21. キリクと魔女
《ネタバレ》 この作品の監督はフランス人だけど、少年時代にアフリカで暮らしていた事があり、作品自体もアフリカの民話・伝承から着想を得ているんだそうな。だからアフリカの描き方がとても自然(とはいえ行った事ないからわからないけど、ホントのところ)で、映像も美しいし、民話的・寓話的な、ある種突飛な話の展開にも違和感を感じることなく入り込めた。大人たちが忘れてしまった「なぜ?どうして?」という問いかけを抱き続けること、そして勇気を持って行動することで村人たちを、そして魔女をも救済したキリクは、我々観る者にも「なぜ?どうして?」と問い掛けているように思える・・・・・・のだけれど、単純に裸でお尻をぷりっぷりさせながら猛ダッシュしちゃうキリクは、理屈抜きで可愛いやね(笑)。それにしても、こういう作品を観ると、アニメってまだまだ色んな可能性があるんだなーと思わせられる。日本のアニメって、一部の個性的な名匠の作品を除くと同じようなのばっかりになってきてるから、こういう作品に刺激を受けて欲しいよなあ。 8点(2004-07-27 16:21:47)(良:1票) |
22. 侠骨一代
高倉健主演の仁侠映画は何本か観ていて(もちろん一杯ある中の数本なので、あんましエラそうな事は言えないのですが)、その中の健さんは、確かにカッコ良い。カッコ良いのだけれど、あまりにカッコ良過ぎて、というかいかにも「高倉健」のイメージ通りだったりしたのでイマイチ感情移入し切れんかったのです。しかし、この作品の健さん、軍隊で上官の横暴に怒って暴れ出すかと思ったらお母さんの事思い出してメソメソ泣いてるし、自殺しようと川に飛び込んだら膝までしかないし、亡き母そっくりの芸者に一目惚れしたもののなぁーんも出来ないし、昔お世話になった乞食のおじさん達と再会したら嬉しくなっちゃってうひゃうひゃしちゃうし・・・という風に、愚直でちょっと情けない所もあるんだけれど、かえって親しみが持てます。話の筋は、割と典型的な任侠モノではあるのだけれど、そういう健さんの新鮮な魅力で飽きずに観る事が出来ました。あと、ラストの殺陣も、やっぱどっか違う。今まで観た任侠モノ、或いは時代劇の殺陣って、どこか「記号的」というか「お約束」というか、「確かにこの中でやってるのは人を斬る“ふり”で、刀が当たってても切れてないけど、でもこれは“斬った”って事になってるからそう思ってね」ってな感じがしたのだけれど、この作品の殺陣はあんましそういう感じはしなかったんですよね、何でか知らんけど。途中から大工道具や角材を持った仲間たちが乱闘に加わるとことか、ちょっと良かった。それと・・・おっと忘れるトコだった、主人公の母とヒロイン二役を演じる藤純子の魅力が凄い。こんなお母さんだったら、そりゃマザコンになってもしょうがないよなあって感じ。さすが「ゲロッパ!」にも出てた寺島しのぶのお母さん、とヘンな納得の仕方をしてしまったのだった。 8点(2004-07-05 22:06:01) |
23. キング・オブ・コメディ(1982)
これは怖い。特に前半が怖い。デ・ニーロが快活に笑えば笑うほど、怖い。民主主義幻想と歪んだアメリカンドリームで肥大するエゴ。「ありたい自分」と「今ある自分」のギャップを、自分に対する嘘・妄想で埋める、主人公。・・・っと、あまり怖すぎて、いつもと文体が変わってしまった。んと、誘拐するまでの前半は、そんな訳でホラー顔負けの緊張感なのだけど、後半ちょっとだれたような気がするなあ。っていうか、オチはきっとTVのステージにあがったものの、主人公は緊張のあまり何も出来ませんでしたってな感じなんだろうなーと勝手に予想していたので、少し拍子抜け。んでもあれはあれで、すごーく皮肉の効いたオチなのかも。蛇足ですが、デ・ニーロが公衆電話を独り占めしてるときに絡んでくるチンピラって、ジョー・ストラマー? 8点(2004-05-06 16:19:26) |
24. Q&A
個人的には「セルピコ」より好きです。人種的緊張もはらませながら、ジワリジワリと事件の核心に迫る過程が実にスリリング。欲を言えば、ラストがちょっとロマンチック過ぎたかな? 8点(2004-04-30 19:06:45) |
25. 木更津キャッツアイ 日本シリーズ
実は【やましんの巻】さんのレビュー(及び点数)を拝見して観に行く気になりました。僕もTVはほとんど未見なのですが、「普通」を全力投球で生きる、というメッセージにはやはり心打たれるものがありました。しかし後半、「謎の島」に漂着するあたりからどうもついて行けなくなってきて・・・。この作品は「映画」というより、「映画の形を借りたイベント」の要素が大きいと思います。それはそれで構わないとは思うのですが、やはりTV版未見の人間に対しても、もうちょっと間口を広げてほしかったなーと思います・・・・・・とはいえ、作中で繰り出されるギャグに対して場内で一番デカい笑い声を立てていたのは、実は僕でした(笑)。いわゆる八十年代ネタが多かったと思うのですが、特に「木更津キャッツアイ」のオリジナルソングを聴いて「これ、ブルーハーツの『人にやさしく』にそっくりだぞ」と思った直後に「これはブルーハーツのパクリだ」と言う台詞が飛び出してきたのはかなりツボにはまってしまいました。よし、じゃあTV版も観てみーよお、と思いビデオ屋に行ったら全てレンタル中。えーん。 6点(2004-02-07 19:28:49) |
26. ギブリーズ episode 2
微妙にヒネクレ者のワタクシは、「猫の恩返し」より、こっちのほうが好きだったりします。客をナメてる感じが、かえって痛快。カレーの話と初恋のエピソードが印象的でした。 7点(2003-12-17 21:18:32) |
27. 魚影の群れ
いやマジで凄いって!何がってアータ、あのマグロの一本釣りのシーン!だって緒方拳、ホントにマグロ釣ってるよ?人間よりもデカいのよ、マグロ!それが海中でユラ~リとしてる所の迫力といったら・・・。それを、相米監督お得意の長回しでジワーっと撮ってるんだから、もぉ・・・さすがに「血が沸騰する」って言ったらJAROに怒られちゃうけど、体感温度は2,3度上がった、マジで。あれ、どうやって撮ったんだろ?多分途中までは本物の漁師さんがやってたんだろうけど・・・。勿論それだけでなく、ドラマ自体も見応えがありました。いまさらだけど、緒方拳って味のある役者だなー。夏目雅子も凄く可愛らしいのにちゃんと演技できてるし。ホント、見た目だけで演技力ゼロの女優に彼女のDNAを注入したい。 8点(2003-12-06 15:14:46)(良:2票) |
28. 季節の中で
確か監督は2歳のときにベトナムからアメリカに移住した人だそうです。きっとこの作品は監督の「ルーツ探し」的作品なのでしょう。それぞれの登場人物の背景にある物語はどれもなかなか面白いのですが、微妙に食い足りない感じが残りました。娼婦に恋する人力車の運転手の話とか、ちょっと凡庸な感じがしたし、意地悪な言い方しちゃうとベトナムの風景のエキゾチックさに依存しすぎているような気がしないでもないんですよね。あ、でも映画に出てきたバーの名前がApocalypse Now(『地獄の黙示録』の原題)だったのはちょっと面白かった。あのバーは実在してるんでしょうか? 6点(2003-11-27 19:34:07) |
29. 戯夢人生
初めて観るホウ・シャオシェンの作品がこれっていうのと、風呂上がりで集中力を著しく欠いた状態で鑑賞したのが失敗でした・・・以前「フンクイの少年」を知人に薦められてはいたのですが・・・。あんまり説明が親切な映画じゃないのでちょっと入り込めませんでした。とはいえかつての台湾における日本による支配の様子が窺えたのは良かったです(少なくとも欧米の映画みたいなへんてこな日本人じゃなかったし)。ただ、絵の撮り方とか、結構面白かったので、彼の他の作品も観てみたくなりました。 5点(2003-11-19 18:30:53) |
30. キートンの探偵学入門
CGもない時代にどーやって撮ったんだ!と驚嘆させられるシーンの連発。すごいなー、キートン。伊達にちびまるこちゃんのナレーターやったり遺跡の発掘しながら事件解決したりしてないな(キートン違いだっつーの)。 7点(2003-11-14 19:23:48) |
31. ギャルソン!
イブ・モンタン演じる主人公は確かにいかしてるし、かっこいいんですけど、若い恋人に振られても「フッ・・・」てな感じで微笑んでるのが何かちょっとイヤミっぽい感じがしてしまいました。んー、もうちっと年取ったらこの良さがわかるのかな? 6点(2003-10-30 17:02:37) |
32. ギャラクシー・クエスト
これって「サボテンブラザーズ」のアイデアの盗用なんじゃないの?と観る前は思ったんですか、なかなか面白かったですね。特にアラン・リックマン(確か舞台出身で、「リチャード三世」はどうか知らないけど、「ハムレット」とかに出てる)の役は現実のアラン・リックマンのパロディみたいで笑えます。後半、嫌っていた自分のセリフを敢えて口にするところとか、ちょっとウルッと来てしまいました。でも全体的に観ると後半はちょっと尻つぼみな感じでしたね。 7点(2003-10-29 22:05:31) |
33. 岸和田少年愚連隊
うむむ・・・どーもこういう「ケンカに明け暮れる青春」系(などと安易にカテゴライズしてしまうのは良くないのは分かっているのですが)映画って今ひとつ感情移入できないんです。だもんでナイナイや他の少年たち(?)より、秋野揚子演じるお母さんの姿が印象に残りました。うー、今んとこ「ゲロッパ!」に唯一10点つけてる身としては、この映画の良さも分かりたいとこなんですが・・・。(6点)<2005.5.18追記>最近観直しました。やっぱ「パッチギ!」を経ているからか、前に観た時よりも感情移入して観る事ができました。ところでずっと「何で“チュンバ”?」と思っていたのですが、「中場」→「チュン(麻雀をしてる人は知ってますよね、中国読みです)場」→「チュンバ」だったんですねー・・・って気づいてなかったのは俺だけか?<2006.11.1追記>思う所あって点数を7点→8点に変更。 [映画館(字幕)] 8点(2003-10-25 20:08:40) |
34. 金環蝕(1975)
確かこれって実話を元にした石川達三の小説が原作なんですよね?んー、意義のある作品なんでしょうけど、人間関係が複雑すぎて、途中で「これなら原作読んだほうが早いんじゃないの?」と思っちゃったんですよ(本だったら分からなくなっても前のページを見れば済むし)。おまけに実在のモデルがいる(はず)の登場人物は全員名前が違うし。きっと元ネタの事件のことをよく知っていれば違ったと思うんですけどね。あと、映画全体の雰囲気があまりに泥臭い感じで、しかもあの金貸しの爺さんもアクが強すぎて、映画として楽しむにはもひとつでした。でも、後半の三國連太郎の演説シーンはちょっと良かったかな。 5点(2003-10-15 17:23:18) |
35. 客途秋恨
戦後の混乱期、中国人と結婚した日本人女性とその娘の物語、ということで、それなりに意義のある作品だとは思うのですが・・・。数十年ぶりに日本に帰国したお母さんの日本語が中国語の声とあまりに違いすぎてて(たぶん吹き替え)、しかもあまりにおどろおどろしい演技なもんだからちょっと引いてしまって・・・。日本語がわからなければちゃんと鑑賞できたと思うんですけどね。ちなみに70年代が舞台なのに日本の電車に「JR」の文字があるのはご愛嬌。 4点(2003-10-13 15:59:40) |
36. きれいなおかあさん
「山の郵便配達」で中国映画に関心を持った頃に観たんですが、お母さん(「きれいな」・・・うーん、ノーコメント!)が厳しすぎるんで、観ながらちょっと引いちゃったんですよね。でも【交野の少将】さんの仰るとおり、あれは社会の反映なのかな。 5点(2003-10-07 15:04:36) |
37. キャッツ&ドッグス
灰谷健次郎のいう「子供みくびり」の典型ですね。もしくは「ウチら、CGとアニマトリクスでここまで出来るんでっせー」というプレゼン映画?基本的にスーザン・サランドンが声優をやっているからっていう理由で観ただけで、内容に関しては全く期待してなかったので、ま、こんなもんです。 5点(2003-09-02 16:44:35) |
38. 奇人たちの晩餐会
これはフランス版「ヨタロー話」かな?観てて、「イワンのばか」を思い出しました。あと「バカって言った方がバカなんだぞー」っていう懐かしい(?)罵倒語も。帰れといわれてもなかなか帰らないピニョン。その「イライラさせられ方」がちょっと昔のお笑いみたいで懐かしかった。 7点(2003-09-02 16:31:41) |
39. キルミー・レイター
あり?意外と評価低いですね。僕は久々にいい拾い物したなー、と思ったんですけど。確かに編集や演出が懲りすぎなのが後になってくるにつれ、ちょっとうざったくなってくるけど、全体としてはシャープな仕上がりになってたと思います。短い時間にもかかわらずそれぞれのキャラがちゃんと立っているし、あと、音楽が(全部知らない曲だったけど)すごく映像にマッチしてたんですよね。別れた奥さんの家での娘とのやり取りなんかとっても良かったですよ。ま、ラストはありがちといえばありがちですけどね。この監督(ヒロインの継母役で出演している)のほかの作品も観たくなりました。 8点(2003-08-19 17:34:43) |
40. 虚栄のかがり火
ありゃ?評判悪いですね。別にそんなに好きなタイプの映画ではないけど、ここまで悪し様に言われてるとちょっと弁護したくなるなあ。僕はこの映画、アメリカの病んだ部分を凄く皮肉的に描いた映画だと解釈したんですよ。トム・ハンクスの奥さんなんかそのいい例だと思うんですけど、彼女は健全であること、正常であることに「異常に」こだわってて、それが逆に彼女のある種の「異常さ」を際立たせていると思うんですよ。トム・ハンクスの、事故の時の黒人に対する反応も、あれはある種のアメリカの現実、というか本音のように思えるんですよね。それにラストもハッピーエンドではなく、敢えて観客に「いやーな気持ち」を味あわせようとしたラストなんじゃないですかねえ。あまりにも人間をペシミスティックに描きすぎてる気がするし(事故にあった黒人のお母さんが、金の話になって急に目の色を変えちゃうところとか、ちょっとやりすぎだと思います)、最後のモーガン・フリーマンの演説は別になくてもいいかなあ、とか、この作品に対する文句はいくつかありますが、それなりにアメリカの現実に対して誠実に向かい合った作品だとは思います。あえてこの映画に込められた(と僕が感じた)メッセージを言うなら「なんかさあ、俺たち世界最強の国になっちゃったけどさあ、なーーんか虚しくねえ?・・・まあいいや、そんなこと考えてもしょうがないから飲もうぜ飲もうぜ・・・虚しい」ってところでしょうか?最初に言ったように好みの映画ではありませんが、デ・パルマ監督のほかの作品も観たくなりましたよ、僕は。 6点(2003-05-19 18:31:52) |