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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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41.  ウォーリー 《ネタバレ》 
擬人化を最小限に抑えてあるのが楽しめる。いかにも機械機械したウォーリーが、しだいに個性を見せてくるあたり。目の双眼鏡のところの傾きだけで、けっこう細かい表情が出来るんだ。アニメの楽しみはこういうところにある。終わりのほうで“ただの機械になってしまう”なんてことを表現できるまでに、命を吹き込めていたわけ。大したものである(さかのぼれば『トイストーリー』、さらには『E.T.』でもぬいぐるみに化けるってのがあった)。ドラマとしては前半の廃墟の地球での出会いの部分が優れていた。映画史上でもかなり奇抜なボーイミーツガール。無駄な言葉のないサイレント映画の楽しみ。もっと廃墟そのものも味わいたかったけど。小さい助っ人ってのは、ディズニー映画では出さなければいけないという契約でもあるのだろうか。それほどドラマの進行に役立ってなくて、ただチョロチョロしてるだけだったという印象。宇宙船に話が移ってからは、『モンスターズ・インク』など既視感ある追っかけものになって、ボルテージが下がる。さらに『2001年』のパロディというか、コンピューターの反乱になって、デブとなった人類が再び歩行を始めるとこでツァラトゥストラが流れるのは、“パロディ”というより現在時点での“読み替え”と取ってやりたい。生き方を変える転換点としてのファンファーレ。寝たままのデブの対極に、ミュージカルのダンスがあるあたり、アメリカ人の誇りなんでしょうなあ。
[DVD(吹替)] 7点(2009-10-04 12:15:37)(良:2票)
42.  ウエスト・サイド物語(1961) 《ネタバレ》 
欠点を先に言っちゃうと、後半、踊りのボルテージが下がること。ストーリー上、群舞しづらくなってて仕方なくはあるんだけど、前半の圧倒的な迫力があったもんだから、冷える。そのかわりアニタが泣かせてくれるけど(自分の恋人を殺した男を助けに行くとこなんか、長谷川伸っぽい)。この映画、音楽もいいけど、踊りだよね。個人の至芸より群舞の迫力にミュージカル映画の活路を探っている。「ことば」を「ダンス」に置き換えて説明するだけじゃなく、もっと多面性を持った表現になっている。ファーストシーンなんか、たしかに踊りによる会話なんだけど、それ以上の雄弁さがあるでしょ。シャーク団がフィンガースナップを始めるところなんか、あのやろう、とか、こんちきしょう、とか言うより、ずっと「語って」いる。和解させようというダンスパーティで、パートナーをやっぱり自分の団から選んですぐマンボに移る気合い。ここは何度見てもゾクゾクさせられる。後半で唯一の群舞の見せ場「クール」は、直接には窓から「うるさいぞ」と叫んだおじさんに向けられた歌だったんだね。ガレージの中で頭を冷やしてからまた外に出て「パォ」ってやるわけ。そのときカメラは窓の位置にある。個人の恋をタップで表現するより、集団の鬱屈をフィンガースナップで描く時代になってしまったわけだ。
[映画館(字幕)] 9点(2009-09-18 12:01:49)(良:1票)
43.  美しき諍い女 《ネタバレ》 
スランプに落ち入っていた芸術家が生涯の大作を完成させるまでの過程を、カメラが観察し続けていく。それはさながら、氷結していた河がゆっくりと解け出して再び怒涛の流れを起こすまでを、ずっと見守っているような興奮に似たものがある。動きそのものよりも、作動するときの時間のうねりにこそ感動があるらしいのだ。冒頭で画家が落ち入っているスランプは、それなりに安定した生活でもある。芸術家としての焦りさえなければ、安定した夫婦の関係と重なっていて、普通の夫婦ならこれが理想の生活なのである。しかしその穏やかさからは芸術が生まれてこない。そこで若い娘マリアンヌがモデルとして入り込んでくる。安定していたこの家の空気が、創作のほうへ傾き出す。妻としては夫の仕事の再開を喜ばなければならない。しかし、自分を通して完成されなかった絵が、若い娘の裸を通して完成されていくのを、アトリエの外で待っていなければならないとき、妻のほうでも、夫の創作に並行した心理のドラマが動き出す。そっとアトリエを覗いて見ると、以前描きかけだった自分の顔がマリアンヌのお尻の絵に塗り潰されてたりして。この二人に加え、さらにマリアンヌの時間もある。画家との間に生まれてくる緊張のドラマだ。最初はデッサン、ポーズもただ椅子に座っているもの。それから普通のヌード。背中。だんだんと外界の田園風景と隔絶した造形の奥へ、芸術の創造という魔の領域へ入り込んでいく。最初は丁寧に口で指示していたポーズも、ついには画家みずからの手でぐいぐいとマリアンヌをねじ曲げていくようになる。格闘と言ってもいい。人形のように解体されていくことへの抵抗と、心のどこかで感じている妻への勝利感が、マリアンヌのドラマを動かし出す。この三つの流れが絵の完成へ向けて合流し大河となっていくところ、安定の対極にある充実、芸術の完成という死の瞬間に向けられた沸騰、それをこの映画は描き尽くした。そのとき出来上がった絵などは、映画にとってもうどうでもいいのである。
[映画館(字幕)] 8点(2009-09-15 12:14:31)(良:2票)
44.  噂の娘 《ネタバレ》 
『妻よ薔薇のやうに』の年の暮れの作品で、設定もお妾さん絡みでちょっと似ている。ただし娘は姉妹で、和装の姉は同情的、洋装の妹は反発している。それに家業の酒屋の没落が絡む。婿の頑張りも限界、遊んでいるおやじのほうも元気一杯というわけではなく(釣りはいらねえぜ、と言ったものの釣りを受け取ったり)、全体が衰弱していく気分に包まれている。その気分そのものがこの映画の味わいであって、特別モダンな妹に希望を託すわけでもない。酒がマガイモノでだんだん質を落としていくような衰弱感に、映画もひたされている。見合いのあと橋の上をトボトボとやや俯き加減で歩く千葉早智子のあたりに成瀬のトーン。ラストで家庭内の緊張が高まり、妾が店たたんでやってきて、妹が誕生パーティで父と喧嘩し、カットが細かくなり、カメラの向きが変わって、そこで警察=外部が入ってきて、という展開のリズムの妙。向かいの床屋の「次は何になるかねえ」という冷たい言葉でサッと締める厳しさ。何が噂の娘だかよく分からないけど、一番描きたかったのは“姉”の寂しい笑顔だったのだろう。一家を支えて頑張るぞ、って感じじゃなく、家の滅びに殉じてもいいのよ、という微笑み。
[映画館(邦画)] 7点(2009-06-24 12:08:17)
45.  ウォンテッド(2008) 《ネタバレ》 
イスラム過激派のリクルートを思った。そこらへんを意識してたんじゃないかな。惨めな日常にうんざりしている若者に、君は選ばれた者だという暗示を与え、厳しい訓練を課し、絶対者が悪と認定したのだからと迷わず見ず知らずの人物を暗殺できるまでに、組織に信頼を寄せさせる。この先にあるのは自爆テロリストへの道だろう。でもアメリカ映画のいいところは、組織に歯向かう個人のドラマになるとこで、途中の訓練の描写などの陰惨さ・ドギツさには不健全だなあと閉口させられたが、話の大枠はいたって健全であった。そしてなにより馬鹿馬鹿しさが救っている。最初のビルを飛び越える男が、廊下の奥のエレベーターから助走をつけるあたりで、すでに作品のトーンが決まり、以下馬鹿馬鹿しさが輝いているシーンのベスト3を順に挙げれば、まずアンジェリーナ・ジョリーが車で仰向けになって撃ちまくるとこ。次に、彼女の車が特急に追いつくとこ。特急の車掌も、あそこでは急停車させず、わざわざ崖の上の陸橋に来てブレーキをかけるという、事態を悪化させるのに協力的な態度をとるところが嬉しい。そして最後の二丁拳銃での殴り込み、ほとんど新体操の運動を見ているよう。そもそも気合いを入れれば曲がる弾道ってのが、根性ものの野球マンガに出てくる魔球みたいで、馬鹿馬鹿しくも懐かしかった。みなさんは絶対まねをしないでください、とテロップでも入れたいところ。
[DVD(吹替)] 6点(2009-06-23 12:06:14)
46.  裏切りの季節
ベトナムでのアメリカ軍の暴虐と、SMとが対比されているらしい。60年代とは、政治と性を一緒に語るのが好きな時代だった(というより昭和40年代かな)。公の極限と私の極限。ただそれが一つの形式になってしまって、とりあえず政治と性を並べておけばサマになる、ってところもあった。その安直さを許す気分自体もあの時代っぽさ。今見ると、渋谷を初めとした都市のロケに資料的価値がある。室内の場になるとマダラな照明になるのは、『胎児が密猟する時』もたしかこんなだったが、カール・テホ・ドライヤーのタッチを模倣したというような美的効果より、写っちゃまずいところを不自然でなく見えなくする手段だったのではないか。あるいはもっと単純に照明費の節約だったかもしれない。またこの時期のこの種の映画ではSMが多く扱われるのだが、男の時代・暴力の時代であったというより、カラミを描くには制限が多すぎ面倒なので、映画の存在理由である女体を簡単に見せるのはSMが一番やりやすかったという面もあったかもしれない。ジャンルの様式とは、内的な芸術的必然性より、案外そんな外的要素に左右されてるとこがありそうだ。でもそういう職人仕事がかえって時代ならではの気分を反映するもので、全体に漂う息苦しさ・閉塞感はマガイモノではなかった。ラスト、風でズッていく広げた傘なんかに、つい時代を深読みしたくなってしまう。
[映画館(邦画)] 5点(2009-06-08 12:04:17)
47.  右門捕物帖 拾万両秘聞 《ネタバレ》 
ああそうか、金田一シリーズの加藤武のルーツは、この志村喬の“あば敬”にあったのかもしれない。ヨシッ、分かった、とひとり合点し、見当違いの人間をしょっぴいていっちゃう、という役柄。志村喬の軽躁さと対照的に、アラカンはずっと大きな動きを見せずにムッツリ考え続け、「伝六、カゴを呼べ」で一気に動き出す。序破急の呼吸。時代劇でヒーローが悪漢を捕らえるときって、眉間にしわをよせ大仰に何かをこらえる表情をするのは、「てめえのような悪漢を含む世界全体を憂えてるんだ」ってポーズなのかなあ。それぐらい悲壮感に満ち満ちた表情になる。それとも「てめえのような汚ねえ野郎とは、仕事だからいやいや関わってるんだ」という軽蔑なのか。半世紀以上たってもテレビ時代劇の松平健あたりにまでつながっている伝統の眉間のしわだ。ドラマとしては、冒頭に刻限を決めた約束があり、ラストで切腹からのぎりぎりの救出があって、整えられている。十万両奪取の動機が複雑な政治的陰謀ではなく、恋のもつれというのがアッケラカンと分かりやすい。芝居小屋は時代劇ではよく背景に使われるが、味わいがあっていい。これでは犯罪で使われたシビレ煙幕と芝居の児雷也の仕掛け煙幕とが絡んでくる趣向で、ドラマの悪にも芝居の悪のようなおおどかな気分が添う。
[映画館(邦画)] 6点(2009-05-30 11:58:39)
48.  うなぎ
男たちがダラダラと床屋に集まっているあたりに味を感じたが、これは今村のものだろうか。男たちの集団は『果しなき欲望』とか『豚と軍艦』とかで描かれてるけど、それらはもっとギトギトしたものを持っていた。今回はサークルのような寛ぎの場で、船大工、やくざもん、UFOきちがいらによる浮世床の世界。この場を提供している役所は一歩退いていて、心的には外部の柄本明に近いのかも知れない。だからギトギトと煮詰まってはいかない。もちろん監督には自分の作品のトーンを定着させない権利があり、こっちに勝手に決められても困るだろうけど、うなぎと言えば『復讐するは我にあり』のドローンネチャネチャとしたカットが印象に残っているので、ついネバっこいものを期待してしまったのだ。人を見る目が優しくなったぶん、ドキッとさせる時間は減ってしまった。昔だったら、柄本明がもっと膨らんだだろう。
[映画館(邦画)] 6点(2009-04-13 11:57:26)
49.  うた魂♪ 《ネタバレ》 
歌ってるコーラスを見ると、たしかに感情表現がオーバーな人が必ずいて、そこから自信過剰・自己陶酔のヒロイン像を生み出したってのは、うまいところを突いた。陶酔のあまりいつもポカーンと口をあけているヒロイン。これに男性合唱団が絡んでくるとなると、恋愛ドラマも絡んできそうなところだが、この男性合唱団がとんでもないキャラクターで、そこでこの映画は膨らんで成功した。恋愛はどうってことない生徒会長との脇筋に押しやり、この副主人公格の男性合唱団長とは、子弟の関係になるところがいい。なんとこれは、求道の映画なのだ。港で訓戒を垂れるところはさながら秘伝伝授の場で、大事なところで後ろの連中がハミングを入れだすのには笑った、このセンスは貴重だ。真剣になっているとき、顔なんか気にしちゃいけない、って訓戒。そういえば浅田真央だって三回転半跳んでるときは凄い顔してる。合唱大会、ヒロインのとこのコーラスより、前の男子校(ケチャがはいるやつ)のほうがうまく聞こえたが、ここはヒロインのとこのほうがうまいんだ、と思って聞くのが映画の観客としての礼儀だ。 
[DVD(邦画)] 7点(2008-12-27 12:20:00)(良:1票)
50.  浮雲(1955)
戦時下の仏印というニセモノの極楽で出会ってしまった二人が、戦後の現実と折り合いをつけられないまま日本中を漂い流れ、また南へと下っていく、と要約できる話だ。ずっと不貞腐れていた高峰秀子が、屋久島へ連れていって下さいと、泣いて哀願する迫力が見事で、あの渡航のシーンで終わってもいいんじゃないか、と思ってしまう。不貞腐れる、ってのは、とても非建設的な行動で、現状への不満は表明するが何ら積極的な働きかけはしない、ってこと。戦後の映画はもっぱら建設的なアピールをしていたが、ひとり成瀬は、不貞腐れる高峰を信念を持って撮り続けた。みんな一緒にスローガンのもとで調子に乗るのに比べれば、不貞腐れるって行為は、個人が取れる精一杯の批評だったんじゃないだろうか。彼女はいい加減に不貞腐れていたのではなく、一生懸命に不貞腐れていた、必死で不貞腐れていた。そしてついに不貞腐れるのをやめたのは、建設の側に回るためではなく、全否定の側に回るためだった。すごい映画である。ただ成瀬の本領は、いろいろあっても市井に留まり続ける普通の人たちを描いた作品のほうで、より発揮されてるんじゃないかなあ。
[映画館(邦画)] 7点(2008-11-21 12:11:58)
51.  運動靴と赤い金魚 《ネタバレ》 
イタリアのネオ・リアリズムがこんなところにまで流れてきてたのか、とも思うが、あちらはしばしば社会から見た子どもが登場したのに対し、こちらは子どもから見た社会が描かれている。子どもだってけっこう気遣いするのだ。なくした靴のことで親に心配をかけないように心を配る。妹は妹で試験を早く終わらせたりする。兄の妹への負い目、妹の兄への気遣い、と兄妹の間での心の揺れに、また友だちとの間でも、同情やその同情があっさり捨てられるところが描かれ、とても豊かに子どもたちの世界が立ち上がってくる。お父さんの庭師訪問のさいの内弁慶ぶりがケッサク。お父さんがかわいく見えた。マラソンのシーンで音楽が入らないのも正しく、ふと前を見ると誰もいないカットがうまい。そうした演出の的確さは、金魚が寄ってきて赤い靴となるラストで最高潮に達した。
[映画館(字幕)] 8点(2008-11-19 12:12:55)
52.  Wiz/Out 《ネタバレ》 
すごく面白いところと、すごくつまんないところがある困った映画。比率で言えばつまんないとこの方が多いけど、そこは見なかったことにしてやろうという、新人監督(園田新)を応援したい気持ちになる映画でもある。冒頭が引き込まれる。これから見るかもしれない人のために細かくは言わないけど、テレビとケータイの時代の恐怖で押していく。他人の事件をドラマとして安全地帯から眺めていたはずが、しだいに当事者になっていく。テレビ画面と現実との切り返しが効いていて、このモチーフだけを膨らませてくれたら傑作になっていた。たとえば遠くの戦争のニュースを見ているときの漠然とした不安(遠くのものが本当に遠いいとは限らないまでに込み入っている現代社会)とも関係があるような。これが話の本筋になるとチマチマした通俗青春ドラマになって、ある天変地異が拡がっているのに、渚で女の子が裸足になって波と戯れてたりする。ま、この天変地異が冒頭の事件の波及した結果らしいんだけど。けっこう撮影大変だったとこもあるんじゃないかなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2008-11-05 12:16:07)
53.  海の上のピアニスト 《ネタバレ》 
ハリウッド映画だったら、ラストは街へと一歩踏み出していく終わり方を選ぶだろうな。でもこれは、あえてとどまる。有限の鍵盤で無限の曲を奏でるピアニストとしての矜持か、それとも外の無限を怖れてのひきこもりか。船の中ならなめらかに自在に滑りまわれる男なんだけど。単に臆病なのなら、こんなに天使のように美しく描いてしまってもいいのかと思うし、でも船から下りない生き方を肯定しているようでもない。移民や娘たち、実生活のある無限へ乗り出していくものたちも描いている。その肯定とも否定ともはっきりさせないところが、つまり伝説の豊かさなんでしょうなあ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-10-31 12:07:56)
54.  ヴィーナス(2006) 《ネタバレ》 
じいさんが悪女に振り回され溺れていくっていう『嘆きの天使』型の話ではないの。じいさんはかなり意識的に戯れていて、人間の「愚かという徳」を味わい尽くそうとしているよう。娘をモデルに斡旋してそのデッサンの場を盗み見ようとし、見つかってしまうと美術館に連れていって「ね、女性の裸体というものは美の極致ということに昔からなっているんだよ」なんてスマして言ってる。前立腺の手術して「不可能」と決定されると、さらに積極的になるってのも人間の「愚か」の味わいで、「老いの生への執着の凄み」よりも、どこか「ちゃっかりしている」という余裕が感じられた。そこらへんがいいけど、でもまあそれだけ。とうとう娘に介護もさせちゃって、天晴れな老後を全うする。有名老優を柱にした映画って時々あるが、どうも役柄を越えた「あの人は今こうなった」的なドキュメントとしての面白味が先だってしまい、作品としてはあんまり…、ということが多いですな。
[DVD(字幕)] 5点(2008-10-17 12:12:32)
55.  歌え若人達 《ネタバレ》 
木下恵介のコメディが好き。これが最後の純コメディになるのかな。松竹戦前からのお得意のスター誕生物語の枠組みだが、でもテレビで人気が出てから映画へというコースになっているのが60年代。永井智雄、大森義夫、坪内美詠子と、テレビ「事件記者」のレギュラーが顔を揃えたのは偶然か。他愛ない作品だけど、何となく現実と触れあえない気分や、もひとつたぎらない青春の血潮ってあたりに、脚本山田太一の色を感じる。東山千栄子に代表される田舎の重圧は木下のテーマ。特別出演の佐田啓二が「俺ら岬の…」を、田村高広が「女の園」を歌うというウチワオチあり。寮生活模様のスケッチ、いつもぶつかる手前のドアのギャグとか、若水ヤエ子管理人の放送などで笑わせる。ストリップ見た後ですぐに寮の男風呂のでぶのカットになるというギャグもあった。他愛ない作品ではあっても、いい加減な感じはない。
[映画館(邦画)] 6点(2008-08-26 12:15:15)
56.  ウォーターボーイズ
微妙にこの監督向きの題材ではなかったような。ガールフレンドが自販機にケリを入れて登場するようなあの感じこそ、この監督の味だ。「これコツがあんの」って。5人がボーゼンとこっちを向いて並んでいる場の反復とか。頑張って成功するという段取りのとこより、新任女性教師の登場でワッと集まり、産休でワッと減り、テレビで紹介されてまたワッと集まり、ってようなとこがいい。ゲーム機などを見ると同時代の話らしいが、出てくる曲はすべてナツメロ、これ監督の強引な趣味であろう。指導者がいいかげんなイルカ調教師ってのは面白いんだけど、竹中直人がはしゃぎすぎてしまう。
[映画館(邦画)] 7点(2008-07-13 11:13:36)
57.  ヴェルクマイスター・ハーモニー
いちいちに隠されているらしい寓意は、ほとんど読み取れていない。しかし全体を覆う圧倒的な不穏の気配を体験することで、モトはとれたと思う。個人の不安でも国家の不安でもない、町の不安ってとこがいかにも東欧。焦点は暴動の場。ひたすら歩く暴徒たちの、その静かな表情が怖い。ワンカットで描かれる病院襲撃(2時間25分で37カットっていうと単純に計算して1カット3分55秒か。広場に点々と立つ人々の場なんか、長回しの先輩アンゲロプロス好みのシーン)。隣人がたちまち無表情の群衆に変わり得ることの不安て、やっぱり20世紀の多くの町が体験した不安だったんだ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-06-14 12:07:02)
58.  ヴァリエテ(1925)
ドイツはこういう話好きだね。淫婦に振り回される男もの。5年後の『嘆きの天使』とか。あるいは時代の流行りだったのか。谷崎の「痴人の愛」もだいたいこのころ。若干先だから映画に影響されたってことじゃなさそうだ。しかもこういう淫婦の時代の後に、ドイツも日本も、病的に健全な男の時代に突入していってしまうんだな。それにしても無声映画の雄弁さ。水道のしたたりと、赤ん坊のおもらしのしたたり。二人の女を足先まで見比べる視線。あるいは耳を澄ませているそのアップ。テーブルのいたずらがきをめぐるサスペンス。ひそひそささやきあう人たち。ブランコシーンの緊張。無声映画のあらゆるテクニックが呼び集められている。ただの三面記事にしかすぎない出来事が、それ以上の物語に変わっていく。
[映画館(字幕)] 6点(2008-03-23 12:15:37)
59.  美しすぎて
設定は面白そうなんだがなあ。美人で完璧な妻がいるにもかかわらず、ブスの秘書に一目惚れしてしまう男、っての。冒頭、ほとんどのカットが移動撮影で、これもなんか面白いかなあ、って思ったの。でも、フランス映画特有の洒落っけっていうか、きっとあっちの人に言わせると“これがエスプリってやつでね”となるんだろうが、なんかまどろっこしい展開になるのね、異邦人の私には。けっきょくこの設定も気取ってみせたいためのダシだったのかなあ、とか思った。意識の流れ的なものが、どうも味わいとはなってくれず、ただいじくってるって感じなんです。素直にツーッと語れんのかね、フランス人て人種は。
[映画館(字幕)] 5点(2008-01-20 12:27:43)
60.  うつせみ 《ネタバレ》 
留守の家に男が忍び込んではいるのだが、どうも主体は男より家のほうに感じられ、その家の空気に男が溶け込んでいってるような感じ。むりやりの闖入者というより、空き家の空間が男を招き寄せたような。だからボクサーの部屋に入り込めば、男はグラブをつけてボクサーになってしまう。男の方に主体がないから、かえって男はその部屋の住人として違和感なく自在にふるまえる。特定の個人の部屋でない牢屋で、気配を消してしまえるのも当然のことかもしれない。現代人にとって夢のような、あるいは悪夢のような話。家に溶けてしまうこういう愛人を妻に持たれたら、もう亭主には手の打ちようがないのだ。
[DVD(字幕)] 6点(2007-11-03 12:20:13)
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