241. ブラス!
《ネタバレ》 閉鎖に反対する炭鉱夫たちも早期退職なら退職金割り増しという経営陣の切り崩しで分裂状態。 今日こそ退団と決意していた男二人が、若くて美人のグロリアの入部でコロッと決意を翻すのは男の性か。 その下心をグロリアに会っただけであっさり見抜く妻二人の会話がユーモラスでおもしろい。 経営陣の派遣したグロリアは、実話の脚色なのかは知らないが、単調になりがちなストーリーに波紋を呼ぶアイテムとして機能している。 結局、経営陣の目論見が成功して閉鎖が決定、グロリアの報告書など最初から参考にするつもりなどなかったことも明らかに。 経営陣の不誠実さに会社とぶつかって辞めるとか、いかにも王道の青春ものの展開。 経営側が悪としてわかりやすく描かれ、内容は予定調和的でシンプル。 そうした路線が好きなら、安心して楽しめる作品。 フィルにとっては借金で家を失い、炭鉱閉鎖で家族からも見放され、敬愛する父は肺を侵されて末期症状と、踏んだり蹴ったりの八方塞がり。 教会で子供たちを前に何もしてくれない神への怒りをぶちまけるシーンは、その絶望感が胸に迫る。 コンテスト優勝後のダニーの演説は、メッセージ性が強すぎてかえって心に響かなかった嫌いがある。 ストーリーは捻りもなく最後まで予想通りだけれど、実話に基づいている強みでそれなりの感動はあった。 [ビデオ(吹替)] 6点(2013-07-02 22:19:48) |
242. ニキータ
《ネタバレ》 誕生日にレストランでウキウキしながらプレゼントを開けると中には拳銃。 その場で初めての暗殺指令を受け、しかも指示された逃走用窓が塞がれていた。 穏やかな空気から一気に緊迫した展開で、この辺りは急流に巻き込まれたような感覚。 苛酷な最終テストをクリアしたニキータが、解放されて普通の生活にはしゃぐ様子が微笑ましい。 ただ、ジャンキーの殺人犯が無期懲役を務める代わりに秘密工作員になったのだから、酷い目に遭おうと同情の余地はない。 なので、ニキータに感情移入しきれないのが、この映画の弱みになっている。 ニキータが大使に化けて大使館へ入っても、全然扮装にもなっていないのに職員にバレないというミラクル。 あきれるほどのご都合主義だが、エンタメ性を最優先してストーリーの整合性は二の次にしているようだ。 ジャン・レノの暴走機関車のような掃除人ぶりは、出演時間はわずかなのに台風一過のようでインパクトあり。 ボブへの手紙の内容を明らかにしないラストは、ヨーロッパ映画らしく余韻があってオシャレ。 [DVD(字幕)] 5点(2013-07-01 22:42:00) |
243. フェイス/オフ
《ネタバレ》 潜入捜査に皮膚移植してギャングと入れ替わるなんて、マンガのようなストーリー。 『転校生』のようにファンタジーというわけではなく最新医療的な説明は入れている。 ただ、そこにはリアリティの欠片もない。 ツッコミどころは満載だが、そういうことを無視して見るなら娯楽作品としてはおもしろい。 二人の主役の善人と悪人の演じ分けが見事。 他人になることで、これまでの自分の姿が違った角度から見えてくる。 派手なアクションだけに頼るのではなく、微妙に変化していく心理描写も意外とちゃんとしていた。 [DVD(字幕)] 6点(2013-07-01 22:40:25) |
244. 恋愛小説家
《ネタバレ》 冒頭から作家の嫌味な偏屈ぶりがすごくて、いざこざを起こす隣人でなくとも腹が立ってくる。 ということは、キャラが個性的にうまく描かれているということだろう。 精神分析医に掛かっている主人公は、神経症的な症状で不自由な自分をもてあましている。 言わずもがなのことを言ってしまう不器用な男。 憎まれ口と空気の読めなさで人の神経を逆なでして怒らせてばかり。 キャロルといい雰囲気になっても、また場違いな発言をしないかとハラハラしてしまう。 こんなウザい変人はとんでもないと思っていたのに、いつしか肩入れしてしまう。 美男美女とはかけ離れた誰も羨みそうになかった二人が、最後は素敵なカップルに見えてくる。 この二人でラブストーリーが成立してしまうとは。 もうそれだけで不思議なマジックにかかった気分。 [DVD(字幕)] 8点(2013-07-01 22:38:47)(良:1票) |
245. あつもの
《ネタバレ》 黒瀬の下衆っぷりは吐き気を催す。 金で若い裸の女にむしゃぶりつく姿は、醜くあさましい性欲の塊のエロジジイそのもの。 この人格破綻者をヨシ笈田が好演していて、緒方拳を引き立てる。 菊作りの秘伝を教えると騙されミハルを紹介してしまった杢平は、良いように言えば純朴、悪いようにいえばマヌケ。 愚直に勤めた田舎の消防署を定年退職、息子からはギャンブルで作った借金のために金の無心をされ、精神を病んで入院している妻からは別れを言い渡されている。 一方、黒瀬は自分が落ちぶれて何をやってをダメなことを、菊を作るために生まれてきたからだと言い切るほどの強い自負を持つ。 強欲で嘘つき、万人に嫌われていながらそれを自省しないずぶとさはその自負に支えられている。 二人に共通するのは、菊作りがなければ他に何もないということ。 それだけに、菊作りは意地とプライドをかけた闘いとなる。 その闘いに、援助交際に走る音大生がからんで色を添えた。 自分に才能の限界を感じていたミハルが、いつも黒瀬に負けていた杢平にシンパシーを感じたのは自然の流れか。 ミハルに身を投げ出されたのに、途中で思いとどまった杢平。 ミハルを犯そうとして首を絞め、自己弁護に終始する黒瀬。 ここでも二人は対照的。 黒瀬は杢平とミハルの仲を嫉妬して、未成年を監禁していると警察に嘘の通報をするような汚い手も使う。 ところが、コンテストで杢平に負けたとき、杢平は審査の不正を悟って負けを認めたのに、黒瀬は自分の衰えと相手の実力を認めた。 この時だけはスポーツマンシップに通じるような清々しさがあった。 生きる目的を見失っていたミハルは、首を絞められ死の恐怖に面したことで、そのとき頭に浮かんだ家族のもとこそ自分の帰るべきところだと気づく。 楽しそうにしていた隣の家族の一家心中、杢平の妻や息子との関係も並行して描かれ、家族との関わりや生きることについてがテーマになっている。 初老の男二人の菊作り対決がストーリーの軸なので地味な印象は否めないが、人間模様が交差してよくまとまった作品。 いい役者が出ているのに内容が地味なため興行的にはヒットせずあまり知られていないが、フランスのベノデ映画祭(その価値は知らないけど)でグランプリを受賞している。 園芸にまったく興味がないので感情移入はできなかったが、そこに関心があればさらにハマるに違いない。 [ビデオ(邦画)] 6点(2013-06-30 22:02:36) |
246. 變臉~この櫂に手をそえて~
《ネタバレ》 火事に誘拐による冤罪と、老人にとって少女が災いの元となっていて、観ているこちらも腹立たしさを覚えてくる。 それが、老人を助けようとするひたむきな少女に次第に怒りを溶かされる。 そうして、老人が少女に御主人様ではなくおじいさんと呼ぶことを許し、少女がおじいさんと連呼して抱き合う姿にやられてしまう。 少女に最初から悪気はなかったし、男の子を連れて行ったのも良かれと思ってやったこと。 これだけベタであざとい演出だとシラケるリスクもあるが、主役二人の名演技がそれを補って余りある。 影があるから光が引き立つ。 少女の大人に媚びるさまはそれだけ苛酷な環境で育ったことを示しているし、人身売買や女性蔑視など社会的問題を含んでいる。 そうした社会の暗部を背景にしてこそ、思いやりや義理人情といった光が眩しく映り、ハートウォーミングな作品となった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2013-06-30 21:21:13) |
247. プリティ・リーグ
《ネタバレ》 ストーリーはなんてことないのだけど、キャラがいい。 キレキャラで怒鳴り散らしてばかりの監督が、決勝での痛恨のエラーに怒りを抑えて不気味な笑みで慰めている姿が怖いやらおかしいやら。 ブサイクな選手は顔がわからないように広角で撮るシーンが笑える。 姉妹が軸になったストーリーで、妹の姉に対するコンプレックスと僻みが強く、それでも姉は妹をちゃんと愛している。 ラストのおばあちゃんになった選手たちの姿が、若かりし時の輝きを一層感じさせる。 でも、そこで姉妹が久々の再会ということは長年音信普通だったってことで、二人の間に確執が残っていたのかちょっと気になる。 人数の多いチーム競技を素材にすると、連続ドラマならメンバーそれぞれの掘り下げができるけれど、2時間程度の映画ならどうしても浅くなってしまうのが惜しい。 野球ものではマンガにも優れた連載が幾つもあるので、そういうのに慣れていると少し物足りなく感じてしまう。 [インターネット(字幕)] 5点(2013-06-30 02:59:51) |
248. ディープ・インパクト(1998)
《ネタバレ》 ジェニーが死ぬとは思わなかったので、和解した父親と津波に飲まれるシーンが一番印象に残る。 一人のスーパーヒーローによってみんなが救われる某作品と違って、救われない人も多くて明暗くっきり分かれた分、リアリティを感じる。 群像劇としてそれぞれの人生が描かれているので、派手なアクションものではなく、ちゃんとした人間ドラマを見せてくれる。 ただ、彗星を爆破するのに、人類の命運がかかってるのだから、二の矢、三の矢の宇宙ロケットを用意しておけなかったのか。 [インターネット(字幕)] 6点(2013-06-28 21:21:16)(良:1票) |
249. ゆりかごを揺らす手
《ネタバレ》 復讐にとりつかれた女の狂気がまとわりつくような怖さで、サスペンス性はたっぷり。 こういう逆恨みが一番タチが悪くて気持ち悪い。 加害者の女は自分を襲った不幸に逆恨みでもしなければ精神が持たなかったのだろうが、反吐が出そう。 事件を起こした夫を責めるのではなく訴えた女だけを責めるのは、浮気した男を責めるより相手の女を責める思考回路に少し似ているのかも。 女の憎悪の対象になりやすいのは、男よりも女のようだ。 ペイトンがクレアとの会話で、夫を殺された報いがあることをわからないように宣言し、緊迫感を高める。 知的障碍者の黒人ソロモンが、初対面でペイトンの本性を見抜いたようなシーンがおもしろい。 世話になっている家族を守りたいソロモンとペイトンの闘いが見ごたえある。 ソロモンに性的虐待の疑いがかかるように仕掛けるペイトンの謀略が恐ろしい。 思わず頑張れソロモンと応援してしまうが、まんまと騙されて勘違いするクレアもなんだかなぁ…。 仕掛けられたワナに片っ端から面白いように引っかかってるけど、無防備だから仕方がないのか。 サプライズパーティが台無しになったときの空気はすごかった。 喘息の発作を利用するなど手段を選ばないのが憎しみの強さを表わす。 ペイトンは結局憎悪の対象であるクレアの子供には危害を加えなかったけど、その理由が自分の失った子供を投影したようだから切ない。 狙いはクレアから夫も子供もすべてを奪い取ること。 単純に片っ端から殺そうとしなかったことが、この作品がB級映画に留まらなかった所以か。 つらすぎる現実から逃避して、二人の子供の母になった気分でいるときの幸せそうな表情が印象的。 登場人物のキャラと細かい心理描写が実に巧みで、よくできた脚本のサスペンス映画。 ソロモンが解決のキーになるのは前半でわかってしまうが、出てきたときは待ってましたの心境で、ソロモンの作った柵の伏線が効いていた。 この手の映画はストレスがかかるのでどちらかというと苦手なのだが、その中では出色の出来栄えだった。 [ビデオ(吹替)] 8点(2013-06-28 10:06:25) |
250. 鮫肌男と桃尻女
原作がマンガだけにそれぞれのキャラがとても個性的。 何種類もあるという大村崑のホーロー看板の話をする岸田一徳がいい味を出していた。 アクの強い作品で好き嫌いが分かれるだろうが、全編悪ノリしたアウトロー物語って感じ。 タランティーノは好きだけど、これはその粗悪品みたい。 特に笑わそうとしてる部分がほとんど合わなかった。 笑えないギャグ混じりのシーンをタラタラと見せられてると厳しい。 山田のキャラも狙いすぎてて引く。 冒頭とそれにつながる銀行強盗のシーンはよかったんだけど。 [ビデオ(邦画)] 1点(2013-06-27 22:15:53) |
251. ラヂオの時間
《ネタバレ》 いかにも三谷幸喜らしい作品で、次から次へとトラブルが起こって引き込まれる。 おそらく脚本家として悔しい思いをした自身の体験からくるのだろう、次々と台本をわがまま勝手な理由で変えられるしまう怒りが滲み出ている。 放送事故レベルの中、アドリブで作品はなんとかうまくまとまったといった態だったけど、いやいやメチャクチャな出来損ないに終わってるから。 結局それで満足してしまう主婦作家はやっぱりプロではないし、ディレクターとプロデューサーの和解もとってつけたようで無理やり大円団にもっていった印象。 いつかみんなが満足するものをつくる――そんな日が来るのを信じていこうとする二人の会話だが、プロデューサーはそのためにやるべきことを何一つやっておらず、ただの現実逃避の言葉にしか聞こえない。 これでは明るい展望など持てるわけがなく、放送局で不本意な状況が今後もずっと続いていく様子が目に浮かぶ。 ラジオを聴いて放送局に駆けつけたトラック運転手も、あの作品で感動するなんてどんな感性だよって思うし。 途中のドタバタは面白かったのに、無理やりハッピーエンドにすべてを収束させたので尻すぼみになってしまった。 [ビデオ(邦画)] 6点(2013-06-27 00:29:15) |
252. 視線のエロス
主人公は下心丸出しに若い子にアプローチするただのエロ中年。 終始カメラワークが主人公目線で、不倫を疑似体験して楽しむように作られたかのよう。 二人の会話が妙にリアルで、微妙な心の変化や駆け引きに臨場感があって感情移入できる。 内容はあってないようなものだが、イザベル・カレが十分魅力的なので監督の狙いは成立している。 [ビデオ(吹替)] 5点(2013-06-26 00:14:17) |
253. ストレイト・ストーリー
《ネタバレ》 老人が遠くにいる兄のもとへトラクターで駆けつけるだけの地味な話だが、なんだか癒される。 出てくる人物が人間味があって温かい。 鹿を何度もはねる車の女が気の毒だけど笑ってしまう。 その鹿をちゃっかり有効利用して食べてしまうアリヴィンの逞しさ。 ふっかけれらた修理代を理詰めで値切っていくのにも老人の知恵がうかがえる。 道中の出会いで、老人のこれまでの人生が見えてくる。 飄々として見えた老人にも、何十年にも渡って残っていたトラウマがあった。 味方の偵察兵を誤って射殺してしまったことを誰にも言えずに抱えて生きてきた苦しさが伝わってくる。 ずっと仲違いしていたストレイト兄弟が言葉少なにわかりあうラストが感動的。 [DVD(吹替)] 6点(2013-06-26 00:01:41) |
254. 風、スローダウン
《ネタバレ》 夢と現実の狭間で、バイクを取るか彼女を取るか。 よくある類のストーリーで、ハッとするような展開はない。 ヤクザの友達はたぶん鉄砲玉で死ぬんだろうなと早くから予測がついたし。 観ているこちらが気恥ずかしくなるほどベタなシーンやセリフが幾つも。 バイクに興味があるわけでもなく、笑えもしなければ感動もできず。 青春の夢と挫折を正面から描いていて、ラストはそれぞれの人生を精一杯歩いている感じで悪くなかったけど、そこに至るまでの過程が物足りない。 島田紳助はトークの頭の回転やプロデュース力には感心するが、脚本に関してはいかにも畑違いの素人っぽい。 [インターネット(字幕)] 2点(2013-06-25 23:59:02) |
255. ボーイズ・オン・ザ・サイド
《ネタバレ》 出だしはライトタッチのコメディかなと思ったが、本格的なヒューマンドラマに仕上がっていた。 レズビアンの売れない歌手、エイズに侵されている堅物のキャリアウーマン、暴力男の子供を身ごもっている恋多き女。 それぞれに問題を抱えた三人が、諍いを起こしながらも助け合っていく女の友情物語。 といっても同性愛もからんでいるので純粋な女の友情とは違うかも。 セリフやシーンの随所にウィットが感じられて魅せてくれる。 ロビンがジェーンに借りたヘッドホンをウェットティッシュで綺麗にしていたのは、決して嫌悪感や黒人への偏見ではなく、エイズの負い目と気遣いによる潔癖症を表わす伏線だった。 どこにも行くところがないと嘆くロビンに、それなら今いる場所に居ればいいと抱きしめるジェーン。 ロビンに対する母やジェーンの言葉は、優しさにあふれて癒しの力がある。 「もし私がウソを言ってたら不治の病で死んでもかまわない」 そう言って裁判でウソの証言をするロビンにも、自分の運命への諦観と二人への思いやりがあふれている。 赤ちゃんの誕生の一方で、エイズで死にゆく者がいる。 暗くなっても仕方のない重いテーマなのに、バカっぽくて行動の軽いホリーとバカみたいに真っ直ぐな警官エイブのカップルがいい感じで緊張緩和の役割。 生まれた子供が黒人とのハーフだったときのリアクションは笑える。 胸も露にホリーを演じているのが『E.T.』の子役ドリュー・バリモアだったとは、子供の成長の早いことに軽い衝撃。 パーティの様子をカメラが一周して誰もいなくなった部屋の空の車椅子を映すラストがいい。 三人が互いに影響しあって、価値観や生き方が微妙に変化しているのが巧みに描かれている。 タイトル通りに男は添え物でメインは女、明らかに男性より女性向きの内容だ。 [ビデオ(吹替)] 6点(2013-06-23 23:13:22)(良:1票) |
256. こころの湯
取り壊しの運命にある銭湯が庶民の社交場となっている様子は、昔の日本にも通じるものなのだろう。 マッサージ、四方山話、歌の練習、コオロギ対決など、それぞれが楽しんでいる。 まったりと話が進行するので、観ているうちにこちらもぬるい湯に浸かってうとうとしているような感覚になる。 水がなくて風呂に入るのも大変な思いをしていた回想に、家族の絆、人と人との絆が感じられて心温まるエピソードだった。 [DVD(吹替)] 5点(2013-06-23 00:14:41) |
257. 皆月
《ネタバレ》 家を出た妻の置手紙は「みんな月でした。もう、我慢の限界です。さようなら」 月は自らの裏側を決して見せず、太陽があって初めて輝く。 駆け落ちした妻は誠実な面しか見せないつまらない夫といては一生輝けないと思ったのだろう。 退職金目当てだったはずの由美が冴えない中年男に本気になっていったのが腑に落ちなかった。 が、昔飼ってていつも後ろをノタノタ付いてきたウサギに似ていたからだという言葉に、二人のキャラが浮き彫りにされる。 そんなソープ嬢を吉本多香美が熱演。 北村一輝のサディスティックなキレっぷりはハマってたが、主役の奥田瑛二が役に全然合ってない。 義兄と由美が同居を始める日に、アキラがキッチンで義兄に見せつけながら乱暴に由美を犯すシーンはインパクトがあった。 自首したときの姉との別れは、肩を噛まれて恍惚となるアキラの姿に近親相姦の臭いが強く漂う。 アキラのほうが主人公を喰うくらいの存在感があった。 原作者の花村萬月の作品は幾つか読んでいたが、背徳感やバイオレンスなど毒気をはらんだものが得意のようだ。 ラスト、主人公が由美を置き去りにしようとして、また思い直して戻ってくるなどわけがわからず。 主人公に魅力を感じないのが一番の泣きどころ。 [DVD(邦画)] 5点(2013-06-22 05:36:24) |
258. インデペンデンス・デイ
《ネタバレ》 コンピューターウイルスでやっつけられるような異性人というのが拍子抜けではあるが…。 いろいろ都合がよすぎるので、細かいことを一切気にしないで観れば楽しめる。 結構盛り上がるけど、その割に後にはあんまり残らない。 良い意味でも悪い意味でも、いかにもハリウッド映画らしい作品。 [地上波(吹替)] 5点(2013-06-21 23:36:28) |
259. ルームメイト(1992)
《ネタバレ》 アリーが恋人と別れた寂しさを埋めるために募集したルームメイトが完全にイカれた女。 長い交際期間があっても同居して初めてわかるといったことも珍しくないのに、面接やちょっと一緒にいた程度でいろいろ見抜くのは到底無理。 誰でも同じようなイカれた人間の被害者になりうる怖さを感じる。 ただ、彼氏とヨリを戻したからルームメイトに出ていってもらおうとするのはあまりに軽率で自分勝手。 自分で撒いた種でもあるので、同情はしきれない。 愛犬を転落死させたり、同じ髪型と服装をしてみたり、勝手に手紙を受け取って隠してたり、こんなのと同居だなんて鳥肌が立つ。 さらにどんどんエスカレートする異常行為に、まとわりつくような不快感が募っていく。 モンスターものより、こういう狂気の人間のほうが怖い。 アリーとヘディがギクシャクしていく様子はとてもリアルに描かれている。 一人でオナニーしているところを見られた場面など、こちらまで気まずくいたたまれない気分になる。 ところが、ラストの死闘でアリーが突如秘密工作員にでもなったかのような見事なアクションでの逆転劇には呆気にとられる。 とってつけたようなナレーションでのまとめもウソっぽくなった。 [DVD(吹替)] 5点(2013-06-21 23:34:39) |
260. 12人の優しい日本人
《ネタバレ》 タイトルからわかる通り『十二人の怒れる男』をパロっていて、日本人だったらどうなるかを示したようで興味深い。 狩猟民族と農耕民族の違いを見るようだった。 妻が夫を走ってくるトラックへ突き飛ばしたとのおばさんの証言もあったが、暴力夫に悩まされていた美人妻への同情もあって、おばさんの証言よりも妻の証言が信用されている。 そうした無罪濃厚の状況から有罪の可能性を探っていくわけだが、12人のキャラが立っていてそのやりとりに引き込まれる。 三谷幸喜はこうしたキャラの書き分けがはっきりしていてわかりやすいのが特長。 そこが苦手という人もいるようだが、こうした12人にほぼ均等にセリフのある設定では、区別しやすくなるので混乱しなくて済む。 ただ、本家の迫力には到底及ばず、インパクトは少し弱い。 コメディ要素を入れて笑いを取ろうとしているために、軽くなっている印象。 議論が人間の本質的なものを抉り出す人間ドラマになるのではなく、推理ゲームの要素が強くなっているせいもある。 最初から有罪を強硬に主張し続ける会社員も妻に捨てられたことが理由というオチがかなり前からわかってしまうのもマイナス。 オチが見えてからはどうしても興味が少し削がれてしまった。 [地上波(邦画)] 7点(2013-06-21 01:45:49) |