』以来かも(注:サウンドトラック売ってないじゃん!)。本来の自分基準では6点が妥当なのですが、思い切って8点付けます。決して8点級の完成度ではありません。でも好きなものはしょうがないので、ご勘弁を。
[DVD(邦画)] 8点(2012-08-22 18:15:12)(良:2票)
146.  アマルフィ 女神の報酬 《ネタバレ》 
織田がポリスに銃を向け、天海を逃がした件には疑問が残るものの、それ以外の脚本はそんなに悪くないと感じました。織田主演の映画の中では、上々の部類に入るかと。でもイマイチ物語に入り込めないのは何故か。“渋い”というよりは“辛気臭い”、“優雅”というよりは“カッコつけ”という作品の全体像。これは織田の演技が醸し出している雰囲気だという気がする。『県庁の星』でも感じた事ですが、彼の演技は観ていて楽しくない。当たり役の青島刑事、『振り返れば奴がいる』の司馬はホントにイキイキしているのに、どうしてなのか。キャラの色がハッキリしていない役には向いていないのかな?本作の場合は、輪をかけて天海が上手くありません。脇役は豪華なのに仕事を与えてもらっておらず勿体ない。キャスティングが上手くいっていないような気がします。配役が変われば、随分と印象の変わる映画ではないかと思いました。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2010-07-03 21:28:02)(良:2票)
147.  マンハッタン無宿 《ネタバレ》 
『ダーティーハリー』の原型というアナウンスや、このシブい邦題から、シリアス系ポリティカルアクションを想像してしまいますが、実際のところ“田舎っぺスケこまし大将、ニューヨークで大暴れの巻”が正しいです。『クロコダイル・ダンディー』の主人公を保安官にして、ダンディーからプレイボーイに変えていただければ、内容は容易にイメージ出来るかと思います。クリント・イーストウッド=山田康雄=ルパンⅢ世なので、イーストウッドが女たらしでも全く違和感が無いのは、吹き替え版に慣れ親しんだ、日本人ならではの恩恵と考えます。
[DVD(字幕)] 6点(2013-12-09 18:29:27)(笑:1票) (良:1票)
148.  16ブロック 《ネタバレ》 
イーストウッド監督主演の某作品を髣髴とさせるプロット。ポイントになるアイテムまでソックリです。ただスケールが違う。某作が州をまたぐロードムービーであるのに対して、本作の移動距離は“たった”16ブロック。その“たった”が本作のセールスポイント。僅かな距離なのに途方も無く遠い。簡単な仕事のはずなのに困難極まりない。そこが魅力。でも、どの程度の距離なのか肌で分からないのがツライところ。雑踏はどれも同じ景色に見えてしまいます。せっかくの時間制限も活かされているとは言い難い。今置かれている状況を掴めなければ、絶望することも希望を持つことも出来ません。ただオチは好みでした。“人は変われる”というメッセージがいい。ただし、刑に服する過程を踏んでいる主人公に対し、エディの方は濡れ手で粟の大金でやり直しただけ。本来ならば感動が割引される要素です。しかし彼のキャラクターの良さがそれを補っています。それにゼロからのスタートで成功が手に入れられるほど、今の社会が万人に公平だとも思えません。多少のアドバンテージは許容範囲。主人公の名前を冠した店の名前にグっときます。
[DVD(字幕)] 6点(2007-07-31 19:51:34)(良:2票)
149.  決算!忠臣蔵 《ネタバレ》 
舞台が赤穂(兵庫県)ということで関西芸人が多数キャスティングされています(バリバリ関東芸人イメージの上島竜兵さんが兵庫出身とは知りませんでしたが)。彼らに期待されているのは、ネームバリューとネイティブな関西弁を操ること。コメディリリーフとしての役目は課されていません。芸人が大挙出演しているのに彼らが全然笑わせようとしないため、妙な違和感を覚えました。そうでなくとも、大笑いするタイプのコメディではなく、現代社会と対比させた風刺がメイン。言うならば苦笑い系喜劇です。純然な笑える喜劇を期待してみると肩透かしを食うかもしれません。勿論これはコメディとして不出来なのではなく、仕様の問題。カカオ80%チョコが大して甘くないのと同じです。討ち入りシーンも無ければ、吉良上野介に至ってはキャスティングもされていない異色の忠臣蔵でした。かつて『わんわん忠臣蔵』なんて映画もありましたが、手を変え品を変え、様々なアレンジが施されるのは、原作が長年日本人に愛されてきた証であります。もはや擦られ過ぎて原形が分からない気もしますが、これも『歴史に名を刻む』事の副作用のひとつでしょう。中村義洋監督のお金時代劇は『殿、利息でござる!』に次いで本作で2作目。これはもう3部作行きますね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-11-20 20:27:37)(良:2票)
150.  悪魔を見た 《ネタバレ》 
(ネタバレあります。ご注意ください。)もう30分尺を足してスヒョンと婚約者の関係性を描写していたら、もっと主人公に感情移入できたと思う。本作のアプローチはやや手緩い。もっともコレは観客に対する気遣いかもしれない。正面から受け止めるには、結構な精神力の要る物語でありました。『悪魔を見た』の悪魔とは誰を指すのか?強姦殺人狂のギョンチョルか。確かに奴の所業は畜生にも劣る。でも欲望の赴くまま、場当たり的に犯行を重ねる様に狡猾さは無い。印象としては我侭な子供。では復讐者のスヒョンはどうか。敵を追い詰める眼差しには確かに鬼気迫るものがあった。執拗な暴行にも躊躇がない。でもトラブル発生時の対応策を考えていなかったのは間抜けだし、反撃について考慮していなかったのは愚の骨頂。スヒョンもまた目的達成のため、周りが見えなくなっていた子供です。2人がやっていたのは、やられたらやり返す子供の喧嘩。つまり本作に“悪魔”はいなかった。タイトルは『子供を見た』が正しい。もっとも子供とは、人間の生の感情のこと。押さえつけている状態の方が不自然なのかもしれない。個々の直情を制御し社会を形成するために編み出された知恵が、法であり、刑罰です。だから刑罰は大人の理屈ではなく、子供の感情を満足させるものでなくては、本来の意味が無いと思う。倍にして返せとは言わないが、せめて同等の痛みは感じてもらわないと。一発殴られたら、一発殴り返す。それだけのこと。それが許されない理屈って何なんだろう。本作を観て、あらためて死刑制度の必要性を認識しました。死という結果はもとより、死刑囚として過ごす1日1日に本物の反省が期待できるのではないか。いや、期待するより仕方がない。無益な復讐の連鎖を生まないために必要な刑罰があると思う。利口になり過ぎた私たちの社会は、今試されている気がします。スヒョンの復讐について。“遣り過ぎだ”と思う場面は皆無。ただ唯一引っかかるとすればラストです。親を巻き込むのは構わないが、息子だけは勘弁してやって欲しかった。あれでは息子が狂ってしまう。新たなギョンチョルを生んでは、一人を始末した意味がないです。(余談)イ・ビョンホンとチェ・ミンシクのキャスティングを換えても面白そうだと思いました。ただイ・ビョンホン好きのおば様たちからは非難轟々かもしれませんが。
[映画館(字幕)] 8点(2011-02-27 00:54:01)(良:2票)
151.  問題のない私たち 《ネタバレ》 
sayzinさんのおっしゃるように、前半と後半では別の話になっています。1話完結スタイルの連ドラを2本立てにしたよう。前半が「生徒間のいじめ」、後半が「教師による生徒へのいじめ」。いじめの方法、登場人物のキャラ作り、台詞等すべてがステレオタイプで、リアリティに欠けます。美女ぞろいのクラスというのも(男性目線からすると嬉しいですが)現実感の無さに拍車をかけます。でも事の本質は外していないと思いました。個の放棄、短絡的発想、想像力の欠如、狭い社会、幼児性。いじめを生む要件は揃っています。観ていて心が痛くなります。不快指数は高い。でも本作で用意されたラストは、前半も後半も実に爽やかです。今までのドロドロが嘘のよう。そう、ウソ臭いんです。こんなに後腐れなく、丸く納まるなら誰も苦労はしません。でも共感できたのは、”主人公が自ら動いたこと“。誰もが主人公のように強くありません。だから逃げてもいいし、助けを求めてもいい。ただ、自分から能動的に動かないと事態は変わらない。呼んでもいない正義の味方は現われないということ。その点を押さえていたのは良かったと思います。あと友達は大切です。自らの身を守るうえでも、自身を成長させるうえでも。美少女揃いですし、ピチピチ水着も拝めます。でもそれを目的で観ると痛い目にあいます。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2006-11-30 18:16:07)(良:2票)
152.  マイ・ブロークン・マリコ 《ネタバレ》 
みんな大好き永野芽郁ちゃんの、永野芽郁ちゃんによる、永野芽郁ちゃんと奈緒ちゃんのための映画。そしてちょこっと窪田正孝さん。範馬勇次郎が背中に鬼を宿すなら、本作の芽郁ちゃんは眉間にアブドーラ・ザ・ブッチャーのデコを憑依させる神業をみせてくれました。カワイイだけの女優さんではありません。 遺骨となった親友との二人旅はまさに現実逃避の旅でした。実際、シイちゃんの精神状態はギリギリだったと思います。辛くなったら逃げるは有効なので、マリコさんがシイちゃんを窮地から連れ出したとも言えます。ただ、崖っぷちから逃げたつもりが、反対の崖に辿り着いたよう。ただし、こちら側にはクソ上司の代わりに救世主が待っていました。名乗る程ではない釣り男。神出鬼没に感じますが、彼はずっと影からシイちゃんを見守り続けていたのでしょう。一歩間違えればストーカーですが、下心が無いこと(本当はあったかもしれませんがおくびにも出さなかった)、差し入れのセンスの良さ、彼女の命を救った等数々の功績により本物語のMVPを受賞しました。シイちゃんの「大丈夫に見える?」に「大丈夫に見えますよ」の返し。このシーンがもう本当に堪らない。泣けて仕方ありませんでした。客観的にみれば、というかラブストーリーなら、これはもう運命の人に違いないわけですよ。でも全く進展する様子もなく、あっけなく別れるという。この一歩引いた感じがタナダユキ監督なんですよね。勿論このあとシイちゃんは彼に会いに行ったかもしれないし、行かなかったかもしれない。それは描かない(描く必要がない)美学を監督は持っているんだと思います。女は恋愛で生きるわけじゃないと。『百万円と苦虫女』や『ロマンス』でもその流儀は一貫していました。そんなタナダユキ監督が大好きなんですけど。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-01-14 08:46:52)(良:2票)
153.  ニコラス・ケイジの ウェザーマン 《ネタバレ》 
主人公は、ウェザーマンとして成功しています。十分な収入も得ている。社会一般から見れば成功者です。しかし彼は自分のことを認めていない。カンペを読むだけの簡単な仕事で、お金をもらっていると自身を卑下している。そのことが私生活の問題にまで繋がっています。ファーストフードを投げつけられるのも同じこと。全ての原因は、彼の自信の無さにある。しかし彼はそのことに気付いていません。もっとも彼に同情の余地はある。彼の父親はあまりに立派過ぎた。息子にとって父親は超えなくてはいけない壁。そのプレッシャーはよく分かります。でも彼は勘違いをしている。彼は既に父親を超えている。彼よりも上手に天気予報を伝えられる人はいない。そのことは父親も指摘しています。普通のドラマであれば、彼が自信を獲得し、家族が再生するまでを描くでしょう。しかし本作は違う。家族は再生することなく、主人公も自信を得ることなく終了します。「消防隊の後ろだが、スポンジ・ボブの前だ」そう自分を慰めることで精一杯。ゆるゆるの現状肯定で終わります。感動はありません。でも現実はそんなもの。誰もが自分に自信を持てるわけじゃない。だったら、とりあえず今の自分を認めるところから始めるしかない。それでも一歩前進です。ヒントはアーチェリー。最初は娘の付き合いで始めたのに、いつの間にか腕を上げています。彼が「ハロー・アメリカ」に採用されたのも運が良かったからじゃない。継続は力になっている。息子のカウンセラーを殴りに行った彼の行動には、迷いがありませんでした。変化の兆しは見える。ドラマチックに変わらなくていい。ちょっとずつ変われればいい。
[DVD(字幕)] 7点(2007-09-07 18:31:21)(良:2票)
154.  OUT(2002) 《ネタバレ》 
小説の中の人間に、匂いやかたちはありません。声色も分からない。読み手が頭の中で、作者の世界を“再構築”する訳です。言わば映画もひとつの解釈例。自分の原作解釈とは随分違いますが、監督の“理解”は面白いと思いました。遺体をバラバラにする主婦たちの会話。「まずは頭を落としましょう」「魚じゃあるまいし」。水着に着替えるかどうかで、じゃれあう2人。ニュースの中の出来事が、いざ目の前で起きている現実に心が追いつきません。泣きもせず、気も触れず、罪悪感で押し潰されもしない。いつものように笑っている自分に驚きます。追い詰められた4人がカラオケボックスで集うシーンが秀逸。『人生いろいろ』の歌詞が彼女らの生き様にオーバーラップします。挿入される解体場面。えも言われぬ不快感が胸を過ぎります。忘れていた古傷が疼くような。ああ、こうやって今までも不具合に目を瞑り、自分を騙してきたのだと気づかされます。何も今回が特別なことじゃない。法という枠組み、倫理観の縛り、自分が知っている自分を、飛び越える「OUT」。境界を踏み越えるのはかくも容易い。終盤の流れは映画オリジナル。これがまたいい。雅子と邦子を乗せたトラックが、大平原の一本道をひた走ります。脇道が無いのは、選択肢が無いあかし。彼女らの行く末の暗示です。先は霞んで見えません。これを恐怖と感じるか、希望と捉えるか。邦子はともかく、雅子の瞳には後者の輝きがありました。しがらみを捨て去った開放感と、人生の半分を無駄にした虚しさが入り混じった眼差しでした。最後にキャスティングについて。間寛平は普段のイメージが少し邪魔をしました。香川は滅法上手い。室井、倍賞、西田は100点。原田美枝子は200点。彼女の描いた雅子の魅力的なこと!素っ気無い口ぶりがたまらないです。あの雅子なら、家庭の崩壊も、一連の事件の成り行きも、妙にしっくりきます。イケてる女は、倒れてもまた、立ち上がる。
[DVD(邦画)] 8点(2009-06-05 18:44:57)(良:2票)
155.  スペーストラベラーズ 《ネタバレ》 
ちょっと間抜けな銀行強盗に、たまたま居合わせた客、そして銀行員。彼らが成り行きで結成した『スペーストラベラーズ』は、劇中のヒットアニメに準えたもの。現実に不満を抱える者たちが仮初めのキャラクターを演じることで、活き活きと蘇っていく。明らかに悪ノリです。(それも責任の所在が自己に無い分タチが悪い。)でもいつしか本気に変わって行った。深津が言う“生きている実感”とはそういうことだと思います。本気だから楽しい。本気だから見えるものがある。彼らの行為を肯定する気はありませんが、気持ちは理解できます。ただし、条件がつく。それは“みんなが無事であること”。スペトラの面々は勿論のこと、銀行や警察関係者等、事件に関わった人たちに死者が出たらいけない。シャレにならないから。主犯3人が包帯ぐるぐる巻きでも構いません(むしろそれくらいのお仕置きは必要)。でも最終的に笑い話に昇華できなかったらダメです。金城らの拳銃がニセモノだと知っていた深津。彼らの最後の暴走を止められなかった深津には、後悔の念しか残っていないと思う。いくら後日談でも、「あの時は充実していた」なんて呑気な感想が出るはずが無い。彼女の人間性を貶める事にしかなりません。娯楽作品の素晴らしいところは、どんなミラクルでも起こせること。素人が爆弾処理をする等、完全コメディを打ち出している作品。相応しいオチを用意して欲しかったと思います。人が死んで悲しいのは当たり前。最後に泣ければ「いいお話だった」と観客が感じると思ったら大間違いです。
[DVD(邦画)] 4点(2008-01-28 20:13:10)(良:2票)
156.  ピラニア 3D 《ネタバレ》 
(他の動物系パニック映画の感想でも書いた気がしますが、自分がこのジャンルの映画で最重要視するポイントゆえ、内容が重複するかもしれませんがご容赦ください。)人間VS野生動物を描く場合、まず考慮すべき案件は何でしょう。それは両者のパワーバランスの調整と考えます。人間は食物連鎖ピラミッドの頂点。万全の体勢で戦ったら、野生動物は太刀打ちできません。本作の魚類博士の台詞にもあります。ピラニアの駆除は可能だと。当然です。ですから、人間の能力を下げるか、あるいは動物側の攻撃力を高める仕掛けが必須となります。今回のピラニアは太古の生物とのこと。これで攻撃力アップ。さらにピラニアの先制攻撃。不意打ち効果で、人間側の防御力ダウン。道具を持たぬ人間など野生動物の敵ではありません。これでバランス調整は完璧でした。にもかかわらず、何故さらに人間から知性を奪ったのでしょう。群れを成すピラニアに向けて、拳銃で応戦させたり(マシンガンならまだ分る!)、水に足をつけたままスクリューで戦わせたり、一体どういうつもりなのか。ここに監督の意図が隠されていると判断します。つまりコメディ映画としての主張ではないかと。“玄関開けたら2分でご飯”ならぬ、“水に浸かったら2秒でお骨”は、ホラーではなくギャグですヨ、ということ。ですから拳銃の弾もことごとくピラニアに当たるワケです。そういえばAV監督のイチモツの扱いもヒドかった。エロ・グロ・ナンセンスは相性の良い組み合わせ。オモシロを組み込む狙いは間違っていないと思いますが、如何せんこの程度のギャグではパワー不足でした。裏を返せば、本作のエロとグロは充実していたと言えるかもしれませんが。
[DVD(吹替)] 6点(2012-08-15 17:48:27)(良:2票)
157.  秋深き 《ネタバレ》 
「オッパイを失うくらいなら死んでもいい」ではなく、「どうせ死ぬならオッパイを残しておきたい」が一代の気持ちだと受け取りました。彼女は自分の死期を悟っていた気がする。手術でボロボロになって寺ちゃんを悲しませるより、治癒の希望を夫に抱かせたまま死にたいということ。ブラを焼き捨てたのは生還出来ない事を知っていたから。自らの選択のケジメでもある。胸が痛みます。自分は当初、「オッパイを切らないで頑張ってみたい」という一代の言葉を、寺ちゃんは鵜呑みにしたのだと考えていました。その結果、狂って暴走したのだと。だから腹が立った。少しでも長く彼女の傍に居てやれ。一刻も早く手術を受けるように説得しろ。殴って目を覚まさせてやりたかった。でもラストの寺ちゃんの顔を見て、それが勘違いだった事に気づきました。あれは悔いのない人間の顔。彼はちゃんと一代の想いを受け止めていた。何もかも承知で彼女の我侭を許したのだと感じます。それがどんなに辛い決断だったことか。励ましの言葉をかけるのは容易い。でも「無理しないでいいよ」は愛していなかったら言えません。彼は間接的に“このまま死にたい”という一代の願いを叶えたのだと思います。勿論、ガソリンを飲んでも助からないことや、壷がインチキだってことは百も承知。でも、奇跡を願わずにはいられない。それが人の心。後追い自殺だけは許せませんが、彼の精一杯の足掻きを自分は批難できません。終末医療については様々な考え方があると思います。自分自身、当事者になってみないと判らない。でも最期は自分で決めたいと思う。秋深き。冬支度の頃。少しでも穏やかな冬が我が身に訪れんことを、心から願います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-01-19 20:25:16)(良:2票)
158.  主人公は僕だった 《ネタバレ》 
男の運命を小説家がなぞっているだけなのか、あるいは小説家が男の運命を握っているのか。そこが最重要ポイントと考えます。似ているようで大違い。真相は定かではありませんが、当事者2人の認識は後者で一致している“ように”見えます。それが本作の弱点だと思う。本当はそうじゃないはず。むしろ前者の感覚が強かった気がする。“抗えぬ運命”の存在を感じ取っていたからこそ、2人は悩んだ。でなきゃ狂信的な信者でもない限り、主人公がこの筋書きを甘んじて受け入れる道理がありません。子供を助けて自分も無傷の結末を望むのが当たり前です。小説家にしても、自己の創作欲を満足させるためだけで人一人殺せるはずがない。人でなしの小説家に、悲劇に酔った主人公という図式に見えてしまったのはマズイと思う。ギリギリの線で悲劇の運命を回避した感動も薄くなっています。小説家と主人公の関係性を観客へ的確に伝えなければ、本作は成立しないと思いました。(余談)ちなみに自分が主人公なら、宝くじで億万長者になる筋書きを小説家に要求してみます。当選金は折半で。でもこんな腹黒い事を考える時点で、きっと自分は助かりませんね(苦笑)
[DVD(字幕)] 6点(2008-03-25 18:26:54)(良:2票)
159.  秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE3 ~http://鷹の爪.jp は永遠に~
「俺たちは後世に残る名曲に興味はない。楽曲は使い捨てで結構」とは電気グルーヴの言葉(違ってたらゴメンナサイ)。自分はこの考えが好きです。鮨屋の心意気。この握り、今はご馳走だけど明日になったら生ごみよ。そんな潔さに痺れます。本来「笑い」(電気の場合は音楽だけど)の真髄は即時性にこそ在る。ですから、ギャグ漫画が短命なのも、お笑い芸人に一発屋が多いのも当たり前。時代は移ろうのだから。『鷹の爪』からは、廃れることを恐れない覚悟を感じる。徹底した話題づくり、劇中コマーシャルの浅ましさ。足の早い「もう中学生」ネタなんて、日持ちを考えたら使えない。刹那の笑いに全力を注ぐ姿は、愚地克巳VS花山薫、あるいはアイアン・マイケルVS柴千春を彷彿とさせます(byグラップラー刃牙)。凄まじくカッコイイ。たとえ数年後、本作が世間から忘れ去られたとしても、今この瞬間、心動かされた事実は決して消えません。それで十分なのです。本作は100%名作には成りえません。でも後世の人々を惑わす珍作にはなるかもしれない。生ゴミだって化石になればお宝です。ですから、遥か未来の人類に向けて、この映画を理解するためのヒントを残しておきたいと思います。★ジョン・ジョローリン…FOXドラマ『24』ジャック・バウワーのパロディ。★もう中学生…本当はもう大人。ダンボール業。★ばんどうえいじ…ゆで卵を主食とし、忘れた頃に野球の話をする。天敵はクロヤナギ。★ドウマリコ…堂真理子。テレ朝の女子アナ。8代目Mステ。右投げ右打ち。★スーザン・ボイル…歌の上手いおばさん。茹でられてはいない。★オババ大統領…オリジナルはオバマ。アメリカのジャイアン。アメリカは世界のジャイアン。
[DVD(邦画)] 8点(2011-01-01 00:00:02)(良:2票)
160.  ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ 《ネタバレ》 
本作のポイントは、やはりチャーリー。彼は何者でしょうか。その正体は、お父さんのもうひとつの人格。おそらく妻殺しの罪悪感から逃れるために作り出した。ですからチャーリーは、“人殺しをいとわぬ残虐性”と“元の人格を攻撃する(罪悪感ゆえに罰せられたい)”という性質を併せ持つと考えられます。さらに、娘と遊ぶという行為は、“今まで良い父親ではなかった”という後悔の裏返しと取れます。最終的にチャーリーがエミリーを殺す気があったのかどうかは不明(クローゼットに包丁を突き刺す行為からは、殺意があったと判断も可能)ですが、自分は、殺意は無かったと思いたい。包丁を持ったまま、かくれんぼの続きをしたと。こう考えるとお父さんの最期は結構切ないです。ストーリーはそんなに悪くない。でも演出はテクニカルではありませんでした。“上手く騙された”ではなく“アンフェア”と感じてしまう。真相に衝撃をもたらすには、騙しの過程(つまりチャリー出現時のお父さんの状態)に細心の注意と工夫を施さねばなりません。その部分で全く無策(というか乱暴)だったと思います。伏線らしきもののほとんどが、単に観客を欺くための要素に過ぎず、主軸に絡んでこなかったのも残念。特に隣人の思わせぶりはあんまりです。せめて“チャーリーは亡くなった息子さんの名前だった!”くらいの展開は欲しかったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2007-01-17 17:54:22)(良:2票)

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