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プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  バッド・ジーニアス 危険な天才たち 《ネタバレ》 
貴方は学生時代にカンニングをしたことがありますか?私はあります。でも、カンニングをビジネス化して大金を稼ぐなんて発想は思いつくわけもなく、現代はITテクノロジーがそれを可能にしてしまったわけだけど、どんなことでも金儲けの手段になるなら躊躇しないという世界になってしまったという事なんでしょう。まあこの映画のタイの高校生が使う手段はスマホなんだけど、あくまで情報伝達ツールであるわけで解答をデータに落とし込む手口はまさに悪知恵の極致と言えるもので、こうやって考えるといくらAIが発達しても人間の悪知恵の方が一枚上を行くんじゃないでしょうか。 タイの映画を観たのはたぶんこれが初なんだけど、いやはやいきなり凄い傑作にぶち当たりました。“バンコクの蒼井優”みたいな感じの舌を噛みそうでとても音読みできそうもない名前の主演女優、劇中で喜怒哀楽をほとんど見せない強烈な演技を見せてくれますが、実はファッションモデルで演技経験はゼロというのは驚き。彼女とペアでSTICに挑むバンク君が母子家庭、父子家庭の主人公とは左右対称みたいな環境で、二人を利用して試験突破を図るカップルはブルジョア家庭というところはちょっとありきたりな設定と言えなくもないけど、このバカップルをけっこうコミカルな存在としているのは良かったです。とにかく後半のSTIC試験のシークエンスでのサスペンスとハラハラドキドキは半端ない、まさに手に汗握るとはこういうことですな。たかがカンニングがここまでスリリングなストーリーになるとは、予想外でした。生真面目なキャラと思っていたバンク君が、ラストではふてぶてしいカネの亡者みたいになってしまうのは、自分にはまったく思いもよらない展開でした。邦画なら絶対に二人を恋仲にするラブコメみたいになるのが必定、こういうシビアな幕の閉め方を少しは見習ったらいいのにねえ。でもいちばんいい味出してたのは、リンのお父さんであったことは間違いなしでしょう。名前が出てこないけど、この人とそっくりな俳優が日本にいますよね、誰だったかな?
[CS・衛星(字幕)] 9点(2024-01-22 22:06:59)(良:1票)
2.  ハッピー・デス・デイ 2U 《ネタバレ》 
前作がホラー+ラブコメという図式だったのに対して、この続編では完全にホラー要素がSFに置き換わっております。タイムループならぬ次元ループとも呼ぶべき現象、これを全人類の99%が理解できない量子力学という呪文を使って説明してしまう荒業、ちょっと強引すぎるきらいはあるけど何となく納得させてくれたような気がします。前作でツリーのループで毎回冒頭にだけ登場していたアジア系のライアン君、実は彼は卒業研究で量子反応炉なるトンデモない装置を開発してしまう天才的な学生で、本作ではとくに前半で大活躍を見せてくれるところが見どころです。まさかのライアン君のループ地獄が展開してこれも仰天の二人のライアンが出現して量子反応炉が暴発、なんとツリーの方がやっとの思いで抜け出したはずのループ状態に逆戻り。正直この展開には観ていてほんとにびっくりさせられました、まるでこの映画は前作と同時に脚本が書かれて撮影したんじゃないかと思うぐらいです。明らかにこの後は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを意識した展開になるのですが、前作公開後にこの展開を構想出来る脚本家は、類まれなる才能の持ち主であることは確かです。実際には本作が期待ほどヒットしなかったので構想は萎んでしまったみたいですけど、さらにシリーズ化するプランはあるみたいですね。実現すれば、まさに21世紀の『バック…』シリーズときっと評価されることでしょう。 それにしても、ツリーとカーターおよびライアンを演じた俳優たちは、この二作で何度ほとんど同じような演技(ツリーが目覚めてカーターの部屋を飛び出すまでのシークエンス)をさせられたことでしょうかね、編集マジックで軽減されているかもしれないけど、彼らにはまさにループ地獄ですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-24 22:58:26)(良:1票)
3.  バイス 《ネタバレ》 
最近は特殊メイク技術の進歩で演技力がある俳優ならばどんな有名人に化けることもできそうですが、クリスチャン・ベイルはデ・ニーロの流れを組む肉体改造型キャラ創りの最後の雄、メイクも凄いですけど20キロ近く体重を増やしてディック・チェイニーを演じ切りました(さすがにこれは辛いらしくて、今後は肉体改造を止めると宣言したそうです)。彼に限らずブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官などそっくりさん大集合といった観もある作品ですけど、みな対象の仕草や喋り方を演技で見事に再現しているところが感心します。 原題の“Vice”には副大統領の“副”という意味のほかに“悪徳”という意味もあり、これはなかなか意味深です。また本来“副”には“正”のような権限はないけど責任も負わないという立場なので、考えてみればこの立場を悪用すれば陰に隠れてけっこうヤバいことができるという絶妙なポジションでもあります。この映画の描いていることがどこまで真実に近いのかは判るはずもありませんが、観る限りではチェイニーはとんでもない悪徳政治屋と解釈されるかもしれません。でも、猛妻の尻に敷かれていたりとても家族思いな面があったり、クリスチャン・ベイルの演技もあって好感までは持てないにしても人間として理解はできるんじゃないでしょうか。観るまでは野心家妻に陰で操られる人という印象はありましたが、どうしてどうして、ワシントンでのチェイニーの活動は完全に彼個人の野心が暴走してゆく過程であると思いました(だいいち、副大統領になることには奥さんは反対してましたからね)。サム・ロックウェルの演じるブッシュ大統領がまた絶妙で、たぶん実物も実像はこんな感じだったんだろうなと思わせる説得力がありました。この映画の脚本は秀逸で、狂言回し的に前半から登場するブルーカラー労働者風のおっさんを「こいつは何者だろう?」と訝しんでいたら、まさかそんな人だったとはと心底驚かされました。編集も実にコミカルで雰囲気を出しているのですが、題材が題材だけに後半に行くに連れてどんどんシリアスになってゆくのは止むを得ないところかと思います。 考えてみると、このブッシュ政権は正・副両大統領とも伝記が映画化されたわけになります、これはある意味で快挙なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-12 21:59:11)(良:1票)
4.  パリより愛をこめて 《ネタバレ》 
L・ベッソン&P・モレルという安心ブランドのアクション映画なので、細かいこと考えずに観れば十分楽しめます。これはもうスキンヘッドのトラボルタ様の功績で、もしこの役をJ・ステイサムやL・二―ソンといったベッソン映画の常連に演らせていたら、絶対こんなに愉しめなかったでしょう。 ラストの展開を見てて思ったのは、最近の邦画だと絶対「最後に愛が勝つ」というオチに行っちゃうんですよね。そこを「テロリスト・マスト・ダイ」ときっちり締めてくるところが私は好きです。出来ればJ・R・マイヤーズには最後まであの壺を守り抜いて欲しかったところです(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-07-24 22:07:01)(笑:1票)
5.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 
この作品がオスカー作品賞を獲ったのは、韓国では大統領がまだザイトラとかいう人だったころ。当時の韓国は国策でKポップとやらが世界でムーブメントになっていると有頂天になっていて、ボーイズアイドルのグループをなんと国連総会に連れてってスピーチさせるなんて暴挙に出たりしていた。私からすれば韓国映画がアジア映画としては初めてオスカー作品賞を受賞したってことの方がよっぽど一大快挙、「ついに韓流映画もここまで来たか」と感無量でした。ところが韓国では何とか少年団の時とはほど遠い冷めた反応だったんじゃないかと思います。まあそれは華やかで先進的なイメージをアピールできるポップスと違いこの映画のテーマが格差社会である韓国の恥部に触れていたからなんだろう、こういうところは実に判りやすい国だと思います。 日本でも山の手と下町という区別が昔からあるように、富裕層は“上”庶民層は“下”というところはどんな国の都市にもある地理区分みたいですね。それにしても“半地下”という住環境はちょっと凄いですね、これは黒澤明の『天国と地獄』の設定が彷彿されます。前半の一家四人がそれぞれ他人を装って使用人としてセレブ家に入り込んでゆく過程は、ブラックでとぼけた演出もあって面白いですね。これはジョセフ・ロージーの『召使』みたいな感じで主人一家を操ってゆくのかと思いきや、嵐の晩を境に想像のはるか上を行く展開になってゆくわけです。この映画の中ではセレブ家のセットの造りこみが豪華で、こういうカネのかけ方からして日本映画が韓国映画に勝てないのが納得できます。ただラストはいかにも韓国映画らしい惨劇展開でしたが、後日談をつけた引っ張り具合はちょっと冗長だなと感じました。決して凡作ではなくその切れ味にも鋭いところがあるのですが、オスカー作品賞を獲るほどの出来なのかはちょっと?というのが感想です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-09 22:55:49)
6.  Back Street Girls -ゴクドルズ- 《ネタバレ》 
私は原作コミックもTV放映アニメも未見で、「ヤクザ三人組が下手打って指ならぬアソコをつめて地下アイドルデビュー!」なんて超バカバカしいプロットなんで期待せずに観ましたが、けっこう真面目に撮っていて面白かったです。女性化した三人はなかなか魅力的で、だいいち彼女らの披露する楽曲が極道ネタを巧みに取り入れた歌詞で、しかもちゃんとアイドルソングとして成立しているのが凄い。聞けば三人はゴクドルズとして劇中楽曲をフューチャーしてアルバムリリースまでしているそうで、この楽曲の出来具合ならアイドルファンも納得できるんじゃないかな。挿入されているライブ映像も実に楽しそうで、コロナ流行以前のアイドルライブの盛り上がりがなんかすごく懐かしい感じがします。終盤のアイドルフェスに出演している他の架空アイドルのパフォーマンスも手抜きなくそれらしくて、良く創りこまれていると思います。女性化した三人のかつての荒ぶる男性としての内面との葛藤を男優との掛け合いとして見せる演出も秀逸、でもそれが彼女らが便所で便座に腰かけているときに扉ごしというのは、どういうもんですかね(笑)。岩城滉一の何を考えているのか理解不能な親分も、彼の貫禄で振りきったという感じですかね。そう言えば友情出演でちょっとだけ顔を見せた大杉漣は、これが遺作というか最後の映画出演だったと思うと感慨深いです。 ラストにはまさかの多幸感まであって掘り出し物でした、これなら続編製作もありなんじゃない?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-05-10 23:03:30)
7.  ハッピー・デス・デイ 《ネタバレ》 
ホラーとサスペンスとラブコメの絶妙なミックス、考えてみればけっこうな数が製作されているタイムループものに新風を吹き込んでくれた一作だと思います。主演のジェシカ・ローテはたしかにJDを演じるにはちょっと苦しいお年頃でしたが、前半のクソが付くほど嫌な女からどんどん心が清らかになって可愛げが滲み出るようになってゆくところなんかは好演だったんじゃないでしょうか。ストーリーとしてもタイムループものには付き物の矛盾は最小限、というか勢いに任せたストーリーテリングで突っ走って乗り切ったという感じでしょうか。何度も殺されては生き返るけどだんだん体調が悪くなってくるし、体表面は普通だけどレントゲンを撮ると内臓は医者が驚くほどのダメージを受けているなんてところは、なんか謎めいていて面白い。でも苦しいのはマスクを被った殺人鬼の正体で、ネタバレになるので詳しくは言えないけど、やはり一人じゃないってことなのかな。いろいろとばら撒かれた伏線も割と綺麗に回収しているや、ラストのどんでん返しみたいな展開もセンスが良かったです。エンディングの「この話しって『恋はデジャヴ』になんか似ていない?」というセリフも、けっこう強烈な楽屋オチじゃないかな。 なんか皆のレヴューによると続編『2U』も凄いらしいですね、早速観てみましょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-21 21:44:02)
8.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 《ネタバレ》 
バードマン≒バットマン、これはもうマイケル・キートンのセルフパロディとしか思えない、もっともバードマンとは違ってキートンは2回しかバットマンを演じてませんけどね。キートンありきで書かれたこの脚本ということは、彼にとってバットマンだったことは黒歴史だったということ何でしょうか。 イニャリトゥなどの最近のメキシコ三羽烏はワンカット風撮影がほんと好きですけど、本作では初めて自分は酔いそうになりました。とくにほとんどの舞台が劇場内の狭い空間なので余計しんどかったです。監督の意図はどうなんだか知らんけど、自分にはこの映画のテーマは映画界=ハリウッドと演劇界=ブロードウェイの、お互いにマウントを獲り合う醜い争いであるような気がしています。別に下北沢に通ったことはないけど、個人的にはとくに日本の演劇界も鼻持ちならない界隈みたいで似たような感じだなと思っています、まあ日本映画界もたいがいですけどね。婆あと言っていい様なおばさん批評家が権力を持っていて、キートンの芝居を観ようともせずに映画スターとハリウッドに対する個人的な反感だけで「明日の記事で酷評して打ち切りにしてやる」と宣う、もうこりゃいじめですやん。面白いところは主役兼脚本のキートンとこのおばさん批評家はどちらもSNSとは無縁のアナログ人種で、おばさんに至ってはメモ帳みたいなものに手書きでせっせと記事を書いている。ところが娘のエマ・ストーンを通じて見せつけられるリアルでは、ブリーフ姿でブロードウェイを彷徨うキートンの動画があっという間に300万再生を超えて不振だったチケットが爆売れしてしまう。つまりハリウッドだブロードウェイだといがみあっていてもどちらもオワコンになりかけてるんだよ、と監督のイニャリトウは皮肉っているんじゃないかな。 一度観ただけでは情報量も多くて深いところまで理解しにくい作品であることは確かです。でもイニャリトゥはやがて“21世紀のフェリーニ”と呼ばれるようになるかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-21 22:58:41)
9.  パーティで女の子に話しかけるには
時は1977年、エリザベス女王の在位25周年が祝われジミー・カーターが合衆国大統領だった時代、英国ではパンク・ムーヴメントの嵐が吹き荒れている真っ最中にロンドン郊外のクロイドンでパンク野郎と異星人の女の子の儚いボーイ・ミーツ・ガールがあったのでした。『パーティで女の子に話しかけるには』なんてタイトルからはとても想像がつかない、ちょっと胸キュンなSF恋愛ストーリーでした。『ラビット・ホール』では雇われ監督もそつなくこなしたジョン・キャメロン・ミッチェルが久々に自分のやりたいことに没頭したって感じの作品で、自分はあの『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から受けた衝撃を思い出させてもらいました。エル・ファニングのキュートさと“人喰いパンク”を即興でシャウトするカッコよさのギャップは最高。でも『ラビット・ホール』からの縁で出演したニコール・キッドマンのパンク女王がまた存在感強くて、もっとも始めは誰だか判りませんでしたけどね。六つの種族に別れる異星人たちの設定や行動様式はほとんど理解不能でしたけど、あのパーティー(?)での脱力系ダンスには自分のツボが突きまくられました。 海外での評価は高くないというか酷評も多いですが、日本では意外と高評価されているみたいです。これは確かに将来カルト化するかもしれませんね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-09 19:44:56)
10.  ハクソー・リッジ 《ネタバレ》 
考えるに、現役映画監督の中で戦争映画を撮るのがいちばん上手いのは、メル・ギブソンなのかもしれません。リアリティーやストーリーテリングの巧みさではスピルバーグやイーストウッドの方が勝っていますが、臨場感と巧妙な脚色と観る者を引きずり込まずにはいられないヒロイズムに関しては、文句なしで当代一でしょう。とは言え、これだけバッタバッタと日本兵が殺される(アメリカ兵も負けず劣らずの大損害ですが)シーンが連続すると、さすがに気分が悪くなってしまいます。そして凝り性のギブソンのことですから、人体損壊シーンが多いことにも辟易させられます。個人的には『プライベート・ライアン』の“ブラッディ・オマハ”の方がはるかにショックを受けましたけど、スピルバーグの方が見せ方については巧みだったんでしょうね。監督がこの人だからと警戒した宗教色は、さほど気になりませんでした。同じ部隊のアメリカ人からも異常視されるぐらいですから、このデズモンド・ドスという人の信条は日本人の私らには理解できるはずもありません。でも「この人は狂信者ではなく、普通の若者だったんだよ」ということを前面に押し出したかったギブソンの演出意図は、それなりに成功したんじゃないでしょうか。しかし銃は握らなかったといっても戦争そのものは否定せずに、自ら志願して戦場に赴くんですから、やはりこの宗教観を理解するのは難しいです。『ヨーク軍曹』を撮ったハワード・ホークスが生きていたら、この映画を観てどういう感想を持ったか想像してみると面白いです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-05-16 23:48:17)
11.  ハドソン川の奇跡 《ネタバレ》 
すっかり枯れていぶし銀の風格となったイーストウッドとトム・ハンクス、これが初めてのタッグなんですね。考えるにアメリカほどヒーローに拘る国はないでしょう。そして、さんざんヒーローを演じてきたイーストウッドが、21世紀の世の中で英雄とはどういう人間なのか、また彼はどうして英雄になったのか、ということを問いかけています。 映像には素晴らしい迫真力があり、まるでニュース映像を観ているような錯覚さえ覚えます。こうやって観ると、ご老体の割にイーストウッドはCGの使い方がびっくりするほど上手い映画作家だといえます。また余計に話しを膨らませないシンプル極まりないストーリーテリングも、尺の短さもあって心地よいです。トム・ハンクスが機長ならどんな状況であっても乗客は助かりそうな安心感がありますが、結論の判っている有名な実話なのでこの撮り方が正解なんですよ。救助に駆け付ける人々の映像に感じる温かい視線も、ハリウッド保守の重鎮であるイーストウッドらしいかと感じました。まあそこは、救助隊が転覆しつつある客船を一時間以上もただ眺めていたどこかの国では、ぜったい撮れない映画だとは言えるでしょう。 
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-11-24 23:02:25)(良:1票)
12.  ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える 《ネタバレ》 
ネタのヤバさで売っているシリーズですけど、この第二作目はまさに『国境を越える』あらため『一線を超える』じゃないでしょうか(笑)。指ネタはさすがに「おい、ほんとにそれでいいの?」とドン引きさせられました。夜のバンコクで暴れ回るのは観ていて痛快ではありますけど、この映画タイ国内で上映出来たんだろうか?、とさすがに心配になりました。 本作では“スチュいじり”がテーマみたいなもので、刺青から始まって平常は真面目そうな彼が本性に目覚めたというかどんどん変貌してゆくのが実に愉しいところです。船上でスチュが途方に暮れて歌うビリー・ジョエルの替え歌がまた大爆笑で、これアドリブ演技をそのまま使ったんじゃないかと思うほど自然な感じです。 またまた出ました“タイソン・ネタ”そしてMr.チャウ(正直これには驚きました)、とひとつのパターンを作っていてシリーズ化するのかはともかく、さらに続編撮るのは確定していたみたいですね。当然だれしもが予想するのがアランのご結婚でしょうけど、果たしてどうなりますやら…
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-30 20:55:45)(良:1票)
13.  バーニー/みんなが愛した殺人者 《ネタバレ》 
実験的な映画を撮るかと思えば『スクール・オブ・ロック』みたいにメジャーで王道的な作品もこなしちゃうリチャード・リンクレイターの、どちらかと言うと彼らしいかなり捻った笑えない(これは良い意味です)実録コメディです。 テキサス東部の田舎町で葬儀屋の助手を勤める40手前の独身男バーニーは、町の誰からも善人と認められて愛されていた。彼は町随一の資産家の未亡人に気に入られて同居する様になるけど、この未亡人はバーニーとは真逆で恐ろしいまでに性格がねじ曲がっていて町中の人から憎まれていた。このバーニーをジャック・ブラックが演じるのですが、良い人を説得力ある演技で好演するけど彼のことですからなんか胡散臭さがつきまとっちゃうんです。これも監督の計算通りなんでしょうが、最後まで観るとどうもゲイみたいだけどそれ以上におかしなところは見られない。どうも現代社会では度を越した善人=変人と言うことになる、という一種の問題提起なのかもしれません。未亡人マージョリーは、もう笑っちゃうほどイメージ通りのキャスティング、シャーリー・マクレーンです。最初は良き友人同士だった二人も、マージョリーが本性を剥きだしにしてバーニーをこき使う様になってきて、とうとう彼はマージョリーを衝動的に射殺して冷蔵庫に死体を隠します。 この映画は実際の町の人たちが語るバーニーの想い出を繋ぐ形で進行するモキュメンタリー風の演出が特徴です。殺人が発覚して裁判になりますが、なんせ町中の人がバーニーを擁護しているんですから、その中から選出される陪審員は無罪の評決を出す可能性が高い。そこで検事は裁判を70キロも離れた隣の郡に変更しちゃいます。ここでは当然のごとく有罪判決が下り、あわれバーニーは終身刑を宣告されてしまいます。テキサスは全米屈指の厳罰司法の州ですけど、それにしても終身刑とはキツイですね、日本でしたら懲役10年ぐらいでしょう。そこら辺は、裁判所の違いで無罪か終身刑という両極端な判決が出る可能性があるというアメリカ裁判制度の矛盾を監督は指摘したかったのかもしれません。地方検事役はマシュー・マコノヒーでこれが実に可笑しいキャラで、この映画の中でいちばん笑わしてくれます。 けっきょくバーニーはほんとはどんな人間だったのかという疑問には何も答えてくれずに映画は終わるのですが、それでもいろいろ考えさせてくれる作品の様な気がします。ラストにバーニー本人とジャック・ブラックが刑務所で面会している映像が流れるのですが、なぜだかギョッとさせられるものがありました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-05-08 23:27:24)
14.  パージ:アナーキー 《ネタバレ》 
“PART2は群れで行け”のセオリーを守って、前作よりもいろんな意味でスケールアップしていたところは喜ばしいことです(出演俳優陣はかなりの格落ちでしたが)。やっぱ籠城戦よりも機動戦の方が見応えがありまよね。脚本も格差社会・アメリカ合衆国を前面に押し出してテーマ性が色濃くなってきました。でも、年に12時間だけのパージ開催だけで国民平均所得が上がって社会が平穏になるという理屈だけは、あいかわらずですけど理解不能です。「12時間だけ犯罪OK」と言われても、果たして人はあそこまで殺人に奔走するものなのか?ってのはこのシリーズの最大の疑問点であるのも確かです。パージが終われば残りの364日は普通の社会なんだろうから、身近だったり繋がりがある人を殺めたら通常の人間関係が成立しないんじゃないだろうか。また、どうせ何でもありなら窃盗や強盗など経済的に得する犯罪に走りそうな気もしますが、パージ中は企業も個人も現金や商品を物理的に奪うことができないようにするだろうし、そうなると大金を稼ぐにはハッキングするぐらいしか手段がない。だから殺人ぐらいしかすることがないってわけで、考えてみるとここまでアメリカ人の本性を貶めるプロットは類を見ない気がします。本作ではこの手のディストピア映画ではお約束の抵抗組織が登場しますけど、こういう「我々アメリカ人には悪と闘う権利と根性があるんだ」という単純なスローガンにはちょっと辟易させられるところがあります。マイケル・ベイが製作陣にいますけど、全体に流れる銃社会肯定感は気になるところです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-27 23:06:08)(良:1票)
15.  ハウス・ジャック・ビルト 《ネタバレ》 
「ラース・フォン・トリアーがサイコ・キラー映画を撮った」ということで身構えて鑑賞いたしましたが、正直言って今まで観た彼の作品の中では不快感は低めだった感じです。冒頭に「この映画はラース・フォン・トリアーの作品を彼の許諾のもとに編集したものです」というテロップが出るのでこれはソフィスティケートされたバージョンなのかと勘ぐってしまいましたが、思うに彼の作品の特徴は普通に見えるキャラの行動が観る者を不快にさせるのであって、本作の様に始めからおかしいと判っている人間の行動を見せられると意外とインパクトが弱いのかもしれません。それでもジャック=マット・ディロンの狂気の行動と語られる理屈というか自己分析はおぞましく、とくに自分の妻子を狩りの獲物にして撃ち落とした鳥と一緒に並べるところには嫌悪感が抑えられませんでした。ジャックとまるで精神分析医のように対話するブルーノ・ガンツが実はあっちの世界の存在でした、ってのは想像通りでしたが、エピローグの二十分での地獄めぐりの訳わからなさこそが監督の鬱の映像化なんでしょうが、こういう表現に関するセンスはデヴィッド・リンチの足元にも及ばないと感じます。けっきょく最もインパクトがあったのは凍結した死体をくみ上げて作った“ジャックが建てた家”というわけでしたが、こういうことを平気で撮っちゃうのがラース・フォン・トリアーたる所以なんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-28 21:34:45)
16.  ハウンター 《ネタバレ》 
たしかにこれは並みの監督ならある程度の評価が貰えそうですが、ヴィンチェンゾ・ナタリが撮ってますからハードルは高くて不評を貰うことはしょうがないと言えるでしょう。たった25日で撮影されたそうですから、ナタリ自身も深く考えずにサクサク撮ったって感じです。とはいえナタリですから、とくに前半はいかにも怪談という雰囲気は良く出ていたと思います。ループする日常と判りにくいストーリーテリングが、不条理感を強めているのかな。後半は謎とき要素が強まってくるのですが、西洋怪談に特有の“悪との闘い”が前面に押し出されてくるので観てる方のテンションは下がり気味です。だいたい、幽霊が首を絞められて苦しむなんて、製作者側は大真面目なのかもしれませんが、私は苦笑するしかなかったです。リサ達はいわば成仏できないキリスト教で言うところの煉獄を彷徨っている状態、オリビア一家を救ってけっきょく天国に行けましたとさ、って言われてもこれはハッピーエンドなんでしょうかね?東洋人のこちとらとすれば、死の無常観やもののあわれを感じさせてくれないと、歓談噺にのめり込めないんです。やっぱ西洋人にそんなことを求めるのは間違ってますかね?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-04-21 23:04:40)
17.  ハッピーボイス・キラー 《ネタバレ》 
これ真面目に撮ったら身も蓋もない凄惨なお話しなんだけど、ライアン・レイノルズ、ジェマ・アータートン、アナ・ケンドリックスと言った若手のどちらかというと爽やかスターを起用しているので、ちょっとポップでオフ・ビートに寄せてみました、って感じです。でもネコやイヌや生首が喋るというプロットですから、それだけで誰をキャスティングしようがぶっ飛んでますけどね。レイノルズが勤務する工場がピンクを基調とした田舎の会社とは思えない妙にモダンな色使い、ピンクのフォークリフトがダンスを踊るように動くところなんか笑っちゃいます。でもなんといってもエンドロール、主要登場人物六人が鮮やかな色合いの衣装でバスビー・バークレー風のミュージカル、しかも例のピンクのフォークリフトを操るイエス・キリストまでも登場、このセンスは好きです。スラッシャー・シーンはさほど多くはなかったですけど、第一の殺人で解体した死体が肉片にされて百個近くのタッパーで積み上げられるところは、最近死刑が確定した座間の連続殺人の話しが思い出されて「おえっ」となりました。そういうポップな要素を取っちゃうと、実に正統的なキチ〇イ系サイコキラー映画という感じです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-03-27 22:32:38)
18.  ハングオーバー!!! 最後の反省会 《ネタバレ》 
三作目にしてかなりプロットを変えてくるとは、このシリーズの脚本家はなかなかクレバーですね。冒頭からいきなりMr.チャウの脱獄と来ましたか、このシークエンスは『暴走機関車』のオープニングとそっくりに撮られていて監督の茶目っ気が感じられます。 本作のゲスト・スターはジョン・グッドマン、確認すると黒いダグは「マーシャルに殺されちゃうよ」というセリフを一作目でちゃんと言ってましたね。本作ではチャウの悪事に三人がつきあわされて振り回されるという展開ですが、前作とはちょっと毛色は違っているけど、これはこれでそこそこ面白いんじゃないでしょうか。前作までのネタは律義に踏襲されています、これはファンとしては嬉しいところです。まず動物ネタ、トラ、サル、と来て今回はキリンですか、可哀想な結末でしたがこのブラックさはツボですよね。アランのスピーチ、今回のお葬式での弔辞が今までの最高傑作です。そしてビリー・ジョエルのネタも健在でしたが、今回はスチュの替え歌がなくて残念でした。中盤まで微塵もその可能性が感じられない展開だったのに、まさかの強引さでアランの結婚で幕を閉じさせるとは予想外でした。 今回は見送りなのかと思っていたら、最後にちゃんとパーティをしてくれて期待通りでした、でもこれってバチュラー・パーティじゃなくて花嫁も参加してるから披露宴の二次会か三次会ということなんでしょうかね。そして気になって仕方がないのはスチュのオッパイ、どうしてあんなになっちゃったのか気になって夜も眠れません(笑)
[DVD(字幕)] 6点(2015-05-31 22:47:31)(良:1票)
19.  PARKER/パーカー 《ネタバレ》 
ジェイソン・ステイサムを起用したのが幸か不幸か、“悪党パーカー”ものとは思えない雰囲気の映画に仕上がったかなと思います。でもちょっといつものジェイソン・ステイサムとは違った雰囲気もあるキャラにもなっています。 まず冒頭の襲撃シーンで、変装姿ではありますが、彼の人並みに髪の毛を生やした姿という非常にレアな映像を見ることが出来ます。どんな役でもゴマ塩スキンヘッドと無精ひげで押し通すジェイソンの毛が生えている姿は初めて私は観た感じがします。でもその後のシーンではいつものジェイソンに戻っちゃったですがね(笑)。本作ではいつものように抜群に強いんだけどけっこう弾丸喰らったり刺されたりでもう血まみれジェイソンです。あのナイフを手のひらで受け止めるシーン、もう思いだすだけでゾッとします。 そしてジェニファー・ロペスのバカ女ぶりが強烈です。今までの彼女のイメージを覆すようなキャラに挑戦したというと聞こえがいいですが、単にもうこういう役しか回って来なくなったのかもしれません。この人、10年ぐらい前はアンジェリーナ・ジョリーといい勝負してた様な気がしますが、最近はほんと落ち目ですね。 まあアクション映画として観ればテンポの良いしアクションにキレもあり愉しめる映画だと思います。ただひとつ引っかかるのは、どういう意図でジェイソンがテーブルの裏に拳銃を張り付けたのか、そしてそれをジェニファー・ロペスが見つけるという超ご都合主義ですね。これでマイナス1点とさせていただきます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2014-06-08 22:37:50)
20.  バーニング・オーシャン 《ネタバレ》 
2010年に起きたメキシコ湾原油流失事故の原因となった原油掘削施設の爆発事故の実話映画化。この手の実話災害映画の王道のパターンのストーリーテリングなので既視感が強いが、さすがに爆発炎上の映像は「どうやって撮影したんだろう?」と唸るほどの迫力はある。しかしドラマ性というかマーク・ウォールバーグとカート・ラッセルおよびジョン・マルコヴィッチ以外の登場キャラへの掘り込みが浅くて誰が誰だか判らないのは弱いところです。一般人には馴染みがない石油採掘が重要なテーマなので、その仕組みや工程をもっと判りやすく描いて欲しかったところです。尺も短めで同種の映画に比べてコンパクトにまとめられているのは良いとしても、その分こういった説明不足感がつきまとってしまう逆効果はあります。爆発が起こってからの経過も、施設のそばに停泊している作業船内の対応が同時に見せられますが、その映像がディープ・ホライズン内なのか作業船の対応なのか区別がつきにくいところでした。とかくハリウッド映画はこういう実話ものでもヒーローを誕生させる方向に持ってゆくのが常套手段ですけど、その後に米国史上最悪となった原油流失と事故の責任についてはほとんどスルーしてしまっているのは、なんだかなあと思ってしまいます。いくら死者が11人出て生存者も大変な目に遭ったと言っても、この事故はやはり人災でブリティッシュ・ペトロリアム社や現場の従業員に最大の責任があることは確かなんですからね。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-06 23:34:25)
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