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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  アンジェリカの微笑み 《ネタバレ》 
表記はないけれど、映し出される河川は例によってドウロ河なのだろう。 テレビは見当たらず、不鮮明なラジオ音声が流れる劇中の時代は如何様にも受け取れる。 夜、夜明け、そして雨上がりの日中と移り変わる川岸の街並みの風情はどこか神秘的な様相も呈し、 対岸にある丘陵斜面のキアロスタミ風ショットは彼地の風土を強く印象づける。   人物がフレームアウトした後も黒猫がじっと鳥かごを見つめている。 撮る側も猫のリアクションを息を殺して期待していたに違いない。  中央にドア、あるいは窓を配した屋内ショットは凝った照明設計によって濃密な空気を感じさせている。
[映画館(字幕)] 7点(2016-04-05 17:16:26)
22.  暁の追跡 《ネタバレ》 
杉葉子と鎌倉に海水浴に来た池部良が遠い爆音にふと空を見上げると、航空機が一機飛んでいる。 彼女に「思い出す?」と問われる彼は何を思うのか。 また、転職の相談をする証券会社勤務の戦友がビルの屋上で「南方を思い出すな、あの雲は」という台詞をふと漏らす。 雑然と賑わう鎌倉や新橋、兜町などのロケーション撮影の中、それらの細部に「戦後5年」を垣間見せる。 南方戦線を含む過酷な戦場を体験した池部良を意識しての新藤脚本だろうか。  縦の構図を多用したロケ撮影による生々しい街の表情が主役でもある。 これも日本版ネオリアリズモといえる。 路線沿いの活気ある繁華街とは対照的な月島地区、クライマックスの深川地区などの発展途上地域の模様など、都市論の提示でもあろう。 夜明け前の時間経過を追いつつ展開するラストの緊迫した銃撃戦も素晴らしい。
[DVD(邦画)] 7点(2015-08-27 23:57:41)
23.  アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 
始まって早々に、今どき流行りの時間の巻き戻しが入る。 幼少期の父親の薫陶であったり、ライフル体験であったり、9.11への義憤であったり。 これが結果的には、今そこにある主人公に対する弁明・釈明ともなり得てしまう。  従来の監督なら、回想による生い立ち説明などには依存せずに あくまでも現在の人物の言動で提示しうる範囲でもって人物を描写したのではないか。 「スナイパーはスナイパーだから狙撃する。」と。 そうした「古き良き」簡潔さを許さぬのが映画の現在であり、 実話ものの制約・しがらみなのだろうが、 この隙もまた本作をめぐるイデオロギー論争を助長させたように思える。  ともあれ、本作での銃撃や着弾の即物的音響は生々しく尾を引く。 白いシーツの翻る、視界不良の屋上空間では、尚のこと音の恐怖が倍増する。 帰国後の主人公を苛むのも、ドリル音や子供の泣声など、視覚以上に聴覚的記憶のほうであり、 携帯電話から響く戦場の音も、現場が見えないだけに主人公の妻を恐怖させる。 エンディングはそこからの開放でもあろうか。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-07-05 20:44:27)
24.  アルゴ
車窓を流れていく、クレーンに吊るされた見せしめの死体。 夜の路側で炎上している車両。 マイクロバスの窓を叩いて威嚇してくる、デモ行進の市民。  それらはベン・アフレックの無言の視線を介して捉えられることで強調され、 同化を促し、不穏と緊張を巧妙に増幅する。  つながらない電話のシーンをさりげなく布石として配置しておき、 クライマックスに反復を仕掛ける手練。  人物の忙しない動きをスムーズに追いかけていく移動撮影もまた、 映画に緩急のリズムをもたらし、最終盤の盛大な横移動で テンションをマックスに高めていくよう、運動感の構成もよく出来ている。  細々した映画ネタが色目使いに見えなくもないが、あくまで適度におさめる品の良さがいい。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2013-03-09 23:57:52)
25.  アウトロー(2012)
レザーを纏い、獣性を帯びたカマロを駆る流れ者トム・クルーズ。 勾配のロケを舞台とした狙撃戦から、雨中の徒手格闘へなだれ込むアクションの流れ。 決斗の場となるアジトの四角いドア枠に、細かいところではバスタブの意匠など。 映画は古典的なウェスタンの趣を漂わせる。  殺し屋の持つ携帯電話に、幾度も発信しては語気鋭く相手を挑発する主人公。 あるいは、ロザムンド・パイクの部屋にかかってくるトム・クルーズからの電話。 彼女の背後に立つ二者のどちらかが裏切り者だと伝えられる、その表情とリアクションのサスペンスが素晴らしい。 公衆電話と携帯電話を介した緊張感漲る駆け引きが光る。  ロバート・デュヴァルとの再共演もやはり感慨深い。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2013-02-22 01:26:22)
26.  悪の教典 《ネタバレ》 
屋上でキスをする伊藤英明と女生徒の前景と、後景の校舎。 人影は映らないものの、間違いなく誰かに見られている、という感覚で シネスコ画面が効果的に活かされているが、 どちらかといえば広がりよりも、奥行きや深さを強調した画面が印象的だ。 (吹越満の乗る電車車両の揺れる悪夢的感覚。 廊下奥や教室奥の外光で薄暗く浮かび上がる伊藤の姿など)  一方で、AEDレコーダーや救助袋の伏線シークエンスなどは あたかも取ってつけたようで、 回収地点でかえって作り手の逆算が露呈し、大いに興ざめである。  これなら、余計な伏線など無いほうがよほど気が利いているし、 インパクトもあるだろうに。  回収のための伏線張り。それは単に観客に辻褄合わせの納得を促すだけで 何ら驚きをもたらさない。  ついでに、盗聴器を仄めかすコンセント口等のショットのくどい反復や、 伊藤の来歴のフラッシュバック。 これらの無駄を省いただけでも、 110分程度には引き締まったはずだろう。 
[映画館(邦画)] 7点(2012-11-11 23:49:08)
27.  愛と誠(2012)
ミュージカルシーンに映画を感じたのは、 大野いとの『夢は夜ひらく』と、安藤サクラの『また逢う日まで』。  動きのとれないトイレ個室内での歩調と、 大野の決して上手くない歌がシュールでいい。  雨に濡れた夜の歩道を走る安藤の躍動と笑顔、そしてそれを追う横移動のカメラがいい。  武井咲も斎藤工も、 一青窈・市村正親コンビの達者な身のこなしなどと比較してしまうと可哀相だが、 シンプルな振付と頻繁なカットつなぎにも助けられて健闘している。  そのミュージカルの少し硬い感じが逆に味となって後半のドラマに活きており、 特にこの二人がそれぞれ違うシチュエーションで土下座をして 必死に懇願するシーンではその熱演と表情が一気に輝き出して素晴らしい。  ただ、妻夫木聡のワイドショー番組的な安っぽい突っ込み台詞の数々は もう少し工夫が欲しかったところ。 
[映画館(邦画)] 7点(2012-07-01 22:39:33)
28.  アンダルシア 女神の報復 《ネタバレ》 
バルセロナの路地で、異変に気付く織田裕二のショット。その後景に、意味ありげにバイクを止めている男が映っている。続くチェイスシーンでは既に織田はオートバイを駆っている。という具合に、鮮やかな省略の妙味を随所に見せてくれる。  一方で、カットは多めに割られながらも、そのうちの1ショット内に難度の高いアクションを取り込んでインパクトを作る工夫も徹底されている。(タクシー後方からの清掃車の激突、マーケットでの三つ巴の追跡シーン)  空ショットは極力抑え、自然光を活かしながらロングショットでロケーションと人間とを同化させることで、双方の存在を見事に際立たせている。  その白眉が、緑の地平線を背景に黒木メイサが片足を引きずりつつ歩む横移動のショットだろう。  あるいは、風の感覚を伝える演出の数々も細かい。空撮の、風に乗るような感覚のみならず、ホテルや車の窓の開閉によって主人公らの顔に吹き付ける風は、独特の情感を醸し出すとともに、説話的にも無駄なくシークエンスに活かされている。  伏線としての小道具、仕草の活かし方もさらに良くなっている。  
[映画館(邦画)] 7点(2011-06-26 22:22:47)
29.  アジャストメント
追手と妨害をかわして、ドアの合間からエミリー・ブラントのダンスを「見て」しまうマット・デイモン。 マット・デイモンの語る真相に混乱を来しながらも、ただ彼と「見合う」ことで彼を信頼するエミリー・ブラント。 親密な眼差しこそが男女の運命を決していく。  古典的な切り返しによって結び付けられる二人の視線。そのシンプルな二元論的編集が二人の運命的な愛の成就を予告する。  「人を見ること」=「人を愛すること」という古典的スタイルの直截なあり方がいい。 同じく、ブラフとしての台詞(理屈)をことごとく裏切っていく画面の、シンプルな活劇性がいい。  ソフト帽をかぶり、ドアからドアへとマット・デイモンは無我夢中でひた走る。 (選挙対策のような)知略も作戦も捨て、ただひたすら疾走することによって愛を獲得する。その無謀の運動性こそ映画らしい。  夜の路地で競争する二人の楽しそうな笑顔も良かった。 
[映画館(字幕)] 7点(2011-06-03 23:17:44)
30.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 
作劇自体は、あまりに理詰め過ぎで人工的。人物同士の関係性を画面内配置と明暗のコントラストで的確に示す手際や、窓枠・鏡・PCモニター・柱といったフレーム内フレームをさりげなく駆使して主人公の閉塞感と開放感を視覚的に演出する構図感覚なども理が勝ちすぎの印象がある。一方で、光と闇に対する繊細な感性と意識も細やかだ。コンラッド・L・ホールによる濃い陰影が、少ない光量の中に映える人物の表情、雨垂れの光を本作でも十二分に活かしきっている。3人家族の食卓で主に中央の主人公の娘(ゾーラ・バーチ)に注ぐ照明の具合、また彼女と隣家の少年が薄暗い室内でビデオを見る場面で、彼女の瞳に小さく揺らめく光の美しさ、あるいはクライマックスとなる雨の夜のシークエンスにおける照明と撮影は何れも絶品である。ケヴィン・スペイシーとミーナ・スヴァーリが見詰め合う窓際の逆光と流れる水滴の美しさ、そこに順光のスポットで浮かび上がる赤いバラの鮮烈さ。それら暗目のトーンが、シニカルな主題を際立たせる。
[映画館(字幕)] 7点(2009-07-12 16:45:17)
31.  アトミック・ブロンド 《ネタバレ》 
デヴィッド・ボウイの「キャット・ピープル」のイントロが早々に流れてくるのだが、 その時点で『イングロリアス・バスターズ』の鮮烈な印象のほうが先行して思い出されて、 あれと同じような使い方をするのだろうな、と却って鮮度感を失ってしまう。 既視感が先に立って、スタイリッシュとはほど遠い。  ところどころで角度を弄って奇を衒うカメラや、 幾度も時制を往還してブレーキをかける語り口も少し煩わしい。 回想談にする必然性は一応あるのだが、顔の痣を先に持ってきてしまった為に終盤の一大立ち回りのインパクトが 薄れてしまっていないだろうか。  危険な階段落ちあり、打撃系アクションありで次第に顔面が変形していく壮絶長回しアクションは 舞台空間の立体性が意識されているし、乱闘の中たまたまその場にあり合わせた小道具をアドリブ的に利用しているような 生々しい迫真性があって素晴らしいが、ここだけ突出してしまっている感も否めない。  ジョン・グッドマンはじめとする癖のある俳優の起用や、タルコフスキーのかかるスクリーン、傘のカモフラージュなどの画は面白い。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2017-10-20 22:15:23)
32.  亜人 《ネタバレ》 
映画開始時の効果音、責任逃れの官僚像とか、SATのくだりとか、画面内のメディア映像とか、すぐにそれと判る本広監督印だが もう一点記すとすればあのベンチの用法だろう。佐藤健と浜辺美波がそれぞれ逆向きにベンチに腰掛けて語り合う構図は 一発で本広監督の刻印と判る。そして当然二度目のシーンでは同一の向きで腰掛けることも。  登場人物の過去の生い立ちだの、動機や背景の説明だのをことごとく排して現在進行形のドラマに徹しているのがいい。 「貴方が嫌いだから。」活劇映画はこのシンプルな動機付けで十分なのだ。  原作由来で、4D仕様ということも考慮すれば仕方無いのだろうが、映画単体で見ればあの分身幽霊に必要性はあまり感じられない。
[映画館(邦画)] 6点(2017-10-09 20:17:01)
33.  あさひなぐ 《ネタバレ》 
まずは坂道の階段を頭に持ってきて画面に変化をつける配慮はいい。 薙刀授与の坂登り、水汲みの坂登りと ロケーションを利用して垂直の動きを呼び込もうというのが窺える。  合宿を抜けようとする松村沙友理が一人水汲みする西野七瀬を見て思いとどまるシーンなど 漫画のコマ割りならあれでいいだろうが、映画ならもう少し空間の処理で見せて欲しい、というのはあるが。  後半はチームの物語になっていくと共に、Gメン的横並び歩きの構図など画面幅をフルに使ったショットも活きてくる。 試合シーンも選手の全身を引きで水平位置から撮ったショットが最も美しく動きを捉えている。  団体戦で、競技を終えた選手が次に出番となる選手と入れ違いに背中を軽く叩いてエールを送るというスキンシップが登場するのだが、 これが映画ならではの感情表現となっていて悪くない。
[映画館(邦画)] 6点(2017-10-01 22:37:37)
34.  愛を積むひと 《ネタバレ》 
同じ北海道でも、函館などの道南地区と美瑛などの道央地区では スクリーンイメージは大きく違う。 特にこの道央が舞台となると、ただただ自然の美観と悠々自適の快適ライフばかりが アピールされて生活感覚を欠いた映画が最近は多く、この映画も例外ではないのだが その景観の魅力は端正で安定感のある撮影でよく撮れている。  物語の大筋も感傷的でウエットなものだが、柄本明のユーモアと杉咲花の快活さが 随所でうまく補っている。  吹雪の夜のシーンで、自然な流れで佐藤浩市に娘のアルバムを持ち出させる契機とする 柄本の起用法など巧みだと思う。  樋口可南子を失った後の佐藤の暮らしぶりの変化を、トイレや鏡の描写で さりげなく示す演出や、野村周平の保釈後の流れなどなど、 台詞をかなり削ぎ落としているのもいい。  のだが、それらの寡黙なシーンになるとすかさず岩代太郎の雄弁な劇伴が ご親切にお世話してくれてしまう。勘弁して欲しい。
[映画館(邦画)] 6点(2015-06-21 20:17:05)
35.  アゲイン 28年目の甲子園 《ネタバレ》 
中井貴一、柳葉敏郎ら旧友3人が居酒屋で酒を交わしながら楽しげに語り合う 長回しショットなど、地味な部分にアドリブ風のいい味が出ている。  ただ複数家族の感動仕立てのエピソードも細々と丁寧に詰め込んだ風ではありながら、 肝心要な部分である中井親子の葛藤と和解の演出はおざなりだ。 というより、演出放棄に近い。  娘:門脇麦の何らかの晴れ舞台に親が応援に駆けつけるとかならともかく、 自分の試合を見に来てくれというだけで一件落着させようという了見自体 虫が良すぎだろう。  キャッチボールシーンで言葉を交わさせなかった点はまずまずだが、 少なくとも彼女が翻意する契機としての何らかの挿話は欲しかった。  フィルムのザラつき感はドラマへの没入を妨げるレベルで、特に暗部はひどい。  
[映画館(邦画)] 6点(2015-03-29 09:02:57)
36.  アベンジャーズ(2012) 《ネタバレ》 
それぞれの超人達が対立する前半は、 身体あるいはエネルギーを一直線的にぶつけ合うアクションが中心であるが、 彼らが結束してゆく後半はアクションのスタイルも微妙に様変わりしてゆく。  洗脳されたジェレミー・レナーが航空母艦の巨大プロペラの破壊を企てるのに対し、 ロバート・ダウニーJr.らはまずその旋回運動を復活させる。  そして超人たちはビルの乱立する市街地を舞台に、 身体の捻りや回転を利用した縦横無尽の殺陣を見せる。 (ボウガンを放つJ・レナーのしなやかなアクションが素晴らしい。)  直線的な核弾頭の進路を逸らし、屈曲させ、 最後は垂直落下してくるアイアンマンの進路を曲げることで激突から回避させる。  対立から結束へ。そのイメージ化としての、直線から円環へ。  その主題を最も象徴する映画的見せ場の一つが、 市街地に降り立った6人が外向きに円陣を組んで空を臨む勇姿を捉える 周回のキャメラワークだろう。  エンディングロール後のラストショットのとぼけた大団円も、 そのクライマックスとは対称的な円形のバランスとニュアンスに味がある。  ただ、最も感動的なアクションを挙げるなら、 それはスクールバスに乗った子供たちを救助する1シーンだ。  具体的なアクションとして一般人を救ったのは、このシーンくらいではなかったか。 ラストのニュース映像で、ヒーローを擁護するのはこの子供達のほうがふさわしい。 
[映画館(字幕)] 6点(2012-08-27 22:08:26)
37.  アナザー Another(2011) 《ネタバレ》 
「そこにいないのに、そこに見える」死者と、 「そこにいるのに、そこに見えない」生者。  その実像と虚像が、硝子の反射と水の透明性のモチーフによって視覚化されていく。  巻頭の病室におかれた硝子コップ。窓ガラス。鏡。校庭の池の水面。義眼の碧い瞳。 それらの反射面に浮かび上がる不鮮明で半透明な人物の像が示すのは 彼らのあいまいなアイデンティティだ。  印象的なその碧い瞳の超クロースアップは、 見る主体と見られる対象を同時に画面に乗せ、 橋本愛の冷やかな印象を強調するとともに 観る側の視線を引き付ける求心的な効果がある。  切り返しを排し、見る主体を不明瞭にしたままの歪な一方向的主観ショットと編集が、 ラストシーンの別れでは切り返しによる視線の交換へと変わり、 橋本愛と山崎賢人の淡い交流を際立たせる。  その表情は画面からは判然としないが、 さわやかな水色の衣装で大きく手を振って車を見送る橋本愛が小さくなっていく、 山崎賢人の見た目のショットがいい。  二人が携帯電話の番号を交わす合宿所の夜、 二人の座るテーブルに置かれた白いカップはもはや硝子製ではない。 
[映画館(邦画)] 6点(2012-08-14 03:16:17)
38.  アントキノイノチ
一種の流行なのか、役者の表情にハンディの高速ズームを度々入れてくるようなところが映画の統一感を欠いてさもしく煩わしい。  一方で、主演する岡田将生・榮倉奈々の二人の表情を捉えるショットは二人の瞳や口元の繊細な震えと動きを的確に伝えているし、部分的にVFXも使われているのだろうが、山の稜線やビルの高層階を捉えた高所のショットの危うい感覚などは見事だ。  二人は居酒屋、観覧車、ラブホテル、浜辺で互いに向き合い言葉少なに対話を紡ぐ。 二人の声のトーン、息遣い、ナイーヴな表情とぎこちない動きが素晴らしい。  にもかかわらず気になるのは、「友情出演」でクレジットされる壇れいのための水増しシークエンス。浜辺の波音、山稜の風音に負けず劣らず盛大な「泣かせ」の劇伴音楽。頻繁すぎて停滞を招く過去のフラッシュバック、、。  『感染列島』以降のシネコン症候群は如何ともし難く、しがらみと不自由を感じさせる。 
[映画館(邦画)] 6点(2011-12-04 23:20:09)
39.  悪人 《ネタバレ》 
各役者とも決して動の演技が少ないわけではないにもかかわらず、表情芝居のショットが多い。ために、キャラクターへの心理的同化の効果は高いだろう。 (久石譲の雄弁な劇伴も相変わらずだ。)  雨の事件現場、傘の中で柄本明に無言で応える満島ひかりの表情の切り返しショット、続いて真上からの俯瞰ショットを繋げた喪失感の演出などをはじめ、確かに随所で達者な表情が引き出されている。  けれどよりエモーションを掻き立てられるのは、遺体安置所の廊下で支えあう夫婦のシルエットや、バスにお辞儀する樹木希林の背中であったり、湯によって温まる足指や、引き離される手と手といった部位による芝居だ。  あるいは・夜・曇天・風雨が主体の撮影のなかで、フロントガラスを流れる雨垂れを通して滲んだ不鮮明な表情や、灯台のシーンで夕闇の黒の中に消え入りそうになりながら強風の中を駆け上がる深津絵里の俯瞰ショット。つまりは見えない表情の喚起力である。 そしてその夜間においても見事な情景撮影は、凍えるような外気温と、二人の体温をも確り伝えている。  灯台に迫る警官隊のライトの列は、伊藤大輔の御用提灯を想起させるような粋な趣向だった。  
[映画館(邦画)] 6点(2010-09-20 22:04:23)
40.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
突然の奇襲で登場人物共々に観客を驚かす。ショックとサプライズの類が主であって、ヒッチコックが語るところのサスペンスのように、 ある種の感情を揺さぶってくるものではない。前半の、複数の人身事故を組み合わせた長廻しモブシーンなどはその状況に引き込んでいく上で 有効だと思うが、後半もそればかりでは単調にならざるを得ない。  折角、有村架純が手渡すお守りのエピソードををつくりながら、それを有効活用させないのは怠慢だし、 そこで流れる歌曲の用い方もさして芸がない。大泉を危機から救うのはブランド時計などではなく、こじつけでもあのiPodであるべきだろう。 そんなだから、三者の間にもドラマが生起せず感情を刺激されることもない。   ドラマを小状況に限定したのはいいとして、モールの構造や空間・設備も十分に活かしきれていない。それは屋上から地下駐車場までの位置関係と経路、 ラストの三つ巴状況の位置関係とギリギリの距離感をレイアウトの中で明瞭に示せていないという事であり、これまたサスペンスを生めていない。 同様に、劇中でのZの群れを有限でカウント可能なものとしてしまうのなら、残弾数のカウントダウンでもってサスペンスを演出すべきかと思うが。
[映画館(邦画)] 5点(2016-04-28 23:16:27)
010.11%
150.53%
2202.14%
3384.06%
4717.59%
510311.00%
610811.54%
721522.97%
821823.29%
911412.18%
10434.59%

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