301. 恐怖の足跡
《ネタバレ》 ご存知「あなたはすでに死んでいる」ネタの元祖となった映画。こんなカルト映画に10点をつけるのもどうかと思われるかもしれませんが、私にはどうしても外せない一本です。幼稚園児ぐらいのころ、街かどでこの映画のポスターを見て強烈なトラウマになった経験があるからです。昔の映画の看板やポスターは子供が見たらマジでビビる様なのが多かったですよね(同時期に公開されてた『フランケンシュタインと地底怪獣』の巨大な看板もとても怖かった記憶があります)。しかし無名俳優と低予算で製作されて、これほどその後の映画に影響を与えた映画も珍しいのでは。顔を白塗りしただけの亡霊たちなのですが、これが実に不気味で、ロメロのゾンビにインスパイアを与えたことは今や有名な話しです。全篇で使われるパイプ・オルガンをフューチャーした音楽もまた不気味で、その音楽に乗って死霊たちが舞踏会を繰り広げるラスト10分はホラー映画の歴史に残る強烈なシーンです。 [インターネット(字幕)] 10点(2011-09-02 23:31:48) |
302. ローズマリーの赤ちゃん
《ネタバレ》 “モダン・ホラー”というジャンルはこの映画が開拓したと言っても過言ではない。それまでのこけおどしが目立ったホラー映画とは明らかに一線を画す、神経症的な恐怖表現が実に鮮烈です(本作のプロデューサーが、B級ギミック・ホラーの帝王ウィリアム・キャッスルであるとは何たる皮肉!)。ミア・ファローは決して演技派女優ではないけど、妊娠して髪をショートカットにしてからの演技、とくにその表情は目を見張らせられます。また、出世をしたいがために奥さんを悪魔に貸しちゃうジョン・カサベテスのキャラが説得力があり過ぎです。なんせ自宅を抵当に入れて借金までして映画を撮ってた人ですから、映画のためなら喜んで悪魔と契約しちゃいそう(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2011-08-24 20:15:04) |
303. 殺人ゲーム/コミック・ストリップ・ヒーロー
《ネタバレ》 『キル・ビル』や『PARTY7』の原点はここにあった!、というのはちょっと褒めすぎかな。アメコミよりもフランスのバンド・デシネの方が日本のコミックに影響を与えているという説がありますが、本作を観たら素直に納得できます。挿入されるキッチュなコミックの使い方はタランティーノなんかと比べればそりゃ地味ですけど、バカバカしいストーリーにしてはセリフが詩的でいかにもフランス映画らしくて良いのです。本作でクローディーヌ・オージェは直接肌を見せるヌード・シーンはないのですが、服や水着を身につけていてもこれほどハダカを意識させてくれる女優はめったにいないでしょう。時期は重なっているけど明らかにヌーベル・ヴァーグとは一線を画しています。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-08-17 22:52:37) |
304. 続・黄金の七人/レインボー作戦
《ネタバレ》 前作よりもカネはかけてるんだけど、ヘタにセットやVFXを増やしちゃったおかげで全体にチープ感が濃厚になっちゃったかな。でも露骨に二匹目のドジョウを狙って『サンダーボール作戦』のパロディに徹した強引な脚本が、けっこうこのチープ感にマッチしていてこれはこれで味があります。前作が気に入ったファンには登場キャラのお約束ギャグを愉しみにしており、峰不二子キャラのロッサナ・ポデスタがどこで寝返るかとかワクワクしちゃいます。ほんとこのシリーズは、ロッサナ・ポデスタあっての『黄金の七人』なんですから。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-08-14 00:03:48) |
305. 黄金の七人
《ネタバレ》 イタリアン・コメディにしては珍しいポップなセンスの良さがいいですね~。あの有名なテーマミュージックは私らの世代には『11PM』のテーマをどうしても思い出してしまいます(『11PM』に影響を与えたというのが正しい表現ですが)。こういう音楽だけでワクワク・ドキドキさせてくれる映画はなかなか貴重ですよね。金庫室の床に開けた穴からボトボトと金塊が落ちてくるシーンは、何度見てもサイキックな快感を覚えてしまうんですよ。 今回観直して気がついたんですが、『バンク・ジョブ』と細部が似ているなということです。アマチュア無線家が交信を傍受して警察に通報するところなぞそっくり同じ。 ん、考えてみると『バンク・ジョブ』の元ネタである実際の銀行強盗事件でも無線交信が録音されていたそうで、本作で脚本家が考えだしたエピソードが現実になっちゃったということでしょうか? だとすると、まさに「事実は映画より奇なり」です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-08-13 20:47:42) |
306. 突撃隊
《ネタバレ》 組織になじまない一匹狼だけど技量は抜群というと、同年に製作された『戦う翼』の爆撃機パイロットと思いっきりキャラがかぶるのですが、やっぱりマックイーンは将校じゃなくて兵士役が似合うんですよね、本作のマックイーンはえらくスリムで眼がギラギラしていてまさにオオカミという迫力です。マガジン三本をテープでくくったM3短機関銃は他の映画では観たことない使用法ですがいかにも実戦的で、私の中ではマックイーンのシンボルみたいなものです。ドン・シーゲルの無駄のないスピィーディな演出はB級映画のレベルを超えていますね。そう言えば、同じロケ地で撮ったんじゃないかと思うほどTVの『コンバット』に雰囲気が似てますね、音楽が同じレナード・ローゼンマンだったせいもあるかな。 [地上波(吹替)] 7点(2011-08-01 21:41:41) |
307. ミニミニ大作戦(1969)
《ネタバレ》 シャレた泥棒映画は、やっぱり英国製がいちばんですね。実はリメイク版の方を先に観ちゃったのですが、新旧見比べるてみると泥棒グループの人数とそのグダグダぶりが大きな違いです。オリジナルの方はそのピリッとしない連中をユーモアたっぷりに描いていて楽しいし、あの大女フェチのピーチ教授なんかなんのために登場したのか忘れてしまうほどのおかしさです。とは言えいちばんけったいなキャラはノエル・カワードが演じる“刑務所の王”ブリッジャーで決まりです。看守を引き連れて自由に刑務所の外へ出ていくは、刑務所長の方がブリッジャーにへりくだって応接するは、この映画が撮られたときにはすでに英国演劇界の伝説になっていたノエル・カワードのセルフ・パロディみたいでした。ミニの突っ走るシーンでは展示場の屋根に上ってまた降りてくるところがすごかったですね。クインシー・ジョーンズの歌曲も良かったし大満足ですが、ラフ・ヴァローネがボスのマフィアが途中からどっかに消えてしまったのは脚本のアナでしょう。ラストに登場するとばっかり思っていましたので、拍子抜けしました。 [DVD(字幕)] 8点(2011-07-11 23:48:03) |
308. 砲艦サンパブロ
《ネタバレ》 この映画は、非常に地味だけど名作です。米西戦争でスペインから分捕ったオンボロ砲艦というプロットが渋すぎですが、本国は好景気に沸いているローリング・トゥェンティの時代に水兵をしている、しかも砲艦に乗せられて中国をウロウロしているという時点でサンバブロ号の乗員は艦長以下みんないわば負け組です。軍人とはいえ平凡な乗組員たちが、魔境中国の人間の営みを歯牙にもかけない歴史の渦にいや応なく巻き込まれてゆき、そしてあえなくすりつぶされてしまうのはあまりに悲しい。この作品が公開された当時はベトナム戦争はまだ泥沼化する前でベトナムに対する関心も低かったことを考えると、その先見性には感服してしまいます。 マックイーンはアクターズスタジオで学んだ経験があり本来は演技力も持っている人なのですが、この映画の演技でそれを証明してくれました。人間よりも機械を愛する孤独な男、このキャラは彼が生涯演じてきた役の典型でもありますが。 リチャード・アッテンボローと結婚する中国人メイリーですが、なんと『エマニュエル夫人』を執筆する前にちょこっと女優業もしていたエマニュエル・アルサンが演じているんですよ。このあと世界中をエロで席巻することになる女性にはとても見えないところが不思議です。 [映画館(字幕)] 9点(2011-06-21 22:05:54) |
309. テレマークの要塞
《ネタバレ》 第二次世界大戦中、ノルウェーにあったドイツの原爆製造用のための重水製造工場を破壊する実際おこなわれた作戦がモチーフになっていますが、映画では大幅に脚色されています。この作戦は戦史の中でも知名度が低く今や忘れられた様な状態ですが、そもそもナチス・ドイツが原爆開発に成功する見込みはほとんどなかったからでもあります。ヒトラーは核物理学を「ユダヤ人の科学」として忌み嫌っていて、またどうも原子爆弾というものを理解していなかったふしもあります。何とか細々と開発は続いていましたが、どうも英国はドイツが原爆開発に成功する見込みがないことに気づいていたみたいで、それでもレジスタンスに犠牲を払わせても邪魔をしようとするところなぞ、大英帝国の執念深さは大したものです。 さて本作の特長は、レジスタンスの核物理学者に扮するカーク・ダグラスのジェームス・ボンドも裸足で逃げ出す超人的な活躍に尽きるのではないでしょうか。女癖は悪いは、片っぱしからドイツ兵を殺すは、爆弾を仕掛けたフェリーに戻って女子供を救助するは、ダグラスこそは“60年代のスティーブン・セガール”であると断言しちゃいますね。邦題も正しくは『テレマークの“沈黙の要塞”』というところでしょうか。 『スパルタカス』で監督をクビにした負い目がダグラスにはあったので、アンソニー・マンに出演を頼まれてふたつ返事で引き受けたのに、出来上がってみればまるで自分のプロダクションで製作した様なヒーローものになっちゃうとは、さすが“俺さま”ダグラスの面目躍如ですね。さぞやアンソニー・マンも頭を抱えたことでしょう(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2011-06-06 20:18:53)(笑:1票) |
310. 底抜け大学教授
《ネタバレ》 第二次世界大戦後のハリウッドで大人気だったコメディ・コンビと言えば“珍道中”シリーズのビング・クロスビーとボブ・ホープ、そして“底抜け”シリーズのディーン・マーティンとジェリー・ルイスであることには異論はないでしょう。どちらも歌手とコメディアンのコンビという共通点がありますが、話芸のホープに対して顔芸のルイスという大きな違いもあります。日本では伝統的に顔芸で笑わすのは子供騙しのいちだん落ちる芸だという風潮があり、ルイスの全盛期でもあまり“底抜け”シリーズは受けなかったみたいです。それにしても、このレビューを書く前に確認するとこのサイトに“底抜け”シリーズが一本も登録されていないのにはちょっとびっくりしました。 ルイスはマーティンとのコンビ解消後ピンになってからは自ら監督・製作をしたコメディ映画を創る才能を発揮して、本作は監督第四作目に当たります。なので厳密には“底抜け”シリーズではないのですけど、“底抜け”という邦題はもちろん配給会社が勝手につけたわけなのでしょうがありませんね。 さて本作はもろ『ジギル博士とハイド氏』のパロディで、また原題を見ればおわかりの様にエディー・マーフィーの『ナッティー・プロフェッサー』の元ネタでもあります。ルイスお得意の顔芸はもちろんゲップが出るほど見せられますが、『ジギル博士とハイド氏』とは逆ではっきり言って気持ち悪い教授が変身して伊達男(?)バディー・ラブになっちゃうところが面白い。ルイスのギャグはけっこうパワフルで、ジムでトレーニングするシーンでの腕がゴムみたいに伸びる漫画の様なギャグには、あまりのバカバカしさに思わず「そこまでやるか!」と唸ってしまいました。“やっぱこれは日本人には合わないギャグセンスだよな”というのが正直な感想ですが、若いピチピチしたステラ・スティーブンスを拝めたのでプラス一点としておきます。こういうルイスの顔芸は、ジム・キャリーにまでしっかり受け継がれているんですねえ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-05-10 00:45:23)(良:1票) |
311. その男ゾルバ
《ネタバレ》 遠く離れたアジアの我々にはギリシャ人のイメージは曖昧なものしかなく、せいぜい「陽気な人たち(南国だから)」ぐらいしか頭に浮かばないでしょう。実はあのバルカン半島の民でもあるギリシャ人の民族性はけっこう気が荒く、周辺の国とはしょっちゅう諍いをおこしてきた歴史があります。ゾルバも「戦争に行ったときは、捕虜を殺して女を犯した」と普通のことのように語っているぐらいですが、本作の舞台になったクレタ島というところはゾルバの様なギリシャ本土の人間でもビビるぐらい荒っぽい土地だそうです。イレーネ・パパスを村人総出で殺しリラ・ケドロヴァが死ぬやいなや身ぐるみ剥いでしまうといった蛮行は普通の感覚では嫌悪感がこみ上げてくるだけです。マイケル・ベイツが演じる英国人は半分ギリシャ人だと言うのにギリシャのことは何も知らずに島にやって来て、中途半端なインテリぶりで恋人を殺されるは鉱山開発にも失敗してしまい、結局この映画を通してなにも成就できないで島を去るわけです。ゾルバという男はインテリ作家のベイツと凶暴な島民たちの両者を仲介する使命があったのに、結局単なるピエロで終わってしまったなという印象ですね。ラストのベイツが踊るシーンは、やることなすこと全部ドツボになってしまい、「もうこうなりゃ踊るっきゃないよ!」という開き直りの儀式みたいなもので、人間は誰しもそういう心境になった経験があるんじゃないでしょうか。この映画、どうしてもゾルバのキャラに目が行ってしまうのですが、物語自体もけっこう奥が深い様な気がします。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-05-04 00:26:49) |
312. トプカピ
《ネタバレ》 『ミッション・インポッシブル』のトム・クルーズがデータ室に侵入するシークエンスは、本作の引用というか再映像化だったんですね。「偉大なオリジナル」は後年になって観ると既視感を持ってしまうのはつきものですが、どうしてどうして、オリジナルの侵入シーンもとても60年代の映画とは思えない緊迫感に溢れていますよ。ロープにぶら下がる「声が出せないイタリア人」というキャラも、ソダーバーグが『オーシャンズ』シリーズで「英語は理解しているのに中国語しか喋らない中国人軽業師」としてパロっていますね。メルナ・メルクーリはいつも通りの陽気で豪快な女傑ぶりでさすがにちょっとあのダミ声には引いてしまいますが、せこい小悪党を演じたらピカイチのピーター・ユスティノフには楽しませていただきました。こういう懲りない連中を観ていると、生きる希望が湧いてきますね(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-05-01 22:51:34) |
313. 卒業(1967)
《ネタバレ》 ダスティン・ホフマンがあたりまえだけど若い! これが実質映画デビューで、すでに30歳だったとは思えない新鮮な演技です(この人『マラソンマン』でもほとんど40歳でまだ大学生が演じてるから凄い)。今の若い人にはなかなか理解できないベンとエレインの行動だけど、あの時代のカルチャーというか若者のパワーに心を揺さぶられる人もいるはずです。ニューシネマ全盛期ですが、この映画はそのまま絵になる様なショットが多くて、マイク・ニコルズの才気には感服です。そしてキャサリン・ロス、この瑞々しさは永遠にフィルムの上に刻まれていくでしょう。 しかし数ある恋愛映画の中でも、このカップルほど長続きしそうもないと感じられるキャラは他にないのでは(笑) [映画館(字幕)] 7点(2011-04-13 01:04:05) |
314. 特攻大作戦
《ネタバレ》 ご存知『イングロリアル・バスターズ』の元ネタの一本。普通これだけ男を集めた映画ならひとりぐらい女性ファン用に二枚目俳優が混ざるものですが、まあ見事なまでにいかつい悪人面を集めたものです。そして「七人もの」の定番なのは集まった男たちが何か特技を持っているところですが、12人がただ凶悪犯であるということしか特徴がないというのもある意味いさぎよいところです。その12人とリー・マーヴィンをキリストと使徒たちになぞらえるシーンまであり、ちょっと悪乗りし過ぎです。中でも私のお気に入りはウォーデン将軍役のアーネスト・ボーグナインで、この人その後に三作作られた続編に全部ウォーデン将軍で出演しているんですね。それだけこのキャラは観客に受けたってことなんでしょう。前半の訓練パートはアルドリッチらしいごついユーモアに満ちて楽しめて、いざ敵地降下してからは計画は狂いっぱなしで結局12人のうちチャールズ・ブロンソンしか生き残らなかったのですが、不思議と悲壮感が全然ないところも私は好きです。ブロンソンがラストに言う、「将軍殺しが病みつきになりそう」は名セリフです。 [映画館(字幕)] 7点(2011-04-04 20:40:35) |
315. 暴力脱獄
《ネタバレ》 ひどい邦題のせいで長い間自分の中で敬遠してしまった作品だったけれど、観てみるとなかなか一筋縄では行かない面白さに満ちていました。前半は「卵50個食い」に代表されるどこか牧歌的なムード、看守や所長もほとんど暴力を振るわない普通の刑務所ものとは違ったムードには戸惑いを感じたほどです。でもこの作品は、もっとも脱獄したくなる気持ちが伝わってきた刑務所映画でしたね、あの労働作業のつらそうなことと言ったら… ルークが一回目の脱獄をしてからだんだん雰囲気が変わってくるのですが、60年代ニューシネマ全盛期の映画なので、くどい展開には「この映画はどういうオチになるんだろうか?」とちょっといらいらさせられました。結局終わってみれば「ルーク=ニューマンはキリストだった」というわけで、ちょっと肩すかしくらっちゃいました。とは言えポール・ニューマンの演技は軽やかでありながら超絶的で、この時期の彼の最高傑作だったことは間違いないでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-03-05 01:20:47)(良:1票) |
316. 野のユリ
たぶん超低予算で撮られたと思うのですが、アイデアと語り口が映画には大事な要素なんだねと納得させてくれました。シドニー・ポワチエが演じる黒人青年は、あくまでアメリカの当時の白人が心に描いていた理想の黒人像であることは確かですが、あたかも神の使いの様な登場と退場するエンドシーンにしたことで、黒人の未来は今よりきっと良くなるぞ、というメッセージが感じられました。リリア・スカラと四人の修道女たちが面白いキャラで、観ているうちにだんだん可愛らしく感じられてきました。もしリメイクするのなら、ミュージカルとして撮ったら面白いんじゃないかな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-03-03 21:58:48) |
317. 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間
《ネタバレ》 海外版DVDで鑑賞。ジャケットは公開時のポスターを使っているのですが、良く見るとこの映画は成人映画指定だったことが判ります。人造奇形人間と言っても実際のフリークスを出演させるわけでもなく、もっぱら暗黒舞踏団のメンバーが奇形人間のふりをすることで済ませてます。エロも大したことはなく、冒頭の精神病院のシーンにオッパイが沢山出てくるぐらいなものです。乱歩のエッセンスを詰め込み過ぎたプログラム・ピクチャーと言ってしまえばそれまでですが、全篇を通して変調な雰囲気がただよい、特に土方巽の不気味な怪演はなんか気持ちの悪いものを観た様な後味の悪さが強烈です。そして伝説の「おかあさーん」になるわけですが、こりゃ劇場で観たらきっと大爆笑まちがいなしです。なぜか突然登場する明智小五郎と突っ込みどころは満載ですが、なんと言うか、当時の時代の空気が感じられる気もします。 [DVD(邦画)] 6点(2011-02-06 20:42:30) |
318. 黒い狼
《ネタバレ》 フェリーニの『悪魔の首飾り』の主人公テレンス・スタンプは“世界初のカトリック西部劇”に主演するためにローマに来ます。“カトリック西部劇”なんて奇妙な代物が実は本当にあったんですね、驚きました。主演がジョン・ミルズとダーク・ボガードという二大英国名優、舞台がメキシコ、しかも時代が現代(1950年代?)、とまあここまでくせ球を投げてくるとはさすが英国映画です。“無法者が支配する町に新任保安官が赴任してくる”という西部劇では一般的なプロットで、保安官が神父であるところが違いだと言うことです。本作のボガードは、『荒野の七人』のユル・ブリンナーみたいな黒づくめコスチュームで登場してきて実にカッコ良い。当然、“善”のミルズ神父と“悪”のボガードの対決という図式で物語は進むわけですが、ボガードを単純な悪ではなく権力や教会に不信感を持った屈折した男なのがなかなか良い。そこに地主の娘ミレーヌ・ドモンジョ(当たり前だけど、若い!)が絡んでくるのですが、神父に恋してしまい三人の三角関係がラストの悲劇に繋がってゆくところは思ったより重厚な展開です。また、どうもボガードも神父にホモ的な愛情を持っているみたいな雰囲気もあり、そういう類の演技をさせたらボガードはピカ一ですね。この映画の最大の問題は、別に西部劇みたいな設定にする必然がないということでしょう。 原題は「歌手が大事なんだ、歌じゃない」という意味ですが、これはカトリック教会に対するけっこうきつい批判でもあります。余談ですが、字幕が「神父」と「牧師」を混同しているのが気になりました。「牧師」はプロテスタントですよ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-02-02 23:58:30) |
319. 心中天網島
《ネタバレ》 「日本のシェイクスピア」近松門左衛門の名作をモダニズムの極致とも言える演出で堪能させてくれます。自分は篠田正浩は好みではないですが、本作だけは別格。前衛的ながらオリジナルの基本的なところはきっちりと造っているのが良い。紙屋治兵衛がまた観てて情けなくなるダメ男で、名優中村吉右衛門がさすがの演技で唸らされます。 私の中では戦後日本映画界でもっとも妖艶な女優は岩下志麻だということになっています。若い人たちは『極妻』シリーズのイメージしかないでしょうけど、この人の60年代70年代の作品をぜひ観てください。その美しさ・色っぽさには眼が釘付けになりますよ。 [DVD(字幕)] 9点(2011-01-07 02:31:03)(良:1票) |
320. 戦う幌馬車
ただただ、全盛期で脂の乗り切ったカーク・ダグラスのカッチョよさをひたすら味わうべき!(この際、ジョン・ウェインはどうでも良い) なぜか革手袋の上からでっかい指輪をしてるのですが、そこがまたカッコ良い! ピョンピョンとび跳ねながら馬に乗るところがまた痺れちゃう! と、ダグラスに見惚れてるうちに映画は終わってしまいました(なんか装甲車みたいな馬車が出てた様な気がしましたが)。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-03 22:36:58) |