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プロフィール
コメント数 2401
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  明日に向って撃て!
ニューマン&レッドフォードは映画史に残る鉄壁のコンビですが、意外なことに本作と『スティング』だけなんですね。やはりその中でもこの映画が最高で、彼らとキャサリン・ロスの三人こそベスト・オブ・三角関係と呼んであげたい(対抗馬は『冒険者たち』でしょうかね)。 この映画はよくニュー・シネマ西部劇と言われますが、ニュータイプのウェスタンかもしれないけど私は決してニューシネマじゃあないと思っています。まあ主人公が最後に死ぬということぐらいがニューシネマらしさで、ときにはコミカルそしてノスタルジックな撮り方はニューシネマという範疇を超えていますし、ジョージ・ロイ・ヒルの映画監督としてのセンスの良さを存分に愉しめます。バート・バカラックのサウンド・トラックも彼の最高傑作で、最初に観たときの感動は今でも忘れられません。 映像も音楽も今観直しても全然色あせていない、珠玉の傑作です。
[映画館(字幕)] 10点(2014-08-02 22:52:27)
2.  網走番外地(1965) 《ネタバレ》 
良く考えてみると脱獄してからの展開は『手錠のままの脱獄』のパクリみたいなもんですが、そんなことを微塵も感じさせない痛快な作品です。広大な国土のアメリカと違って日本では脱獄は自殺行為だと思ってましたが、こういう風に北海道の最果てなら成功して逃げ切れそうな説得力があります。 いつも通りのストイックで家族思いの高倉健なんですが、この映画の健さんは饒舌とまではいかないにしても良く喋るんです。入浴のシークエンスではハダカで阿波踊りまで見せてくれるんですから、びっくりです。でも随所で流される健さんのナマ歌『網走番外地』には、なんか荘厳な響きすら感じて震えちゃいました。 監督の石井輝男を始めとしてアラカンや丹波哲朗といった新東宝の残党メンバーたちの底力がこの作品を傑作にまで高めたのかもしれませんね。アラカンの鬼寅はさすがの迫力でしたし、丹波が最後までイイ人だったというパターンも珍しい。この映画は本来二本立て興行のBプロとして撮られた小品なんですけど、これでも新東宝の予算じゃ決して撮れない企画なんだから石井輝男も思い残すことなかったでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-02-10 20:16:10)(良:1票)
3.  悪の階段 《ネタバレ》 
大金を強奪した5人の男女が仲間割れというありふれたプロットなのに、不思議なほど引き込まれる魅力を持った作品です。キャスティングだけでこの映画の評価の8割は決まったとも言えます。山崎勉は『天国と地獄』の竹内銀次郎からさらに人間的感情を削ぎ落してもっと冷酷にした様なはまりキャラです。西村晃がこういう役をするのは別に珍しくはないけど、きっちり期待以上の演技を見せてくれます。一味の中に加藤大介を入れるというのがまた絶妙で、彼としては珍しい犯罪者役ですがやっぱこの人は上手いわ。そしてあの東宝きってのお嬢様女優である団令子が崩れた悪女だというのが驚きです。こういう役は、彼女のフィルモグラフィ中でも唯一ではないでしょうか。 不動産屋の中にほぼ画面が限定される後半は、二階と地下に昇り降りする階段を意識した画面造りには拘りを感じさせます。でもあの水筒のシークエンスはちょっと不自然で、だいいちあんな水筒、お店で売ってないでしょう(苦笑)。それまで山崎勉があまりに怜悧だったから、このシーンにももっと裏があるんじゃないかと勘ぐってしまって拍子抜けしちゃいました。でもこの映画の持つ独特の雰囲気はフレンチ・ノワールを東宝映画調に昇華させることに成功しており、まさに隠れた傑作と呼んで過言は無いでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-10-20 20:05:30)
4.  甘い生活 《ネタバレ》 
近年、フェリーニの評価がだんだん下がってきた様な気がしますが、50年前に撮られた本作を観直して改めてため息が出ました、「あんたやっぱり凄いよ、フェリーニさん」。 ストーリーなぞあってなき様なものですが、ひとつひとつのエピソードが独立して一編の映画に出来そうな濃厚さです。 マストロヤンニを見てると、50年経とうが500年過ぎようが人間の本質は変わらないのだなと思います。 きっと誰もが腐った魚と隣り合わせで生きているけど、なかなかそれに気づかないものなのですよ。
[ビデオ(字幕)] 9点(2010-08-04 20:48:12)
5.  アラビアのロレンス 《ネタバレ》 
実際のロレンスとは違うという批判があることは承知していますが、歴史上の特異な人物をここまで説得力を持って描いたデヴィッド・リーンの手腕は見事です。なんと言って良いのか迷うとこですが、この映画にはオーラのような迫力があることは確かです。どのシーンも切り取れば一幅の絵画になるような素晴らしい映像の乱れうち、後半のダマスカスで開かれるアラブ国民会議のシークエンスは何度観てもルネッサンス期の宗教画のごとき濃密な映像に感嘆します。ピーター・オトゥールの演じるロレンス像は、歴史上の人物としてはジョージ・C・スコットのパットン将軍、ケイト・ブランシェットのエリザベス1世と並ぶ「他の俳優が演じることが考えられない」名演技だと思います。ロレンスは現在の中東情勢には直接責任はないのですが、イスラエルで彼はどの様に評価されているか興味があります。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-03-29 13:28:44)
6.  赤毛 《ネタバレ》 
製作当時はもう五社協定は雲散霧消しているわけですが、こうやって岩下志麻や乙羽信子が東宝映画で三船敏郎と共演しているのが観れるというのは珍しいことです。明治維新のときの赤報隊の史実をもとにしたオリジナル・ストーリーですが、穿った観方かもしれないけど70年安保闘争をカリカチュアしたような脚本であるような気がしてなりませんでした。官軍=佐藤栄作政権という図式で、宿場に突入してきた官軍が村人と対峙する絵面はまるで機動隊と衝突する学生デモ隊が彷彿されます。その村人たちも代官に反抗していたのは女郎屋の女たちと老師に扇動された若者だけで、半分以上の住民がこの騒動を眺めるだけの野次馬だったというのも意味深です。けっきょく赤報隊として官軍に利用されて果てる権三=三船敏郎なのですが、若者たちに詰め寄られて「理想と現実は違うものだ」と逃げを打つ老師=天本英世のセリフを聴くと、70年安保闘争後の無残な学生運動の成れの果てを予言していたようにすら感じます。 前半はとくに岡本喜八節が快調で、岡本映画常連の伊藤雄之助だけでなく三船敏郎までもがコミカルな演技を見せてくれます。権三が吃音気味というキャラ設定のおかげで、三船は普段は聴き取りにくいセリフ回しなんですが切れ切れに喋るおかげでいつもより耳に入りやすかったです。そして全編で効果的に使われるのが“ええじゃないか”節で、あの踊り狂う群衆の迫力は後年の珍作『ジャズ大名』の前振りみたいに感じました、もちろん今村昌平の『ええじゃないか』よりもずっと早いですね。コミカルな前半から打って変わって悲劇的な結末を迎えるわけですが、後半はちょっとテンポがもたつく感はありました。宿場に潜入していた幕府側の遊撃隊のエピソードは、ちょっと詰め込み過ぎた脚本のような感じでもたつきの原因だったと思います。とは言え個人的には珍しい三船敏郎のコメディ演技は堪能できたかなと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-02-11 22:09:40)
7.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
その昔、明石家さんまがトレンディドラマに出ていたころ、有名な“テニスラケットを使ったパスタ水切り”をそっくり再現というかパクっていました。名優ジャック・レモンの伝説的なパフォーマンスをパロっちゃうとは、さんまというか演出家はいい度胸してるなと感心した思い出があります。 初めて観たとき、「NYってラブホが無いのかよ?」というのが強烈な違和感だった記憶があります。いくら一等地にある部屋だといっても、知り合いが住んでいる部屋に女の子を連れ込みますかね、それも急にムラムラしてきたってわけじゃなく一週間以上前から予約しておくなんてねえ。まあそれを言っちゃあ話が進まないので深くは掘りませんけど、貸しているジャック・レモンも出世のための苦行だと割り切っている俗物キャラなのがイイですね。シャーリー・マクレーンの演じるフラン(ファミリーネームがキューブリックというのが凄い)に関しては、“純情そうに見えるけどヤルことはヤッテいる女”という感じがするし、ほとんど極悪非道といっていい人格の部長に離婚させて後釜に収まろうとするちょっと嫌な女。でも最後の最後で突然目覚めてレモンのもとに飛び込んでゆくラストは、それまでほとんど彼女に感情移入できなかっただけに鮮やかな脚本だと感心します。 言ってみればこのお話しは典型的なシチュエーションコメディなわけですが、そこに微妙なさじ加減でペーソスが味付けされている、まさにジーン・ワイルダーじゃなきゃ撮れないラブコメだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-27 22:14:14)(良:1票)
8.  赤い天使 《ネタバレ》 
なんでも増村・若尾コンビは全部で20本ああるそうですが、たぶん本作がその最高傑作というか極北に位置することは間違いないでしょう(全部観てるわけでもないのに偉そうですが)。だってほんと凄いんだもの、現役の映画作家ではその描写のエグさ・凄まじさはとうてい真似できないと思います。そりゃエグいスプラッターは日本でも撮られていますが、両腕を切断された兵士の性処理をナースがしてあげる描写なんて、当たり障りのない題材にしか手を出さないを製作委員会方式が幅を利かせている現状では絶対にありえません。まるで魚を捌くように手足を切り落としてゆく野戦病院、そして「俺は人命を救っているんじゃなくて〇〇〇を量産しているようなもんだ」と自嘲する軍医、ここら辺は『ジョニーは戦場に行った』に通じる不条理があって究極の反戦映画とも言えそうです。若尾文子もいい思いをさせてもらった男はみんな黄泉の国へ引っ張って行っちゃう、これじゃまるで“死の天使”ではございませんか。芦田伸介と二人で兵隊コスプレで始まるどう見たっての変態プレイはちょっと異様ですけど必見です。 増村作品の若尾文子はブレるところはあっても一途な女性というパターンが多いけど、それは本作の西さくらが完成形でしょう。ここは好みが分かれるところかもしれませんが、自分は川島雄三作品の若尾文子も捨てがたい魅力があると思ってます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-11-14 23:29:10)
9.  穴(1960) 《ネタバレ》 
冒頭で「この映画は私の体験を友人J・ベッケルが忠実に再現しました」なんて登場人物のひとりであるロラン(つまり彼が原作者J・ジョヴァンニということか)がシャバで語るからてっきり脱獄に成功したのかと思いこんでしまいました(笑)。それがいい意味でラストのサプライズに繋がるのでまあ良しといたしましょう。でもお勤めを果たして無事に出所出来るのなら、『パピヨン』の悪魔島とは違うんで何も無理して脱獄なんかしなくてもと思ってしまいます。このパラドックスを吹き飛ばしてしまうのが、床に穴をあけ地下水道に下り、さらに壁にトンネルを穿つまでのプロセスを見せる音楽をいっさい排した偏執的ともいえる演出です。同年に同様な演出技法を使ったR・ブレッソンの『スリ』も撮られているのも興味深い。 ラストの顛末にはいろいろな解釈が可能ですが、わたしはなんだかガスパールが裏切ったのではないと感じてしまいます。どうとも取れる様に色んな伏線を並べているのは監督の意図であり、このカオスそのものと言った終幕は仏サスペンス映画の良質な伝統を受け継いでいると思います。
[DVD(字幕)] 8点(2013-05-12 22:29:18)
10.  雨の午後の降霊祭 《ネタバレ》 
私は未見ですが、黒沢清が撮った『降霊』は本作のリメイクだそうです。『降霊』はホラーですが、本家はホラー的な雰囲気はありますが非常に良質のサスペンスです。名舞台女優でめったに映画出演しなかったキム・スタンレーが霊媒で、気が弱く優しい夫をリチャード・アッテンボローが演じているのですが、二人とも実に見応えあるいい演技ですね。降霊会を開いている自宅を外から見せる映像がいずれも低い位置から仰ぎ見るショットなのですが、そこは名作ホラー『回転』を思い出させてくれます。 スタンレーは自分の霊能力を世間に知らしめたくて、嫌がる夫をまきこんで金持ちの女児を誘拐します。どうやら彼女の霊能力とは子供を死産してしまったトラウマが原因の一種の狂気らしくて、根が優しいアッテンボローは妻を愛するが故に誘拐の実行を助けてしまうのです。やらせで霊視をして事件が解決したように騙すはずだったのに、お約束の様に歯車が狂い始めて思わぬ展開になってゆくのはコーエン兄弟が好きなプロットですが、そこは60年代のイギリス映画、ピリピリした緊張感に満ちた展開を見せてくれます。 地下鉄を使った身代金の受け渡しシークエンスは、ドキュメンタリータッチでけっこうハラハラさせられました。ちょっと不満なのは、ラストでアッテンボローが誘拐した女児を殺害したのかどうか良く判らない描写になっていることで、殺していないようにも受け取れる撮り方なのです。まあこの辺はアメリカで公開することを考慮して、自主規制したみたいです。 こんな良作がこれほど無名だというのは、ちょっとサプライズですね。
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-31 00:45:02)
11.  ああ爆弾 《ネタバレ》 
こ、これは凄い、まさにカルト中のカルトだ! だいいち、能・狂言・歌舞伎・浪曲をベースにしてミュージカル仕立てのコメディを撮るなんて、発想が凄すぎます。銀行員が突然歌って踊りだすシーンには、そのあまりのバカバカしさに鳥肌が立ちました。そう、この映画様式自体からしてギャグでして、映画の文法は無視しているは、そのテイストはフリージャズを思わせます。監督も凄いけど、こんなとんでもない映画を撮らせてくれた東宝という会社もなかなか懐が深いですな。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-01-28 21:17:25)(良:1票)
12.  あの胸にもういちど
「世界でいちばん有名なライダースーツの女」といえば、50年以上たっても本作のマリアンヌ・フェイスフルの王座は揺るぎません。いまやすっかりおばあちゃんになってしまいましたが、あの頃の衝撃的なおっぱいとお尻にどうしても眼がいってしまいがち、でもルックスは決して美人とはいえなくどちらかというとタヌキ顔で、よく見ると若いころのうつみ宮土理に似てる気がします。まあほとんどストーリーが無いも同然のこの映画ですから、ひたすらマリアンヌのライダースーツ姿とバイクの疾走を愛でるのが正解です。 監督したのは名カメラマンであるジャック・カーディフで、今となってはダサいかもしれないが当時としては先進的なサイケな映像が斬新です。彼やソウル・バスみたいな撮影や美術畑の人が撮る映画には突拍子もないものが多い気がしますが、カーディフの監督としてのピークはやはり本作だったと思います。なんせこの次の監督作が『悪魔の植物人間』ですからねえ、演出手腕は持っているのに何を考えていたのやら… アラン・ドロンはたしかに贅沢な使い方だとしか言いようがないですが、彼の英語のセリフはどうも吹き替えみたいです。でもこのキザでニヒルでツンデレな大学教授は、よくぞドロン様を引っ張り出してくれましたと賞賛したくなるナイスなキャスティングです。あの唐突な幕の閉め方は、やはり『バニシング・ポイント』などのニューシネマに影響を与えたんじゃないかな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-10-25 22:42:13)
13.  暗黒街の対決 《ネタバレ》 
岡本喜八の作品としては『暗黒街の顔役』の方が有名ですが、どうしてどうして、本作の方が喜八らしさは濃厚で愉しめるかもしれない。お話し自体はハードボイルド刑事もの+任侠ものという感じです。三船敏郎の潜入刑事は、貫禄たっぷりの三船がストーリーラインはシビアなのにユーモア溢れる演技を見せてくれて、これが『用心棒』や『椿三十郎』より前の作品なのは興味深いところです。鶴田浩二はいつもの鶴田浩二で平常運転でしたが、お嬢様女優の司葉子がヤクザの情婦というキャラでヒロインというよりも汚れ役だったのは珍しかったです。この映画は脇役たちのキャラが立ちまくっていて、天本英世ら三人の殺し屋とミッキー・カーチスのコーラス・グループ、いわば元祖“キラーズ”みたいな連中が歌う“月を消しちゃえ”はもう抱腹絶倒間違いなしです。こういうところがいかにもな喜八節なんですよね。三船のトレンチコート姿は当時としては群を抜いたスタイリッシュだったと思いますが、残念だったところは彼は素手での殴り合いのようなアクションになると意外ともっさりしているんです。剣を握っての殺陣とは、やはり勝手が違ってくるんでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-11-16 23:31:35)
14.  アメリカ アメリカ 《ネタバレ》 
「私の名前はエリア・カザン、血はギリシャ生まれはトルコ、伯父の移住でアメリカ人になった」というカザン本人のナレーションで始まります。原作は自身が執筆した長編小説、紆余曲折がありながらもここまでキャリアを重ねてきたところでの自分のルーツ探索をテーマにする、どの分野の人でも頂点から坂を降りだしたときに見られるパターンですが、カザンもこの罠から逃れられず、本作が米国で映画賞をもらった最後の作品となりました。 主人公の若き日の伯父が移民として合衆国に上陸するまでの紆余曲折・波乱万丈のストーリーですが、とにかく長いお話なので気持ちの準備が必要です。主人公がトルコの内陸部の故郷から首都イスタンブールにたどり着くまででも、たっぷり40分はかかるんですからね。この旅はお人好しの田舎青年が狡猾なトルコ人無頼漢に身ぐるみはがされ無一文にされてしまうわけですが、けっきょくこの無頼漢を殺してしまうという大罪を犯してしまいます。治安が乱れ切っていたオスマン帝国ですから、その後に警察が捜査している様子はないのですが、彼の「何がなんでもアメリカに行きたい」という執念を支えるのにこの罪の意識が影響を与えていることは間違いないでしょう。港の荷役労働で旅費を貯めようとしてもうまくゆかずテロリスト・グループに間違われて銃撃されて重傷を負う、もう悲惨の極みです。イケメンなところを見込まれて金持ちの絨毯商人の娘の婿になる幸運をつかみますが、ここからがいけません。嫁は器量の方は並ですが気立てが良いし義父も実の息子のようにかわいがるのですが、それでも青年は婚約破棄してでも単身で渡米しようとします。ここが見る人には最大の?で、確実な幸せを放棄してまでしてなんでこの青年が渡米に執念を燃やすのかが理解できないと思います。殺人の罪の負い目があったのかもしれませんが、とても普遍性がある行動とは思えませんし、この映画の最大の欠点とも言えるでしょう。それでも多民族国家で被支配民族が味あわされる悲哀はひしひしと伝わってきます、これは日本人には決して実感できないことでしょう。 オスマン帝国のギリシャ人は第一次大戦後の混乱期に虐殺されたりして大変な目に遭いますので、結果的にはカザンの伯父の選択は正解だったことになります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-06-29 23:01:05)
15.  ある戦慄 《ネタバレ》 
むかしTV放映で観たとき、「NYの地下鉄って真夜中でも動いてるんだ、それにしても汚い車両だな」と感じたことが思い出されます。この映画の乗客たちの様なシチュエーションには絶対遭遇したくないものですが、大人になっても体験してないのはラッキーなのかもしれません。この二人のチンピラは、良く考えると肉体的な暴力はほとんど乗客に加えず言葉の暴力と突拍子もない動作で痛めつけているのです。その絡み方がけっこう理屈っぽいところが無教養な若者らしくないんだが、ヤクザに理詰めで詰められるほど怖いものはないと言うことのいい見本かもしれません。まあそのプロットが乗客たちの赤裸々な実像を浮かびあがらせると言ういかにも演劇的な効果を生むわけで、良く練り込まれている脚本です。 ラストにやっと登場した警官までもが、刺されたボー・ブリッジスを介護しようともせず、黒人を見たとたんに犯人と決め付けて飛びかかるなぞ、とにかく観る者の不快指数を上げてくれる素晴らしい映画でした。
[DVD(字幕)] 7点(2012-05-26 01:23:50)(良:1票)
16.  ある殺し屋 《ネタバレ》 
『必殺仕事人』の中村主水のキャラ造形に影響を与えたと言われますが、殺し屋雷蔵は普通ぶりでは藤田まことのはるか上を行ってます。仮の姿は小料理屋の主人、そして本業になれば殺し屋としてターゲットを料理する、いやーカッコ良すぎです。ところが脚本はけっこう粗くて、クールなくせして怪しげな成田三樹夫が持ってくる麻薬強奪案件にホイホイと乗ってしまう。凄腕殺し屋はたいがい仕事にはセオリーやこだわりがあるものですが、この仕事は殺しではなく単なる強盗じゃないですか。野川由美子に付きまとわれるのも「自分しか信じない」一流殺し屋とは思えない甘さです。この野川由美子のキャラがまた増村保造ワールド全開のあばずれで(増村保造は脚本を書いてます)、雷蔵のキャラと野川のキャラが両極端で二人が組む(というか雷蔵が野川を追い出さない)必然性がないのが苦しい。ところがそこに怪しいヤクザ成田三樹夫が絡むので、三人の不思議なアンサンブルが成立しちゃうのが面白いところです。本作の成田三樹夫はなんか光輝いていて、実にいい味出してるんですよ。そして耳に残る主題曲、これだけ単純なコードを使ってここまで印象的なメロディになるとは驚きました。まあいろいろ突っ込みはしましたが、必見の価値ある愛すべき一篇です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-11-18 00:01:09)
17.  アメリカ上陸作戦 《ネタバレ》 
冷戦時代の米ソ対立とアメリカ人の国民性を皮肉った映画ですが、この笑いの狙いが“ブラック・ユーモア”なのか“ほのぼのヒューマン系”かどっちつかずなのが痛いところです。ブラック・ユーモアというからには「おい、そこまでやるかよ」というハチャメチャさがなくちゃね、似た様なプロットの『1941』ぐらいはじけなくっちゃいかんでしょう(たとえそれが観客に受けなかったとしてもね)。 名優アラン・アーキンはこれが映画デビューですけど、さすがに上手いし可笑しい。もっと前面に出すプロットにして、主役として活躍させたほうが良かったでしょう。その主役はカール・ライナー(『オーシャンズ』シリーズのソールです)ですが、40年前の彼は不気味なほどニコラス・ケイジにそっくりなんですよ、あの後退した生え際なんかもね。そうか、そのうちああなっちゃうのか、ニコラス・ケイジも40年後には…
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-04-24 20:04:05)
18.  荒鷲の要塞 《ネタバレ》 
小説化を前提に冒険小説の巨匠アリステア・マクリーンがオリジナル原案と脚本を書いただけあって、とくに後半は二転三転するストーリーはなかなかのものです。勇壮なロン・グッドウィンのメイン・テーマも、戦争アクション映画のベスト3に入れちゃいたいほど好きです。 リチャード・バートンは名優ですけどアクション映画に不向きで、どうも体の動きが鈍重なんですよね。この手の映画にはそりゃバート・ランカスターやカーク・ダグラスが適役ですけど、この二人はとても英国人には見えないので、まあバートンでも良しとしておきましょう。ハリウッドに復帰したばかりのイーストウッドも頑張っていますが、多少短くしているとは言ってもあの髪型は特殊部隊の将校らしくないですよね。二挺拳銃みたいにしてシュマイザーをぶっ放すシーンがありますが、いくらなんでもあれはやり過ぎです。イーストウッド自身が希望して撮ったアクションなんだそうですが、あんな撃ち方が実際に出来るわけがないでしょう(カッコ良いのは確かですけど)。サービスで二人も出てくる女スパイも、定石では少なくとも一人は途中で死ぬところですがラストまで銃撃ちまくって大活躍しちゃうし、こいつら弾に当たらない超人部隊か!
[映画館(字幕)] 6点(2012-01-28 20:18:08)
19.  ある殺し屋の鍵 《ネタバレ》 
『ある殺し屋』に続くシリーズ(?)第二弾。前作で警察に追われ何処へともなく去って行ったのがラストシーンだったので本作はその後日談と思いきや、全然別のお話しでした。今回は雷蔵の仮の姿は踊りのお師匠さんで、そりゃ梨園出身だけあってさまになっています。本作では雷蔵はけっこう芸が細かい仕事ぶりで、雑誌記者やらカメラマンに変装(?)したりして頑張ってます。娯楽色は確かにアップしてはいますが、前作が持っていたあの独特の雰囲気がない分落ちる出来と言えるかな。雷蔵の殺し屋はけっこうカネにうるさいのですが、最後に思わぬ失敗をしてしまいそれが題名の『鍵』に繋がるわけです。市川雷蔵はこの後若くして亡くなってしまうのですが、もし寿命がもっとあれば第三作以降もきっと撮られただろうと思われます。雷蔵の世間をたばかる仮の姿を毎回違ったパターンで見せてくれたんではないかと思うと残念ですね。そしてもう一つ考えられるのは、『必殺』シリーズの中村主水は藤田まことではなく市川雷蔵が演じていただろうということでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2010-11-18 19:02:54)(良:1票)
20.  アルファヴィル 《ネタバレ》 
「そもそも、この映画はSFなんでしょうか?」と言う疑問もわいてきますが、考えるに実に立派なSFですよ。普通にパリかどこかを借景してロケで全編押し通していますが、α60とかいうコンピューターの設定は製作時代を考えると突出した発想だと感心しました。しかしゴダール自身には「SF愛」は全然ないみたいですがね(笑)。 とは言え本作がオーウェリアンSFの新境地を開拓したことは否定できないでしょう。それまでのSF映画は、センス・オブ・ワンダーを追求することに血道をあげて、貧弱なイメージしかなくても「誰も観たことのない世界や科学」の映像にこだわって失敗しているケースがほとんどでした。が、本作以降は大して技術が進歩していない様な近未来を映像化したSF映画がどんどん創られるようになってゆきました。その極致に位置するのが『ブレード・ランナー』で、劇場公開版のデッカードとレイチェルが車で逃げるラストシーンは本作のラストとそっくりなのはご愛敬です。 個人的には本作あたりがぎりぎりのゴダール許容範囲ですが、イメージはともかくあの台詞の気障で観念的なところは辟易させられました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-27 23:40:53)
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