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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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561.  ホワイト・ボーイ・リック 《ネタバレ》 
1984年、長びく不況によりすっかり寂れてしまったアメリカの工業都市、デトロイト。人々の生活は荒み、街の隅々にまで暴力や麻薬が蔓延していた。銃の転売でなんとか生計を立てる15歳の白人少年リックもまた、先の見えない自分の人生に嫌気が差していた。根拠のない大口ばかり叩く父親はろくに働かず、麻薬中毒の姉は売人の彼氏の元へと家出、向かいに住む祖父母は人目もはばからず悪態ばかりつき、そして自分自身もまた学校にも行かず地元のチンピラたちとつるむどうしようもない日々。そんなある日、リックは突然現れたFBIの麻薬捜査官からとある提案を受ける。「今勢力を拡大しつつある黒人ギャング集団の囮捜査に協力してほしい」――。多額の報酬に惹かれ、依頼を引き受けるリック。密売人となった彼は、黒人たちから〝ホワイト・ボーイ・リック〟と呼ばれ徐々に信頼を得ていくのだった。捜査終結とともに彼の役目は終わるはずだった。だが、なんとしても貧困から抜け出したかったリックは、そのまま裏社会へどっぷりと沈み込んでゆく…。17歳にして全米屈指の麻薬王となった少年の栄光と転落の日々を実話を基にして描いたクライム・ドラマ。主役の少年を演じるのは本作がデビュー作となるまだ無名の新人なのですが、彼がほんと何処にでも居るような平凡な若者顔なので物凄くリアルで説得力抜群でした。そう、この時代のこの街にさえ生まれていなければ、彼もまた友達や彼女と平凡な青春を謳歌していただろう普通の若者に過ぎなかったはず。人生の落とし穴は何処にでも転がっているという事実に、改めて恐ろしさを感じました。この後、彼は8キロのヘロイン所持で捕まり、なんと仮釈放なしの終身刑を言い渡されてしまうのですから。情状酌量により仮釈放が認められたのは収監から30年後。人生の大半を刑務所の中で暮らすなんて、考えただけでも恐ろしい。転落のきっかけとなったのが、FBIの囮捜査だというのもなんとも皮肉です。彼の自業自得だと簡単に切り捨てることはさすがに出来ず、なんだかいろいろと考えさせられてしまいました。ちんけなダメ男をナチュラルに演じた、彼の父親役のマシュー・マコノヒーの深い愛情が唯一の救いです。ただ、事実を追うことにこだわり過ぎたのか、ドラマとして幾分か冗長に感じてしまったのが本作の惜しいところ。もう少しドラマティックに演出しても良かったのでは。とはいえ人生のリスクというものを改めて考えさせられる興味深い内容の作品でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2020-03-25 20:38:45)
562.  デスティニー・イン・ザ・ウォー 《ネタバレ》 
1942年、4月。太平洋戦争の真っ只中、それまで劣勢に立たされていたアメリカ軍は一気に反転攻勢へと出るため、東京への空爆を開始する。パイロットとして爆撃作戦に参加したジャックは、与えられた任務をこなし、そのまま中国重慶へと向かっていた。だが、途中で日本軍の反撃に遭い、そのまま爆撃機は中国山中へと墜落してしまう。パラシュートで何とか脱出したジャックだったが、降り立ったのは日本軍の完全なる占領地であった。敵に見つかれば命の保障はない。絶体絶命の危機に陥った彼を助けてくれたのは、村外れで幼い娘と暮らす若い未亡人インズだった――。戦争で夫を亡くしたというインズの家で、密かに暮らし始めたジャック。明日をも知れぬ生活の中で、いつしか二人は惹かれ合っていく。だが、日本軍の捜索の手は次第に迫ってきて……。戦火の中で出会った、アメリカ軍兵士と中国人の若い“寡婦”との悲恋を終始淡々と描いた歴史ラブ・ロマンス。完全中国資本の対日戦争映画ということでけっこう構えて観たのですが、日本軍の残虐描写はそこまで過剰ではなく、わりかし抑制が利いていたと思います。監督が中国人じゃないからってのもあるかもですけどね(ただ、56人のアメリカ軍を助けた報復に日本軍は25万人も中国人を殺したと言う最後のテロップには、同じ日本人として「ちょっと待てやー!」と反論したくなっちゃいましたけど)。肝心の内容の方ですが、確かに描きたいテーマも明確だし演出も細部まで丁寧だし役者陣も静かな熱演で頑張っていたしでとても好感は持てるのですが、いかんせん終始暗いんですよね、これ。内容が内容だけに暗くなっちゃうのは分かるのですが、もう少し明るい部分というか、過酷なドラマの中にも何処かに息抜きが欲しかったところ。アメリカ人を匿う寡婦の女性もなんか暗い家の中でずっと無言で機織りしてて、娘は娘で学校で苛められて泣いてるし、二人で夕飯食べるシーンも全然楽しそうじゃないし、言っちゃ悪いですけどどうにも辛気臭くて仕方ない。音楽がほとんど使われていなかったのも一因かも。とはいえ、こんなに淡々としていながら最後までちゃんと魅せきるこの監督の手腕は確かなものだと思います。要は好みの問題。僕はそこまで嵌まりませんでした。
[DVD(字幕)] 6点(2020-03-18 13:30:44)
563.  オーヴァーロード 《ネタバレ》 
1944年、ナチスドイツとの熾烈な戦闘が繰り返されるヨーロッパ戦線。アメリカの若き空挺部隊の兵士たちは、ドイツ軍の猛攻撃を受けながらも輸送機で目的地上空まで辿り着く。パラシュートで何とかフランスの大地へと降り立った彼らは、郊外の小さな村へと到着するのだった。生き残ったのはボイス二等兵をはじめとする4人の兵士たち。教会にナチスが建てたという電波塔を速やかに破壊せよという命令を果たすため、彼らは偶然知り合った村娘の民家を隠れ家にしてそれぞれ任務遂行への道を探る。だが、目的の教会へと忍び込んだボイス二等兵は、そこで驚くべき光景を目にするのだった――。悪魔のようなナチスの科学者たちは、村人たちを材料に恐るべき実験を繰り返していた。なんと彼らは死人たちを蘇らせ、死をも恐れぬ兵士を創り上げようとしていたのだ!圧倒的に困難な状況の中、甦った死人軍団を相手に何とか任務遂行を目指すボイスたちだったが…。対ナチスの戦争ものとゾンビパニックものの奇跡の融合というアイデア一発勝負のそんな本作、戦争もののグロにゾンビもののグロを掛け合わせるというアイデアはけっこう新鮮で、このグロの相乗効果はなかなか良い感じでした。全体的に演出のキレも良く、特に冒頭ナチスの猛攻を受けながらのパラシュート降下シーンはかなりの迫力で摑みはばっちり。中盤、主人公がナチスのうじゃうじゃ居る教会内へと忍び込むシーンなども緊迫感があって普通に楽しかったですし。ナチスの人体実験と言うよく考えればけっこう不謹慎な内容ながら、これがなかなかゾンビものとよく合う。粘液質な液体からゾンビがぬるぬる出てきたり、首だけの女性がまだ生きていたりと、その手の映画のツボはちゃんと押さえられていたのもポイント高いです。ただ、さすがに後半脚本に突っ込みどころ満載なのが本作の残念なところ。あの村娘の家に囲われていた叔母ゾンビは、いったい何のために出てきたのでしょう?クライマックスは設定のむりむり加減がたたってだいぶ破綻しかけちゃってます。そもそもこの兵士たちが何のために戦ってるのか観ていていまいち分からなくなってくるので、物語としてのカタルシスがかなり弱い。電波塔破壊かゾンビ殲滅か、焦点をどちらか一本に絞るべきでした。とはいえ、エンタメ映画としてはある一定の水準に達しているので何も考えずに観る分にはぼちぼち楽しめると思います。
[DVD(字幕)] 6点(2020-03-13 16:56:32)
564.  ザ・スクエア 思いやりの聖域 《ネタバレ》 
「ザ・スクエア」は信頼と思いやりの聖域です。この中では、誰もが平等の権利と義務を持ちます――。伝統と格式を重んじる美術館でチーフ・キュレーターを務めるクリスティアンは、常に資金繰りと次々と起こる問題に奔走していた。そんなある日、彼は通勤中に掏摸に遭い、財布やスマホ、果ては祖父の形見であるカフスボタンまで盗まれてしまう。GPS機能を使い、犯人のアパートまで特定したクリスティアンは、ちょっとした思い付きから全ての部屋のポストに脅迫文を投函するのだった。「この泥棒め。僕の持ち物を返せ」と。だが、すぐに盗品が返ってくると思いきや、掏摸とは無関係の住民から面倒臭い事態が持ち上がる。そこに新たな展示作品「ザ・スクエア」の宣伝方法を巡り、世間から猛烈な批判を受ける羽目に。さらには、一夜だけの関係だと思っていた女性から責任を求められたり、破天荒な芸術家が過激なパフォーマンスを行ったりと、様々な問題が次から次へと持ち上がるのだった。果たしてクリスティアンは、無事に次の展覧会を開くことは出来るのか?上流階級に暮らすセレブたちの虚飾に塗れた生活をシニカルかつブラックに描いた、カンヌ映画祭パルムドール受賞作。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、いかにもカンヌが好きそうな変な映画でしたね、これ。とにかく映画が終わるまでの二時間半の間、観客の神経を逆撫でするようないや~~~なエピソードをいちいち盛ってくるんですよ。それはもう徹底していて、例えばシーンの合間に必ず路上の物乞いの姿を入れ込んでみたり、トークショーでやたらと下ネタを連呼する神経症の客が居たり、セックスが終わった後に女性がひたすら使用済みのコンドームを欲しがったり、猿真似をする芸術家が暴走して暴力沙汰を起こしているのに誰もが面倒臭がって傍観していたり、極めつけは「ザ・スクエア」の宣伝のために物乞いの少女を爆破させたりと、もう細かなエピソードの一つ一つに至るまで極めて悪趣味で変態的。ここまで徹底していると逆に清々しく感じるくらいです。これらのシニカルなネタの数々を笑い飛ばすことが出来ればきっと楽しめるんでしょうけど、残念ながら僕は全然笑えませんでした。見れば見るほど不快感が高まってきて、最後の方は「もういいから早く終わってくれー」とかなりげんなり。特に暴走猿真似男と、大人に上から目線でぶちギレる子供には不快指数マックスに!ここまで徹頭徹尾人の神経を逆撫でできるのはある意味凄いと思うので、この監督きっと才能は有るんでしょうけど、僕はもういいです。
[DVD(字幕)] 5点(2020-03-13 16:33:16)
565.  バグダッド・スキャンダル 《ネタバレ》 
『石油・食糧交換プログラム』――。それはイラク戦争開戦前夜、欧米の経済制裁によって苦しむイラク国民を救うために国連主導で行われた人道援助だ。当時まだ独裁者として同国に君臨していたサダム・フセインによる大量破壊兵器開発を防ぐため、国連が窓口となって豊富な石油資源を市場価格で売却し食料や医薬品と交換してイラクへと還元させる。多くの人命を救うための人道的プログラムのはずだった。だが実際は、フセイン政権による横領や横流しが相次ぎ、さらには先進国の大手企業がその利権を巡って多くの不正行為に手を染めていた。驚くべきことに、監視者であった国連職員にまで汚職が蔓延していたのだ。若き職員マイケル・サリバンはその事実に気付き、すぐさま上司に報告するも実態は公にされることなく握りつぶされてしまう。だが、様々な国の思惑が複雑に交錯する国際情勢の中、やがてそれは国連を大きく揺るがす一大スキャンダルへと繋がっていくのだった……。本作は、200億円にも及ぶ大金が闇に消えたという実話を基にして描かれた硬派なポリティカル・サスペンスだ。主演を務めるのは若手俳優テオ・ジェームズ、他に制作も務めたというベテラン、ベン・キングズレーが名を連ねている。確かな取材や時代考証に基づいたであろう骨太な物語はなかなか見応えがあった。ニューヨークの国連本部から当時混乱を極めたイラクの首都バグダッドにまで拡がるそのスケールの大きさにも圧倒されるものがある。何より、この弱者を救うためのプログラムを利用し甘い蜜を吸い続けた、欧米各国の行き過ぎた資本の論理には戦慄させられる。人間とは、かくも欲深き生き物なのか――。「民主主義に汚職はつきものだ」と言うベン・キングズレーの言葉が重い。そんな醜い国際情勢によって翻弄される、主人公の国連職員とクルド人女性通訳との儚い恋物語は強く印象に残った。丁寧な手腕が光る政治サスペンスの逸品と言っていいだろう。ただ、こういう作品なので仕方ないのだろうが、お話として地味すぎるのが自分には少々退屈に感じてしまった。もう少しドラマティックに脚色しても良かったのではないか。世界の実態を知るという点では充分観る価値はあったが、人間ドラマとしては幾分か物足りなさの残る作品であった。
[DVD(字幕)] 6点(2020-03-07 01:58:19)
566.  魂のゆくえ 《ネタバレ》 
この狂った世界に、子供を生まれさせるのは間違っている――。ニューヨーク郊外に佇む、今年で創建250年を迎えた歴史ある教会「第一改革派教会」。責任者であるトラー牧師は、かつて一人息子をイラク戦争で失くし、以来神の教えに目覚めた敬虔な信者だ。孤独を愛し、ただ神の教えだけを心の糧に生きる彼は、ある日、妊娠中の女性メアリーからとある相談を受ける。環境保護活動に熱心な夫が、自分の子供を堕ろすことを強要してくるというのだ。世界はいま急速に破滅へと向かっている、この世界に子供を送り出すのは悲劇しか生まない、と。実際にトラー牧師が会ってみると、夫はただひたすら利益優先の大企業がいかに地球環境を破壊し続けているかを語り始めるのだった。また会うことを約束しその場は別れたものの、のちにトラー牧師はメアリーから更なる相談を受ける。なんと彼はガレージに自爆ベストを隠し持っているらしい。最悪の事態を想定し、ベストを持ち帰ったトラー牧師。だが、彼自身もまた、この世界に絶望を感じている自分を否定出来ないのだった……。神を信じつつもこの世界に希望を見失いはじめた、ある孤独な牧師の魂の遍歴を淡々と描いた哲学的なヒューマン・ドラマ。そんな信念の危機を迎え孤立を深めていく男を演じるのは人気俳優、イーサン・ホーク。監督は、70年代を代表する問題作『タクシー・ドライバー』の脚本を書いた、ポール・シュレイダー。ドラマティックなストーリー展開とは終始無縁、音楽もほぼ流れず、最後までただ淡々と続く暗い作品ながら、最後まで緊張感を途切れさせずに見せた監督の手腕は大したものだと思います。俳優たちの静かな熱演も素晴らしく、特に愛する者を失いながらそれでも懸命に生きようとする妻を演じたアマンダ・セイフライトは特筆に値します。この狂った世界に生きる価値などないのか――。病的な思考へと傾倒し、やがて過激な行動へと駆り立てられるこの主人公は現代の『タクシー・ドライバー』そのもの。それは間違っていると思いながらも、自爆ベルトへと袖を通す主人公にいつしか共感している自分が居ました。神なき時代を生きる現代人の苦悩に鋭く迫った、社会派の問題作と言っていいでしょう。ただ、残念だったのは後半の展開が幾分か腰砕けになってしまったところ。ここまで主人公の魂の苦悩を深く描いてきたのに、この結論はちょっと物足りない。なんなら絶望のどん底へと観客を徹底的に叩き堕とすくらいの覚悟が欲しかった。この現代に、安易な希望などいらない。
[DVD(字幕)] 7点(2020-03-07 01:30:47)
567.  ウトヤ島、7月22日 《ネタバレ》 
2011年、7月22日金曜日。ノルウェーの保養地ウトヤ島において、銃乱射事件が発生。警察に扮装した犯人は、当時開催されていた労働党青年部のキャンプ参加者をただ黙々と襲い続けた。72分間にも及ぶ凶行の結果、77名もの尊い命が奪われることになった。本作はその実際にあったテロ事件を背景に、ただ現地に居たというだけで悲劇に巻き込まれた若者たちを描いたものである。何より特徴的なのは、実際の犯行時間と同じ72分間、ひたすらワンカット編集なしの映像が続くところだろう。ある一定の臨場感と緊迫感を生み出すことに成功している。だがこれは僕の個人的な感想だが、本作の見るべきところはそれぐらいしかないのではないか。何処にでもいるような若者たちがただひたすら逃げ惑う映像が延々と続き、肝心の犯人の姿は一瞬画面に出てくる程度、あとはずっとパーンパーンという銃声が機械的に鳴り響くだけ。このワンカット映像をいったい何度撮り直したのかは分からないが、構成も物語展開も非常に稚拙。初めてこのキャンプ場で知り合ったという学生と将来の夢をひたすらだらだらと語り合ったり、中盤に出ていた少年が最後唐突に何の脈絡もなく死体になっていたりと伏線も起承転結も何もあったもんじゃない。同じくワンカットで撮った作品に日本の『カメラをとめるな』があるが、あちらは緻密に考え抜かれた構成でしかも四度も撮り直したと聞く。対して本作、どうにも行き当たりばったりでカメラを廻しただけのようにしか思えず、物語としては底が浅いと言わざるを得ない。誤解を恐れずに言えば、一編の物語としてただ単純につまらないのだ。実際に起こった悲劇を基にするのなら、何より優れた物語に昇華させるのが表現者としての最低限の礼儀――被害者や遺族に対して――ではなかろうか。最後のテロップによるとこれは監督の完全なる創作とあり、それならばより表現者としての覚悟が必要になると思うのだが、この監督にそれはあったのだろうか。事件の被害者を利用した、この監督の売名行為のようにさえ思えて僕には不快感しか残らない作品であった。
[DVD(字幕)] 4点(2020-02-26 18:39:07)
568.  キラー・メイズ 《ネタバレ》 
ヒマを持て余した今年で30歳になろうという無職のダメ男が、何を思ったか自宅のリビングに段ボールで迷路を作り始めたことがそもそもの始まりだった。もともと凝り性だったせいもあり、出来上がったそれはなんと作った本人ですら三日も出てこれないほどの超大作に。迷い込んで出られなくなったという彼を救うため、同棲中の恋人や腐れ縁の友人たちが一致団結。半信半疑に入口を潜ってみるとそこには本当に広大な迷路が拡がっていた!しかも、内部には随所に危険な罠が仕掛けられていたのだった。さらには危険な悪の化身ミノタウロスまで登場し、獲物を求めて辺りを徘徊し始める。果たして彼らは無事にこの殺人迷路から抜け出すことが出来るのか?アイデア一発勝負で撮られた、完全に低予算のそんな本作、あまり期待せずに今回鑑賞してみました。舞台となる、全て段ボールで手造りされたであろうこのセットは確かにチープなんですけど、これがけっこう細かいところにまで独特のセンスや拘りが感じられて意外に最後まで観ていられる作品になってましたね、これ。まあ一言で言い表すなら、エッジの効いたNHK教育の子供番組みたいな感じで、折り紙の鶴や虫がそこら中にわさわさ動き回っていたり、ピアノの鍵盤が何処までも続く部屋があったりとなかなかに独創的。首を刎ねられた女性から噴き出す血が色鮮やかな紙吹雪なとこなんて、けっこうセンスを感じました。他にも遠近法を使ったビックリハウス的な部屋や、入った者が全員チープな段ボール製パペットになっちゃう部屋など視覚的に飽きさせない工夫が施されているのもポイント高いです。学生たちが自主製作で創ったようなノリで観たら、意外とセンス良かったみたいな感じかな。とはいえ、脚本が同じくらいチープなのはいただけませんけど。全く中身がないうえに、さして笑えないギャグが全編に渡って繰り返されるのがかなり寒い。致命的なのは、こんな殺人迷路が何故出来上がってしまったのか、その根本的な原因を曖昧なままに終わらせてしまったこと。とまあ、お話的には完全にナシだけど、この監督のヴィジュアル・センスにはほんのちょっとだけ将来性を感じました。
[DVD(字幕)] 5点(2020-02-26 13:57:11)
569.  翔んで埼玉 《ネタバレ》 
日本に唯一残された秘境、埼玉を巡る壮大な魂と誇りの物語。前評判通り、あまりにも荒唐無稽な内容でしたが完全にイキ切っていたのでけっこう面白かったです。同じ作者のギャグ少女漫画の名作『パタリロ』の初期のころの大ファンである自分としては、この毒のあるネタの数々はなかなか楽しめました。ただ、自分が関西在住で関東のこの地理的な関係性がいまいち呑み込めない部分もあったので、そこまで嵌まれなかったところも。でも、群馬県の扱いは酷すぎてさすがに笑っちゃいました。と、全体としてはまあまあって感じかな。もしこれを関西バージョンで撮るとすれば、やはり舞台は滋賀県になるんですかね?(笑)。決まり文句はもちろん、「滋賀県民には、琵琶湖の水でも……(以下自主規制)」
[DVD(邦画)] 6点(2020-02-24 12:49:37)(笑:1票)
570.  レベル16 服従の少女たち 《ネタバレ》 
舞台は何処とも知れぬ場所にある、とある施設。そこでは何人もの少女たちが収容され、完全に外界と隔離された生活を送っていた。施設の責任者によって私生活は厳重に管理され、食事も就寝も決められた時間に取らされることを義務付けられた彼女たち。さらには一日に一回、ビタミン剤と称された謎の薬を呑むことを強要され、美容クリームで顔のスキンケアを怠らないことが最も重要な義務とされていた。もし怠ると、彼女たちは責任者によってきつい罰を受けることになるのだった――。幼いころからずっとこの施設で過ごしてきたヴィヴィアンは明日、晴れてレベル16に進むことが決まり、浮足立っていた。何故ならこのレベル16こそがこの施設での最後の段階であり、このレベルをクリアできれば、明日にも何処か裕福な家へと養子に貰ってくれることになるからだ。だが、同じクラスの女の子によってヴィヴィアンはこの施設に隠された衝撃の真実を知ってしまう……。謎の施設に隔離された少女たちの青春と葛藤を繊細に描き出す新感覚SFスリラー。明らかに低予算で撮られたであろうそんな本作、なんとなく気になったので今回鑑賞してみました。確かに、不穏な空気感に満ちたこの施設の怪しげな雰囲気はよく表現できていたと思います。レベル16まで進みながらも言いようのない違和感に苦しむ主人公ヴィヴィアンを演じた女の子もなかなかに魅力的で大変グッド。ただ、なんだか全体的に惜しいんですよね、これ。低予算だから仕方ないのは分かりますが、画面が全体的に小汚いんですよ。こういう設定の映画ってやはりこの施設の非日常感って物凄く大事だと思うんですけど、すごく所帯染みてると言いますか、完全に隔離されているという感じが全然しない。ここらへん、もう少し頑張って欲しかった。あと、脚本に突っ込みどころが多いのも如何なものか。完璧に管理されたというわりには、けっこう主人公自由に行動できてますし、何よりカードキーで厳重に管理された扉をネジ抜いて開けるというのはリアリティがなさ過ぎます。あと、これは個人的な感想なのですが、もう少しこの少女たちの百合的要素と言いますか、友情以上恋人未満な禁断の花園的な感じを醸し出しても良かったのでは?まあこれは完全に僕の趣味ですけど(笑)。うーん、雰囲気や世界観はけっこう好みだっただけに、なんとも惜しい作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2020-02-19 19:35:37)
571.  ジョーカー 《ネタバレ》 
悪と狂気のカリスマ、ジョーカー。この稀代のアンチ・ヒーロー誕生の物語をダークかつ濃厚に描いた、ある意味昨年一番の話題作。ここまで反社会的な内容でありながら、あれだけ話題になるだけあって、確かにこの全体的な完成度の高さはピカイチでした。脚本、映像、構成とどれをとっても素晴らしい出来なのですが、やはりなんと言ってもジョーカーを演じたホアキン・フェニックスの鬼気迫る役作りには圧倒されました。「こ、こいつ、本当に狂ってる!」としか思えない聞きしに勝る迫力で、その存在感は往年のヒース・レジャーにも匹敵するほど。彼の存在無くしてはこの作品はあり得なかったかも知れないですね。肝心の内容の方も、善悪の彼岸を扱った非常に哲学的かつ深淵な物語でこれまた他に類を見ない唯一無二のもの。果たして、人間の本質とは悪なのか――。ロシアの文豪ドストエフスキーのいくつかの小説にも通ずるこの深甚なるテーマは、単なるエンタメ映画の枠を超えた普遍性さえ有していたと思います。世界から疎外され、多くの人々を妬み、ただ身近な人に愛されたかっただけなのに逆に傷つけられ、そして絶望のあまり社会の道徳や倫理を超越しようともがく一人の男。彼の狂気性や異常さを充分に理解していながら、それでもいつの間にか彼のことを応援してしまっている自分が居ました。最後のテレビ番組のシーンなんか、「やれ!早く、やっちまえ!ジョーカー!」と心の奥底で念じていた自分に思わずハッとしてしまった。世に現れたばかりのヒットラーを誰もが最初支持していたことを思うと、やはり人は狂気に惹き付けられる弱い生き物なのだと改めて自戒とともに思わされました。社会の常識と呼ばれるものを嘲笑うかのように、自らが生み出した“正装”で階段を降りてくるジョーカーの洗練された美しさがいつまでも頭から離れそうにありません。自分の中にも脈々と受け継がれているだろう「悪」と対峙する覚悟があるなら、この狂気の物語、多くの方に是非じっくりと味わってもらいたい。
[DVD(字幕)] 9点(2020-02-19 19:22:57)(良:1票)
572.  エリザベス∞エクスペリメント 《ネタバレ》 
舞台は、人里離れた小高い丘の上に建つ豪華な別荘。そこに、持ち主であるノーベル賞を受賞した老科学者が若き婚約者を連れてやってくるところから物語は始まる。婚約者の名は、エリザベス。まるで人形のような完璧な美貌の持ち主である彼女を迎え入れるのは、科学者の息子である盲目の若者と家政婦のような謎の女性。誰もが何か秘密を隠しているような別荘の中で、科学者とエリザベスの愛欲に満ちた新婚生活が始まる。沢山の高価な服に高級な家具調度品、何不自由ない満たされた日々。だが、エリザベスは拭い切れない違和感を抱き始めるのだった。夫の目を盗み、秘密の地下室へと忍び込んだエリザベスは、そこであり得ないものを発見してしまう。それは昏睡状態で保存された、自分と瓜二つの若き女性だった――。果たして自分は何者なのか?エリザベスの出生の秘密を巡り、衝撃の物語が今幕を開ける……。とまあ、ここでぶっちゃけてネタバレすると彼女はこの科学者が創り出したクローンなわけなのですが、こんな単純なお話なのに、こんなにこんがらがったストーリー展開にする意味が分からない作品でしたね、これ。エリザベスの基となった人間はこの科学者の亡くなった奥さんで、しかも6体しか作り出せなかったのに、約束破って秘密の地下室に入ったからって簡単に殺しちゃうこの科学者の行動がまず意味不明過ぎます。物凄く怪しさ満点でしかも指紋認証で簡単に入れるのに、「この部屋に入ってはいけない」なんて言ったら誰だって入りたくもなりますって!え、これは「ここには誰も隠れてへんで!」って言う往年の吉本新喜劇のネタですか(笑)。さらにこの別荘の住人である女性科学者の謎の経歴やら実は息子もクローンだったという無駄にややこしいうえにさして盛り上がりに欠けるエピソードを絡めてくるもんだから、後半はもう眠たくって仕方なかったです。中途半端に哲学的な会話を盛り込んでみたり、全編にわたって変に凝った撮り方をしたりするのもこの面白くなさに拍車を掛けています。大胆なヌードを披露してくれたエリザベス役の女優さんも確かにキレイなんですけど、なんだかお人形さんのような作り物めいた感じなので、そこまで僕の股間に響かず…。うーん、観るだけ時間の無駄の凡作でした。4点!
[DVD(字幕)] 4点(2020-02-18 21:27:18)
573.  コード211 《ネタバレ》 
それは平凡な一日になるはずだった。いつものように――。定年を間近に控えたベテラン警察官、妻の妊娠を知り人生の絶頂に居る若手警官、学校での乱闘騒ぎから丸一日のパトカー同乗体験を余儀なくされたいじめられっ子の高校生、長年連れ添った妻との記念日を迎えた銀行の支店長、そして凶悪な犯罪者を追ってアフガニスタンからやって来たインターポールの刑事……。彼らの平凡な日常が、突如として切り裂かれる。街の一画にある大手銀行を狙って、元軍人たちで結成された凶悪な強盗集団が襲撃したのだ。何丁もの武器と大量の爆発物を用意した彼らは、瞬く間に銀行を占拠し、中に居た客や行員を人質にする。白昼堂々と行われた大胆な犯行。異変を察知した、偶然近くに居た警察官の通報により、緊急コード〝211〟が発動されるのだった。それは、現在進行中の銀行強盗を意味する秘密のコードだった――。果たして人々は無事にこの大惨事を乗り切ることは出来るのか?突如として修羅場と化した地方都市を背景に、偶然そこに居合わせた人々のサバイバルを臨場感たっぷりに描いたクライム・アクション。毎度おなじみニコラス・ケイジ主演で送るそんなオーソドックスな本作、まあやりたいことは分かるのですがなんだか全体的に演出の詰めが甘い作品でしたね、これ。一応群像劇っぽい作りになっているのですが、それぞれのエピソードの描き方がいまいちよく練られてません。例えばニコラス・ケイジ扮するベテラン警官、なんか妻を過去に失くしてそれが原因で娘と疎遠になってるっぽいんですが、そこらへんが説明不足でよく分からないんですよ。偶然パトカーに居合わせたという高校生もそのキャラ設定の詰めが甘くいまいち感情移入できない。インターポールの女性刑事に至っては、正直何がしたいのかさっぱり理解できません。終始こんな感じで、肝心のドラマ部分にうまく乗り切れないんですよ、残念ながら。対する銀行強盗たちも綿密に計画を練ってると思いきや、かなり行き当たりばったりの無為無策ぶりでちょっと呆れてしまうレベル。最後、追い詰められた彼らがどうするのかと思ったら、まさかの重たいバックを背負ってえっちらおっちら正面突破。当然のように瞬殺されるという捻りの無さには思わず苦笑しちゃいました。最近のニコケイ映画にしてはアクションシーンにけっこうお金を掛けていて、白昼の街並みで展開される銃撃戦などはなかなか迫力あっただけになんとも残念。
[DVD(字幕)] 5点(2020-02-16 23:14:34)
574.  ア・ゴースト・ストーリー 《ネタバレ》 
交通事故で死んだ夫が幽霊となって、遺された妻を時空を越えて見守る姿を幻想的に描いたファンタジック・ラブ・ストーリー。率直に言ってさっぱり面白くありませんでした、これ。役者たちの台詞を極力排除したり、極端に動きの少ない画をひたすら長回しするシーンなんて、まあ意図してやってるんでしょうけど、普通にセンスがないんでもはや観られたもんじゃありません。あまりに退屈過ぎて開始10分で早々と襲い掛かってきた睡魔と闘いながらなんとか最後まで観ましたが、残念ながら得られたものは特に何もなく……。雰囲気ごり押しで全く中身がないくせに、変に芸術を気取ったこの監督の独り善がりなナルシズムがとにかく鬱陶しくって仕方なかったです。うーん、観るだけ時間の無駄の駄作としか僕には思えませんでした。
[DVD(字幕)] 3点(2020-02-12 12:28:12)(良:1票)
575.  シシリアン・ゴースト・ストーリー 《ネタバレ》 
マフィアに拉致監禁され、突然居なくなってしまった13歳の彼氏のことをただひたすら捜し続けた少女の姿を幻想的な映像で描いたピュア・ラブ・ストーリー。ギレルモ・デル・トロの作品を髣髴とさせるというキャッチコピーに惹かれて今回鑑賞してみましたが、正直「どこがやねん!」と思わず突っ込んじゃうくらい残念な作品でありました。もう雲泥の差ですよ、これ。とにかくストーリーの見せ方が恐ろしく稚拙。大して面白くもないお話がダラダラダラダラ続くうえ、意味不明なシーンが山ほど差し挟まれるもんだからもう眠いったらありゃしない。あの主人公が髪の毛を染めるシーンはいったい何の意味があったのでしょう?音楽の使い方もまるでなっちゃいない。何より、この「どうだい?芸術的だろう?」と言わんばかりの全編に横溢する監督の独り善がりなナルシズムが、もうとにかく気持ち悪くって仕方なかったです。そしてよく分からない唐突なラストシーンの後に表示される、実話を基にしたというテロップ。はっきり言って、これは死者への冒涜ではないかとすら僕には思えてしまった。正直、観る価値など欠片もない恐ろしいほどレベルの低い作品だと断言していいでしょう。主人公の女の子の今にもパンツが見えそうな超ミニスカート(実際何回か見えてたし!笑)に+1点!
[DVD(字幕)] 2点(2020-02-12 12:09:49)
576.  ドント・ウォーリー 《ネタバレ》 
彼の名は、ジョン・キャラハン。毒の効いたユーモアで人気を博した風刺漫画家だ。だが、その人生は決して順風満帆とは言えないものだった。実の母親に捨てられたというトラウマから酒に溺れ、二十歳を過ぎたころには立派なアル中に。前日の酒が残った状態で朝目覚めると、その酒が切れないうちに新たな酒を求めるという典型的な負のサイクルに陥っていた。そして迎えた運命のその日――。いつものように友人と酒場をはしごし、前後不覚になるまで酔っ払った彼は、更なる酒を求めて次の酒場を目指していた。しかも、酔っ払って歩くことさえままならない酩酊状態の友人が運転する車で。当然のように車はかなりの事故を起こし、ジョンは意識不明の状態で病院へと担ぎ込まれることに。下された診断は致命的な脊髄損傷。一生車椅子生活を余儀なくされるというものだった。障碍者となりながらも、それでも酒を止められないジョン。絶望のあまり自暴自棄へと陥った彼の人生に、果たして光は差すのか――。実話を基に、そんな過酷な境遇に居るとある一人の男の人生を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。監督は、丁寧な心理描写には定評のあるベテラン、ガス・ヴァン・サント。障碍者でありながらアル中のどうしようもないクズ男を演じるのは今最も勢いのある実力派俳優、ホアキン・フェニックス。他にもジャック・ブラックやルーニー・マーラと言った人気俳優が脇を固めております。この監督らしいほんわかとした雰囲気は相変わらず健在で、半身不随とは言っても完全に自業自得のこのダメ男の人生を、良い時も悪い時も含めて丸ごと掬い取る監督の目線はとても優しい。「そう、人生って上がったり下がったりの繰り返しなのよね」という当たり前のことに改めて気づかされました。時系列をバラバラにし、敢えていつの時代の話なのかを曖昧にするこの独特の構成が巧く効いています。これはジョン・キャラハンと言う男の平凡だけどかけがえのない人生のポートレートと言っていいのかも知れませんね。その時々に現れる美しい恋人?の存在も彼の人生を豊かに彩っています。ルーニー・マーラって改めて思いますけど、ほんとにキレイですよね~。「人生いろいろあるけどこの先ちょっとは良いこともあるだろうし、まだまだ頑張ろう」と改めて思わせてくれる、人間賛歌の良品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2020-02-09 19:12:04)(良:1票)
577.  ブラック・クランズマン 《ネタバレ》 
何故か白人至上主義団体「KKK」の潜入捜査官となった黒人刑事の物語を実話を基に描いたコメディタッチの社会派サスペンス。監督は長年黒人としてのアイデンティティを追求し続けるベテラン、スパイク・リー。アカデミー作品賞ノミネートということで今回鑑賞してみたのですが、うーん、率直に言ってさっぱり面白くなかったんですけど、これ。実話を基にしたのかなんか知りませんが、大して面白くもない話が最後までダラダラダラダラ。最後の方でようやく潜入捜査ものとして面白くなりそうと思ったのに、さして盛り上がることもなくあっさりと終了しちゃいました。そして最後はいつものごとく、説教臭くて押しつけがましい政治的メッセージを一方的に垂れ流して終わり……。やっぱり僕は、この監督とはつくづく相性が悪いのだなぁと再認識してしまいました。昔はもっとこの硬派な政治的スタンスの中にもポップでラディカルなセンスが冴えていてそれがとても心地よかったイメージがあったのですが、いつの間にこんな説教親父になってしまったんですかね。そもそも何故、電話と本人で担当を分けて潜入捜査する必要があったのでしょう?よりリスクが増すだけなのにどうしてこういう手法を取ったのか、その根本的な部分に説得力が欠けていたのもどうかと思います。すんません、4点で。
[DVD(字幕)] 4点(2020-02-05 11:58:58)(良:1票)
578.  ヤング・アダルト・ニューヨーク 《ネタバレ》 
ニューヨークでそれなりにおっしゃれーに生きてるオレたち四十代夫婦が出会った、これまたおっしゃれーに生きてる二十代夫婦。ヤング・アダルトなそんな二組の夫婦のすったもんだをあくまで軽くおっしゃれーに描いたコメディ作品。正直言ってこういう都会的で斜に構えたような作風は嫌いです。怪しげな新興宗教施設で幻覚剤を呑んでみんなでゲロ吐くシーンなんて、ばっちいだけで何が面白いのかさっぱり分かりません。こればっかりは好みの問題なので如何ともしがたい。ベン・スティラーやナオミ・ワッツ、アダム・ドライバーやアマンダ・セイフライトといった、豪華で華のある新旧役者陣共演に+1点!
[DVD(字幕)] 4点(2020-02-02 22:44:02)
579.  ワイルド・ストーム 《ネタバレ》 
アメリカ西海岸に史上最大規模のハリケーンが襲来!!警察の主導で住民が次々と避難するなか、その危機に乗じて財務局に保管された6億ドルもの古い紙幣を強奪しようと企む者たちがいた。手薄になった警備の隙を突き、金庫がある建物を占領したプロの犯罪者集団。強固なセキュリティに手間取りながらも彼らは着実に計画を推し進めてゆくのだった――。一方、命からがら施設から逃れてきた女性警備員は偶然近くにいたハリケーンを研究する環境学者の協力のもと、なんとしても彼らの計画を阻止しようと立ち上がる。凄まじい暴風雨が吹き荒れる中、果たして彼らは無事に犯罪者たちの計画を阻止することは出来るのか?『ワイルド・スピード』や『トリプルX』でお馴染みのロブ・コーエン監督が迫力の映像でおくる、そんなクライム・アクション。まあ観る前からおおよその予想はついていましたが、かなりの大味作品でしたね、これ。何処かで見たようなストーリーと何処かで見たようなアクション・シーンのてんこ盛り。目新しい部分と言えば、ハリケーン襲来というディザスター・パニックものと現金強奪というクライム・アクションの融合ですかね。とはいえ、それもうまくいっているかと言われればそれほどでもなく、中盤からは脚本の粗も目立ち始め、クライマックスにいたってはもはや破綻していると言ってもいいくらいでした。主人公二人も恐ろしく魅力に乏しく、対する犯罪者集団もなかなかのアホっぷりで見ていて腹立ってくるくらい。最後のオチなんて投げっ放し感が酷くて、もはや見られたもんじゃありません。まあ映像的にはそこそこ迫力があったんで、ぎり5点ってとこですかね。
[DVD(字幕)] 5点(2020-01-29 19:03:18)
580.  ビューティフル・ボーイ(2018) 《ネタバレ》 
息子を見ていると時々不思議に思うんです、「いったいこの子は誰だろう」って――。ニックとその父デヴィッドは何処にでもいるような平凡な親子。離婚した実の母はNYで暮らし、今は新しい母親とまだ幼い弟たちと暮らしている。デヴィッド・ボウイやニルヴァーナをこよなく愛し、持ち前の頭の良さから名門大学へと進学することが決まっていたニック。これから無限の可能性を秘めた充実した未来が待っているはずだった。そう、その薬と出会ってしまうまでは――。始まりは害のないマリファナからだった。そこからニックは、コカイン・LSD・ヘロイン・覚醒剤と瞬く間に手を出し、最後は強い依存性を持つという強力なドラッグ“クリスタル・メス”へと手を出してしまうのだった。当然私生活にも影響をきたし、大学進学は延期、家庭内は荒み、ニックはとうとう幼い弟の貯金にまで手を出してしまう。辛抱強く彼を見守ってきた父デヴィッドも手をつけられなくなり、仕方なくニックを施設へと預けることに。だが、ドラッグは予想以上に彼の身体や神経を蝕んでいて……。実話を基に、ドラッグによって人生を破壊されてしまった親子の葛藤と哀しみを淡々と描いたヒューマン・ドラマ。元は純粋無垢な青年ながら心の弱さから瞬く間に堕ちてゆく息子を演じるのは人気若手俳優ティモシー・シャラメ、息子を献身的に見守りながらも次第に神経を擦り減らしてゆく父親役には実力派俳優スティーブ・カレル。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これが予想外に重く切ない物語でありました。何度も更生を誓いながらもその度に周りの人間を裏切り続けどんどんと地獄に堕ちていってることに自分で気づいていながらそれでもドラッグを止められない息子の姿に、この悪魔の薬の恐ろしさを改めて知る思いでした。そんな息子に何度も傷つけられながらそれでもなお信じようとする父親の気持ちも痛いほど分かり、胸が絞めつけられます。ときおり差し挟まれるまだ幼かったころの親子の幸せな姿がまた切ない。警察沙汰を起こし、もはやどん底のニックからの悲痛な電話に対して、「駄目だ、もう救えない。自分で人生を立て直してくれ」と言わざるを得なかった父の言葉には思わず涙してしまいました。そんな父親の気持ちを踏みにじるように、新しい薬欲しさに自宅へと盗みに入る息子。逃げ出した彼を追って車を出した継母が、途中で泣きながら追うのを諦めるシーンは強く胸に刺さります。とても重いお話ではありますが、胸を打たずにはいられない優れた作品でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2020-01-29 13:13:04)(良:1票)
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