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プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  バッド・ジーニアス 危険な天才たち 《ネタバレ》 
貴方は学生時代にカンニングをしたことがありますか?私はあります。でも、カンニングをビジネス化して大金を稼ぐなんて発想は思いつくわけもなく、現代はITテクノロジーがそれを可能にしてしまったわけだけど、どんなことでも金儲けの手段になるなら躊躇しないという世界になってしまったという事なんでしょう。まあこの映画のタイの高校生が使う手段はスマホなんだけど、あくまで情報伝達ツールであるわけで解答をデータに落とし込む手口はまさに悪知恵の極致と言えるもので、こうやって考えるといくらAIが発達しても人間の悪知恵の方が一枚上を行くんじゃないでしょうか。 タイの映画を観たのはたぶんこれが初なんだけど、いやはやいきなり凄い傑作にぶち当たりました。“バンコクの蒼井優”みたいな感じの舌を噛みそうでとても音読みできそうもない名前の主演女優、劇中で喜怒哀楽をほとんど見せない強烈な演技を見せてくれますが、実はファッションモデルで演技経験はゼロというのは驚き。彼女とペアでSTICに挑むバンク君が母子家庭、父子家庭の主人公とは左右対称みたいな環境で、二人を利用して試験突破を図るカップルはブルジョア家庭というところはちょっとありきたりな設定と言えなくもないけど、このバカップルをけっこうコミカルな存在としているのは良かったです。とにかく後半のSTIC試験のシークエンスでのサスペンスとハラハラドキドキは半端ない、まさに手に汗握るとはこういうことですな。たかがカンニングがここまでスリリングなストーリーになるとは、予想外でした。生真面目なキャラと思っていたバンク君が、ラストではふてぶてしいカネの亡者みたいになってしまうのは、自分にはまったく思いもよらない展開でした。邦画なら絶対に二人を恋仲にするラブコメみたいになるのが必定、こういうシビアな幕の閉め方を少しは見習ったらいいのにねえ。でもいちばんいい味出してたのは、リンのお父さんであったことは間違いなしでしょう。名前が出てこないけど、この人とそっくりな俳優が日本にいますよね、誰だったかな?
[CS・衛星(字幕)] 9点(2024-01-22 22:06:59)(良:1票)
2.  T-34 レジェンド・オブ・ウォー 《ネタバレ》 
知る人ぞ知るカルト映画『鬼戦車T-34』のリメイクという感じなんですが、監督曰く『鬼戦車T-34』の原作戯曲がモチーフにした戦中の実話(?)をもとに構想したのでリメイクだとは思っていないとのこと。たしかに『鬼戦車T-34』は不思議な感じがするファンタジーっぽい要素があるのですけど、本作はガチガチの戦車バトルの王道エンタティメントで、“戦争映画”というよりも“戦車映画”と呼ぶのが正しいと思います。 今まであまり良いイメージを持っていなかったロシア製戦争映画もついにここまでのレベルにまで達したかというのが正直な感想で、『フューリー』なんか目じゃない今世紀NO.1の戦車映画だと思います。ストーリー的にはかなり荒唐無稽なのは全然OKなんですけど、五月蠅く言えば細かい粗が無いわけでもない。41年には陸軍大尉だったイエーガーが44年にはSS所属になっている、まあこれは実際にそういう事例があったそうなので(逆パターンは聞いたことがない)目をつぶるにしても、イヴシュキンが7回も脱走を試みたってのはどうでしょうか。ソ連の捕虜なら7回どころか1回脱走しただけで間違いなしで即射殺、そこは英米兵の捕虜とは大違いで、だいいちソ連の捕虜が三年近くも生き延びたってこと自体がレアケースというのが現実だったみたいです。イヴシュキンに与えられたT-34の車内に砲弾が残っていたという設定も、そこまでドイツ軍って間抜け?と笑うしかないです。『鬼戦車T-34』ではもちろん砲弾も銃弾もなく、ただ走り回るだけでしたからね。まあそんな細かいところを吹っ飛ばしてしまうのがイヴシュキンvsイエーガーの漢対漢のガチ戦車決闘、ラストの橋上の一騎打ちはなんか『戦略大作戦』を思い出してしまいました。実物のT-34が動き回るさまは迫力満点だが、狭苦しい車内での描写も小型カメラを駆使してきっちり描いています。そして砲弾が掠るときのまるで釣り鐘の中に閉じ込められたような衝撃、これも『Uボート』の爆雷攻撃以来の音響効果です。ドイツ戦車もレプリカ+CGですが拘りが凄くて実写にしか見えない、パンサー戦車には末期ドイツ戦車特有のコーティングもきっちり再現されています。本当に最近のロシア映画のCG技術の進歩はまさにおそロシアですな。 ラストも大抵の独ソ戦映画と異なり爽やかなハッピーエンドなのもスカッとして心地良かったと思います。本作には完全版とDC版というヴァージョンもあるそうなので、機会があれば是非観ておきたいです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-11-10 21:57:09)(良:1票)
3.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 
屈辱の『サンダードーム』から30年、突如としてマックス・ロカタンスキーが我々の前に帰ってきた!老いぼれてしまったメル・ギブソンは当然使えないとして、二代目マックスを拝命したのがトム・ハーディ、まるでこの人はマックスを演じるために俳優を職業にしていたかのような馴染み具合です。冒頭でいきなり愛車を分捕られて泣き別れ、鉄格子のマスクをつけられて人間輸血袋にされるなどはけっこう今までのマックス像を塗り替えるような展開でした。そしてシリーズの特色だった女気のなさもシャリーズ・セロンや美形アマゾネス(?)を活躍させることでついに汚名返上となったわけです。でもそんな俳優たちの演技に目を向ける余裕がないほどの驚異的なカット数、映像の放つ情報量はすさまじいレベルに達しています。もちろんCGのヘルプもありますが異形のバギー&タンクローリー&バイクの実車を使った迫力は息をのむほどで、そもそもこの映画の三分の二は疾走シーンなんじゃないかな。マックスにフラッシュバックする過去やフュリオサが片腕を喪失した事情など、細かいことは敢えて語らないストーリーテリングも好きです。 ほんとに「行って帰ってくる」だけの単純なお話しなんですがこれは『2』以降に共通したコンセプトで、それを35年かけてここまで昇華させたジョージ・ミラーは大した奴です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-03-18 21:48:39)(良:1票)
4.  二郎は鮨の夢を見る 《ネタバレ》 
十数年前ですが、ボスのお供で一度だけ数寄屋橋の次郎に行ったことがありました。もう衝撃でしたね、今まで自分が食べてきたお寿司はいったい何だったんだろうか?まだミシュラン東京版が出る前でしたが、このお爺さんのどこからこんな味を創作するパワーがあるんだろう、としげしげと次郎さんの顔を見つめてしまいました。 お寿司って考えれば不思議な食べ物ですよね。子供のころは、寿司は酸っぱいご飯の上に刺身をのっけたものだと思っていました。寿司をトコトン因数分解してゆけばあながち間違っている定義ではないかもしれません。でもそれがあの芳醇な料理にまで昇華するんだから、ほんとに不思議なことです。 もちろん世界一有名な日本人料理人である小野次郎がこの映画の主人公ですけど、実はともに店を切り盛りしている長男氏がダブル・センターとして重要な役割を果たしていることを見事に喝破しています。彼は次郎さん亡きあとに店を継がないといけない、いわば日本で最もきつい重圧を背負った一人なんじゃないでしょうか。その彼が店のいわばコンサート・マスターであると見抜いた監督の眼力は素晴らしいし、背後に流れるクラシック音楽がこの視点とよく調和していました。そして登場する築地の仲買人や米屋さんなどの取引先が、みんなほれぼれするようなプロぞろいなことにも感銘を受けます。次郎さんも、とても80歳を越えているとは思えない滑舌と豊かな表情なのが観ていて愉しいです。 米国人監督の日本料理と職人に対する深いリスペクトが伝わる一編でした。きっとホワイトハウスのスタッフも、オバマ大統領が来日する前にこの映画を観て研究したんだろうな。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 9点(2017-08-17 01:05:21)
5.  シン・ゴジラ 《ネタバレ》 
そうだったんです、ゴジラをリブートする映画作家は日本では庵野秀明しかいなかったんですよ。庵野にゴジラを撮らせる決断を下した東宝には、最大級の賛辞を贈りたいです。そしてたった15億円でこんだけの作品が製作できたってことも、ある意味で日本映画界の偉業だと思います。だって15億なんておカネは、ハリウッドではブラピやトム・クルーズなんかの一人かせいぜい二人分のギャラに過ぎないんですよ。ハリウッドでこれだけの大作を撮ったら、100億円単位の予算になることは必定です。エンドタイトルに延々と流れる俳優たちの名前を観ていると、この人たちのギャラははハリウッドの何分の一なんだろう、と製作費から逆算したらなんか可哀想になってきました。 平成の世にゴジラを蘇らせたらゴジラは何を暗喩する存在になるだろうかと夢想したことがありましたが、この庵野ゴジラはわたくしのイメージを超えるメタファーとして登場したと思います。原発事故や自然災害の象徴とは誰しも考えることですが、このゴジラは日本という国が身をさらす国際情勢をも象徴していた気がします。そういう意味ではまさに究極のシミュレーション映画だとも感じました。ただひとつ不満だったのは、この災害が引き起こした人的損害については映像でもセリフにも言及がなかったことで、どれだけの人命が犠牲になるのかもシミュレートしてほしかったところです。でもいくら庵野にまかせたといってもさすがに東宝もそれはあまりに生々しすぎて、譲れなかったのかもしれません。 「怪獣は皇居を破壊しない」という有名な不文律通り、今回もゴジラは東京駅八重洲口どまりで皇居のある丸の内側には足を踏み入れませんでした。「皇室のことに触れないのではシミュレーションにならない」という意見もあるみたいですけど、私はこれは日本の怪獣映画の文化だし構わないと思っています。それよりも心配(?)なのは独特な日本の政治意思決定がこれでもかと描かれているので、はたして海外の観客に理解されるんだろうかということです。海外上映では字幕付きか吹き替えでしょうけど、あの登場人物たちの緊迫した状況での猛烈に早口なセリフの洪水は、日本人でも圧倒されてしまいます。でもこの監督独特のブラックなユーモアは私にはツボで、途中から表舞台に登場する羽目になった農林水産大臣はおかしくてしょうがなかったです。邦画の大作や特撮映画にはこのユーモアのセンスが欠落していることが常々不満だったので、ここは大変満足でした。 正直これからまたシリーズ化することにはすごく抵抗がありますけど、これで日本の特撮映画に新たな地平が拓けたことは間違いないでしょう。自分でもなんかヘンなんですけど、ゴジラが放射能を初めてまき散らすシーンではあまりの荘厳さに涙がこぼれてしまいました。
[映画館(邦画)] 9点(2016-09-01 20:58:45)(良:3票)
6.  セッション 《ネタバレ》 
ジャズってなんかプレイヤーたちが感性に導かれるままにフリーダムに演奏するものだと思っていましたら、ビッグバンドになるとまるで交響楽団みたいにガチガチの指揮になるんですね、ほんと知らなかった。このフレッチャーという男は鬼教師なんて次元を超越してエゴの塊みたいな悪漢というレベルです。指揮者や映画監督などの巨匠たちは、黒澤明や溝口健二の例を出すまでもなく自分が芸術と信じるものに対しては絶対妥協しないものですが、この映画でのフレッチャーにはストイックさと同時に人間としての嫌らしさが前面に出ていて実にリアルなキャラです。ニーマンを三時間も早く呼びだすなんてもう単なるイジワルとしか思えないし、教え子の死を伝えるにしても自分に都合が悪いとなると自殺を交通事故だと偽るし、実際こういう人よくいるんですよ。この二人は、良く考えると物語の中盤からはもはや師弟ですら無くなってるんです。フレッチャーは復讐のためにニーマンをフェスに呼ぶし、ニーマンの方はもはやスカウトされるという目的などどっかに吹っ飛ばしてフレッチャーにひと泡吹かせるためだけにドラムリズムを機関銃みたいに浴びせかける。これほどムダを削ぎ落して男同士の対決というかケンカを見せてくれる映画というのも珍しいです。ニーマンという男の描き方も、自意識過剰だし酷い仕打ちをした元カノに自分が苦境に落ちるとすり寄ったり、この平凡な弱さがとてもリアルです。 そして何よりも気に入ったのが、観客の総立ち喝采なんてクサイものをいっさい見せずあのタイミングで暗転させる閉め方です。なにも語ってはいないけど、きっと元カノは観に来なかったろうし二人は決して和解はしなかったんだろうと確信しています。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2016-03-15 23:18:04)(良:4票)
7.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
自分にはその趣味は無いんですけど、それにしてもホモが主人公の映画ってなんでこんなに心を打たれる名作が多いんでしょうかね。製作したマシーンに早世した初恋の少年の名前“クリストファー”と名づけるなんて泣かされてしまいます。もっともこれは史実ではなく脚本家の創作だそうです、でもGJ! オスカー脚色賞をゲットした脚本もいいけど、やはりここはベディクト・カンバーバッチの好演が素晴らしいと褒めるべきで、もう彼には名優の風格さえ感じます。エニグマ解読の話は本で読んだことはありますが数学的なことはさっぱり理解不能だったんですが、そういう数学的な要素は無視してひたすらチューリングのマシーンが解読してゆくところに絞った見せかたは視覚的に判り易くなっていて良かったですね。解読に成功するところをラストに持ってくるんじゃなく、その後の秘密保持の苦悩にも重点が置かれているところもなかなか誠実な観せかただと思います。史実でもこの“ウルトラ”情報で目標都市を事前に知っていたにも関わらず、チャーチルはコヴェントリー空襲(大戦中一夜で最大の死者が出た爆撃)の際には何の情報も軍や自治体に伝えなかったそうです。だから「誰が死んで誰が生き残るか」を神のように決めてしまったと苦悩するべきなのは、本当はチューリング達じゃなくて政治家じゃなきゃおかしいんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2016-02-24 23:05:59)
8.  アメリカン・ハッスル 《ネタバレ》 
この映画を観た人は誰しもが納得するところだと思いますが、ワン・シーンだけなんですがデ・ニーロが登場してから緊張感が高まりテンポがすごく良くなるんです。そこまではどちらかと言うとモタモタした展開だっただけに、これは監督が狙ったのか映画の神に愛されているデ・ニーロだからこそ成し得る御業なのか、面白いところです。そしてクリスチャン・ベイル、あそこまで醜く肉体破壊してまで役作りに励む役者魂は、彼こそデ・ニーロの後継者たり得る人物なのかもしれません。良く観察してみると、この映画での彼の演技はなんか若いころのデ・ニーロを彷彿させるものがありました。 終わってみれば主要キャラはみなルーザー(負け)でカタルシスのかけらもないし、映画の登場人物に感情移入出来ることを求める人には耐えられないお話しでしょうね。でも俳優の演技を愉しむという観点からは、主要キャラ四人が全員オスカー・ノミネートというのも納得の逸品だと思います。
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-03 23:45:10)(良:2票)
9.  ウルフ・オブ・ウォールストリート 《ネタバレ》 
奥さんから「お願いだから我が子と観れる映画を撮って」と苦言を呈されて製作した『ヒューゴの不思議な発明』の次がこれだから、スコセッシはひとかけらも改心してないなと安心しました(笑)。70歳を超えてこんな脂ぎったコテコテの映画を撮れる映画作家なんて、世界中捜してもやはりスコセッシしかいないんとちゃいますか。これはコンビを組んでるディカプリオの影響が大きいかもしれません。彼も全てのセリフに“Fuck”が付いてるんじゃないかと思う様なキャラを嬉々として演じてますからねえ。 さて、同時期に同じ業界に身を置いたことのある立場から言わせていただくと、株屋の世界はウォール街も兜町も本質は一緒なんだと感じます。もちろんドラッグなんて眼にしませんでしたが、場中に立って電話する営業マンの姿はまるっきり自分の経験と一緒です。金融の世界は本質的に体育会系と言うかブラックな体質がどうしてもつきまとう場所で、スコセッシには得意としてきたマフィアの世界から無理なく置き換えることが出来たんじゃないでしょうか。どっちの業界も感情移入がとうてい出来ない様な人間のクズの集まりだと言ってる様な気がします。 ラストのディカプリオの講演を観て、これはレッドフォードの『クイズショウ』のエンドタイトルへのオマージュだと感じました。そういやスコセッシ自身も『クイズショウ』に演技者として出演してましたし、映画監督のロブ・ライナーやスパイク・ジョーンズを俳優として使っているところも似てますしね。あとベルフォートの部下のアジア系の人、本人じゃないかと思うほど日本の白竜に似ていて驚きました(笑)。
[DVD(字幕)] 9点(2014-08-10 20:14:41)(笑:1票) (良:1票)
10.  ソーシャル・ネットワーク 《ネタバレ》 
若き天才起業家のサクセス・ストーリーだと思いきや、初っ端から最後までドロドロした人間関係のもつれと裁判沙汰に終始する映画だったとは意外でした。マーク・ザッカ―バーグ、オタクの中でもとても友達にはなり得ないタイプで、ここまで嫌らしく描かれてご本人も良くOKを出したものですね。この映画の製作に当たってはザッカ―バーグや訴訟相手の弁護士たちが入念にチェックしたそうですから、まあ納得はしてるんでしょうね。フェイスブックというコンテンツは革新的な技術というよりもWEBをパーソナルなコミュニケーションに結び付けた着眼点の勝利だったと私は思うので、友達が2~3人しかいなさそうなザッカ―バーグの様な人間が生みだしたと言うのは神さまの悪戯でしょうか。東部のアイヴィー・リーグの学生たちで盛り上がったフェイスブックが、魑魅魍魎の跋扈するシリコン・ヴァレーで変質してゆく過程はなかなか興味深かったです。ずっと猛烈な早口で通すジェシー・アイゼンバーグの鬼気迫る演技も良かったです。ラストに流れるビートルズの"Baby, You're A Rich Man"がけっこうきつい皮肉になっていました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-02-24 22:59:49)(良:1票)
11.  ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 
ジャンゴとDr.シュルツがキャンディ・ランドに着いてストーリーの本筋が始まるまで1時間超、でも全然尺の長さが気にならないというのはたいしたものです。実際のところ自分が今までに観たことのある上映時間3時間前後の映画で、これほど一瞬たりとも退屈させられることがなかったのは初めてです。緊張感のない会話で笑いを獲ろうとするタランティーノの得意技もビッグ・ダディ一味が覆面のことでウダウダするシーンだけで、全篇堂々たる撮りっぷりでもはや巨匠の貫禄すら感じられます。 クリストフ・ヴァルツのために書かれた脚本の様なものなので、もうこのおっさんのダンディズムと言うかカッコよさには痺れちゃいまいした。タランティーノは前作でナチスというかドイツ人をさんざんコケにして痛ぶったので、Dr.シュルツでヴァルツにはその罪滅ぼしをしてあげたのかな。何と言っても異様な迫力があったのはサミュエル・L・ジャクソンで、あの目つきでガンつけられたら間違いなくちびっちゃいます。“Mother Fucker !”なんて卑語が19世紀に有ったとは思えないけど、やっぱ“Mother Fucker !”と叫ばないサミュエルなんてクリープのないコーヒーみたい(古くてすみません)であり得ません。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-19 21:59:41)
12.  舞妓はレディ 《ネタバレ》 
舞台となる下八軒は京都五花街の一つである上七軒のもじりですね。つまり架空の花街なんですが、ファンタジーを基調としたミュージカルですからセットで撮影されるミュージカルとしては完全に人工的な夢世界の設定でもあるわけです。周防正行の今までの作品には、劇中でのバック・ミュージックの使い方のセンスにはミュージカル風味が感じられていたので、ついにミュージカル映画を手掛けたということには驚きはあまりなかったが、タイトルが『マイ・フェア・レデイ』のダジャレとはびっくり。内容もまさにイライザとヒギンズ教授のストーリーを京都の花街の舞妓に兌換するというアイデアはなかなか奇抜ですな。「京都の雨はたいがい盆地に降る」なんて『マイ・フェア・レデイ』の“スペインの雨”をパロったような歌もありましたが、だんだんと独自の世界線が展開されていたと思います。やはりこの映画は800人の中からオーデイションを突破した上白石萌音の存在無くして成立しないでしょう。その後に紅白歌合戦にも出場したぐらい歌手としても活躍していますけど、その歌唱力は半端ありません。あのテーマソングは、初めて聞いた時から頭から離れない中毒性があります。長谷川博己を始め他の出演者の皆さんもほんとお上手、もっとも高嶋政宏だけはほとんど怪演でしたけどね(笑)。まだ芸能界デビューして間がない頃の上白石は仕込み時代の春子の野暮ったさが似合っていたけど、舞妓になってからの可憐さは思わず瞠目してしまいました、まさしくアイドル誕生です。こういう観る者を愉しませてくれるミュージカル映画がもっと日本映画には必要なんじゃないでしょうか。 YouTubeにアップされている京都花街の動画を観ると、「ここは本当に日本なのか?」と絶句するぐらい外国人観光客であふれかえっています。みんな舞妓や芸妓が現れると群がって写真を撮りまくり、でも彼女らは誰も視界に入っていないかの様に凛とした歩みでお茶屋に入ってゆきます。今や彼女らはファッションモデルで、京都の小路はランナウェイなんだなと感じた次第です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-11-15 23:42:14)
13.  オフィサー・アンド・スパイ 《ネタバレ》 
時は1894年、日本では日清戦争が勃発した明治27年、フランス参謀本部はドイツへの機密情報漏洩を捜査し、ユダヤ系将校アルフレッド・ドレフュス大尉を逮捕する。普仏戦争後の第三共和政のフランスでは “ドイツ憎し”の国民感情が強く、政治情勢も反動的な勢力が台頭して反ユダヤ主義も声高に叫ばれる時代だった。大した証拠もないままに軍法会議はドレフュスを有罪と断罪し、あのパピヨンで有名な南米の孤島・悪魔島での終身刑を宣告した。しかし諜報部のピカール中佐はドレフュスが無実である決定的な証拠をつかんで上層部に訴えかけるが、軍の威信に拘る首脳は黙殺してピカールを逮捕する始末。だがこのスキャンダルは世間に漏れて文豪エミール・ゾラや後の首相クレマンソーが立ち上がって糾弾し、フランス世論を二分する大事件になってゆく。 世界史の教科書には必ず載っているドレフュス事件を、定期的にユダヤ人迫害がテーマの作品を撮るロマン・ポランスキーが監督しています。冒頭で有名なドレフュスの軍位剥奪の儀式が描かれますが、本作はあくまでピカール中佐=ジャン・デュジャルダンが中心のストーリーテリングで進みます。彼は根っこには反ユダヤ感情を持ち友人の妻と不倫関係を続ける(でも独身なのに結婚指輪をつけている!相当な遊び人であることが暗示されている)ある意味俗っぽい男でもある。こんな彼が事件の真相に気づいてゆく前半は、とくに良質なミステリーのようで面白い。映像も重厚で、奥行きに拘った構図が絵画的で美しさが感じられます。登場人物は将校軍人が圧倒的に多いのですが、彼らのコスチュームの赤いズボン=パンタロン・ルージュは印象的ですね。第一次世界大戦までこんな派手な色使いのままでしたから、そりゃあ機関銃の良い的になりますよ。後半にはゾラも登場してクレマンソーの新聞に掲載された「私は弾劾する!(J'accuse本作の原題)」のエピソードもありますが、総じて冷静で淡々とした語り口なのもポランスキーらしいです。 物語はドレフュスの再審が行われるけど判決は覆らず減刑にとどまり、恩赦を受けるところまでで終わります。字幕で1906年にやっと判決が取り消されて軍に復帰したことが記されます。そして陸軍大臣に出世したピカールのもとにドレフュスが訪ねてくるところで幕を閉じますが、そこで彼はピカールに自分の昇進が不公平だと不満をぶつけるんです。特別扱いは政治情勢からも出来ないと拒否するのですが、ここでは決してただの善人ではなくてプライドと野心を持った狷介な人物としてのドレフュスと、言葉には出さないけど根っこにある反ユダヤ感情が湧きだしてくるピカールが観られて、なんか虚無感すらある良いラストだったなと思いました。同じ法廷劇でも、ハリウッド映画とはえらい違いだなと感服する次第です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-05-19 22:42:36)
14.  ハッピー・デス・デイ 2U 《ネタバレ》 
前作がホラー+ラブコメという図式だったのに対して、この続編では完全にホラー要素がSFに置き換わっております。タイムループならぬ次元ループとも呼ぶべき現象、これを全人類の99%が理解できない量子力学という呪文を使って説明してしまう荒業、ちょっと強引すぎるきらいはあるけど何となく納得させてくれたような気がします。前作でツリーのループで毎回冒頭にだけ登場していたアジア系のライアン君、実は彼は卒業研究で量子反応炉なるトンデモない装置を開発してしまう天才的な学生で、本作ではとくに前半で大活躍を見せてくれるところが見どころです。まさかのライアン君のループ地獄が展開してこれも仰天の二人のライアンが出現して量子反応炉が暴発、なんとツリーの方がやっとの思いで抜け出したはずのループ状態に逆戻り。正直この展開には観ていてほんとにびっくりさせられました、まるでこの映画は前作と同時に脚本が書かれて撮影したんじゃないかと思うぐらいです。明らかにこの後は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを意識した展開になるのですが、前作公開後にこの展開を構想出来る脚本家は、類まれなる才能の持ち主であることは確かです。実際には本作が期待ほどヒットしなかったので構想は萎んでしまったみたいですけど、さらにシリーズ化するプランはあるみたいですね。実現すれば、まさに21世紀の『バック…』シリーズときっと評価されることでしょう。 それにしても、ツリーとカーターおよびライアンを演じた俳優たちは、この二作で何度ほとんど同じような演技(ツリーが目覚めてカーターの部屋を飛び出すまでのシークエンス)をさせられたことでしょうかね、編集マジックで軽減されているかもしれないけど、彼らにはまさにループ地獄ですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-24 22:58:26)(良:1票)
15.  ジョン・ウィック:パラベラム 《ネタバレ》 
シリーズも三作目となると大抵は息切れが目立ってくるものですが、さすが『ジョン・ウィック』、予想を裏切るパワー・アップぶりでした。前作のエンド・シーンからほぼ繋がる形で物語がスタート、第一作でジョンが暴れ出してから本作が始まるまでが実は一週間の出来事だったということが明示されますが、いくら何でも一週間で人殺し過ぎでしょ、ジョン・ウィックさん!追われる身の辛さで、アンジェリカ・ヒューストンのもとにたどり着くまでひたすら戦いながら逃げるばかり、でも馬に乗ってバイクとチェイスするなんてこれは斬新すぎます。今回新たに登場するキャラはそれぞれにキャラ立ちが凄くて、その中でもゼロさんが率いる寿司職人軍団がやっぱ最高でした。ホテルでいきなりジョンのわきに座ってきて「ファンです」と告るところなんて、思わずのけ反ってしまいました。ラストの鏡の間みたいなところでの寿司職人軍団との決戦は、やはり『燃えよドラゴン』のオマージュなんでしょうね。ゼロと決着つける前の一番弟子・二番弟子との闘いですが、二番弟子はあのヤヤン・ルヒアンなんですよ、なんと贅沢なことか!この二人もやっとこさでねじ伏せますが、止めを刺さずに「また会おう」と爽やかに去ってゆくジョン・ウィック、シリーズ中で敵を殺さなかった珍しいケースです(一作目のロシアン・マフィアのボス以来かな)。 今回で主席連合なるものの実態がまた明確になってきましたが、この組織のトップはあのベドウィン族の首長みたいな人物でいいのかな?でも「主席のうえにいる人」というジョンのセリフもあるし、謎が深まるばかりです。ジョンがエンコ詰めまでして再び主席連合への忠誠を誓うという展開には「へ?」となりましたが、ウィンストンに迫られて誓いを反故にしちゃう展開にもびっくり。そしてそのウィンストンまでもが最後に主席連合に寝返ってジョンを裏切るとは、これぞ二転三転のジェット・コースター状態です。こうなってくると、主席連合に最後まで突っ張ってなめし斬りにされてもへこたれなかったバワリー・キング=ローレンス・フィッシュバーンがじつはいちばんカッコいいキャラだったってことになりますね(笑)。 一目瞭然ですが、このシリーズはまだまだ続くみたいです。次回作は、あの中途半端な退場からするとハル・ベリーの大暴れが期待できそうです、ジョン・ウィックと愛犬を殺された同志でね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-06-12 22:28:06)
16.  ジョン・ウィック:チャプター2 《ネタバレ》 
前作の異世界の出来事のような不思議な世界観は後退してNYやローマと言った具体的な舞台設定が明確にされてますけど、ジョン・ウィックが属する世界的な犯罪ネットワークについてはさらにスケールアップした描かれ方になりました。どうもこのネットワークは“コンチネンタル”と呼ばれているみたいで、NYにある不思議なホテルはローマやたぶん世界各国に存在して、そこには銃のコンシェルジュや防弾スーツのテーラーなどが稼業のお手伝いをしてくれるみたいです。ジョンはそのネットワークの有力者と誓印という恐ろしい誓いを交わしてとりあえず引退することができた。まあだいたい以上のような事が判ってきました。 今作の敵はマフィアより凶暴なカモッラでございます。今回のジョン・ウィックはいきなり愛車をスクラップにされ(まあ自分でやったんですけどね)家は焼かれてホームレス状態。でも、あいかわらず殺しにかけてはブギーマンで、前作で語られていた伝説の“鉛筆殺法”まで披露してくれます。キアヌ・リーヴスのガンアクションにはマーシャル・アーツ的なスタイルが盛り込まれていて、監督がスタント・コーディネーター出身ということが活かされています。随所でセリフのキーワードだけがテロップで表示されるスタイルは面白かったですね。キアヌのアクションは相変わらず満身創痍になるガメラ・スタイルで、だいたい上映時間の三分の二は血糊が付いた顔で通したってのは、ある意味で凄い。キーパーソンとなるキャラはみなあっさりとした最期でしたが、ジアナやカシアンの死にざまにはちょっと意表を突かれてしまいました。でも唖者の女性ボディガードのキャラだけは、『ザ・レイド GOKUDO』のハンマー・ガールをパクったんじゃないの(笑)。 いい意味で型にはまらず予想を外してくるストーリー展開は、次作『パラベラム』にも期待が持てちゃいます、私このシリーズに嵌ってしまったみたいです。やっぱジョン・ウィックは21世紀最強のガンファイターですね(今のところは)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-03-21 22:44:56)
17.  キューブリックに魅せられた男
「レオンは蛾だ、火に魅入られて自ら羽根を燃やしてしまう蛾。キューブリックはまぶしく輝く光だった。その強い誘惑に抗えずレオンは己が身を燃やしてしまった。」これは冒頭を飾るナレーションで、稀代の天才スタンリー・キューブリックに人生を捧げた男の物語です。 主人公はレオン・ヴィタリ、もとは俳優で『バリー・リンドン』でマリサ・ベレンソンの息子ブリンドン子爵を演じた人です。実はこれが初のキューブリック映画出演で、それまでの俳優としてのキャリアを捨てて撮影後にキューブリックのスタッフに志願しました。彼のパスポートに自ら記した職業は原題でもある“Film Worker”つまり“映画仕事人”で、25年間キューブリックのもとで編集・照明・キャスティングなどすべての製作業務で助手を勤め、出演者への演技指導まで任されていました。あの暴君で知られるキューブリックですからその仕事の過酷さは推して知るべし、キューブリックと同じ屋敷で過ごして24時間一週間休みなし、普通の人ならすぐに逃げ出すこと間違いなしです。でもそのおかげでキューブリック作品に関してはDNAレベルと言っても過言ではないほど精通し、キューブリックの急死後ポスト・プロダクションが残っていた『アイズ・ワイド・シャット』を彼の意図通りに完成させました。 これは天才に魅了されるとその人の人生がどの様に変貌してしまうのかという驚異の物語です。そして『バリー・リンドン』以降のキューブリック映画製作の舞台裏が垣間見れるところも貴重です。キューブリックと言えばポスターやパブリッシングについてもうるさく口を出すことで有名ですが、実は彼の意を汲んだレオンの仕事だったというのはちょっとサプライズでした。逆にキューブリックが映画会社やプロデューサーへ本人の承諾を得ずにレオンの名前で抗議や苦情の書簡を送っていたというのは、笑えないですがいかにもキューブリックらしい話しです。そういう汚れ役も引き受けていたので業界ではレオンはけっこう嫌われていたそうで、キューブリックの回顧展が開催されたときは企画にはノータッチでレセプションにも招待すらされなかったというのには同情してしまいます。 レオン・ヴィタリという人は、資金さえあればそれこそ一人で製作・監督・撮影・編集などをこなせるスキルの持ち主なのに、キューブリックの死後も映画製作は手掛けずにまるでキューブリック博物館の学芸員みたいに彼の偉業の数々をメンテナンスし守っているのには、もう崇敬するしかありません。人格には問題あり、と言われているキューブリックですが、一人でもこのような理解者を育てることができたというのは幸せだったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-10-19 22:02:53)(良:1票)
18.  ディストピア パンドラの少女 《ネタバレ》 
迂闊にもゾンビものとは予想だにせず鑑賞、だって邦題は“ディストピア”ですしね、でも内容には“ディストピア”要素は皆無だったし配給会社は“ディストピア”の意味が判ってるのかね? まあ戯言はさておき、これはなかなかの良作で拾い物でした。この作品のゾンビは劇中ではハングリーズと呼ばれていますが、喰いものを見つけたらシティマラソンの群衆ランナーみたいに群れを成してしかも全速力、そうじゃないときは路外でやはり群れになって立ったままお眠りとけっこうユニークです。メラニーたち第二世代が小学校低学年ぐらいの年齢なので、このハングリーズ化現象が始まってからは十年ぐらいは経っているという設定みたいなので、ハングリーズたちも食糧・生肉が不足してきたので新陳代謝を減らして省エネ生活なのかもしれません。これは色んな生物で観察されることで、けっこうリアルで考えられた設定なのかもしれません。主人公メラニーも本能が目覚めると猫や鳥まで貪っちゃう、人間以外を食するゾンビって初めて観た気がします。 冒頭の女教師の話にパンドラの箱が出てきますが、実は箱じゃなくて”パンドラの実“だったというオチにつながり、その実を世界に解き放つのがメラニーだったという結末はかなり強烈です。メラニーという少女、語る言葉はともかくとしても表情に喜怒哀楽が全くないので、本心はどうなのか読めずに不気味です。普通の人間と比してもずば抜けた知能を持ち、軍曹の動作を見てるだけで拳銃の操作を理解してしまうところなんか恐いですよ。 ラストは冒頭とはシメントリーな絵面で、女教師が外気から遮断された箱から第二世代の子供ハングリーズたちに授業するという皮肉のきいた幕引きです。でもラス前のカットで涙を流しているところからも、いくら元気なテンションでもそれは決して彼女が望んだ結末ではなかったと言えるでしょう。その子供たちの中で生活指導係のように振舞っているメラニーを見ていると、ふと『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のシーザーを思い出してしまいました。彼女は人類亡き後の地球をハングリーズの指導者となって支配することを目指しているのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-09-10 22:46:39)
19.  スリー・ビルボード 《ネタバレ》 
アメリカ映画のジャンルの中で、私がもっとも怖いと思っているのは田舎町を舞台としたいわゆるスモールタウンものと呼ばれるカテゴリーでして、とくに南部が舞台となるとまたひとしおです。生まれた町や地域から一歩も外へ出てゆかず生涯を終えるような人がざらにいるお国ですから、みんな顔見知りで濃厚な人間関係でドロドロな生活なんて絶対に経験したくないもんです。 「娘を殺されてるのに捜査は行き詰まり、それでも執念で犯人を追いかける母親」となると我が国では拉致被害者の親族者たちがどうしてもイメージされますが、フランシス・マクドーマンドが演じる母親はけっこう粗野でがさつで独善的な感情移入できそうもないキャラです。日本と違って監視カメラなんてどこにもなさそうなド田舎で、遺留品も目撃者もいなかったら捜査が難航するのは至極当然。そしてまだ事件から9カ月しかたってないんだから、ウディ・ハレルソン署長があそこまで非難されるのはちょっと可哀そうな感じです。でもこのハレルソンが良いキャラなんですなあ、途中退場しちゃうけど本作で唯一最期まで感情移入できたキャラでした。サム・ロックウェルのキャラは「こんな警官、いるかあ?」と絶句しちゃうほどの凄まじさ、でも最近の米国での騒動からすると割とリアルなのかもしれません。この暴力警官がいい歳してママと二人暮らし、やっぱ彼はゲイだったということなんでしょうね。マクドーマンドが火炎瓶投げ込んだり、ロックウェルが犯人らしき会話をバーで聴くなど後半は思いもよらぬ展開だったかと思います。でも考えてみるとマクドーマンドもロックウェルもハレルソンの手紙を読んでからは、ガラッと迄もいかないにしても明らかに思考に変化が現れてきます。普通の映画ならロックウェルが採取したDNAが犯人逮捕につながるとかのカタルシスが待っているものですが、事件解決が何も見えないラストの展開なのに二人の心情の変化がカタルシスにつながるというのはこの脚本の妙味でしょう。でも実行したかは観客の想像に委ねられていますが、アイダホにDNAが一致しなかった男を殺しに行くラストだけはなんかしっくりこないんですね。実はアイダホの男が真犯人で軍が隠ぺい工作しているという穿った観方もあるようですが、うーん、それはちょっと飛躍気味だと思うしそうなると全く別のお話しになっちゃいませんかね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-09-04 22:31:35)
20.  ロケットマン 《ネタバレ》 
エルトン・ジョンは現代のモーツァルトだと個人的に評価している自分としては、かなり期待して鑑賞。だってその神童ぶりや恵まれなかった肉親関係、そして奇抜なファッションや言動には両者に共通点が多い気がするんですけど。初めてラジオのヒットチャートで“Saturday Night's Alright”を聴いたときの衝撃は今でも忘れられません。 ミュージカル映画と聞いていましたが、これは明らかに音楽劇風味が強い人間ドラマですね。監督がデクスチャー・フレッチャー、彼はトラブル後にブライアン・シンガーから監督を引き継いで『ボヘミアン・ラプソディー』を完成させていて、どちらも主人公がホモセクシュアルであるというのが興味深いですね。この人は芸歴の長い俳優で『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルス』のソープ役なんかが有名。その長い映画人生を活かして監督業にも進出、今後この分野でも活躍するんじゃないでしょうか。子役時代には『ダウンタウン物語』でジョデイ・フォスターとも共演していて、遅ればせながらジョデイと同じ道に進もうとしているのは感慨深いです。 しかし驚嘆するのは、現役の大スターが製作総指揮まで務めて自己の人生とその恥部をさらけ出す映画を製作したってことでしょう。もちろん全部が全部というわけではなくオブラートに包んだようなところもあったでしょうが、ホモセクシュアル描写を含めて『ボヘミアン・ラプソディー』なんかよりはるかに綺麗ごとを排したストーリーテリングには引き込まれました。これはタロン・エガートンの熱演が効いていると思いますが、オスカーで彼がノミネートすらされなかったのは納得できません。歌唱力も抜群でした、それにしても欧米の俳優たちはどうしてこんなに音楽スキルが高い人が多いんでしょうかね? 気になったところとしては、ジョン・リードに比べてバーニー・トーピンとの関係が割とあっさりめだったような印象ですかね。この黄金コンビは50年以上に渡っていていろいろあったと思いますが、自分の恥部はともかくバーニーのことは突っ込まないようにしたエルトンの友情を感じました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-08-22 22:01:25)
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