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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1248
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  ガザの美容室 《ネタバレ》 
題名の場所の映画である。屋外が映る場面もあるが基本は店内だけなので舞台劇でも間に合うのではと思われる。来店者10人は全部が客でもなく半分は付添いだったが、途中いろいろあったとはいえ最初に椅子にいた客が最後まで終わらず、他の客を待たせたまま遅々として仕事が進まないのは非常に苛立たしい。密室劇風の想定に寄りかかった都合のいい作りに思われる。  この映画での前提として、まずイスラエルはほとんど視野の外に置いている。劇中のガザ地区はすでにハマスの支配下にあり、後半で戦っていた相手は現地のマフィアであって、つまりパレスチナの内輪の争いということになる。 店内にいた人々の宗教は不明だが、店主はChristineというからにはキリスト教徒、また終盤で祈っていた熱心なイスラム教徒以外も基本はイスラム教徒ということになるか(不明)。異なる宗教もあり信仰の濃淡もあるが、この場では宗教対立もなく平たい関係になっていたようである。また住民の全部がハマス支持でもないようで、登場人物の発言によればハマスの支配は熱心なイスラム教徒の支持によると思われている面もあったようだが、少なくとも劇中の熱心なイスラム教徒は支持しないと言っていた。なお当然かも知れないが神様自体は悪者扱いされていない。 その上での世界観としては、世界には民族や宗教で分かれての争いが絶えないが、新たな対立軸として世界を男女に二分すれば女性側には争いが生じない(話せばわかる)という日本でも親しまれてきた考え方のようで、パレスチナ人も西側自由世界と共通感覚が持てることが表現されている。さらに終盤の出来事からすると、この世に善き男がいるとすれば死ぬ間際の男だけ、というようでもあった。 以上は基本設定の解釈のようなものだが、その上で劇中ドラマや登場人物の心情について語る資質が自分にあるとは思えないので、点数は採点放棄的な意味で中間点の5点にしておく。  その他の点に関して、ロシア人が出て来た事情は不明だが冷静かつ周囲に睨みを効かせられる人物のようで、女性に国政を任せるべきだという話の中でイスラエル関係担当大臣というのは変に納得した。また熱心なイスラム教徒は正直で良心的な人物だった。 ちなみにマフィアが動物園からライオンを盗んだというのは実際にあったことらしい。何か動機はあったのだろうが、この映画としては台詞に出ていた「気まぐれ」というつもりだったかも知れない。若いメスに見えるので、ライオンの女の子も男に虐待されていたという意味のようだ。
[インターネット(字幕)] 5点(2023-10-28 10:26:37)
2.  風鳴村 《ネタバレ》 
原題は“風車の大虐殺”だろうが、日本国内向けには邦画ホラーの「恐怖の村シリーズ」を思わせる題名とイメージ画像(顔付き)を作っている。内容としては観光バスツアーに参加した客が殺人鬼に順次惨殺されていく展開になるが、見るからに作り物なので嫌悪を催すほどの残虐さは感じない。腹部から出た腸を胸部に戻そうとするなと劇中の外科医には言いたくなった。 オランダ映画ながら登場人物は外国人ばかりで台詞は英語だが(一部は日本語)、一応オランダらしく風車小屋が出て来て、そこへ行くまでの干拓地の風景も見られるのは有意義だ(チューリップは出ない)。水路沿いに丸い池が2つあって堤防上の道路が迂回していたのは何だったのか知りたい。ちなみにアムステルダムは売春宿の栄える頽廃の都のイメージなので地獄行きの出発地にふさわしい。 一応最後まで飽きずに見ていられる作りだが、風車以外はそれほど特徴的な点もなく、悪くはないが平凡な印象の映画ではあった。よかった点としては、オランダから逃げればいい、と子連れの男が言ったのがちょっと意表をついた発想で、これは本人が隠していたものが図らずも外部にはみ出てしまったことの表現として効果的だった。  ほか背景設定には不明な点が多いが、個人的に興味深かったのは悪魔と契約した男が、「風のない日も風車が回るよう」にして財を成したが周辺住民に殺されたという昔話だった。ここで風車はオランダ独自要素としても、同様の話はヨーロッパの別の場所にも伝わっているとのことだったが、日本でも憑物筋と言われたのは地域社会で富裕な家系だったという説もあり、それと似たようなものとすれば悪魔というより周辺住民の妬み嫉みがもとになった話とも考えられる。この辺は意外に邦画「犬鳴村」にも通じるところがある。 また拙い日本語を話す変な東洋人は日本語だったからには日本人と思うしかないが、この男が真言を唱えただけで悪霊が退散したのは、東洋の神秘的な力が欧州では無敵だというようで感心させられた。どうせこんなのは二番目くらいで無惨に死ぬだろうと思っていたらそうでもなく、祖母との関係性や終盤の行動を見ると、わりと肯定的に扱われた登場人物だったらしい(子ども・女性・有色人種を優遇)。最後は日本でいう「ほんとに怖いのは人間」的な結末だったようである。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-07-23 09:43:59)
3.  隠し味は愛<TVM> 《ネタバレ》 
台北発メトロシリーズ(台北愛情捷運系列)全7作の一つである。駅は中正紀念堂駅とのことで、周辺には駅名の由来になった蔣介石総統を記念する施設があるはずだが映像には出ず、主に「國家戲劇院」という国立劇場(表と裏)が映っていたようだった。また別の回の舞台だった淡水の浜辺の場面などもあるが、ここは「デートのメッカ」だそうである。 今回はシリーズ中で最も娯楽色の薄いエピソードで、邦題から感じるような和み系の映画でもなく、特に女性の怖い顔などは目を逸らしていたくなる。主人公が料理教室を主宰していることから料理映画の性質もあるが、料理映像というより調理方法に託して人間関係を語る趣向になっている。また主人公のグループ4人に関しては、青年期を過ぎようとする人々(少なくとも1人は1982年生まれ)が、少女時代を回顧して現在を再確認する意味もあるようだった。  物語としては正直よくわからなかったが、既婚者同士の不倫未遂を契機として、隙間が生じていた2組の夫婦に変化が生じた話ではあるらしい。なおTVドラマ放送時の「傻瓜與睡美人」という題名は、解説によれば「愚か者と眠り姫」だそうで、うち「睡美人」はそのままSleeping Beautyと読める。 以下解釈例として、まずお姫様の方は愛がないと言われたりもしていたが、これは何が愛なのかわかっていなかったということか。異性に心惹かれるのも愛だろうが、これまで自分を支えてきた祖母や親友や夫を大事に思う心も愛だと気づいたのかも知れない。結果的には淡水の浜辺で再出発し(王子様のキスに上書き?)、新しい愛の物語を始めたのだと思っておく。 また王子様に関しては、これまで自分がしたいことを自分のためにしてきたのを、今回初めて誰かのために何かすることを学んだのかも知れない。それならそれが夫婦の関係修復にも役立つはずだったと思えるが、早々に妻の側が切り捨ててしまったということか。この王子様は金持ちの息子で覇気はないが善良で細かいところによく気のつく男で、これこそ主夫業に向いた男ではなかったかと思うが、夫はそれでよくても妻の側が耐えられなかったかも知れない。仮に妻も夫も同じ上昇志向タイプなら、子を育てる気でもない限り、夫婦でいること自体に意味がなかったとも思われる。 以上により必ずしも話の全部を読み取れた気もせず、また背景事情の設定などに不明瞭・不自然な点もあったが、このシリーズにしては時間が長い分、多くのものを詰めようとした印象の映画ではあった。  その他のこととして、少女時代の回想場面では、さすがに日本のようなルーズソックスは出なかったが、同じ役者のままでスカートの短い制服姿になるのが今回のわずかなギャグ要素かも知れない。ただ特に「玉娟」という人物が、年齢に関わらず昔からこういうイメージだったことの映像的表現といえなくはない。 ほか料理教室の生徒だった低身長女子2人が屈託ない感じなのは安心させられた。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-22 10:31:13)
4.  KANO 1931海の向こうの甲子園 《ネタバレ》 
台湾では大好評だったようだが媚日映画との批判もあったようで、また台湾の有名な映画賞を受賞できなかったのは審査委員会の大陸関係者に妨害されたからだとの噂もあったらしい。そういうのも台湾社会の様相の一端と受け止めるしかない。 一方で日本では概ね好意的に扱われたらしく、当然ながら朝日新聞も協力している。個人的に不快だったのは、当初あからさまに先住民を侮蔑していながら、風向きが変わると簡単に転向する軽薄な記者が出ていたことで、こういう人格低劣な日本人を毎度見せなければ済まないのなら日台関係の映画などもう見なくていい気がした。多くの日本人の感覚では、無名の三民族混成チームが頑張っているというだけで応援せずにはいられない気になって当然であり、そういう一般民衆の姿も映像に出していたのは間違っていない。 なお台湾の大作映画は2時間に収めるつもりがないのが時々あるようだが、さすがに3時間は長いのではないか(それをいえば「セデック・バレ」は本来4時間超だったわけだが)。札幌の投手の後日談など必須だったのかという気はした。  その他の事項として、八田與一という日本人は野球に関係あるのか疑問に思ったが、それを含めてこの時代を表現すること自体が製作目的の一部だったのなら変ともいえない。「嘉南大圳」というものが、現地の人々の暮らしの向上に役立ったのであれば日本人としても喜ばしい。 また外国映画なのに台詞がほとんど日本語なのは顕著な特徴点である。正直聞きづらいところもあったが、しかし当時の日本語が、現代で事実上の世界言語になっている英語のように、三民族の意思疎通と相互理解の基盤だったことの表現ではあるかも知れない。 野球に関しては、王貞治氏が顧問について演者も経験者を揃えたとのことで、試合の時間も長いが苦にならず、また決勝戦でも惜しかったが悔いは残らない感じをうまく出していた。ここでの選手からは、その後に日台の野球界で活躍した人物が多く出たとのことで大したものである。 ほか個別の場面では、「アウト!」を言い合って大笑いしていたのと「髪型崩れる」というのは笑った。なかなか愛嬌のある連中だった。  [雑記] 映画自体と直接関係ないが調べたので書いておくと、映像に出ていた嘉義市街地のロータリーは日本統治時代の都市計画でできたものらしい。噴水がいつ作られたかはネット上で探せなかったが、地元出身の陳澄波という画家の「嘉義中央噴水池」(1933)という絵に描かれているので劇中年代にも存在したと想像される。 現在は、この映画に出た呉明捷投手の像が建てられていてストリートビューでも見られるが、噴水の方はしばらく止まっていたのが2021.7.27に再稼働したとのことで、その際に嘉義市長が、彼の決して諦めない精神が新型コロナウイルス感染症予防の精神にもつながる、と述べたとのことだった(「自由時報」の記事より)。だから何だということもないが地元ではそのように思われているらしい。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-10-23 08:58:23)
5.  怪怪怪怪物! 《ネタバレ》 
ホラー映画の枠組みのもとで過酷な人間関係を描くダークな青春映画ということらしい。 内容的には俗悪低劣で見るに堪えないが、これによって例えば“善人の生きづらさ”を表現する意図があるとすれば、基本的に人は善人たるべきことを前提としているのだろうから良心的とはいえる。それにしても残虐性や暴力性自体に価値を見出す観客向けの興行価値で売る思惑もあるだろうが、まあ商業映画としては仕方ない。  一応いろいろ考えさせられる映画だが、まず“この世には悪人とバカしかいない”という発言は、人間社会の本質を端的に表現した言葉のようではある。実際は悪人かつバカというのもいるだろうから単純な二分割ではないだろうし、また自分を悪人と思っていない悪人とか自分をバカと思っていないバカとかもいるだろうから簡単ではないが、まあこれはいわゆる良心と知性が両立できない社会だと言いたいわけか。 それより字幕を見た限り、この映画ではバカ=他人の話を簡単に信じる者、という意味づけをしていたらしく、つまり悪人/バカの対立は、騙す者/騙される者の関係に置き換えられそうである。そうすると日本でいわれる「騙すより騙される方がいい」という言葉などは、万人に向けてバカであれと呼びかけるようなものということになり、お人好しの日本人には手厳しい指摘かも知れない。当然ながら本来は「騙さない+騙されない」のがまともな大人のやることである。 あるいは単に騙されないというだけでなく、むやみに世間の風潮に乗せられるな、ということだとすれば、学校内でも古いムラ社会でも現代の情報社会でも言えることになる。現実問題としては①強い同調圧力を受ける場合と②周囲に遠慮して自ら合わせる場合(日本的か)と③何も考えずに調子に乗っている場合がありそうだが、この映画としては最終的に③あたりを意識していたものか。 若い世代に教訓を語る映画のようでもあるが、または一般向けとして、今後何かと生きづらくなっていきそうな世界への警鐘とも取れなくはない。しかしさんざん気分が荒れた状態で終わるのであまり真面目に受け取る気もしない。  余談として、必然性不明で日本関係のものが時々出ていたのは苛立たしい。苛立ちついでに皮肉を書くと、親日国といわれる台湾も簡単に信用するなということになりそうな映画だが、しかし日頃の行動を見ていれば信用できそうな程度も見えるとはいえる。ちなみに自分としてはパイナップルの販路拡大には協力した。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-04-24 11:29:21)
6.  花嵐の剣士~幕末を生きた女剣士・中澤琴~<TVM> 《ネタバレ》 
NHK・BSプレミアムで2017/1/14に放送したドラマである。現在はNHKオンデマンドで見られる。 主人公の中澤琴という人は幕末に剣士として活躍した実在の人物である。出身は上州(現在の群馬県沼田市)で、このドラマ製作の前年には地元で「お墓が建立されました」とのことである。剣も強いが長身で美形の“男装の麗人”的人物だったようで、ひところ言われた“歴女”好みのキャラクターということかも知れない。伝えられているとおり薩摩屋敷で踵を斬られる場面が入っており、また一生独身だったとされることの背景も何気に語られていたようだった。 この主人公が参加した「新徴組」というのは、京都の新撰組と並ぶ江戸の浪士組だというのは知っていたが、それをまともに取り上げたドラマは初めて見た気がする。鮮やかな紅色のかたばみ紋が見えたほか、「おまわりさん」の語源だったことにも触れられていた。  物語は、幕末に京都に集められた浪士組が後の新撰組と新徴組に分かれたところから始まる。主人公が兄とともに新徴組に加わり、江戸で活動してから戊辰戦争を経て上州へ帰郷するまでを扱っており、三田の薩摩屋敷への討ち入りが全体の山場になっている。なお開墾に従事する場面はない。 ドラマ的には、主人公が自分と剣とを切り離せない状態から、自分が何のために剣を生かすのかを悟る過程になっていたらしい。薩摩方が起こした騒乱で、庶民が泣かされるのを見かねて参戦したのは心正しい人物像の表現になっている。「剣は、いつかそれを捨て去る時のために使う」という台詞もあったが、少なくとも国内的にはそれが実現して終わったことになる。 なお浪士組を集めた清河八郎という人物のことは実はよく知らなかったが、「攘夷とは…暮らしだ…」という台詞からすると立派な人物だったらしい。攘夷というと過激なようでも、本意はそのように解されるということなら共感できる。その意図が兄を介して主人公に引き継がれたようで、それがまた上州に伝わる「法神流」にも通じるところがあったのかも知れない。  登場人物としては坂本龍馬なども顔が出ているが、沖田総司の兄に当たる人物も新徴組にいたとのことで重要人物の扱いになっている。主人公はきりっとして嫌味のないのが好印象で(少女時代から強そうだ)、「見とれてしまった」という台詞は意味不明だが少し笑わせた。ほかにも葭町の姐さんとか訳ありの女とか千葉道場の娘とか人物が多彩で楽しめる。終盤で出た甥の表情も面白かった。
[インターネット(邦画)] 6点(2020-12-26 15:29:55)
7.  ガーンジー島の読書会の秘密 《ネタバレ》 
イギリスに属するチャネル諸島のガーンジー島に関わる物語である。第二次大戦ではドイツ軍に占領されたとのことで、ノルマンディーのすぐ近くにも関わらず、連合軍が反攻に転じてからも占領されたままで大変な思いをしたらしい。 原作は読んでいないが映画で見る限り、島の読書会に関わることでなぜか住民が語りたがらない昔の事件があり、主人公がその真相を探っていくミステリー調の展開である。そこにラブストーリーが絡んで来て最後はちゃんとハッピーエンドになる。戦争関連の場面はあるがそれほど過激でもなく、安心して見られる穏やかな映画である。 ユーモラスなところもあり、序盤で出ていた前世と来世の話は、イギリス人もこういう発想をするわけかと笑った。また「あなたの心に住む人」というのも、登場人物の性格付けのためだろうが突拍子もない発言で失笑した。 ちなみにこの島は本来フランス語に近い言葉のはずで、そのことに触れた箇所が若干あったようだが(Bonne nuitに近い言葉)、この点について何らかの考え方なり立場なりがあったのかどうかはわからなかった。  物語の中心になるのは題名のとおり読書会だったらしい。一般論として、一人だけで孤立して考えるのでなく、多くの人々の考えを重ね合わせることで物事の本質が見えて来るということがあるはずで、それが文学なら読書会の場ということになるが、主人公が劇中でやっていたことを見れば、この物語自体が読書会のようなものだったとも取れる。 またラブストーリーに関しては、男連中の顔を見るだけでも結果が予想できる気はするわけだが、本当にその通りになってしまったのは出来すぎである。しかし島の読書会が作家の創造力の源泉になり、ここに住むこと自体が創作活動を支えることになったのならこの結末も正当化されなくはない。実際にフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーがこの島に15年間滞在したことがあるとのことで、それを背景にした物語だったようである。 ちなみに聖書が「愛の書」であるのに、「裁きと悪意」しか読み取らない者がいることを嘆く台詞があったが、これは聖書限定のことではない(映画も)だろうから自戒が必要である。逆にそういうのも自分の考えをまとめるためには反面教師的に役に立つといえなくもない。  登場人物はそれぞれ個性的で、自分としては編集者の男の立場も気になったが、そのほか酒を売っていた女の実像に意外性があって面白かった。一緒の布団で寝たところではもう主人公の親友になっていたようで、養豚業の男とその養女は別にして、主人公が島に住むのを最大級に歓迎したのがこの人物だったのではないか。主演女優はあまり好みの顔ではないが人物像としては悪くなかった。
[DVD(字幕)] 7点(2020-05-09 09:29:01)(良:1票)
8.  がっこうぐらし! 《ネタバレ》 
原作は読んでない。アニメも見ていない。 最近どうも女子高生ホラーのようなのが一番心安らぐ気がしていて、実はこの映画にも期待していたが、期待通りというか期待を若干上回った。監督の柴田一成という人物は、以前からしょうもないホラー映画のプロデューサーとか脚本とか監督をしていたので名前は見たことがあり、これまでも結構悪くないのはあったが、今回も結果的にいい方だった。 ちなみにこの映画に先立って、前日談の「がっこう×××~もうひとつのがっこうぐらし!~」(2019)がAmazonプライム・ビデオで公開されているが、個々の出演者(わりと豪華)を見たいのでない限り見る必要はない。また以前に放送されたAKB48メンバー主演のTVドラマ「セーラーゾンビ」(2014)と基本設定が似ているが、これの方が本家と思われる。そういうのを見たのも一応予習のようなものである。  内容としては、基本的に原作のおかげだろうが心に染みる青春物語の体裁が一応できている。怖さやグロさを売りにせず、登場人物のほのぼの感と極限状態との対比で切なさを出しており、最後はちゃんと泣かせる場面も用意されている。途中で気になった点としては、登場人物が部屋に入って話し始めた場面で、中にいたはずの人物をなかなか映さないので不安な気分にさせられるところがあったが、しかしその後は予想通りというか終盤で、幻影を見ていたのが一人だけではなかったことが明らかにされる場面があって、ここは少し感動的だった。 また映像面ではゾンビに火がついて燃えているのがそれらしく見えて、いちいち危ないスタントなどしなくていい時代になったのだという感慨があった。  出演者について、主要人物はみなアイドルだそうだが、演技の素人ながらいきなり映画に出てそれなりに役目を果たしていたようでお疲れ様でした。中で主人公役の阿部菜々実という人が、長身(168cm)ですらりとした体型なのは感心した。山形市出身だそうだが日本人も進化しているらしい。ほかは小柄な人が多いので、養護教諭役との間で少女と大人の対比を見せている。 おのののか嬢については最近いろいろ噂もあるようだが、この映画では優しいおねえさん役が非常に似合っていて好きだ。また特別出演で名前の出ている足立梨花さんはどこにいたのか気づかなかったが、本人によれば「タイトルの前に出てくるゾンビ」だそうで、改めて見れば確かにそうだが最初から意識していなければ気づかない。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2020-01-04 09:29:42)
9.  仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判 《ネタバレ》 
シーズン1(2016)、シーズン2(2017)に続く総まとめの劇場版で、それぞれの再編集版の劇場公開(2018/5/5、5/12)に続き5/19に公開されている。 今回は畜産計画なるものに関わるエピソードだが、最初に出た食料事情の説明が荒唐無稽な上に、そもそも食料としての優位性がどこにあるのかわからないので現実味は薄い。山中の養護施設のようなものも浮世離れしてスケールが小さいが、ダークファンタジーというか寓話的な物語とはいえる。無垢な少女の肢体を欲する好色ハゲオヤジというのも古色蒼然たる図式だった(芸能界では普通なのか)。  内容的にはこれまで同様激しいアクションで暴力沙汰が多く、こんなに血が出てよく生きているものだと思った。 一方で、以前からのトーキョーグール路線にはここで一定の結末をつけたように見える。人間を食わなくても生きられる、という点は非常に大事なことで、これで例えば現実世界のクマのようなものかと思えるようになった。赤の方はクマとみれば全部殺す執念の男だが、緑の方は人に害をなさない限り生かすべきという立場とすればわかりやすく、それで最後に赤が敗退したのは自然ともいえる。ただしいつ豹変して人を食うかわからないのでは、本来は人を食わないクマより危険だろうが、話が通じる点ではクマよりましであり、ここはクマとの決定的な違いである。 また、食う食われるの関係を善悪の話で終わらせなかったのもまともな態度である。結果としては気色悪いジジイが言っていたように、生態系が常に変化する中で、生きるために生きる生物が生き残る、という普通の見解で終わったようで、あとは人間の立場として人間が生き残れるよう、やるべきことはやらせてもらうということになる。ただ何をどうするにしても冷徹な判断だけでなく、気持ちとか思いとか心も重要だということを言っていたような気はした。 自分としては特に面白いシリーズではなかったが、あまり観客が関心を持たなそうな面でもいろいろ考えながら作っているようではあった。  ほかキャストとしては、武田玲奈さんが最後まで良心的な役柄で、優しいお姉さんの顔を見せていたのはよかったが、ただ劇中事情に即していえば、この人物はそのうち不良少年に食い殺されて終わりと思われる。また東亜優さんはクラゲでもなく慈母のような存在で、こんなところで膝枕もいいかも知れないとは思った。
[インターネット(邦画)] 5点(2019-12-27 23:25:48)
10.  仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム 《ネタバレ》 
仮面ライダーシリーズの劇場版である。当時放映中の「ウィザード」と前作「フォーゼ」のいわゆるクロスオーバーで、よく知らないが過去の仮面ライダーも何人か出ている(Wはわかった)。ほかにかなり大昔の東映特撮ヒーロー(+ヒロイン)も出しており、けっこう幅広い年齢層を視野に入れていたらしい。 中高年の立場としては、本編でもそうだったのだろうがアクション場面には感心させられる。アクション自体も派手だが見せ方の巧みさで退屈させないところがあり、映像技術とあわせて初期のシリーズとは段違いの印象がある。やはり人類は着実に進歩していると思わなければならない。 またクライマックスで、人間など滅んだ方がいいという悪魔の発言を、フォーゼが「俺はそういうつまんねえこと言うやつが大っ嫌いなんだよ」と一言で切り捨てたところは痛快で感動的だった。悪魔でない人間であっても、周囲の世界を貶めて自分だけには価値があると思いたがる連中にその言葉をぶつけてやってもらいたい。とぼけたところのあるウィザードも嫌いでないが、フォーゼも本物のいい奴でかなり好きなキャラクターだと思った。 以下に個別事項を列記。  ○仮面ライダーフォーゼ 高校生のままではなく5年後(2017)の姿で、主人公と元部員がそれぞれの道で活躍している近未来設定である。清水富美加(当時)・真野恵里菜の両人がそれぞれカワイイ子アピールをして、そのほかにトップモデル役の人もいたりして豪華な登場人物である。 今回は足立梨花さんが現役の部員役で快活な女子高生をやっている。また悪役で出た山谷花純さんは後の「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(2015~16)のモモニンジャーの人で、登場人物としては可愛いのに色仕掛けでオヤジを無力化させたりして末恐ろしいと思っていたら、ちゃんと戦う場面もあって格好よかった。  ○仮面ライダーウィザード 放映当時(2012)そのままの人物構成と思われる。凛子ちゃん(演・高山侑子)という人は強くてかわいい女性刑事で好きだ。またコヨミ(演・奥仲麻琴)という人は小柄で可愛らしいが、他人を心配したり自分が危なくなったりするだけで本来何の役目なのか不明だった。ここは本編を見ないとわからない。  ○イナズマン(1973-74) フォーゼ編に出る。当時真面目に見ていなかったので懐かしくはない。この映画では変身すると妙に筋肉質で競技用パンツのような恥ずかしい格好だったが、人の姿(演・須賀健太)に戻るとパンツもなくなって全裸だったようで、それを見た足立梨花さんの反応が脱力ギャグになっている。  ○アクマイザー3(1975-76) 全編を通じた悪役で最後の強敵。当時はほとんど見ていなかったが存在は知っている。この映画では「3」がなく単に「アクマイザー」と言っており、本物の悪役なのでファンだった人々は残念かも知れない。口を開けた「ザイダベック」という乗り物は最後に出る。  ○美少女仮面ポワトリン(1990) ウィザード編に出る。放映当時見ているはずもないが文献的に知っている。本来どういうキャラクターなのかわかっていないが、とりあえずこの映画では入来茉里さんがかわいい。演者はかつて新体操をしていたとのことで、アクション場面では本人が優雅な姿を見せているが、変に開脚が多い割に敵に物理的打撃を与えているようでもない。また可憐な女性と思わせておいて、実はその正体は…というオチがあんまりだと思わせる。  以上、変に長くなってしまったが、とにかく超豪華大作かつ個人的には見どころの多い劇場版だった。これは正直好きだ。
[DVD(邦画)] 7点(2019-08-31 08:57:40)
11.  カランコエの花 《ネタバレ》 
大した動機もなく見たが結果的に心が痛い話だった。エンドロールからのラストに背景事情が集約されている。 男連中はバカなので無視することにして、女子の方も今どきの女子高生なので(昔も同じ?)ちょっとしたことで仲間を排斥して迫害し始めるということを平気でやるのではないかと思っていたらそうでもなく、主人公を含めて基本的には心優しい人々だったらしい。みんな善意の人なのに(バカ男は除く)何でこういうことになってしまうのかという思いだったが、この物語に即して考えれば、例えば誰かを好きになって相手に告げたら、相手は何とも思っていなかったので気まずくなってしまった、というようなことが性別に関わりなく普通に起こる状態が理想ということかも知れない。  基本的には養護教諭が元凶だったと思うしかないわけだが、そもそも月曜日に何であんなことを言ったのかという点は不明瞭だった。金曜日の段階でそういう雰囲気は全くなく、当面は引き続き話を聞いてやればよかったはずだが、例えば初めてLGBTに関わる相談を受けて一人で盛り上がってしまって土日の間に少し仕込み(7.6%という数字など)をして、別に期待されてもいなかった研究発表をしてしまったと思えばいいか。 自分として気になったのは、相談者に対し養護教諭が一方的にLGBTという枠をはめて追い込んでしまった面はなかったのかということである。正しい見解かどうかわからないが個人的には、あくまで人は一人ひとりであるから、予断なく個別の人間の状況を捉えて対応するのが、この場の養護教諭に求められる態度ではなかったかと思った。 ちなみに以前「スクールガール・コンプレックス~放送部篇~」(2013))という映画を見たことがあるが、女子高ならガールズラブ的に軽めに扱われるものが、共学だとLGBT(のL)ということになるのかと思ったりもした。  ほか映画の作り方として、役割だけ決めて役者の考えで演じる「エチュード」の方式を取り入れていたらしく、登場人物の発言やふるまいに自然な感じが出ている(広瀬すず関連は笑った)。主演女優は目玉が特徴的なようで、少し前に見た「罪の余白」(2015)でも端役ながら目玉は目立っていた気がする(最近は知らない)。また特に、お菓子づくりの好きな小牧桜(演・有佐)という女子の最後の表情が切なく見えて心に残った。
[インターネット(邦画)] 7点(2019-07-13 10:55:43)
12.  かしこい狗は、吠えずに笑う 《ネタバレ》 
別にほのぼの青春ストーリーを期待していたわけでもないが、自分としても基本は娯楽志向なので、こういう延々とストレスを溜め込んでいく映画は正直嫌いだ。最初からチワワ女子が胡散臭く見えて、こんな嘘っぽい友情物語をどこまで続けるのかと嫌気がさして来たところでさらに胸糞悪い展開になっていくのではたまらない。 またラストに違和感を残す作りだったので、もう一度どういう話だったのかを真面目に考えてみる必要があるかと思っていたところが誤ってネット上でいろいろ種明かしのようなものを見てしまい、それでもう考える気がなくなった。自分としては意外な仕掛けがあったというだけで褒める気にはならないので(ミステリーなら別だろうが)何か普通に人の心を打つものがあってもらいたかったが、そういうことは特に意図していなかった(期待されてもいなかった)らしい。 ほかに何かよかったところを書きたいが見つからない。申し訳ないが自分にとってはハズレの映画だった。  なお好意的でない映画で細かいところに突っ込むのも馬鹿らしいが、映画の撮影地が主に埼玉県の東武東上線沿線と思われるのに対し、映像には監督の出身地である愛媛県をイメージさせるものが出ており、序盤の踏切の場面で「和食処 伊予っ子」(実在)の看板が見えたほか、庭にミカンの木のある家が普通にあったりもする。また劇中の「石神市」が現実の東松山市に相当するらしいのも愛媛県松山市にかけたと思われる。 ほか「東温女子高校」の「東温」は伊予国温泉郡の東部を意味する地名だが、これは監督の出身地である東温市そのものであり、女子高ではないが県立東温高等学校というのも実在する。一方でチワワ女子が進学するつもりだった「東高」というのが県立松山東高等学校のことだとすれば、旧制中学由来の県下随一の進学校ということになる(「坊っちゃん」「がんばっていきまっしょい」の学校、監督の出身校)。カワイイだけでなく成績も優秀で将来有望だったはずが、もと親友のせいで道を外れてしまった状況だったと取れるが、そういう読みも全体を理解する上で役に立つわけではないらしい。
[DVD(邦画)] 3点(2019-07-13 10:55:40)
13.  カミングアウト 《ネタバレ》 
“LGBT”のうちのGayの青年が周囲の人々にカミングアウトしようとする話で、特に過激に思われる場面もなく穏やかな雰囲気で推移する。見たところ一般向け啓発ビデオのような印象があり、宣伝文では「きっと、あなたの価値観変わります」と書いているが、見ても特に変わった気がしないのは5年も前の映画だからかも知れない。 映画の作りとしてはどうも素人っぽいというか手際が悪く見えるところがあり、特に大学のサークルの場面は間が悪いようで笑える台詞も笑えなくなっているが、これはキャストというよりスタッフの問題ではないかという気がする。後半になるとそれほど違和感もなく、夜の静かな場面での虫の声などは効果的に思った。  物語としては、まず前半で主人公が人間関係に悩みながら覚悟を固めていき、後半でごく近しい人々に対し順次カミングアウトを敢行することになる。なおいわゆるアウティングに関する問題は捨象されているらしい。 相手の反応のうち、特に母親の嘆き(孫の関係)は単に無知とか偏見では済まされないことなので心が痛むものがあるが、これは他の劇中人物が言っていたように「人生にはままならないことがある」と思え、ということか。どうしようもないのはお互い様だということもあり、またLGBTだけが原因になるわけではないということもある。 今回は親しい人間に限定して実行していたわけだが、主人公としては今後も対象を拡大していくつもりだったらしい。一体どこまでやらなければならないのかと部外者としては正直思うが、ここはこの映画の持つ啓発ビデオの役割を主人公に負わせていたということか。社会の受容度が高くなれば当事者があえてハードルを越えようとすること自体が不要になるのは間違いない。 ちなみに親友に対しては告白が2段階になっており、2つ目はあえて言わなくてもと思わなくはなかったが、この映画として淡い恋物語の結末が必要だったということかも知れない。  なお監督・脚本は犬童一利という人物だが、著名な犬童一心監督との関係はわからない(年齢は約26歳差)。知っている役者はあまり出ていないが、高山侑子という人が主人公の後輩で普通に可愛い女子大生をやっている。ほか「協賛」としてNPO法人の名前と「Alfa Romeo」「TENGA」という企業名が出ていたが、後の2つは実際にLGBTに関わる社会活動をしている会社のようで、劇中でもそれぞれの製品を見せていた。
[インターネット(邦画)] 5点(2019-06-07 19:56:18)
14.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
大評判なのは知っていたがやっと見られた。 大変いい映画だとは思うが、申し訳ないが最初のワンカット部分は正直見るのが苦痛だった。初めからこういうクオリティで撮っているという設定でもあり、不自然な箇所については後で説明もあるわけだが、これを延々と見せられている間に体調のせいもあってか頭が痛くなってきた。 後半をあわせて見ればよくできたお話で、最後はみんな笑顔で和む映画になっている。真相を明らかにした中で個人的に面白かったのは監督の台詞にアドリブが入っていたというところだった。最終的に一番いい役は監督の娘だったようで、ちゃんと両親のいい所だか悪い所だかを受け継いだ人物になっている。 前半で忍耐を強いられたせいで絶賛というわけにもいかないが、それなりの点数にしておかなければと思わせる映画ではあった。
[映画館(邦画)] 7点(2018-09-15 08:56:06)
15.  かぐや姫の物語 《ネタバレ》 
一般論としては“生きるために生まれてきた”というのが重要なように見える。映画を見ていると、なんで登場人物がそんな大事なことを都合よく忘れるのか?と思うわけだが、しかしそれを忘れて生まれるのは姫だけでなく人間全部が同じと思えば、少なくとも若年者に対しては劇中世界を超えた普遍的なメッセージになっている。 姫の犯した罪と罰というのは意味がわからなかったが、生きる苦痛から逃れようとしてこの世を去らねばならなくなり、親を泣かせた上に自分がしたいこと、すべきこともできなくなったのが罰なのだろうとは思う。それにしても逃げに走ったのが一瞬だけだったのに、いきなり召還というのは酷な気もしたが、それは罰というより父親が早く実家に呼び戻そうと待ち構えていた感じだったのではと思ったりする。  ところで最後の迎えが阿弥陀来迎図なら、西方極楽浄土(いわゆる極楽)が月にあるような設定ということになる。現代では天国とか極楽とかいったものがディストピア風に扱われることが多い気がするが、しかし昔は生きること自体が本当に過酷だったからこそ、輪廻を離れて永遠の安穏が保証された世界を願ったという面もあったのではないか。それを安易な逃げとして簡単に否定してしまう今の日本はよほど恵まれた時代なのかも知れない。また歴史的に見れば、実際に平安末期から大流行した浄土信仰を否定して終わったようなのが時代に逆行した感じで変な気もする。 自分としては残念ながらあまり心に染みるものはなかったが、しかしここのレビューを見ていると結構さまざまな見解があってなるほどと思わされる。そのように見た人それぞれの反応を引き出せる深みを持っているのは、この映画が優れた創作物であることの一つの証明かも知れない。  ほか余談としては姫の屋敷がそれらしい感じの寝殿造りで、東に中門があって西に釣殿があり、実在した「東三条殿」を模したような構造だったのが興味深い。こういう建物が出て来るからには劇中年代は平安時代ということになる。また富士山から煙が上がっていたのは芸が細かい。 登場人物では「車持皇子」の一人芝居に笑った(これはやりすぎだ)。「御門」の顎はハプスブルク家の真似ではないか。また、ひときわ雑な顔をしている「女童」は、最初は不気味に思ったが、結構愛嬌があって可笑しいキャラクターなので和んだ。これはこれで有能な人物なのだろうが何歳の想定なのか。なんで田畑智子さんがこんな役をやっているのかもわからない。
[DVD(邦画)] 7点(2018-05-19 00:00:09)(良:1票)
16.  学校の怪談 呪いの言霊 《ネタバレ》 
以前の「学校の怪談」シリーズというのを知らないので比較できないが、これ単独で見る限り、安手のアイドルホラーと割り切って見れば悪くない。撮影は全て天気のいい昼間だったようだが、それでけっこう背筋の寒い映画ができている。 ストーリーは込み入っていて理解不能だが、要は計5人が同じ日に廃校へ侵入したところ、男3人が校内の閉鎖空間に取り込まれ、以前からいた高校生と合流したということらしい。また校内で人々の発言に聞き耳を立てていたのが「あ」「く」「ま」であって、これが閉鎖空間を支配していたが、普通とは違う専用の降霊術でコンタクト可能だったようである。校舎が解体されてからも、この閉鎖空間だけはいつまでも現地に残るのだろうという気がした。  また「言霊」という言葉の解釈に関しては、暑いと言われると本当に暑くなる、というのはいい例だが、しかしガス事故を語ればガス事故が起きるというのも短絡的過ぎるので、簡単に言ってしまえば「怪を語れば怪至る」ということだと思われる。また場所の問題ということもあるわけで、まさにその現場でそんなことを言うな、と思う場面は現実世界でもなくはない。 自分が思い出したのはむかし読んだ本(※)の中で、航海中に海上で怪異を見た人物が、船長に「何か見ましたか」と聞かれて「いいえ」と答えたことに関し、「船中にては左様のことは申さぬもの、という伝統的なたしなみを持っていられたのであろう」と評した話があったことである。“たしなみ”といえば場所の問題だけでなく、そもそも死者なり鬼神なりに対して敬意を払っておく(のが無難)というのもその一つと思われる。 何かと強がって見せたい年頃の連中にそんなことを求めても無駄だろうが、それでも一応、例えば心霊スポットに突撃して現場を荒らす無鉄砲な連中を戒める教訓的な映画と取れなくはない。 ※今野圓輔「日本怪談集 幽霊篇」(1969年)(現代教養文庫666)「海坊主のあくび」  なお主演のグループは知らない人々なので何ともいえないが、気が動転して何も考えられなくなった顔がけっこう真に迫っていると思う演者はいた(これが彩乃という人?)。侵入した女子の「バッカみたい」というのも非常にいい。石橋杏奈さんは心のピュアな清楚系の役で大変結構でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-12-06 19:27:49)
17.  陽炎の辻 完結編 ~居眠り磐音 江戸双紙~ <TVM> 《ネタバレ》 
時代小説シリーズ「居眠り磐音 江戸双紙」を原作として、2007~2009年にNHKが放送した連続TVドラマの特別編である。前回の特別編はTVシリーズの締めくくりとして放送されたものだったが、原作小説はその後も2016年まで続いて完結したことから、その最終状態を反映した「完結編」をTVでも製作したという形らしい。なお自分としては原作・TVとも未見である。 前回の特別編から7年になるがシリーズ開始からだと10年になり、その間に役者もみな10歳年を取ったことになる。劇中人物としても落ち着きが増しているように見えたが、特に前回は新婚半年だった主人公に子ができたことで、この主人公とその他の登場人物を含めた親子の情愛が大きく扱われ、これが今回のテーマにつながっていたようである。今回初出のキャストとしてはその息子が存在感を見せているほか、レギュラーの娘役で優希美青さんという人が出ており、ルーズな父親に厳しいしっかり者を演じていた。  今回は完結編とのことで、これまで因縁のあった田沼意次のほか、松平定信が顔出しで登場するため話のスケールが大きくなっている。大まかにいえば田沼が悪玉、定信が善玉だが、両者それぞれに善悪もあり理想もあり、欠けた部分や未熟な部分もあって単純な勧善懲悪にはなっていない。 田沼と主人公が対面する場面は2回あったがいずれも結構な緊張感があり、特に田沼の心情が顔に出るのが見どころである。主人公は前にも増して抑制の効いた人物に見えたが、定信の側近を𠮟りつけた場面だけはどうやらボロが出たということらしい。この場面で主人公の真意をどこまで勘繰ればいいのかよくわからなかったが、ここだけ言葉が乱暴なのは内心の弱みを突かれた形だったからかも知れない。 ちなみに個人的感覚としては、刃傷沙汰の張本人が事後にニヤリと笑ったのは痛快だった。その後の庶民の無責任な噂話も可笑しい。  そのほか見せ場としての剣劇も当然あるが、それより人の心をじっくり見せようとするドラマになっており、特に今回はいわば“青年期の終わり”を感じさせるものだったように思われる。本編ファンがどう思うかはわからないが、個人的には「完結編」にふさわしい内容になっていた気がした。
[DVD(邦画)] 7点(2017-07-18 19:50:39)
18.  陽炎の辻 ~居眠り磐音 江戸双紙~スペシャル 海の母 <TVM> 《ネタバレ》 
時代小説シリーズ「居眠り磐音 江戸双紙」を原作として、2007~2009年にNHKが放送した連続TVドラマの特別編である。それまで3年3期にわたったTVシリーズの最後をこの特別編で締めくくるということだったらしく、原作小説はこの後もまだ続いていたが、TVの方は主人公が所帯を持って地位も安定したように見えたところで一旦終了にしたようである。 自分としては原作・TVとも未見だが、今回見ると主人公はなかなかの好人物で、少々ご立派すぎるのがかえってマイナスかという感じである。長屋の衆など番組レギュラーの近況を一応紹介する場面もあったが、ちなみに本編ではもう少し存在感のある人物だったはずのお有(演・海老瀬はな)という人が、この特別編では顔出しだけで終わっていたのは個人的に残念だった。  今回のメインになるのは13歳の少年が御家存続のために仇討ちをするエピソードである。真の悪人はいないにもかかわらず結果的に人は死ぬという展開だが、武家の論理を理不尽なものとして否定するということでもなく、この時代なりの社会の厳しさに年若い少年を直面させて成長を促す話だったように取れる。登場人物の思いの絡み方が結構複雑なのは原作由来だろうが、母とか祖父とか幼馴染とかの様々な心情を見せることで視聴者が共感できるポイントを各種用意していたように見える。 なお今回は話のかなりの部分が江戸を離れて房総半島で展開しており、上総上湯江(千葉県君津市上湯江)、安房北条(千葉県館山市北条)といった実在の地名が出る。ただし北条湊の場面は岩手県大船渡市で撮影したとのことで、リアス式海岸のため房総半島にしては風景が狭苦しかったりする。港湾施設で突然仇討ちが始まったのは周囲の迷惑だろうが、野次馬で見ていた町民は本気の真剣勝負を間近に見て度肝を抜かれたのではと思ったりした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-07-18 19:50:36)
19.  ガガーリン 世界を変えた108分 《ネタバレ》 
ガガーリンの有人宇宙飛行が成功した4月12日は、ロシアでは「宇宙飛行士の日」になっているそうで、本日は56周年に当たる。 その時の飛行時間が108分、この映画は113分でほぼ同じになっているが、映画全部をリアルタイムの宇宙飛行にするわけもなく、主人公の回想とか家族のエピソードを挟む形で構成されている。しかし、そのために肝心の宇宙飛行がブツ切れになり、また意味不明瞭なエピソードもあったりして散漫な印象になっている。堅実なようでもあるが浅い感じで、映画としての面白味も不足しているというのが正直な感想である。 ただ個別の場面としては、主人公の父親が皆に褒められて照れていた?顔などは悪くない。また着地後のカプセルの周囲に立入禁止区域が設定されているのに、子どもらが駆け込んで走り回っても誰も止めなかったのは、当時もある程度の緩さがあったことの表現になっている。フルシチョフも時々出るが茶化され気味のようだった。 また、いつも悪者にされるばかりでいいところがない現在のロシア連邦の人々にとっては、かつてソビエト連邦が人類史を背負っていた時代があったことを思い出して元気づけられる映画かも知れない。自分としても“ソビエト連邦は偉大だった”とか言ってノスタルジーに浸りたくなるが(今はないから言えることだが)、ただしエンディングの写真で主人公が日本を訪問した際に、「平和の使者ガガーリン」と書いた横断幕を掲げていたお調子者の人々には全く同調できない。このとき使われたヴォストークロケットは、核兵器を搭載する大陸間弾道ミサイルをもとにして開発されたことを忘れてはならない。  ほか余談的に書いておくと、候補として選抜された20人の名前をアルファベット順に読み上げる場面で、「コモロフ」と字幕に出ていたのは「コマロフ Комаров」が正しいのではと思うが、この人物は後のソユーズ1号の事故で死亡し、その事件がKomarov’s Fallというオーケストラ曲で描写されている。その次に呼ばれた「レオーノフ」は、アーサー・C・クラークの「2010年宇宙の旅」(映画「2010年」)に出ていた宇宙船の名前に採用されており、どちらもその場面では顔が出なかったが有名人である。 また花屋の前で揉め事を起こした「グリーシャ」(グリゴリ・ネリューボフ)は、結局は飛行士に選ばれず、失意のうちに5年後に不本意な死を遂げたようで、そこまでわかって見ていれば選抜の厳しさも知られるというものである。
[DVD(字幕)] 5点(2017-04-12 19:30:15)(良:1票)
20.  カラスの親指 《ネタバレ》 
原作は読んでいない。この映画は残念ながら好きになれなかった。 まず主要人物のうち「テツ」は声質が耳障りで序盤の馴れ馴れしさが気色悪く、「やひろ」「貫太郎」は存在自体が苛立たしい。そういう印象のまま全体の半分程度まで使って疑似家族形成の部分が続くため、自分としては見るのにかなりの忍耐を要する。これで映画全体への好意が失われてしまい、その後の非常に都合のいい展開や、終盤の説明調の付け足し部分も素直に受け取れなくなった。 ちなみにDVDで見ていると、ハッピーエンド風になった時点でまだ20分以上残っていることがわかるので、これからまだ意外な展開があるわけかと思ってしまって新鮮な驚きがない。160分という時間も長かった。  なお村上ショージという人物は、顔を見ていると味があるともいえるが、ラストの種明かしを長々と台詞で語らせるのはさすがに少しきつい感じだった。西日本アクセントであるのに仙台出身というのも変だ。また「シン・ゴジラ」(2016)に続いて(というか時間を遡って)、石原さとみという女優の印象がさらに悪化した(本人のせいではないが)。
[DVD(邦画)] 4点(2016-12-30 16:38:28)
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