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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  プリースト判事
ここでのウィル・ロジャースは特に判事の業務を行うわけでもない。 トム・ブラウンとアニタ・ブラウンの仲を取り持とうと、 ゴルフボールを飛ばし、茂みの陰で一人芝居をし、飴を伸ばしと、 ひたすら具体的に行動する。二人を物理的に近づけるために。  その周囲を、ステッピン・フォチェットら味のある黒人俳優が 音楽的なイントネーションで語らい、歌う。  さらには、ヤギやアヒルや鳥たちも視覚と聴覚を賑わかし、 大合唱が大団円を盛り上げる。  そんな飄々としたウィル・ロジャースが暗闇の部屋にランプを灯すと、壁に 飾ってあった妻と息子らしき肖像写真が明りの中に浮かび上がり、 それを静かに見つめる彼の顔が写真の家族と重なり合う。  こうした何気ない静かなひとときのうちに、 彼が若い2人のために世話を焼く心中までが 滲み出てくるようで、愛おしい。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-09-05 17:06:21)
22.  腰弁頑張れ
3巻足らずの短編に意欲的に詰め込まれた技法、そして喜怒哀楽の感情の諸相。  表札や鍋やポートレート、蛇口の水滴はことごとく落下することで無声映画の中に音を創出し、対比的な夫婦像・つましい暮らしを示す靴底の穴・模型飛行機・交通事故・金銭といった成瀬流意匠の諸々も巧みにユーモアとペーソスを形づくる。  前半の背景でのどかな風情をみせていた電車が後半には不吉を呼び込み、また前半の子供の喧嘩や居留守中の押し入れ内でコミカルに使われた飛行機が、後半では抒情のアイテムへと変容する。  ショックシーンで用いられるクロースアップ、画面分割、ネガ反転にディストーション。 不意の短いフラッシュバックとして挿入される線香花火、入道雲のショット。 同じく、暗い病床と模型飛行機の滑空の叙情的なオーヴァーラップ。 または洗面器の中で溺れる蠅のショットの悲壮と抽象性。 病室での大胆な表現主義的ライティングによるノワールスタイル。その柔軟で果敢な試行が若々しい。  一方で、病室の息子と夫婦それぞれの顔に注がれる光明は成瀬50年代の絶頂期にも負けぬくらい繊細で美しい。 
[映画館(邦画)] 8点(2012-02-13 20:15:12)
23.  生さぬ仲(1932)
岡田嘉子宅の洋間や、デパートのエレベーターにおいて無情に閉じられるドアが彼女の頑なさを物語る。 そのドア越し、窓越しに交わされる視線と叫びは、サイレントゆえに視覚から響いてくる。  当時のマイブームらしい、人物への度重なるトラックアップも実に雄弁である。 特に、岡田嘉子と対峙し正面からその視線を受け止める筑波雪子の凛とした表情へ寄るショット。そこから彼女の手を強く握りしめる小島寿子の手のショットへ。 その繋ぎの切迫したリズムがいい。  一方では、原っぱで筑波雪子の立ち居から腰を下ろす動作の繊細なカット繋ぎの自然な美しさが眼を瞠らせる。  その繋ぎで女優の一動作の美をさらに引き立ててしまう。まさに映画美。  シーンの繋ぎでは、ライターと煙草を介した場面転換に工夫が凝らされており、物語を巧みに紡いでいる。 
[映画館(邦画)] 8点(2012-02-12 20:09:41)
24.  未完成交響楽(1933)
アバンタイトルの風景画が粋にドラマへの導入を果たす。  ヴァイオリンを愛おしそうになでる手、ガラスに映る主人公のシルエットと、窓口を介したシューベルト(ハンス・ヤーライ)と質屋の娘(ルイーゼ・ウルリッヒ)の出会いのカットバックがまず素晴らしい。  質屋のチャイムの音色はさりげなく反復対比され、主人公の心情表現として響き、その窓口で娘が客を応対する声音の対比も、彼女のときめきを伝える。  あるいは彫刻の破砕音が凶兆を仄めかすなど、歌曲・楽曲だけでなく、風物を含めた様々な音響の活用にもトーキー初期の意欲が漲っている。  一方、天秤やメトロノームといった小道具の活用や、縦横無尽の巧みな移動ショットの充実ぶりも眼を瞠る。  小津のトーキー第一作『一人息子』の劇中にも借用された、マルタ・エゲルトが走る麦畑の横移動ショットがやはり際立って見事だ。  『一人息子』の日守新一は横で居眠りする飯田蝶子に目をやりながら、スクリーン上の主人公の姿に身につまされたのかも知れない。 
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-11-12 17:00:43)
25.  激怒(1936) 《ネタバレ》 
前半の善良な青年から、後半の荒んだ復讐鬼へ。スペンサー・トレイシーの変貌ぶりが憎悪の奥深さを雄弁に物語り、映画に濃い陰影を投げる。  保安官事務所に民衆が集結してくるモブシーンのクレーンショットが、その後の波乱を予感させて秀逸だ。 事務所が火炎と黒煙に包まれる中、暴徒の笑顔のクロースアップが短く積み重ねられるモンタージュによって彼らの禍々しく残忍な印象が一層際立つのも、一種のクレショフ効果か。 裁判の重要な証拠となるニュース映画のストップモーションと共に、インパクトが強烈だ。  ショーウィンドウや、「22」の視覚的記号と共に、私刑と復讐の主題系はドイツ時代から連なるフリッツ・ラングの特色だが、ハリウッド的甘味を折衷させたラストはやはりどこか、渡米後第一作の不自由を思わせる。  床屋のシーンや、裁判長の宣誓シーン、犬やアヒルのショットなど、暗い主題を中和するユーモアも随所に散らばり、作品のバランスに対する苦心と配慮を窺わせる。 
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-07-23 19:50:19)
26.  サーカス五人組
PCLに移籍してのトーキー第三作。成瀬作品には風物詩的に度々登場するチンドン屋(ジンタ)五人組が主役となる。  序盤中盤の楽隊行列やクライマックスのサーカス興業と、演奏も盛り沢山。 加えてアブラゼミ・ヒグラシ・鈴虫の音色など、夏の風情を醸す音も豊かに取り入れられていて、ロケーションの魅力と共に味わい深い。  そして素晴らしいのは、堤真佐子と梅園龍子が語り合う岸辺のシークエンス、同じく堤真佐子と大川平八郎が語りあう海辺のシーン。  それぞれ僅か数分にすぎない一対一の対話シーンなのだが、振り向く・腰を下ろす・横に並ぶ・顔を逸らすといった繊細なアクションが多彩な角度と位置から組み立てられ、的確かつ入念なカッティングで連繋されている。  梅園龍子が水辺に静かに腰を下ろす所作の美しさ。寄り添う姉妹の画面手前で静かに揺れている青草の情感。いずれも絶品のショットだ。  ラストの海岸沿いの一本道。見送り、見送られる二人の切ない切返しも陽光の明るさが二人を救っている。 
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-04-03 19:02:47)
27.  牧童と貴婦人 《ネタバレ》 
夜の霧が漂う船室のシーンは、トーランドの真骨頂。ソフトな画調に、マール・オベロンの瞳の潤いが美しい。船長室での結婚式のショットも、丸い船窓をバックにしたゲイリー・クーパーとのキスシーンも絵になっている。 一方で、尻餅をついたりプールに投げ込まれたりと、少々ぎこちないながらも可愛い仕草でコメディエンヌぶりも発揮していて魅力的だ。 ゲイリー・クーパーも朴訥で実直な役柄を好演。長身の風貌とキャラクターがよく合致している。 彼とウォルター・ブレナンらが建築中の家屋で繰り広げるパントマイムがとても楽しい。  そして結部で展開する緩急のリズムがまた素晴らしい。人物が賑やかにドアを行き来する中、いつしかマール・オベロンも交じって駆け回っている。 呆気にとられながらもドア向こうに駆けていくクーパー。母親がドアを開けると、隣室の台所では二人が熱烈にキスし合っているという畳み込み的ハッピーエンディング。  タイトでシンプルな締め方が実に粋だ。 
[ビデオ(字幕)] 8点(2011-02-17 21:21:17)
28.  綴方教室
『馬』同様の、一年間を追う構成(学期ごとの章立て)とセミ・ドキュメンタリー風の手法が特長的。セットなのか、ロケーションなのか、高峰秀子らが暮らす長屋の生活実感と風情が素晴らしい。雨のぬかるみ、大雨で川のようになった路地、馬車の嵌った水たまりなど、変化に富んだ表情を見せる路地の情景にも親近感をもつ。高峰秀子が窓外に目をやると、柔らかな光に雨滴が輝いているソフトフォーカスのショットの叙情性、近所付き合いや姉弟喧嘩のやり取りのほのぼの感なども忘れがたい。教室の終礼の場面で、後席の子が立った瞬間に鞄の重みで椅子が倒れてしまうショットがあるが、これは思わぬNGをそのまま活かしたものではないだろうか。全体の写実的手法の中から自ずと醸しだされた巧まざるユーモアといえるだろう。卒業式を終え、学友たちと一本道を歩いていく後ろ姿で終わるかと思いきや、続いて就職した彼女が画面に向かい笑顔で前向きに歩いてくるショットに繋がるという、幸福感に満ちた粋なエンディングが素敵だ。
[映画館(邦画)] 8点(2009-12-24 20:46:43)
29.  ラ・マルセイエーズ
平民側、宮廷側の双方からフランス革命を描く。群像劇らしく、モブシーンにおいても個々の人間それぞれに焦点を当てるかのように、クレーン移動の多用によってエキストラ一人一人を丁寧に映し出していくキャメラが素晴らしい。義勇軍のマルセイユ出発時、パリ到着時、宮殿突入前の整列場面のスケール感に満ちた長大な俯瞰ショットや、木漏れ日の中を行軍する隊列のショット等は単なるスペクタクルに留まらない人間味と悲喜の感情に溢れた名場面である。平民側の主役というべきボミエが義勇軍に志願する場面での、家族とのやりとりの淡々とした切なさ。ルノワール映画の刻印ともいえる特徴の一つ、窓を介して彼が小さく走り去っていくのを捉えた素晴らしいショットが忘れがたい。一方の国王側の描写もまた一面的になることはない。ユーモアを交えた食事場面などによって、国王・王妃らの等身大の人間性が描きこまれており魅力的である。演出、役者の好演のみならず、まさにルノワールの人間観の表出の賜物といえる。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-14 23:15:54)
30.  土と兵隊
冒頭で西へ進む輸送船が立てる白波とオーヴァー・ラップして、上陸後の兵士たちの突撃をカメラは側面から捉える。その行軍の模様は全編一貫して画面右手から左方向へとなるよう厳格に構図が設定されており、その反復と一貫性は行軍の、ひいては戦争というものの単調さと過酷さをあえて執拗に強調しているかのようである。戦闘場面でもやはり、側面位置からあるいは部隊後方から画面奥方向への望遠のいずれかによって組織行動を客観的に映し出し、特定個人のドラマが大きくクロースアップされることはほとんど無い。注目すべきは小火器による地道な砲撃で家屋の外壁を徐々に突き崩していく様を克明に捉えたモンタージュであり、日中戦争自体を象徴化したものととれる。一方では人間たちが行軍する足元の草花や、休憩中に空を流れる雲、廃墟をうろつく動物たちの写実的な点描が戦争行為を相対化させ、映画は無常観すら漂わす。あくまで刻苦や精励に主眼を置き、安易なヒロイズムや愛国主義とは無縁の行軍描写は『五人の斥候兵』に対するルース・ベネディクトの指摘のように「反戦」的とすらいえる。検閲制度のさなか、時局への迎合に対しぎりぎり踏みとどまる田坂監督の矜持と誠実さを示す作品である。
[ビデオ(邦画)] 8点(2009-02-11 22:06:46)
31.  ショタール商会 《ネタバレ》 
巻頭から伸びやかに動き回りショタール商会の舞台と人物を一気に見せていく長回しのカメラがまず圧巻である。 そこではメインキャストのショタール(フェルナン・シャルパン)が精力的に動き回って店を仕切っている。 小太りだが、彼のまくしたてる早口とダイナミックかつシャープな身振り手振りが最後まで画面を活気づけて面白い。  商売には向かない詩人の婿を追い出したものの、彼が賞を取った途端に手の平を返す身勝手なキャラクターだが、身振りの滑稽さが憎めない。 はしゃぐ彼にキスされる少女の迷惑そうなリアクションなど傑作である。  窓を介して部屋と屋外を同時に提示するルノワール的ショットも満載。  舞踏会の喧騒、音楽、戦場の銃撃音など、盛大にトーキーを鳴らしたいという稚気が画面から溢れている。
[DVD(字幕)] 7点(2016-09-23 22:54:11)
32.  ボヴァリー夫人(1933) 《ネタバレ》 
本来ならば190分の作品が無残にも半分以上切られてしまっているのだから、 現在残されているバージョンで物語を追おうとすることには無理がある。 特に前半部の欠損が多いのか、いきなり場面が結婚後に飛んでいたりと展開の 慌ただしい事この上なく、混乱すら来たしてしまう程だが、それは少なくともルノワールの非ではない。  逆に物語を放棄する分、それぞれのルノワール的画面の映画性をより良く味わえるだろう。  確かにヴァランティーヌ・テシエは薹が立った印象でヒロインとしての魅力には欠けるのだが、 終盤の病床シーンの芝居などは圧巻だ。  家禽の行き交う田園風景の風情や、並木道を進む馬車の縦移動の緩やかな運動感もいい。 屋内シーンでもぬかりなく窓を解放しドアを開閉し、外の世界の広がりを豊かに画面に取り入れる。  パンフォーカスによって二間の部屋の奥、その又先にある屋外空間の事物・空気まで意識を伸ばしている。 『市民ケーン』(1941)に先駆ける、この意欲的な世界把握。傑出と云っていいだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-13 16:55:07)
33.  左側に気をつけろ
スラップスティックとしてのスピード感と破天荒ぶりでは 『チャップリンの拳闘』に敵わないが、 その軽快で飄々とした緩いペースこそジャック・タチらしさだろう。  郵便配達の自転車の軽快な疾走に始まり、走り去る自転車に終わる、 全編通してののどかな屋外のロケが瑞々しく、 陽の降り注ぐ野外のリングで行われるボクシングや、 いたるところで登場する沢山の動物たちのランダムな動きと共演が大らかでいい。 ヌーヴェルヴァーグの先駆けともいえる。  軽いフットワークでボクサーの動きを模写をする ジャック・タチのコミカルなパントマイム。 後に『右側に気をつけろ』を撮るゴダールが 自作中でよく取り入れるシャドーボクシングの身振りの原型がここにある。  トーキーだが台詞は相当に省略され、 手引書の図解を利用したギャグを始め、 サイレント的な身振りによる語りが冴えている。 
[ビデオ(字幕)] 7点(2012-06-27 23:57:36)
34.  女優と詩人
PCL移籍後のトーキー第二作目。夫婦喧嘩、隣近所の付き合い、二階住まいの下宿人といった後の作品でもお馴染みのモチーフにユーモラスな味付けがされている。序盤の凧上げシーンのギャグや、襖・引き戸の開閉のアクションだけで施される人物表現など台詞を省いたサイレントスタイルの面白味を残す一方、趣向を凝らしたトーキー演出(舞台俳優という設定を活かした台詞のギャグ・噂話・童謡のBGM・オフ空間の騒音など)も様々に試みられている。宇留木浩の朴訥でとぼけた感じの台詞廻しや、千葉早智子が夫を呼ぶ声のトーンの愛嬌。隣家の亭主役である三代目三遊亭金馬が童謡のレコードに合わせて踊る酔っ払い演技や、その妻役:戸田春子のお喋りっぷりなどそれぞれに愉快だ。ファーストシーンに呼応する同一構図の風景描写の後、勝手口から登場するのが今度は千葉早智子という洒落た結びが冴えている。彼女の台詞「もう少しよ~。」がまた非常に可愛らしい。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-05-15 19:26:04)
35.  禍福 後篇
入江たか子と竹久千恵子は互い同士の目撃・窃視を通した視線劇の中で、あるいは病に伏せる者を共に看病するという成瀬的モチーフの中で関係していくのが興味深い。その看病への布石として、かつ映画的アクセントとして遊園地を活用する巧さ。今川焼き店での店番のエピソードもさり気ないながら伏線として効果的だ。帰港する客船のショットや、築地ふ頭近辺の情景などはやはり作家としての水辺の光景へのこだわりか、これらも違和感なくドラマの中に納まり豊かなイメージを作り出している。技法的には、松竹蒲田のサイレント作品『夜ごとの夢』などの頃は濫用の気味もあった急激なトラックアップの技法を前後篇通してただ一箇所、ここぞの場面のみに抑えて無音と共に効果を挙げている。アクセントという意味では衣装も同様。洋裁店に従事しながらも一貫して和装を崩さなかった豊美(入江たか子)が、作品の最後に両篇通じ初めて洋装で登場する。これも、彼女の心機一転を視覚で語ってみせる作家の仕事だ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-04-24 17:51:37)
36.  力と栄光 《ネタバレ》 
時間推移が、カメラをパンさせながらのオーヴァーラップや影を落とすエフェクト等で様々に表現されるのだが、それもあまり統一感はない。 技法というよりはドラマの語りの点で『市民ケーン』の原型だといえる。  成り上がった主人公スペンサー・トレイシーの浮気の告白、それを聞いた妻コリーン・ムーアの末路、息子の堕落。 そこから遡って、新婚時代の幸福なエピソードを見せていき悲劇性を際立たせたのはプレストン・スタージェスの巧さという事だろうか。  親友役のラルフ・モーガンが妻に語り聞かせる形式だが、顛末の全真相を語りきってしまうのも少々無理を感じさせる。 そうした諸々の改善の積み重ねが後のウェルズの達成に繋がったようにも思える。  新婚時代の夫婦の姿と、彼らの後景の窓外を走る汽車のショットなど、画面的に『市民ケーン』を思わせる断片も随所にある。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 6点(2016-12-04 06:04:27)
37.  肉弾鬼中隊(1934)
偵察隊のメンバーが単発で狙撃されていく際の簡潔であっけない音響が逆に怖い。  隊員達の間で交わされる対話は、故郷の家族のことであったり、 マレーシアの思い出であったり、12時間後に祖国英国を照らすだろう月の 美しさであったりするが、それらの回想場面は一切入ってはこない。 映画はひたすら現地現在進行形で進み、観客は俳優の表情や語りから その会話内容に思いを馳すことになる。  が、この人数でこの尺ではやはり無理があったか。 隊員個々のプロフィール描写も淡白にならざるを得ない。  砂漠に立てられた6本のサーベルの墓標も、欲をいえば逆光で撮って欲しかったところ。 やはり相応の尺を獲得してこそ、『七人の侍』の墓標は強烈な イメージとなったのだろう。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2014-09-05 21:12:19)
38.  坊やに下剤を
トーキー第一作として、うがいや水洗トイレなどの水をめぐる音響を まず採り入れるあたりがルノワールらしいが、 何よりも全編ひっきりなしの対話の応酬が耳を引く。  連音(リエゾン)を巡ってのやりとりや、大仰な感嘆詞の連発など、 フランス語の発音自体の面白味をトーキーに活かしている。  主要な登場人物は5人、舞台は主に4つの屋内空間という簡素さ。  カメラはフィックスのフルショット主体で、登場人物の芝居も演劇調だが、 ドアからの出入りの活用と、複数のカメラでのアクション繋ぎによって 画面にアクセントを付けている。  印象的な効果音は、おまるの破砕音と水洗トイレの水流音。  少々物足りない感もあるが、あれもこれもと欲張らない分、 その即物的な音響はストーリーと絡んだ形で響き、 SEだけを浮き上がらせてはいない。そこが賢明なところだ。  お話自体は他愛ないが、スピーディなダイアログが映画を満たしている。 
[DVD(字幕)] 6点(2012-06-24 08:46:55)
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