321. インシテミル 7日間のデス・ゲーム
似たような設定のヒット作に続こうとの下心が見えるが、内容ははるかに及ばない。 リアリティも緊張感も意外性もない。 [DVD(邦画)] 2点(2013-08-27 20:37:46) |
322. ブルーバレンタイン
《ネタバレ》 出会いから結婚までの燃え上がった恋愛期と別離に至るまでの倦怠期を並行して描いていて、そのギャップが激しいのでどちらも引き立つ演出。 女の気持ちが離れていく様子が生々しく、焦る男の行為が逆効果でそれに拍車をかける。 自分の子でもないのに一緒に育てる決断をしてかわいがってくれた夫を、結果として捨てる形。 なので妻の身勝手と見られるかもしれないが、夫は見限られるようなことをしていて、しかもそれに無自覚であることが痛い。 男女の隙間風がどんどん悪化して壊れてしまうときはこんなものなのだろうと感じさせるとてもリアルな描写。 やり直せない関係に至るまでの心理が伝わってきて、冷めきった愛の狭間でいたいけな子供がたまらなく切ない。 [DVD(字幕)] 7点(2013-08-17 19:45:50) |
323. サラの鍵
《ネタバレ》 サラと弟との悲劇的な顛末や、その影をずっと引きずったサラの生涯はあまりに悲しい。 ホロコーストの狂気が荒れ狂う中、サラを助けた人達には心を揺さぶられる。 亡き母のことを何も知らなかったと呟く息子と同じように、子供というものは親の歩んできた道を知ってるようで知らないのだろう。 サラの名をつけた子供の存在が、サラの生きた証しのように救いとなってくれる。 ただ、主人公の産む産まないのゴタゴタはメインストーリーにそれほどリンクしているように思えない。 ジュリアにいまひとつ魅力を感じなかったのが残念。 [DVD(吹替)] 7点(2013-07-14 23:52:57) |
324. キック・アス
こんなに可愛くて強い殺人マシン少女は見たことない。 日本物では『あずみ』が思い浮かぶが、本作のほうがエンターテンメントに徹して突き抜けた感じ。 グロも不快ではなく痛快で、悪党のヤられっぷりが心地よい。 クロエありきの映画だけど、他のキャストもなかなかいい。 それにしてもヒーロー願望の強い国だな、アメリカは。 [DVD(字幕)] 8点(2013-07-13 22:32:36)(良:1票) |
325. 桐島、部活やめるってよ
《ネタバレ》 なんだろう、この切ないようなほろ苦いような気持ちは。 胸の奥のどこかが微かに痛くなる感覚。 キャラの描き分けが巧みで、登場人物の誰かに感情移入できるようになっている。 高校生の青春群像が等身大で、セリフもリアルでいい。 時系列を前後して視点を変えながら描いているで、群像劇が立体的な質感をもって迫ってくるよう。 ゾンビの逆襲は笑えたし、センスの良さが散見される。 沙奈にめちゃくちゃムカつくが、ということはキャラがしっかり描けている証拠だろう。 でも、桐島一人の動向がこんなに波紋を呼ぶなんて、その影響力は誰もが羨むようなもの。 そんな学園のスターにも人知れず悩みがあったようだけど、贅沢いうなよ。 [DVD(邦画)] 8点(2013-07-10 22:25:09) |
326. バスルーム 裸の2日間
《ネタバレ》 ライター志望の女学生は老コラムニストから学ぼうとアフローチするが、相手は女学生の体にしか関心がない。 マリア・バルベルデの相手役の老人がずーっとしゃべっててウザいことこの上ない。 下心まるだしの鼻持ちならない人間で、たるみきった皮膚にも嫌悪感。 知識人ぶった持論をもって文学や政治を理屈っぽく語り続けるが、それと並行して終始セックスさせろと言葉を変えながら口説いている。 哲学的なことを語っているかと思えば、それはいつの間にかおまえは俺とセックスするべきだという結論にこじつけられる。 これがあまりにしつこくあけすけで、必死すぎるその姿にだんだん笑えてくる。 恥も外聞もなく老醜そのものだが、そこまで開き直ることのできる強さと鈍さが女の心を揺り動かす。 そんなにヤリたいならヤラせてあげると根負けしたか。 バカな女が屁理屈説教ジジイとセックスしちゃった話といえば身もふたもないけれど。 老人は相手にされない自分をとことん蔑み卑下することで、女学生の罪悪感と同情を引き出したように見える。 女学生は老獪な企みにまんまとはまった感じ。 同年代の男より老人との新しい体験に興味を持ったのかもしれないが、ここは最後まで老人を惨めに落としてほしかった。 老いた男と若い女の価値観がまったく違っていて、そのギャップから生まれる葛藤が見どころ。 二人の会話だけで成り立っていて、しかも女と寝たいがための老人の口説きが大半を占めるという特異な作品。 動きがほとんどなく会話に頼っているため、どうしても単調になってしまうのが難点で、さすがに途中でダレる。 年輩者のやたら長くて興味のない話を無理やり聞かされている時に感じる、あの居心地の悪さとイライラ感と退屈感。 それでもちょっと邦画にはないおもしろいテイストはある。 制作費はめちゃくちゃ安そうだったけど、エロティックVシネマのようなチープなB級感ではない。 [DVD(字幕)] 5点(2013-07-08 22:18:06)(良:1票) |
327. 遊星からの物体X ファーストコンタクト
《ネタバレ》 『遊星からの物体X』は傑作だったが、それの前日談なので結末はおおよそ見当がつく。 この手の映画がネタバレしてると、面白さは半減。 それでも、誰がエイリアンかという疑心暗鬼の探りあいは見応えあり。 最後まで退屈せずに引きつけられるが、ご都合主義がかなり目につく。 怪物の触手が伸びたり、届かなかったりなど、スリリングにするために都合のいい設定が随所に。 ケイトがどうなったのかも中途半端。 前作で残った二人はいろいろと想像が広がる終わり方だけど、本作はその広がりがない。 前作が良すぎただけに、どうしても見劣りするのは仕方ないか。 [DVD(字幕)] 5点(2013-07-07 22:08:45) |
328. インセプション
《ネタバレ》 夢と現実を行き来してどちらにいるのかわからなくなる。 世界観が独特で、『マトリックス』と通じるものがある。 夢の共有や三層構造の設計、キックの定義など、そこにおけるルールや設定が難解で把握しにくい。 セリフのやりとりによって説明されているが、それだけではすんなりとは入ってこない。 深層心理を素材にした物語で、心理学の概念を応用しているのでその方面に明るいと受け入れやすいのかも。 ストーリーをおもしろくするために、都合のいいルールや設定をこじつけた感がある。 どうやって夢を設計し、他人の夢に潜入し、共有できるのか、そのメカニズムはあいまいで明確に描かれてはいない。 そこに整合性と説得力のあるロジックが成立しえないから、あえて省いているのか。 一部機器も装着しているようだが大掛かりなものではないので、まるでエスパーのように自在に夢に出入りしているようにも見える。 細かく見れば矛盾点や疑問点も出てくるが、もともと夢というのは論理的ではなく話がとんとん運んでいくもの。 この映画自体もそれと同じ感覚で、分析せずになんとなくわかったような感覚で受け入れるのが正しい楽しみ方なのかもしれない。 アイデアはとても独創的でおもしろく、特にコブとモブのエピソードには惹かれる。 サイトーの依頼した仕事をもう少しシンプルに整理して、コブとモブの話にもっと軸足を置いたほうがわかりやすかった。 戦闘シーンが結構長いのでそこは短くできたと思うが、アクションは売りものとしてしっかり見せたかったのだろう。 ラストのコマが微妙に揺れたところでカットアウトするのは、夢か現実かあえてあいまいにさせて解釈を委ねている。 そういう委ね方を映画ではときどき見かけるけど、これは作り手として少し無責任に感じるときもある。 いわゆる夢モノが性に合わないのと、シュールな世界観で自分の好みからは外れた。 [DVD(吹替)] 5点(2013-06-22 23:16:29)(良:1票) |
329. 孤高のメス
《ネタバレ》 田舎病院の新任医師は、誰もがこういう医師に担当してもらいたいと思わせるような理想像。 看護師をはじめ、よどんだ病院に違いをもたらしていく。 こういう話には弱い。ベタではあるけど、直球で後味が良い。 悪役がステレオタイプの嫌いはあるが、王道の医療ものとして安心して楽しめる。 『Dr.コトー診療所』の主人公と共通点が多く、手術は天才的だが恋愛には鈍感、命を救うことに全力を尽くす姿勢は心を打つ。 看護師役の夏川結衣が魅力的で、ちょっと切ないラブストーリーにもなっている。 堤真一、生瀬勝久、柄本明、余貴美子らのキャスティングもいいので、ありがちなストーリーでも魅せてくれる。 ただ、都はるみのBGMは狙いすぎか。 [DVD(邦画)] 7点(2013-06-17 23:33:29)(良:1票) |
330. ダークナイト ライジング
《ネタバレ》 スリリングではあったけど、出来の良かった前作よりパワーダウン。 盛り上げることを優先して辻褄の合わなくなっているところや説得力を欠くところが散見される。 ベインに完膚なきまでに叩きのめされたのに、これといったプラス要素もなく次にはやっつけていたのも都合のいい展開。 セリーナがなぜ過去をそこまで消したがるのかピンと来ないし、人物のキャラ設定や状況設定がいまひとつ明確に伝わってこない。 なので、その行動に必然性があまり感じられないところがある。 奈落から這い上がった子供がベインではなく女だったというのは上手く騙されたが、ミランダの犯行動機が陳腐で薄い。 [DVD(吹替)] 6点(2013-06-17 01:49:29)(良:1票) |
331. 鍵泥棒のメソッド
男に元カノが思い出の写真を返すとき、引越しで片付けたゴミ袋から探す。 もう過去のものとしている女と、その女に未練がある男の微妙な空気。 そうした小ネタにもウィットが効いている。 内田けんじ作品は、三谷幸喜を彷彿させるようなコメディで脚本が緻密。 スレ違い、勘違いでどんどん事態が思わぬ方向へ進んでいく。 都合がよすぎる嫌いはあるものの無駄なアイテムがなく伏線がすべて収束していくので、観終わったときにパズルがピタッとはまったような感覚がある。 これほど脚本のうまい映画監督は邦画ではちょっと他に見当たらないくらいで、今後も非常に楽しみ。 [DVD(邦画)] 9点(2013-06-12 19:36:52)(良:1票) |
332. 希望の国
《ネタバレ》 園子温監督らしくない作品で、肩透かしを喰らった感が残る。 どぎついほどの描写や問答無用に巻き込んでいくような展開は影を潜め、じっくりと正攻法で描いた社会派ドラマになっている。 過激で異常ささえ覚える演出を抑えたのは、原発事故がもたらす世界自体が異常だからか。 生きた証を捨てることができずに避難勧告に応じない夫婦。 認知症の妻と銃を手にした夫の最後の会話は、長年連れ添った絆が見えて胸に迫るものがある。 悲しい選択ではあったが、それしかないとの思いも伝わる。 その夫婦に苛立ちをぶつけていた若い職員が、次第に共感を示す過程が興味深い。 原発事故から生じたさまざまな不協和音に、事の重大性や罪の深さを考えさせられる。 ただ、この作品で描かれたことはドキュメンタリーを凌ぐかというとそうは思えず、改めて映画でやる必要があったのかどうか。 [DVD(邦画)] 6点(2013-06-11 00:14:38) |
333. DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る
AKBより完成度の高いK-POPほうが好きで、未熟さが目に付くAKBにはまったく興味はなかった。 ところが、このドキュメンタリーにはAKBの魅力が詰まっている。 AKBファンでなくても結構楽しめるものに仕上がっている。 秋元康は音楽としての完成度より、ドラマ性を重視してプロデュースしているのがよくわかる。 苛酷な試練を与えて追い込むことで、少女たちに何かしらのドラマが生まれる。 そのドラマ性に多くの人が魅了されるのだろう。 [ビデオ(邦画)] 6点(2013-05-28 19:03:51) |
334. テルマエ・ロマエ
《ネタバレ》 前半はコントのようで気楽に見ることができるが、ストーリーに中身がないので後には残らない。 後半の取ってつけたようなシリアス展開は違和感があったし少し退屈でもあった。 涙を流すと元の時代に戻るというタイムトラベルのルールにも失笑。 2時間近い映画にする必要があるのかどうか。 これなら続編があっても見たいとは思わない。 [DVD(邦画)] 4点(2013-05-27 22:31:40) |
335. DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?
これはファン以外の人が見ても面白くないだろう。 インタビューが多くてつまらなかった。 [DVD(邦画)] 3点(2013-05-20 18:50:34) |
336. ヒミズ
《ネタバレ》 園子温監督の描くいつものバイオレンスと狂気がここにもある。 おもしろい。おもしろいが、傑作とまではいかない感じ。 原作にはない震災を絡めたのは、狙いはわかるがあざとさが気になった。 ストーリーの中でリンクしきれていない印象が残る。 一番信頼するべき親から見捨てられ死までも望まれた子供達のやり場のない悲しみ。 「がんばれ!」「死ぬな!」「この世でたった一つの花よ!」「夢を持て!」 住田と併走する少女の叫びは、自分への励ましでもあっただろう。 教室での教師の上っ面の言葉とは重みが違った。 [DVD(邦画)] 7点(2013-05-18 23:31:37)(良:1票) |
337. トガニ 幼き瞳の告発
《ネタバレ》 韓国の聴覚障害者学校で実際に起きた事件が基になった作品。 事件発覚後も加害者は処罰を受けず、教壇に立ち続けていたというのが恐ろしい。 この映画が上映されて加害者への批判が高まり、「トガニ法」と呼ばれる法改正まで行なわれるほどの影響があった。 実話ではない部分も加えられてベタであざとい展開が少し気になるが、子役の演技がとにかくすばらしい。 加害者がこれ以上ないほど卑劣に描かれていることもあって、加害者への憎悪が掻きたてられる。 結局、弱者の味方になるべき検事も加害者に抱きこまれて、証拠を握りつぶされるあたりはフラストレーションも絶頂に。 揃いも揃って吐き気を催すほどのクズばかりで、極めて悲惨な内容だが、ラストでわずかな光が感じられるのが救い。 「私たちの闘いは世の中を変えるためではなく、世の中に変えられないためにある」 子供達を支え続けるユジンの手紙が、無力感に打ちひしがれていた主人公の癒しとなっている。 [DVD(吹替)] 8点(2013-05-14 01:44:34)(良:1票) |
338. 私の奴隷になりなさい
官能小説の映画化だが、壇蜜と板尾のSM的なやりとりがコントに見えて仕方がない。 エロ目的で観ても、中途半端な作品。 [インターネット(字幕)] 3点(2013-05-12 19:56:23) |
339. 恋の罪
《ネタバレ》 水野美紀は狂言回し的なポジションで、実質の主演は明らかに神楽坂恵。 体を売る裏の顔を持つ女に、すぐに東電OL殺人事件が思い浮かんだ。 やはりその事件がモチーフになっていたようだが、監督のオナニー臭が強くてわけがわからない。 イカれた登場人物の誰にも共感できず。 同監督の『冷たい熱帯魚』や『愛のむきだし』のほうが面白かった。 ただ、サスペンス性と迫力はあるので、最後まで退屈することはない。 [DVD(邦画)] 5点(2013-02-14 20:24:37) |
340. ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う
《ネタバレ》 石井隆監督のエロスとバイオレンスの世界。 竹中直人もよかったが、大竹しのぶの演技力はさすが。 目的のために人を殺すことにためらいを感じない家族と、それに振り回された人のいい男。 サイコな家族のどす黒さが、男の純真さを際立たせる。 仕方なく犯行に加担していたかのようにも見えたレンだが、三人の中で一番狂っていたことが露わになっていく。 あどけない少女をモンスターに育ててしまった鬼畜父との陰惨な過去が痛々しい。 佐藤寛子は一番難しい役どころで、その狂気を演じるには力不足の感は否めない。 クライマックスでの長~いモノローグシーンを一人でもたせるには、それこそ大竹しのぶ並の演技力と存在感を備えていなければ無理。 それができる若手女優がどれだけいるかと考えても、すぐには思いつかない。 ただ、佐藤寛子は足りないながらもグラビア出身らしい抜群のプロポーションを惜しげもなく晒す熱演でカバーしていた。 ラストの男と女刑事の食卓シーンは、陰惨な物語の救いになってくれる。 その食卓シーンに流れるエンドロールの東風万智子って誰かと思えば、真中瞳が改名していたことを初めて知った。 [DVD(邦画)] 7点(2013-01-26 09:28:27) |