181. 未来は今
陰謀渦巻くお話ながら、どこかのどかで毒の無いクラシカルな雰囲気。ハリウッド黄金期作品へのオマージュがふんだんに感じられます。童顔で人の好いティム・ロビンスや肩肘張り型女子を演じるJ・J・リーももちろん巧いけど、なんといっても嬉々として悪の黒幕重役を務める御大ポール・ニューマンのノリ方が素晴らしいったら。ほんと楽しそう。 三人の絶妙なさじ加減で軽くコミカルに人生の悲喜こもごもが転がってゆく。終盤近くの、どファンタジーな展開にはびっくりしたけどそれまでの軽快なリズムに身体が慣れているのでまあアリかな、と受け入れられる。 良かったのは天使前社長のことば「失敗くらいで絶望してはいけない。絶望は過去の足かせだ」大変心に沁みました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-10-22 23:42:13) |
182. ロスト・ハイウェイ
《ネタバレ》 この映画のジャンルはデヴィッド・リンチ、とは言い得て妙。もうほんとに、いかなる作品かと問われればリンチです、としか。 もちろん、ハナっから期待はしていなかった。こう、どこかで理解がいっぺんに進むような謎解きがあるだろう、とは夢にも。 それにしたってなあ。独房の中にいたビル・プルマンが別人になってました、ときた日には「これで観客についてこいと?」と度肝を抜かれる。頑張ってついていったけど。 素直な客を薄暗い迷宮へ連れ込んで置き去りにしてしまうリンチ監督。何がすごいって、こんなヒドイ目にあわされているのに、なぜだか最後まで観てしまうってことだ。考えてしまっている。・・これはピートの頭の中なんだ、とか白塗りのアイツは現実と妄想の橋渡しか?とか。何もないのに何かありそうな。それともこっちの頭が悪いだけなのか。 D・ボウイのミステリアスな歌声も妙にマッチする、理解不能なれど魅惑のリンチワールドであります。振り回されたい方はぜひ。 [DVD(字幕)] 6点(2016-08-05 23:28:57) |
183. ナインスゲート
《ネタバレ》 私は西洋人ではないのでピンと来ないが、悪魔つうのはどうやら日常にいつのまにか潜んでいるものらしい。頭にローソクをいくつも付けて呪文で呼び起こすたぐいのモノではないのね。ポランスキーの筆致においても、災いはごく普通の行いのさなかに訪れる。道を歩いてたら工事の足場がふいに崩れてきたり、昼間の明るいマンションの一室からごうごうと火の手が上がったり。J・デップもあまり深刻な顔をせずにのらりくらりと追撃をかわす。まあでも最終的には彼らの手に絡め取られるんだけども。 おどろおどろしたオカルトを期待していると、いろいろとスカされてそこが逆に印象的だったりする。蜘蛛女レナ・オリンがデップに迫る!どんなえげつない攻撃をするかと思えばボトルでヒステリックに殴るだけだったり、男爵秘書のイカついおばさんがオレンジの硬い皮を手でむいてたり。(でこの人、次にジョニデが来たとき、昼休みにオレンジ買って帰ってきましたね。ここ笑って良いんだよね?) わざとやってんのか何なのか、ちょっと抜いたこういう演出のせいで、私にはオカルトというよりシュールなイメージを濃く残す映画でありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-10-26 21:48:58) |
184. パーフェクト・ワールド
いや、悪くはないんだが。普通にいい話だとは思うけど。ただ、K・コスナーって、実際のとこ子供好きじゃないんじゃないかな。それまでヒーロー役ばかりがハマリ役で売れていたわけだけども、どうもこのブッチという複雑な人格の役は本人やりづらかったのでは。 真に子供が好きなら、二人の間のあうんの呼吸みたいなものがこちらにも伝わるものです。二人とも達者な演技をしているけど、仲の良い空気は読み取れなかった。後味がなんか薄味なのはその辺が原因じゃなかろうか、この作品。 イーストウッドとローラ・ダーン達も何しに居るのかいまいち存在意義が不明だしなあ。 [DVD(字幕)] 6点(2014-11-07 23:23:22) |
185. アダムス・ファミリー(1991)
今観ると、話は大して面白いわけでもないです。普通。ただもう、キャラ力がハンパなくて家族三世代リアルにおどろおどろしいオバケ姿ながら、ユーモアもあって若干キュート、てとこが新しかったんでしょうね。執事は手首、てのも。 ハリウッドの子役って、この頃さらに一皮むけた達者ぶり。C・リッチの傲岸不遜・無表情な美少女オバケぶりに、アダチユミなんか勝負にならんなと思ったもんでした。 そういえばウェンズデーって公立の小学校に通ってませんでしたっけ。そんな。 [ビデオ(字幕)] 6点(2014-08-29 00:11:42) |
186. 8mm
《ネタバレ》 スナッフ・フィルムという題材のショッキングなどぎつさで観る者の耳目を惹いてるけれど、意外とグロばかりを執拗に描写するタイプの作品ではなかった。フィルムの凄惨な場面ではカメラをずらして、ニコラスとホアキンの表情を映して間接的に描写したり。ビビるホアキンが可愛げあり。 幼い娘のいるニコラスの、その怒り苦しみは娘を持つ全父親のそれである。ただならぬ形相のN・ケイジの渾身の演技がこの作品の屋台骨。残酷さを好む人間の業を結局どうすべきか処理しきれてない脚本は物足りないし、マシーンの正体の明かされ方はわかりづらいことこの上ないしで、一級品ではないけど前述のN・ケイジのふんばりに免じての点数です。 [DVD(字幕)] 6点(2014-08-23 00:26:22)(良:1票) |
187. 愛がこわれるとき
《ネタバレ》 偏狭夫の描写がうまい、それにつきます。巷にあふれるDVに苦しむ実話をリアルに再現しているみたい。怖い。タオルと缶詰、たかだか服を汚されたことへ滲む嫌悪の表情、嫁のドレスにまで指図。極めつけは暴力、ときてワタシの忍耐もぶっち切れ。こんな奴ひとりで生きてろよ。もう憎くて憎くて。またジュリアがごきげんとりのプレゼントを渡された時の「もううんざり」の表情が上手いんだ。そりゃ完璧にジュリア寄りで観ますから、彼女がしっかり策を練って現状打破へと挑んだ強さには快哉を叫びましたし、隣人の新恋人が今ひとつぱっとしなくても、前夫よりはずっといいわね、とローラの友達気分で見守る100分でありました。 [DVD(字幕)] 6点(2014-08-17 23:59:24) |
188. 海の上のピアニスト
《ネタバレ》 この監督とはあまり相性が良くなくて、“ニューシネマパラダイス”の時もちょっと思ったんだけどなんつうか「情緒過多」に感じちゃうんですよ。ニューシネの方はノスタルジー過剰、今作は何にか分からないけど「ええ話でしょ」と一人で悦に入られてる感じ。 船内が人生の全てというピアニスト、演じたT・ロスはしっくりくる演技をしていたし、船でのエピソードは多彩で興味深かった。けど、「船を下りられない」その理由がね。「終わりが無い」とか「選べない」とか禅問答みたいなことを言い出す1900に、友人のマックスが「何言ってんだオメエ」と首に縄つけてでも船から引きずり出してくれる展開だったらすごく好きだ。なんで理解を示しちゃってるんだ。爆発してしまうよ、船?死ぬかね。死ぬんじゃないよ。小さい世界で閉じましたとさ、と聞かされても「え、なんで?」とこちらは呆然とするばかり。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-08-14 00:32:48) |
189. オンリー・ユー(1994)
《ネタバレ》 マリサ・トメイと、ロバート・D・Jrの能天気そうな二人が主演だからこそ成立する阿呆なお話。自分のやってることの周りへの迷惑を100%無視して突っ走るマリサ。それも幼い頃の占いが基だっていうんだから、よっぽどキュートな役者じゃないと「どうなの、これ?」と良識ある客にダメ出しされかねない。瞳をまんまるに見開いて自分の信念(妄想)を貫くマリサはおばかさんだけど可愛く、友人の介添えも程々にマリサ暴走の緩衝材の役割を果たしていてバランスも取れていた。偽のイタリア男登場には笑ったなー。ああいうのが「いかにも」イタリアな伊達男なのか。濃いなあ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2014-08-08 00:30:11) |
190. ブレイブハート
《ネタバレ》 熱き男メル・ギブソンがベストキャスティングなのは異論無いけれども。話もカメラも演出もさほどずばぬけているとは思えず。ウォレスは初め戦うことを嫌がっていたのに、どの辺から独立の志士に目覚めたのやら??中盤からはなんかこの人も乱暴な略奪者に見えちゃったりもする。なんせ監督と主演をつとめてお姫様と恋仲で、人々の心に残る非業の死を遂げてしかもオスカーつき。メル・ギブソン気分良かっただろうなー。せめて主役は若手後進に譲るとか考えなかったのかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-04-25 00:03:43) |
191. トレインスポッティング
馬鹿で駄目で不景気なうえに小汚いスコットランド人たちの青春。と言ってしまうとミもフタも無いんだけども、若さってのはありがたいというか尊いというか、あんなにヘロイン打っても皆わりと健康を害することなく(一人エイズになっちゃうが)、ユアンに至ってはスーツ姿で社会復帰すらできてしまうあっけらかんとした感性がこの映画を苦しくなくさせているような。ラストもとことんあっけらかん。元気なんである。でも赤ん坊が不憫すぎるよ。誰も責任取んないのか。 [ビデオ(字幕)] 6点(2014-03-15 01:23:11) |
192. コンタクト
難しい理論はわからないけれど、宇宙の話を聞くのは大好きです。そしてJ・フォスターも好きです。なので頑固な賢い科学者にジョディがぴったりはまったこの映画、なかなか心地良かったです。純粋に科学を突き詰めたいエリーと、いろんな思惑乱れる周囲との軋轢、俗世のやり切れなさもうまいこと挿入されてリアリティを増していたと思います。ただ、宇宙というとあちらは即宗教が絡んでくるのですかね?その辺の感覚が今ひとつわからないのと、後半ファンタジックに過ぎる描写がやや興ざめに感じたので点数はこんな感じで。 [DVD(字幕)] 6点(2013-12-23 00:07:54) |
193. 沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇
《ネタバレ》 原作ファンとしては、主人公の家政婦にはキャシー・ベイツしか考えられないと思ってきたのでまずソフィーの見た目があまりにかけ離れているのに不満。華奢で若くて、観る者の同情を買いそうなキャスティングの結果、やはり原作にあったえもいわれぬおぞましさや不快感を喚起させる迫力が削がれてしまった。だけど、サイドを務める郵便局の女、イザベルのスレた不愉快キャラが原作よりも際立っている。この女の放つ反社会的なパルスがソフィーの心の奥底と共鳴して犯罪に突き進んでゆく、二人の関係の描き方に説得力がある。原作は家政婦の性質を丹念に不気味に描写していて怖いのだけど、この相方との仲についてはやや語りが弱かった印象がある。“嫌な女”二人を紡ぎ直して映画化、それなりに成功しています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-12-06 23:36:16)(良:1票) |
194. エビータ(1996)
苦手なミュージカル。でもこれに関して言えば、マドンナにまっとうにお芝居に臨まれるより、台詞をオール歌で乗り切っちゃう方法で成功しているような。歌っちゃえば情感のバリエーション不足もなんとかなる。民衆に訴える際、両の手を拳にして高々と上げるパターン多し。エバ・ペロン個人への批評として、バンデラスを突っ込み役に配しているのが面白い。単なるエビータ礼賛映画ではなかったのが意外。彼女は政治家ではなく、貧しい人々にとっての偶像、憧れの成功例。実物の彼女はもう少しソフトな美貌で、マドンナみたいな野心丸出し顔ではないので国母となり得たのかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-12-02 00:18:25) |
195. アウトブレイク
話にリアリティがあるので、そこそこ怖がらせてくれるパニック娯楽作ではあるのですが、なんというかこの豪華すぎるキャスティングが嬉しいというより勿体ないという気持ちにさせられる。鑑賞中は「うわー、怖いなあ」「こんなに主演級出さなくてもさあ」の行ったり来たりで気持ちが落ち着かなかった。猿特定できたのは凄いな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-25 00:05:54) |
196. 三銃士(1993)
安心・安全、ほどほどの冒険譚。全編に流れるディズニーテイスト。画面の隅々まで小ざっぱりとして綺麗で、荒くれ者たちが集う飲み屋ですらなんだか清潔感があって、裏を返すと作り物っぽいというか。テンポ良く展開してゆくので飽きはしないけど、あまりにも分かりきった勧善懲悪なのでつまんなさも感じる。三銃士ってもともとそういうお話だったっけ?そうだ、レベッカ・デモーネイ綺麗でしたな。悪役メイクが映えるんだ、この人は。発見でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-24 00:39:36) |
197. ブレア・ウィッチ・プロジェクト
《ネタバレ》 評価が難しいなあ。前代未聞の、“反則を堂々とかました”作品ですからねえ。それでもあまりにその反則技が鮮やかにきめられたものだから、敵(?)ながらあっぱれ、という気持ちにもなります。手ぶれカメラの不安定な気持ちの悪さ、パニックになってゆくメンバーの取り乱しっぷり、これかなり怖かったですよ。怖いといっても、もちろん“予告プロモーション込み”でのことですが。フィクションとネタばれしてしまえば、尻切れラストも「想像の余地を残す怖さ」から「なんだよもっと落とし所考えろよ」に格下げになってしまう。なんであれ(反則宣伝でも)“第一人者”ということに価値がある、そこんとこの評価でこの点数です。 [インターネット(字幕)] 6点(2013-08-28 00:36:18) |
198. インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
《ネタバレ》 アメリカ人のバンパイア、てのが違和感あるなあ。ジーンズとポテトとプレスリーの風土だからなあ いたとしたってゾンビだろうなあ。やっぱり吸血鬼といえば古城をバックに湿気とコウモリ、石畳と十字架が必須アイテム、という世間の(ワタシの)イメージに対して「俺たちだってできるぜ」とばかりハリウッドがご用意した美男俳優の二人ですが・・、どうでしょうこれ。首までフリル過多な衣装に身を包んだところで似合わないことおびただしい。ヨーロッパの俳優だったら着こなせるんじゃないかな、これ。ヴァンサン・カッセルとか数十年前のジェレミー・アイアンズとか。お話はというと、奇しくもトムがラストで言い放ったブラピの「何世紀にもわたる愚痴」、もうそのまんまなのでした。あと、座った目つきでトムの首を掻っ切ったキルスティン・ダンストが若輩ながら一番のお芝居してました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-08-11 00:10:18) |
199. ザ・エージェント
映画を観始めて、これが5本目ですくらいの頃だったらすごく感動したと思う。第一線で活躍していた男の、挫折・葛藤・ラブロマンス・友情、結果大逆転、と。王道というかベタというか。だけどトム・クルーズってどの映画でも白い歯をキラーンとさせて満面の笑みではあるけど、役柄をきちんと押さえているからなのか、浮きこぼれせずに作品にはまることができる。不思議だ。今作でもご都合主義がさほど鼻につかずに観られるし。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-07-21 01:32:01) |
200. ジャッキー・ブラウン
《ネタバレ》 つまんなくはないけど、タランティーノ作品ならばもう少しキレのある展開を期待してしまうところ。現状パム・グリアーもそれほど光り輝いているという印象でもないし。ロバート・フォスターは普通のおじさん過ぎるし、デ・ニーロもまたなんでこんなに冴えない役を。S・L・ジャクソンひとり気を吐いてあごから一本伸びた編みこみヒゲも凶悪に、人殺してます。映画全体的に淡白です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-11 00:25:33) |