1. BLUE GIANT
《ネタバレ》 <原作未読>随分評判が良いから観てみたが想像を超えてきた。ジャズ、というか音楽自体素人だけど熱がね… 赤を超えて青になるという熱が伝わってきて圧倒された。それはわりと早い段階からそうで、こんなに飛ばして大丈夫かと心配になるほどだったが、ジャズバンドはロックのそれと違いずっと組むものじゃない、というのが伏線になってたんだな。JASS最後の演奏、So Blueでの一夜はクライマックスに相応しかった。低予算ゆえか所々映像に違和感があるのはやはり残念だが、傑作の評に疑いはない。追伸、間宮祥太朗の声の艶はどうなってるんだ。実写のときは全然意識しなかったが、あれはとんでもないぞ。 [映画館(邦画)] 9点(2023-04-13 23:12:26)(良:1票) |
2. 由宇子の天秤
真実を明らかにすることに使命感さえ感じていた主人公が、父の軽率な行動により真実を隠蔽する側に回ってしまう、というお話。人は正直でいたいと思う。しかし大切なものを失う恐怖を前にすると嘘をつき保身に走ってしまう。それが他者の命を危険に晒してでも…という点は共感も同情もしないが、ネット社会で激しさを増す私刑と、その中で生きて生きていかなければならない現代人を善悪は別にして描いた映画であり価値を見出すことができる。社会派映画というと堅苦しく、とっつきにくいイメージを持ってしまうがこれはストーリー展開が巧みで150分を長いと感じさせなかった。信念に基づいて力強く行動してきた由宇子に言わばブーメランが直撃したような状況で、脚本の出来すぎ感を指摘する声もあったようだが、自分にはとても面白かった。そして瀧内公美をはじめとした演者にも拍手を送りたい。由宇子と萌を後部座席から捉えた車内のシーンなんて今思い出しても本当に凄いと思う。河合優実の発見は大きかったなー。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2022-10-24 20:42:19)(良:1票) |
3. キングダム2 遥かなる大地へ
よくぞここまでのものを撮った!と感心しきり。 自分は原作未読だからどの程度再現できているかには言及できないが、日本映画史に残るド迫力の映像だったのは間違いない。正直観る前は一抹の不安もあった。コロナの影響で大規模な中国ロケを断念したうえ、感染対策でエキストラの数も減らした、等の事情をなんとなくは知っていたためだ。しかし杞憂に過ぎなかった。広大な平原で万の軍勢がぶつかり合う… 映像技術の進化によってこのような表現が邦画でも可能になった。亡き黒澤監督にこの映画を見せたらきっと褒めてくれることだろう。そんな映像によって紡がれるのは信が初めて経験する本格的な戦争。数的不利の戦は1と共通だが、2は信が憧れる将軍の凄さ、かっこよさを感じられるのが良いなー。3も必ず映画館で、と思っております。 [映画館(邦画)] 9点(2022-07-15 18:00:53) |
4. すばらしき世界
《ネタバレ》 <原作未読>出所した元ヤクザで殺人犯の男が「今度こそ堅気ぞ」と決意し社会復帰を目指すも、やはり壁にぶち当たる。しかし周囲は手を差し伸べる。身元引受人やケースワーカーは分かるけど、なぜスーパーの店長があんなに良くしてくれるんだ… すばらしき世界とはこういうことか。もちろん「めでたしめでたし」と簡単に終わるわけではない。終盤、三上がどっちの選択をしようと胸が締め付けられるような場面が出てくる。そんな"すばらしくない世界"もちゃんと見せつつ、自分の死に涙を流してくれる人がいる世界はやはりすばらしいのだと監督は最後に言ったような気がする。温かさを内包した脚本に、名優役所広司の憑依したような演技が加わってまた一つ、傑作が世に出た。 [映画館(邦画)] 9点(2021-02-12 10:45:35) |
5. オッペンハイマー
《ネタバレ》 原爆の父オッペンハイマー博士の半生を描いた伝記映画。ユダヤ人である氏は絶対にナチスに先を越されるわけにはいかなかった。恐怖を抱えながら研究・開発に邁進するが、やがてヒトラーが自殺、そしてドイツは降伏した。先を越されるという懸念した事態は避けられたのに、彼は日本に対して核を使用するよう進言する。制空権を奪われ、連日の空襲で焼け野原と化し、もはや瀕死と呼んでいい国に対してだ。その後の世界において主導権を握りたかったアメリカの思惑によるものとされるが、政治家ではないオッペンハイマーがこの主張をしたのは自身の功績を国内外に示したかったからとしか思えない。科学者の性と言うべきか。それでいて、8月6日以降は急に罪悪感に苛まれ、より強力な水素爆弾の開発で競い始めた米ソに対しても、どうにか歯止めをかけられないものかと苦心する。矛盾するようで矛盾しない、実に人間らしい主人公をキリアン・マーフィーが好演。映画的にはだいたいこの辺りがピークかなと思うが、その後の赤狩りを背景とした戦いもアカデミー助演男優賞に輝いたロバート・ダウニー・Jr.の存在感もあり、なかなか見応えがあった。3時間だれることのない優れた出来。アカデミー作品賞も納得の一本だ。 [映画館(字幕)] 8点(2024-04-01 20:46:56) |
6. ゴジラ-1.0
《ネタバレ》 時代を戦後間もない頃に設定した理由について山崎監督は単純にゴジラに似合うという他に、武器も満足に無い中でどうやって立ち向かうかが面白く、また怖さにも繋がると述べた。これが功を奏していて一発目の放射熱線を見たときの絶望感たるや凄まじいものがあった。「これ倒すの無理じゃん…」っていう。ネタバレになってしまうが、この時代設定はもう一つ、命を粗末にしすぎた過去との決別というドラマも生んでいる。生まれ変わった新時代を生きることが英霊への慰めだ。共感できる結末に安堵。さて映像だが、戦闘機が出てくれば「永遠の0」を、戦艦が出てくれば「アルキメデスの大戦」を思い出した。日本のVFXを牽引してきた山崎組の集大成ともいえるような迫力ある映像にお馴染みの音楽や効果音が添えられ「新しいけど懐かしい」そんな感覚に浸れた。米国産ゴジラも全然悪くないけど、本家の誇りを感じさせたマイナスワン、申し分ない出来であった。 [映画館(邦画)] 8点(2023-11-07 18:45:24) |
7. キングダム 運命の炎
《ネタバレ》 <原作未読>相変わらず邦画のレベルを超越した大スケールの戦争が描かれている。王騎の下で修業を積んだ信が100人を率いる将らしく、立派に、頼もしくなっていたのは感慨深い。構成的には紫夏で一旦クライマックスを迎え、いよいよ趙との決戦だが、1、2とは異なり次回作への繋ぎという印象が強いため一映画としての評価は芳しくないかもしない。でも無理に詰め込むよりはこちらの方がベターだろうか。4を楽しみに待つ日々が今日始まった。 [映画館(邦画)] 8点(2023-07-28 23:03:26) |
8. THE FIRST SLAM DUNK
原作未読、TVアニメ版はなんとなく観てはいたが、いつからかなんとなく観なくなってしまった(内容の問題ではなく自分がまだ子供だった一点に尽きると思う)。この映画はスラムダンクファンではない自分が観るべきでものではない、と決めつけていたが、映画から入ってファンになった人もたくさんいると知って心は揺れた。迷ってるうちに終映してしまった「トップガン マーヴェリック」と同じ轍を踏むのか… もう春が来てしまった。決断を…。いざ観てみると、、、面白い! 熱い試合にただただ夢中になっていた。モーションキャプチャを採用した3DCGアニメーションもさほど違和感はなく、その上で日本のアニメらしさを残していたのも良し。そしてネットで使い込まれた名言の数々… 多少ニヤニヤしちゃったけど、これが本家なんだよな~と。大満足の2時間、観て良かった。 [映画館(邦画)] 8点(2023-03-04 21:40:07) |
9. 1秒先の彼女
素敵な映画だった。まずは女性側ヤン・シャオチーの物語から始まる。モテなかった彼女にイケメン彼氏ができてウキウキ。バレンタインデーが失われることは冒頭で明かされているとはいえ、楽しい雰囲気で映画は進んでいく。そして中盤、男性側ウー・グアタイの物語にスイッチする。こちらは切ない話で、台湾の美しい風景が心に染みる。SFとしての面白さもあるし、ラブストーリーとしても見所があって充実の内容。日本でのリメイクも決まっているようだが、メイン二人の人選は難しいなー。女優の方は美人ではいけないし、かといって魅力無しでもいけない。Patty Leeはそこにバッチリ嵌まった人で、このような絶妙なキャスティングもポイント高し。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-29 22:14:34)(良:1票) |
10. ファーザー
名優アンソニー・ホプキンスの演技を楽しもうと思って観始めたら意外にも(失礼か)ストーリーも面白くて大満足。老い、認知症がテーマながら観る者を一気に引き込むエンタメ性を持ち合わせている。「メメント」を思い出したが、主人公視点だからアンソニー(役名)と同じ混乱を体験できるようになっていて、その構成の巧さに舌を巻いた。そして圧巻のパフォーマンスを見せてくれたアンソニー・ホプキンス。83歳でのアカデミー賞受賞おめでとうございます。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-03-31 19:32:11) |
11. ひらいて
めちゃくちゃ面白かった。原作は未読で、予告編と山田杏奈のインタビュー動画を見てから鑑賞。そのインタビューで彼女は主人公・木村愛を「わからない」と言っていた。主演を務めた人でもそうなのだから、と最初から理解や共感を目指さなかったのが良かったのかな。少し引いて眺めれば愛の行動は単純に面白くて目が離せないじゃないか。萩原聖人なんて絶対刺されるんだろうなと思いながら見てたからね。俗にいう悪女モノは過剰になってコメディ化するものもあるが、これは10代の精神的不安定さが前提にあるせいか、そこまではなっておらず好印象。愛を演じた山田杏奈も素晴らしく、空虚な言葉や吐き捨てるようなセリフの数々をちゃんと自分のものにして自然に操っていたように思う。一応ベッドシーンもあったことだし、なんらか賞をあげてほしいなー。美雪役・芋生悠の顔・名前もこれでしっかり覚えた! [映画館(邦画)] 8点(2021-11-01 20:17:10)(良:1票) |
12. 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編
<原作未読、アニメ1期は鑑賞済み>列車での(との)戦いはそこそこだったが、上弦の鬼が現れてからというもの、一段ギアが上がってなんとも凄かった。主人公そっちのけだけど、柱のかっこよさで400億円。心を燃やせ、か。ありがとう煉獄さん。2期も楽しみに待ってます。 [地上波(邦画)] 8点(2021-09-26 00:00:36) |
13. ドロステのはてで僕ら
頭の中で構成は出来ても、実際に撮るとなると相当難しかったのではないかと想像する。原作・脚本の上田氏はじめ、監督やキャスト陣も大変だったろうな。細かく考察すればおかしいところもあるのかもしれないが、そこは御愛敬でいいと思う。そういうゆるい空気感が魅力の一つでもあるはずだから。面白かった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-04-20 21:07:49) |
14. リバー、流れないでよ
口コミで話題になって上映館拡大、、っていう映画はハズレがないなー。期待通り面白かった。低予算かつ86分と短めの映画ではあるが、2分間を1カットで撮るため総テイク数は200に及んだという力作でもある。舞台となった貴船は、とくに雪化粧した姿が美しく、映画に品の良さをプラスしてくれた。機会があれば「ドロステのはてで僕ら」も観てみよう。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-04-09 22:32:43) |
15. ちひろさん
<原作未読>人生はきっと同じ星の人を見つける旅なんだろう。ゆるくてほんわかしていて味わい深い映画であった。この作りはともすると起伏の乏しい退屈な作品になってしまうのだが、そうならなかったのは有村架純のスター性ゆえだろうか? 豊嶋花も可愛いし、子役の男の子も上手だったな。少し沈んだときに観るとまた違った良さを感じるかもしれない、そんな映画。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-02-26 21:45:30) |
16. ゴールデンカムイ
<原作未読、アニメは2期途中まで視聴>映画かTVか配信か、詳しいことは分からないが続編もすでに撮影済みらしいことが最後に明らかになる。つまりこれは「1」で序章に過ぎないのだが、アクションは迫力があり、全体を通してワクワク感があった。舞台は明治時代の北海道。小樽にしてもアイヌのコタン(集落)にしても美術に抜かりが無く、お金をかけるべきところにはしっかりかけているのが伝わってきて好印象。こういう大作を任されるのは今の時代、山崎賢人が鉄板となっている。それに対してはもちろん好意的な声ばかりではないのだが、彼は運動神経が良くアクション適性が高い。さらに本作では体作りも頑張って"不死身の杉元"に説得力を感じさせた。これは大したものだと思う。山田杏奈、玉木宏、舘ひろし、矢本悠馬、勝矢など脇を固める面々も魅力的なキャラクターとして存在していて、広大な北海道で繰り広げられる三つ巴の戦いはとても面白いものになりそうだ。続編待望。 [映画館(邦画)] 7点(2024-01-20 12:02:15) |
17. PERFECT DAYS
監督や出演者から大方想像できることだが、大人の映画だった。より正確に言うなら中高年の映画か。まだその域ではない自分は、例えば三浦友和の「なんにも分からないまま(人生)終わるんだな」みたいなセリフも漠然としていて共感には至らずで、なんだかこの映画の良さを半分も受け取れていないのではないかと感じたりもしたが、観て損をしたとは全然思わない。主人公・平山の小さな幸せも、後悔も、つまりは…笑いたくなったり、泣きたくなったり、そういうのはずっと共存していて、それが人生の真理だと思うわけで、そんな日々をパーフェクトデイズと表現した監督はなかなか心憎い。 [映画館(邦画)] 7点(2023-12-31 10:44:44)(良:1票) |
18. 正欲
<原作未読>水フェチというのは本当にあるのかもしれないけど、それはこの際どうでも良くて、要するに普通とされる性的な欲求とは違うものを持った人たちの物語。桐生×佐々木で言えば嫉妬はするけど、同じ屋根の下で暮らしていても男女の関係にはならないわけだ。そんな二人のベッドシーンは可笑しくも愛おしく、全編通してだが長くアイドル的な存在であった新垣結衣の新しい挑戦でもあった。このとき「いなくならないで」と言った桐生さんが事情聴取の最後で頼んだ伝言は本当に良かった。そこに愛は…(大地真央ではない)やっぱり、ある。全部理解したとは到底言えないけど、心動かされるような感覚はあって満足度はまずまずであった。 [映画館(邦画)] 7点(2023-12-03 19:05:41) |
19. ミステリと言う勿れ
<原作未読、TVシリーズは全話視聴済み>名家の遺産相続争いに"バイト"で関わることになった久能整。相続候補者たちの間で醜い争いが繰り広げられるのかと思いきや、狩集家で代々受け継がれてきたある秘密が物語の核心となってくる。すべての始まりである鬼の話はおどろおどろしく、明治初期~昭和中期くらいだと真実味もギリギリ保たれていてゾクゾクできた。それが現代でも…ってなるとやはり弱くなってしまうが、確信犯の怖さみたいなものは感じられた。映画化でも妙に肩肘張ることなく、ドラマファンを喜ばせることに重点を置いた作り。フジ繋がりでいえば「ガリレオ」シリーズなどがあるが、こちら「ミステリ」も映画化成功例の一つに数えられそうだ。 [映画館(邦画)] 7点(2023-09-17 19:32:59) |
20. 沈黙のパレード
《ネタバレ》 <原作未読>「真夏の方程式」以上「容疑者Xの献身」以下かなと。草薙は真実よりも程よいところに着地させたい。でも湯川はそうじゃない。二人は一時対立することになるが、今回は真実を暴くことで救われる面が多いため、落ち着くところに落ち着いた印象。単体であれば6点だが、TVシリーズから15年に渡る歴史があることでなんとなくありがたみも感じるため7点ということに。また5年後くらいになにか作ってほしいな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2023-08-02 20:03:05) |