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よしのぶさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  くじけないで 《ネタバレ》 
柴田トヨはいまの高齢化社会を象徴するような詩人だ。90歳で詩作を初め、98歳で初詩集出版。徐々に認められ、「百歳の詩人」として一躍有名になった。過去に例をみないことだ。詩の特徴は、なんといっても言葉からにじみでる“優しさ”だろう。うまい、へたを越えている。映画は、時折トヨの詩を織り交ぜながら、その半生を丁寧に描いていく。 劇的な人生を送ったわけではないが、それなりに起伏がある。実家は裕福な米屋だったが、大正の米騒動で家が傾き、奉公に出された。最初の結婚が夫の暴力などにより縁切りになった。空襲のさなか、二番目の夫となる大工の男性から求婚される。そして息子、義一という子宝に恵まれた。息子もやがて結婚。その息子夫婦との関わり合いを中心に物語は進行する。嫁はしっかり者だが、この息子というのが曲者なのだ。 若いときに小説家をめざすが挫折。結婚するものの、定職にはつかず、時に職を得ても長続きしない。競馬、競輪、パチンコなどギャンブルが趣味。妻の保険外交員としての稼ぎが家計を支えている。父親と顔を合わせれば喧嘩をし、母親にはギャンブルの資金を無心にくる。いわゆる問題児、馬鹿息子の類だが、“根はいい人”。90歳過ぎて精気の失せた母を気遣い、脳の活性につながると詩作を勧め、添削も行う。そして何とかお金を都合し、詩集出版にこぎつける。 柴田トヨは人生を完走した人だ。詩という言葉の翼を得て、あるときは乙女時代の想い出を、ある時は夫への愛情を、ある時は母の強さを、ある時は自然と生命の賛美を、陽だまりのような優しさで綴った。その優しさがあればこそ、息子夫婦は決して母を見捨てなかったし、それが稀有な高齢詩人の誕生につながった。トヨの詩は三人の合作ともいえるだろう。彼女の詩は優しさだけではない。人生に前向きな姿勢が人生の応援歌として読者の心をゆさぶるのだ。「九十八歳でも恋はするのよ/夢だってみるの/雲にだって乗りたいわ」詩人の特質は、みずみずしい感性と豊かな想像力であり、年齢は関係ないことを証明している。 出演者の演技が自然で良い。脚本も無理がなく好印象。感動させようという過度な演出は薄い。登校拒否の少女や患者を救えなくて苦悩する若い医者の挿話も上手に取り込んでいる。残念なのは、冒頭場面だ。手振れカメラによる超顔アップとパンの連続の演出意図が不明である。
[映画館(邦画)] 8点(2013-11-04 13:00:43)
22.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 
巨匠は“画力”が凄い。飛行機が生物のように息づく。関東大震災の地震の迫力、逃げ惑う群集の緻密さ、雲の描きわけ、背景の草原の草や流れる水も生き生きとしていた。ゴッホの絵画を観るような生命の躍動を覚え、夕日を眺めているような懐かしさも覚えた。画だけでも観る価値がある。世界に誇れるアニメだ。あえて苦言を。堀越二郎の物語だから、ゼロ戦の完成で終点だろうと予想していたが、九試の完成で終ってしまった。ゼロ戦登場はラストの残骸と夢想の編隊のみだ。堀越氏の最も苦労した太平洋戦争時代を飛ばしたのは、「戦争と人間」という主題を避けたかったからだろう。「美しいもの=飛行機」の夢を追い求めると、戦争兵器の設計に関わざるとえなかったという苦悶は感じられない。二郎の人物像の掘り下げが不十分で、生身の人間として映らない。積極的に行動することは少なく、本質的に受け身なのだ。仕事は与えられたものを文句もいわず淡々とこなし、対人関係で問題を起こさない。性悪な人も登場しない。恋愛も受け身だ。菜穂子の女中を助けたあとは、偶然の再会、菜穂子から告白、菜穂子が病院を抜け出し、押しかけ結婚、菜穂子去ってゆく。「美しい姿だけ見せたかった」というが、恋人同士ならまだしも、夫婦間でそんな美学はありえないだろう。本音で語り合い、共に苦労し、助け合ってこそ真の夫婦である。又「愛と死」が主題なのに「死」を描かなかった。特攻によるパイロットの死、妻の死、大空襲、無数の戦没者。戦闘機と死は切っても切れない関係だ。死を描かずに戦闘機の設計者の人生を描くのは不可能だ。残念ながら、底の浅い人物描写でしかない。主人公の愛、苦悩、喜び、怒り、憎しみ、悲しみが感じられてこそ、心の糧となり、感動があり、人間は素晴らしいと思えるのだ。二郎は戦争、妻の死を経ても成長していないと思う。それは妄想の中での師匠との軽い対話でもわかる。「君は生きねばならん。その前に、寄っていかないか?良いワインがあるんだ」日本の敗戦をこれほど軽く描いた例は稀有だ。意味ありげに特高や反ナチのドイツ人が登場したりするが、本筋とは無関係。一本、筋の通った筋書が出来ず、どこを終点にしようか、迷った跡がある。風の使い方は良かった。風で飛んだ二郎の帽子を菜穂子が掴み、風で飛んだ菜穂子のパラソルを二郎が押さえる。愛も戦争も風のように過ぎて行った。けれど生きてゆこう、夢の翼に乗って。
[DVD(邦画)] 8点(2013-09-25 22:26:41)
23.  踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ! 《ネタバレ》 
一風変わった事件が発生し、所轄の下っ端刑事たちが、横柄で独善的な警視庁本庁の面々の鼻をあかして事件解決、というのがお約束の筋立て。そこにカタルシス(感情浄化)があるわけだが、本作品ではその点なおざりにされ、対立や軋轢があいまいのまま終始する。多くの人物を描くのに熱心のあまり、基本を忘れてしまったようだ。以前の作品では、青島刑事の活躍が物語の中核にあるが、驚いたことに、今回ほとんど活躍しない。鋼鉄シャッターに木製杭を打ちつけ、穴を開けようとする奇妙な行動が目立つのみ。内容は、12年前に公開された劇場版第一作の続編で、何をいまさらの感がある。脚本はチグハグが目立つ。 最も疑問に感じたのは次の部分。実行犯達は新湾岸署ビルを人質ごと封鎖し、猟奇殺人犯の日向真奈美の釈放を要求した。電源をオフにすることで新湾岸署ビルの封鎖は解かれ、実行犯が確保され、事件は解決しているのに、何故青島は目の前にいる日向を確保しないのか。一緒に旧湾岸署ビルに入って、時限爆弾が炸裂、ガラスが全て割れるも何故か二人は無傷という不思議な展開。他に目についたものを上げると。 ①釈放した囚人を理由なく射殺するという安易な決定。 ②肺がんが濃厚なエックス線画像を単なる撮影ミスでしたで片づける。 ③亡くなった和久刑事の親族を安易に登場させる。 ④拳銃の管理があんないい加減な筈がない。 ⑤銀行の金庫を開錠したが何も取らなかった。バスジャックを起こして乗客から財布を集めたが結局奪わなかった。この理由がはっきりと説明されていない。 ⑥毒ガスがフェイクであったのはわかるが、スカンクやワニを登場させるのはおちゃらけが過ぎる。
[DVD(邦画)] 5点(2013-09-10 21:09:49)
24.  ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 《ネタバレ》 
全編「007」のパロディに終始するコメディ映画だが、歯切れが悪い。 コメディに徹しきれていないのだ。政府首脳を暗殺する悪の組織があり、全うな筋書があり、裏切りや友情、恋愛があり、アクションがあり、オチがある。雪の崖上に建つ敵の組織の要塞をみればわかるが、相当な予算をかけている。映画作りを半分真面目にやっているのだ。そうではなくて、もっとバカバカしく、おちゃらけて、笑える内容にすればよかったと思う。主人公ジョー・イングリッシュが、ミスター・ビーンズのように突き抜けたおとぼけキャラクターになっていない。ジョーをサポートするタッカーのおまぬけぶりも中途半端だ。どうせなら二人で徹底的にボケて、名コンビを組んでもよかった。 脚本はよく練られていて、笑いどころは沢山用意してある。残念なのは見せ方がうまくないこと。例えば車椅子でのカーチェイスの場面。アイデアは秀逸だが、爆笑にはつながらない。音楽の使い方やスローモーションなどでコミカルさを強調するなどの工夫が欲しい。最後の大ネタ、女王陛下を叩く場面は爆笑した。
[DVD(字幕)] 6点(2013-09-06 22:16:35)
25.  THE GREY 凍える太陽 《ネタバレ》 
石油採掘場で狼退治の仕事に携わる射撃のプロ、オットウェイが、 人生に絶望して銃自殺を図るという意表を突く冒頭部分から、 翌日乗った飛行機が墜落してしまうという意外な展開へなだれ込む。 幸運にも軽症で済むが、奇跡的に助かった7人に猛然と吹雪と狼が襲いかかる。 生きのびるためにどういう行動を取るのか? 突如自然の脅威にさらされ、極限に追い込まれた人間の心理状態を描くのが主題。 最も予想外だったのは、オットウェイは狼退治のプロなのに銃を使わないこと。 自分のライフル銃を雪中に発見するが、壊れていたようで、捨ててしまう。 これでは、狼退治の専門家で射撃のプロという設定が無になってしまう。このことが最後までひっかかった。 散弾銃の弾を枝につけて武器にする場面があるが、結局使わない。 彼が人生に絶望したのは愛する妻が死んだから。父も母も既に亡く、天涯孤独だ。 そんな彼が極限のサバイバル経験と他の生存者との交流を通じて、生きる勇気と希望を取り戻す魂の再生物語とも思ったが、それも違った。 彼は最初から十分なリーダーシップを発揮し、他者の面倒をよく見、声をかけ、励まし、狼を度々撃退するなど、大活躍し、心の弱さは微塵も感じられない。以上述べたような演出にはなはだ疑問を感じる。 言いたい事の焦点が絞られていないのではないか? 生存者は一人一人と消えていくが、彼らの人生が観客の心に重くのしかかるわけではない。 彼らの反応、行動は想定内で、これといった印象も残さず、「型どおり」に消えていく。 狼の恐ろしさはよく描けているが、ところどころに作り物めいたところが見え、恐さは薄らいでいった。 普通に考えれば、飛行機の残骸でシェルターを作って立てこもり、救出を待つのが正解と思う。 あの状況で森に逃げ込む人は、まずいないだろう。 狼から必死に逃げたあげくに狼の巣にたどり着くという皮肉な結末を用意した意図は何だろうか? 人生には逃れられない運命があり、結果はどうであれ、最後まで諦めずに戦うことが人間として最も勇気ある行動だ、とでもいいたのだろうか。死者の財布を持ち帰る美談があるが、重くかさばるので、写真と免許書類だけでよいと思った。 自然の猛威を示す映像は申し分なく、狼との戦いも迫力がある。何より音響効果が素晴らしい効果をあげている。なので一見の価値あり。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-04 09:01:15)(良:1票)
26.  LOOPER/ルーパー 《ネタバレ》 
素晴らしい脚本だ。タイムマシンをマフィアものに適応する新視点。SF、暴力の姿を借りているが主題は「人間愛」で、真摯な命題を含む。謎の出し方が巧みで、最後までサスペンスが持続する。タイムマシンがマフィアの処刑に使われるという奇抜な設定。処刑人ルーパーの無機質な仕事・生活ぶり。将来の自分を処刑する苛酷な運命。未来でレインメイカーという素性不明のボスが君臨し、ループを閉じる。ヤングジョー(YJ)はオールドジョー(OJ)を処刑したが、そのYJが未来で妻を殺され、未来を変えるために再びYJの元へ現れるというパラレル世界の提示。子供のシド(未来のレインメイカー)が「ママを死なせちゃった。止められなかった。今のママは本当のママじゃない」と口走る。シドの驚異的なTK(念動力)。YJの最後の意外な選択。と中だるみがない。一見無関係に見えるシドの母サラの登場場面が多いのは、実は「母」が隠れた命題だからだ。YJが悪に染まったのは母親の育児放棄が原因で、育ての親のボスに恩義を感じている。優しい母の思い出は、頭を撫でられたこと。それで売春婦に頭を撫でてもらう。エンディングでサラが死体のYJの頭を撫でるが、これはサラが母親として再生したことを示す。サラが母の自覚をもち愛情深くシドを育てることで、シドがレインメイカーとなる運命は消滅する。結果、現在から消滅したOJは妻と平穏に暮らす。YJは、シドがレインメイカーとわかったとき殺害しようとしたが断念した。情が移ったからだ。サラと肉体関係を持つことで彼女をより深く知ることができた。OJはレインメイカー候補の、結果として無垢な子供を殺し、組織メンバーも大勢殺し、シドも殺そうとした。それでも未来は変えられなかった。未来を変えたのは、YJの愛を信じる信念だ。YJは自身の生い立ちと母親との関係を鑑み、サラとシドが母子の絆を取り戻すことが最上の結末であると知り、二人にはそれが出来ると信じた。だから自分の命を捧げた。キッドが育ての親のボスに対して想像以上の愛情を感じているのも命題を補完している。不要と思えたウエイトレスが後に意味をもつなど、無駄な場面がない。フランス行きを中国行きに変えたのは、未来(OJの処刑)が現代を変えることの象徴。残念なのは低予算のため、舞台を麦畑にしたこと。麦畑の隣に簡易食堂があったり、女手ひとつの農場など無理がある。TKの必然性は薄い。
[DVD(字幕)] 9点(2013-08-03 18:17:36)
27.  テール しっぽのある美女 《ネタバレ》 
老人の遺体が森の小屋近くで発見された。何年も前に獣に殺されたとおもわれるもので、犯罪現場の特殊清掃人レオとエルビスが派遣された。レオは物事に動じないが、エルビスは何事にも敏感に反応するという好対照のコンビ。二人は小屋で秘密の地下室を見つける。埃の積り具合から何年も使用されていない。研究用の部屋があり、古い缶詰が残され、バスタブには白濁水が張ってある。テープを再生すると、老人の声が流れるが、何について語っているか判然としない。服から遺体は軍医とわかる。エルビスが装置の管をいじっていると、突如、バスタブから素裸の美女が飛び出して倒れ込んだ。白い肌、豊満な肉体。驚愕する二人。エルビスが近づくと、美女は跳ね起き、首を絞める。レオは美女を落ち着かせ、服と食料と水を与える。冷蔵庫には尻尾が保存されていた。美女の手がレオに触れると、彼女の過去が断片的に伝わってきた。軍医は未発見生物の赤ん坊を森の中で発見し、軍の研究施設に持ち帰った。ターレと名付けられた生物は驚くべき順応をみせ、人間に似た姿に成長した。情の移った軍医は、彼女を施設から連れ出し、森の小屋に隠れ住んだ。尻尾があるとターレの仲間から感知されるので仕方なく切断。そこまで判明したとき、武装した軍の組織に取り囲まれてしまう。謎の多い映画だ。ターレの正体は、北欧の伝説上の生物「フルドラ」とされる。美しい容姿に牛の尻尾を持ち、美しい歌声で人間の男たちを誘惑し、怒ると老婆の姿になるという。本作品では残忍な一面も見せる。単なるホラーで終らず、二人の友情を描いているのも特徴。レオは肺ガンと宣告されていたが、事件後ガンの影は消えていた。ターレの治癒能力によるものだ。エルビスには娘がいたが、貧困を厭った妻が去り、娘を誰かに預けていた。事件後レオの説得により?妻が戻り、三人は元のさやに戻る。明るいエンディングは、逃走したタールの未来を暗示している。冒頭、反吐を吐く場面を何度も映すが、これは減点。フルドラのCGは不出来。【疑問】①ターレは数年間をどうやって生きのびた?どうして小屋を出なかった。②小屋の電力供給方法。エンジン式発電機では何年ももたない。③軍の組織の正体。④軍の組織のリーダーが老人。⑤フルドラがリーダーの死体を持ち去った理由。⑥フルドラはどうして二人を襲わなかった?⑦軍とフルドラはターレの居場所をどうやって知った?
[DVD(字幕)] 6点(2013-08-02 12:34:45)
28.  アイアンマン3 《ネタバレ》 
三作の中では最も良かった。常に緊張した場面や戦いがあり、中だるみの部分がほとんどみられないのがすがすがしい。 前作の反省を踏まえてか、トニーが精神病に悩み、克服する挿話と恋愛部分は最小限にとどめ、敵役との戦いを何段階にも描いているのが成功の要因だろう。子供を登場させ、物語を明るくしたのも成功の一因。やはりヒーローものは明るいのがよく似合う。 ところで敵役キリアンは何をしたいのか?彼はウイルスにより遺伝子を書き換え、脳の未使用領域を利用して人の能力を飛躍的に向上させる「エクストリミス」というバイオ・テクノロジーを完成させた。これにより、体温は3000度にまで上昇、肉体は鋼鉄のように改造され、、肉体の欠損箇所も再生可能な超人に生まれ変わる。一種の不死ともいえる。しかし体がウイルスを受け入れない場合は爆発してしまうという不完全なテクノロジー。荒唐無稽と一笑してしまえば物語が成立しないので、受け入れるしかないが、これなら「宇宙人が責めてきた」という設定の方がまだわかりやすかった。キリアンはこの素晴らしいテクノロジーを平和利用する気はなかったのか?テロを起こしたり、大統領を殺したりして、何をやりたい?彼の経歴から推して、社会に対する強烈な復讐心を持つとも思えないなど疑問が残る。前2作品はメカ対メカのシンプルな戦いだったが、今回はメカ対改造人間。改造人間は飛べないし、飛び道具も持たないのに対し、アイアンマンは遠隔操作できる上に、30数体も登場する。敵の目的が不明な上に弱いのでは話にならない。TV電波ジャックができるくらいの頭脳があるのなら、対アイアンマン戦略も万全にして戦ってほしかった。ヘリで家をミサイル攻撃するなど、おおざっぱすぎて感心しない。 トニーの恋人ポッツが、改造人間になり、アイアン・ウーマンになるのには笑うしかなかった。一種のファンサービスと割り切ろう。 SFアメコミヒーローものだが、やっていることは西部劇と変わりない。善が悪を倒すのだ。「かっこよさ」は西部劇に軍配が上がる。人間が描けているからだ。アイアンマンには真の困窮者も貧困者も社会的弱者も登場しない。荒唐無稽なヒーローと巨悪が存在するだけだ。頭を空っぽにして見る映画。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-01 23:15:22)
29.  アイアンマン2 《ネタバレ》 
前作では、巨大軍事企業の社長かつ天才科学技術者トニー・スタークが、テロ組織に拉致され間一髪のところで生還した経験から、自分の進むべき道を問い直し、会社の軍事部門を廃止し、戦闘スーツを身に着け世界を守るヒーローとしての活躍を始めると意思表示をするところで終る。 本編では、アイアンマンのおかげで各地の紛争は鎮静化され、平和が維持されているという場面から始まる。 ヒーローの活躍場面が省略されているわけで、物足りない。 代わりに、その余りの威力を危惧した国から、軍事兵器として接収されそうになるという、ヒーローの活躍に水を差すような展開になっている。 このヒーロー、飄々としているのは良いが、おちゃらけが過ぎるのが難点だ。 前回では拉致された際に受傷し、生命の危機に瀕するという真摯な場面があった。 だから、他の場面で見せるおちゃらけとバランスが取れていた。 今回は徹頭徹尾、おちゃらけ路線。これでは、危機が危機におもえなくなってくる。よって感情移入もない。 酔って踊りながら、群集の面前で火器を使用しての西瓜割りなどの危険行為も目に余る。 第二のアイアンマンも、トニー監視役の友人が、暴れるアイアンマンを止めようとして着用するというさえない登場の仕方をする。いわば仲間割れで、集中心が削がれる。 恋愛パートだが、毎度痴話喧嘩レベルの言い争いの繰り返しで新鮮味がない。秘書を社長にしたのはよいが、軍事会社が軍事をやめてなにをしているのか? 父親が遺したフィルムをヒントに新動力源を発見する挿話はよかった。冷めがちだった父親との絆を深め、人間らしい感情を取り戻した瞬間だ。 さて、ライバルだが、トニーの父親の元同僚の息子イワンが、父の研究を奪ったトニー父子に恨みを抱いているという設定。 独自開発した戦闘スーツでトニーを急襲するものの撃退される。しかしトニーのライバル企業のハマーに救出され、新兵器の開発に協力する。最終的にイワンはハマーを裏切り、新兵器軍団を伴ってアイアンマンを襲うという、どうにも複雑な展開。善対悪の戦いになっていない。この外にシールドやブラック・ウィドウなどが登場し、流れが途切れがち。これでは、いくら戦闘場面が魅力的であっても爽快感は得られない。スーツケースからの流麗な変身場面のみ印象に残っている。
[DVD(字幕)] 6点(2013-08-01 13:05:43)
30.  相棒 -劇場版Ⅱ- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜 《ネタバレ》 
まさに前代未聞!警視庁庁舎内の会議室で、警視総監、副総監以下12人の上級幹部を人質とした篭城事件が発生した。 犯人は一人だが、拳銃で瞬く間に並み居る幹部らを制圧、非常に手際がよい。それでいて要求はなく、時間をくれというばかり。一体何者?何の目的で?謎は膨らばかり。こうして特命係の一番長い夜が始まった。今後どういった展開を見せるのか、期待をもたせる順調なすべりだしだ。 だが、犯人の身元はすぐに割れ、機動部隊突入によるもみ合いの最中、犯人は射殺されてしまう。緊急時の正当防衛ということで事件は落着、呆気ない幕切れとなる。特命係の右京らは独自に捜査を始める。犯人は元警察官の八重樫で、動機は7年前の反米テロリスト事件に絡んだものと推定された。捜査が進むにつれて、反米テロリスト事件の黒幕は実は公安警察で、中国人マフィアを利用してテロ事件を捏造したものと判明する。動機は、公安の存在意義を世間に認知らしめること。証人隠滅を図って船ごと爆発させるという悪辣なもので、警察官一人が巻き添えとなる。 これに警視庁幹部らの隠ぺい工作、テロリスト事件で婚約者を亡くして復讐に燃える女性警察官、警察庁と警視庁の権力争い等の要素が絡む。単純な事件から複雑な事件へと変貌するが、謎解きの面白さはさほどない。謎はさくさく解けてしまうし、最大の証拠である会議室での録音データは監察官から送られてくる。元々、刑事もので警察内部犯行というオチは芳しくない。現実味が薄い上に、後味が悪い。公安のでっち上げ事件は荒々しすぎて荒唐無稽だし、中国人をイスラム系テロリストに見せかけるのにも無理がある。もっと”らしい”事件にすべきだった。懲戒解雇された生活安全部長が、それだけで警察庁官房長を刺殺するだろうか?また八重樫らが、証人である意識不明の中国人を連れ出して1年間も監禁したのは人道的問題がある。それに窮したとはいえ、元警察官が人質事件を起こすだろうか?警察上層部が真相を握りつぶそうとしても、マスコミに訴えるなり、ネットに公開するなり、裁判を起こすなり、いろいろと手段はあるはずだ。女性警察官は、黒幕の正体をどうして知ったのか?いきなり射殺しようとしたのにも違和感がある。公安はどうして八重樫の隠れ場所を知ったのか?疑問もいろいろと湧く。すっきりしない終り方では、当然観客もすっきりしない。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-23 03:44:24)
31.  タイタンの逆襲(2012) 《ネタバレ》 
ギリシア神話の登場人物を総動員させて、神や半神やクリーチャーの迫力ある戦闘場面を魅せるファンタジー映画。神々の戦いが主軸となる。タイタン(巨神)族のクロノスは父により冥界に閉じ込められるが、反抗して王位を奪う。姉と結ばれ、ハデス、ポセイドン、ゼウスらの子種を得るが、「子供に王位を奪われる」という予言を恐れ、子供を飲み込む。ゼウスは母の計らいで生き延び、ハデス、ポセイドンらはクロノスの兄弟ガイアの策略で腹から吐き出される。兄弟は連合して父とに戦い、勝利して父を冥界に幽閉する。戦後ゼウスとハデスは仲違いし、ハデスは冥界に下る。以上が前段階。時は移る。人間の神への祈りが減り、神の力は衰え、冥界の壁が崩れ始める。壁が崩壊すれば、クロノスが地上を跋扈し。この世は闇に閉ざされる。危機感を募らせたゼウスは神々と半神の力を結集して、冥界の壁を建て直そうとする。だが、ゼウスを憎むハデスとゼウスの子アレスが裏切り、ゼウスは冥府に監禁され、その力をクロノスに吸われる。かろうじて難を逃れたポセイドンだったが、ゼウスの子ペルセウスに事実を告げるとやがて命が尽きた。ペルセウスとポセイドンの子アゲノール、それと何故か女王戦士になっているアンドロメダがゼウス救出に向かう。色々と展開があり、ハデスは改心し、アレスはペルセウスに刺殺され、クロノスは地上に放たれる。神々と人間の連合軍対クロノスの戦いが最終決戦。いわば神々の骨肉の争いに人間が巻き込まれる形だ。親子の情愛を絡ませることで物語に深みを与えようとしているが、成功しているとはいえない。ときに物語の進行を妨げている。アレスがどうして、あれほど父を憎むのが伝わらない。ペルセウスも当初は父に対して冷淡すぎる。ペルセウスの子はただ突っ立っているだけの存在。クロノスの心情は計りしれない。ただ「親、子、愛」という言葉が空回りしている。見所である戦闘場面だが、神々が弱すぎるのが問題。矮小化されて人間と区別がつかない。キメラ、サイクロプスの方が数段迫力があった。神々の戦いなのだがら、巨大化し、空を舞い、雷雲を呼び、雷鳴を響かせ、海を逆巻かせ、山を動かしての一大スペクタクルにすべきではなかったか。巨大なだけで溶岩を投げるだけのクロノスと、美女でないアンドロメダにも失望した。CG,VFXは一流だけに甚だ残念である。B級怪獣映画と割り切れば楽しめる。
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-22 15:41:05)(良:1票)
32.  パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 《ネタバレ》 
ギリシア神話を下敷きにして、現代のニューヨークを舞台に、盗まれたゼウスの最強兵器「稲妻」をめぐっての冒険譚。冒頭の巨大ポセイドン出現場面では期待したが、以降の威厳の感じられない神々には幻滅させられた。総じてファンタジー色が少ない。高校生とファンタジーでは親和性が薄い。原作の12歳の方が適切だ。活躍する舞台は地上ではなく、天上などの異次元にした方がよい。そうすれば園芸店にメデューサがいて客を石に変えているが人間に露見しない、という矛盾がなくなる。ゼウスがポセイドンを呼び付けるが、そこは高層ビルで、共に人間の姿。摩天楼をオリンポス山になぞらえているのはわかるが、神同士なら天上で会えばよい。ファンタジーはイメージが大切だ。カインの渡し守もハデスもその妻も人間の姿。手抜きであろう。ゼウスはこれといった理由もなく、ポセイドンの息子パーシー(P)が犯人と決めつける。そしてポセイドンに「期日までに持ってこなければ戦争だ」と脅す。それでいて息子との面会は許さない。酷い神だ。Pは継父の酷い悪臭で神々から隠されているという。酷い設定だ。でも何故隠すのか?「Pが稲妻を盗んだ」の噂が広まり、「稲妻」を奪いに魔物が現れる。魔物に居場所が分るのに、ゼウスには分らない?母が冥界の支配者ハデスにさらわれ、ハデスは「稲妻」と母の交換を条件とする。Pは仲間と母の救助に向うが、先ず冥界からの帰還に必要な「真珠」を見つける必要がある。ここからペルセウス神話をなぞっての冒険が始まる。宝探し、怪物退治、ロード・ムービー、旅の仲間等の要素で、最大の見せどころ。が、残念ながら盛り上がらない。緊迫感がないのだ。「ジュラシック・パーク」の恐竜の迫力と比較すれば一目瞭然。前段のキャンプでの訓練もチャンバラにしか見えなかった。冥界で、ハデスを説得して母を返してもらうという最大の難問が立ちはだかるが、労せず解決してしまう。カタルシスは得られない。帰還してルークと一騎打ち。彼が「稲妻」を盗んだ真犯人で、楯に隠してPに与え、冥界でハデスに渡るように企んだのだった。「稲妻」が実践で使用されるが、驚くほどの威力はない。羊頭狗肉だ。夜の場面が多く、見にくい。何故魔物の近くに真珠があるのかは謎だ。真珠を守っている様子はなく、ハデスとも不連絡。真珠が足ずに一人冥界に残るが、後にPがゼウスに頼んで戻してもらう。無駄な挿話はやめよう。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-20 22:04:03)
33.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 
シリーズのマンネリ化を防ぐためだろう、度肝を抜く演出、鑑賞者を驚かせて新鮮味を出そうという演出が顕著にみられる。 冒頭、いきなり前回からの続き、オスプレイ航空機部隊によるアルカイダ号襲撃が、スロー逆回転で始まる。 海に転落して気を失っていたアリスが意識を取り戻すと、別の人間に入れ替わっており、ゾンビに襲撃されて逃げ惑う。 実はクローンで別人だが、編集で錯誤させる。クローンが捕殺され意識が途切れると、今度は本物のアリスの意識が回復する。そこはアンブレラ社の実験施設内で、半裸衣装を着て床に横たわっていた。尋問されている途中で、メインコンピュータが再起動、その隙をついて部屋を脱出すると、そこは東京で、ゾンビに追いかけられる。別の部屋に逃げると、そこは中央制御室だが、奇妙なことにオペレータは全員射殺されていた。そkへ見知らぬ女が入ってきて、「私はウェスカーの仲間であなたを助けにきた。ウェスカーはアンブレラ社を裏切り、あなたと力を合わせて戦いたいと希望している」といった。こちらの頭も逆回転しそうな、意表をつく展開の連続だ。ここまでは面白かったが、後がいけない。銃を中心にしたアクションの連続で、目新しさはなく、飽きてしまった。観終わってみれば、進展はわずかで、実験施設から脱出するだけの話。そもそも物語は破綻しかけている。アンブレラ社は、人類がほぼ滅亡している状況なのに、人体実験を繰り返して化学兵器の開発に余念がない。とおもったら、今度は人類絶滅を目指すとか言い出す。ゾンビ感染ものから、マッドマックス風の荒涼世界、マトリックス風の仮想現実世界を経て、ターミネーター風のコンピュータ反乱世界へと変貌を遂げつつ、プリズン・ブレイク、エイリアン2の風味も加わって、最早統一感なしの世界観に堕してしまっている。観客を喜ばせようという努力は買うが、何でもありの荒唐無稽設定と中味のない物語では、いくら大金をかけたアクション娯楽大作でも限界がある。半裸も危険なアクションも厭わない主演女優の役者根性と相変わらずのキレのあるアクションには頭が下がる。次回作でいよいよ最終回。ゾンビ+クリーチャー+コンピュータ軍団と人間との壮絶な戦いが繰り広げられ、人間は苦戦し追い詰められるが主人公の捨て身戦法により、中央制御装置が爆破され、最終的に人間が勝利、ワクチンでゾンビが人間に戻る、といった内容と予想する。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-19 19:30:29)(良:1票)
34.  バイオハザードIV アフターライフ 《ネタバレ》 
第一、冒頭の東京での戦闘場面。ヒロインのアリスとそのクローン達の襲撃により、悪の枢軸アンブレラ社の地下要塞は損壊を受け、機能不全に追い込まれる。非情なる議長ウェスカーは部下らを見棄て、ただ一人飛行機で脱出し、特殊爆弾による自爆装置を起動させ、部下もろとも地下要塞を爆発させる。だがアリスはいつの間にか飛行機に忍び込んでいた。アリスが銃を突きつけると、ウェスカーは振り向きざま、首に特殊遺伝子無効化ワクチンを注射する。飛行機が富士山に激突して爆発炎上するがアリスは奇跡的に助かる。 第二、アリスとウェスカーの最終対決場面。死闘の果て、アリスがウェスカーの口に銃弾を撃ち込み、勝利を収める。クリスとクレア兄妹がとどめを弾丸を撃ち込む。それでもウェスカーは復活し、またもや飛行機で脱出する。機上、アリスらの船の自爆装置を起動させるが爆弾は機内にあり、爆発する。アリスが予想して潜ませておいたのだ。上記2点に映画の制作方針が集約されている。安易な設定、強引な展開、御都合主義等の誹りはあえて甘受し、美女がゾンビや敵役をひたすら倒すアクション・シーンを魅力的に描くことに専念したのだ。もともとゾンビを倒すテレビゲームの映画化なので、堅いことは言いっこなしという暗黙の了解がある。ビジュアル重視なのでセクシー美女が多数登場し、ここぞという場面ではスーパー・スローモーションでじっくり鑑賞となる。ヒロインと敵役が超人的な能力を持つのに対し、ゾンビ共は弱弱しく、あっけなくなぎ倒される。テンポを速めるため、非主要人物の描写は記号的でしかなく、次々に消えてゆく。話題作りのためプリズン・ブレイクのパロディも取り入れる。ホラーや人間ドラマ要素を抑え、3Dアクションを気楽に楽しむ娯楽作品に徹したところに成功の要因があるだろう。印象的なアクション場面が2つ。飛行機が山に激突した瞬間にストップモーションとなり、そのままカメラが奥へパンする場面と、アリスが大勢のゾンビ共を引連れて屋上から飛び降り、縄伝いに垂直降下する場面。その適確な映像処理を讃えたい。難点は、スローモーション過多なこと。飽きさせては駄目。素早いカッティングとの併用で緩急をつけるのが肝要。大斧の巨大処刑人はギャグにしか見えず。「噴出する水」の演出のため、水道管の立並ぶ部屋が出てくるが、実際にあんな部屋があるか?必殺兵器の25セント硬貨弾は威力があるか?
[DVD(吹替)] 6点(2013-06-19 11:35:34)(良:1票)
35.  シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム 《ネタバレ》 
笑いあり、アクションあり、スローモーション推理ありの新感覚ホームズ第二弾。製作者や役者がノリノリで作っている様子が窺えるとても勢いのある作品。19世紀の時代セットは素晴らしく、どこからCGかわからないほど上手に作り込んである。アクション映画の制作費に100億円以上かけれる環境が羨ましい。推理も”それなりに”というか、”かなり”あって、伏線が丁寧に回収されてゆく爽快さがある。推理ものとしても合格点。ただ展開のテンポが良いというか、早すぎて未消化のまま進んでゆく懸念がある。従いてゆくのがやっとで、娯楽映画特有の「心地好い緊張感の持続」は得られない。今回の相手は、最大の宿敵モリアーティで、世界大戦の阻止という犯罪史上最大級の目的がある。ホームズの恋人アドラーが殺されたり、革命家の男が妻子を人質に取られているので自殺を強要させられたりと、基本的にシリアス路線なのに、ホームズは終始おちゃらけているし、モリアーティも小物のワトソン夫婦を狙うなど意味不明な行動が多い。真面目一筋のハドソン夫人が料理用の蓋付皿に鼠を容れて持って来たりと、どうも目線が定まらない。ホームズの女装やマイクロフトの裸など、原作に対するリスペクトが無いのも気になるところ。ご都合主義で、ラインバッハの滝の上に和平会議の会場となる建物を造ってしまっているが、場所が危険すぎてありえない。推理で面白かったのは、植物の本と枯れた植物から、暗号を読み解くところ。驚いたのは、酸素吸入器の伏線。あんな小さいもので滝から脱出できるとは。迷彩服は安直すぎて不可。単にワトソンを驚かすためだけにしか使われていない。笑ったのは、両手両足を踏ん張って天井に潜んでいたコサックの暗殺者。隠れる必要などなく、普通に客を装って、占いの女を刺殺すればよいのに。最も疑問だったのは、和平会議での暗殺場面。政府高官を暗殺するのに、わざわざ政府高官の一人を気絶させ、あらかじめその顔に整形した人物が政府高官に成りすますような手の込んだことをする必要はないだろう。政府高官であれば誰を殺してもよいのだから。ただこれらの難点は、勢いがあるので、鑑賞中は気にならない。それだけ魅力に富んだ作品ということ。
[DVD(字幕)] 7点(2013-05-21 16:24:07)(良:1票)
36.  ガフールの伝説 《ネタバレ》 
ふくろうが高度な文明を営むという世界観だが、鉄器文化を持つことに大いに違和感があった。飛躍しすぎていないか。 鉄剣、鉄兜、鉄面蓋などで武装していては、人間の古代戦士と変わりなく、ふくろうである必然性がなくなる。各種ふくろうの特性を生かした肉体同士での戦闘場面が見たかった。 悪の王国の最終兵器である、砂嚢をしびれさせて動けなくするという「特殊金属」は説明不足の誹りを免れないだろう。何のことやらわからない。砂嚢は鳥類の胃の一部で、食物を砂で細かく砕くものであるので、「砂嚢を麻痺させる」とか「頭ではなく砂嚢で感じろ」といわれてもぴんとこない。心眼のようなものと察しはつくが、すっきりしない。極め付けは「月光麻痺」。月の光を真正面で受けると麻痺してマインド・コントロールされるという安直な設定にはげんなりさせられる。 物語は善悪の王国の対立を軸に、「ガフールの勇者たち」という伝説を盛り込んだ冒険戦記もので、これといった目新しい要素は見当たらない。何より不満なのは、前の戦争の契機と経緯、勇者伝説の詳細が語られないことだ。なので最終決戦場面でも感情移入できない。唯一意表を突くのが、兄がダークサイドに堕ちるという展開だが、どうしてそうなるのかが描写不足だ。弟とそりが合わないだけで、両親の愛情を得られており、心に傷を持つわけではない。妹を攫い、弟を殺そうとする心の闇が見えないので説得力がない。補助的登場人物の扱いもぞんさい。両親は途中で居なくなるし、弟と行動を共にする家政婦の蛇は大した活躍を見せない。旅の仲間はかろうじて合格点。ジルフィーは小さすぎて恋人役には不足。大臣ふくろうのみえみえの裏切りと、時を移さぬ退場は、急ぎ過ぎ。主人の成長物語としても不満が残る。危機はそこそこ描かれているが、幸運に助けられている面が大きい。兄殺しの葛藤が薄い。もっと子供らしい知恵を発揮しての活躍をみたかった。美点はCGの華麗さとアクションの優雅さに尽きる。感動することはないが、CG技術の発展には唸らされる。美術を見るような鑑賞法が最適だろう。
[DVD(吹替)] 7点(2013-05-13 13:06:10)(良:1票)
37.  ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 《ネタバレ》 
1、2、3、と観て、一作毎に完結しており、連続した物語の面白さは感じられなかった。それが4作目あたりからシリーズものの”つながり”が表れ、最終章で、謎の解明と、張り巡らせた多くの伏線が回収される快感を味わった。予想外の出来の良さだ。謎と伏線のほとんどは、魂を分けて保存する「分霊箱」と「三兄弟と死者の秘宝の物語」と「ダンブルドア校長の遺言書」に集約される。一度限りの登場としか思っていなかったり、大した意味もないと思っていた人物やものが、再登場したり、真の意味が明らかになるなど、奥深い一面を見せる。ハリーの額の傷の秘密とヴォルデモート卿との関係。ヴォルデモートの不死身の秘密と分霊箱の謎。伝説のグリフィンドールの剣と大蛇バジリスクの毒の合体の意味。ハリーがダンブルドアからもらった「透明マント」の由来。トム・リドルの日記の正体。世界最強の「ニワトコの杖」の真の主が、前所有者スネイプを殺害したヴォルデモート卿ではなく、ハリー・ポッターに移った理由。スネイプがダンブルドアを殺した理由。スネイプとハリーの母リリーの関係。細部までよく考えられている。屋敷しもべ妖精ドビーの思わぬ活躍と死など、意表をつく展開もあった。特筆すべきはCGの出来で、繰り返されるハリーとロンの仲違いと仲直り、生ぬるい恋愛、敵の弱すぎる手下など、”ゆるい”部分には目をつぶるしかない。描写希薄なヴォルデモートのまとめ。孤児院で生まれ、母親(魔法使い)はすぐに死亡。父はマグル(人間)。魔法学校で能力を発揮し、分霊箱の術で不死の力を得ると、ダークサイドに落ちる。純血主義を唱え、忠誠を誓う手下「死喰い人」を率いて、「マグル」や「半純血」を粛清。父親とその親族も抹殺。魔法界の大半を支配下に置く。ある日彼を滅ぼす可能性を持つ者の出現が予言される。それがハリー。赤ん坊だったハリーに放った「死の呪い」がハリーの母親の「守りの魔法」で撥ね返り、肉体を失ってしまう。この時ハリーの額の傷にヴォルデモートの魂の欠片が引っかかり、意図せぬ分霊箱となる。ハリーの血によって復活するが、ハリー母の「ハリーを守る呪文」も取り込んだため、彼が死なない限り、ハリーもまた死ぬことはなくなる。最後「ニワトコの杖」で、ハリーに「死の呪い」を用いたが、杖の真の所有者ハリーに対する忠誠心により、呪いは無力化され、結果的にハリーの体内の彼の魂だけが破壊された。
[DVD(字幕)] 8点(2012-11-10 06:34:17)(良:2票)
38.  世界侵略:ロサンゼルス決戦 《ネタバレ》 
突然エイリアンの襲来による無差別爆弾攻撃が始まり、ロスアンジェルス他、世界12ケ所で烈しい攻防戦が繰り広げられる。国家レベルを超えた、地球全体、人類の存亡のかかった一大危機である。カメラはこの戦闘に参加した海兵隊の小隊の行動をドキュメンタリータッチで追う。勇躍ヘリに乗り込んだものの、圧倒的優位に立つ敵戦力の前に友軍ヘリは次々と墜落、制空権は完全に奪われている。かろうじて着陸し、司令部に合流出来たものの既に撤退指令がでており、警察署にいるらしい民間人救出を命令される。見えない場所から銃撃され、防戦一方。敵は百発撃ち込んでも死なない不死身ぶり。砲火を交えつつ、辛うじて民間人を発見。ここから対エイリアン戦争から、民間人救出劇にスケールダウンする。ロスがほぼ壊滅している状況で、民間人数人に小隊がかかりっきり。民間人の男(父)が死ぬと皆で愁嘆場を演じだす始末。「勇敢だった、(子に)泣いていいぞ、勇気をもて、海兵隊は絶対諦めない」場違い感がある。それよりエイリアンの死体何故持って帰らない。日中に目立つバスで移動するのもどうかと思うが、敵も本気で米国を相手にするなら、先ず軍事基地を叩き、放送・通信網を遮断し、発電所を爆破し、橋や鉄路などの輸送インフラを破壊すべきなのにこじんまりとした市街戦を演じてのんびりムード。そんなことしてるから、ほら、最後はあっけなくミサイルによる中央指令センター爆破で、ジ・エンド。対ミサイル防御システムがあんな貧弱ではね。今はレーザーを当てて誘導しなくても座標をインプットだけで、目標に命中するタイプのミサイルもあるよ。何年も前から侵略計画を練っていたはずでは?敵の愚かさぶりを嘆くようでは映画として成功とはいえない。「小賢い敵の意表を突く弱点攻撃」こそが望ましい結末。不死身に近かった敵があからさまに弱くなっていくのもいただけず。ドラマ部は、明日結婚する、妻が妊娠中、近く退役予定、部下を失くした過去、エリートだが経験不足の若隊長と老部下の葛藤などと、手垢のついた筋書きを浅く演じられても感動は遠い。とはいえセットやCGの出来映えは良で、役者の演技も合格、何も考えず暇つぶしに観るには好作品。平和な現代では、単純な軍隊英雄万歳ものは支持されにくい。何が足りないか?新鮮味、斬新さだろう。それにつきる映画。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-17 14:22:58)
39.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 
ちょっとした手違いから、39両編成もの貨車列車が暴走を始めてしまった。止めなければならないが、会社が手を尽くしても止めることができない。このままでは大きな被害がでるという危急存亡のときに、機関士と車掌の英雄的行為により止めることに成功する。表面的にはそういう内容だ。だがこの映画は、暴走列車をただ止めるだけの単純な痛快アクションではないと思う。それだけで精神の高揚や感動は得られないからだ。どうして感動するのか?それはどうして主人公二人は、敢えて自らの生命の危険を冒してまで、暴走列車を止めようとしたのか、という問いに集約される。その答えは「人の命を救いたい」という本能に基因するものだろう。特別な人間でない、ただの鉄道職員が、ある日英雄になるのはそのためだ。特に救う命が自分の家族であったり、大勢であれば自らの死も厭わないと考える。これが人間の本質だと思うし、思いたい。この素朴な生命尊重の倫理が、観客の根底に備わっているので感動するのではないか。勿論、ベテラン機関士の会社への意地や若手車掌の家族を守りたいというドラマ部分での感動の底上げもある。加えて、危機感を煽るために、暴走貨物には可燃燃料と有毒化学物質が大量に積載されており、脱線必至な町郊外の急カーブ地点付近には石油コンビナートがあり、もし脱線すれば大変な被害が予想されるという過剰設定もある。しかしそれらを省いたとしても、感動の本質は変わらないと思う。観客は無意識に、暴走列車の圧倒的な重量感、疾走感に、命の危うさ、大切さを感じ取っているのではないだろうか。轟音が心臓の音、疾走する姿が生命の躍動に見えてくる。そしてもし事故が起ったら死ぬであろう大勢の人のことを想像してしまう。だから、つい手に汗を握って観入ってしまうのだ。こう考えると、この映画は、やはり単なる暴走列車映画ではなく、人間の本能、本質に訴えかける人間賛歌の映画だと思えてくる。◆余談だが、列車の脱線は簡単にできる。アラビアのロレンスよろしく、ダイナマイトで線路を爆破すればよいし、そんな大げさでなくても、松川事件のように犬釘を抜いて、ボルトを緩めるだけで脱線転覆する。脱線装置という効果あいまいなものに頼る必要なないと思った。監督の冥福を祈ります。 
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-09 20:01:08)(良:3票)
40.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 
女「ブリトー食べたい」⇒弟ドラッグストアに天井破って進入(曲ピンクパンサー)⇒警察に捕まる⇒兄「もう26歳だぞ、海軍に入れ!」⇒数年後大尉に昇進、これが序章。海軍兵学校は23歳までしか入れないのに、しかも数年で大尉……。男女の出会いも設定もおバカ全開のポップコーン映画に決定。で、演習中に敵エイリアン侵略。恒星間移動可能な高度な技術を持ちながら一機(通信機)が人工衛生に衝突して墜落するというトホホさ……。四機はハワイ近海に潜伏。敵は攻撃されない限り反撃しないのだが、愚弟が暴走して戦闘モードに。敵がバリアーを張ったことから、互いにレーダーが使えない(あれだけ音するのにソナーも使えない?)アナログ対決になる。が、敵が戦闘機や爆撃機、照明弾などを使わないのが不思議、戦闘機は確かに映っていた。デザイン秀逸な火球型飛行兵器も放置。それより敵戦艦がバタフライのようにジャンプしながらの移動って……、揺れるし、衝撃は受けるし、遅くなるし……。全艦撃沈されて、展示艦ミズーリ―号を使うアイデアは出色だが、旧軍人がなぜそこにいるのか、実砲弾が何故あるのかなどの説明がないのがおバカ映画のお約束?一方女と傷痍軍人は偶然?アオフ島の通信基地の近くにいて、敵が施設を使って母星と通信しようとしていることを愚弟に伝える。見つかって傷痍軍人と敵の殴り合いが始まる。ここで敵の前歯がぶっとぶシュールなスローモーションをお楽しみください。あとは省略可。当然第二陣が攻めてくるだろうからそれに備えよ、という常識的な可能性を捨てきって、よかった、よかったと大団円で終了。終ってみれば、敵は専守防衛に徹しており、子供や武器を持たない人間は攻撃せず、捕虜は見捨てず回収するといったある意味紳士的な人たち。この中途半端な設定のためにカタルシスを得ることができない。地球を救ったのは誰か?地球を危機に陥れたのは誰か?もっと単純明快にすべき。自衛隊を出したのは日本での興行収入アップを見込んでの下心みえみえ。結局この映画、そこそこヒットしたものの莫大な制作費は回収できずに赤字で、あえなく撃沈。せめて軍事オタクが喜ぶような真剣でもバトルがあれば、カルト的な人気を博するのだけれど。心優しいエイリアンの勝利?
[映画館(字幕)] 6点(2012-09-09 12:35:40)(良:1票)
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