21. 羅生門(1950)
《ネタバレ》 ずいぶん昔の白黒映画ですが、当時としては大変前衛的で斬新な演出方法や作品展開だっただろうなと想像させられました。 多襄丸が木陰で寝ていて枝葉の影が揺らめくシーンはちょっとしたことですが黒澤監督の作品を作り込む情熱が見えます。京マチ子演じる妻が所持していた短刀の顛末もとても面白く、重要な伏線になっているにもかかわらず、短刀の存在を思い出せる程度の演出に留めていることが凄い。あと森雅之の冷めた目の演技もインパクトが凄い。 またストーリーについて。人間は嘘をつく。海外でも評価されているのを見るに、これは国や人種を超えて普遍的なことでしょう。そういったテーマで言及しているのも面白い。人間が自己の都合の良いように話をするのは、現代でもしばしば見られることで、時代を超えても楽しめる作品なのは間違いない! ただ、これだけ嘘をつく人間を見たら、坊主を演じる千秋実の言う通り人を信じられなくなる。私などは未だに志村喬が無事に赤ん坊を育てていることに疑問を持ってしまっている。恥ずかしいことだとは分かっているのだが…。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-09-24 06:54:45) |
22. 赤ひげ
《ネタバレ》 日本人が共感できそうな心情の機微を丁寧に表現した作品で、黒澤映画の中でもかなり好きな作品。 前半はオムニバス的に個々の患者の背景を通じて保本の気持ちの移り変わりが表現されていて、彼が入所当初の自分を悔いるシーンなどはホロリとさせられ、後半はおとよを中心に彼女の回復と周囲との交流があり、ユーモアもあって心温まる思いになりました。 好きな場面として、患者で山崎努演じる皆から好かれている佐八の過去の回想シーンで、周りの患者のように私も泣いてしまいました。特に再会後に階段で別れるシーンは印象的で、お互いに背を向けた後に両者が幾度か振り向くも顔を見合わせることが出来なかった。思いは十分にもかかわらず、上手く表現できないですれ違ってしまった不器用な二人を象徴しているようで、何とも言えない切なさが胸に刺さりました。 全体としては後半が柔らかさもあって気に入っていますが、それも前半の息苦しさみたいなものがある故と思うので、3時間と長いですが、刀を使ってのチャンバラは無くとも黒澤明の神髄を見られる作品だと思います。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-04-26 17:27:29) |
23. 椿三十郎(1962)
見事な脚本に印象的な脇役、そしてところどころのコメディタッチ。これら全てが三十郎のキャラクターと噛み合って、緊張と緩和が心地よい。 特に三十郎と睦田夫人のやり取りが面白くて、彼の性格やらの内面がよく分かるようで親しみがわきました。 あと庭の引き水に流れてくる椿の花の絵は傑作でしょう。とても印象的でした。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-04-15 23:07:58) |
24. あん
《ネタバレ》 生きていく上での色々なものを感じさせてくれる作品です。 客商売という周りの噂一つで時に繁盛し時に閑散してしまうという難しさに桜の木が重なって見え、儚く切なくなりました。 そして、その両方の要因である徳江婆ちゃんへの感謝と何とも言えない負の感情との葛藤。 オーナーへの慰謝料を肩代わりしてくれた感謝もあり、徳江婆ちゃんについての辛辣すぎる配慮が全く無い言葉に何も言い返すことが出来ない自分への情けなさ悔しさ。結果的にその言葉は正論であったと言えますが、劇中はその言葉が正しくないことを願って見ていたので、現実を突き付けられた気分になりました。 また、ハンセン病患者の隔離と鳥かごの中のカナリヤに自由の尊さや、カナリヤを放した婆ちゃんへの女学生の理解と優しさも感じます。 色々ありましたが終盤のいくつかのシーンでは、その期間は徳江婆ちゃんにとって特別なものだったろうし、どら焼き屋の店長や女学生にも何かを残したであろうと思い起こさせられたので、それが良かったと思いました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-02-04 19:00:33) |
25. ビバリーヒルズ・コップ
作中登場する人たちと同じく、見ている側もエディマーフィのキャラクターに引き込まれました。 楽しめるという意味では最高レベルの映画でしょう。気軽に見ていたら最後は夢中になっていました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-02-02 21:12:35) |
26. リオ・ブラボー
《ネタバレ》 3人が歌って、それを見ているチャンスのシーンがとても好きです。町を包囲され緊張感が常にある状況があってのそのシーンだっただけに、気持ちが晴れるような気分で見てる方まで楽しくなってきました。 チャンスの恋愛話は余談のように感じましたが、冒頭の痰ツボ?に金を入れてそれを蹴飛ばされるシーンやグラスに付いた血のところ、デュードを撃ってしまったスタンピー爺などなど印象に残るシーンが多く、多くの人が満足できる作品だと思います。 [地上波(字幕)] 8点(2017-01-19 21:07:28) |
27. ペコロスの母に会いに行く
笑いあり涙ありの良作。最後には赤木春江演じるお婆ちゃんが可愛らしく感じました。 私事ですが、最近自分が「他者に不寛容な人間」であると感じることが多い。そんな時分に見たので、いろいろと考えさせられました。 誰もが自分の歴史を持っている。良いことも嫌なこと辛いこともあっただろう。それを経て人は年老いて存する。そして人生の終盤になっても、表面的にはどう振る舞おうと、色々なことを感じている。それを少しだけでも気に掛けることで、少しだけでも寛容になれる優しくなれる気がした。 印象に残るのが分かりやすい感情移入しやすい回想シーン。使い方が巧みでした。 [地上波(邦画)] 8点(2017-01-18 00:09:45) |
28. 第三の男
今までに三回見た印象で言うと、見れば見るほど面白く見ることが出来る映画。しかし点数をつけるのは難しい。 ストーリーはしっかりしていて決して悪くないし、当時では画期的で芸術さをも感じるような構図や印象的なカットが沢山あって、後世に影響を与えたと言われているのも頷ける。 ただ、それが見事すぎるのか、自分自身であまりこの作品は楽しめる好きな映画とは言えないのである。筋書も仕掛けも素晴らしく感じるし見るたびに良い作品と感じるのだが、映画にのめり込めないし何だかお気に入りにはなりそうもない。 考えるに、カメラワークなどの演出が目に入る故に気が逸れてしまい、第三者目線で見てしまったので感情移入も出来なくて物足りない印象が残ってしまうように思う。 全てを充たす映画ではないが、映画が好きな人には一度と言わず幾度か見てほしい作品。 [地上波(字幕)] 8点(2016-12-29 21:21:33) |
29. ターミネーター
人工知能が騒がれている2016年でも荒唐無稽な感じが全くないところが凄い! シュワちゃんが悪役だったのは意外だけど怖くて良かったです。 [地上波(字幕)] 8点(2016-12-22 23:12:32) |
30. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
見れば分かる凄い映画! 強い意志を持つスコット牧師の逞しさ。孫に会いに行く素敵な老夫婦。姉弟で乗船している弟の方のストーリーの関わり方も気に入っている。 乗り物酔いをする人じゃなければ是非お勧めしたい作品! [地上波(邦画)] 8点(2016-12-21 18:17:20) |
31. レナードの朝
毎日をしっかり生きることの尊さを痛感させられる。コミュニケーションが取れない人も生きているということは周囲も理解しているだろうが、その人の感情までをも理解しているのだろうかと問いかけられた気持ちになった。 さらに、門外漢の医師ゆえに気付きがあった点にも注目したい。物事を軽んじることがどれほど罪になり得るかを、患者を治そうと思うことを無駄のように考えていた医師を見て、自戒する思いになる。思いやりのある人になりたいと思うと、作中にあったセイヤー医師の笑顔が目に浮かぶ。 [地上波(字幕)] 8点(2016-12-17 18:32:52) |
32. 天国から来たチャンピオン
良いファンタジー映画ってこういう作品を言うんでしょうね。 むろんツッコミどころはあるし最後には全て都合の良い展開で終わるのだけれども、最後はじんわり感動しました。 こういうストーリーは、あの世のルールが複雑だったり矛盾を感じたりしがちだけど、理解しやすくシンプルなのも好印象です。 邦題だけがしっくりこないのが残念。 [地上波(字幕)] 8点(2016-12-01 18:48:30) |
33. 犬神家の一族(1976)
《ネタバレ》 恐ろしい偶然と人間の愛憎や欲が重なると…と考えたら怖くなる。 終盤のたたみかけ様は凄まじく、各々の演技と息もつかせない様な展開に圧倒されます。そして何か同情してしまうような自分では処理しきれない悲しさが残りました。2回見ても考え尽くせないほど見どころが多く、価値ある作品だと思います。 [地上波(邦画)] 8点(2016-11-21 18:51:46) |
34. 幸福の黄色いハンカチ
とにかく高倉健がカッコいい!古き良き日本の男の雰囲気には憧れてしまうほどだ。 武田鉄也と桃井かおりは高倉健との比較の意味で描かれていると思うが、そういった演出が必要ないと思うほど単純に高倉健の姿にシビれました。 革ジャンがまたカッコよくて欲しくなった笑 [地上波(邦画)] 8点(2016-11-18 11:39:12) |
35. ニッポン無責任時代
笑えるし何より植木等演じる平均が楽しい人物すぎて大好き。 何かと責任の言葉が出てくる現代人から見ると、ホッとする感覚になった。 責任ばかり考えてしまう人にはお勧めしたい映画。 [地上波(邦画)] 8点(2016-10-13 15:46:32) |
36. レオン/完全版
《ネタバレ》 殺し屋か女の子のどちらかが死ぬというのは読めてしまうが、とても面白い。 [地上波(吹替)] 8点(2016-10-05 12:45:45) |
37. あの子を探して
《ネタバレ》 とても好きな作品です。村の子供たちが可愛かったのが印象的。 最初は捜す動機がお金だったウェイ先生が、いつの間にか男の子のことを思っての行動に変わっていたのが凄く自然に感じて良かった。 終盤の先生のテレビ出演とそれを見た男の子の2人の演技がドキュメンタリーのような自然な演技だったので感動に繋がったと思う。 [地上波(字幕)] 8点(2016-09-30 22:01:21) |
38. ガンジー
近頃短気になっていると感じていたので、この映画が私にもたらしたものは大きかった。 [地上波(字幕)] 8点(2016-09-12 18:40:00) |
39. 肉弾(1968)
《ネタバレ》 この映画ほど反戦の気持ちが心に響いた映画は初めてだった。 ユーモラスな雰囲気を漂わせながらも、岡本監督の戦争や特攻隊に対する気持ちが伝わってくる。骸骨から戦死した方々の声が聞こえてくるようで、のほほんと生きていることが胸が痛むような申し訳ないような気持ちになった。 「あいつ」と呼ばれる主人公の普通の青年等、登場人物から多くのシーンで伝わってくる切なさ以上に、戦時中にはもっともっとそんな気持ちになっている人々がたくさんいたことは、現代を生きる私にはまさに想像を絶することだろうと感じた。 [地上波(邦画)] 8点(2016-09-12 18:35:27) |
40. 日本のいちばん長い日(1967)
戦争を知らない世代の私にとって、日本の歴史の1つの転換点を知るということの点で素晴らしく見る価値のある映画だと思った。 確かに軍国主義の教育があり国民に狂信的な何かがあったかもしれないが、それ以上に極限の状況に置かれては人間は感情が高ぶり正常な判断が出来なくなる、論理が破綻していようが突き進んでしまうことがあるということを思い知らされた。 今だから何とでも言える部分はあると思う。時代が悪かったで済ましてはならないが、戦争が続いて起こり異常な状態が長引いていると、どんな人でも賢明な判断をするのが難しい状況だったのは確かだ。 今を生きる者として、この時代に生きた人がいるから今があるという事実を胸に、当時のことを繰り返さずに平和を続けなければならない。 [地上波(邦画)] 8点(2016-09-11 16:31:56) |